(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合性不飽和単量体(B)が、アルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン及びその誘導体、並びにビニル化合物から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の水中油型エマルジョン組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において、好ましいとされる規定は任意に選択することができ、好ましいとされる規定同士の組み合わせは、より好ましいと言える。
[水中油型エマルジョン組成物]
本発明の水中油型エマルジョン組成物は、
(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂(A)100質量部、
重合性不飽和単量体(B)1〜200質量部、
硬化促進剤(C)0.1〜10質量部、
反応性界面活性剤(D)1〜50質量部、及び
水(E)10〜200質量部
を含有する、水中油型、即ち0il in Water type(O/W型)のエマルジョン組成物である。
各成分について以下に詳細に説明する。
【0009】
((A):(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂)
(A)成分である(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂に、α−β不飽和一塩基酸を反応させて得られる樹脂である。ここで、「(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂」とは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のいわゆるα−β位に炭素−炭素二重結合を有する酸とエポキシ化合物とが反応して得られるエポキシ樹脂全てを示す。
1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂、ハロゲン化ノボラック型エポキシ樹脂、シアヌレート型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。いずれも公知の方法で製造できるし、市販品を用いることもできる。
なお、「ビスフェノール型」としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールAP型、ビスフェノールB型、ビスフェノールBP型、ビスフェノールC型、ビスフェノールE型、ビスフェノールF型、ビスフェノールG型等が好ましく挙げられ、ビスフェノールA型がより好ましい。ここで、ビスフェノールAは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAPは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビスフェノールBは2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、ビスフェノールBPはビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビスフェノールCは2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールEは1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールFはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビスフェノールGは2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパンを指す。
また、「ハロゲン化」としては、臭素化が好ましい。
1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂としては、少なくとも分子の両末端にエポキシ基を1つずつ有しているエポキシ樹脂が好ましい。
1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは130〜800g/eq、より好ましくは150〜600g/eq、より好ましくは150〜400g/eqである。
【0010】
また、α−β不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、メタクリル酸がより好ましい。
1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応に特に制限はなく、公知の方法を採用できる。具体的には、1分子中にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂とα−β不飽和一塩基酸とを、エポキシ基とカルボキシル基がほぼ当量になるように混合し、好ましくは安定剤の存在下及び空気雰囲気下で、好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、さらに好ましくは100〜140℃で、酸価が好ましくは30mgKOH/g以下、より好ましくは4〜25mgKOH/g、さらに好ましくは6〜20mgKOH/gになるまで反応させる方法を採用できる。酸価を前記範囲にすることで、エマルジョンの安定性が良好となり、且つ耐水性を高く維持できる。
上記安定剤としては、公知の重合禁止剤を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン等のハイドロキノン化合物;フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート等のチオエーテル化合物;ジアルキルジチオカルバミン酸銅(アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基)、酢酸銅、サリチル酸銅、チオシアン酸銅、硝酸銅、塩化銅、炭酸銅、水酸化銅、アクリル酸銅等の銅塩;ジアルキルジチオカルバミン酸マンガン(アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基)、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン、蟻酸マンガン、酢酸マンガン、オクタン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、過マンガン酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸等のマンガン塩等が挙げられるが、特にこれらに制限されない。
【0011】
(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂は、変性されたものであってもよい。変性の種類としては、例えば、ウレタン変性、フェノール変性、クレゾール変性、酸変性、酸無水物変性、酸ペンダント変性、リン酸ペンダント変性、シリコン変性、アリルエーテル変性、アセトアセチル化変性、部分エステル化変性等が挙げられる。
(A)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
((B):重合性不飽和単量体)
本発明の水中油型エマルジョン組成物は、(B)成分として、重合性不飽和単量体を含有する。本明細書では、前記(A)成分と該(B)成分とを合わせて、「樹脂成分」と称することがある。
(B)成分である重合性不飽和単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、スチレン及びその誘導体、並びにビニル化合物等が挙げられる。
【0013】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート及び2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜10である。
アルケニル(メタ)アクリレートとしては、例えば、アリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、アルケニル基の炭素数は好ましくは3〜10、より好ましくは3〜6である。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、アルキレングリコール部位の炭素数は好ましくは2又は3、より好ましくは2である。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート及びブトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、アルコキシ基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5であり、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3である。
ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキルアミノ基が有するアルキル基はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、また該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3である。また、ジアルキルアミノ基が置換しており、アクリロイルオキシ基の酸素原子へ結合しているアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3である。
スチレン誘導体としては、例えば、α−メチルスチレン、o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン及びp−ジビニルベンゼン等が挙げられる。
ビニル化合物としては、例えば、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル等が挙げられる。
これらの中でも、スチレン及びその誘導体、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、スチレン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより好ましく、スチレン、エチレングリコールジメタクリレートがさらに好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0014】
(B)成分は、水中油型エマルジョン組成物を常温で硬化する際、硬化塗膜の形成を容易にする効果がある。
(B)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の水中油型エマルジョン組成物は常温にて硬化させることができるため、上記のように、沸点が低いもの(例えば200℃未満、より低いものでは、180℃以下、さらには160℃以下のもの)でも用いることができる点で有利である。
(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜200質量部である。1質量部未満であると、水中油型エマルジョン組成物を常温で硬化する際、硬化塗膜の形成が困難となる。一方、200質量部を超えると、(A)成分の機械的強度を損なう。同様の観点から、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜80質量部、さらに好ましくは15〜60質量部、特に好ましくは20〜55質量部である。
【0015】
((C):硬化促進剤)
(C)成分である硬化促進剤は、本発明の水中油型エマルジョン組成物を常温で硬化する際に添加する硬化剤(F)、具体的には有機過酸化物を還元できるものを用いることができる。具体的には、銅アセチルアセテート、バナジウムアセチルアセテート、コバルトアセチルアセテート、マンガンアセチルアセテート、鉄アセチルアセテート等の金属アセチルアセテート;金属石鹸;五酸化二バナジウム等のバナジウム化合物;硫化コバルト、硫化銅、硫化マンガン、硫化ニッケル、硫化鉄等の硫化金属;N,N−ジメチルアニリン及びN,N−ジメチルトルイジン等の芳香族アミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びトリブチルアミン等のトリアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のアルコールアミン等のアミン等が挙げられるが、特にこれらに制限されるものではない。これらの中でも、金属石鹸が好ましい。
【0016】
ここで、金属石鹸とは、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸、ナフテン酸等の長鎖脂肪酸と、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、コバルト、マンガン、ジルコニウム等の金属(但し、ナトリウム及びカリウム以外の金属)の塩である。前記長鎖脂肪酸の炭素数は、好ましくは6〜25、より好ましくは6〜20、さらに好ましくは6〜15、特に好ましくは7〜12である。前記金属は、好ましくは鉄、コバルト、マンガン、より好ましくはコバルトである。
金属石鹸としては、好ましくは、ナフテン酸鉄等の鉄含有金属石鹸、ナフテン酸コバルト及びオクチル酸コバルト等のコバルト含有金属石鹸、オクチル酸マンガン等のマンガン含有金属石鹸であり、より好ましくはコバルト含有金属石鹸であり、さらに好ましくはオクチル酸コバルトである。
(C)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部である。0.1質量部未満であると、常温での硬化が困難となる。一方、10質量部を超えても、(C)成分による効果は頭打ちとなるため、製造コストが高くなるだけである。同様の観点から、(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.3〜7質量部、より好ましくは0.3〜5質量部、さらに好ましくは0.3〜3質量部である。
【0018】
((D):反応性界面活性剤)
(D)成分としては、樹脂成分からの界面活性剤の分離を抑制し、且つ硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性を高めるために、反応性界面活性剤を用いる必要がある。非反応性の界面活性剤では、硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性が不十分となる。ここで、「反応性」とは、ラジカル反応性を有することを言い、反応性界面活性剤としては、好ましくは分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも1つ有するものである。逆に、「非反応性」とは、ラジカル反応性を有さないことを意味し、非反応性界面活性剤としては、分子内に炭素−炭素二重結合などを有さないものである。
反応性界面活性剤(D)としては、イオン性反応性界面活性剤と非イオン性(ノニオン性)反応性界面活性剤とがあり、これらから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。イオン性反応性界面活性剤とノニオン性反応性界面活性剤のいずれか一方を用いてもよいが、それらを併用することがより好ましい。
イオン性反応性界面活性剤としては、アニオン性反応性界面活性剤、カチオン性反応性界面活性剤、両性反応性界面活性剤のいずれでもよいが、乳化容易性の観点から、アニオン性反応性界面活性剤が好ましい。
【0019】
アニオン性反応性界面活性剤としては、例えば、α−スルホ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩[株式会社ADEKA製のアデカリアソープ(登録商標)SR−10,SR−1025等]、α−スルホ−ω−(1−(ノニルフェノキシ)メチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩[株式会社ADEKA製のアデカリアソープ(登録商標)SE−10,SE−1025A等]、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩[第一工業製薬株式会社製のアクアロン(登録商標)HS−10,HS−5,BC−10,BC−5等]、α−スルホナト−ω−{1−(アリルオキシメチル)−アルキルオキシ}ポリオキシエチレンアンモニウム塩[第一工業製薬株式会社製のアクアロン(登録商標)KH−10等]、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム塩[花王株式会社製のラテムル(登録商標)PD−104等]、アルキルアリルスルホ琥珀酸塩[花王株式会社製のラテムル(登録商標)S−180A、S−180等、三洋化成工業株式会社製のエレミノール(登録商標)JS−20、]等が挙げられるが、特にこれらに制限されない。
これらの中でも、硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性の観点からは、α−スルホ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩[株式会社ADEKA製のアデカリアソープ(登録商標)SR−10,SR−1025等]が好ましい。
【0020】
ノニオン性反応性界面活性剤としては、例えば、α−ヒドロ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)[株式会社ADEKA製のアデカリアソープ(登録商標)ER−10,ER−20,ER−30,ER−40]、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル[花王株式会社製のラテムル(登録商標)PD−420,PD−430,PD−450]、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル[第一工業製薬株式会社製のアクアロン(登録商標)RN20,RN30,RN50]等が挙げられるが、特にこれらに制限されない。
これらの中でも、硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性の観点からは、α−ヒドロ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)[株式会社ADEKA製のアデカリアソープ(登録商標)ER−10,ER−20,ER−30,ER−40]が好ましい。
【0021】
その他、特開昭62−104802号公報、特開昭63−23725号公報及び特開昭63−240931号公報等に記載の公知のアニオン性反応性界面活性剤又はノニオン性反応性界面活性剤を用いることもできる。
イオン性反応性界面活性剤(特にアニオン性反応性界面活性剤)とノニオン性反応性界面活性剤とを併用する場合、(D)成分中のノニオン性界面活性剤の含有率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。
(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1〜50質量部である。1質量部未満であると、エマルジョンの安定性が低下する。一方、50質量部を超えた場合、硬化塗膜を形成し難くなり、且つ硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性が低下する。同様の観点から、(D)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは5〜45質量部、より好ましくは10〜40質量部、さらに好ましくは15〜35質量部、特に好ましくは15〜30質量部である。
【0022】
なお、(D)成分である反応性界面活性剤と共に、非反応性界面活性剤を併用してもよい。非反応性界面活性剤を併用する場合、(D)成分100質量部に対して、好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。
非反応性界面活性剤としては、非反応性である公知のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤を用いることができる。
非反応性のアニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;アルケニル琥珀酸カリウム;ジアルキルスルホ琥珀酸塩;半硬化牛脂肪酸カリウム等の半硬化牛脂肪酸塩;アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩等のポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、β−ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物等が挙げられる。
【0023】
非反応性のカチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
非反応性のノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアシルエステル、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンラノリンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0024】
((E):水)
本発明の水中油型エマルジョン組成物は、(A)成分100質量部に対して、(E)成分として水を10〜200質量部含有する。10質量部未満であると、エマルジョン組成物が水中油型になり難く、且つエマルジョンの安定性を保つことが困難である。一方、200質量部を超えると、常温で硬化させることが困難になる。同様の観点から、水の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは10〜150質量部、より好ましくは10〜100質量部、さらに好ましくは10〜70質量部、特に好ましくは10〜50質量部である。
水としては、イオン交換水、蒸留水等の純水が好ましい。
なお、後述するように、本発明の水中油型エマルジョン組成物は、前記(A)〜(D)成分及び必要に応じて後述するその他の成分を含有する混合液へ水(E)を滴下して転相乳化させることにより得られたものであることが好ましい。
【0025】
(その他の成分)
本発明の水中油型エマルジョン組成物は、必要に応じて、補強材、充填材、顔料等の各種添加剤を含有していてもよい。また、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の水溶性高分子を含有していてもよい。該水溶性高分子を含有させると、(A)成分の安定性の向上効果が得られる。
本発明の水中油型エマルジョン組成物が、これらその他の成分を含有する場合、その含有量は、それぞれ、(A)成分100質量部に対して好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。
また、本発明の水中油型エマルジョン組成物が、これらその他の成分を含有する場合、水中油型エマルジョン組成物における前記(A)〜(E)成分の合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、より特に好ましくは95質量%以上である。
【0026】
[水中油型エマルジョン組成物の調製方法]
本発明の水中油型エマルジョン組成物の調製方法としては、水中油型のエマルジョン組成物となる限り特に制限はない。例えば、前記(A)〜(D)成分及び必要に応じてその他の成分を混合して混合液を得、該混合液へ水を滴下して転相乳化させる方法が好ましく挙げられる。この場合、水を一度に添加するのではなく、水を「滴下」することにより、連続相が油相である、いわゆるW/O型エマルジョンから、連続相が水である、いわゆるO/W型エマルジョンへときれいに変化する。また、水を滴下することによって、分散相がより一層微細に分散された状態となり、エマルジョンの安定性が高くなり、且つ硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性が高くなる。
水を滴下する速度としては、早過ぎない限り特に制限はないが、例えば、10〜300ml/h程度が好ましく、50〜150ml/hがより好ましい。
【0027】
[表面処理方法]
本発明の水中油型エマルジョン組成物を用いて、金属、プラスチック、コンクリート、木材及びガラス等の各種材料の表面処理を行うことにより、各種材料の耐水性、耐酸性及び耐塩基性等の向上効果を付与することができる。
具体的には、本発明の水中油型エマルジョン組成物に硬化剤(F)を添加して塗布液を調製し、該塗布液を前記材料の表面へ塗布した後、0〜50℃で硬化させることによって前記材料の表面に硬化塗膜を形成させる方法を好ましく利用できる。
硬化剤(F)としては、一般的に不飽和ポリエステルや(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂の硬化に使用する硬化剤を用いることができる。該硬化剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。有機過酸化物の具体例としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びメチルシクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド及び2,5−ジメチルヘキサノン−2,5−ヒドロパーオキサイド等のヒドロパーオキサイド類;t−ブチルパーオキシベンゾエイト及びt−ブチルパーオキシラウレート等のパーオキシエステル類が挙げられるが、特にこれらに制限されない。該有機過酸化物としては、10時間半減期温度が30〜170℃のものが好ましい。硬化剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化剤(F)の添加量は、前記水中油型エマルジョン組成物100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.5〜7質量部、さらに好ましくは1〜7質量部、特に好ましくは1〜5質量部である。硬化剤(F)の添加量が、水中油型エマルジョン組成物100質量部に対して0.5質量部以上であれば、十分な硬化速度及び十分な硬度が得られ、且つ硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性が優れたものとなる。また、10質量部以下であれば、塗膜形成容易性が低下することがない。
【0028】
常温付近の温度で硬化させることが容易であり、乾燥設備の無い環境下でも実施可能であり、工業的に有用な表面処理方法である。硬化させるときの温度は、硬化速度の観点等から、好ましくは5〜50℃、より好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは15〜45℃、特に好ましくは15〜40℃である。
形成された硬化塗膜の膜厚は、表面処理という観点からは一般的に大き過ぎないことが望まれることと、表面処理効果を長期間持続させることとを両立させる観点から、好ましくは0.1〜2mm、より好ましくは0.3〜2mm、さらに好ましくは0.5〜2mm、特に好ましくは0.5〜1.5mmである。なお、塗布時の膨潤塗膜の膜厚をおおよそこれらの範囲に調整することによって、硬化塗膜の膜厚を前記範囲に調整することができる。
【0029】
金属、プラスチック、コンクリート、モルタル、木材及びガラス等の材料は、雨水や工業排水等と接する状況下で使われ得る材料であり、本発明の水中油型エマルジョン組成物を用いた表面処理が望まれる材料である。
金属としては、鉄及びアルミニウムから選択される少なくとも1種を含有しているものが好ましい。これらは、雨水や工業排水等と接する状況下で特に使われることの多い金属に含まれる成分である。鉄を含有する金属としては、鉄が実質的に100質量%であってもよいし、ステンレスなどの、鉄以外の金属(例えば、クロムなど)をも含有するものであってもよい。
木材の材質には特に制限はない。
ガラスとしては、昇温によりガラス転移現象を示す非晶質固体となるものであれば特に制限はない。ケイ酸塩を主成分とするガラスであってもよいし、ケイ酸塩以外の成分を主成分とするガラス、例えば、アクリルガラス、カルコゲンガラス、金属ガラス、有機ガラス等であってもよい。表面処理されるガラスの表面は平滑であってもよいし、凹凸が付けられていてもよい。
【実施例】
【0030】
実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例によってなんら限定されるものではない。
【0031】
実施例1
反応容器に、ノボラック型エポキシ樹脂「EPICRON(登録商標)N−740」(エポキシ当量=170〜190g/eq、DIC株式会社製)948g、メタクリル酸451g、ハイドロキノン1.2g、及びN,N−ジメチルベンジルアミン6gを仕込み、空気を吹き込みながら115±5℃で2時間反応させると、反応で得られた(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂(A)の酸価が10mgKOH/gとなった。次いで、ハイドロキノン0.3g及び(B)成分としてスチレン600gを加え、よく撹拌して溶解させた。こうして得られた樹脂成分を、樹脂成分(VE−1)と称する。なお、該樹脂成分中の(B)成分の配合比率は、表1に示すとおり、(A)成分100質量部に対して30質量部である。
得られた樹脂成分(VE−1)100gに対して、(C)成分としてオクチル酸コバルト1.0g、(D)成分としてアニオン性反応性界面活性剤「アデカリアソープ(登録商標)SR−10」(株式会社ADEKA製)1.5g及びノニオン性反応性界面活性剤「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」(株式会社ADEKA製)25gを加え、得られた混合液へ(E)成分として水30gを100ml/hで滴下しながらよく撹拌することで、水中油型エマルジョン組成物1を調製した。なお、該エマルジョン組成物において、樹脂成分からの界面活性剤の分離等は見られず、エマルジョンは安定していた。
【0032】
実施例2
実施例1において、スチレン600gの代わりにエチレングリコールジメタクリレート600gを用いたこと以外は同様にして操作を行い(得られた樹脂成分を、樹脂成分(VE−2)と称する。)、水中油型エマルジョン組成物2を調製した。なお、該エマルジョン組成物において、樹脂成分からの界面活性剤の分離等は見られず、エマルジョンは安定していた。
【0033】
参考例1
反応容器に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂「アラルダイト(登録商標)AER−280」(エポキシ当量=280g/eq、旭化成イーマテリアルズ株式会社製)1043g、メタクリル酸340g、ハイドロキノン0.4g、及びN,N−ジメチルベンジルアミン3.3gを仕込み、空気を吹き込みながら125±5℃で2時間反応させると、反応で得られた(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂(A)の酸価が10mgKOH/gとなった。次いで、ハイドロキノン0.3g及び(B)成分としてスチレン900gを加え、よく撹拌して溶解させた。こうして得られた樹脂成分を、樹脂成分(VE−3)と称する。なお、該樹脂成分中の(B)成分の配合比率は、表1に示すとおり、(A)成分100質量部に対して45質量部である。
得られた樹脂成分(VE−3)100gに対して、(C)成分としてオクチル酸コバルト1.0g、(D)成分としてアニオン性反応性界面活性剤「アデカリアソープ(登録商標)SR−10」(株式会社ADEKA製)1.5g及びノニオン性反応性界面活性剤「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」(株式会社ADEKA製)25gを加え、得られた混合液へ(E)成分として水30gを100ml/hで滴下しながらよく撹拌することで、水中油型エマルジョン組成物3を調製した。なお、該エマルジョン組成物において、樹脂成分からの界面活性剤の分離等は見られず、エマルジョンは安定していた。
【0034】
参考例2
反応容器に、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂「EPICRON(登録商標)152」(エポキシ当量=340〜380g/eq、DIC株式会社製)948g、メタクリル酸451g、ハイドロキノン1.2g、及びN,N−ジエチルアミン塩酸塩6gを仕込み、空気を吹き込みながら125±5℃で2時間反応させると、反応で得られた(メタ)アクリレート系エポキシ樹脂(A)の酸価が10mgKOH/gとなった。次いで、ハイドロキノン0.3g及び(B)成分としてスチレン500gを加え、よく撹拌して溶解させた。こうして得られた樹脂成分を、樹脂成分(VE−4)と称する。なお、該樹脂成分中の(B)成分の配合比率は、表1に示すとおり、(A)成分100質量部に対して25質量部である。
得られた樹脂成分(VE−4)100gに対して、(C)成分としてオクチル酸コバルト1.0g、(D)成分としてアニオン性反応性界面活性剤「アデカリアソープ(登録商標)SR−10」(株式会社ADEKA製)1.5g及びノニオン性反応性界面活性剤「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」(株式会社ADEKA製)25gを加え、得られた混合液へ(E)成分として水30gを100ml/hで滴下しながらよく撹拌することで、水中油型エマルジョン組成物4を調製した。なお、該エマルジョン組成物において、樹脂成分からの界面活性剤の分離等は見られず、エマルジョンは安定していた。
【0035】
比較例1
実施例1において、スチレンを用いなかったこと以外は同様にして操作を行い(得られた樹脂成分を、樹脂成分(VE−5)と称する。)、水中油型エマルジョン組成物5を調製した。なお、該エマルジョン組成物において、樹脂成分からの界面活性剤の分離等は見られず、エマルジョンは安定していた。
【0036】
上記実施例1
,2、参考例1,2及び比較例1で用いた(A)成分及び(B)成分並びにそれらの配合比率について、下記表1にまとめる。
【表1】
【0037】
比較例2
実施例1で得た樹脂成分(VE−1)100gに対して、(C)成分としてオクチル酸コバルト1.0g、(D)成分としてアニオン性反応性界面活性剤「アデカリアソープ(登録商標)SR−10」(株式会社ADEKA製)3g及びノニオン性反応性界面活性剤「アデカリアソープ(登録商標)ER−30」(株式会社ADEKA製)65gを加え、得られた混合液へ(E)成分として水30gを100ml/hで滴下しながらよく撹拌することで、水中油型エマルジョン組成物6を調製した。なお、該エマルジョン組成物において、樹脂成分からの界面活性剤の分離等は見られず、エマルジョンは安定していた。
【0038】
比較例3
実施例1において、アニオン性反応性界面活性剤の代わりに、アニオン性の非反応性界面活性剤「ラテムル(登録商標)E−118B」(花王株式会社製)を用い、さらに、ノニオン性反応性界面活性剤の代わりに、ノニオン性の非反応性界面活性剤「エマルゲン(登録商標)1135−S70」(花王株式会社製)を用いたこと以外は同様にして操作を行い、水中油型エマルジョン組成物7を調製した。なお、該エマルジョン組成物において、樹脂成分からの界面活性剤の分離等は見られず、エマルジョンは安定していた。
【0039】
上記実施例1
,2、参考例1,2及び比較例1〜3で用いた全成分及び配合量について、下記表2にまとめる。
【表2】
【0040】
実施例
3,4、参考例3,4、比較例4〜6
実施例1
,2、参考例1,2又は比較例1〜3で得た水中油型エマルジョン組成物及び硬化剤「328E」(t−ブチルパーオキシベンゾエイトとクメンヒドロパーオキサイドを溶媒で希釈したもの。化薬アクゾ株式会社製)を表3に記載の配合量で混合して塗布液を調製し、該塗布液を、ポリエステルフィルムを張ったガラス上に、湿潤膜厚が1mmとなるように塗布した。塗布後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で3日間放置して硬化塗膜を得た。なお、ガラス上に張られたポリエステルフィルムは、塗膜がガラスに張り付くのを防ぐためのものである。
硬化塗膜の形成容易性、並びに硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性について、下記方法に従って評価した。結果を表3に示す。
【0041】
(硬化塗膜の形成容易性)
塗布液を塗布後、温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置したときの塗膜の状態を下記評価基準に従って評価した。
○:硬化塗膜が形成されており、指で触れてもべたつかなかった。
△:塗膜が硬化しつつあるが、指で触れると、表面がべたついていた。
×:未硬化であった。
(耐水性、耐酸性及び耐塩基性)
合計1週間放置後の硬化塗膜を切削して得た試験片を、水、10体積%硫酸、飽和水酸化カルシウムのそれぞれに1週間浸漬した後、取り出し、試験片をイオン交換水で洗浄し、重量変化を測定することによって、下記式1から膨潤率(単位:質量%)を求め、耐水性、耐酸性及び耐塩基性の指標とした。数値が小さいほど、耐水性、耐酸性、耐塩基性が高いことを示す。
【数1】
【0042】
【表3】
【0043】
表3より、水中油型エマルジョン組成物No.1〜No.4を用いた場合には、水中油型エマルジョン組成物No.6やNo.7を用いた場合に比べ、常温にて硬化塗膜の形成が容易であり、且つ、硬化塗膜の耐水性、耐酸性及び耐塩基性が大幅に優れていることが分かる。
また、水中油型エマルジョン組成物No.5は、硬化塗膜の形成が困難な組成であることが分かる。