【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第30回日本道路会議論文集(DVD−ROM)、論文番号3170「アスファルト舗装の低炭素技術開発試案−マイクロカプセル技術によるカメレオン舗装−」、平成25年10月10日(配布日)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
敷きならした前記アスファルト混合物を、アスファルトフィニッシャに設置された締固め装置のみで締め固める、ことを特徴とする請求項8に記載のアスファルト舗装方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のアスファルト混合物製造用組成物は、熱膨張性微小球と、有機基材成分とを含む。
【0014】
熱膨張性微小球は、熱可塑性樹脂からなる外殻と、それに内包され且つ加熱することによって気化する発泡剤とから構成される。熱膨張性微小球の平均粒子径については特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは2〜80μm、さらに好ましくは3〜60μm、特に好ましくは5〜50μmである。
【0015】
熱膨張性微小球の粒度分布の変動係数(CV)は、特に限定されないが、好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。変動係数(CV)は、以下に示す計算式(1)および(2)で算出される。
【0016】
【数1】
(式中、sは粒子径の標準偏差、<x>は平均粒子径、x
iはi番目の粒子径、nは粒子の数である。)
【0017】
熱膨張性微小球の膨張開始温度(Ts)は、有機基材成分の軟化温度より高ければ特に限定されないが、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上、最も好ましくは100℃以上である。これは、膨張開始温度が70℃未満であると、耐熱性が低く、アスファルト混合物中での十分な膨張性能が得られないことがあるためである。一方、膨張開始温度の上限値は、好ましくは300℃である。これは、膨張開始温度が300℃を超えると、耐熱性が高すぎて、十分な膨張性能が得られないことがあるためである。
【0018】
熱膨張性微小球の最大膨張温度(Tmax)は、特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上、最も好ましくは150℃以上である。これは、最大膨張温度が100℃未満であると、耐熱性が低く、アスファルト混合物中での十分な膨張性能が得られないことがあるためである。一方、最大膨張温度の上限値は、好ましくは350℃である。これは、最大膨張温度が350℃超であると、耐熱性が高すぎて、十分な膨張性能が得られないことがあるためである。
【0019】
熱膨張性微小球を構成する発泡剤は、加熱することによって気化する物質であれば特に限定はない。発泡剤としては、たとえば、プロパン、(イソ)ブタン、(イソ)ペンタン、(イソ)ヘキサン、(イソ)ヘプタン、(イソ)オクタン、(イソ)ノナン、(イソ)デカン、(イソ)ウンデカン、(イソ)ドデカン、(イソ)トリデカン等の炭素数3〜13の炭化水素;(イソ)ヘキサデカン、(イソ)エイコサン等の炭素数13超で20以下の炭化水素;プソイドクメン、石油エーテル、初留点150〜260℃および/または蒸留範囲70〜360℃であるノルマルパラフィンやイソパラフィン等の石油分留物等の炭化水素;それらのハロゲン化物;ハイドロフルオロエーテル等の含弗素化合物;テトラアルキルシラン;加熱により熱分解してガスを生成する化合物等を挙げることができる。これらの発泡剤は、1種または2種以上を併用してもよい。上記発泡剤は、直鎖状、分岐状、脂環状のいずれでもよく、脂肪族であるものが好ましい。
【0020】
発泡剤は、加熱することによって気化する物質であるが、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質を内包すると、熱膨張性微小球の膨張温度において膨張に十分な蒸気圧を発生させることが可能で、高い膨張倍率を付与することが可能であるために好ましい。この場合、発泡剤として熱可塑性樹脂の軟化点以下の沸点を有する物質と共に、熱可塑性樹脂の軟化点超の沸点を有する物質を内包していても良い。
【0021】
熱膨張性微小球に封入された発泡剤の内包率については、自由に設計することができるために特に限定されないが、熱膨張性微小球の質量に対して、好ましくは2〜60質量%、さらに好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは8〜45質量%である。発泡剤の内包率が2質量%未満であると、熱膨張性微小球の膨張倍率が低く、アスファルト混合物の締固め性が低下するためである。一方、発泡剤の内包率が60質量%を超えると、膨張時に熱膨張性微小球の発泡剤が外殻外に多量に漏れ出し、膨張を維持できなくなることがあるためである。
【0022】
熱可塑性樹脂は、熱膨張性微小球の外殻を形成し、重合性成分を重合して得られる重合体から構成される。熱可塑性樹脂は、重合性二重結合を1個有する(ラジカル)重合性単量体と呼ばれている成分である単量体成分を必須とする重合性成分を重合して得られる重合体である。重合性成分は、重合性二重結合を2個以上有する重合性単量体(架橋剤)をさらに含んでいてもよい。
【0023】
単量体成分としては、特に限定はないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等のニトリル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有単量体;塩化ビニリデン;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−クロルエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリルアミド、置換アクリルアミド、メタクリルアミド、置換メタクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;N−フェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド等のマレイミド系単量体;スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、n−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン等のスチレン系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体、ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。カルボキシル基含有単量体については、一部または全部のカルボキシル基が重合時に中和されていてもよい。なお、(メタ)アクリルは、アクリルまたはメタクリルを意味する。マレイミド系単量体は、窒素原子に置換基を有する構造のN−置換マレイミド系単量体であることが好ましい。
【0024】
重合性成分を構成するこれらのラジカル重合性単量体は、1種または2種以上を併用してもよい。これらの内でも、重合性成分が、ニトリル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、カルボキシル基含有単量体、スチレン系単量体、酢酸ビニル、アクリルアミド系単量体、マレイミド系単量体および塩化ビニリデンから選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0025】
重合性成分がニトリル系単量体を必須成分として含むと、熱膨張性微小球の外殻を構成する熱可塑性樹脂の耐熱性や耐溶剤性およびガスバリア性が向上するために好ましい。
【0026】
ニトリル系単量体としては、アクリロニトリルやメタクリロニトリルが好ましい。重合性成分がニトリル系単量体を必須成分として含む場合、アクリロニトリル(AN)およびメタクリロニトリル(MAN)の質量割合(AN/MAN)については、特に限定はないが、好ましくは3/97〜90/10、さらに好ましくは4/96〜70/30、特に好ましくは4/96〜50/50である。これは、AN/MANが3/97未満であると、ガスバリア性が低く、十分な膨張性能が得られないことがあるとともに、AN/MANが90/10を超えると、耐熱性が低く、十分な膨張性能が得られないことがあるためである。
【0027】
ニトリル系単量体の質量割合については、特に限定はないが、単量体成分に対して、好ましくは5〜100質量%、さらに好ましくは30〜95質量%、特に好ましくは40〜90質量%である。これは、ニトリル系単量体の質量割合が5質量%未満であると、ガスバリア性が低く、十分な膨張性能が得られないことがあるためである。
【0028】
また、重合性成分がニトリル系単量体と共にハロゲン化ビニル系単量体および/または(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含むと好ましい。これは、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル系単量体を含むとさらにガスバリア性が向上するとともに、重合性成分が(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含むと膨張挙動をコントロールし易くなるためである。
【0029】
重合性成分がニトリル系単量体と共にカルボキシル基含有単量体をさらに含むと、耐熱性や耐溶剤性が向上するとともに、熱可塑性樹脂のガラス転移温度が高くなり、熱膨張性微小球を高温で熱膨張させることができるために好ましい。重合性成分が、ニトリル系単量体およびカルボキシル基含有単量体と共にハロゲン化ビニル系単量体および/または(メタ)アクリル酸エステル系単量体をさらに含んでいてもよい。
【0030】
重合性成分は、前述のとおり、上記単量体成分以外に架橋剤をさらに含んでいてもよい。これは、架橋剤を用いて重合させることにより、熱膨張時の内包された発泡剤の保持率(内包保持率)の低下が抑制され、効果的に熱膨張させることができるためである。
【0031】
架橋剤としては、特に限定はないが、たとえば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;メタクリル酸アリル、トリアクリルホルマール、トリアリルイソシアネート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0032】
架橋剤の質量割合については、特に限定はないが、単量体成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部、特に好ましくは0.2質量部超1質量部未満である。
【0033】
熱膨張性微小球の製造方法については、特に限定はないが、たとえば、重合性成分および発泡剤を含有する油性混合物を分散させた水性分散媒中で、重合性成分を重合させる工程(以下、重合工程ということがある)を含む製造方法を挙げることができる。
【0034】
重合工程では、重合開始剤を含有する油性混合物を用いて、重合性成分を重合開始剤の存在下で重合させることが好ましい。
【0035】
重合開始剤としては、特に限定はないが、過酸化物やアゾ化合物等を挙げることができる。重合開始剤としては、単量体成分に対して可溶な油溶性の重合開始剤が好ましい。
【0036】
重合開始剤の質量割合については、特に限定はないが、前記単量体成分100質量部に対して0.3〜8.0質量部であることが好ましい。
重合工程では、油性混合物は連鎖移動剤等をさらに含有していてもよい。
【0037】
有機基材成分は、本発明のアスファルト混合物製造用組成物において、熱膨張性微小球とともに混練される相手方となる基材の成分である。有機基材成分は、アスファルト混合物製造用組成物を利用してアスファルト混合物を製造する際、アスファルト混合物中の熱膨張性微小球の分散性を向上させ、アスファルト混合物中の熱膨張性微小球が均一に膨張することを可能にする。
【0038】
有機基材成分の融点については、熱膨張性微小球の膨張開始温度以下であれば特に限定はないが、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは180℃以下、特に好ましくは170℃以下である。有機基材成分の融点が200℃を超える場合、アスファルト混合物製造用組成物を用いたアスファルト混合物の製造時に発生する熱で有機基材成分が十分に溶融せず、アスファルト混合物製造用組成物の発泡倍率が低下することがあるためである。
【0039】
有機基材成分の種類については、特に限定はないが、たとえば、ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルアルコール;エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン−ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン系共重合体;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリテルペン等のポリオレフィン系樹脂;スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリアセタール;ポリメチルメタクリレート;酢酸セルロース;ポリカーボネート;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;熱可塑性ポリウレタン;4フッ化エチレン;エチレン系アイオノマー、ウレタン系アイオノマー、スチレン系アイオノマー、フッ素系アイオノマー等のアイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。
【0040】
有機基材成分の種類については、上記熱可塑性樹脂以外でもよく、たとえば、ウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;天然ゴム、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、スチレン−イソプレンゴム、クロロプレンゴム等のゴム類;蜜ろう、シェラックワックス、鯨ろう、ウールワックス、いぼたろう等の動物系ワックス;カルナバワックス、はぜろう、カンデリラワックス、ライスワックス、うるしろう、パームろう、さとうきびろう等の植物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成ワックス等が挙げられる。
【0041】
上記で例示した有機基材成分のうちでも、アスファルト混合物の製造時に発生する熱で容易に溶融し、アスファルト混合物中における熱膨張性微小球の均一分散が可能であり、アスファルト混合物の改質にも寄与するために、エチレン系共重合体が好ましく、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体がさらに好ましい。
【0042】
このようなアスファルト混合物製造用組成物をアスファルト混合物の製造に用いることによって、熱膨張性微小球をアスファルト混合物中で均一に分散させ、膨張させることを可能にする。よって、アスファルト混合物の締固め性にばらつきが生じず、均一な締固め性が得られるといった効果を発揮する。
【0043】
アスファルト混合物製造用組成物に含まれる熱膨張性微小球の質量割合については、特に限定はないが、熱膨張性微小球および有機基材成分の合計量に対して、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは20〜70質量%、さらに好ましくは30〜65質量%、特に好ましくは40〜65質量%である。これは、熱膨張性微小球の質量割合が10質量%未満の場合は、アスファルト混合物製造用組成物の発泡性が低下することがあり、一方、熱膨張性微小球の質量割合が80質量%を超える場合は、アスファルト混合物製造用組成物の作製が困難になることがあるためである。
【0044】
アスファルト混合物製造用組成物は、ペレット状の形状を有することが好ましい。
アスファルト混合物製造用組成物をその長さ方向に垂直な面で切断したときの断面の形状は、アスファルト混合物製造用組成物の用途等によって適宜決められるが、たとえば、円形、楕円形、多角形、星型、中空円形等を挙げることができる。
【0045】
アスファルト混合物製造用組成物の長さについても、その用途等によって適宜決められるが、好ましくは1〜100mm、さらに好ましくは1.5〜80mm、特に好ましくは2〜70mmである。これは、アスファルト混合物製造用組成物の長さが1〜100mmの範囲外の場合は、熱膨張性微小球の分散不良が原因で、アスファルト混合物内で熱膨張性微小球が均一に発泡しなくなり、本願発明の効果が十分に得られないことがあるためである。
【0046】
アスファルト混合物製造用組成物の長さ方向に垂直な面での断面の長軸長さについても、その用途によって適宜決められるが、好ましくは0.03〜10mm、さらに好ましくは0.05〜5mm、特に好ましくは0.1〜3mmである。これは、断面の長軸長さが0.03〜10mmの範囲外の場合は、熱膨張性微小球の分散不良が原因で、アスファルト混合物内で熱膨張性微小球が均一に発泡しなくなり、本願発明の効果が十分に得られないことがあるためである。
【0047】
アスファルト混合物製造用組成物の密度については、特に限定はないが、好ましくは0.60〜1.5g/cm
3、さらに好ましくは0.65〜1.3g/cm
3、特に好ましくは0.7〜1.2g/cm
3である。これは、アスファルト混合物製造用組成物の密度が0.60〜1.5g/cm
3の範囲外の場合は、アスファルト混合物製造用組成物中の熱膨張性微小球の一部が既に膨張している状態または熱膨張性微小球の一部が破壊されている状態となり、アスファルト混合物製造用組成物の発泡倍率が低下することがあるためである。
【0048】
アスファルト混合物製造用組成物の膨張倍率については、特に限定はないが、好ましくは5〜120倍、さらに好ましくは10〜100倍、特に好ましくは15〜75倍である。これは、アスファルト混合物製造用組成物の膨張倍率が5〜120倍の範囲外の場合は、本願発明の効果が十分に得られないことがあるためである。
【0049】
アスファルト混合物製造用組成物の製造方法としては、熱膨張性微小球および有機基材成分を混合する方法であればよく、これらを均一分散させる方法が好ましい。アスファルト混合物製造用組成物の製造方法としては、たとえば、下記(1)に示す予備混練工程および下記(2)に示すペレット化工程を含む製造方法を挙げることができる。
【0050】
(1)有機基材成分をロール、ニーダー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機であらかじめ溶融混練させておき、その中に熱膨張性微小球を添加し、予備混練物を調製する予備混練工程。
(2)次いで、得られた予備混練物を1軸押出機、2軸押出機、多軸押出機等の押出機に投入して所望の太さで溶融混合物を押し出し、ホットカットペレタイザーでペレット化するペレット化工程。
【0051】
また、長尺のアスファルト混合物製造用組成物が必要な場合は、押出機より所望の太さのストランド状物を押し出し、裁断機によって所望の長さにすることで製造することができる。このとき、ストランドの太さについては押出機のストランドダイの径およびストランド巻き取り速度等で調整することができる。
【0052】
本発明のアスファルト混合物製造用組成物は、有機基材成分および熱膨張性微小球以外に、安定剤、滑剤、充填剤、分散性向上剤等の成形用添加剤等をさらに含有していてもよい。
【0053】
安定剤としては、たとえば、ペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系安定剤;トリス(モノノニルフェニル)フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系安定剤、ジラウロイルジプロピオネート等の硫黄系安定剤等が挙げられる。これら安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
安定剤の質量割合は、有機基材成分100質量部に対して、0.01〜1.0質量部であることが好ましく、0.05〜0.5質量部であることがより好ましい。これは、安定剤の質量割合が0.01質量部未満であると、安定剤の配合効果が得られないことがあるとともに、安定剤の質量割合が1.0質量部を超えると、安定剤の機能が損なわれることがあるためである。
【0055】
滑剤としては、たとえば、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸等の飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩が挙げられる。これらの滑剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
滑剤の質量割合は、有機基材成分100質量部に対して、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。これは、滑剤の質量割合が0.1質量部未満であると、滑剤の配合効果が発現しないことがあるとともに、滑剤の質量割合が2.0質量部を超えると、滑剤の機能が損なわれることがあるためである。
【0057】
充填剤としては、繊維状、粒子状、粉体状、板状、針状等、種々の形状のものを用いることができる。充填剤としては、たとえば、ガラス繊維(金属を被覆したものを含む)、炭素繊維(金属を被覆したものを含む)、チタン酸カリウム、アスベスト、炭化珪素、窒化珪素、セラミック繊維、金属繊維、アラミド繊維、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二硫化モリブデン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、マイカ、タルク、カオリン、パイロフィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、ウォラストナイト、アルミナ、クレー、フェライト、黒鉛、石膏、ガラスビーズ、ガラスバルーン、石英等が挙げられる。これらの充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの充填剤の中でも、タルク、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム等が好ましい。
【0058】
充填剤の質量割合は、有機基材成分100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、1〜50質量部であることがより好ましい。これは、充填剤の質量割合が0.1質量部未満であると、充填剤の配合効果が発現しないことがあるとともに、充填剤の質量割合が50質量部を超えると、充填剤の機能が損なわれることがあるためである。
【0059】
分散性向上剤としては、たとえば、脂肪族炭化水素、パラフィンオイル等のパラフィン系プロセスオイル、アロマオイル等の芳香族プロセスオイル、流動パラフィン、ペトロタム、ギルソナイト、石油アスファルト等が挙げられる。
【0060】
分散性向上剤の質量割合については、特に限定はないが、熱膨張性微小球および有機基材成分の合計量に対して、好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。これは、分散性向上剤の質量割合が25質量%を超えると、分散向上剤の機能が損なわれることがあるためである。
【0061】
本発明のアスファルト混合物は、骨材と、アスファルトと、熱膨張性微小球を含むアスファルト混合物製造用組成物と、を所定の割合で混合して製造する。
【0062】
骨材としては、たとえば、砕石、玉砕、砂利、スラグ、砂、再生骨材、フィラー等が挙げられる。ミキサー内で骨材をドライミキシングする際に、アスファルト混合物製造用組成物を添加する。アスファルト混合物製造用組成物の有機基材成分がドライミキシングの熱で溶け、熱膨張性微小球が均一に拡散する。溶けた有機基材成分はアスファルトの改質効果をもつ。
【0063】
フィラーとしては、たとえば、石粉、消石灰、セメント、回収ダスト、及び、フライアッシュ等が挙げられる。
【0064】
ここで、骨材は、19mmふるい目の通過質量百分率が95〜100質量%、13.2mmふるい目の通過質量百分率が70〜100質量%、4.75mmふるい目の通過質量百分率が23〜100質量%、2.36mmふるい目の通過質量百分率が10〜80質量%、及び、0.075mmふるい目の通過質量百分率が1〜10質量%であるように配合されることが好ましい。アスファルト混合物に含まれる骨材のサイズをかかる範囲にすることにより、アスファルト混合物の流動性が良好となり、施工性が向上し、アスファルト舗装体が充分な密度を得ることができるためである。
【0065】
アスファルトとしては、たとえば、高品質のアスファルトが挙げられる。高品質のアスファルトとは、ゴムやポリマーなどを添加した改質アスファルトである。改質アスファルトに添加されている添加物としては、たとえば、スチレン・ブタジエンランダム共重合体(SBR)、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SBS)、スチレン・イソブレンブロック共重合体(SIS)、ポリスチレン・ポリエチレンブチレンブロック共重合体(SEBS)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)などが挙げられる。また、アスファルトは、その用途に応じて、I型、II型、III型、H型等のポリマー改質アスファルトを適宜用いることができ、このうち、ポリマー改質アスファルトH型を用いることが好ましい。
【0066】
アスファルトの質量割合は、骨材に対して3.5〜9.5質量%が好ましく、5〜7質量%がより好ましい。これは、アスファルトの質量割合が3.5質量%未満であると、骨材同士の付着力を得られず、アスファルト舗装体が充分な耐摩耗性を得ることができないためであり、一方、質量割合が9.5質量%を超えると、アスファルト混合物の流動性が過剰となり、アスファルト舗装体が充分な耐流動性を得ることができないためである。
【0067】
本発明のアスファルト混合物は、さらに各種の混和剤、ポリマーなどの適宜の材料を添加してもよい。たとえば、本発明のアスファルト混合物にアスファルトの粘度を低下させる中温化剤を添加してもよい。
【0068】
アスファルト混合物製造用組成物の質量割合は、アスファルトに対して0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。これは、アスファルト混合物製造用組成物の質量割合が0.1質量%未満であると、熱膨張性微小球による締固め性向上効果を得られず、アスファルト舗装体が充分な密度を得ることができないためであり、一方、質量割合が10質量%を超えると、アスファルト混合物の流動性が過剰となり、施工性が悪化し、アスファルト舗装体が充分な密度を得ることができないためである。
【0069】
本発明のアスファルト混合物製造時に発生する熱で、熱膨張性微小球は最大に膨張する。これにより、アスファルト混合物の見かけの体積が増加し、骨材が容易に移動するようになるため、アスファルト混合物の締固め性が向上する。
【0070】
アスファルト混合物の運搬時および施工時に、熱膨張性微小球内の発泡剤の温度低下または熱膨張性微小球内の発泡剤が外殻を通過拡散することで、熱膨張性微小球は徐々に収縮する。発泡剤が抜けて潰れた熱膨張性微小球は、アスファルト混合物のフィラーとして機能する。
【0071】
アスファルト混合物を敷きならす機械として、締固め装置を有するアスファルトフィニッシャが広く知られている。締固め装置を有するアスファルトフィニッシャには、水平振動するバイブレータおよび垂直振動するタンパが設置されており、それら2種類の振動で、敷きならしたアスファルト混合物を締め固める。このように、アスファルトフィニッシャの締固め装置のみで、十分な密度のアスファルト舗装体を舗設できる。したがって、舗装用ローラが不要となる。
【実施例】
【0072】
以下に、本発明の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、断りのない限り、「%」とは「質量%」、「部」とは「質量部」をそれぞれ意味するものとする。
【0073】
各種のアスファルト混合物製造用組成物の実施例を示す。以下では、アスファルト混合物製造用組成物を簡単のために「組成物」ということがある。
【0074】
〔実施例1〕
容量10Lの加圧ニーダーを用いて、有機基材成分としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(三井・デュポンポリケミカル(株)製のエバフレックス、融点61℃、比重0.96g/cm
3)3.0kgを溶融混練し、その温度が70℃に到達したときに、マツモトマイクロスフェアーFN−100MD(松本油脂製薬(株)製の熱膨張性微小球、ニトリル系コポリマー、平均粒子径20〜30μm、膨張開始温度125〜135℃、最大膨張温度165〜180℃)3.0kgを配合して均一に混合し予備混合物とした。得られた予備混合物をシリンダー口径40mmの二軸押出機に供給して混練温度70℃で押し出した後、ペレタイザーでペレット化して、熱膨張性微小球の質量割合が50質量%、比重0.94g/cm
3、直径3mm、長さ4mmのペレット状のアスファルト混合物製造用組成物を得た。
【0075】
ミキサー内に、表1に示す、19mmふるい目の通過質量百分率が100質量%、13.2mmふるい目の通過質量百分率が100質量%、4.75mmふるい目の通過質量百分率が100質量%、2.36mmふるい目の通過質量百分率が27.0質量%、0.60mmふるい目の通過質量百分率が17.4質量%、0.30mmふるい目の通過質量百分率が13.7質量%、0.15mmふるい目の通過質量百分率が11.0質量%、0.075mmふるい目の通過質量百分率が8.5質量%であって、その最大粒径が4.0mmの骨材等と、表2に示す質量割合のアスファルト及びアスファルト混合物製造用組成物とを添加してドライミキシングを行い、アスファルト混合物製造用組成物の熱膨張性微小球が均一に拡散したアスファルト混合物(供試体)を得た。また、表2に示すアスファルトの質量割合は骨材に対するものであり、アスファルト混合物製造用組成物の質量割合はアスファルトに対するものである。なお、表1中の骨材等は、藤坂砕石工業(株)製の砕石7号、西部建材(株)製の粗砂、奥多摩工業(株)製の石粉を使用した。また、アスファルトは改質アスファルトH型(ニチレキ(株)製のタフファルトスーパーLL)を使用した。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
得られた供試体を、締固め装置を有するアスファルトフィニッシャを用いて施工基面上に敷きならし、締め固めることにより、アスファルト舗装体を施工した。なお、敷きならし温度は150℃とした。
【0079】
〔実施例2〜6、比較例1〕
表2に示すように、アスファルト及びアスファルト混合物製造用組成物の質量割合を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2〜6のアスファルト混合物(供試体)を得た。また、比較のため、アスファルト混合物製造用組成物を添加しない場合についても同様に、比較例1のアスファルト混合物(供試体)を得た。これらの供試体についても実施例1と同様にして、アスファルト舗装体を施工した。
【0080】
施工されたアスファルト舗装体を確認したところ、実施例1〜6の供試体を用いて施工したアスファルト舗装体では、アスファルト混合物が十分に締め固められており、アスファルト舗装施工時における締固めにおいて、舗装用ローラを不要とすることができることを確認した。一方、比較例1の供試体を用いて施工したアスファルト舗装体では、アスファルト混合物の締固めが十分ではなく、アスファルト舗装施工時における締固めにおいて、舗装用ローラによる締固めが必要であることを確認した。
【0081】
(アスファルト混合物の締固め特性の測定)
アスファルト混合物の締め固めた状態を確認するため、アスファルト混合物の締固め特性(密度)の測定を行った。締固め特性の測定は、社団法人 日本道路協会発行の「舗装調査・試験法便覧」(平成19年6月)の「ジャイレトリー試験機によるアスファルト混合物の締固め試験方法」に記載の試験方法に準じて供試体の作製を行い、表3に示す締固め条件で締め固めたときの供試体の密度を測定した。本試験は、アスファルト混合物に垂直方向の荷重を加えた状態で旋回運動によるニーディング作用を与えて供試体の締固め特性(密度)を評価するものである。結果を表4に示す。なお、各供試体の密度は供試体3個の平均値とした。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
表4に示すように、本発明のアスファルト混合物製造用組成物を添加した実施例1〜6では、本発明のアスファルト混合物製造用組成物を添加していない比較例1の密度2.109g/cm
3を上回る。このため、本発明のアスファルト混合物製造用組成物を添加することにより、アスファルト混合物の締固め性が向上することが確認できた。
【0085】
また、実施例1の密度を得るために必要なジャイレトリー試験機の旋回数を求めた。結果を表5に示す。
【0086】
【表5】
【0087】
表5に示すように、本発明のアスファルト混合物製造用組成物を添加することにより、実施例1では30回、実施例2では60回、実施例3では40回、実施例4では85回、実施例5では68回、実施例6では110回も、ジャイレトリー試験機の旋回数を大きく低減させることができる。このため、アスファルト舗装施工時における締固めにおいて、舗装用ローラを不要とすることができる。
【0088】
〔実施例7〜12〕
実施例1で用いた熱膨張性微小球をマツモトマイクロスフェアーFN−180D(松本油脂製薬(株)製、ニトリル系コポリマー、平均粒子径35〜45μm、膨張開始温度140〜155℃、最大膨張温度175〜185℃)に変更する以外は実施例1と同様にして、熱膨張性微小球の質量割合が50質量%、比重0.95g/cm
3、直径3mm、長さ4mmのペレット状のアスファルト混合物製造用組成物を得た。
【0089】
得られたアスファルト混合物製造用組成物を使用すること以外は実施例1〜6と同様にして、実施例7〜12のアスファルト混合物(供試体)を得た。これらの供試体についても実施例1と同様にして、アスファルト舗装体を施工した。
【0090】
実施例7〜12の供試体を用いて施工したアスファルト舗装体では、アスファルト舗装施工時における締固めにおいて、舗装用ローラを不要とすることができることを確認した。また、実施例7〜12の供試体を用いたアスファルト混合物の締固め特性の測定をしたところ、実施例1〜6の供試体を用いたアスファルト混合物の締固め特性の測定の結果と同様の結果が得られたことを確認した。