特許第6408312号(P6408312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408312
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】歩行者衝突検知装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/0136 20060101AFI20181004BHJP
   B60R 19/18 20060101ALI20181004BHJP
   B60R 19/48 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   B60R21/0136 320
   B60R19/18 J
   B60R19/48 G
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-182434(P2014-182434)
(22)【出願日】2014年9月8日
(65)【公開番号】特開2016-55710(P2016-55710A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】太田 一宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 良一
【審査官】 野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−140113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R21/00
B60R21/0136
B60R21/02
B60R19/18
H01L29/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在する支持部材と、
前記支持部材の前方に配置された衝撃吸収部材と、
前記衝撃吸収部材に配置され、車両に作用した衝撃により変形するセンサ部と、を具備し、
前記衝撃吸収部材は、前方に面する正面部材と、前記正面部材の上部から後方に伸びる上部材と、前記正面部材の下部から後方に伸びる下部材と、を有し、
前記上部材または前記下部材の少なくとも何れか一方は、後部が前部よりも水平線から離れる傾斜形状を呈し、
前記センサ部は、前記衝撃吸収部材の前記正面部材の前面を窪ませた収納部に収納されることを特徴とする歩行者衝突検知装置。
【請求項2】
車幅方向に延在する支持部材と、
前記支持部材の前方に配置された衝撃吸収部材と、
前記衝撃吸収部材に配置され、車両に作用した衝撃により変形するセンサ部と、を具備し、
前記衝撃吸収部材は、前方に面する正面部材と、前記正面部材の上部から後方に伸びる上部材と、前記正面部材の下部から後方に伸びる下部材と、を有し、
前記上部材または前記下部材の少なくとも何れか一方は、後部が前部よりも水平線から離れる傾斜形状を呈し、
前記上部材または前記下部材の後端面は、前記支持部材の前面に対して傾斜することを特徴とする歩行者衝突検知装置。
【請求項3】
前記下部材が前記水平線に対して傾斜する角度は、前記上部材が前記水平線に対して傾斜する角度よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歩行者衝突検知装置。
【請求項4】
前記下部材が前記水平線に対して傾斜する角度は、前記上部材が前記水平線に対して傾斜する角度と同程度であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の歩行者衝突検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歩行者衝突検知装置に関し、特に歩行者との衝突を圧力変化で検出するセンサ部が組み込まれた歩行者衝突検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者と車両とが交通事故を起こすと、二次衝突が発生することが知られている。この二次衝突とは、所定の速度以上で走行している車両が歩行者に衝突すると、この歩行者が車両バンパに衝突した後、フロントフード上に持ち上げられ、フロントガラス等に衝突することである。
【0003】
二次衝突から歩行者を保護するため、フロントフード上にエアバッグを膨張展開させる歩行者保護装置が特許文献1に示されている。この特許文献1の図1を参照すると、車両のフロントフード4には、この歩行者保護装置が備えるエアバッグモジュール10が設置されている。このエアバッグモジュール10は、エアバッグ15をフロントフード4上に膨張展開するように構成されている。
【0004】
また、衝撃吸収部材の形状を工夫することでセンサを好適に動作させる事項が以下の特許文献2および特許文献3に記載されている。
【0005】
特許文献2では、図5およびその説明箇所を参照すると、組み付け作業を簡素化した衝突検出センサが開示されている。具体的には、衝突検出センサ1は、衝突時の荷重を検出する荷重検出部2と、モールド材3から構成されている。そして、モールド材3は、荷重検出部2と一体に形成され、荷重検出部2の少なくとも衝突方向の表面を覆い、衝突時の衝撃エネルギーの少なくとも一部を弾性変形により吸収可能な構成とされている。
【0006】
特許文献3では、図1およびその説明箇所を参照すると、検出精度を向上させた歩行者衝突検出装置が開示されている。具体的には、衝突判定システムは、車両幅方向を長手方向として配置されかつ内部が圧力チャンバ22とされたチャンバ部材20を備えている。チャンバ部材20はバンパリインフォースメント14の前面14Aに隣接して配置されている。バンパカバーとバンパリインフォースメント14との間にはバンパアブソーバ28が配設されている。バンパアブソーバ28は下部に配置される本体部30と、チャンバ部材20とバンパカバーとの隙間に配設される隙詰め部32とで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2920284号公報
【特許文献2】特開2006−125999号公報
【特許文献3】特開2011−143825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した衝突検出のための装置では、人との衝突を正確に検出することが容易でない場合が考えられた。
【0009】
具体的には、特許文献図5を参照して、モールド材3(フォーム材)の一般的な性質として、衝突エネルギーが作用すると、初期荷重が発生した後に一旦その荷重が停滞し、その後に再び荷重が大きくなるということがある。よって、フォーム材の先端部に衝突検出用のチューブを配置すると、そのチューブは衝突初期に途中まで潰れ、その後にフォーム材が十分に潰れた後に再びチューブが潰れるように成る。従って、衝突時のストロークとチューブが潰れる程度(圧力変動)が好適に連動しないので、衝突初期で歩行者衝突を検知しようとすると、検知が敏感になりすぎて正確性が欠ける場合が考えられる。
【0010】
また、EA(Energy Absorption)材として使用されるフォーム材は、動的に衝撃が作用すると、その先端部から潰れる性質がある。そして、その性質は衝突する車両の速度と正の相関を有する。よって、歩行者の衝突を検出するチューブをフォーム材の先端部付近に備えると、その性質が歩行者衝突の検出に悪影響を与える恐れがある。
【0011】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、衝突を検出する精度を高めた歩行者衝突検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の歩行者衝突検知装置は、車幅方向に延在する支持部材と、前記支持部材の前方に配置された衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材に配置され、車両に作用した衝撃により変形するセンサ部と、を具備し、前記衝撃吸収部材は、前方に面する正面部材と、前記正面部材の上部から後方に伸びる上部材と、前記正面部材の下部から後方に伸びる下部材と、を有し、前記上部材または前記下部材の少なくとも何れか一方は、後部が前部よりも水平線から離れる傾斜形状を呈し、前記センサ部は、前記衝撃吸収部材の前記正面部材の前面を窪ませた収納部に収納されることを特徴とする。
更に、本発明の歩行者衝突検知装置は、車幅方向に延在する支持部材と、前記支持部材の前方に配置された衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材に配置され、車両に作用した衝撃により変形するセンサ部と、を具備し、前記衝撃吸収部材は、前方に面する正面部材と、前記正面部材の上部から後方に伸びる上部材と、前記正面部材の下部から後方に伸びる下部材と、を有し、前記上部材または前記下部材の少なくとも何れか一方は、後部が前部よりも水平線から離れる傾斜形状を呈し、前記上部材または前記下部材の後端面は、前記支持部材の前面に対して傾斜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、衝撃吸収部材を構成する上部材または下部材の少なくとも何れか一方を、後部が前部よりも水平線から離れる傾斜形状としている。これにより、衝突時に上部材または下部材が開くことで、センサ部を上下方向に潰すことができる。よって、ストロークに対して好適にセンサ部の圧力を連動させ、歩行者の衝突を高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の歩行者衝突検知装置を示す図であり、(A)は歩行者衝突検知装置を備えた車両を示す斜視図であり、(B)は歩行者衝突検知装置を分解して示す斜視図である。
図2】本発明の歩行者衝突検知装置を示す図であり、(A)は歩行者衝突検知装置を示す断面図であり、(B)はフォーム材を示す断面図である。
図3】本発明の歩行者衝突検知装置を示す図であり、歩行者衝突検知装置を構成する各種センサ等の接続構成を示すブロック図である。
図4】本発明の歩行者衝突検知装置を示す図であり、(A)は歩行者衝突検知装置が動作する状況を示す断面図であり、(B)は進入量と圧力との関係を示すグラフである。
図5】本発明の歩行者衝突検知装置を示す図であり、(A)および(B)は他の形態の歩行者衝突検知装置を示す断面図である。
図6】本発明の歩行者衝突検知装置を示す図であり、他の形態の歩行者衝突検知装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して、本形態の歩行者衝突検知装置を説明する。以下の説明において、左方および右方は、車両の進行方向(前方)を向いた場合の左方および右方を示している。
【0016】
図1を参照して、本形態の歩行者衝突検知装置の概略的構成を説明する。図1(A)は車両10の前端部を示す斜視図であり、図1(B)は車両10の前部に内蔵される歩行者衝突検知装置11を分解して示す斜視図である。
【0017】
図1(A)を参照して、車両10の前部の意匠部分は、上方から、フロントフード12、グリル16およびバンパ表皮14から構成されている。本形態の歩行者衝突検知装置11は、グリル16またはバンパ表皮14の後方に設けられている。そして、車両10の前端部が歩行者に衝突したことを歩行者衝突検知装置11が検出すると、フロントフード12の近傍に配置されたエアバッグが膨張展開し、歩行者を二次衝突から保護する。
【0018】
図1(B)を参照して、本形態の歩行者衝突検知装置11は、後方から、車体側に取り付けられるバンパ支持部材18(支持部材)と、バンパ支持部材18の前面に配置されるフォーム材20(衝撃吸収部材)と、フォーム材20の前部に組み込まれる検出チューブ22(センサ部)と、を主要に備えている。そして、これらの部材から構成される歩行者衝突検知装置11は、バンパ表皮14の後方に配置されている。
【0019】
バンパ支持部材18は車両の幅方向に伸びる金属製の部材であり、フォーム材20等を支持し、且つ、大衝突時のエネルギーを吸収する役割を有する。歩行者衝突や軽衝突の際には、バンパ支持部材18は原則として変形しない。
【0020】
フォーム材20は樹脂材料から成り、バンパ支持部材18の左方端部付近から右方端部付近まで連続して形成されている。フォーム材20の材料としては、PPフォーム材またはポリエチレン等から成る発泡樹脂が採用される。フォーム材20は、歩行者衝突時等に生じる衝撃を吸収する作用を有する。本形態では、フォーム材20の形状は、検出チューブ22で歩行者衝突を高精度に検出できる形状としているが、係る事項は後述する。
【0021】
検出チューブ22は、円形状の断面を有するパイプ状の樹脂製部材であり、その内部は密閉されている。検出チューブ22は、バンパ支持部材18の右方端部付近から左方端部付近に至るまで配置されている。検出チューブ22の内部には不図示の圧力センサが配置されており、衝突時の衝撃により検出チューブ22が圧縮された際の圧力の変動を圧力センサで検出することで、歩行者の衝突を検知している。本形態では、フォーム材20の前面を部分的に窪ませた部分に検出チューブ22を収納させているが、フォーム材20の前部に検出チューブ22が内蔵されても良い。
【0022】
図2を参照して、本形態の歩行者衝突検知装置11の構成を詳述する。図2(A)は、通常走行時での歩行者衝突検知装置11の構造を示す断面図であり、図2(B)はフォーム材20を抜き出して示す断面図である。
【0023】
図2(A)を参照して、上記したように、歩行者衝突検知装置11は、後方から、バンパ支持部材18、フォーム材20、検出チューブ22およびバンパ表皮14を備えている。
【0024】
バンパ支持部材18の前面は略平滑面であり、その前面にフォーム材20が備えられている。フォーム材20の側面視での形状は、概略的には平仮名の「く」の形状である。
フォーム材20の前面はバンパ表皮14に面し、その後面はバンパ支持部材18に面している。フォーム材20の前面の中央付近を後方に窪ませた収納部42に検出チューブ22が収納されている。歩行者衝突時には、歩行者の大腿部等に衝突したバンパ表皮14が後方に変形し、バンパ表皮14に押圧されたフォーム材20が圧縮変形することで衝撃が吸収される。また、フォーム材20の圧縮変形と同時に検出チューブ22も圧縮されて内部気圧が上昇することで歩行者衝突が検出される。
【0025】
図2(B)を参照して、上記した歩行者衝突検知装置11に備えられるフォーム材20の構成を詳述する。フォーム材20は、衝突方向である前方に面する正面部材20Aと、正面部材20Aの上端から後方に伸びる上部材20Bと、正面部材20Aの下端から後方に伸びる下部材20Cとから構成される。フォーム材20を構成するこれらの部材は一体的に連続する発泡樹脂から構成される。
【0026】
正面部材20Aの前面中央付近を後方に窪ませて収納部42が形成されている。この収納部42は、上記した検出チューブ22を収納させるための部位であり、検出チューブ22と同程度の大きさに形成される。
【0027】
本形態では、正面部材20Aから後方に連続する上部材20Bおよび下部材20Cは、後方に向かって上部材20Bおよび下部材20Cが開くような形状である。具体的には、上部材20Bの上下方向の厚みの中心を示す中心線21の延長線と水平線24とが所定の角度θ1で交差している。よって、上部材20Bは後部が前部よりも水平線24から離れるように傾斜している。一方、下部材20Cの中心線23の延長線と水平線24とは所定の角度θ2で交差している。よって、下部材20Cは、後部が前部よりも水平線24から離れるように傾斜している。ここで、水平線24とは、フォーム材20が組み込まれる車両10に対して水平な線を示す。また、上記したθ1とθ2は同じ角度でも良いし異なる角度でも良い。フォーム材20を構成する上部材20Bおよび下部材20Cがこのように傾斜していることで、後述するように、収納部42に収納される検出チューブ22に対して、衝突時に上下方向に圧力を与えることが出来る。
【0028】
また、本形態では、フォーム材20の先端部の上下方向の幅L1を、その後端部の幅L2よりも短くしている。一例として、L1はL2の半分以下である。このようにフォーム材20の先端部を後端部よりも狭くすることにより、衝突時に於いて後端部付近よりも先端部付近により大きな圧縮力が作用するようになるので、フォーム材20の前方部分が後方部分よりも優先的に潰れる。これにより、フォーム材20の前端部付近に配置された検出チューブ22で歩行者との衝突をより正確に検出することが可能となる。
【0029】
図3を参照して、上記した検出チューブ22の内部の圧力は圧力センサ19により計測されて、この圧力を示す情報がECU15(Electronic Control Unit)に出力される。また、ECU15には、車両10の速度を示す情報が速度センサ13から入力される。これは、車速が一定速の時のみに歩行者用のエアバッグ17を展開させるためである。
【0030】
ECU15では、これら各センサから得られた情報等を基に、車両10が歩行者に衝突したか否かの判断を行う。そして、車両10が歩行者に衝突したと判断されたら、ECU15の出力に基いてエアバッグ17をフロントフード12(図1(A)参照)の上面に膨張展開し、歩行者を保護する。
【0031】
図4を参照して、上記した車両10が走行中に歩行者衝突検知装置11が歩行者との衝突を検出する方法を説明する。図4(A)は衝突が発生した場合の歩行者衝突検知装置11を示す断面図であり、図4(B)は衝突時に於ける検出チューブの圧力の変動を示すグラフである。
【0032】
車両10が走行中に歩行者に衝突すると、図2(A)に示すバンパ表皮14が歩行者に衝突して後方に変形する。そして、変形されたバンパ表皮14によりフォーム材20が後方に圧縮変形される。
【0033】
図4(A)を参照して、この衝突時に変形するフォーム材20を説明する。この図では、変形後のフォーム材20を実線で示し、変形前のフォーム材20を点線で示している。
【0034】
フォーム材20が前方から後方に押圧されると、上部材20Bの後端側面がバンパ表皮14の前面に対して上方に摺動する。よって、上部材20Bが水平線24に対して傾斜する角度(図2(B)に示すθ1)が大きくなる。同様に、下部材20Cの後端側面がバンパ表皮14の前面に対して下方に摺動する。よって、下部材20Cが水平線24に対して傾斜する角度(図2(B)に示すθ2)も大きくなる。換言すると、上部材20Bおよび下部材20Cが側面視で開くように変形する。
【0035】
上部材20Bおよび下部材20Cの変形に伴い、正面部材20Aの前方部分は圧縮変形を起こすように成る。よって、この部分に形成された収納部42に収納された検出チューブ22には上下方向に圧縮力が作用する。従って、上部材20Bおよび下部材20Cが衝撃エネルギーにより開くに従い、検出チューブ22に上下方向で圧縮力が作用するように成る。
【0036】
また、歩行者との衝突エネルギーが作用することで、フォーム材20は前後方向にも圧縮されている。よって、衝突時に於いて検出チューブ22には、前後方向から圧縮力が作用するとともに、上下方向からも圧縮力が作用している。よって、衝突の際の進入量と検出チューブ22の圧力が良好に変動するようになり、歩行者衝突を良好に検知できる。
【0037】
更に、上記したように、衝突時に上部材20Bおよび下部材20Cは開きながら潰れるので、フォーム材20のほぼ全体が衝突時に潰れて潰れ残りが少なくなり、より多くの衝突エネルギーをフォーム材20で吸収して歩行者を保護する効果が大きくなる。
【0038】
図4(B)を参照して、係る構成より衝突時の進入量と検出チューブ22の内部圧力との関係を理想状態に近づけることが可能となる。このグラフの横軸は歩行者衝突時における進入量を示し、縦軸は検出チューブの内部圧力を示している。
【0039】
このグラフでは理想状態を点線で示している。理想状態とは進入量と圧力とが比例の関係であり、この関係であればセンサの圧力に基いて歩行者衝突を正確に検出することが可能となる。
【0040】
また、このグラフでは、図4(A)に示す上部材20Bおよび下部材20Cを水平線24と平行にした場合を比較例として一点鎖線で示している。この比較例は、進入量が少ない初期D1では理想状態と同一の状態であるが、その後の中間期間D2では検出チューブ22に作用する荷重が一時的に停滞することで圧力の変動が小さくなる。そして、衝突の末期D3ではフォーム材20の後方部分が殆ど潰れるので、再びフォーム材20の前方部分が潰れ、それに伴い検出チューブ22が圧縮されてその内部圧力が再び上昇する。
【0041】
一方、図4(A)に示す構成のフォーム材20を備えた本形態の圧力変動を実線で示す。本形態では、上記した全期間D1−D3に於いて、波形形状は比較例と類似しているが、期間D2および期間D3では比較例よりも高い圧力を示している。このようになる理由は、本形態では、衝突エネルギーが作用した際に、上部材20Bおよび下部材20Cが上下方向に開くことで、フォーム材20の先端部付近に備えられた検出チューブ22を上下方向に圧縮しているので、検出チューブ22に作用する圧力が高くなるためである。これにより、本形態では検出チューブ22の内部圧力が比較例よりも理想状態に近くなるので、歩行者の衝突を高精度に検出することが可能となる。
【0042】
図5を参照して上記した歩行者衝突検知装置11の他の形態を説明する。図5(A)および図5(B)は夫々が他の形態を示す断面図である。
【0043】
図5(A)を参照して、この図に示すフォーム材20では、上部材20Bと下部材20Cとで水平線24から傾斜する角度が異なっている。具体的には、上部材20Bの中心線21と水平線24とが交差する角度θ1は、下部材20Cの中心線23と水平線24とが交差する角度θ2よりも小さく設定されている。即ち、下部材20Cが上部材20Bよりも水平線24に対して大きく傾斜している。
【0044】
このようにすることで、フォーム材20が備えられる車両が車高の低い車両である場合に、上部材20Bおよび下部材20Cをより均等に圧縮させることが出来る。具体的には、車高が低い車両に歩行者が衝突した場合、衝突エネルギーが作用する方向は水平方向ではなく、下方向に傾斜する方向に作用することになる。この衝突エネルギーが作用する方向を図5(A)では矢印で示している。本形態では、このような場合に、下部材20Cを上部材20Bよりも水平線24に対して大きく傾斜させていることで、上部材20Bおよび下部材20Cをより均一に開かせて圧縮させ、収納部42に収納される検出チューブを上下方向に圧縮させることが可能となる。
【0045】
一方、図2(B)に示すフォーム材20は、上部材20Bと下部材20Cとで水平線から傾斜する角度が略同一であるが、かかる構造は車高の高い乗用車に好適である。その理由は、車高の高い乗用車であると、衝突時にフォーム材20に対して水平に衝突エネルギーが作用し、これにより上部材20Bおよび下部材20Cが好適に開くことで、上記の効果が好適に得られるからである。
【0046】
図5(B)に示すフォーム材20では、上部材20Bおよび下部材20Cの後方の側面が、バンパ支持部材18の前面に対して傾斜している。具体的には、上部材20Bの後方側面は、下方部分が上方部分よりもバンパ支持部材18の前面から離れる傾斜面を呈している。同様に、下部材20Cの後方側面は、上方部分が下方部分よりもバンパ支持部材18の前面から離れる傾斜面を呈している。係る構成により、上部材20Bおよび下部材20Cの後面とバンパ支持部材18の前面とが接触する面積が小さくなるので、両者の摩擦抵抗が小さくなる。従って、衝突時に於いて、上部材20Bは上方に容易に開き、下部材20Cは下方に容易に開くようになる。よって、衝突時に収納部42に収納された検出チューブ22が良好に上下方向に圧縮され、より正確に歩行者衝突を検出することが可能となる。
【0047】
図6の断面図を参照して、他の形態の歩行者衝突検知装置11を説明する。ここではバンパ支持部材18の前面を部分的に後方に窪ませることで段差部25が形成され、この段差部25に、フォーム材20を構成する上部材20Bと下部材20Cの後端部分が当接している。上記したように、衝突時に於いては、上部材20Bは上方に開くように変形し、下部材20Cが下方に開くように変形する。本形態では、その際に、上部材20Bおよび下部材20Cの後端部が段差部25の上限端部に当接することで、これらの部材が過度に開くことが防止されている。これにより、上部材20Bおよび下部材20Cが前後方向に良好に潰れるようになり、衝突エネルギーをフォーム材20で吸収する効果が大きくなる。
【0048】
ここで、上記した各実施例は組み合わせることが可能である。例えば、図5(A)に示したフォーム材20の後端部分を、図5(B)に示すような傾斜面としてもよい。更には、図6に示したバンパ支持部材18の段差部25を、他の図に示すバンパ支持部材18に形成してもよい。
【0049】
上記した本形態は、例えば以下のように変更することができる。
【0050】
図2(B)を参照すると、フォーム材20を構成する上部材20Bおよび下部材20Cは後方に広がるように傾斜して形成されているが、何れか一方のみを傾斜して形成し、他方を水平線24に対して平行に形成してもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 車両
11 歩行者衝突検知装置
12 フロントフード
13 速度センサ
14 バンパ表皮
15 ECU
16 グリル
17 エアバッグ
18 バンパ支持部材
19 圧力センサ
20 フォーム材
20A 正面部材
20B 上部材
20C 下部材
21 中心線
22 検出チューブ
23 中心線
24 水平線
25 段差部
42 収納部
図1
図2
図3
図4
図5
図6