(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散媒中における前記単量体の重合途上における、前記分散媒への前記ポリアニオンの添加速度は、前記分散媒中の前記単量体100質量部に対して、1〜1000質量部/時間である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
前記分散媒中における前記単量体の重合途上における、前記分散媒への前記ポリアニオンの添加速度は、前記分散媒中の前記単量体100質量部に対して、10〜100質量部/時間である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の電子機器の小型化および汎用化に伴い、電解コンデンサの小型化、高周波性能の向上が求められている。特に、従来にも増して、固体電解コンデンサの高周波領域のインピーダンス特性が求められてきている。
ところで、導電性重合体は分散媒中で凝集しやすく、導電性重合体を含む分散液は重合中に高粘度になることがある。高粘度の分散液は工業的な取扱いが不便である。また、固体電解コンデンサの要求性能として、設計容量を発現すること、低ESR(等価直列抵抗)が求められている。それら要求性能を顕現するためには、より高い導電性と誘電体被膜への含浸性が導電性重合体分散液に求められている。
【0009】
本発明の目的は、導電性重合体、ポリアニオンおよび分散媒を含む分散液を用いて、コンデンサ特性に優れた、固体電解コンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の〔1〕〜〔16〕に関する。
〔1〕弁金属からなる陽極体と該陽極体表面に形成された誘電体被膜とを少なくとも有する多孔質体と、多孔質体の表面に形成された固体電解質とを有する固体電解コンデンサであって、前記固体電解質は、導電性重合体、ポリアニオンおよび分散媒を含む分散液から分散媒の一部もしくは全部を除去して形成されたものであり、前記分散液は、前記分散媒中で単量体を重合することにより製造されたものであって、該重合の途上に、ポリアニオンを添加する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサ。
〔2〕前記単量体が、下記式(I)で表されるチオフェン誘導体である、前記〔1〕に記載の固体電解コンデンサ。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(I)中、R
1およびR
2は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、若しくは置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキルチオ基を表す。または、R
1およびR
2は、R
1とR
2とが結合し且つR
1とR
2が結合する各炭素原子と一緒になって、置換基を有してもよい炭素数3〜10の脂環、置換基を有してもよい炭素数6〜10の芳香環、置換基を有してもよい炭素数2〜10の酸素原子含有複素環、置換基を有してもよい炭素数2〜10のイオウ原子含有複素環、若しくは置換基を有してもよい炭素数2〜10のイオウ原子および酸素原子含有複素環を表す。)
〔3〕前記ポリアニオンが、スルホン酸またはその塩からなる基を有するポリマーである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の固体電解コンデンサ。
〔4〕前記重合の途上に、超音波照射を行うことを特徴とする、前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
〔5〕弁金属からなる陽極体と、該陽極体表面に形成された誘電体被膜とを少なくとも有する多孔質体の表面に、導電性重合体、ポリアニオンおよび分散媒を含む分散液を付与する工程と、前記分散媒の一部もしくは全部を取り除くことより、固体電解質を形成する工程とを含む固体電解コンデンサの製造方法であって、前記分散液は、前記分散媒中で単量体を重合することにより製造されたものであって、該重合の途上に、ポリアニオンを添加する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサの製造方法。
〔6〕前記分散液は、酸化剤の存在下に前記単量体の重合を開始させる工程と、該重合途上に、ポリアニオンを添加する工程を含むことを特徴とする、前記〔5〕に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔7〕前記単量体の重合途上に、前記ポリアニオンの総量の1〜100質量%を前記分散媒に添加する、前記〔5〕又は〔6〕に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔8〕前記単量体の重合途上に、前記ポリアニオンの総量の20〜80質量%を前記分散媒に添加する、前記〔5〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔9〕前記単量体の重合開始前に、前記ポリアニオンの総量の0〜99質量%を前記分散媒に添加する、前記〔5〕〜〔8〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔10〕前記単量体の重合開始前に、前記ポリアニオンの総量20〜80質量%を前記分散媒に添加する前記〔5〕〜〔9〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔11〕前記分散媒中における前記単量体の重合時に、前記分散媒への前記ポリアニオンを連続的に又は断続的に添加する、前記〔5〕〜〔10〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔12〕前記分散媒中における前記単量体の重合途上における、前記分散媒への前記ポリアニオンの添加速度は、前記分散媒中の前記単量体100質量部に対して、1〜1000質量部/時間である、前記〔5〕〜〔11〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔13〕前記分散媒中における前記単量体の重合途上における、前記分散媒への前記ポリアニオンの添加速度は、前記分散媒中の前記単量体100質量部に対して、10〜100質量部/時間である、前記〔5〕〜〔12〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔14〕重合時の温度が5〜80℃である、前記〔5〕〜〔13〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔15〕前記重合の途上に、超音波照射を行う、前記〔5〕〜〔14〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
〔16〕前記重合の途上に、攪拌翼による撹拌と超音波照射を行う、前記〔5〕〜〔15〕のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、誘電体被膜への含浸性に優れた導電性重合体分散液を用いて、コンデンサ特性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[固体電解コンデンサ]
本発明の固体電解コンデンサは、弁金属からなる陽極体と、陽極体表面に形成された誘電体被膜とを少なくとも有する多孔質体と、該多孔質体表面に形成された固体電解質層とを有する固体電解コンデンサであって、前記固体電解質は、導電性重合体、ポリアニオンおよび分散媒を含む分散液から分散媒の一部もしくは全部を除去して形成されたものであり、前記分散液は、前記分散媒中で単量体を重合することにより製造されたものであって、該重合の途上に、ポリアニオンを添加する工程を含むことを特徴とする固体電解コンデンサである。
【0015】
<多孔質体>
上記多孔質体を形成する陽極体としては固体電解コンデンサに用いられるものであれば特に制限は無く、例えば、高表面積を有する弁金属粉末を焼結してなるもの、あるいは、弁金属箔をエッチングして得られるものを用いることができる。弁金属としては例えば、Al、Be、Bi、Mg、Ge、Hf、Nb、Sb、Si、Sn、Ta、Ti、V、WおよびZrの少なくとも1つならびにこれらの金属の少なくとも1つと他の元素との合金または化合物が挙げられる。これら弁金属の中でも、Al、Nb、TaおよびWのいずれかから構成されるものが好ましい。
【0016】
上記誘電体被膜は例えば、上記陽極体を陽極酸化等の化成処理を行うことによって形成される。すなわち、誘電体被膜は、上記陽極体を構成する弁金属を酸化してなる誘電体酸化被膜であることが好ましい。陽極酸化は、例えばリン酸溶液中で陽極体に電圧を印加することにより行われる。このときの化成電圧の大きさは、誘電体被膜の厚さやコンデンサの耐電圧により決定される。通常、化成電圧は、好ましくは1〜800V、より好ましくは1〜300V、更に好ましくは10〜100Vである。
【0017】
<固体電解質>
固体電解質の形成方法は特に限定されないが、例えば、上記多孔質体の表面に位置するよう、導電性重合体分散液をコンデンサ素子(すなわち、多孔質体)に含浸し、ついで、前記分散液の分散媒の一部もしくは全部を取り除くことにより形成される。ここでいう、コンデンサ素子の一例をあげると、例えば、弁金属粉末を焼結してなる焼結体に陽極リード端子を備え、さらに焼結体が陽極酸化により誘電体被膜が形成されたもの。また、弁金属箔をエッチングし、ついで、陽極酸化して誘電体皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とが配置されたものがあげられる。
【0018】
本願の固体電解コンデンサの固体電解質は、誘電体被膜の全体またはその一部を被覆する。この固体電解質は、誘電体被膜の全体またはその一部を被覆する固体電解質層であることが好ましい。被覆率は厳密には規定できないことから、EIAJ規格RC2361Aに記載の方法により測定した。すなわち、上記コンデンサ素子に電解液(30%硫酸液)を含浸して得られた静電容量に対して、導電性高分子分散液を含浸し、ついで分散媒を一部もしくは全部を取り除いたのちに得られる静電容量との比率、すなわち容量出現率を被覆率に置き換えることができる。
【0019】
本願の固体電解コンデンサの製造方法によれば、好ましくは80〜100%程度、より好ましくは85〜100%、更に好ましくは88〜100%の高い被覆率で導電性固体層を形成することが可能である。被覆率を高くすることで、高静電容量でかつ低ESRの固体電解コンデンサを提供することが可能となる。一方、被覆率が高くなると、誘電体皮膜の修復性が低下するという報告もあるが、電解液を含浸させることにより、誘電体皮膜の修復性を改善させることが可能である。
【0020】
固体電解質の適用量は特に制限はなく、固体電解質の種類や固体電解コンデンサの用途等によって適宜決定することができる。
【0021】
(導電性重合体)
導電性重合体としては特に限定されないが、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子が好ましい。前記有機高分子としては例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましく、ポリチオフェン類がより好ましい。導電性重合体は、アルキル基、カルボン酸基、スルホン酸基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、シアノ基などの置換基を有していると、高い導電性が得られ、好ましい。
【0022】
これら導電性重合体の中でも、ポリピロール類としてポリピロールおよびポリ(N−メチルピロール);ポリチオフェン類としてポリチオフェン、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、およびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)からなる群から選ばれる少なくとも1つが、導電性の点で好ましい。特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)は、導電性が特に高い上に、耐熱性に優れる点で好ましい。
導電性重合体は、その構造に応じた単量体を重合することにより得られる。好ましい単量体としては、置換基を有してもよいピロール、置換基を有してもよいアニリン、および置換基を有してもよいチオフェンからなる群より選ばれる少なくとも一つが挙げられる。
【0023】
係る単量体の具体例としては、ピロール、N−メチルピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール;
下記式(I)で表されるチオフェン誘導体;
アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
式(I)中、R
1およびR
2は、各々独立に、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルコキシ基、若しくは置換基を有してもよい炭素数1〜18のアルキルチオ基を表し、または、R
1とR
2とが結合し且つR
1とR
2が結合する各炭素原子と一緒になって、置換基を有してもよい炭素数3〜10の脂環、置換基を有してもよい炭素数6〜10の芳香環、置換基を有してもよい炭素数2〜10の酸素原子含有複素環、置換基を有してもよい炭素数2〜10のイオウ原子含有複素環、若しくは置換基を有してもよい炭素数2〜10のイオウ原子および酸素原子含有複素環を形成してもよい。
【0026】
酸素原子含有複素環としては、オキシラン環、オキセタン環、フラン環、ヒドロフラン環、ピラン環、ピロン環、ジオキサン環、トリオキサン環などが挙げられる。
【0027】
イオウ原子含有複素環としては、チイラン環、チエタン環、チオフェン環、チアン環、チオピラン環、チオピリリウム環、ベンゾチオピラン環、ジチアン環、ジチオラン環、トリチアン環などが挙げられる。
【0028】
イオウ原子および酸素原子含有複素環としては、オキサチオラン環、オキサチアン環などが挙げられる。
【0029】
単量体は、上記の化合物の中でも、上記式(I)で表される化合物を含むことが好ましい。上記式(I)で表される化合物の具体例としては、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブチレンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、3,4−エチレンオキシチアチオフェンが挙げられる。
単量体は、より好ましくは下記式(II)で表される化合物を含む。
【0031】
式(II)中、R
3およびR
4は、各々独立に、水素原子または置換基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基を表し、または、R
3とR
4とが結合し且つOR
3とOR
4が結合する各炭素原子と一緒になって、置換基を有してもよい炭素数3〜6の酸素原子含有複素環を形成してもよい。
【0032】
R
3およびR
4は、好ましくは、R
3とR
4とが結合し且つOR
3とOR
4が結合する各炭素原子と一緒になって、置換基を有してもよい炭素数3〜6の酸素原子含有複素環を形成する。酸素原子含有複素環としては、オキシラン環、オキセタン環、フラン環、ヒドロフラン環、ピラン環、ピロン環、ジオキサン環、トリオキサン環などが挙げられ、好ましくはジオキサン環である。
【0033】
単量体は、最も好ましくは3,4−エチレンジオキシチオフェンを含む。
【0034】
(ポリアニオン)
本発明に用いられるポリアニオンは、アニオン性基を有するポリマーである。アニオン性基としては、スルホン酸またはその塩からなる基、リン酸またはその塩からなる基、一置換リン酸エステル基、カルボン酸またはその塩からなる基、一置換硫酸エステル基などが挙げられる。これらのうち、強酸性基が好ましく、スルホン酸またはその塩からなる基、リン酸またはその塩からなる基がより好ましく、スルホン酸またはその塩からなる基が最も好ましい。アニオン性基はポリマー主鎖に直接結合していてもよいし、側鎖に結合していてもよい。側鎖にアニオン性基が結合している場合、ドープ効果をより顕著に果たすので、アニオン性基は側鎖の末端に結合していることが好ましい。
【0035】
ポリアニオンは、アニオン性基以外の置換基を有してもよい。該置換基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェノール基、シアノ基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、エステル基、ハロゲノ基、アルケニル基、イミド基、アミド基、アミノ基、オキシカルボニル基、カルボニル基などが挙げられる。これらの中でアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、フェノール基、オキシカルボニル基が好ましく、アルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基がより好ましい。当該置換基はポリマー主鎖に直接結合していてもよいし、側鎖に結合していてもよい。側鎖に当該置換基が結合している場合、当該置換基のそれぞれの作用を果たすために、置換基は側鎖の末端に結合していることが好ましい。
【0036】
ポリアニオン中に置換し得るアルキル基は、分散媒への溶解性及び分散性、共役系導電性重合体との相溶性及び分散性などを高くする作用が期待できる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などの鎖状アルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基が挙げられる。分散媒への溶解性、共役系導電性重合体への分散性、立体障害などを考慮すると、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。
【0037】
ポリアニオン中に置換し得るヒドロキシ基は、他の水素原子などとの水素結合を形成しやすくし、分散媒への溶解性、共役系導電性重合体との相溶性、分散性、接着性を高くする作用が期待できる。ヒドロキシ基は、ポリマー主鎖に結合した炭素数1〜6のアルキル基の末端に結合したものが好ましい。
【0038】
ポリアニオン中に置換し得るシアノ基及びヒドロキシフェニル基は、共役系導電性重合体との相溶性、分散媒への溶解性、耐熱性を高くする作用が期待できる。シアノ基は、ポリマー主鎖に直接結合したもの、ポリマー主鎖に結合した炭素数1〜7のアルキル基の末端に結合したもの、ポリマー主鎖に結合した炭素数2〜7のアルケニル基の末端に結合したものが好ましい。
【0039】
ポリアニオン中に置換し得るオキシカルボニル基は、ポリマー主鎖に直接結合した、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、他の官能基を介在してなるアルキルオキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基が好ましい。
【0040】
ポリアニオンのポリマー主鎖は、特に制限されない。ポリマー主鎖としては、例えば、ポリアルキレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルなどが挙げられる。これらのうち、合成や入手し易さの観点から、ポリアルキレンが好ましい。
【0041】
ポリアルキレンは、エチレン性不飽和単量体の繰り返し単位で構成されるポリマーである。ポリアルキレンは主鎖に炭素−炭素二重結合を有してもよい。ポリアルキレンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリヘキセン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(3,3,3−トリフルオロプロピレン)、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
【0042】
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2,3,3−テトラカルボキシジフェニルエーテル二無水物、2,2−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物などの酸無水物とオキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミンなどのジアミンとの重縮合反応で得られるものが挙げられる。
【0043】
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10などが挙げられる。
【0044】
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0045】
ポリアニオンとして好適に用いられるスルホン酸基を有するポリマーの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸などが挙げられる。これらは単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。これらのうち、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。ポリアニオン、特にスルホン酸基を有するポリマーは、共役系導電性重合体の熱分解を緩和することができ、共役系導電性重合体を得るための単量体の分散媒中での分散性を向上させ、さらに共役系導電性重合体のドーパントとして機能する。
【0046】
本発明に用いられるポリアニオンは、その重量平均分子量が好ましくは1000〜1000000、より好ましくは5000〜300000、更に好ましくは10000〜300000、より更に好ましくは150000〜300000である。重量平均分子量がこの範囲にあると、ポリアニオンの分散媒への溶解性、ポリアニオンと共役系導電性重合体との相溶性が良好となる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン換算分子量として測定する。
【0047】
ポリアニオンは市販品の中から選ばれる上記特性を有するものであってもよいし、または公知の方法によって合成して得られるものであってもよい。ポリアニオンの合成法としては、例えば、Houben-Weyl, "Methoden der organischen Chemie" Vol. E20, Makromolekulare Stoffe, No. 2 (1987) p1141-に記載の方法、特許文献1〜3などに記載の方法などが挙げられる。
【0048】
分散液中に含まれるポリアニオンの量は、ポリアニオン中のアニオン性基が、導電性重合体を得るための単量体1モルに対して、好ましくは0.25〜10モル、より好ましくは0.8〜8モル、さらに好ましくは0.8〜5モルとなる量である。また導電性重合体100質量部に対するポリアニオンの質量は、好ましくは10〜10000質量部、より好ましくは50〜5000質量部、さらに好ましくは100〜1000質量部である。ポリアニオンの量が上限値以下であると、分散液から形成される固体電解質層の導電性が向上する傾向があり、ポリアニオンの量が下限値以上であると、導電性重合体の分散液中での分散性が向上する傾向がある。
【0049】
(分散媒)
本発明に用いられる分散媒は、導電性重合体と、それにドープされたポリアニオンとを分散させることができるものであれば特に限定されない。分散媒として、例えば、水;
N−ビニルピロリドン、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのアミド類;
クレゾール、フェノール、キシレノールなどのフェノール類;
ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコールなどの多価アルコール類;
エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物;ジオキサン、ジエチルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどのエーテル類;
3−メチル−2−オキサゾリジノンなどの複素環化合物;アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
【0050】
これら分散媒は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、水を1〜99質量%含む分散媒を用いることが好ましく、水を50〜99質量%含むことがより好ましく、水を単独で用いることがさらに好ましい。
【0051】
分散媒の量は、導電性重合体とポリアニオンとの合計100質量部に対して、好ましくは1〜10000重量部、より好ましくは50〜9000重量部、更に好ましくは100〜8000重量部、より更に好ましくは1000〜8000重量部、より更に好ましくは3000〜7000重量部である。分散媒の使用量が下限値以上であると分散液の粘度が低下する傾向がある。分散媒の使用量が上限値以下であると、分散液から分散媒を除去するための操作時間を短縮できるなど、固体電解質層を形成する際に都合がよい。
【0052】
(添加剤)
分散液は、必要に応じて、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は導電性重合体及びポリアニオンと混合しうるものであれば特に制限されない。例えば、水溶性高分子化合物、水分散性化合物、アルカリ性化合物、界面活性剤、消泡剤、カップリング剤、酸化防止剤、電気伝導率向上剤などが挙げられる。
【0053】
水溶性高分子化合物は、高分子の主鎖又は側鎖にカチオン性基やノニオン性基を有する水溶性ポリマーである。水溶性高分子化合物の具体例としては、例えば、ポリオキシアルキレン、水溶性ポリウレタン、水溶性ポリエステル、水溶性ポリアミド、水溶性ポリイミド、水溶性ポリアクリル、水溶性ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸などが挙げられる。これらのうち、ポリオキシアルキレンが好ましい。
【0054】
ポリオキシアルキレンの具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、オリゴポリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノクロルヒドリン、ジエチレングリコールモノクロルヒドリン、オリゴエチレングリコールモノクロルヒドリン、トリエチレングリコールモノブロムヒドリン、ジエチレングリコールモノブロムヒドリン、オリゴエチレングリコールモノブロムヒドリン、ポリエチレングリコール、グリシジルエーテル類、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリエチレンオキシド、トリエチレングリコール・ジメチルエーテル、テトラエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジエチレングリコール・ジメチルエーテル、ジエチレングリコール・ジエチルエーテル・ジエチレングリコール・ジブチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンジオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0055】
水分散性化合物は、親水性の低い化合物の一部が親水性の高い官能基で置換されたもの、あるいは、親水性の低い化合物の周囲に親水性の高い官能基を有する化合物が吸着したもの(例えばエマルジョンなど)であって、水中で沈殿せずに分散するものが挙げられる。具体例としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、及びこれらポリマーのエマルジョンなどが挙げられる。水溶性高分子化合物及び水分散性化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。水溶性高分子化合物及び水分散性化合物を添加すると導電性重合体組成物を含む分散液を増粘化させたり塗装性能を向上させたりすることができる。
【0056】
水溶性高分子化合物及び水分散性化合物の量は、共役系導電性重合体とポリアニオンとの合計100質量部に対して、好ましくは1〜4000質量部、より好ましくは50〜2000質量部である。水溶性高分子化合物及び水分散性化合物の量が下限値以上であると導電性が高くなり、固体電解コンデンサのESR特性が向上する傾向がある。
【0057】
アルカリ性化合物は、分散液のpHを調整する目的で用いられる。例えば、固体電解コンデンサに使用される金属および金属酸化物の腐食を防止するために、pHを3〜13にすることが好ましく。さらに好ましくはpH4〜7、より更に好ましくはpH4〜6に調整される。pHが3未満以上だと、アルミニウムなどを使用しても腐食の進行を抑制できる。また、pH13以下であると、導電性重合体にドープしているポリアニオンの脱ドープが起こることが防止できる。
【0058】
アルカリ性化合物として、公知の無機アルカリ性化合物や有機アルカリ性化合物を使用できる。無機アルカリ性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニアなどが挙げられる。有機アルカリ性化合物として、芳香族アミン、脂肪族アミン、アルカリ金属アルコキシドなどが挙げられる。
【0059】
芳香族アミンのうち、窒素含有ヘテロアリール環化合物が好ましい。窒素含有ヘテロアリール環化合物は芳香族性を示す窒素含有ヘテロ環化合物である。芳香族アミンにおいては、ヘテロ環に含まれる窒素原子が他の原子と共役関係を持つ。
【0060】
窒素含有ヘテロアリール環化合物としては、ピリジン類、イミダゾール類、ピリミジン類、ピラジン類、トリアジン類などが挙げられる。これらのうち、溶媒溶解性などの観点から、ピリジン類、イミダゾール類、ピリミジン類が好ましい。
【0061】
脂肪族アミンとしては、例えば、エチルアミン、n−オクチルアミン、ジエチルアミン、ジイソブチルアミン、メチルエチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、アリルアミン、2−エチルアミノエタノール、2,2’−イミノジエタノール、N−エチルエチレンジアミンなどが挙げられる。
【0062】
アルカリ金属アルコキシドとしては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシド、カルシウムアルコキシドなどが挙げられる。
【0063】
界面活性剤としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、燐酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤;アミン塩、4級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤;カルボキシベタイン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどの非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0064】
消泡剤としては、シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンレジンなどが挙げられる。
【0065】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、糖類、ビタミン類などが挙げられる。
【0066】
電気伝導率向上剤は、分散液から得られる固体電解質層の電気伝導率を増大させるものであれば特に制限されない。電気伝導率向上剤としては、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル結合を含む化合物;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン基を含む化合物;カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、ピロリドンなどのアミド若しくはラクタム基を含む化合物;テトラメチレンスルホン、ジメチルスルホキシドなどのスルホン化合物若しくはスルホキシド化合物;スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトースなどの糖類または糖類誘導体;ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール類;スクシンイミド、マレイミドなどのイミド類;2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸などのフラン誘導体;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのジアルコール若しくはポリアルコールなどが挙げられる。これらのうち、テトラヒドロフラン、N−メチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、ソルビトールが、電気伝導率向上の観点から特に好ましい。電気伝導率向上剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(分散液)
本発明で用いられる分散液は、導電性重合体、ポリアニオンおよび分散媒を含む。当該分散液は、前述の添加剤を含んでいてもよい。これら導電性重合体、ポリアニオン、分散媒、および添加剤の種類および含有量は、前述のとおりである。
分散液の固形分濃度は、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜5質量%である。
分散液の固形分中における、導電性重合体及びポリアニオンの合計量は、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは50〜90質量%である。
【0067】
(分散液の製造)
本発明の分散液は、上記分散媒中で上記単量体を重合することにより製造され、該重合の途上に、上記ポリアニオンを添加する工程を含む。
【0068】
上記単量体を分散媒中で重合するために、先ず、該単量体および必要に応じて添加剤を分散媒に添加し、溶解、乳化または分散させて、単量体の溶液、乳液または分散液(以下、単量体液ということがある)を得る。単量体液の調製は、ホモジナイザーなどの強力な撹拌装置によって行ってもよいが、超音波照射によって行うことが好ましい。超音波照射エネルギは、均一な単量体液が得られるのであれば、特に限定されない。超音波照射は、消費電力5〜500W/Lで、0.1〜2時間/L行うことが好ましい。当該消費電力は、より好ましくは1〜200W/L、更に好ましくは20〜100W/Lである。当該照射時間は、より好ましくは0.1〜4時間/L、更に好ましくは0.5〜2時間/Lである。
【0069】
重合開始前における単量体液には、重合の途上に生成する導電性重合体の凝集を抑える観点から、最終的に分散液中に含有させるポリアニオンの一部を含有させておくことが好ましい。該ポリアニオンは、上記単量体と混合し、得られた混合物を分散媒中にて溶解、乳化または分散させることによって、単量体液に含有させることができる。重合開始前における単量体液に含有させるポリアニオンの量は、分散液中のポリアニオンの総量の0〜99質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、20〜80質量%がさらに好ましく、40〜70質量%がよりさらに好ましい。
【0070】
例えば、ポリピロール類やポリチオフェン類を導電性重合体として含む分散液を製造する場合、単量体の重合は、酸化剤の存在下に所定の温度にすることによって開始される。酸化剤としては、ペルオキノニ硫酸アンモニウム、ペルオキソニ硫酸ナトリウム、ペルオキソニ硫酸カリウムなどのペルオキソニ硫酸塩;三フッ化ホウ素などの金属ハロゲン化合物; p―トルエンスルホン酸鉄(III)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二銅などの遷移金属化合物;酸化銀、酸化セシウムなどの金属酸化物;過酸化水素、オゾンなどの過酸化物;過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物;酸素などが挙げられる。これらのうちペルオキソニ硫酸塩が好ましい。
【0071】
本発明においては、重合の途上にポリアニオンを重合反応液に添加する。この方法で、重合中に粘度が上昇しすぎることなく、導電性に優れた導電性重合体を得ることができるため、多孔質体への含浸性および塗布性に優れた分散液を得ることができ、また導電性に優れた固体電解質層を形成することができる。また主鎖が規則的に長く成長した導電性重合体にポリアニオンが確実にドープされるので、高周波特性に優れた固体電解コンデンサが製造できる。
重合途上(重合開始後)における分散媒に添加するポリアニオンの量は、分散媒に含有させるポリアニオンの総量の1〜99質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、20〜60質量%がさらに好ましく、30〜50質量%がよりさらに好ましい。
【0072】
ポリアニオンの添加は、急激なポリアニオン濃度の上昇を抑えるために、連続的または断続的に行うことが好ましい。また、重合反応液に添加したポリアニオンが均一に混ざり合うようにするために、ポリアニオン溶液にして添加することが好ましい。
【0073】
該溶液には重合反応液に使用している分散媒を含むものを溶媒として用いることが好ましい。ポリアニオンの添加速度は、反応装置の規模によっても異なるので、一概に決められないが、上記単量体100質量部に対して、通常、1〜1000質量部/時間、より好ましくは5〜100質量部/時間、さらに好ましくは10〜50質量部/時間である。
【0074】
重合時の温度は通常、5〜80℃であり、より好ましくは10〜50℃であり、さらに好ましくは12〜35℃である。重合時の温度をこの範囲内にすると、適度な反応速度で重合を行うことができ、粘度の上昇を抑えることができ、導電性重合体組成物を含む分散液の製造を安定的に且つ経済的な時間で行うことができ、且つ得られる導電性重合体の導電率が高くなる傾向がある。重合時の温度は、公知のヒータやクーラを用いることにより管理することができる。また必要に応じ、上記範囲内で温度を変化させながら重合を行つてもよい。
【0075】
分散液を製造する際は、重合の途上に、生成する導電性重合体を分散処理することが好ましい。この分散処理は、ホモジナイザーなどの強力な撹拌装置によって行うこともできるが、超音波照射によって行うことが好ましい。この分散処理によって、長い主鎖を有する導電性重合体の凝集を抑制することができる。超音波照射エネルギは、導電性重合体の凝集を抑制することができる限り、特に限定されない。超音波照射は、前述した消費電力で、反応終了時まで行うことが好ましい。
【0076】
(分散液の粘度)
[固体電解コンデンサの製造方法]
本発明の固体電解コンデンサは、上記多孔質体の表面に、導電性重合体、ポリアニオンおよび分散媒を含む分散液を付与する工程と、該分散媒の一部もしくは全部を取り除くことより、固体電解質層を形成する工程とを含む製造方法により製造される。
【0077】
(分散液の付与)
上記分散液を、上記多孔質体の表面に付与する方法としては特に制限はなく、多孔質体を分散液に含浸する方法や、多孔質体の表面に分散液を塗布する方法を用いることができる。
また上記分散液は、1回または2回以上付与することができる。
【0078】
(分散媒の除去)
分散媒の除去は、加熱処理によって行うと、効率がよく、好ましい。加熱条件は、導電性高分子が酸化劣化しない範囲とすることが好ましく、分散媒の沸点や揮発性により適宜、決めることができる。通常、加熱温度は20〜300℃、好ましくは50〜200℃、更に好ましくは80〜150℃である。加熱処理時間は、好ましくは1秒〜10時間、より好ましくは5秒から2時間、更に好ましくは10分〜1時間とすることが好ましい。
【0079】
加熱処理には固体電解コンデンサの製造に用いられる公知の手段を用いることができ、例えば、ホットプレート、オーブン、熱風乾燥機等を用いることができる。加熱処理は大気下で行ってもよいし、分散媒を迅速に除去するために減圧下で行ってもよい。
【0080】
上記分散媒を付与する工程を、2回以上繰り返す場合は、付与ごとに加熱処理を行い、分散媒を除去してもよいし、複数回の付与を行った後、最後に分散媒を除去してもよい。
【0081】
(その他の工程)
本発明の固体電解コンデンサの製造方法は、上記した工程以外にも、固体電解コンデンサを製造する際に行われる、公知の工程を含むことができる。例えば、分散媒を一部または全部除去して形成した固体電解質層の空隙に、さらに任意の電解液を含浸することもできる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
(導電性重合体を含む分散液の製造)
(製造例1)
イオン交換水733.3g、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学(株)製、商品名ポリナス(PS−50)、固形分濃度:20質量%、重量平均分子量:約2.3×10
5、以下PSS−Naともいう)81.5gを水に溶解させてポリスチレンスルホン酸ナトリウム2質量%水溶液を調製した。
【0084】
イオン交換水4288質量部、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム2質量%水溶液7498質量部、およびp―トルエンスルホン酸鉄(III)6水和物2質量%水溶液(シグマアルドリッチ社製)420質量部を27℃ にて混ぜ合わせた。この溶液に27℃ にて超音波を照射しながら3,4−エチレンジオキシチオフェン(東京化成(株)製)100質量部を添加し混ぜ合わせた。
【0085】
得られた混合液に27℃ にて撹拌翼による撹拌と超音波照射とをしながらペルオキソニ硫酸ナトリウム(関東化学(株)製)210質量部を添加して重合反応を開始させた。次いで、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム2質量%水溶液4999質量部を4時間かけて滴下した。その後、27℃ にて4時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とをしながら反応させた。なお、超音波照射の消費電力は300W(50W/L)であり、照射時間は8時間(1.3時間/L)である。
【0086】
反応終了後、得られた反応液に陽イオン交換樹脂1100質量部および陰イオン交換樹脂1100質量部を添加して、反応液を12時間撹拌することによって、未反応モノマー、酸化剤および酸化触媒をイオン交換樹脂に吸着させた。該イオン交換樹脂をろ別して、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とそれにドープしたポリスチレンスルホン酸を含有してなる導電性重合体組成物を含む分散液を得た。この分散液の固形分濃度は2.0質量%、粘度は150mPa・s、pHは1.9であった。
【0087】
次いで、上記導電性重合体組成物を含む分散液100質量部を撹拌しながら、アンモニア水を添加し、さらに、エチレングリコール10質量部を添加することで、分散液1を得た。この分散液のpHは4.5であった。
【0088】
(製造例2)
ポリスチレンスルホン酸ナトリウム2質量%水溶液を、和光純薬工業社製ポリスチレンスルホン酸20質量%水溶液を希釈して調製したポリスチレンスルホン酸水溶液2質量%水溶液に変えた以外は分散液1と同じ方法にて導電性重合体組成物を含む分散液2を製造した。この分散液のpHは4.5であった。
(製造例3)
40℃で重合反応を行ったこと以外は分散液1と同じ方法にて導電性重合体組成物を含む分散液3を製造した。この分散液のpHは4.5であった。
(製造例4)
15℃で重合反応を行ったこと以外は分散液1と同じ方法にて導電性重合体組成物を含む分散液4を製造した。この分散液のpHは4.5であった。
【0089】
(比較製造例1)
反応途上でポリスチレンスルホン酸を添加することなく、27℃にて10時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とをし続け反応させた他は分散液1と同様にして、導電性重合体組成物を含む比較分散液1を得た。この比較分散液のpHは4.5であった。
(比較製造例2)
反応途上でポリスチレンスルホン酸を添加することなく、27℃にて10時間撹拌翼による撹拌と超音波照射とをし続け反応させた他は分散液2と同様にして、導電性重合体組成物を含む比較分散液2を得た。この比較分散液のpHは4.5であった。
(比較製造例3)
40℃で重合反応を行ったこと以外は比較分散液1と同じ方法にて導電性重合体組成物を含む比較分散液3を製造した。この比較分散液のpHは4.5であった。
(比較製造例4)
15℃で重合反応を行ったこと以外は比較分散液1と同じ方法にて導電性重合体組成物を含む比較分散液4を製造した。この比較分散液のpHは4.5であった。
【0090】
(実施例1〜4および比較例1〜4)
(多孔質体の形成)
固体電解コンデンサに用いる多孔質体として、特開2011−77257号公報の製造例1に記載の方法により、コンデンサ用ニオブ粉末を用いて、陽極体表面に五酸化二ニオブからなる誘電体被膜が形成された多孔質体を作製した。
すなわち、公称CV積150,000μF・V/gのコンデンサ用ニオブ粉末20mgをニオブ線とともに成形し、2mm×2mm×1.4mmの成形体を作成した。なお、ニオブ線は、2mm×1.4mmの面に植設されるようにした。該ニオブ線が陽極リード線である。この成形体を、4×10
-3Paの減圧下、1215℃で30分間焼成して、焼結させた。得られた焼結体、すなわち陽極体を、80℃の1質量%リン酸水溶液中に漬け、30Vで2時間化成処理を行なった。陽極体表面に五酸化二ニオブを含有する誘電体層が形成された。
【0091】
この多孔質体の30%硫酸中での静電容量を、「EIAJ規格RC2361A」(2000年2月改正)に記載の方法で測定したところ、80μFであった。
【0092】
(分散液の含浸)
上記の多孔質体を25℃の大気下で、表2に示す分散液に1分間含浸させた後、110℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。次いでカーボンペースト(田中貴金属(株)製品名;TC−8260)を陽極リード端子に接触しないよう多孔質体全面を覆うように塗布、乾燥させ、さらに、陰極の接点をとるために銀ペースト(田中貴金属(株)製 品名;TS−8205)を陽極リード端子に接触しないよう多孔質体全面を覆うように塗布、乾燥させた。
【0093】
得られた固体電解コンデンサの120Hzでの静電容量および100kHzでの等価直列抵抗(ESR)の測定結果を表1に示す。
【0094】
表1に示すとおり、実施例1と比較例1とは、分散液の製造に用いられるポリアニオンの総量は同量であるが、実施例1ではポリアニオンの一部を重合中に分散媒に添加しているのに対して、比較例1ではポリアニオンの全部を重合前に分散媒に添加している。実施例1と比較例1とは、このようにポリアニオンを分散媒に添加するタイミングを異ならせたこと以外は同様の操作を行っている。そして、実施例1の方が比較例1よりも、静電容量が大きく、また等価直列抵抗が小さい値となっている。同様に、実施例2〜4と比較例2〜4も、それぞれ、ポリアニオンを分散媒に添加するタイミングを変えたこと以外は同様の操作を行っている。そして、重合中にポリアニオンを添加した実施例2〜4の方が、重合中にポリアニオンを添加しなかった比較例2〜4よりも、静電容量が大きく、また等価直列抵抗が小さい値となっている。
表1より、本発明の固体電解コンデンサは、静電容量が大きく、等価直列抵抗が小さいことが分かる。
【0095】
【表1】