特許第6408356号(P6408356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6408356分散型電源システムの単独運転判定方法、分散型電源システム、及びパワーコンディショナ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408356
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】分散型電源システムの単独運転判定方法、分散型電源システム、及びパワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20181004BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20181004BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
   H02J3/38 110
   H02M7/48 R
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-235763(P2014-235763)
(22)【出願日】2014年11月20日
(65)【公開番号】特開2016-100973(P2016-100973A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2017年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓雄
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−207750(JP,A)
【文献】 特開2012−075245(JP,A)
【文献】 特開2011−167000(JP,A)
【文献】 特表2014−526877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−5/00
H02M7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源と連系して電力を供給する系統連系運転を実行可能であり、系統電源の停止に伴う単独運転が検知されると系統電源と解列される分散型電源システムの単独運転判定方法において、
系統電源の電圧の周波数を検出する周波数検出ステップと、
前記周波数検出ステップで検出された検出周波数に基づいた判定値が、所定の判定範囲に含まれていない場合に、前記分散型電源システムによる単独運転が行われていると判定する単独運転判定ステップと、
高周波成分と低周波成分とに基づいて算出された前記検出周波数の変動の度合いを表す周波数変動度を検出する周波数変動度検出ステップと、
検出された前記周波数変動度に基づいて、前記単独運転判定ステップにおける前記判定範囲を変更する判定範囲変更ステップと、
を備える分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項2】
前記周波数変動度検出ステップにて検出された前記周波数変動度に基づき前記判定範囲の変動幅を設定する変動幅設定ステップを備え、
前記判定範囲変更ステップでは、前記変動幅設定ステップにて設定された前記変動幅に応じて前記判定範囲を変更する
ことを特徴とする請求項1記載の分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項3】
前記周波数変動度検出ステップでは、前記検出周波数の高周波成分と低周波成分とに基づき前記周波数変動度を検出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項4】
前記判定範囲変更ステップでは、前記判定範囲の変更量に対して上限値又は下限値の少なくとも一方を設けて前記判定範囲を変更する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項5】
前記判定範囲変更ステップでは、前記判定範囲の伸縮を実施することで前記判定範囲の変更を行う
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項6】
前記単独運転判定ステップでは、前記検出周波数の主成分に基づく前記判定値が前記判定範囲に含まれていない場合に前記単独運転を判定する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項7】
前記判定範囲変更ステップでは、前記周波数変動度が変動する変動要因を検知し、この変動要因に合わせて前記判定範囲を変更する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項8】
前記判定範囲変更ステップでは、前記周波数変動の発生状況に応じた前記判定範囲の変更を学習し、
単独運転判定ステップでは、前記判定範囲変更ステップでの学習により予め変更された前記判定範囲に基づき単独運転を判定する
ことを特徴とする請求項7に記載の分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項9】
前記単独運転判定ステップでは、前記周波数検出ステップにて検出された前記検出周波数に基づいて前記判定範囲変更ステップにて変更された前記判定範囲を、当該周波数が検出されてから所定の待機時間が経過した後に用いる
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の分散型電源システムの単独運転判定方法。
【請求項10】
系統電源と連系して電力を供給する系統連系運転を実行可能であり、系統電源の停止に伴う単独運転が検知されると系統電源と解列される分散型電源システムにおいて、
系統電源の電圧の周波数を検出する周波数検出部と、
前記周波数検出部で検出された検出周波数に基づいた判定値が、所定の判定範囲に含まれていない場合に、前記単独運転が行われていると判定する単独運転判定部と、
高周波成分と低周波成分とに基づいて算出された前記検出周波数の変動の度合いを表す周波数変動度を検出する周波数変動度検出部と、
検出された前記周波数変動度に基づいて、前記単独運転判定部における前記判定範囲を変更する判定範囲変更部と、
を備える分散型電源システム。
【請求項11】
系統電源と連系して電力を供給する系統連系運転を実行可能であり、系統電源の停止に伴う単独運転が検知されると系統電源と解列される分散型電源システムの出力を制御するパワーコンディショナにおいて、
系統電源の電圧の周波数を検出する周波数検出部と、
前記周波数検出部で検出された検出周波数に基づいた判定値が、所定の判定範囲に含まれていない場合に、前記分散型電源システムによる単独運転が行われていると判定する単独運転判定部と、
高周波成分と低周波成分とに基づいて算出された前記検出周波数の変動の度合いを表す周波数変動度を検出する周波数変動度検出部と、
検出された前記周波数変動度に基づいて、前記単独運転判定部における前記判定範囲を変更する判定範囲変更部と、
を備えるパワーコンディショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型電源システムの単独運転判定方法、分散型電源システム、及びパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、分散型電源システムの単独運転判定方法に係る技術が記載されている。このシステムは、分散型電源装置と、系統電源と、分散型電源システムの単独運転を能動検出手段及び受動検出手段によって判定するパワーコンディショナと、を備えている。このシステムでは、能動検出手段及び受動検出手段によって、停電時に系統電源が停止して分散型電源システムが単独運転を行っていることを判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−77612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、系統電源の周波数は、例えば、発電所の動作上の乱れや、多くの電力を使用する近隣工場における負荷変動や、低圧配電線のインピーダンスの問題や、柱上トランスの容量の問題等の原因によって変動する場合がある。従って、このような原因によって周波数が大きく変動した場合に、上述のシステムでは、実際は停電等が起こっていないにも関わらず、分散型電源システムが単独運転を行っていると誤って判定される場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、分散型電源システムによる単独運転を精度良く判定できる分散型電源システムの単独運転判定方法、分散型電源システム、及びパワーコンディショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法は、系統電源と連系して電力を供給する系統連系運転を実行可能であり、系統電源の停止に伴う単独運転が検知されると系統電源と解列される分散型電源システムの単独運転判定方法において、系統電源の電圧の周波数を検出する周波数検出ステップと、周波数検出ステップで検出された検出周波数に基づいた判定値が、所定の判定範囲に含まれていない場合に、分散型電源システムによる単独運転が行われていると判定する単独運転判定ステップと、高周波成分と低周波成分とに基づいて算出された検出周波数の変動の度合いを表す周波数変動度を検出する周波数変動度検出ステップと、検出された周波数変動度に基づいて、単独運転判定ステップにおける判定範囲を変更する判定範囲変更ステップと、を備える。
【0007】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法は、周波数変動度検出ステップにて検出された周波数変動度に基づき判定範囲の変動幅を設定する変動幅設定ステップを備え、判定範囲変更ステップでは、変動幅設定ステップにて設定された変動幅に応じて判定範囲を変更する。
【0008】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法において、周波数変動度検出ステップでは、検出周波数の高周波成分と低周波成分とに基づき周波数変動度を検出する。
【0009】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法において、判定範囲変更ステップでは、判定範囲の変更量に対して上限値又は下限値の少なくとも一方を設けて判定範囲を変更する。
【0010】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法において、判定範囲変更ステップでは、判定範囲の伸縮を実施することで判定範囲の変更を行う。
【0011】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法において、単独運転判定ステップでは、検出周波数の主成分に基づく判定値が判定範囲に含まれていない場合に単独運転を判定する。
【0012】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法において、判定範囲変更ステップでは、周波数変動度が変動する変動要因を検知し、この変動要因に合わせて前記判定範囲を変更する。
【0013】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法において、判定範囲変更ステップでは、周波数変動の発生状況に応じた判定範囲の変更を学習し、単独運転判定ステップでは、判定範囲変更ステップでの学習により予め変更された判定範囲に基づき単独運転を判定する。
【0014】
本発明に係る分散型電源システムの単独運転判定方法において、単独運転判定ステップでは、周波数検出ステップにて検出された検出周波数に基づいて判定範囲変更ステップにて変更された判定範囲を、当該周波数が検出されてから所定の待機時間が経過した後に用いる。
【0015】
本発明に係る分散型電源システムは、系統電源と連系して電力を供給する系統連系運転を実行可能であり、系統電源の停止に伴う単独運転が検知されると系統電源と解列される分散型電源システムにおいて、系統電源の電圧の周波数を検出する周波数検出部と、周波数検出部で検出された検出周波数に基づいた判定値が、所定の判定範囲に含まれていない場合に、単独運転が行われていると判定する単独運転判定部と、高周波成分と低周波成分とに基づいて算出された検出周波数の変動の度合いを表す周波数変動度を検出する周波数変動度検出部と、検出された周波数変動度に基づいて、単独運転判定部における判定範囲を変更する判定範囲変更部と、を備える。
【0016】
本発明に係るパワーコンディショナは、系統電源と連系して電力を供給する系統連系運転を実行可能であり、系統電源の停止に伴う単独運転が検知されると系統電源と解列される分散型電源システムの出力を制御するパワーコンディショナにおいて、系統電源の電圧の周波数を検出する周波数検出部と、周波数検出部で検出された検出周波数に基づいた判定値が、所定の判定範囲に含まれていない場合に、分散型電源システムによる単独運転が行われていると判定する単独運転判定部と、高周波成分と低周波成分とに基づいて算出された検出周波数の変動の度合いを表す周波数変動度を検出する周波数変動度検出部と、検
出された周波数変動度に基づいて、単独運転判定部における判定範囲を変更する判定範囲変更部と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、分散型電源システムによる単独運転が行われていることを精度良く判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る分散型電源システム及びパワーコンディショナのブロック構成図である。
図2】各状況における時間の経過と周波数の変動との関係を示すグラフである。
図3】判定範囲の閾値と周波数変動度との関係を示すグラフである。
図4】本発明の実施形態に係る分散型電源システム及びパワーコンディショナの制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5図4に示す判定範囲変更制御の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図6】判定範囲変更制御のタイムラインを示す図である。
図7】判定範囲の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る分散型電源システム100及びパワーコンディショナのブロック構成図である。分散型電源システム100は、発電部である分散型電源装置1と系統電源3とが連系して負荷4へ電力を供給するシステムである。図1に示すように、分散型電源システム100は、分散型電源装置1と、パワーコンディショナ2と、を備えている。
【0021】
分散型電源装置1は、発電を行う機能を有する電源である。分散型電源装置1として、例えば、燃料電池、太陽電池、蓄電池などの分散型電源用発電装置等が挙げられる。また、分散型電源装置1として燃料電池を適用する場合、燃料電池の種類は特に限定されず、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)、リン酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid Fuel Cell)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel)、及びその他の種類を採用することができる。
【0022】
本実施形態では、分散型電源システム100は、系統電源3と連系して負荷4へ電力を供給する系統連系運転を実行可能である。また、分散型電源システム100は、系統電源3の電圧の喪失時(例えば、系統の不具合、保守点検の作業、火災などの緊急時などにより系統電源3の電力供給が停止される停電等)に系統電路L1に充電する単独運転が発生する。従って、分散型電源システム100の単独運転が判定された時には、分散型電源システム100は系統電源3から解列される必要がある。分散型電源装置1は、パワーコンディショナ2を介して、電力供給ラインL0及び系統電路L1によって負荷4に接続される。系統電源3は、パワーコンディショナ2の外部において、系統電路L1に接続される。
【0023】
パワーコンディショナ2は、外部(負荷4)での電力使用状態に合わせて、分散型電源装置1からの電力を変換及び調整して負荷4へ供給する。パワーコンディショナ2は、変換部11と、系統連系切替部12と、計測部13と、単独運転監視部14と、系統連系保護部15と、記憶部16と、を備える。
【0024】
変換部11は、分散型電源装置1の出力の電圧を変換する処理や、直流電力を交流電力へ変換する処理を行う。変換部11は、分散型電源装置1からの直流電力を昇圧するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータで昇圧された直流電力を交流電力に変換するDC/ACインバータと、を備える。変換部11は、一端が分散型電源装置1に接続され他端が系統連系切替部12を介して系統電路L1に接続される電力供給ラインL0に設けられる。
【0025】
系統連系切替部12は、分散型電源システム100及び系統電源3の連系と解列を切り替える。系統連系切替部12は、例えばリレー、ブレーカー等によって構成される。系統連系切替部12は、変換部11の下流側である電力供給ラインL0の他端と、系統電路L1の一端とを接続可能に設けられている。系統連系切替部12は、系統連系保護部15からの信号を受信することによって切替が制御される。
【0026】
計測部13は、系統電路L1において系統連系切替部12に接続される一端と系統電源3の接続部との間から引き出されて単独運転監視部14と接続される監視ラインL3に設けられ、系統電路L1に発生している電圧に関する値を計測する。計測部13は、単独運転監視部14において系統電路L1に発生している電圧の周波数を導き出すことができる値であればどのような値を計測してもよく、例えば、分散型電源システム100の中の電圧情報を通信する通信手段による周波数情報を計測してもよい。計測部13は、監視ラインL3を介して計測結果を単独運転監視部14へ送信する。なお、計測部13の計測位置は、図1に示す部分に限定されず、単独運転検出の方式に合わせて適宜変更してよい。
【0027】
単独運転監視部14は、分散型電源システム100が単独運転を行っているかについて監視する。単独運転監視部14は、単独運転であることを検出した場合、信号ラインL4を介して系統連系保護部15に検出結果を送信する。単独運転監視部14は、周波数検出部21と、単独運転判定部22と、周波数変動度検出部23と、変動幅設定部24と、判定範囲変更部25と、記憶部16とを備える。
【0028】
周波数検出部21は、系統電路L1に発生している電圧の周波数を検出する。周波数検出部21は、計測部13から送信された系統電路L1に発生している電圧に関する値の計測結果に基づいて該周波数を検出する。なお、周波数検出部21は、該供給電力に関する値の成分分析を行い尖頭値、準尖頭値及び平均値などを析出し、尖頭値となる主成分の周波数を検出すると共に、主成分の周波数に対して高周波数側及び低周波数側におけるノイズ領域の尖頭値及び準尖頭値を検出することができる。また、周波数検出部21は、検出した周波数を時間データと共に記憶部16へ送信して記憶させる。
【0029】
単独運転判定部22は、周波数検出部21で検出された検出周波数の分析に基づく主成分の周波数が、所定の判定範囲に含まれていない場合に、停電等により系統電源3の電力供給が停止しており分散型電源システム100による単独運転が行われていると判定する。単独運転判定部22による判定方法の種類は特に限定されず、公知のあらゆる方法を用いてよい。例えば、電圧位相跳躍検出方式、周波数変化率検出方式、3次高調波電圧歪急増検出方式などの受動方式が採用されてよく、周波数シフト方式、無効電力変動方式、有効電力変動方式、負荷変動方式などの能動方式が採用されてよい。また、複数の検出方式を組み合わせてもよい。判定値は、検出周波数と相関性を有するパラメータであり、採用される判定方式に基づいてあらゆるパラメータが採用されてよい。判定範囲は、判定値に対して設定される所定の閾値によって定められる範囲である。単独運転判定部22は、判定値である主成分の周波数が判定範囲内である場合は単独運転ではないと判定し、判定値が判定範囲の下限値を下回っている場合、または判定範囲の上限値を上回っている場合に単独運転であると判定する。
【0030】
図7に示すように、単独運転判定部22は、検出周波数を判定値としており、所定の周波数範囲を判定範囲としている。図7に示すように、判定範囲DAが、該当地域の電力会社による系統電源3の基準周波数(ここでは50Hz)に対して閾値αが設定され、「50±αHz」の周波数範囲として設定される。なお、当該例では、基準周波数に対する低周波側の閾値と高周波側の閾値の絶対値が同一の値(α)であるが、高周波側と低周波側で閾値の絶対値が異なっていてよい。また、単独運転判定部22は、判定値である検出周波数の主成分周波数が判定範囲DAに含まれていない場合に単独運転を判定する。なお、単独運転判定部22は、検出周波数を演算等により他のパラメータに変換して判定値として採用してよい。
【0031】
周波数変動度検出部23は、周波数検出部21によって検出された検出周波数の変動の度合いを表す周波数変動度を検出する。ここで、「周波数変動度」は、検出周波数の変動の度合い、すなわち乱れ度合い、散らばり度合い、ばらつき度合い等を示す指標であれば、あらゆる指標を採用してよい。例えば、標準偏差、分散、変動係数、確率分布、移動平均、指数平均等の統計学的処理によって算出される指標を周波数変動度として検出してよい。ここで、周波数変動度検出部23は、検出周波数の高周波成分と低周波成分とに基づき周波数変動度を検出する。具体的には、図7に示す例では、検出周波数のうち、より高周波側及び低周波数側での準尖頭値となる高周波ノイズ成分NH及び低周波ノイズ成分NLに基づいて高周波ノイズ成分NHと低周波ノイズ成分NLとの差分や基準周波数(50Hz)に対する各ノイズ成分NH,NLの各偏差などの周波数変動度が検出されてよい。
【0032】
変動幅設定部24は、周波数変動度検出部23にて検出された周波数変動度に基づき判定範囲の変動幅を設定する。変動幅設定部24は、周波数変動度が大きい程、単独運転判定部22で用いられる判定範囲の判定範囲の変動幅を大きく設定してよく、周波数変動度が小さい程、判定範囲の変動幅を小さく設定してよい。
【0033】
判定範囲変更部25は、変動幅設定部24で設定された変動幅に基づいて、単独運転判定部22における判定範囲を変更する。そして、単独運転監視部14は、判定範囲変更部25にて変更された判定範囲を用いて単独運転判定部22が単独運転を検出(検知)すると、系統連系保護部15に検出結果を送信する。
【0034】
ここで、図2及び図3を参照して、判定範囲変更部25の動作の一例について説明する。停電によって系統電源3による電力供給が停止した場合、負荷4と分散型電源システム100の電力バランスが崩れて周波数シフトが生じる。このとき、系統電路L1に発生している電圧の周波数は、増加か減少の一方向に変位する。従って、系統電源3の電力供給が停止して分散型電源システム100が単独運転の状態になった場合は、図2(a)の破線のグラフで示すように計測部13にて計測される電圧値は、時間の経過と共に変位して、図2(d)の破線のグラフで示すように時間の経過と共に徐々に電圧周波数(系統電路L1に発生する電圧の周波数)が増加するか、図2(b)の一点鎖線のグラフで示すように電圧値が時間経過と共に変位して、図2(d)の一点鎖線のグラフで示すように時間の経過と共に徐々に電圧周波数が低下する。すなわち、系統電源3による電力供給が実際に停止する場合は、電圧周波数は徐々に(緩やかに)高周波側又は低周波側の一方に変位する。一方、発電所の動作上の乱れや、多くの電力を使用する近隣工場における負荷変動や、低圧配電線のインピーダンスの問題や、柱上トランスの容量の問題等により、これらが系統電源3の供給電力に影響を与えて系統電源3の系統周波数が乱れる場合がある。この場合、図2(c)の二点鎖線のグラフで示すように電圧値が時間経過と共に変位して、図2(d)の二点鎖線のグラフで示すように、電圧周波数は安定せずに周波数のばらつきが大きくなり、周波数変動度が大きくなる。
【0035】
このような周波数変動度に基づいて、変動幅設定部24は、図3に実線で示すように、判定範囲を定める閾値を補正することによって判定範囲を変更する。変動幅設定部24は、周波数変動度が大きくなるに従って、閾値が大きくなるように補正を行う。閾値の補正方法は特に限定されず、初期閾値(周波数に変動がない場合の閾値)α0に対して周波数変動度の増加分に対応する値を加算してもよく、乗算してもよく、他の演算方法によって補正を行ってもよい。また、図3に点線で示すように、閾値は、周波数変動度が所定値v1以下の範囲では下限値α0の一定値とし、周波数変動度が所定値v2以上の範囲では上限値αmの一定値となるように設定されてもよい。
【0036】
本実施形態では、例えば、図7(a)に示すように、初期閾値α0によって幅の大きさが設定される判定範囲を「判定範囲DA0」で示した場合、変動幅設定部24は、周波数変動度検出部23にて検出された周波数変動度に基づき判定範囲の閾値を補正することで、判定範囲DA0よりも大きい変動幅を設定する。判定範囲変更部25は、当該変動幅を得られるように補正された閾値αに基づき、判定範囲DA0よりも幅の広い判定範囲DA1や判定範囲DA2へ変更する。また、判定範囲変更部25は、判定範囲の変更量(補正された閾値)に対して上限値又は下限値の少なくとも一方を設けて判定範囲を変更してよい。すなわち、判定範囲を大きくし過ぎることによって、実際の停電による単独運転の検出が阻害されないように、上限値を設けてよい。また、判定範囲を狭くし過ぎることによって、単独運転の誤検出がなされないように、下限値を設けてよい。また、判定範囲変更部25は、判定範囲の伸縮を実施することで判定範囲の変更を行う。例えば、図7(a)に示すように、判定範囲変更部25は、検出された周波数変動度に基づき補正された閾値に応じて判定範囲DA0から判定範囲DA1へ伸ばしてよく、判定範囲DA2から判定範囲DA1へ縮めてもよい。また、判定範囲変更部25は、判定範囲DA1に対して下限側を縮めると共に上限側を伸ばすことで判定範囲DA3へ変更してもよい。このように、判定範囲DA1から判定範囲DA3へ変更する場合のように、判定範囲自体の大きさを維持して、判定範囲の位置を高周波側又は低周波側へスライドさせるような伸縮を行ってもよい。
【0037】
系統連系保護部15は、単独運転監視部14の検出結果に基づいて、系統電源3から分散型電源システム100を解列することによって、系統電路L1への充電を抑制するようにしている。なお、解列時には分散型電源システム100を停止させるようにしてもよい。系統連系保護部15は、送信ラインL5を介して変換部11及び系統連系切替部12に接続されている。系統連系保護部15は、単独運転監視部14から単独運転がなされているとの検出結果を受信した場合、送信ラインL5を介して信号を送信することで、変換部11の出力を停止すると共に、系統連系切替部12を解列する。
【0038】
記憶部16は、メモリ等によって構成され、パワーコンディショナ2における制御処理において用いられるデータを記憶するとともに読み出す。記憶部16は、単独運転監視部14から受信したデータを記憶すると共に、単独運転監視部14からの要求に応じてデータを送信する。
【0039】
次に、図4図7を参照して、本実施形態に係る分散型電源システム100及びパワーコンディショナ2による分散型電源システム100の単独運転判定方法について説明する。図4は、本実施形態に係る分散型電源システム100の制御処理の一例を示すフローチャートである。図5は、図4に示す判定範囲変更制御の制御処理の一例を示すフローチャートである。図4及び図5に示す制御処理は、分散型電源システム100の運転中において、パワーコンディショナ2において所定のタイミングで繰り返し実行される。ただし、図4及び図5に示す制御処理は分散型電源システム100の制御処理の一例に過ぎず、当該処理内容に限定されるものではない。
【0040】
図4に示される制御処理は、分散型電源システム100と系統電源3とが連系して電力供給を行う系統連系運転での運転中に実行される。図4に示すように、単独運転監視部14の周波数検出部21は、系統電路L1に発生している電圧の周波数を検出する(ステップS10:周波数検出ステップ)。次に、単独運転判定部22は、S10で検出された検出周波数に基づいて、分散型電源システム100による単独運転が行われているか否かを判定する(ステップS20:単独運転判定ステップ)。具体的には、単独運転判定部22は、S10で検出された検出周波数に基づいた判定値が、判定範囲に含まれていない場合に、単独運転が行われていると判定する。S20において、単独運転が行われていないと判定された場合、判定範囲を変更するための判定範囲変更制御処理へ移行する(ステップS30)。S30の処理の詳細については、後述する。
【0041】
一方、S20において、系統電源3の停電等によって検出周波数に基づいた判定値が判定範囲に含まれておらずに単独運転が発生していると判定された場合、系統連系保護部15が変換部11の出力を停止すると共に、系統連系切替部12を解列することによって、系統連系運転を解除する(ステップS40)。その後、パワーコンディショナ2は、所定時間待機する(ステップS50)と共に、系統電源3が停電から復帰したか否かを判定する(ステップS60)。具体的には、系統連系切替部12の解列状態での系統電路L1に発生する電圧と電圧周波数との少なくとも一方が正常値(系統電源3の通常稼働状態での値)に戻ったことを検知して復帰を判定する。なお、この復帰判定は他の判定方法を用いてもよい。ステップS60において、停電から復帰していないと判定された場合、ステップS60の復帰判定を繰り返す。なお、停電復帰の判定が所定回数繰り返されても復帰が判定されない場合には、分散型電源システム100に内蔵された蓄電池などからの供給電力によって分散型電源装置1を起動させて自立運転を行うようにしてもよい。一方、ステップS60において、停電から復帰したと判定された場合、系統連系運転を開始すると共に継続する(ステップS80)。S80の処理が終了したら図4に示す制御処理が終了する。
【0042】
次に、図5を参照して、判定範囲変更制御処理の詳細な説明を行う。なお、判定範囲変更制御処理は、図6に示すタイムラインのように、互いに時間がずれた複数のトラックが並列で処理をおこなっている。なお、図6の例では1マス当り1分を示しており、1分ずつ時間をずらして6トラックにて演算を行っている。6トラックで構成される1サイクル中で、データの記録を1分間行い、計算等と待機を5分間行った後、次のサイクルへ移行している。図5のフローチャートは、1サイクル分の制御処理の内容を示している。
【0043】
図5に示すように、周波数検出部21は、検出周波数のデータと時間データとを取得すると共に関連付けて記憶部16へ記録する(ステップS100:周波数検出ステップ)。また、単独運転監視部14は、記録時間が1分に達したか否かを判定する(ステップS110)。記録時間が1分に達していないと判定された場合、S100の処理が再び繰り返される。
【0044】
一方、記録時間が1分に達していると判定された場合、周波数変動度検出部23は、S100において記録された周波数の記録値に基づいて、周波数変動度を検出する(ステップS120:周波数変動度検出ステップ)。また、変動幅設定部24は、S120で検出された周波数変動度に基づいて、判定範囲の変動幅を設定する(ステップS130:変動幅設定ステップ)。また、判定範囲変更部25は、S130にて設定された変動幅を閾値計算値αtとして取得する(ステップS140:判定範囲変更ステップ)。閾値計算値αtとは、実際の単独運転判定を行うための閾値運用値αとして採用できるか否かを判定するための計算用の値として、暫定的に定められたものである。
【0045】
S120〜S140の処理の具体的な例について図7(a)を用いて説明する。ただし、当該処理は一例であり、適宜変更可能である。例えば、どの値を周波数変動度として採用し、どの値を変動幅として採用するか等は適宜変更してよい。周波数変動度検出部23は、成分分析に基づき検出された検出周波数の高周波ノイズ成分NHと低周波ノイズ成分NLとに基づいて周波数変動度を検出する。高周波ノイズ成分NHは、主成分の周波数よりも高周波側のノイズの尖頭値(または準尖頭値)であり、低周波ノイズ成分NLは、主成分の周波数よりも低周波側のノイズの尖頭値(または準尖頭値)である。周波数変動度検出部23は、検出周波数における主成分Fに対する高周波ノイズ成分NHの変動幅と低周波ノイズ成分NLの変動幅の合計幅Wを周波数変動度として検出する。具体的には、周波数変動度は「|NL−F|+|NH−F|」と表される。すなわち、周波数変動度は「NH−NL」で表される。本実施形態では、変動幅設定部24は、検出周波数の合計幅Wと同じ値を判定範囲の合計幅として設定する(ただし、検出周波数の合計幅Wから調整した値を採用してもよい)。本実施形態では、判定範囲の変動幅は基準周波数(ここでは、50Hz)に対して高周波側と低周波側で同一値に設定される。従って、基準周波数に対する変動幅は、「(NH−NL)/2」と表される。判定範囲変更部25は、この変動幅の値を閾値計算値αtとして取得する。従って、「αt=(NH−NL)/2」と表される。
【0046】
次に、判定範囲変更部25は、S140で取得された閾値計算値αtが下限値α0よりも大きいか否かを判定する(ステップS150:判定範囲変更ステップ)。下限値α0は、実際の判定に採用される閾値運用値αにおける最小閾値であって、周波数に変動がない場合に設定される初期閾値である。S150において、閾値計算値αtが下限値α0より大きいと判定された場合、判定範囲変更部25は、S160で取得された閾値計算値αtが上限値αmより小さいか否かを判定する(ステップS160:判定範囲変更ステップ)。上限値αmは、実際の判定に採用される閾値運用値αにおける最大閾値である。S160において、閾値計算値αtが上限値αmより小さいと判定された場合、判定範囲変更部25は、閾値運用値αを現在のものから閾値計算値αtに書き換えを行う(ステップS170:判定範囲変更ステップ)。一方、S150において閾値計算値αtが下限値α0以下であると判定された場合、判定範囲変更部25は、閾値運用値αを現在のものから下限値α0に書き換えを行う(ステップS180:判定範囲変更ステップ)。また、S160において閾値計算値αtが上限値αm以上であると判定された場合、判定範囲変更部25は、閾値運用値αを現在のものから上限値αmに書き換えを行う(ステップS190:判定範囲変更ステップ)。
【0047】
閾値運用値αの書き換えが完了した後、単独運転監視部14は、本サイクルにおける処理が開始から6分経過するまで待機する(ステップS200)。S200の後、単独運転判定部22は、書き換えた閾値運用値αの運用を開始する(ステップS210)。すなわち、単独運転判定部22は、現在判定に用いている判定範囲に代えて、ステップS120からステップS190での処理に基づき変動幅設定部24が書き換えた閾値運用値αによって判定範囲変更部25により定められる判定範囲を用いて、単独運転の判定を行う。S210の処理が終了することにより、図5に示す制御処理が終了する。6分経過後、1分間の間は書き換えた閾値運用値αにて単独運転の判定が行われる。例えば、図6に示すように、トラック1の1サイクル目の開始から6分後には当該サイクルが終了し、書き換えた閾値運用値α1にて単独運転の判定が行われる。その一方で、トラック1の1サイクル目の開始から1分後にはトラック2の1サイクル目が開始しているので、トラック1の閾値運用値α1による運用開始の1分後には、トラック2の閾値運用値α2による運転が開始する。このようなサイクルを6つのトラックで繰り返し行うことで、1分間隔で新たな閾値に基づいた判定範囲での単独運転の判定が行われる。
【0048】
また、1トラックの1サイクル中では、周波数が検出されるタイミングと、その検出周波数に基づいて変更された判定範囲によって単独運転判定部22での単独運転の判定が行われるタイミングとの間には、所定の待機時間が設けられる。すなわち、単独運転判定部22での単独運転の判定が行われるときには、単独運転判定部22は、周波数検出部21で検出された検出周波数に基づいて判定範囲変更部25にて変更された判定範囲を、当該周波数が検出されてから所定の待機時間が経過した後に用いる。例えば、トラック1の1サイクル目では、検出周波数の検出及び記録が「記録1」で行われており、当該「記録1」に基づいて設定された閾値に基づく単独運転の判定は「閾値1」で行われる。このように、両者の間には5分間の間隔があくように待機時間が設けられる。なお、少なくとも周波数検出に要する時間よりも長い間隔があくように待機時間が設定される。
【0049】
図7(a)に示すように、閾値運用値αが下限値α0に書き換えられた場合、判定範囲は「判定範囲D0」に変更される。閾値運用値αが上限値αmに書き換えられた場合、判定範囲は「判定範囲DA2」に変更される。また、閾値運用値αが閾値計算値αtに書き換えられた場合、判定範囲は判定範囲D0よりも広く、判定範囲DA2よりも狭い「判定範囲DA1」に変更される。この場合、単独運転判定部22は、検出周波数の主成分Fが判定範囲DA1に含まれるか否かによって、単独運転の判定を行う。停電等が生じていない場合、周波数の主成分Fは(東日本であれば)50Hzであるため、図7(a)に示すように、主成分Fが判定範囲DA1に含まれて、単独運転判定部22は単独運転ではないと判定する。一方、停電等が生じると周波数の主成分F自体が大きく変動するため、図7(b)に示すように、主成分Fが判定範囲DA1に含まれない場合、単独運転判定部22は単独運転であると判定する。
【0050】
次に、本実施形態に係る分散型電源システム100の単独運転判定方法、分散型電源システム100、及びパワーコンディショナ2の作用・効果について説明する。
【0051】
本実施形態に係る分散型電源システム100の単独運転判定方法では、周波数変動度検出ステップ(S120)において、検出周波数の変動の度合いを表す周波数変動度の検出がなされる。また、判定範囲変更ステップ(S130〜S190)では、検出された周波数変動度に基づいて、単独運転判定ステップ(S20)で判定に用いられる判定範囲が変更される。これにより、単独運転判定ステップでは、周波数変動度に基づいて変更された判定範囲によって、分散型電源システム100による単独運転の判定を行うことができる。従って、発電所の動作上の乱れや、多くの電力を使用する近隣工場における負荷変動や、低圧配電線のインピーダンスの問題や、柱上トランスの容量の問題等により、系統電路L1の電圧周波数が変動した場合は、当該変動に合わせて単独運転判定に用いる判定範囲を変更することができるため、分散型電源システム100が単独運転を行っていると誤って判定されることを抑制できる。以上により、分散型電源システム100による単独運転を精度良く判定でき、不要な分散型電源システム100の停止を抑制できる。
【0052】
本実施形態に係る分散型電源システム100の単独運転判定方法は、周波数変動度検出ステップにて検出された周波数変動度に基づき判定範囲の変動幅を設定する変動幅設定ステップ(S130)を備え、判定範囲変更ステップでは、変動幅設定ステップにて設定された変動幅に応じて判定範囲を変更する。このような構成によると、周波数変動度に基づいて設定された変動幅に応じて判定範囲を変更することで、容易に判定範囲の変更を行うことができる。
【0053】
本実施形態に係る分散型電源システム100の単独運転判定方法において、周波数変動度検出ステップでは、検出周波数の高周波成分と低周波成分とに基づき周波数変動度を検出している。このような構成によると、例えば図5を用いて説明した制御処理のように、検出周波数の高周波成分と低周波成分との間の変動幅を用いて周波数変動度を示すことができるため、複雑な演算を行わなくとも、容易に周波数変動度を検出することができる。
【0054】
本実施形態に係る分散型電源システム100の単独運転判定方法において、判定範囲変更ステップでは、判定範囲の変更量(閾値α)に対して上限値又は下限値の少なくとも一方を設けて判定範囲を変更している。このような構成によると、判定範囲を適切な範囲内で変更することができるため、単独運転をより精度良く判定できる。例えば、下限値を設けることで、判定範囲が狭くなりすぎて単独運転の誤判定をしやすくなることを防止でき、上限値を設けることで、実際の停電時において単独運転が判定され難くなることを防止できる。
【0055】
本実施形態に係る分散型電源システム100の単独運転判定方法において、判定範囲変更ステップでは、判定範囲の伸縮を実施することで判定範囲の変更を行う。このような構成によると、判定範囲の大きさを周波数変動度に応じて伸縮させることで、容易に変更することができる。
【0056】
本実施形態に係る分散型電源システム100の単独運転判定方法において、単独運転判定ステップでは、検出周波数の主成分に基づく判定値が判定範囲に含まれていない場合に単独運転を判定する。実際の停電時には周波数の主成分が大きく変動する。従って、このような構成によると、検出周波数の主成分に基づいて単独運転の判定を行うことで、容易に判定を行うことができる。
【0057】
本実施形態に係る分散型電源システム100の単独運転判定方法において、周波数検出ステップにおいて周波数が検出されるタイミングと、検出周波数に基づいて変更された判定範囲が単独運転判定ステップで用いられるタイミングとの間には、所定の待機時間が設けられている。例えば、検出周波数の周波数変動度を直ちに反映させて判定範囲を変更した場合、周波数が大きく変動したときに判定範囲もそれに合わせて速やかに広がることにより、実際に単独運転を判定しなくてはならないにも関わらず、判定が遅れてしまう可能性がある。一方、本実施形態によると、単独運転判定部は、所定の待機時間分だけ遡った検出周波数に基づいた判定範囲を用いて判定できる。従って、単独運転の判定が遅延することを抑制することができる。
【0058】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0059】
例えば、判定範囲変更ステップにおいて、周波数変動の発生状況を検知し、この変動発生状況に合わせて判定範囲を変更してよい。周波数変動の発生状況として、場所、日時、環境(気温など)が挙げられる。発生状況により、周波数変動の起こり易さなどに基づいて判定範囲の変更度合いを調整してもよい。このような構成によると、周波数変動の発生状況に合わせて精度良く単独運転を行うことができる。
【0060】
また、判定範囲変更ステップにおいて、周波数変動の発生状況に応じた判定範囲の変更を学習し、単独運転判定ステップにおいて、判定範囲変更ステップでの学習により予め変更された判定範囲に基づき単独運転を判定してよい。例えば、周波数変動によって判定範囲の変更を行ったときに、変更した判定範囲と発生状況とを関連付けて記憶部16に記憶しておき、将来、同様の発生状況となった時に記憶している判定範囲を用いて単独運転の判定を行ってよい。このような構成によると、学習に基づいて予め変更された判定範囲に基づいて単独運転の判定を行うことにより、容易に単独運転を行うことができる。
【0061】
上述の実施形態においては、図5に示す制御処理で検出周波数の高周波成分及び低周波成分に基づいて閾値αの書き換えを行っていた。これに代えて、例えば、検出周波数を統計処理することによって得られる値(例えば標準偏差)を閾値αとして、「基準周波数±閾値α」を判定範囲としてもよい。
【0062】
また、上述の実施形態では、判定範囲の変動幅である閾値αに対する上限値αm、下限値α0を用いて判定範囲を設定したが、判定範囲を規定する判定値の最大値及び最小値に対する上限値及び下限値を設定し、判定範囲の最大値と最小値とが上限値と下限値との間で設定されるように構成してもよい。
【0063】
また、上述の実施形態では、分散型電源装置1として燃料電池を用いた分散型電源システム100について説明したが、太陽電池や蓄電池などの分散型電源用電力供給装置(分散型電源用発電装置)を分散型電源装置1として用いた分散型電源システム100に上述の実施形態を適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…分散型電源装置、2…パワーコンディショナ、3…系統電源、14…単独運転監視部、21…周波数検出部、22…単独運転判定部、23…周波数変動度検出部、24…変動幅設定部、25…判定範囲変更部、100…分散型電源システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7