(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の仕切り板それぞれは、前記回転軸の貫通を受ける軸受部を有するとともに、前記受入側から前記排出側に移動する前記被処理液の通過を許す通過路を有するものであり、
前記複数の仕切り板のうち、前記複数の部屋のうちの1つの撹拌部屋と、該1つの撹拌部屋に対し前記移動方向の下流側で隣接する無撹拌部屋とを仕切る仕切り板は、該1つの撹拌部屋と、該1つの撹拌部屋に対し前記移動方向の上流側で隣接する無撹拌部屋とを仕切る仕切り板よりも、相対的に前記回転軸により近い位置に前記通過路を有するものである請求項1に記載の凝集装置。
前記複数の仕切り板それぞれは、前記開口部として、該仕切り板それぞれにおける前記回転軸の位置を中心として対称な位置に形成された互いに同一形状の2つの開口部からなる組を1組以上有するものである請求項3に記載の凝集装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
排水の浄化処理の処理効率を高める観点から考えると、短時間で汚泥を十分に凝集させることが望ましい。しかしながら、この分野における経験則として、同じ回転速度で撹拌を継続しても、凝集剤の性能や添加量の如何により、汚泥の凝集はそれほど進まないことが知られている。その一つの原因としては、撹拌により生じた渦に起因して収容槽内における凝集剤や汚泥の分布に偏りが生じ、この結果、凝集剤と汚泥とが分離して両者の接触が不足することが考えられる。たとえば、
図1の従来の凝集装置100’において、凝集剤と汚泥のうち、一方は回転軸22’の回りに極端に集中するのに対し、他方は比較的収容槽10’全体に拡散している場合には、こうした事態が生じ得る。
【0009】
こうした問題を解消するための1つの策としては、撹拌の回転速度を定期的に変動させることで、凝集剤あるいは汚泥を拡散させて分布の偏りを解消することが考えられる。
【0010】
しかしながら、この解消策では、複雑な運転制御機構が必要となることに加え、排水を一定期間保持しながら、回転速度が変動する撹拌処理を行うことが必要となり、かえって凝集処理に時間がかかる。このため、
図1の従来の凝集装置100’のように、新たな排水の受入れと凝集処理後の排水の排出とを同時並行で行いつつ連続的に凝集処理を施していくことが要求される凝集装置に対しては、この解消策をそのまま適用するのは難しい。
【0011】
以上説明したように、汚泥の凝集処理時間の短縮化を簡易な構成で実現するにあたっては、さらなる工夫が求められる。
【0012】
上記の事情を鑑み、本発明は、簡易な構成で汚泥等の不溶性物質の凝集処理時間を短縮するとともに、凝集剤の使用量を低減することができる凝集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下の凝集装置を提供する。
【0014】
[1] 不溶性物質を含む被処理液を凝集剤と混合して該被処理液中の不溶性物質を凝集させる凝集装置において、前記不溶性物質凝集前の前記被処理液を受け入れる受入側と、前記不溶性物質凝集後の前記被処理液を排出する排出側とを有し、前記不溶性物質を凝集させつつ前記受入側から前記排出側に向かって移動する前記被処理液を収容する収容槽と、前記収容槽内に配置された複数の撹拌部材を有し、前記処理槽内を前記排出側に向かって移動する前記被処理液を、前記複数の撹拌部材を駆動することで撹拌して前記凝集剤と混合する撹拌手段と、前記収容槽内に配置され、前記受入側から前記排出側に向かう前記被処理液の移動を確保しつつ、前記受入側から前記排出側に向かう移動方向に沿って前記収容槽内部を複数の部屋に区分けする複数の仕切り板と、を備え、前記複数の撹拌部材は、該複数の撹拌部材のうちの少なくとも1つが配置される撹拌部屋と、該複数の撹拌部材のうちのいずれも配置されていない無撹拌部屋とが、前記受入側から前記排出側に向かって交互に並ぶように、前記複数の部屋において一部屋置きに分散して配置されたものであ
り、前記撹拌手段は、前記受入側から前記排出側に向かって延びる1本の回転軸を有するとともに、前記複数の撹拌部材として、前記回転軸に対しそれぞれ一部が固定され該回転軸の回転により該回転軸の回りでそれぞれ回転する複数の撹拌羽根部材を有するものである凝集装置。
【0016】
[
2] 前記複数の仕切り板それぞれは、前記回転軸の貫通を受ける軸受部を有するとともに、前記受入側から前記排出側に移動する前記被処理液の通過を許す通過路を有するものであり、前記複数の仕切り板のうち、前記複数の部屋のうちの1つの撹拌部屋と、該1つの撹拌部屋に対し前記移動方向の下流側で隣接する無撹拌部屋とを仕切る仕切り板は、該1つの撹拌部屋と、該1つの撹拌部屋に対し前記移動方向の上流側で隣接する無撹拌部屋とを仕切る仕切り板よりも、相対的に前記回転軸により近い位置に前記通過路を有するものである[
1]に記載の凝集装置。
【0017】
[
3] 前記複数の仕切り板それぞれは、前記通過路として、該仕切り板それぞれを貫通する開口部を有するものである[
2]に記載の凝集装置。
【0018】
[
4] 前記複数の仕切り板それぞれは、前記開口部として、該仕切り板それぞれにおける前記回転軸の位置を中心として対称な位置に形成された互いに同一形状の2つの開口部からなる組を1組以上有するものである[
3]に記載の凝集装置。
【0019】
[
5] 前記複数の仕切り板は、前記収容槽に対し、前記回転軸および前記複数の撹拌羽根部材とともに着脱自在である[1]〜[
4]のいずれかに記載の凝集装置。
【0020】
[
6] 前記収容槽は、前記受入側および前記排出側を除き、前記回転軸に対して垂直な面における断面が多角形状の容器であり、前記複数の仕切り板のそれぞれは前記多角形状に対応した多角形の板状部材であって、前記回転軸の回転に従動することなく前記軸受部で前記回転軸に支持されたものである[
1]〜[
5]のいずれかに記載の凝集装置。
【0021】
[
7] 前記収容槽は、前記受入側および前記排出側を除き、前記回転軸に対して垂直な面における断面が円形状の容器であり、前記複数の仕切り板のそれぞれは円形の板状部材であって、前記軸受部で前記回転軸に固定され該回転軸の回転により該回転軸の回りを回転するものである[
1]〜[
5]のいずれかに記載の凝集装置。
【0022】
[
8] 前記複数の撹拌部材のうち、前記複数の部屋のうちの前記排出側に最も近い撹拌部屋に配置されている撹拌部材が、最も撹拌力が低い[1]〜[
7]のいずれかに記載の凝集装置。
【発明の効果】
【0023】
本発明の凝集装置では、排水の受入側から排出側に向かって、撹拌部屋と無撹拌部屋とが交互に並ぶという簡易な構成が採用されている。この構成により、受入側から排出側へ移動する排水に対して、撹拌部材による撹拌と、撹拌されずに拡散することによる汚泥と凝集剤の接触とが交互に行われることとなり、不溶性物質の凝集処理時間が短縮し凝集剤の使用量も低減する。このように、本発明の凝集装置では、簡易な構成により、不溶性物質の凝集処理時間の短縮化と凝集剤の使用量低減とが図られている。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0026】
図2は、本発明の凝集装置の一実施形態の概略的な構成を表した模式図である。
【0027】
図2に示す凝集装置100には収容槽10が備えられている。収容槽10の下部には、排水受入用配管71が接続されており、この排水受入用配管71は、収容槽10の下部に接続される少し手前側で凝集剤用配管73と接続されている。汚泥等の不溶性物質(以下、単に汚泥と呼ぶ)を含む排水は、排水受入用配管71を図中の上向きの太線矢印の方向に流れ、収容槽10の下部に到達する少し手前で、凝集剤用配管73を図中の左向きの太線矢印の方向に注入された凝集剤と合流する。そして、これら排水および凝集剤からなる液状物が収容槽10の下部に流入する。なお、以下では、排水に凝集剤が注入されてなるこの液状物についても、凝集剤注入前の排水と特に区別せずに同じように「排水」と呼ぶことがある。
【0028】
凝集剤としては、たとえば、汚泥の構成粒子の表面電荷を中和して小フロックを形成する役割を主に果たす無機系凝集剤と、その小フロックを架橋して相対的に大きい大フロックを形成する有機系凝集剤とを採用することができる。ここでは、これらをまとめて単に凝集剤と呼ぶ。
【0029】
図2の凝集装置100では、収容槽10の上部には排水排出用配管72が接続されており、後述の凝集処理が施された後の排水は、収容槽10から排水排出用配管72内へ図中の左向きの太線矢印の方向に排出される。
【0030】
ここで、収容槽10に流入してくる、汚泥を含む排水が、本発明にいう「被処理液」の一例に相当する。また、排水と凝集剤とを受け入れる収容槽10の下部の側(以下、収容槽下側と呼ぶ)が、本発明にいう「受入側」の一例に相当する。また、凝集処理後の排水が排出される収容槽10の上部の側(以下、収容槽上側と呼ぶ)が、本発明にいう「排出側」の一例に相当する。
【0031】
凝集装置100では、収容槽下側から新たな排水が連続的に流入し、この流入により、すでに収容槽10に収容されている排水は、後述の凝集処理を受けながら収容槽下側から収容槽上側に向けて押し出されるようにして移動する。そして、凝集処理後の排水が、収容槽上側から溢れ出るようにして排出される。このように、凝集装置100は、新たな排水の受入れと凝集処理後の排水の排出とを同時並行で行いつつ、連続的に凝集処理を施していく。
【0032】
以下、
図2の凝集装置100における凝集処理について詳しく説明する。
【0033】
凝集装置100には、収容槽10の内部の排水を撹拌して凝集剤と混合する撹拌手段20が備えられている。撹拌手段20は、凝集装置100の内部において、
図2の上下方向に延びる回転軸22、および、この回転軸22に軸着された2つの撹拌羽根部材21を有している。回転軸22は、不図示の回転駆動源から回転力を得て、その軸線を回転中心として回転(すなわち自転)するものである。この回転軸22が回転することにより、2つの撹拌羽根部材21は、同じ回転速度で回転軸22の回りを回転する。
【0034】
ここで、凝集装置100には、収容槽下側から収容槽上側に向かう排水の移動路(後述の開口51,52,53)を確保しつつ、収容槽下側から収容槽上側に向かう方向に沿って収容槽10の内部を4つの部屋41,42,43,44に区分けする3枚の仕切り板31,32,33が備えられている。以下では、これら3枚の仕切り板31,32,33を、排水の受入側(図の下側)から、それぞれ、第1の仕切り板31、第2の仕切り板32、および、第3の仕切り板33と呼んで区別する。また、4つの部屋41,42,43,44についても排水の受入側(図の下側)から、それぞれ、第1の部屋41、第2の部屋42、第3の部屋43、および、第4の部屋44と呼んで区別する。これら第1の仕切り板31、第2の仕切り板32、および、第3の仕切り板33には、回転軸22を貫通させる第1の軸受部61、第2の軸受部62、および、第3の軸受部63がそれぞれ形成されている。
【0035】
図2に示されているように、第1の仕切り板31と収容槽10内部の下面(床面)との間に位置する第1の部屋41、および、第2の仕切り板32と第3の仕切り板33との間に位置する第3の部屋43の2部屋には、上述した撹拌羽根部材21がそれぞれ1つずつ配置されている。このため、これら第1の部屋41および第3の部屋43では、撹拌羽根部材21の回転により各部屋の排水が撹拌され、排水と凝集剤とが混合される。この混合により、汚泥が凝集剤と接触して汚泥の凝集が進む。しかし、一部の汚泥については、この撹拌では凝集があまり進まないといった事態がしばしば生じる。その正確な原因は不明であるが、一つの原因としては、撹拌羽根部材21の回転により生じた渦のため排水に含まれる汚泥と凝集剤の分布に偏りが生じ、一部の汚泥が凝集剤から分離して凝集剤との接触が不足していることが考えられる。すなわち、撹拌手段20の作用によって排水と凝集剤は強制的に混合されるが、その際に、凝集剤は回転軸22の回転により生じた渦に巻き込まれて、回転軸22の近傍に集中する傾向がある。したがって、回転軸22から遠方に存在する一部の排水は凝集剤から分離してしまい、その一部の排水中の汚泥と凝集剤との接触が不足することとなる。なお、汚泥と凝集剤の実際の分布状態は、具体的には、汚泥の性質や凝集剤の種類や撹拌羽根部材21の回転速度等の要素によって決まると考えられる。
【0036】
一方、第1の仕切り板31と第2の仕切り板32との間に位置する第2の部屋42、および、第3の仕切り板33と収容槽10内部の上面(天井面)との間に位置する第4の部屋44の2部屋には、いずれも撹拌羽根部材21が全く配置されていない。これら第2の部屋42および第4の部屋44では、撹拌羽根部材21による撹拌が行われないため、凝集剤が渦から解放されて回転軸22の遠方に向けて拡散する。したがって、上述した第1の部屋41および第3の部屋43に比べると、分布の偏りが生じにくく部屋内の排水中の汚泥と凝集剤の接触が促進される。
【0037】
ここで、凝集装置100では、第1の部屋41および第3の部屋43のように撹拌羽根部材21による撹拌が行われる部屋(以下、撹拌部屋と呼ぶ)と、第2の部屋42および第4の部屋44にように撹拌羽根部材21による撹拌が行われない部屋(以下、無撹拌部屋と呼ぶ)とが、収容槽下側から収容槽上側に向かって交互に並んでいる。この構成により、収容槽下側から収容槽上側に向かって移動する排水に対し、撹拌と無撹拌とが交互に行われることなる。その結果、汚泥と凝集剤との混合・接触が交互に繰り返されることで、排水中の汚泥の多くについて凝集剤との接触が十分に促進されることとなり、汚泥の凝集化が十分に行われることとなる。特に、凝集装置100では、収容槽下側から収容槽上側に向かって排水を移動させるだけで、凝集化の促進が行われるため、簡易な構成による汚泥の凝集処理時間の短縮化が実現されている。また、凝集剤を十分に活用できるため、凝集剤の使用量の低減も実現する。
【0038】
次に、第1の仕切り板31、第2の仕切り板32、および、第3の仕切り板33を通過する排水の移動路について説明する。
【0039】
図2に示されているように、第1の仕切り板31、第2の仕切り板32、および、第3の仕切り板33には、収容槽下側から収容槽上側に向かう排水の通過路となる、第1の開口部51、第2の開口部52、および、第3の開口部53がそれぞれ形成されている。排水は、各開口部中の上向き矢印で示すように、各開口部を上向きに通過して1つの部屋からその上の部屋へと移動する。この構成により、凝集装置100では、上述した「収容槽下側から収容槽上側に向かう排水の移動の確保」が実現している。以下では、収容槽下側から収容槽上側に向かう方向を単に「移動方向」と呼ぶことがある。
【0040】
ここで、第3の仕切り板33は、第1の仕切り板31と同じ構造の仕切り板であり、従って、第3の仕切り板33における第3の開口部53および第3の軸受部63の位置は、第1の仕切り板31における第1の開口部51および第1の軸受部61の位置と同じである。
【0041】
一方、第3の部屋43(撹拌部屋の1つ)を挟んで対峙する第2の仕切り板32と第3の仕切り板33との間では開口部の位置は異なっている。具体的には、第3の部屋43(撹拌部屋の1つ)と、この第3の部屋43に対し移動方向の下流側で隣接する第4の部屋44(無撹拌部屋の1つ)とを仕切る第3の仕切り板33は、この第3の部屋43(撹拌部屋の1つ)と、この第3の部屋43に対し移動方向の上流側で隣接する第2の部屋42(無撹拌部屋の1つ)とを仕切る第2の仕切り板32よりも、相対的に回転軸22により近い位置に排水の通過路(開口部)を有している。たとえば、
図2に示されているように、第3の仕切り板33における、回転軸22から第3の開口部53までの距離dは、第2の仕切り板32における、回転軸22から第2の開口部52までの距離Dよりも短い。
【0042】
なお、上述したように第1の仕切り板31は、第3の仕切り板33と同じ構造の仕切り板であるため、第1の仕切り板31における、回転軸22から第1の開口部51までの距離dは、距離Dよりも短い。
【0043】
以下、これら第1の仕切り板31、第2の仕切り板32、および第3の仕切り板33の間における開口部の位置関係による効果を、収容槽下側から収容槽上側に向かう排水の流れ方と合わせて説明する。
【0044】
汚泥を含む排水と凝集剤とは、まず、収容槽下側から、撹拌部屋である第1の部屋41に進行する。そして、第1の部屋41内に設けられた撹拌羽根部材21の回転による撹拌を受け、排水と凝集剤とが混合される。この混合により、全体的には、排水中の汚泥が凝集剤と接触して汚泥の凝集が進む。ただし、撹拌羽根部材21の回転により生じた渦のため、汚泥や凝集剤のうち、相対的に回転軸22の側に偏在しやすい成分と、相対的にあまり偏在せずに拡散しやすい成分とで分布の偏りが生じることがある。この場合、上述したように、一部の汚泥については、凝集剤から分離して凝集剤との接触が不足してしまうことがあり得る。
【0045】
この状態で第1の部屋41内の排水は、収容槽下側から新たな排水が第1の部屋41に進行してくることにより、押し出されるようにして第1の仕切り板31における第1の開口部51を通って第1の部屋41から第2の部屋42に移動する。回転軸22の近傍では、汚泥と凝集剤の混合が相対的に進んでおり、かつ、第1の開口部51が回転軸22の近くに存在するため、混合の進んだ排水が優先的に上側に持ち上がるようにスムーズに第2の部屋42に移動する。一方、汚泥と凝集剤の混合が相対的に遅れている残りの排水(回転軸22から離れた場所に存在する排水)は、収容槽下側から新たに進行してくる排水に押されるようにして回転軸22側に流れ込み、そのまま上側に持ち上がるようにスムーズに第2の部屋42に移動する。
【0046】
ここで、もし仮に、第1の開口部51が回転軸22からもっと離れた位置に存在していたとすると、凝集剤との混合が相対的に遅れている排水が優先的に第2の部屋42に移動する。この場合、凝集剤との混合が相対的に進んでいる排水や更には凝集剤そのものが第2の部屋42に移動できずに、第1の部屋41内で対流して残留するといった事態が生じ得る。一方、
図2の凝集装置100では、第1の開口部51が回転軸22の近くに存在することにより、このような事態は回避されている。
【0047】
第1の開口部51を通って第1の部屋41から第2の部屋42に移動した汚泥や凝集剤は、第2の部屋42には撹拌羽根部材21が存在しないため、回転軸22付近の第1の開口部51から離れ、回転軸22から遠ざかる方向に広がりながら第2の部屋42全体に拡散していく。この拡散により、第2の部屋42の広い範囲で汚泥と凝集剤とが接触しやすくなり、汚泥の凝集が進む。ここで、第1の開口部51からは、新たな排水が第1の部屋41から第2の部屋42に次々と移動してくるため、この新たな排水に押し出されるようにして、第2の部屋42内の排水は、第2の仕切り板32における第2の開口部52を通って第2の部屋42から第3の部屋43に移動する。このとき、回転軸22から遠ざかる方向に拡散していった汚泥や凝集剤は、第2の仕切り板32における第2の開口部52が第1の仕切り板31における第1の開口部51よりも回転軸22から相対的に遠い位置に存在することにより、そのまま上側に持ち上がるようにスムーズに第2の開口部52を通って第3の部屋43に移動する。
【0048】
ここで、もし仮に、第2の仕切り板32における第2の開口部52が、第1の仕切り板31における第1の開口部51よりも回転軸22から相対的に近い位置に存在していたとすると、汚泥や凝集剤は、第2の部屋42全体に十分に拡散する前に、第1の開口部51から第2の開口部52に向けてそのまま上側に移動することとなる。この場合、第2の部屋42において、汚泥と凝集剤との接触機会があまり与えられないこととなり、汚泥の凝集が進まない。一方、
図2の凝集装置100では、第2の仕切り板32における第2の開口部52が、第1の仕切り板31における第1の開口部51よりも回転軸22から相対的に遠い位置に存在することにより、このような事態は回避されている。
【0049】
撹拌部屋である第3の部屋43に移動してきた汚泥や凝集剤は、第3の部屋43の撹拌羽根部材21による撹拌を受け、この撹拌により全体的には汚泥の凝集が進むが、第1の部屋41と同様に分布の偏りが生じ得る。しかし第2の部屋42から第3の部屋43へ新たな排水が移動してくると、相対的に回転軸22の側に偏在しやすい成分を含み汚泥と凝集剤の混合が相対的に進んでいる排水(回転軸22の近傍の排水)は、第3の仕切り板33における第3の開口部53が回転軸22付近に存在することにより、そのまま上側に持ち上がるように第3の開口部53を通ってスムーズに第4の部屋44に移動する。一方、相対的に拡散しやすい成分を含み汚泥と凝集剤の混合が相対的に遅れている排水(回転軸22から離れた場所に存在する排水)は、第3の部屋43に新たに進行してくる排水に押されるようにして回転軸22側に流れ込み、そのまま上側に持ち上がるようにスムーズに第4の部屋44に移動する。
【0050】
第4の部屋44に移動してきた汚泥や凝集剤は、第4の部屋44には撹拌羽根部材21が存在しないため、回転軸22付近の第3の開口部53から離れ、回転軸22から遠ざかる方向に広がりながら第4の部屋44全体に拡散する。この拡散により、上述の第2の部屋42と同様にして汚泥の凝集が進む。そして、新たな排水が第4の部屋44に移動してくることにより、汚泥の凝集化が進んだ排水が、第4の部屋44から溢れ出るようにして収容槽上側の排水排出用配管72を通って排出されていく。
【0051】
以上説明したように、
図2の凝集装置100では、1つの撹拌部屋(たとえば第3の部屋43)と、その1つの撹拌部屋に対し移動方向の下流側で隣接する無撹拌部屋(たとえば第4の部屋44)とを仕切る仕切り板(たとえば第3の仕切り板33)は、その1つの撹拌部屋と、その1つの撹拌部屋に対し移動方向の上流側で隣接する無撹拌部屋(たとえば第2の部屋42)とを仕切る仕切り板(たとえば第2の仕切り板32)よりも相対的に回転軸22により近い位置に通過路(たとえば第3の開口部53)を有することで、汚泥や凝集剤のスムーズな移動を確保しつつ汚泥凝集化の促進が図られている。
【0052】
なお、以上の凝集装置100では、第2の仕切り板32は、第1の仕切り板31および第3の仕切り板33に比して、相対的に回転軸22から遠い位置に第2の開口部52を有していたが、本発明の凝集装置は、排水の通過路としてこのような開口以外の形態も採用できる。
【0053】
図3は、
図2の凝集装置100の変形例である凝集装置101の概略的な構成を表した模式図である。
【0054】
図3の凝集装置101においては、
図2の凝集装置100と同一の構成要素には同一の符号が付されており、その重複説明は省略する。
【0055】
図3の凝集装置101では、
図2の凝集装置100の第2の仕切り板32とは異なり、撹拌羽根部材21に対し収容槽下側で隣接する第2の仕切り板32_1は、排水の通過路として、第2の仕切り板32_1を貫通する開口を有していない。その代わりに、第2の仕切り板32_1は、第2の仕切り板32_1の周縁部と収容槽10の内壁面との間に隙間52_1が形成されるように大きさが調整されている。
図3の凝集装置101では、排水が第2の部屋42から第3の部屋43に移動する際には、隙間52_1に記載された上向き矢印が示すように、排水は、この隙間52_1を通って移動する。この隙間52_1の効果は、
図2の凝集装置100の第2の仕切り板32における第2の開口部52の効果と同じである。
【0056】
図2の凝集装置100に戻ってその説明を続ける。
【0057】
図4は、第2の仕切り板32に沿った
図2の凝集装置100の断面を表す模式図、
図5は、第1の仕切り板31に沿った
図2の凝集装置100の断面を表す模式図である。
【0058】
図4および
図5に示すように、凝集装置100の第2の仕切り板32には、第2の開口部52が全部で4つ形成されており、第1の仕切り板31にも、第1の開口部51が全部で4つ形成されている。第2の開口部52は、いずれも同一の形状であり、かつ、各々は各辺と対面するように回転軸22から等距離に配置されている。
図5中の第1の開口部51も同様である。なお、
図2の第3の仕切り板33は、上述したように第1の仕切り板31と同じ構成を有するので、第1の仕切り板31と同じ位置に同じ形状の4つの第3の開口部53を有している。
【0059】
このように、第1の仕切り板31、第2の仕切り板32、および第3の仕切り板33が、各仕切り板における排水の通過路として、回転軸22の位置を中心として対称な位置に形成された互いに同一形状の2つの開口部からなる組を1組以上(
図4および
図5では2組)有することで、
図2の凝集装置100における排水の流れも回転軸22を中心として対称となる。
図2の凝集装置100では、このような構成により、非対称な排水の通過路に起因する不要な対流の発生を抑え、汚泥や凝集剤の移動がスムーズに行われるよう工夫されている。
【0060】
なお、
図4および
図5の凝集装置100では、各仕切り板における各開口部の形状が矩形であって4個の開口部を有するものとして説明したが、本発明の凝集装置は、開口部の形状は矩形以外の形状であってもよく、その数もたとえば、2個あるいは6個以上の数であってもよい。また、矩形の範囲に亘って複数の孔を打ち抜いて開口部としてもよい。
【0061】
図4および
図5に示すように、収容槽10は、回転軸22に対して垂直な面における断面が矩形(ほぼ正方形)の容器である(ただし収容槽上側および収容槽下側を除く)。また、この収容槽10の形状に対応して、各仕切り板も矩形(ほぼ正方形)の板状部材である。ここで、各仕切り板の周縁は、収容槽10の内壁から微小な距離をおいて離間している。この離間している距離は微小であるため、各仕切り板の周縁と収容槽10の内壁との隙間を通過する排水の量はわずかであり、実質的に排水の通過路とはならない(なお、この点は、
図3の変形例の凝集装置101における、第2の仕切り板32_1の周縁の隙間52_1が排水の通過路であるのとは大きく異なる点である)。凝集装置100では、各仕切り板は、収容槽10に直接支持されてはいない。その代わりに、各仕切り板は、後述の支持機構により、回転軸22の回転に従動することなく回転軸22(正確には、回転軸22の一部である後述の
図6の2つの板状突出部221,222)に支持されている。この支持形態により、回転軸22、2つの撹拌羽根部材21、および、3つの仕切り板31,32,33は、収容槽10に対し一体的に着脱自在となっており、収容槽10の清掃等の凝集装置100のメンテナンスが容易となっている。
【0062】
なお、撹拌手段の着脱といったメンテナンス性を確保する必要がないのであれば、本発明の凝集装置では、各仕切り板の周縁が収容槽の内壁に対し、隙間を空けることなく直接に固定されている形態が採用されてもよい。
【0063】
以下、
図4の凝集装置100における第2の仕切り板32の支持機構を例にとって、各仕切り板の支持機構について説明する。
【0064】
図6は、
図2および
図4の凝集装置100における第2の仕切り板32の支持機構を表す模式図である。
【0065】
図6に示すように、第2の仕切り板32では、第2の仕切り板32における第2の軸受部62において回転軸22が貫通している。第2の軸受部62は、回転軸22に接続され第2の仕切り板32に沿って広がる2つの板状突出部221,222の間に配置されており、回転軸22が回転するときには、回転軸22の回転に従動することなく2つの板状突出部221,222に支持される。
【0066】
図2の凝集装置100では、
図6で説明したのと同様な支持機構が、第1の仕切り板31および第3の仕切り板33についても備えられている。
【0067】
以上では、収容槽10は、回転軸22に対して垂直な面における断面が四角形状の容器であり、各仕切り板は矩形(ほぼ正方形)の板状部材であったが、本発明では、収容槽は、他の断面形状を有する容器であって各仕切り板もその収容槽の断面形状に応じた別の形状の板状部材であってもよい。たとえば、収容槽が、三角形や六角形等の他の多角形の断面形状を有する容器、あるいは、円形や楕円形やレーストラック状の断面形状を有する容器であって、各仕切り板もその収容槽の断面形状に応じた形状の板状部材であってもよい。
【0068】
以下では、収容槽や各仕切り板の形状が
図2、
図4および
図5の凝集装置100とは異なる変形例について説明する。この変形例の凝集装置は、収容槽や各仕切り板の形状以外の点では、
図2、
図4および
図5で上述した凝集装置100と同じである。特に、側面側からみた全体的な構成は、
図2に示す凝集装置100の構成とほぼ同様であるので、全体的な構成については、
図2を参照することとして、ここでは、相違点である収容槽や各仕切り板の形状に焦点を絞って説明する。
【0069】
図7は、収容槽や各仕切り板の形状が円形となっている変形例の凝集装置102の、第2の仕切り板321に沿った断面図、
図8は、収容槽や各仕切り板の形状が円形となっている変形例の凝集装置102の、第1の仕切り板311に沿った断面図である。
【0070】
図7および
図8の凝集装置102では、
図4および
図5で上述した凝集装置100と同じ構成要素については同じ符号を付すこととし、その重複説明は省略する。
図7および
図8に示すように、収容槽11は、回転軸22に対して垂直な面における断面が円形の容器である(ただし収容槽上側および収容槽下側を除く)。また、この収容槽10の形状に対応して、第2の仕切り板321および第1の仕切り板311は円形の板状部材である。ここで、
図7の第2の仕切り板321は、回転軸22について互いに対称な位置に形成された2つの第2の開口部521の組を2組有しており、
図8の第1の仕切り板311も、回転軸22について互いに対称な位置に形成された2つの第1の開口部511の組を2組有している。このとき、
図8の第1の仕切り板311における第1の開口部511は、
図7の第2の仕切り板321における第2の開口部521に比べ、相対的に回転軸22により近い位置に形成されており、汚泥や凝集剤の移動がスムーズに行われるよう工夫されている。
【0071】
なお、
図7および
図8の凝集装置102では、各仕切り板における各開口部の形状が湾曲した矩形であって4個の開口部を有するものとして説明したが、本発明の凝集装置は、開口部の形状はこのような湾曲した矩形以外の形状であってもよく、その数もたとえば、2個あるいは6個以上の数であってもよい。
【0072】
図7および
図8の変形例の凝集装置102においても、回転軸22、2つの撹拌羽根部材21(
図2参照)、および、3つの仕切り板(第3の仕切り板は
図8の第1の仕切り板311と同じ)は、収容槽11に対し一体的に着脱自在であり、メンテナンス性の向上が図られている。
【0073】
また、
図7および
図8の凝集装置102においても、各仕切り板は、
図6で上述したのと同じ支持機構により、各軸受部において回転軸22の回転に従動することなく回転軸22の一部(
図6の2つの板状突出部221,222参照)に支持される。
【0074】
なお、本発明の凝集装置においては、
図7および
図8の変形例の凝集装置102のように、回転軸に対して垂直な面における断面が円形であり、各仕切り板も円形の板状部材である形態を採用した場合には、回転軸の回転に従動して各仕切り板が回転軸の回りを回転するさらに別の変形例の凝集装置が採用されてもよい。このさらに別の変形例は、
図6の支持機構に代えて、各軸受部が直接に回転軸に固定された支持機構を採用したものであり、それ以外の点については、
図7および
図8の変形例の凝集装置102と同じである。そこで、このさらに別の変形例については、これまでの説明を参照することとしてこれ以上の説明は省略する。なお、このさらに別の変形例では、仕切り板の底面に撹拌羽根部材を一体的に設けることもできる。
【0075】
次に、
図2とは異なる全体構成を有する別の実施形態の凝集装置について説明する。
【0076】
図9は、
図2とは異なる全体構成を有する別の実施形態の凝集装置103の全体構成を表す模式図である。
【0077】
図9の凝集装置103において、
図2、
図4および
図5の凝集装置100と同じ構成要素については同じ符号を付すこととし、その重複説明は省略する。
図9の凝集装置103の全体構成が
図2とは異なる点は2つあり、そのうちの1つは、
図9の凝集装置103では、第3の仕切り板33よりも収容槽上側にさらに第4の仕切り板34が設けられて第5の部屋45が形成されている点である。
図9の凝集装置103の全体構成が
図2とは異なるもう1つの点は、この第5の部屋45には、第1の部屋41および第3の部屋43に設けられている撹拌羽根部材21よりも小さく撹拌力の弱い小撹拌羽根部材21aが備えられている点である。この小撹拌羽根部材21aは、上記の2つの撹拌羽根部材21と同様、回転軸22に固定されて回転軸22の回りを回転するものであり、2つの撹拌羽根部材21および回転軸22とともに撹拌手段20aを構成している。この小撹拌羽根部材21aが備えられていることで第5の部屋45は撹拌部屋となっている。
【0078】
第4の仕切り板34は、第4の軸受部64で回転軸22の貫通を受ける仕切り板である。この第4の仕切り板34は、第2の仕切り板32と同じ構成を有しており、第2の仕切り板32と同様、第1の仕切り板31および第3の仕切り板33と比べ相対的に回転軸22から遠い位置に開口部(第4の開口部54)を有している。このため、第4の仕切り板34の下側の第4の部屋44は、
図2において上述した、第2の仕切り板32の下側の第2の部屋42と同様の役割を果たす無撹拌部屋となっている。
【0079】
一方、第5の部屋45では、小撹拌羽根部材21aの撹拌力が弱いため、同じ撹拌部屋である第1の部屋41および第3の部屋43と同様の撹拌は行われず、相対的に緩やかな撹拌が行われる。
【0080】
一般に、汚泥の凝集処理においては、まず、前段の撹拌処理によって排水を凝集剤と混合して汚泥の第1段階の凝集体を形成し、次に、前段の撹拌処理よりも緩やかな後段の撹拌処理により、未凝集で排水中に浮遊している汚泥を第1段階の凝集体に付着させることがよく行われる。
【0081】
ここで、
図2の凝集装置100は、撹拌部屋と無撹拌部屋が交互に並ぶ構成により、上記の前段の撹拌処理における第1段階の凝集体形成の処理時間の短縮化を図った凝集装置である。
【0082】
一方、
図9の凝集装置103は、
図2の凝集装置100の構成にさらに小撹拌羽根部材21aを有する撹拌部屋(第5の部屋45)を収容槽最上部に設けることで、上記の前段の撹拌処理に加え、上記の後段の緩やかな撹拌処理をも行う凝集装置である。このような構成により、
図9の凝集装置103では、前段の撹拌処理における第1段階の凝集体形成の処理時間の短縮化を図りつつ、さらに、後段の緩やかな撹拌処理も合わせて一台で行うことができる。
【0083】
なお、以上の
図9の凝集装置103では、後段の緩やかな撹拌処理を行う撹拌力の弱い撹拌部材として、第1の部屋41および第3の部屋43に設けられている撹拌羽根部材21よりも小さい小撹拌羽根部材21aが用いられていたが、本発明の凝集装置では、他の形態の撹拌羽根部材が採用されてもよい。あるいは、撹拌羽根部材21と同一のものを回転軸22への取り付け角度を変える(羽根部分が水平面(
図9の回転軸22に垂直な面)となす角度を小さくする)ことで撹拌力を弱くしてもよい。また、回転軸22との接続部分において回転速度を遅くするギア機構を有することで、回転軸22の回転に対して相対的に遅い回転速度で回転する撹拌羽根部材が採用されてもよい。更に、収容槽の高さ方向に沿って、各仕切り板の間隔を変えることで、各部屋の高さを変えて排水の滞留時間を調整するようにしてもよい。