特許第6408377号(P6408377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6408377過給機関のインタークーラ内蔵型吸気マニホルド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408377
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】過給機関のインタークーラ内蔵型吸気マニホルド
(51)【国際特許分類】
   F02B 29/04 20060101AFI20181004BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20181004BHJP
   F02M 35/112 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   F02B29/04 F
   F02M35/10 311C
   F02M35/10 101N
   F02M35/10 301R
   F02M35/112
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-264672(P2014-264672)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-125369(P2016-125369A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151209
【氏名又は名称】株式会社マーレ フィルターシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】河野 崇史
(72)【発明者】
【氏名】川上 啓輔
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−084987(JP,A)
【文献】 特開2009−066819(JP,A)
【文献】 特表2010−510424(JP,A)
【文献】 特開2003−035228(JP,A)
【文献】 特開平11−236859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 29/04
F02M 35/10
F02M 35/112
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状をなす液冷式インタークーラコアが収容されるコア収容室を構成するとともに、上面および下面がそれぞれ開口した合成樹脂製メインボディと、
このメインボディの上面開口に溶着され、上記インタークーラコアの出口側端面との間にコレクタ室を画成するとともに、上記メインボディの一部とともに複数のブランチ部を構成する合成樹脂製アッパカバーと、
上記メインボディの下面開口に溶着され、上記インタークーラコアの入口側端面との間にロアタンク室を構成する合成樹脂製ロアカバーと、
上記ロアカバーの底面に密接した金属製シェルと、
を備え、
上記シェルは、断面略U字形をなすように上記メインボディの一対の側壁に沿って延びる一対の取付片を有し、上記メインボディと上記ロアカバーとの溶着部を両側で跨ぐように上記取付片が上記メインボディに固定されている、ことを特徴とする過給機関のインタークーラ内蔵型吸気マニホルド。
【請求項2】
上記シェルは、上記ロアカバーの底面に接合されている、ことを特徴とする請求項1に記載の過給機関のインタークーラ内蔵型吸気マニホルド。
【請求項3】
上記メインボディは、下面開口を共用するように上記コア収容室に隣接して設けられた吸気入口管部を有し、
上記ロアカバーは、上記インタークーラコアの入口側端面の下方と上記吸気入口管部の下方とに亘って上記下面開口を覆っており、
上記シェルは、上記吸気入口管部の下方に位置する延長部を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の過給機関のインタークーラ内蔵型吸気マニホルド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ターボチャージャ等の過給機を備えた内燃機関において、過給吸気を冷却するインタークーラが内蔵された合成樹脂製吸気マニホルドに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャ等の過給機を備えた内燃機関においては、過給により高温となった吸気を機関導入前に冷却するために、外気や冷却水等との間で熱交換を行う熱交換器いわゆるインタークーラが設けられることがある。このインタークーラは、一般に、ダクトを介して過給機と吸気マニホルドとの間に配置される(特許文献1等)。
【0003】
一方、内燃機関の吸気マニホルドは、車両の軽量化等のために、従前の金属製のものに代えて合成樹脂にて構成される傾向にある。この合成樹脂製吸気マニホルドでは、コレクタ部およびブランチ部を含む吸気マニホルド全体を、2分割ないし3分割程度に分割して構成し、各部材を振動溶着により接合することが一般になされている。
【0004】
上記のように、インタークーラは一般に独立したケーシングを備え、ダクトを介して吸気系に接続されているが、近年、内燃機関の小型化ならびに吸気系レイアウトの簡素化を図るために、吸気マニホルドのコレクタ部とインタークーラのハウジングとを実質的に一体化して、インタークーラ内蔵型吸気マニホルドとすることが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−265347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成樹脂製の吸気マニホルドを基本として、その内部にインタークーラコアを収容しようとすると、過給吸気特にインタークーラコアで冷却される前の入口側の過給吸気が高温(例えば150℃〜200℃前後)であることから、高温下での合成樹脂材料の強度低下が一つの問題となる。また、吸気マニホルド内部に導入される過給吸気が大気圧よりも高い圧力となるので、自然給気機関の吸気マニホルドとは異なり、吸気マニホルドを内側から膨らませようとする力が常に作用する。
【0007】
従って、インタークーラコアの入口側タンクを合成樹脂製ボディと合成樹脂製カバーとの溶着により構成しようとした場合、合成樹脂製カバーの強度確保が困難であることに加え、溶着部を引き剥がそうとする力が作用することから、破損に至る懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る過給機関のインタークーラ内蔵型吸気マニホルドは、
略直方体形状をなす液冷式インタークーラコアが収容されるコア収容室を構成するとともに、上面および下面がそれぞれ開口した合成樹脂製メインボディと、
このメインボディの上面開口に溶着され、上記インタークーラコアの出口側端面との間にコレクタ室を画成するとともに、上記メインボディの一部とともに複数のブランチ部を構成する合成樹脂製アッパカバーと、
上記メインボディの下面開口に溶着され、上記インタークーラコアの入口側端面との間にロアタンク室を構成する合成樹脂製ロアカバーと、
上記ロアカバーの底面に密接した金属製シェルと、
を備え、
上記シェルは、断面略U字形をなすように上記メインボディの一対の側壁に沿って延びる一対の取付片を有し、上記メインボディと上記ロアカバーとの溶着部を両側で跨ぐように上記取付片が上記メインボディに固定されている、ことを特徴としている。
【0009】
上記のインタークーラ内蔵型吸気マニホルドでは、入口側タンクとなるロアタンク室に高温の過給吸気が導入され、液冷式インタークーラコアを通過して温度低下した後に、コレクタ室から複数のブランチ部を介して各気筒へ比較的低温の吸気となって供給される。従って、吸気マニホルドの温度分布としては、ロアタンク室周囲が最も高温となり、ロアカバーの合成樹脂材料の強度低下が顕著となる。
【0010】
このように強度低下が生じるロアカバーに対して、該ロアカバーの底面の外側に金属製シェルが密接しており、合成樹脂製のロアカバーを補強する。この金属製シェルは、両側の一対の取付片がメインボディに固定されており、断面で見たときに、ロアカバーの底面を覆うとともに両側の溶着部を跨いでメインボディ側面に沿って延びる略U字形をなす。従って、過給圧により生じる外側へ膨らませようとする力に対し、ロアカバーを堅固に支持するとともに、溶着部の剥離を確実に阻止する。
【0011】
当業者には知られているように、温度上昇に伴う金属材料の強度低下は合成樹脂材料の強度低下に比較して遙かに小さい。従って、金属製シェルが非常に薄肉のものであっても、ロアカバーの強度ならびに溶着部の強度を効果的に高めることができる。
【0012】
本発明の好ましい一つの形態では、上記シェルは、上記ロアカバーの底面に接合されている。例えば、公知の樹脂金属間接合技術を用いて金属製シェルと合成樹脂製ロアカバーとを接合することが望ましい。
【0013】
また、本発明の一つの実施例では、上記メインボディが、下面開口を共用するように上記コア収容室に隣接して設けられた吸気入口管部を有している。そして、上記ロアカバーが、上記インタークーラコアの入口側端面の下方と上記吸気入口管部の下方とに亘って上記下面開口を覆っており、上記シェルは、上記吸気入口管部の下方に位置する延長部を有する。
【0014】
すなわち、吸気入口管部から導入される過給吸気が最も高温であることから、ロアカバーの中で、吸気入口管部の下方の領域が比較的高温となる。金属製シェルがこの領域を覆う延長部を有することで、ロアカバーの当該領域の強度確保が図れる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、合成樹脂製ロアカバーに金属製シェルを組み合わせたことで、高温の過給吸気によるロアカバーの強度低下ならびに溶着部の剥離の問題を回避することができる。従って、合成樹脂材料を主体として内部にインタークーラコアを内蔵した小型でかつ軽量なインタークーラ内蔵型吸気マニホルドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明に係る吸気マニホルドの一実施例の斜視図。
図2】同じく分解斜視図。
図3】異なる方向から見た分解斜視図。
図4】吸気マニホルドの底面図。
図5】吸気マニホルドの側面図。
図6図5のA−A線に沿った断面図。
図7図5のB−B線に沿った断面図。
図8】金属製シェルを取り付ける前の状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1図7は、この発明を過給機付直列4気筒内燃機関の吸気マニホルドに適用した一実施例を示している。この吸気マニホルドは、水冷式インタークーラコア5を収容する中間部の合成樹脂製メインボディ1と、上面側の合成樹脂製アッパカバー2と、下面側の合成樹脂製ロアカバー3と、このロアカバー3の外側を覆う金属製シェル4と、から大略構成されている。
【0019】
高温の過給吸気と冷却水との間で熱交換を行うインタークーラコア5は、冷却水通路となる偏平な板状の多数のチューブ6(図6図7参照)を主体としたものであり、全体として略直方体形状に構成されているとともに、一端部に取付用フランジ7および冷却水入口管8ならびに冷却水出口管9を備えている。
【0020】
メインボディ1は、平坦な一対の側壁11,12と、両側壁11,12を連結する端部壁13と、を有し、これらの側壁11,12と端部壁13とによって、上記インタークーラコア5を収容する略矩形の筒状をなすコア収容室14を構成している。このコア収容室14の上記端部壁13と反対側の端部(♯1気筒側の端部)は、上記インタークーラコア5の出し入れのために開口しており、この開口部を囲んで、上記取付用フランジ7を受ける比較的厚肉のフランジ部15が枠状に形成されている。図1に示すように、上記取付用フランジ7は、複数本のボルト16によってフランジ部15に固定される。
【0021】
上記メインボディ1の上面部分は、皿状のコレクタロア部17としてコア収容室14の上方領域を囲むとともに機関長手方向の一方(詳しくは♯1気筒側)に拡がっており、かつこのコレクタロア部17の一方の側面からさらに、4本のブランチ部18の下半部を構成するブランチロア部19が側方へ延びている。上記メインボディ1の上面つまりコレクタロア部17およびブランチロア部19の上面は、振動溶着を考慮した分割面を構成するような形で開口している。
【0022】
上記アッパカバー2は、上記コレクタロア部17の上面を覆う皿状のコレクタアッパ部21と、このコレクタアッパ部21の一方の側面から上記ブランチロア部19の上面を覆うように側方へ延びたブランチアッパ部22と、を有しており、コレクタロア部17とブランチロア部19の双方からなるメインボディ1の上面開口縁に振動溶着によって接合されている。符号23は、メインボディ1とアッパカバー2との間の溶着部(換言すれば両者の分割部)を示している。なお、図示例では、ほぼ気筒列方向に沿った振動方向でもって振動溶着が行われる。
【0023】
このようにアッパカバー2がメインボディ1の上面開口を閉蓋することによって、コレクタロア部17とコレクタアッパ部21との間に、図6に示すように、コレクタ室24が形成され、また、ブランチロア部19とブランチアッパ部22とが組み合わされることで4本のブランチ部18が形成されている。上記コレクタ室24は、図6に示すように、インタークーラコア5の出口側端面5aが臨む空間として、実質的に、該出口側端面5aとアッパカバー2との間に形成されている。なお、図5に示すように、機関前後方向に直線的に延びるアッパカバー2の上面に対して、略直方体形状をなすインタークーラコア5が僅かに傾斜して配置されており、インタークーラコア5の出口側端面5aとの間に生じるコレクタ室24は、♯4気筒側から♯1気筒側へ向かうに従って断面積が拡大する。従って、インタークーラコア5を通過して温度低下した過給吸気は、コレクタ室24を経て各気筒のブランチ部18へ略均等に分配される。
【0024】
一方、上記メインボディ1の下面部分は、皿状のロアタンクアッパ部26としてコア収容室14の下方領域を囲むとともに機関長手方向に沿って♯4気筒側へ拡がっている。そして、コア収容室14の端部壁13から♯4気筒側へ張り出したロアタンクアッパ部26の延長部26a上面に、円筒状の吸気入口管部27が上方へ突出して形成されている。上記吸気入口管部27は、図外の過給機から吐出された過給吸気の入口となる部分であり、図示せぬスロットルチャンパを取り付けるための矩形のフランジ部28を先端に備えている。上記フランジ部28に円形に開口する吸気通路30つまり吸気入口管部27の端部開口は、図1図5等に明らかなように、上方へ向かって開口している。この吸気入口管部27は、端部壁13との間に適宜な間隙を有した形にコア収容室14に隣接して形成されており、図5図7に示すように、端部壁13との間に設けられた板状の連結壁29によって端部壁13に連結されている。上記メインボディ1の下面つまりロアタンクアッパ部26の下面は、やはり振動溶着を考慮した分割面を構成するような形で開口している。この下面開口は、上記吸気入口管部27の下方の領域をも包含しており、つまり、吸気入口管部27とコア収容室14との双方が一つの下面開口を共用している。
【0025】
上記ロアカバー3は、上記延長部26aを含めて上記ロアタンクアッパ部26の下面を覆う皿状をなしており、ロアタンクアッパ部26からなるメインボディ1の下面開口縁に振動溶着によって接合されている。符号31は、メインボディ1とロアカバー3との間の溶着部(換言すれば両者の分割部)を示している。なお、図示例では、気筒列と直交する方向に沿った振動方向でもって振動溶着が行われる。
【0026】
このようにロアカバー3がメインボディ1の下面開口を閉蓋することによって、ロアタンクアッパ部26とロアカバー3との間に、図6に示すように、比較的偏平なロアタンク室32が形成されている。上記ロアタンク室32は、インタークーラコア5の入口側端面5bが臨む空間として、実質的に、該入口側端面5bとロアカバー3との間に形成されている。
【0027】
ここで、コア収容室14の下方の領域においては、図8に示すように、ロアカバー3の底面33が機関前後方向に直線的に延びており、これに対しインタークーラコア5が前述したように傾斜して配置されているので、インタークーラコア5の入口側端面5bとロアカバー3との間では、♯1気筒側へ近付くに従ってロアタンク室32の断面積が縮小していく。
【0028】
また、吸気入口管部27の下方の領域つまりロアタンクアッパ部26の延長部26aの下面は、ロアカバー3の延長部3a(コア収容室14の下方領域から♯4気筒側へ延長された領域)が覆っているが、この延長部3aは、図5に示すように上方へ湾曲しており、これに対応して、ロアタンクアッパ部26の延長部26aとロアカバー3の延長部3aとの間の溶着部31も上方へ湾曲した形状をなしている。これにより、吸気入口管部27内の上下方向に沿った吸気通路30が、気筒列方向に沿って延びるロアタンク室32へと方向を変えつつ滑らかに接続されている。なお、ロアカバー3は、全体として靴底状の形状をなしている(図2図4参照)。
【0029】
以上のメインボディ1、アッパカバー2、およびロアカバー3は、適宜な合成樹脂材料を用いて個々に成形されている。例えばナイロン樹脂にガラス繊維を30%前後配合した一般的な繊維強化樹脂を射出成形することにより形成されている。そして、これら三者は、前述したように、溶着部23,31において一体に溶着されている(図8参照)。
【0030】
これに対し、シェル4は、アルミニウム合金等の比較的薄い金属板をプレス成形したものであり、図2に示すように、延長部3aを含むロアカバー3の底面33に密接する底壁部35と、この底壁部35の周縁から上方へ立ち上がって溶着部31の側面を覆うフランジ壁部36と、コア収容室14に対応する領域においてフランジ壁部36を兼ねた形でさらに上方へ延びた一対の取付片37と、を備えている。
【0031】
上記底壁部35は、ロアカバー3の底面33の三次元形状に基本的に一致した形状をなしており、コア収容室14の下方に対応する領域から♯4気筒側へ延びた延長部35aは、ロアカバー3の延長部3aの湾曲形状に対応して、やはり上方へ湾曲した形状をなしている。この底壁部35は、延長部3aを含むロアカバー3の底面33に適宜な手段で堅固に接続されている。一実施例では、公知の樹脂金属間接合技術を用いて金属製シェル4と繊維強化ナイロン樹脂製のロアカバーとが接合されている。例えば、ロアカバー3の底面33に図2に示すように比較的高さの低い接合用リブ38が予め形成されており、接合面となる金属製シェル4の底壁部35の内側面に薬剤(例えばシランカップリング剤)を塗布した上で、当該底壁部35を樹脂の溶融温度付近まで加熱し、ロアカバー3の底面33を突き合わせかつ加圧することで、化学結合による分子接合(共有接合)が行われる。なお、図示例では、振動溶着時のメインボディ1とシェル4との干渉の問題を回避するために、ロアカバー3をメインボディ1に溶着した後にシェル4の接合が行われるが、振動方向の設定などにより可能であれば、ロアカバー3をメインボディ1に溶着する前にロアカバー3にシェル4を接合しておくようにしてもよい。
【0032】
シェル4の一対の取付片37は、コア収容室14を構成するメインボディ1の側壁11,12に沿って上方へ延びており、上縁の一対の取付孔39が、側壁11,12に設けられた円柱状のボス部41に、それぞれボルト42を介して固定されている。なお、ボス部41には、金属製の円筒状ナット43(図2参照)が加熱圧入あるいはインサート成形などにより配設されている。
【0033】
また、この実施例では、シェル4は、さらに取付片37の♯4気筒側の側縁に隣接して一対の補助取付片44を具備している。この補助取付片44は、フランジ壁部36の上縁から比較的短く延びた小型のもので、その上縁に設けられた取付孔45が、メインボディ1の吸気入口管部27側面に設けられた円柱状のボス部46(図2図7参照)に、それぞれボルト42を介して固定されている。ボス部46は、やはり金属製のナット43を具備している。
【0034】
図6は、図5のA−A線に示すコア収容室14を横切る切断面に沿った断面を示しているが、この図6に示すように、金属製シェル4は、底壁部35と一対の取付片37とによって断面略U字形をなしている。つまり、底壁部35の両側に設けられた取付片37および補助取付片44が、メインボディ1とロアカバー3との溶着部31を両側で跨いでおり、ボス部41,46から吊り下げられたシェル4の底壁部35がロアカバー3を下側から支持する形となっている。また、ロアカバー3の延長部3aを囲むシェル4側の底壁部35の延長部35aにおいては、補助取付片44ならびにフランジ壁部36が溶着部31の外側面に沿って上方へ延びており、溶着部31の外側面に隙間なく接している。
【0035】
なお、図1等に符号48で示す一対の通しボルトは、インタークーラコア5を貫通しており、この通しボルト48がコア収容室14の両側の側壁11,12を外側から拘束することで、過給圧による側壁11,12の外側への膨張を抑制している。
【0036】
上記のように構成された吸気マニホルドにおいては、図外の過給機により加圧されて高温高圧となった過給吸気が吸気入口管部27の吸気通路30から導入される。この過給吸気は、ロアカバー3の延長部3aに沿って略90°方向を変えてロアタンク室32へと流入し、インタークーラコア5を通して上方へと流れる。そして、インタークーラコア5通過時に冷却水との熱交換により冷却された後、コレクタ室24から各気筒のブランチ部18へと流れる。
【0037】
このように上記吸気マニホルドによれば、インタークーラコア5が内蔵されることから、過給機関の吸気系レイアウトが簡素化し、吸気の総流路長の短縮による通気抵抗の低減ができ、かつインタークーラを含む内燃機関全体の小型化が図れる。また、吸気マニホルドは、合成樹脂製のメインボディ1等を主体として構成されるので、全体として軽量かつ低コストに構成することが可能である。
【0038】
ここで、インタークーラコア5を内蔵した上記のような吸気マニホルドでは、冷却前の高温の過給吸気が流れるロアタンク室32付近の材料温度が高くなり、合成樹脂材料の強度低下とりわけロアカバー3の強度低下が懸念される。しかも高温下の強度低下している状況でロアタンク室32内に過給圧が作用する。しかし、上記構成では、金属製シェル4がロアカバー3の底面33に接合されており、ロアカバー3を外側から効果的に補強しているので、高温下でも強度不足の問題がない。また、断面U字形をなす金属製シェル4が両側の溶着部31を跨いで配置されるので、過給圧により溶着部31を引き剥がそうとする力に対抗して、溶着部31を確実に保護することができる。
【0039】
さらに、ロアカバー3の延長部3aは、取付片37ならびに補助取付片44から片持ち状に突出しており、また吸気入口管部27から流入した高温過給吸気が衝突する部位であることから高温となりやすいが、上記実施例では、補助取付片44に連なったフランジ壁部36が半円筒面をなすように連続しているので、シェル4の延長部35aの剛性が高く得られ、ロアカバー3の延長部3aを確実に補強することができる。
【0040】
なお、温度上昇に伴う金属材料の強度低下は合成樹脂材料の強度低下に比較して遙かに小さい。従って、金属製シェル4が非常に薄肉のものであっても、ロアカバー3の強度ならびに溶着部31の強度を効果的に高めることができる。例えば、板厚1mm以下のアルミニウム板からなる金属製シェル4でもって十分な強度確保が図れる。従って、例えば合成樹脂製ロアカバー3の底面に多数の補強リブを一体に成形した構成などに比べて、重量ならびに材料コストの点でむしろ有利となる。また、ロアカバー3の底面33から下方へ大きく突出する補強リブを具備しないことから、車両への搭載性の点でも有利である。
【0041】
以上、この発明の一実施例を詳細に説明したが、この発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1…メインボディ
2…アッパカバー
3…ロアカバー
4…シェル
5…インタークーラコア
11,12…側壁
13…端部壁
14…コア収容室
24…コレクタ室
27…吸気入口管部
31…溶着部
32…ロアタンク室
35…底壁部
35a…延長部
36…フランジ壁部
37…取付片
44…補助取付片
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8