【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くことに、提供する本発明の発明者は、2光子重合または多光子重合を介して重合可能な有機残基によって変性される金属配位化合物を備えて、何れのケースにおいても、それによって発生するポリマーにおける2光子重合または多光子重合によって単重合される何らかの基を備えた有機モノマーを含んで、2光子重合または多光子重合を介して重合可能な有機残基によって変性されるポリシロキサンを含有する材料またはゾルまたはゲルを用意すること、およびこの材料が(局部的)選択的に2光子重合され、およびその他に全体に温度的および/または光化学的処理ステップを施され、または洗浄ステップを施されることを提案することによって、改善策を創出できることを確認できた。ここで上記ステップの最初のステップは2光子重合または多光子重合の前または後で実施される。
【0013】
驚くことに、すなわち本発明は、この材料の使用およびこれらの方法進行において、選択露光された構造が完全に硬化した材料内に埋め込まれ、または材料の直近で発生すること、その場合、選択露光領域は選択非露光領域に比較して、上に定義されたような異なる一次構造および/または二次構造のような構造的な変化を備え、または多くの場合、選択露光領域において有機成分の高度の架橋を備えることを確認することができた。光化学処理ステップは露光を2光子重合プロセスまたは多光子重合プロセスの飽和限界を超えるまで行うことができるという事実、およびその代わりのまたは付加的な全体材料の露光は選択露光の前に行うことができるという事実は、しかし、差異において有機ネットワークの架橋程度の差異が必要であるわけではなく、転位プロセス、置換または圧縮(例えば応力緩和下における)のような他の作用、おそらく無機後架橋(すなわち高い分子単位の形成)も、材料がゾル−ゲルプロセスに基づいて製造される限り、既に予め選択された条件下において可能な最大縮合度に達するかどうかを結果として伴う役割を演じることを示唆している。これは結果として、構造的な差異は異なる物理的特性を伴う。すなわち、選択露光された構造は、適切な態様において周囲のもしくは隣接する完全硬化した材料から差があり、かつより高い屈折率を備え、その結果、形成される構造は、例えば「コア」と「クラッディング」とを備える導波管として利用することができ、または両領域は異なる弾性率または剛性のような異なる機械的特性を備えることができる。
【0014】
「2PP」という表現は以下においてそれぞれ2光子重合のみを含むのではなく、2つ以上の光子の吸収下で行われる重合反応、すなわちいわゆる多光子重合(MPP)も含む。
【0015】
2光子重合または多光子重合は2光子吸収または多光子吸収によって誘起され、TPA(2光子吸収)もしくはMPA(多光子吸収)と呼ばれる。しかし以下、TPAという表現の使用は常にMPAも含むことを意味することとする。
【0016】
以下、「(メタ)アクリル」という表現が使用される場合、それはメタアクリル基かあるいは、および/またはアクリル基と理解すべきである。これは同様に「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリルアミド」および「(メタ)アクリルチオエステル」という表現に対しても有効である。
【0017】
部分的に知られている多数の材料は変性されたポリシロキサン含有の材料として、もしくはゾルまたはゲルとして使用され、これは2光子重合または多光子重合を介して重合可能な有機残基によって変性された金属配位化合物を備え、その場合、条件はTPAもしくはMPAを介して重合可能である金属基を備えることであり、その場合、C=C二重結合含有構造のみからなる付加ポリマーの形成も、チオール−エン付加化合物の形成も可能である。材料が非芳香族C=C二重結合、例えばビニル基のような、またはアリール基またはスチリル基における、またはα,β非飽和カルボニル化合物におけるような孤立二重結合を備える場合、TPAの条件の下で、C=C間の重合反応(英語で「addition polymerization(付加重合);chain growth polymerization(連鎖成長重合)」)が行われる。加えて、孤立二重結合はこの条件下でチオール基によって侵される可能性があるが、但し、これはまた、例えばノルボルネニル基のように、存在する立体障害に基づいて、またはC=C結合の重合の別の理由から単独では接近できない。また例えば伸張環のような多くの環系も、例えばエポキシ基含有系は、TPAを施される可能性があり、その場合、これは陽イオン重合され、その一方で上述のC=C重合反応、およびチオール−エン付加反応はラジカル的に進行する。これらの基は全て、「有機の、2光子重合または多光子重合を介して重合可能な基」という概念に属する。上述の基が既にTPAを施された材料において、これらの基は「有機の、2光子重合または多光子重合を介して重合可能な基」と呼ばれる。
【0018】
発明者は、適切な材料に対して、TPAを介してポリマーを形成することができる基の少なくとも一部は、金属含有または半金属含有のオリゴマーまたはポリマーに結合される必要があり、その場合、上述の基を備えた残基の結合は、金属に場合によっては酸素橋を介して行うことができることを確認した。しかし好ましくは、結合は1個の炭素原子を介する、および特に好ましくは、結合は1個の炭素原子を介する1個の珪素原子への有機変性ポリシロキサンまたは珪酸(ヘテロ)重縮合物の結合である。あるいは最初に確認された作用は、本発明に基づいて使用される材料中の重合可能な有機成分が無機ネットワーク内のそれぞれの金属/半金属への結合に基づいて統合され、およびしたがって無機ネットワークから離れたネットワークは形成することができないという事実に基づく。
【0019】
したがって、本発明に基づいて、有機の、2光子重合または多光子重合を介して重合された残基を含む材料を含む層または三次元成形品が用意され、その場合、TPAを介してポリマーを形成することができる基の少なくとも一部は、酸素橋を介しておよび/または炭素原子を介して、金属含有または半金属含有オリゴマーまたはポリマーの金属/半金属に結合され、物体は、構造的に、すなわち上に定義されたようなその一次構造もしくは二次構造に関して異なっており、およびその場合、望ましくは異なる架橋度および/または異なる屈折率および/または弾性率を備える2つの領域を備え、以下の方法によって入手できる。
【0020】
a)基板またはモールドを用意する、
b)有機の、2光子重合または多光子重合を介して重合可能な残基を含む材料を基板上に塗布する、もしくは同材料をモールド内に満たす、その場合、TPAを介してポリマーを形成することができる基の少なくとも一部は、酸素橋を介して、または炭素原子を介して金属含有または半金属含有オリゴマーまたはポリマーの金属/半金属に結合され、
c)基板上、またはモールド内にある材料の選択された領域を、2光子重合または多光子重合を用いて選択的に露光する、
d)基板上、またはモールド内にある材料の全体を熱的にまたは光化学的に処理する、
ここで、ステップc)とd)の順序は任意に選択することができる。
【0021】
その場合、一連の実施形態において優先的に、材料全体がステップd)に基づいて硬化され、その後に選択露光が行われた。
【0022】
好ましい実施形態において、(b)に関わる材料はポリシロキサンもしくは珪酸(ヘテロ)重縮合物である。
【0023】
例えばこのようなポリシロキサンもしくは珪酸(ヘテロ)重縮合物は、特許文献1に開示されており、すなわち母材の加水分解と少なくとも部分的な縮合によって得られるポリシロキサンは、化学式(I)の少なくとも1つのシランを備え、
【0024】
【化1】
【0025】
式中R
1は同一または異なり、および2光子重合または多光子重合を介して重合可能な有機残基を表し、R
2は同一または異なり、およびこの方式と態様において重合不可能な有機残基を表し、およびXは加水分解条件下で珪素から加水分解可能な残基であり、添え字aは1、2または3を意味し、添え字bは0、1、または2を意味し、およびa+bは合わせて1、2、または3である。残基R
1として、主として、しかし独占的ではなくC=C二重結合を含む残基、それに属するビニル残基またはアルール残基の他に、α,β非飽和カルボニル化合物を備えた特別な残基、および二重結合含有環系、および例えば以下の構造を備えたノルボルネニル残基とその誘導体のような特別に縮合された環系が適している。
【0026】
【化2】
【0027】
代替または追加で、例えば以下のステップによって得られるゾルまたはゲルが使用される。
【0028】
(a)マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、亜鉛、鉛および遷移金属から選択される1つまたは複数の金属の少なくとも1つの化合物を有機溶剤に溶かす、および/または溶解された金属化合物のリガンド、もしくは溶解された複数金属化合物の中の1つ金属化合物のリガンドと安定化リガンドと取り換える。(b)少なくとも1つの光化学的に重合可能な基と、それぞれの金属原子との安定した錯体形成を可能にする少なくとも1つの基とを備えた溶解液にリガンドを添加する、およびその反応の生成物(前駆体)によって、または生成物からゾルを形成する、ここで光化学的に重合可能な基は、先に挙げた化学式(I)のシランにおける残基R
1と同様の意味を持つ。このようなゾルは特許文献3に開示されている。
【0029】
有機変性されたポリシロキサンまたは珪酸縮合物(しばしば「シラン樹脂」とも呼ばれる)の製造、およびその特性は多くの出版物において述べられている。ここでは代表的に、例えばHybrid Organic−Inorganic Materials,MRS Bulletin 26(5),364ff(2001)を参照願いたい。このような物質はごく一般的に、場合によって硼素、ゲルマニウムまたはチタンのアルコキシドのような共縮合可能な別の物質、および場合によっては重合調整剤またはネットワーク変性剤として使用することができる付加的な化合物、または充填剤のようなその他の添加物の存在下に、加水分解性の単量体シランまたはプレ縮合シランが加水分解と縮合を施されることによって、通常いわゆるゾル−ゲル法を用いて製造される。提供する本発明に対して適する材料は、例えば独国特許第4011044号登録、独国特許第19627198号、欧州特許第450624号登録、欧州特許第682033号登録、欧州特許第1159281号登録、欧州特許第1685182号登録、欧州特許第1874847号登録、欧州特許第1914260号出願、特許文献1、特許文献2、および国際特許第2011/141521号にリストアップされている。これらの材料は、炭素を介して珪素に結合された残基を持ち、これは2PP(TPA)によって重合可能な1つまたは複数の基R
1を備えていることにおいて優れている。これらの材料の殆どにおいて、上述のR
1に対応するアクリル基とメタアクリル基が存在し、または存在することができ、代替に例えばノルボルネニルおよびこれの同族、またはビニル基、アリール基またはスチリル基のような他の縮合された二重結合含有系は残基R
1に適している。使用可能なノルボルネニルシランと使用される化合物に関して、上述した独国特許第19627198号公開も参照することができる。すなわち、その他にノルボルネン環は当然ながら場合によって代用することができ、またノルボルネン残基(すなわちビシクロ[2.2.1]へプテン残基)の代わりにビシクロ[2.2.2]オクテン残基が存在する。さらに縮合系の二重結合含有五員環は(メタ)アクリル基がシクロペンタジエンの代わりにフランで置換される場合、酸素を含むことができる。
【0030】
しかし上述のリストは、以下の説明からも察知されるように、網羅的なものとして解釈されるべきではない。
【0031】
特に本発明に基づいて、国際特許第93/25604号、または独国特許第19932629号公開に述べられているように、珪素ベースの樹脂/ラッカーも使用される。その下に好ましくは、シラン化合物の縮合がアルコールの形成のみに行われて水の形成のためには行われない理由から、シランジオールおよびアルコキシシランの使用下で製造されるので、独国特許第19932629号公開の変性珪酸重縮合物が優先される。特に極めて好ましくは、化合物Ar
2Si(OH)
2とR
1Si(OR’)
3の共縮合生成物であり、式中Arは6〜20個の炭素を有する芳香族残基、特に場合によっては置換されたアリールであり、および特に極めて好ましくは、直接珪素に結合された非置換フェニル残基であり、およびR
1は化学式(I)に対して与えられた意味を持ち、および優先的に少なくとも1つのエポキシ基またはC=C二重結合、特にマイケル付加に接近可能な二重結合を備える(例えば(メタ)アクリレート基である)。特に極めて好ましくはこの組み合わせにおけるR
1はメタアクリルオキシアルキル、例えばメタアクリルオキシプロピル基である。またそのAr
2および/またはR
1はスチリル基を意味する共縮合生成物であることができる。モル比1:1におけるジフェニルシランジオールと3−メタアクリルオキシプロピルトリメトキシシランの混合物からのシラン縮合物の製造は、上述の独国特許第19932629号公開において例1に述べられており、ここで選択されている比率は、加水分解が水の触媒量のみの使用によって行われていることを示している。そのように製造される材料は、そのOH基の変動誤差に基づいて、1310nmと1550nmにおける遠距離通信域において低吸収性を備える。
【0032】
2光子重合または多光子重合は、ラジカル的に重合される1つもしくは複数の基を介して行われることが好ましい。確かに、陽イオン紫外線スタータを用いて重合されるこのような系、例えばエポキシ系(例えばC.G.Roffey,Photogeneration of Reactive Species for UV Curing,John Willy & Sons Ltd,(1997)参照方)のような開環系も本発明に適している。しかし、この系は寄生重合の傾向があり、すなわち非露光領域においても重合が起こり、そのためにこの系は、例えば高解像度のリソグラフィのように表面の緻密さと光沢における極端な要求を有する使用領域に対してはあまり適していない。
【0033】
好ましくは、上記の化学式(I)におけるR
1は1つまたは複数の非芳香族C=C二重結合を含み、特に好ましくはマイケル付加に接近可能な二重結合、例えばα,β不飽和カルボニル化合物を含む。これはアクリル基または特に(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、および(メタ)アクリルチオエステルの形におけるメタアクリル基であることができる。R
2は、場合によって置換されたアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、またはアリールアルキル基であることができ、その場合、これらの残基の炭素鎖は場合によってO、S、NH、CONH、COO、NHCOO等によって中断することができる。その場合、R
2は、C=C二重結合によって付加反応に応じることができる基も含むことができ、または特許文献2から知られるように生物学的目的に対して重要な基を含むことができる。基Xは一般的に水素、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、または、水素または低級アルキルに等しいR
3を有するNR
32である。アルコキシ基は加水分解可能な基として好ましく、特にC
1〜C
6アルコキシのような低級アルコキシ基が好ましい。
【0034】
硬化可能なオルガノポリシロキサンは、使用下で少なくとも1つの別の化学式(II)のシランを生成することができ、
【0035】
【化3】
【0036】
式中、Xは同一または異なり、および化学式(I)におけるものと同一の意味を持つ。これに対して良好に使用可能な化合物はテトラエトキシシランである。重合可能な浴材料のみが発生する加水分解すべき、および縮合すべき混合物に対するこのようなシランの添加によって、樹脂のSiO成分、すなわち無機成分が増大される。それによって関心波長における樹脂の吸収性は低下する。
【0037】
逆に本発明に基づく重合すべき有機のシラン重縮合物は、化学式(IV)を有する少なくとも1つのシランの使用下で製造することが可能であり、
【0038】
【化4】
【0039】
式中R
1とR
2は、上述の化学式(I)に対して与えられた意味を持つ。それによって重縮合物の架橋度は減少する。
【0040】
加えて、R
1は化学式(I)のR
1と異なる、2光子重合または多光子重合を介して重合可能な有機の残基であることができる。
【0041】
シラン縮合物が生成される混合物は、さらに化学式(III)の少なくとも1つのシラノールを含むことができ、
【0042】
【化5】
【0043】
式中R
4は同一または異なることができ、かつそれぞれ化学式(I)において定義されるようなR
1の意味かあるいは、化学式(I)において定義されるようなR
2の意味を持つことができ、および式中添え字aは1、2、または3、優先的に2を意味する。したがってこの化合物の存在下で加水分解は触媒作用する水量を用いて行うことができ、それ以外において系は無水のままにすることができる。本発明の好ましい形態において、化学式(III)のジシラノールは1:1(モル/モル)の混合比において優先的に基R
1を含む化学式(I)のシランと共に、加水分解すべきおよび縮合すべき母材として使用される。
化学式(I)のR
1がC=C二重結合を持ち、かつこの式のR
2が存在しないか、または機能基を何も持たない場合、特殊な形態において、加水分解すべきおよび縮合すべき材料に化学式(V)の少なくとも1つのシランが添加され、
【0044】
【化6】
【0045】
式中R
3は基として1つのC=C二重結合に付加することができる1つの基、特にチオール基を持つ。さらに対応する縮合物は、化学式(I)のシランの基R
1の二重結合における化学式(V)のシランの基R
3の付加反応によって、重合部に接近可能である。
【0046】
提供する本発明の目的に対して加水分解すべきおよび縮合すべき混合物は別の物質、例えば、好ましくは低級アルコキシド、特に第III主族金属の、ゲルマニウムの、および第II、III、IV、V、VI、VII、VIII副族金属のC1〜C6アルコキシドを含むことができる。
【0047】
全体として、本発明に基づく物体が製造される有機変性珪酸重縮合物は、珪素原子に加えて、場合によって可能な場合は第III主族金属原子、ゲルマニウムおよび第II、III、IV、V、VI、VII、VIII副族金属原子におけるモル量に対して、望ましくは2光子重合または多光子重合を施される基(化学式(I)のR
1)において少なくとも0.1モルを備えるべきである。
【0048】
上述の基板上で、もしくは上述のモールド内で硬化される材料は付加的にフリーの有機モノマーを含む。すなわち、本発明の第1変形において、このモノマーは化学式(I)の(予備縮合された)シランにおける残基R
1のように同じ2光子重合または多光子重合を施される。その場合、好ましい実施形態において、同じ残基R
1が関与する。より好ましい実施形態において、有機モノマーは、それを用いて化学式(I)のシランが生成されるモノマーから選択される。ここで特にアクリル化合物および(メタ)アクリレートのようなメタアクリル化合物が有利である。
【0049】
例として、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)またはジペンタエリトリトペンタアクリレートが挙げられ、これは例えば独国特許第4011044号登録において説明されているように、トリアルコキシシランと、またはメルカプトアルキルアルキルジアルコキシシランまたはメルカプトアルキルトリアルコキシシランと反応させることができる。シランのヒドリド基もしくはメルカプト基に対して(メタ)アクリレート分子におけるモル過剰量の使用は、シランの加水分解縮合に基づいて、ポリシロキサンを含むゾルもしくはゲルをもたらし、これはフリーの(メタ)アクリレート分子を含む。
【0050】
代替の実施形態において、有機重合可能なモノマー化合物、しかし、また別の化合物も、シランの製造に対する化合物として使用することができる。その場合、シロキサンの残基R
1に光化学的に共重合されるようなモノマーが選択される。これは照射下で一部は自己と反応し、一部はポリシロキサンの有機重合可能な基と反応する。ここで例として、
1,12−ドデカンジオールジメタクリレート(DDDMA)
テトラメチレングリコールジメタアクリレート(TGMDMA)
トリエチレングリコールジメタアクリレート(TEGDMA)
エチレンメタアクリレート(EMA)
トリデシルメタアクリレート(C13MA)
ポリエチレングリコールメチルエーテル−メタアクリレートの変形体(MPEG500MA)
ビスフェノール−A−エトキシジアクリレート(BED)
ポリエチレングリコール−ジメタアクリレート(PEG400DMA)
トリエチレングリコールトリアクリレート
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
を挙げることができる。
【0051】
このモノマーの選択は、モノマーが1分子において異なる極性、重合可能基における、特にメタアクリル基またはアクリル基における異なる数、および1つ以上の重合可能基において2つの重合可能基間で異なる鎖長を備えるという事実を考慮して行われる。1つ以上の重合可能基を有するモノマーが選択される場合、密に有機的に結合したネットワークが発生する。鎖長によって、弾性または弾性係数等のような機械的特性を調整することができる。
【0052】
しかし代わりに、別の反応を行うモノマーを選択することもできる。これに適しているのは、例えばシランの残基R
1と別の態様における重合反応として反応するモノマーである。1つの例は、例えばポリシロキサンの(メタ)アクリル基を有する、1つ(または複数)のトリオール基を備えるモノマーの反応である。
【0053】
適切なチオール化合物に対する例として、
トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)(TMPMP)
トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMA)
ペンタエリトリトールテトラ(3−メルカプトプロピオネート)(PETMA)
ペンタエリトリトールテトラメルカプトアセテート(PETMA)
グリコールジメルカプトアセテート
グリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)
エトキシ化トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)
4,4’−チオビスベンゼンチオール
4,4’−ジメルカプトスチルベン
を挙げることができる。
【0054】
モノマーとしてチオール化合物が使用される場合、必須ではないが、ポリシロキサンは重合反応(「chain growth polymerization,addition polymerization(連鎖成長重合、付加重合)」)を施されることができるC=C二重結合を含む残基を備えることが可能である。しかし、ポリシロキサンが、チオール化合物とのチオール−エン反応を行う限り、立体的状態または別の状態に基づいてこの重合反応を受け入れないC=C二重結合を含むことも十分にあり得る。しかしポリシロキサンは例えば、例えばポリシロキサンネットワーク内へのメルカプトシランの組込みによってチオール基自体を含むことが可能であり、およびこのケースにおいて、チオール−エン反応を施されることができるC=C二重結合を備えたモノマーを選択することができる。好ましいケースにおいて、このモノマーは(メタ)アクリル基、より好ましくはメタアクリル基、特にメタアクリレート基を持ち、その場合、メタアクリレート基は部分的に光開始剤誘起によってポリシロキサンに存在する有機重合可能なC=C二重結合と、部分的に光開始剤の存在と無関係にシロキサンのチオール基と反応することができる。しかしこのようなシランは必ずしも加水分解縮合の前に添加する必要はなく、その後で単量体のシランとして添加することもできる。例えば適しているチオシランは、
3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン
3−メルカプトプロピル−トリエトキシシラン
3−メルカプトプロピル−メチルジメトキシシラン
である。
【0055】
この実施形態において、ポリシロキサンは有機重合(「chain growth polymerization(連鎖成長重合)」)を受け入れるC=C二重結合を全く備えていないことも可能である。
【0056】
単量体の有機重合可能化合物における量は決定的ではなく、好ましい態様において、その量は、シロキサンに対して使用される化学式(I)のシランのモル当たり0.5モルまでの範囲にあり、より好ましくは0.1〜0.3モルである。
【0057】
さらに有機変性されるポリシロキサン含有材料は、少なくとも重合がチオール−エン反応を介してのみ行われない場合に光開始剤を含む。光開始剤は例えば、イルガキュア369、オクセ01またはオクセ02のようなイルガキュアファミリーからなる開始剤、またはルシリンTPOおよび−TPO−Lのような別の開始剤であることが可能である。特に2光子重合および多光子重合に対して開発された特別な開始剤も参照願いたく、この開始剤は水素引き抜きによって作用し、例えばイルガキュア369、DPDまたはN−DPD(1,5ジフェニル−ペンタ−1,4−ジエン−3−オン、もしくはそのオルト−ジメチルアミノ誘導体)であり、例えばR.Liska et al.in Applied Surface Science 254,836−840(2007)、およびB.Seidl et al.in Macromol.Chem.Phys.208,44−54(2007)を参照願いたい。また、ポリシロキサン含有材料が例えばエポキシド基を含む場合は、陽イオン開始剤を使用することもできる。ポリシロキサンが、例えばメタアクリレート基とエポキシ基のように異なる残基R
1を備える場合、基に作用する開始剤と陽イオンに作用する開始剤の混合物であることも可能である。それによってより精密な重合の制御がもたらされる。
【0058】
光開始剤は好ましくは、使用されるシランの加水分解縮合による材料の有機架橋が既に行われた後に添加される。これに対して光開始剤は計量して加えられ、および黄色光(クリーンルーム条件、黄色光ラボ)への暴露下で材料製剤が行われる。それによって、材料は準備が整うが、望ましい場合はさらにフィルタに掛けることができる。
【0059】
添加される光開始剤の量は、必須のものではなく、例えば0.1重量%と5重量%の間の範囲にすることができる。しばしば2重量%が有利である。しかし、系が例えばノルボルネニル基の形の不活性二重結合を備える場合、開始剤の量は明らかに少ない量を選択することができる。場合によって光開始剤は省略することもでき、すなわち、チオール−エン結合のみを形成すべき場合、例えばノルボルネン含有ポリシロキサンの単量体チオールとの置換において可能である。
【0060】
異なる架橋構造の領域を有する三次元成形品の機能を作り出すために、材料は露光されなければならない。このために材料は基板上またはモールド上またはモールド内に持ち込まれ、その場合、材料はモールド内で浴を形成することができる。これは従来技術において周知の任意の方法、例えば液状またはペースト状材料の射出、スキージ、調剤、プリント、浸漬、または噴霧によって行うことができるが、しかし、また既に硬化した材料を基板またはモールドに乗せる、および場合によって固定することによって行うことが可能であり、その場合、ガラス、シリコン、金属のような全ての慣用基板材料およびモールド材料を使用することが可能であり、および層厚は例えば100nmと数mmの間で完全に可変に選択することができる。基板は平らであることができ、しかしその代わりに非平面形状を持つこともできる。成形品は任意に、大きな寸法でも、特に例えば1〜10mmの範囲の比較的大きい高さで作ることができる。
【0061】
その後、少なくとも2つのステップを含む方法によって成形品が製造される。その1つのステップにおいて、液状もしくはペースト状または固体の材料は、レーザ、望ましくは超短パルスレーザを用いて予め計算された所望個所が選択的に硬化され、その個所は完成品において構造変化が望まれる、例えば完成品において高い屈折率を備えていなければならない位置である。そのために、レーザ光線は硬化すべき容量要素のそれぞれに向けられる。それに対して特にフェムト秒レーザパルスの照射が適している。光線源は基本的に固体レーザ、ダイオード励起固体レーザ、半導体レーザ、ファイバレーザ等で任意の波長を使用することができる。本発明の実施形態において、イッテルビウムレーザシステムが特に有利に使用される。これの波長は周波数倍増において緑色光の領域にある。約800nmの波長を持つ(しかしその場合、400nmの第2高調波も利用できる)チタンサファイアレーザシステムに対するイッテルビウムレーザの利点は、1030nmの波長である。この波長は周波数倍増において515nmの緑色領域になり、これは改良された解像度をもたらすことができる。加えて、約800nmの波長領域にあるレーザを用いるよりも、構造化すべき材料をより効率的に処理することができる。プロセスウィンドウは材料製剤に関して明らかに大きい。イッテルビウムレーザシステムの利点は、このレーザをダイオード励起によって励起でき、かつ付加的励起レーザと幾つかの別の器具を必要としないことにある。Nd:YAGレーザに対するイッテルビウムレーザの利点は、比較的に短いパルスである。他の短パルスレーザ、特にファイバレーザも本発明による方法において使用することができる。より大きな波長の使用において、重合はn光子吸収によっても初期化することが可能であり、ここでnは2以上が適用される。重合プロセスが開始される限界フルエンスは、例えば共開始剤および/またはアミン成分のような、樹脂内の高められた多光子吸収断面積を有する適切な成分の選択によって下げることができる。それによって、その中で重合が行われる、しかし材料はまだ壊されていないプロセスウィンドウは広げられる。当然ながら、硬化すべき材料は使用されるレーザ波長に対して透過性でなければならない。
【0062】
選択領域の形状と形態は自由に選択することができる。多くの場合、そこを始点として硬化する構造が延びる基板もしくはモールドにおける基点を選択することは有利である。しかしこれは必須の処置ではなく、むしろ構造は材料の中に自由に描くことができ、詳しく言えば驚くことに、材料が先に何らかの態様において既に固体状態に移行してしまっている場合においても自由に描くことができる。
【0063】
先行するステップにおいて、または好ましくは後続するステップにおいて、好ましいが唯一可能なものではない本発明の実施変形において、基板もしくはモールドに存在する材料全体が硬化される。これは照射によってか、あるいは加熱によって行われる。このステップにおいて照射が使用される場合、望ましくは照射は例えば200nmと500nmの間の領域の、特に極めて好ましくは約365nm(いわゆるi線)の紫外光によって、すなわち、2光子重合の間の露光の入射光子に比べてほぼ2倍のエネルギーを用いて行われる。熱的な硬化は、好ましくは80℃と170℃の間の範囲の温度で行われ、その場合、当業者によって形状の大きさに基づいて適切な態様において選択される時間は、例えば数秒から数時間である。特別な実施形態において、両方の処置は組み合わせることができ、その場合、紫外光線による照射に熱的な後硬化が続く。この前処理または後処理は完全な硬化に使用され、その結果、得られた生成物は大きな時間スパンに渡って光学的および機械的特性が安定していることが保証される。その場合、屈折率差Δnは確かに再度小さくなるが、驚くことに、TPA反応の飽和曲線に基づいて、2つの領域において全ての有機重合可能基は立体的に妨げられない限り完全に置換されなければならないことから開始されなければならないにも拘らず、屈折率差Δnは十分な程度に留まり、かつ解消されることはない。
【0064】
その場合、上述の全ての実施例において、選択的硬化のステップに予備架橋ステップを先行させることが可能である。これは、例えば選択的なエネルギー入力によって、および/または、試料が動かされる場合、および露光プロセスの間にレーザのみでなく試料の移動が行われる場合、材料内の拡散プロセスと移動プロセスが弱められるかまたは妨げられるので、例えば高い屈折率を有する領域を生成するための選択的露光が可能な限り精密な構造をもたらす利点を持つ。全く驚くことに、発明者は、このような予備硬化は後続する所望構造の選択的生成を妨害せず、または悪化させないことを確認することができた。その場合、光化学ルートへの予備架橋は照射によって生じさせることが好ましい。照射は上述したものと同一波長で行われ、継続時間は1秒から約60分までであり、特に1〜360秒の継続時間、ここではさらに特に5〜60秒が有利である。発明者が多年に渡る分光学的研究から分かっているように、材料は既に1〜30秒後に完全に(すなわち「飽和」するまで)架橋されることを考えた場合、2光子重合によって処理された領域の後続する選択的硬化にこのステップがネガティブに影響しないことは全く驚くべきことである。