【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年7月2日に、第27回インターフェックスジャパンにて展示 平成26年11月11日に、日刊工業新聞の平成26年11月11日付第12面にて公開 平成26年9月16日に、化学工業日報の平成26年9月16日付第10面にて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記記憶部は、材料の異なる異物に対して、それぞれ、各異物の単位面積当たりの質量と、該異物で発光した蛍光の蛍光輝度との関係を予め求めた関係情報が記憶されており、
前記算出部において、特定の異物の質量は、前記記憶部に記憶された特定の異物に対する関係情報を用いて算出される、請求項2に記載の検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を説明する前に、本願発明者等が、本発明を想到するに至った経緯を説明する。
【0013】
薬品または食品(健康食品も含む)等の分野では、その製造過程において、原薬から中間体、最終製品に至るまで、多くのプロセスが存在する。また、多品種少量生産に対応するため、同じ容器を共用して、当該容器に薬材または食材等を投入して、多品種の薬品を製造する生産ラインが組まれている。
【0014】
このような生産ラインでは、一つの品種の製造が終了した時点で、使用した容器を洗浄するが、もし、容器内に残留物が少量でも残っていると、次製品の工程に、その残留物が混入することになり、次製品の品質に影響を及ぼすおそれがある。特に、薬品に対しては、その管理規定が厳しく定められ、例えば、粉体の容器内への投入量100Kgに対して、洗浄後の容器内の残留物が、10ppm以下になるように規定されている場合もある。
【0015】
このように規定された残留物は、例えば、容器内全面に付着した残留物の膜厚で換算すると、数10μm程度の膜厚に相当するほどの微量なものである。
【0016】
従来、このような微量の残留物の検査は、経験豊富な熟練した人が、目視により検査を行い、勘に基づいて検査を行っていた。しかし、このような検査は、定量的な検査とは言いがたく、人によってバラツキが生じる。また、容器内を目視する作業が必要になるため、髪の毛等の生体由来の異物が、容器内に混入するおそれもある。
【0017】
これに対して、洗浄後の容器内を紙や脱脂綿等で拭き取り、そこに付着した残留物を、質量分析装置を用いて分析して、残量物の定量的な検査を行う、いわゆる抜き取り検査がある。
【0018】
しかしながら、抜き取り検査では、容器内に付着した残留物の位置にバラツキがあるため、拭き取る箇所によって測定値が変動するため、容器内に付着した残留物の総量を推定しても精度は非常に悪い。また、この方法では測定に時間を要し、生産効率を大きく低下させてしまう。
【0019】
本願発明者等は、容器内に付着した微小な異物や残留物(以下、単に「異物」という)でも、異物の付着量を定量的に検出することができる検査方法を検討した結果、次のような知見を得た。
【0020】
すなわち、容器の内面に向けて照射する光の波長と、その光の照射によって、異物が反応して放射する光の波長が変われば、照射する光が容器の内面で多重反射しても、その光の波長成分を含まない波長の光を検出することによって、照射光の多重反射による影響を受けずに、微小な異物を検出することが可能になる。
【0021】
本願発明者等は、薬品または食品(健康食品も含む)等を構成する成分は、有機物を多く含み、当該有機物は、紫外光を照射することによって、可視光の蛍光を発光する特性を有することに着目した。すなわち、容器に付着した異物が、有機物等の蛍光を発光する材料で構成されている場合には、容器の内面に向けて、紫外線等の励起光を照射し、励起光の照射によって異物で発光した可視光等の蛍光を検出することによって、励起光の多重反射の影響を受けずに、容器に付着した微小な異物を検出することが可能となる。ただし、容器自身が、励起光の照射によって蛍光を発光する材料で構成されていると、容器で発光した蛍光量が、異物で発光した蛍光量よりも遙かに大きいため、微小な異物の検出は困難になる。従って、容器は、励起光の照射によって蛍光を発光しない材料で構成されていることが好ましい。
【0022】
ただし、このような手段により異物の存在を良好に検出することは可能になったが、容器に付着した異物の定量的な検査はできない。そこで、本願発明者等は、種々の検討を行った結果、容器に付着した異物の濃度(単位面積当たりの質量)と、異物で発光した蛍光の蛍光輝度とが、一定の相関関係を有することを見出した。すなわち、異物で発光した蛍光を撮影した蛍光像から、容器に付着した異物の付着面積及び蛍光輝度をそれぞれ測定することができれば、容器に付着した異物の質量を、異物の濃度(単位面積当たりの質量)と蛍光輝度との相関関係を用いて、一義的に算出することが可能となる。
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態における検査装置の構成を模式的に示した図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態における検査装置1は、内側空間を有する物体20の内面に付着した異物を検査する検査装置である。ここで、「内側空間を有する物体」とは、少なくとも互いに対向して配置された内面、及び/又は互いに隣接して配置された内面を有し、該内面の内側に内側空間が形成された物体であって、多重反射をするような内側空間を有する物体をいう。「内側空間を有する物体」は、有底の箱体又は筒状体からなる容器の他、パイプ、溝体(チャネル)、山形体(アングル)等を含む。以下の説明では、「内側空間を有する物体」を、単に「容器」と呼ぶ。
【0026】
図1に示すように、検査装置1は、容器20の内面に向けて励起光を照射する光源11と、励起光の照射によって異物で発光した蛍光の蛍光像を撮影する撮像部10と、撮像部10で撮影した蛍光像から、容器20の内面に付着した異物を検出する検出部13とを備えている。
【0027】
光源11及び撮像部10は、それぞれ容器20の内側空間に配置されており、光源11から照射された励起光は、容器20の内面20Aの領域R
1を照射する。領域R
1内の内面20Aに付着した異物X
1から、励起光の照射によって発光した蛍光が、撮像部10に入射し、異物X
1で発光した蛍光の蛍光像が撮影される。
【0028】
なお、本実施形態において、少なくとも容器20の内面は、励起光の照射によって蛍光を発光しない材料で構成されている。例えば、容器20が金属で構成されているもの、あるいは、容器20が樹脂で構成されている場合には、その内面に金属層が形成されているものを含む。
【0029】
また、容器20の内面に付着した異物X
1は、励起光の照射によって蛍光を発光する材料を含む。例えば、異物X
1は、有機物を含むもの、あるいは、有機物以外でも蛍光するもの(例えば、半導体材料の一部や、鉱物の一部など)を含む。
【0030】
検出部13は、撮像部10で撮影した蛍光像から、容器20の内面に付着した異物の付着位置、容器20の内面に付着した異物の付着面積S、及び異物で発光した蛍光の蛍光輝度Qをそれぞれ測定する機能を備えている。
【0031】
さらに、検査装置1は、記憶部15と算出部14とを備えている。記憶部15では、異物の単位面積当たりの質量(M/S)と、異物で発光した蛍光の蛍光輝度Qとの関係を予め求めた関係情報が記憶されている。また、算出部14では、検出部13で測定された特定の付着位置における異物の質量が、記憶部15に記憶された関係情報に基づいて、検出部13で測定された異物の付着面積S及び蛍光輝度Qから算出される。
【0032】
図2は、蛍光を発光する材料の単位面積当たりの質量(M/S)と、その材料で発光した蛍光の蛍光輝度Qとの関係を示したグラフである。図中のA、B、Cで示した曲線は、それぞれ、異なる材料に対して求められた単位面積当たりの質量(M/S)と蛍光輝度Qとの関係を示す。
【0033】
図3(a)〜(d)は、単位面積当たりの質量(M/S)と蛍光輝度Qとの関係を求める方法の一例を示した図である。
【0034】
図3(a)〜(d)に示すように、
図1に示した容器20の内面20Aに、測定する材料の試料30を付着させ、付着した試料30に紫外線を照射して、試料30で発光した蛍光の蛍光輝度Q及び試料の面積Sを測定する。そして、容器20の内面20Aに付着させる試料30の量(質量M)を変えて、それぞれの量における試料30の蛍光輝度Q及び試料の面積Sを測定する。試料30の単位面積当たりの質量(M/S)は、容器20の内面20Aに付着した試料の質量Mを試料の30面積Sで除して求められる。
【0035】
図3(a)〜(c)に示すように、測定容器20に入れる試料30の量(質量M)を増やしていくと、試料30での蛍光輝度Qも増加し、一次的な近似としては、
図2に示したように、単位面積当たりの質量(M/S)と蛍光輝度Qとは、ほぼ線形な関係を示す。
【0036】
なお、
図2に示した単位面積当たりの質量(M/S)と蛍光輝度Qとの関係は、一例を示したしたもので、非線形な関係を有する場合もある。
【0037】
従って、
図2に示すように、単位面積当たりの質量(M/S)と蛍光輝度Qとの関係が、ほぼ線形な関係を示す領域を用いれば、検出部13で測定した異物の蛍光輝度Qから、異物の単位面積当たりの質量(M/S)を、一義的に求めることができる。そして、この求めた単位面積当たりの質量(M/S)に、検出部13で測定した異物の付着面積Sを乗ずることによって、容器20に付着した異物の質量Mを、定量的に求めることができる。
【0038】
また、
図2に示したように、単位面積当たりの質量(M/S)と蛍光輝度Qとの関係は、材料毎に異なる。そのため、記憶部15には、材料の異なる異物Xiに対して、それぞれ、各異物Xiの単位面積当たりの質量(Mi/S)と、当該異物Xiで発光した蛍光の蛍光輝度Qiとの関係を予め求めた関係情報を記憶しておく。これにより、算出部14では、特定の異物Xiの質量Miを、記憶部15に記憶された特定の異物Xiに対する関係情報を用いて算出することができる。
【0039】
本実施形態における検査装置によれば、励起光の照射によって異物で発光した蛍光の蛍光像を撮影することによって、容器内に付着した微小な異物や残留物でも、感度よく検出することができる。また、容器内に付着した微小な異物や残留物の質量を、予め求めた異物の単位面積当たりの質量(M/S)と、異物で発光した蛍光の蛍光輝度Qとの関係に基づいて、定量的に算出することができる。
【0040】
(本発明の他の実施形態)
上述したように、本発明における検査装置は、容器内に付着した微小な異物や残留物でも、異物や残留物の付着量を定量的に検出することができる。従って、この検出装置を用いて、同じ容器を共用して多品種の薬品または食品(健康食品も含む)を製造する生産ラインにおいて、洗浄後の容器の内面に付着した残留物の微量な付着量を定量的に検出することができる。これにより、検出した残留物の付着量(質量)を、予め設定された基準値と比較することによって、洗浄の良否を判定することができる。
【0041】
図4は、本発明の他の実施形態における生産管理方法の工程を示したフローチャートである。
【0042】
本実施形態における生産管理方法は、同じ容器を共用して多品種の薬品または食品(以下、単に「薬品等」という)を製造する生産ラインに適用され、
図4に示すように、前ロットの薬品の製造が終了した後(ステップS1)、次ロットの薬品等を製造する前に、容器を洗浄する工程(ステップS2)と、その後、容器の内面に付着した、前ロットの薬品等の残留物を検査する工程(ステップS3)とを含む。
【0043】
残留物を検査する工程は、本実施形態における検査装置1を用いて行うことができる。以下、再び、
図1を参照しながら、残留物の検査工程について説明をする。なお、以下の説明において、図中の容器20は、薬品等を製造する生産ラインで使用される容器とする。また、容器20に付着した異物は、洗浄後の容器20に残った残留物とする。また、少なくとも容器20の内面は、励起光の照射によって蛍光を発光しない材料で構成されている。
【0044】
光源11から、容器20の内面に向けて励起光を照射し、励起光の照射により、残留物で発光した蛍光の蛍光像を、撮像部10で撮影する。次に、撮像部10で撮影した蛍光像から、容器20の内面に付着した残留物の付着位置、容器20の内面に付着した残留物の付着面積S、及び残留物で発光した蛍光の蛍光輝度Qをそれぞれ測定する。測定された特定の付着位置における残留物の質量Mを、予め求めておいた残留物の単位面積当たりの質量(M/S)と、残留物で発光した蛍光の蛍光輝度Qとの関係を示す関係情報に基づいて、残留物の付着面積S及び蛍光輝度Qから算出する。
【0045】
なお、容器20内には、複数の位置で、残留物が付着している場合は、容器20内に付着した残留物の総量は、容器20全体の各付着位置における残留物の質量の総和として算出される。
【0046】
残留物の定量的な検査を行った後、
図4に示すように、残留物の質量の総和と、予め設定された基準値とを比較し、洗浄の良否を判定する(ステップS4)。もし、残留物の質量の総和が、予め設定された基準値よりも大きければ、洗浄不良として、再度、容器20の洗浄工程(ステップS2)をやり直す。もし、残留物の質量の総和が、予め設定された基準値よりも小さければ、次ロットの薬品等の製造を開始する(ステップS5)。
【0047】
本実施形態における生産管理方法によれば、前ロットの薬品等を製造した後、次ロットの薬品等を製造する前に、前ロットの薬品等の製造に使用した容器を洗浄した後に、容器内に付着して残った残留物の総量を定量的に検出することができるため、容器の洗浄工程の良否を、的確に判定することができる。これにより、次ロットの薬品等の製造工程に、前ロットの薬品等で使用した材料が混入するのを防止することができ、品質に優れた薬品等の生産管理を行うことができる。
【0048】
また、本実施形態における生産管理方法は、容器内に付着して残った残留物の総量を、所定の基準値と比較するような判定だけでなく、例えば、1つの残留物の濃度や付着面積を、所定の基準値と比較するような判定も適用することができる。
【0049】
また、本実施形態では、容器の内面に付着した残留物の付着位置も検出することができるため、洗浄工程で、残留物の付着頻度が高い位置を、検査データから抽出することができる。これにより、洗浄工程に使用する洗浄機を改善する指標にすることができる。
【0050】
また、薬品等の種類によって、残留物の付着位置や、付着量が違う場合には、そのような特性を検査データから抽出できるため、薬品等の種類によって、洗浄機の洗浄条件を変更する指標にすることができる。
【0051】
また、生産ラインで製造される薬品等の種類や、ロット番号、使用した容器の番号、洗浄条件等と、残留物の検査結果とを、検査データとして蓄積することによって、安定した品質の管理や、不良が発生した場合の分析を行うことができる。
[検査装置の具体的な構成]
再び、
図1を参照しながら、本発明の検査装置の具体的な構成の一例を説明する。
【0052】
図1に示すように、検査装置1は、光源11、撮像部10、検出部13とを備えている。光源11は、容器20の内面20Aに設定した検査対象領域R
1に向けて、紫外光(励起光)を照射する。光源11は、紫外光を照射するLEDやレーザの他、紫外光成分の光を放出する水銀ランプやハロゲン照明などを用いることができる。また、光源11は、紫外光を通過させるフィルタ(不図示)を備えている。ここで、フィルタは、励起成分の波長の光を効率よく透過しつつ、撮像部10で受光する蛍光成分の光を減衰させるものである。
【0053】
例えば、検出対象となる異物Xが、300〜400nmの励起光が照射されると、500〜600nmの範囲の蛍光を発光する場合、光源11として、ピーク波長が300〜400nmのUV−LEDを用いる。また、フィルタとして、300〜400nmの帯域の波長の光を通過させ、それ以外の帯域の波長の光を減衰させる、いわゆるバンドパスフィルタを用いる。あるいは、450nm以下の波長を透過させ、450nm以上の波長の光を減衰させる、いわゆるショートパスフィルタを用いても良い。そうすることで、後述する撮像部10での撮影の妨げとなる不要な波長の光をカットすることができる。
【0054】
撮像部10は、検査対象領域R
1を撮影するものである。撮像部10は、検査対象物である異物Xで発光する蛍光発光成分を2次元画像として取得する。例えば、撮像部10は、検査対象物である異物で発光する蛍光発光成分の光の波長を受光感度に含む撮像素子を備えた撮像カメラを用いることができる。撮像部10は、図示しないレンズとフィルタを備え、容器20の内面20Aに設定した検査対象領域R
1と正対して配置される。レンズは、撮像カメラに検査対象領域R
1の像を結像させるもので、広角レンズを用いることで、一度に幅広い範囲を撮影することができる。また、フィルタは、光源11から照射される光の波長を減衰させつつ、異物Xで発光した蛍光発光成分の光の波長を透過させるものである。フィルタとして、透明材料や、レンズの表面にコーティングを施したものを用いることができる。なお、撮影中は、容器20の開口部21は蓋で閉じられ、外部から、余計な光が容器20内に入らないようにしている。あるいは、検査エリアや装置全体をカバーなどで遮光しておいてもよい。
【0055】
例えば、検出対象となる異物Xが、300〜400nmの励起光が照射されると、500〜600nmの範囲の蛍光を発光する場合、撮像素子として、300〜1000nmの波長の光に感度を有するCCDやCMOSを用いる。また、フィルタとして、500〜600nmの帯域の波長の光を通過させ、それ以外の帯域の波長の光を減衰させる、いわゆるバンドパスフィルタを用いる。あるいは、450nm以上の波長の光を透過させ、450nm以下の波長の光を減衰させる、いわゆるロングパスフィルタを用いても良い。
【0056】
検出部13は、撮像部10で撮影した画像に基づいて、検査対象領域R
1の異物Xを検出するものである。検出部13は、画像処理装置とその実行プログラムにより構成され、撮像部10で撮影した画像を入力し、所定の画像処理が行われる。これにより、容器20の内面20Aに付着した異物Xの付着位置、容器20の内面20Aに付着した異物Xの付着面積、及び異物Xで発光した蛍光の蛍光輝度がそれぞれ測定される。
【0057】
記憶部15は、異物Xの単位面積当たりの質量と、異物Xで発光した蛍光の蛍光輝度との関係を予め求めた関係情報を記憶している。
【0058】
算出部14は、検出部13で検出した異物Xの質量を、記憶部15に記憶された関係情報に基づいて、検出部13で測定された異物の付着面積及び蛍光輝度から算出する。
【0059】
光源11及び撮像部10を連結する連結部材12は、摺動部を有さない状態にしておくことが好ましい。もしくは、光源11及び撮像部10を連結する連結部材に摺動部があったとしても、当該摺動部を発塵防止用のカバーで覆ったり、発塵防止用のコーティング処理を施すなどして、当該摺動部が露出しない状態にしておくことが好ましい。そうすることで、光源11及び撮像部10を連結する連結部材を、露出した摺動部を有さない状態で、容器20の内方に配置することができる。
【0060】
検査対象領域は、1つの内面を1つの撮像部10で撮影する構成に限らず、複数の内面を同時に撮影できるように複数の撮像部10を配置してもよい。また、1つの内面の面積が大きく、撮像カメラの分解能を高くすることが難しい場合、検査対象領域を、1つの内面でいくつかの領域に分割してもよい。この場合、
図5に示すように、人手により、あるいは、アクチュエータなどの位置決め機構を用いて、容器20内の光源11及び撮像部10の位置を変えて、
図1で示した検査対象領域R
1とは異なる検査対象領域R
2を撮影する。容器20の内面20Aとは別の内面についても、容器20内の光源11及び撮像部10の位置及び向きを変えて、それぞれ分割した検査対象領域を撮影することにより、容器20の内面に付着した異物を検査することができる。
【0061】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態では、励起光として紫外光を用いたが、検査する異物が、可視光によって蛍光を発光するものであれば、可視光を励起光として用いてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、励起光の照射によって、異物で発光した蛍光の蛍光像を撮影したが、検査対象物が蛍光発光の特性を有さない場合であっても、光エネルギーの照射によって、検査対象物でエネルギー変換されて放出エネルギーを放出するものであれば、本発明と同様の効果を発揮することができる。例えば、光エネルギーを照射することによって、熱エネルギーが放出される検査対象物についても、本発明の検査装置により、当該検査対象物を検出することができる。この場合、熱エネルギーを検出する検出部として、例えば、サーモパイルや熱電対アレイなどを用いることができる。このような検査対象物としては、異物の他に、内面に生じた傷、剥離、変質等も含むことができる。
【0064】
上記の検査装置は、容器の内面に向けて光エネルギーを照射する光源と、光エネルギーの照射によって検査対象物でエネルギー変換されて放出された放出エネルギーを検出する検出部と、検出部において検出された放出エネルギーの放出位置、及び放出エネルギーに基づいて、検査対象物の状態を検査する検査部とを備えた構成をなす。
【0065】
また、上記実施形態では、異物の単位面積当たりの質量(M/S)と蛍光輝度Qとが、ほぼ線形な関係を例示したが、必ずしも、このような関係に限らず、非線形な関係にも適用することができる。その関係づけをする手段として、例えば、蛍光輝度Q、及び異物の単位面積当たりの質量(M/S)の複数のデータから、近似式(関係式)を求め、この近似式を用いて、異物の質量Mを、異物の付着面積S及び蛍光輝度Qから算出してもよい。あるいは、蛍光輝度Qと異物の単位面積当たりの質量(M/S)との関係を、ルックアップテーブルとして、記憶部15に記憶しておき、このルックアップテーブルを用いて、異物の質量Mを、異物の付着面積S及び蛍光輝度Qから求めてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、光源11及び撮像部10を、容器20内に配置したが、容器20の内面20Aの上部を検査する場合には、光源11及び撮像部10を、容器20の外に配置することもある。あるいは、容器20の底部や、容器20の内面全体を検出する場合には、光源11及び撮像部10を、容器20の上方に配置してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、容器20の内面20Aを、励起光の照射によって蛍光を発光しない材料で構成するようにしたが、これに限らず、励起光の照射によって僅かな蛍光を発光する材料で構成していても、本発明の効果は発揮される。また、異物は、励起光の照射によって強く蛍光を発光する材料ほど、本発明の効果をより発揮する。