特許第6408364号(P6408364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408364
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】誘導加熱装置および誘導加熱方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20181004BHJP
   H05B 6/06 20060101ALI20181004BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20181004BHJP
   B23K 1/002 20060101ALI20181004BHJP
   B23K 1/18 20060101ALI20181004BHJP
   B23K 101/06 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
   H05B6/10 371
   H05B6/06 351
   H05B6/44
   B23K1/002
   B23K1/18 B
   B23K101:06
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-247004(P2014-247004)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-110829(P2016-110829A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳康
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡一
(72)【発明者】
【氏名】山田 正博
(72)【発明者】
【氏名】大橋 智明
(72)【発明者】
【氏名】篠田 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 充彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潔和
(72)【発明者】
【氏名】宮池 潔
(72)【発明者】
【氏名】沖中 陽
(72)【発明者】
【氏名】板橋 和仁
【審査官】 土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−025249(JP,A)
【文献】 特開昭50−158551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/10
B23K 1/002
B23K 1/18
H05B 6/06
H05B 6/44
B23K 101/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被加熱体と、前記第1の被加熱体の差し込み口に差し込まれた第2の被加熱体とを誘導加熱によりろう付け接合する誘導加熱装置であって、
前記第1の被加熱体のうち、前記第2の被加熱体が差し込まれる被差し込み部の周囲の一部を周方向に覆う第1の加熱導体部と、
前記第2の被加熱体のうち、前記被差し込み部に差し込まれる差し込み部以外の部分の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う第2の加熱導体部と、
を備え、
前記第2の加熱導体部は、前記第2の被加熱体のうち熱容量が他の部位よりも大きな部位の周囲に設けられていることを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
第1の被加熱体と、前記第1の被加熱体の差し込み口に差し込まれた第2の被加熱体とを誘導加熱によりろう付け接合する誘導加熱装置であって、
前記第1の被加熱体のうち、前記第2の被加熱体が差し込まれる被差し込み部の周囲の一部を周方向に覆う第1の加熱導体部と、
前記第2の被加熱体のうち、前記被差し込み部に差し込まれる差し込み部以外の部分の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う第2の加熱導体部と、
を備え、
前記第2の加熱導体部は、前記第2の被加熱体のうち部分的に周囲よりも肉厚に構成された肉厚部の周囲に設けられていることを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項3】
第1の被加熱体と、前記第1の被加熱体の差し込み口に差し込まれた第2の被加熱体とを誘導加熱によりろう付け接合する誘導加熱装置であって、
前記第1の被加熱体のうち、前記第2の被加熱体が差し込まれる被差し込み部の周囲の一部を周方向に覆う第1の加熱導体部と、
前記第2の被加熱体のうち、前記被差し込み部に差し込まれる差し込み部以外の部分の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う第2の加熱導体部と、
を備え、
前記第2の加熱導体部は、前記第2の被加熱体のうち部分的に周囲よりも比熱の高い材料で構成された部位の周囲に設けられていることを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項4】
前記第2の加熱導体部は、前記第1の被加熱体の前記差し込み口から、前記差し込み部の長さの半分以上離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項5】
前記第1の加熱導体部と前記第2の加熱導体部を接続する接続導体部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項6】
前記第1の加熱導体部の、前記被差し込み部に差し込まれた前記差し込み部への投影線が、前記差し込み部の中心線と重なることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項7】
前記第1および第2の加熱導体部に高周波電流を流す高周波電源と、
前記差し込み口近傍における前記第1の被加熱体の第1の温度、および/または、前記差し込み口近傍における前記第2の被加熱体の第2の温度を測定する温度測定部と、
前記第1の温度および前記第2の温度のうち少なくともいずれか一方の温度と、ろう付け部の温度とを対応付けた温度データを記録した参照温度データ記録部と、
前記温度測定部により測定された温度、および前記参照温度データ記録部に記憶された前記温度データに基づいて、前記ろう付け部の温度が所定の温度になるように前記高周波電源を制御する温度制御部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項8】
前記第1の被加熱体は、発電機の円筒状のステータの内壁面に沿って設けられた内側コイルの端部、または前記ステータの外壁面に沿って設けられた外側コイルの端部を構成し、前記第2の被加熱体は、前記内側コイルの第1の被加熱体と、前記外側コイルの第1の被加熱体とを接続することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の誘導加熱装置。
【請求項9】
第1の被加熱体、および前記第1の被加熱体の差し込み口に差し込まれた第2の被加熱体を誘導加熱によりろう付け接合する誘導加熱方法であって、
前記第1の被加熱体のうち前記第2の被加熱体が差し込まれる被差し込み部の周囲の一部を周方向に覆う第1の加熱導体部と、前記第2の被加熱体のうち前記被差し込み部に差し込まれる差し込み部以外であり、熱容量が他の部位よりも大きな部位の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う第2の加熱導体部とに高周波電流を流し、前記第1および第2の被加熱体を個別に誘導加熱する誘導加熱方法。
【請求項10】
第1の被加熱体、および前記第1の被加熱体の差し込み口に差し込まれた第2の被加熱体を誘導加熱によりろう付け接合する誘導加熱方法であって、
前記第1の被加熱体のうち前記第2の被加熱体が差し込まれる被差し込み部の周囲の一部を周方向に覆う第1の加熱導体部と、前記第2の被加熱体のうち前記被差し込み部に差し込まれる差し込み部以外であり、部分的に周囲よりも肉厚に構成された肉厚部の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う第2の加熱導体部とに高周波電流を流し、前記第1および第2の被加熱体を個別に誘導加熱する誘導加熱方法。
【請求項11】
第1の被加熱体、および前記第1の被加熱体の差し込み口に差し込まれた第2の被加熱体を誘導加熱によりろう付け接合する誘導加熱方法であって、
前記第1の被加熱体のうち前記第2の被加熱体が差し込まれる被差し込み部の周囲の一部を周方向に覆う第1の加熱導体部と、前記第2の被加熱体のうち前記被差し込み部に差し込まれる差し込み部以外であり、部分的に周囲よりも比熱の高い材料で構成された部位の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う第2の加熱導体部とに高周波電流を流し、前記第1および第2の被加熱体を個別に誘導加熱する誘導加熱方法。
【請求項12】
前記第2の加熱導体部は、前記第1の被加熱体の前記差し込み口から、前記差し込み部の長さの半分以上離れた位置に設けられていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の誘導加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、誘導加熱装置および誘導加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品同士を接合するろう付けの一手法として、トーチの火炎で部品を加熱することにより、ろう材を溶かして施工する手法がある。しかし、この手法の場合、施工場所が火気を安全に取り扱うことのできる場所に制限される。
【0003】
他のろう付け手法として、火炎を用いない誘導加熱による手法も知られている。この場合、部品の周囲を加熱導体(誘導加熱コイル)で囲み、加熱導体に高周波電流を流すことで、部品の表面に渦電流を誘起する。誘起された渦電流は、部品の表層でジュール損失により熱を発生する。この熱によって部品が加熱され、ろう付けが行われる。誘導加熱によるろう付けの場合、火炎を用いないため、施工場所に対する制限が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−301566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、部品(被加熱体)の周囲に、施工の障害となる構造物等が設けられていることがある。例えば、第1の管状部材に第2の管状部材を差し込んでろう付けする場合であって、第1の管状部材が壁面等に固定されている場合がある。このような場合、加熱導体で第1の管状部材の全周を囲むことができないため、ろう付け部分を均一に加熱できず、均一なろう付けを行うことが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、被加熱体に障害物が設けられている場合であっても、均一で良好なろう付けを行うことができる誘導加熱装置および誘導加熱方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る誘導加熱装置は、第1の被加熱体と、前記第1の被加熱体の差し込み口に差し込まれた第2の被加熱体とを誘導加熱によりろう付け接合する誘導加熱装置であって、第1の加熱導体部と、第2の加熱導体部とを備えている。前記第1の加熱導体部は、前記第1の被加熱体のうち、前記第2の被加熱体が差し込まれる被差し込み部の周囲の一部を周方向に覆う。前記第2の加熱導体部は、前記第2の被加熱体のうち、前記被差し込み部に差し込まれる差し込み部以外の部分の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う。
【0008】
実施形態に係る誘導加熱方法は、第1の被加熱体、および前記第1の被加熱体の差し込み口に差し込まれた第2の被加熱体を誘導加熱によりろう付け接合する誘導加熱方法であって、前記第1の被加熱体のうち前記第2の被加熱体が差し込まれる被差し込み部の周囲の一部を周方向に覆う第1の加熱導体部と、前記第2の被加熱体のうち前記被差し込み部に差し込まれる差し込み部以外の部分の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う第2の加熱導体部とに高周波電流を流し、前記第1および第2の被加熱体を個別に誘導加熱する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る誘導加熱装置1の概略的な構成を示す図である。
図2】誘導加熱装置1の加熱導体部の詳細について説明するための図である。
図3】変形例1に係る加熱導体部について説明するための図である。
図4】変形例2に係る加熱導体部について説明するための図である。
図5】変形例3に係る加熱導体部について説明するための図である。
図6】第1の被加熱体10、および第1の被加熱体10の被差し込み部12に差し込まれる第2の被加熱体20を示す図である。
図7】発電機ステータの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る誘導加熱装置および誘導加熱方法について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0011】
実施形態に係る誘導加熱装置1は、2つの被加熱体を誘導加熱により、ろう付け接合する誘導加熱装置である。
【0012】
ここで、図6を参照して、被加熱体である第1の被加熱体10および第2の被加熱体20について説明する。なお、図6では、第2の被加熱体20の肉厚部22は図示していない。図6に示すように、第1の被加熱体10および第2の被加熱体20は管状部材であり、第1の被加熱体10および第2の被加熱体20に障害物30が設けられている。この障害物30は、第1の被加熱体10や第2の被加熱体20に接続されていたり、近接する位置に設置された構造物等である。
【0013】
ここで、障害物30が発電機のステータである場合の例を、図7を用いて説明する。図7は、発電機のステータの一部を示す斜視図である。円筒状のステータの内壁面に沿って内側コイル42が設けられている。また、ステータの外壁面に沿って外側コイル43が設けられている。内側コイル42および外側コイル43の内部には冷却水が流通する。
【0014】
第1の被加熱体10は、内側コイル42または外側コイル43の端部を構成し、内部を冷却水が流通する管状部材である。第2の被加熱体20は、ステータの端部において、内側コイル42の第1の被加熱体10と外側コイル43の第1の被加熱体10とを接続する部材である。即ち、第2の被加熱体20は、図7に示すように、ステータの端面を跨いで内側コイル42と外側コイル43を接続する。この第2の被加熱体20は、電気的導通を確保し、且つ冷却水流路となる管状部材である。
【0015】
図6に戻って、差し込み部21の中心線Cは、第2の被加熱体20の先端から、差し込み部21の長さの半分だけ離れた位置を示している。
【0016】
第2の被加熱体20は、第1の被加熱体10の差し込み口11から被差し込み部12に差し込まれる。より詳しくは、第2の被加熱体20のうち、先端部分の差し込み部21が被差し込み部12に差し込まれ、差し込み部21の外周面が第1の被加熱体10とろう付けされるろう付け面となる。なお、第1の被加熱体10および第2の被加熱体20は、管状部材に限らない。
【0017】
次に、誘導加熱装置1の構成について図1を参照して説明する。
【0018】
誘導加熱装置1は、図1に示すように、第1の加熱導体部(誘導加熱コイル)2と、第2の加熱導体部(誘導加熱コイル)3と、接続導体部4と、引出導体部5と、高周波電源6と、温度測定部7と、参照温度データ記録部8と、温度制御部9とを備えている。
【0019】
第1の加熱導体部2、第2の加熱導体部3、接続導体部4および引出導体部5はいずれも導電性の材料からなり、1本の導電路を形成している。なお、導電路の内部には、水等の冷却媒体が流れる流路が設けられていてもよい。この導電路に高周波電源6から出力された高周波電流が流れることで、導電路に周囲を覆われた被加熱体の表層に渦電流が流れ、被加熱体はジュール熱により加熱される。より詳しくは、誘導加熱により、まず被加熱体の表層の温度が上昇し、その後、ジュール熱の拡散により、被加熱体の内部の温度が上昇するとともに、導電路の周辺の表層の温度が上昇する。その後、ろう付け部(第1の被加熱体10と第2の被加熱体20との間の重なり部分)の温度が所定の温度まで上昇すると、ろう付け部にろう材を溶かし込み、ろう付けを行う(いわゆる「差しろう」)。なお、ろう付け部に形成された溝に予めろう材を配置する等にして、ろう付け部に予めろう材を設けておいてもよい(いわゆる「置きろう」)。
【0020】
第1の加熱導体部2は、第1の被加熱体10の被差し込み部12の周囲の一部を周方向に覆う。本実施形態では、第1の加熱導体部2は、図1に示すように、障害物30を回避するように被差し込み部12の周囲の一部を覆っている。より詳しくは、第1の加熱導体部2は、図2に示すように、導体管2a、導体管2bおよび導体管2cが接続されたものとして構成されている。導体管2a,2cは、第1の被加熱体10の中心軸に直交する方向に延在している。導体管2bは、導体管2aの上端部と導体管2cの上端部とを接続している。このように第1の加熱導体部2が被差し込み部12の周囲の少なくとも一部を覆うようにすることで、ろう付け部を効率良く加熱することができる。
【0021】
なお、効率の観点からは、第1の加熱導体部2は、被差し込み部12に差し込まれた差し込み部21の中心線Cを覆うように第1の被加熱体10の周囲に設けられることが好ましい。即ち、第1の加熱導体部2の差し込み部21への投影線が中心線Cに重なるようにすることが好ましい。これにより、第1の加熱導体部2はろう付け部を最も効率良く加熱することができる。
【0022】
第2の加熱導体部3は、第2の被加熱体20のうち差し込み部21以外の部分の周囲の少なくとも一部を周方向に覆う。本実施形態では、第2の加熱導体部3は、図1に示すように、障害物30を回避するように第2の被加熱体20の周囲の一部を覆っている。より詳しくは、第2の加熱導体部3は、図2に示すように、導体管3aおよび導体管3bを有する。導体管3a,3bは、下端部が接続導体部4に接続し、第2の被加熱体20の中心軸に直交する方向に沿って肉厚部22の側面上を延在した後、折れ曲がり、肉厚部22の上面上を延在している。肉厚部22は、管状部材である第2の被加熱体20のうち、部分的に周囲よりも肉厚に構成された部位である。なお、肉厚部22は、管状部材である第2の被加熱体20のうち、部分的に周囲よりも比熱の高い材料で構成された部位であってもよい。
【0023】
本実施形態では、第2の加熱導体部3は、管状部材である第2の被加熱体20の肉厚部22の周囲に設けられている。これにより、より多くの熱量が第2の被加熱体20に蓄えられるため、ろう付け部を効率良く加熱することができる。なお、第2の加熱導体部3は、肉厚部に限らず、第2の被加熱体20のうち熱容量が他の部位よりも大きな部位の周囲に設けられてもよい。
【0024】
接続導体部4は、第1の加熱導体部2と第2の加熱導体部3を接続する。より詳しくは、接続導体部4は、図2に示すように、導体管2aと導体管3aを接続し、導体管2cと導体管3bを接続する。この接続導体部4を設けることにより、一つの高周波電源6で第1の被加熱体10と第2の被加熱体20の両方を誘導加熱することができる。その結果、誘導加熱装置1の簡略化および低コスト化を図ることができとともに、高周波電源6の制御を容易にすることができる。なお、接続導体部4を設けずに、第1の加熱導体部2および第2の加熱導体部3を別々の高周波電源に接続してもよい。
【0025】
引出導体部5は、第2の加熱導体部3と高周波電源6とを電気的に接続している。より詳しくは、引出導体部5は、導体管3aに接続された導体管5aと、導体管3bに接続された導体管5bとを有する。図2に示すように、導体管5aと導体5bは互いに平行に近接配置されることが好ましい。これにより、両導体管間に存在するインダクタンスを小さくすることができ、電源効率を向上させることができる。
【0026】
高周波電源6は、接続導体部4および引出導体部5を介して、第1の加熱導体部2および第2の加熱導体部3に高周波電流を流す。この高周波電源6から出力される高周波電流は、電流値および周波数を変化させることが可能である。第1の加熱導体部2および第2の加熱導体部3に高周波電流を流すことより、第1の被加熱体10および第2の被加熱体20の各々の表層に渦電流が誘起され、第1の被加熱体10および第2の被加熱体20はジュール熱により加熱される。
【0027】
温度測定部7は、被加熱体の表面の温度を測定する。より詳しくは、温度測定部7は、第1の被加熱体10の差し込み口11近傍(例えば第1の被加熱体10の端面10a上の点)における第1の被加熱体10の温度T1を測定する。温度測定部7は、例えば、熱電対や放射温度計により構成される。
【0028】
なお、温度測定部7は、温度T1とともに、または温度T1に代えて、差し込み口11近傍における第2の被加熱体20の温度T2を測定してもよい。例えば、温度測定部7は、差し込み口11近傍における、ろう付け部以外の第2の被加熱体20の外周面の温度を測定する。
【0029】
参照温度データ記録部8は、温度T1とろう付け部の温度T3とを対応付けた温度データを記録している。この温度データは事前の加熱試験により取得されたものである。温度T3は、例えば第2の被加熱体20の差し込み部21の外周面の温度であるが、これに限らず、差し込み口11の温度であってもよいし、あるいは、第1の被加熱体10の被差し込み部12の内周面の温度であってもよい。参照温度データ記録部8は、ハードディスク、半導体メモリまたは光ディスク等の記録媒体から構成される。
【0030】
なお、この参照温度データ記録部8は、温度T2と温度T3とを対応付けた温度データを記録してもよいし、あるいは、温度T1、温度T2および温度T3を対応付けた温度データを記録してもよい。
【0031】
温度制御部9は、温度測定部7により測定された温度、および参照温度データ記録部8に記憶された温度データに基づいて、ろう付け部の温度が所定の温度になるように高周波電源6を制御する。具体的には、温度制御部9は、高周波電源6から出力される高周波電流の電流値(電流振幅)や周波数を変化させることで、ろう付け部の温度を調整する。例えば、温度制御部9は、温度データ間の隙間を補間する補間処理により、温度測定部7で測定された温度からろう付け部の温度を推定し、推定された温度が所定の温度になるように高周波電源6を制御する。
【0032】
なお、温度制御部9は、第1の被加熱体10の差し込み口11近傍における第1の被加熱体10の温度、および/または、差し込み口11近傍における第2の被加熱体20の温度が所定の温度になるように高周波電源6を制御してもよい。
【0033】
上記の所定の温度(ろう付け部の目標温度)は、ろう材の種類、ろう材の融点等に基づいて決められた温度であることが好ましい。これにより、より均一で良好なろう付けを行うことができる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態に係る誘導加熱装置1は、差し込み口11を挟んで第1の加熱導体部2および第2の加熱導体部3が設けられている。第1および第2の加熱導体部2,3に高周波電流を流すことより、第1の被加熱体10および第2の被加熱体20を個別に誘導加熱する。第1の被加熱体10および第2の被加熱体20の表層で発生した渦電流による熱はそれぞれ拡散しながら内部に熱伝導する。このため、第1の加熱導体部2および第2の加熱導体部3がそれぞれ第1の被加熱体10および第2の被加熱体20の全周を覆わなくとも、第1および第2被加熱体10,20のろう付け部の全周が均一に加熱され、均一で良好なろう付けを行うことができる。
【0035】
よって、本実施形態によれば、被加熱体に障害物が設けられている場合であっても、均一で良好なろう付けを行うことができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、第1の被加熱体10および第2の被加熱体20が個別に誘導加熱されるため、差し込み部21と被差し込み部12との間に隙間がある等して接触熱抵抗が大きい場合であっても、均一なろう付けを行うことができる。
【0037】
なお、第2の加熱導体部3は、第1の被加熱体10の差し込み口11から、所定の距離だけ離して設けることが好ましい。より詳しくは、第2の加熱導体部3は、第1の被加熱体10の差し込み口11から、差し込み部21の長さの半分以上離れた位置に設けられていることが好ましい。これにより、第2の加熱導体部3により第2の被加熱体20に発生した熱が熱拡散により、第2の加熱導体部3で覆われない第2の被加熱体20の障害物30側にまで回り込んだ後、差し込み部21に熱伝導する。このため、差し込み部21は、差し込み口11から第2の被加熱体20の先端にかけて全周にわたって均一に加熱される。その結果、さらに均一で良好なろう付けを行うことができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る3つの変形例(変形例1〜3)について説明する。いずれの変形例によっても、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0039】
(変形例1)
図3を参照して変形例1について説明する。本変形例は、第2の加熱導体部3が第2の被加熱体20の中心軸に沿って延在する場合である。図3に示すように、導体管2a,2cは、下端部が第1の被加熱体10の中心軸付近で接続導体部4に接続されている。また、導体管3a,3bは、第2の被加熱体20の中心軸に沿って延在している。
【0040】
(変形例2)
次に、図4を参照して変形例2について説明する。本変形例は、第2の被加熱体20に肉厚部22が設けられていない場合である。図4に示すように、第1の加熱導体部2および接続導体部4は、既述の実施形態と同様である。導体管3a,3bは、図4に示すように、接続導体部4の端部から第2の被加熱体20に向けて延在した後、第2の被加熱体20の中心軸と直交する方向に延在し、第2の被加熱体20の周囲の一部を覆っている。
【0041】
(変形例3)
次に、図5を参照して変形例3について説明する。本変形例は、第2の被加熱体20が途中でL字状に折れ曲がっている場合である。図5に示すように、第1の加熱導体部2および接続導体部4は、既述の実施形態と同様である。導体管3a,3bは、図5に示すように、接続導体部4の端部から、折れ曲がった先の第2の被加熱体20の中心軸に沿って延在し、第2の被加熱体20の肉厚部22の周囲の一部を覆っている。
【0042】
以上、1つの実施形態および3つの変形例について説明したが、これらの実施形態および変形例によれば、被加熱体に障害物が設けられている場合であっても、均一で良好なろう付けを行うことができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 誘導加熱装置
2 第1の加熱導体部
2a,2b,2c 導体管
3 第2の加熱導体部
3a,3b 導体管
4 接続導体部
5 引出導体部
5a,5b 導体管
6 高周波電源
7 温度測定部
8 参照温度データ記録部
9 温度制御部
10 第1の被加熱体
10a 端面
11 差し込み口
12 被差し込み部
20 第2の被加熱体
21 差し込み部
22 肉厚部(熱容量の大きい部位)
30 障害物
40 (発電機の)ステータ
42 内側コイル
43 外側コイル
C 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7