【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した従来のベストにあっては、身体に装着した際に、身体の胴回りを全周にわたって覆うようにしていることから、つぎのような不具合が生じる可能性がある。
【0006】
すなわち、前記ベストを装着した状態で上着を重ね着する場合、前記ベストが嵩張ってしまい、これによって、重ね着する上着が制限されたり、重ね着できても動きが損なわれるといった不具合である。
【0007】
このような装着時の嵩張りは、前述したように、前記ベストが身体の胴回りを全周にわたって覆う形状となされていることにより、装着時におけるベストと身体との密着性が悪いことにも起因している。
【0008】
特に、前述した従来のベストでは、このベストに保冷剤や保温剤を装着して、使用者の体温を調整するようにしているが、このような保冷剤や保温剤を装着することによって、前述した不具合がさらに大きくなることが懸念される。
【0009】
本発明は、前述した従来の技術において想定される不具合に鑑みてなされたもので、装着時に、身体に馴染むように装着できるようにすることで、前述した不具合を解決することができるベストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のベストは、前述した不具合を解消するために、身体の背中から両脇下を経て胸の両側部近傍に至る部位を覆うように装着されるベストであって、前記背中に対峙させられる背被覆部と、この背被覆部の両側に連設されて、前記各脇下から胸の側部近傍に対峙させられる脇被覆部とを備え
、前記背被覆部の両側上部と、前記各脇被覆部の、前記背被覆部が連設されていない側の上部との間に、前記身体の肩回りを包み込んで連結される連結片が設けられていることを特徴とする。
また、好ましい形態では、前記脇被覆部の前記背被覆部が連接されている側の上部が、前記背被覆部の上部よりも身体の上下方向下方に位置させられていることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることにより、装着時において、身体の背中に前記背被覆部を対峙させ、また、両脇下部に、前記背被覆部の両側に連設された一対の脇被覆部を対峙させた状態で、前記背被覆部に設けられた一対の連結片を両肩に載せるように位置させ、これらの連結片のそれぞれに、前記各脇被覆部に設けられた連結片を連結することによって身体に装着される。
【0012】
前記連結された両連結片は、前記背被覆部および前記脇被覆部と協働して、身体の肩周りを取り囲むようにして身体に固定される。
【0013】
ここで、前記脇被覆部に設けられた連結片の位置を、前記肩の上部において、背中側へ移動させることにより、前記脇被覆部を胸部の内側へ移動させることができるとともに、その移動に伴って、前記背被覆部を背に押し付けることができる。
【0014】
したがって、使用者の身体にあわせて前記連結片の連結位置を調整することにより、ベストを身体に馴染ませるように装着することができる。
【0015】
また、ベストが身体に馴染むように装着されることにより、ベストの位置ずれが抑制され、前記両脇被覆部を連結しなくとも安定した装着感が得られる。
【0016】
さらに、装着状態において、前記両脇被覆部間が空いていることにより、身体の胸部前方が開放されている。
これによって、ベストの占める容積が減少することから、前述したような身体の馴染みと相俟って、嵩張り感も改善される。
【0017】
前記背被覆部に設けられる連結片を、その連結部と、前記背被覆部に連結される脇被覆部の連結部下端とを結ぶ仮想線に沿って設けることが好ましい。
【0018】
このような構成とすることにより、ベストを装着した際に、このベストの重量が前記背被覆部の長さ方向に作用するが、その作用線が、前記脇被覆部の、前記背被覆部との連結部下端を通る。
【0019】
したがって、前記連結片によって支持される前記背被覆部の上端と、前記脇被覆部の、前記背被覆部との連結部下端が、ベストが装着された身体へ圧接させられる。
【0020】
さらに、前記仮想線が、身体に対して傾斜させられていることにより、前記脇被覆部に、その自重により、前記脇被覆部を前記仮想線回りに身体の内側へ向けるような力が作用する。
【0021】
このような現象は、左右に設けられている前記脇被覆部のそれぞれにおいて生じる。
【0022】
この結果、ベストを身体に装着した際に、このベストの自重により、前記背被覆部および両脇被覆部が前記身体に自然に密着して馴染む。
【0023】
また、好ましくは、前記脇被覆部に設けられる連結片を、両脇被覆部を結ぶ仮想線と略直交する方向に沿って設ける。
【0024】
このような構成とすることにより、前記両脇被覆部の自由側の端部をほぼ上方へ吊り上げるようにして、その向きを、前述した仮想線回りの動き(すなわち、これらの両脇被覆部を身体へ向けて押し付ける作用を高めることができる。
【0025】
前記背被覆部および前記両脇被覆部に、保冷剤若しくは保温材が収納される収納袋を形成しておくことができる。
【0026】
このような構成とすることにより、使用者の体温調整を行なうことができる。
しかも、前述したように、前記保冷剤若しくは保温剤の収納袋が形成された前記背被覆部および両脇被覆部が、身体に密着するように保持されることにより、前記保冷剤若しくは保温剤も同様に身体に密着させられる。
【0027】
これによって、前記保冷剤若しくは保温剤と身体との熱交換が効率よく行なわれ、効果的な体温調整機能を得ることができる。
【0028】
さらに、前記ベストが身体に密着することにより、このベストに前記保冷剤や保温剤を装着した場合でも、ベストの膨らみを極力防止して、嵩張り感を抑制することができる。
【0029】
また、前記背被覆部と前記各脇被覆部とを連結部材を介して連結し、この連結部材に前記連結片を設けるようにしてもよい。
【0030】
このような構成とすることにより、前記連結部材を、たとえば、他の部位より可撓性のよい材料によって形成して、前記背被覆部と両脇被覆部との相対的な動きを円滑にすることができる。
【0031】
これによって、前記背被覆部と両脇被覆部の身体側への移動を円滑にして、この身体との密着度をより高めることができるとともに、嵩張り感を一層抑制することができる。
【0032】
あるいは、前記連結部材をメッシュ材によって形成することにより、通気性を高めることができる。
【0033】
また、前記脇被覆部の側部に胸当て片を連設し、この胸当て片に前記連結片を設けるようにしてもよい。
【0034】
このような構成においても、前記胸当て片を可撓性の良い材料で形成することによって、前記脇被覆部の前方を柔らかくして身体の胸との馴染みを良くし、装着性を高めることができる。
そして、前記胸当て片をメッシュ材によって形成することにより通気性を確保することが可能である。
【0035】
さらに、前記連結片の連結を面ファスナーによって行なうことができる。
このような構成とすることによって、前記連結片の連結位置を前記面ファスナーの面方向に連続的に調整することができるので、ベストの形状を、使用者の体格に容易にあわせることができる。
【0036】
そして、前記面ファスナーに多数の孔を形成しておくことにより、この面ファスナー部分においても通気性を確保することができる。