(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(m)工程(b)の前に、少なくとも1つの追加成分を前記熱伝導性クラスタ化官能性ポリマーとブレンドする工程を更に含み、前記少なくとも1つの成分が、(V)水分硬化開始剤、(VI)架橋剤、(VII)水分硬化ポリマー、(VIII)溶媒、(IX)接着促進剤、(X)着色剤、(XI)反応性希釈剤、(XII)腐食防止剤、(XIII)重合阻害剤、(XIV)酸受容体、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
前記(VI)架橋剤及び前記水分硬化ポリマー(VII)がいずれも熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物中に存在し、前記架橋剤(VI)の量が前記水分硬化ポリマー(VII)の全重量の0.001〜50重量%であり、前記水分硬化ポリマー(VII)の量が熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の全重量の0.1〜5重量%である、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
冠詞「a」(1つの)、「an」(1つの)、及び「the」(その)は、それぞれ別途記載のない限り、1つ以上を指す。本出願の全ての量、比率、及びパーセンテージは、別途記載のない限り重量によるものである。全ての運動粘度は、別途記載のない限り、25℃で測定された。
【0015】
本発明は、(I)熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサンと、(II)ラジカル開始剤と、その他の任意成分と、を含む熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物を形成するための新規方法(以後、「In Situ法」と呼ぶ)に関する。特定の実施形態において、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、(III)シリコーン反応性希釈剤を更に含有する。
【0016】
以下に更に考察するように、In Situ法は、2つの別個の方法、即ち、水分硬化及び熱ラジカル硬化によって、その機械的及び物理的特性に悪影響を及ぼすことなく硬化できることから、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の製造に対して独自の利点を提供する。それ故、接着剤は、プラスチック基材及び金属基材を含む、多種多様な基材に使用できる。
【0017】
成分(I)は、以下の下位成分を含有する熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサンである:
(a)平均で1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサン、
(b)平均で1分子当たり4〜15個のケイ素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
(c)1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基と1個以上の硬化性基とを有する反応種、
(d)ヒドロシリル化触媒、
(e)異性体減少剤、
(f)熱伝導性充填剤を含む充填剤、
(g)充填剤処理剤、及び
任意の追加成分。
【0018】
成分(a)は、平均で1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンであり、成分(b)のケイ素結合水素原子とのヒドロシリル化反応を起こすことができる。成分a)は、線状又は分枝状構造を有してもよい。あるいは、成分(a)は、線状構造を有してもよい。成分(a)は、以下の特性のうち少なくとも1つが異なる2種以上のポリオルガノシロキサンを含む組み合わせであってもよい:構造、粘度、重合度、及び配列。
【0019】
成分(a)は、100の最小平均重合度(平均DP)を有する。あるいは、成分(a)の平均DPは100〜1000の範囲であってもよい。成分(a)のポリオルガノシロキサンの分布DPは二峰性であることができる。例えば、成分(a)は、ポリジオルガノシロキサンの平均DPが100〜1000の範囲内であるという条件で、60のDPを有する1つのアルケニル末端ポリジオルガノシロキサン及び100より高いDPを有する別のアルケニル末端ポリジオルガノシロキサンを含むことができる。しかしながら、成分(a)に用いるのに適したポリオルガノシロキサンは、10未満のDPを有するポリオルガノシロキサンは100を超えるDPを有するポリオルガノシロキサンと組み合されるという条件で、10の最小重合度(DP)を有する。成分(a)に適したポリジオルガノシロキサンは、当技術分野において既知であり、市販されている。例えば、Dow Corning(登録商標)SFD−128は、800〜1000の範囲のDPを有し、Dow Corning(登録商標)SFD−120は、600〜700の範囲のDPを有し、Dow Corning(登録商標)7038は、100のDPを有し、Dow Corning(登録商標)SFD−119は、150のDPを有する。上記は全て、Dow Corning Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されるビニル末端ポリジメチルシロキサンである。成分(a)が二峰性分布を有する場合、より低いDPを有するポリオルガノシロキサン(低DPポリオルガノシロキサン)は、より高いDPを有するポリオルガノシロキサン(高DPポリオルガノシロキサン)よりも少ない量で存在する。例えば、二峰性分布では、低DPポリオルガノシロキサン/高DPポリオルガノシロキサンの比は10/90〜25/75の範囲であってもよい。
【0020】
成分(a)は、式(I)、式(II)、又はこれらの組み合わせのポリオルガノシロキサンによって例示される。式(I)は、R
72R
8SiO(R
12SiO)
g(R
7R
8SiO)
hSiR
72R
8であり、式(II)はR
73SiO(R
72SiO)
i(R
7R
8SiO)
jSiR
73である。上記の式中、各R
7は独立して脂肪族不飽和を含まない一価有機基であり、各R
8は独立して脂肪族不飽和有機基であり、下付き文字gは2〜1000の範囲の平均値を有し、下付き文字hは0〜1000の範囲の平均値を有し、下付き文字iは0〜1000の範囲の平均値を有し、下付き文字jは4〜1000の範囲の平均値を有する。式(I)及び(II)において、10≦(g+h)≦1000であり、10≦(i+j)≦1000である。
【0021】
R
7に好適な一価有機基としては、限定するものではないが、一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロへキシルのようなシクロアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられる。各R
8は、独立して、脂肪族不飽和一価有機基である。R
8は脂肪族不飽和一価炭化水素基、例えば、ビニル、アリル、プロぺニル、及びブテニルのようなアルケニル基;並びにエチニル及びプロピニルのようなアルキニル基であってもよい。
【0022】
成分(a)は、i)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリジメチルシロキサン、ii)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、iii)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリメチルビニルシロキサン、iv)トリメチルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、v)トリメチルシロキシで末端処理したポリメチルビニルシロキサン、vi)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、vii)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、viii)フェニル、メチル、ビニルシロキシで末端処理したポリジメチルシロキサン、ix)ジメチルヘキセニルシロキシで末端処理したポリジメチルシロキサン、x)ジメチルヘキセニルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、xi)ジメチルヘキセニルシロキシで末端処理したポリメチルヘキセニルシロキサン、xii)トリメチルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、又はxiii)これらの組み合わせ、のようなポリジオルガノシロキサンを含んでもよい。
【0023】
成分(b)は、平均で1分子当たり4〜15個のケイ素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。成分(b)は、成分(a)中の脂肪族不飽和有機基1個当たり平均で少なくとも4個のケイ素結合水素原子を有する。成分(b)は環状、分枝状、又は線状であってもよい。あるいは、成分(b)は環状であってもよい。成分(b)は、以下の特性のうち少なくとも1つが異なる2種以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含む組み合わせであってもよい:構造、粘度、重合度、及び配列。
【0024】
成分(b)は、平均で1分子当たり4〜15個のシロキサン単位を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンであってもよい。環状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、式(III)を有してもよく、式(III)は(R
92SiO
2/2)
k(HR
9SiO
2/2)
lであり、式中、各R
9は独立して脂肪族不飽和を含まない一価有機基であり、下付き文字kは0〜10の範囲の平均値を有し、下付き文字lは4〜15の範囲の平均値を有し、量(k+l)は4〜15、あるいは4〜12、あるいは4〜10、あるいは4〜6、あるいは5〜6の範囲の値を有する。R
9に適した一価有機基としては、限定するものではないが、一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロへキシルのようなシクロアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられる。
【0025】
あるいは、成分(b)は、分枝状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであってもよい。成分(b)の分枝状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、式(IV)を有してもよく、式(IV)はSi−(OSiR
102)
m(OSiHR
10)
m’(OSiR
103)
n(OSiR
102H)
(4−n)であり、式中、各R
10は独立して脂肪族不飽和を含まない一価有機基であり、下付き文字mは0〜10の範囲の値を有し、下付き文字m’は0〜10の範囲の値を有し、下付き文字nは0〜1の範囲の値を有する。
【0026】
あるいは、下付き文字mは0であってもよい。下付き文字m’が0のとき、下付き文字nも0である。R
10に適した一価有機基としては、限定するものではないが、一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロへキシルのようなシクロアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられる。
【0027】
あるいは、成分(b)は平均で1分子当たり少なくとも4個のケイ素結合水素原子を有する線状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであってもよい。成分(b)の線状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、(V)、(VI)、又はこれらの組み合わせから選択される式を有してもよく、式(V)はR
112HSiO(R
112SiO)
o(R
11HSiO)
pSiR
112Hであり、式(VI)はR
113SiO(R
112SiO)
q(R
11HSiO)
rSiR
113であり、式中、各R
11は独立して脂肪族不飽和を含まない一価有機基であり、下付き文字oは0〜12の範囲の平均値を有し、下付き文字pは2〜12の範囲の平均値を有し、下付き文字qは0〜12の範囲の平均値を有し、下付き文字rは4〜12の範囲の平均値を有し、4≦(o+p)≦13であり、4≦(q+r)≦13である。R
11に適した一価有機基としては、限定するものではないが、一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロへキシルのようなシクロアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられる。
【0028】
成分(a)及び成分(b)は、成分(b)中のケイ素結合水素原子の重量%/成分(a)中の不飽和有機基の重量%(一般的にはSiH
b/Vi
a比と称される)を、4/1〜20/1、あるいは4/1〜10/1、あるいは5/1〜20/1の範囲とするのに十分な量で存在してもよい。理論に束縛されるものではないが、SiH
b/Vi
a比が30/1以上である場合、成分が架橋して望ましくない物理的特性を有する生成物を形成する場合があり;SiH
b/Vi
a比が4/1未満である場合、プロセスの生成物が十分に速い硬化速度を有するのに十分なクラスタ化官能性基を有さない場合が、特に(1分子当たり1個の硬化性基を有する)単官能性反応種が成分c)として用いられる場合に、あると考えられる。
【0029】
理論に束縛されるものではないが、成分(a)中の脂肪族不飽和有機基に対して過剰のケイ素結合水素原子を成分(b)に使用することで、本明細書に記載のプロセスによって調製される熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサンに不溶性となる傾向があり、その保存寿命を低減し得る、クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサンの高級同族体を生成する可能性が低減されると考えられる。成分(b)中のケイ素結合水素原子が過剰であることは、反応性希釈剤又は粘度調整剤及び接着促進剤として作用し得る小さな(比較的低DPの)熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサンも生じ得る。小さな高官能性水素化シリコーンヒドリドの阻害性は、ヒドロシリル化プロセスを開始させるために一般的には50℃より高い温度が必要であることを意味することから、産業環境においてこれらの高官能性小分子を生成するのは難しい。この後大きな発熱が起こり、大量の溶媒が存在する場合、又は試薬の注意深い監視を用いて温度が制御されない場合には、危険となり得る。単にSiH
b/Vi
a比を変えることにより、これらの種をクラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン及び充填剤の希釈溶液中で製造することができ、これによりゲル化及び非制御発熱反応による発火の可能性を大幅に低減する。
【0030】
成分c)は反応種である。反応種は、熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサン中の硬化性基を提供できるいずれの種であってもよい。反応種は、成分(b)のケイ素結合水素原子との付加反応を行うことができる脂肪族不飽和有機基を、平均で1分子当たり少なくとも1個有する。成分(c)は、1分子当たり1個以上のラジカル硬化性基を更に含む。ラジカル硬化性基は、クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン(上記のプロセスにより調製される)を放射線硬化性にする官能(反応)基である。成分c)上のラジカル硬化性基は、アクリレート基、メタクリレート基、及びこれら組み合わせから選択されてもよい。あるいは、成分c)上の硬化性基は、アクリレート、アルコキシ、エポキシ、メタクリレート、及びこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0031】
例えば、成分c)は式(VIII)のシランを含んでもよく、式(VIII)はR
12sSiR
13(3−s)であり、式中、下付き文字sは1〜3の範囲の値を有し、各R
12は独立して脂肪族不飽和有機基であり、各R
13は独立してアクリレート基及びメタクリレート基を含有する有機基から選択される。
【0032】
あるいは、成分c)は有機化合物(これはケイ素原子を含有しない)を含んでもよい。成分c)の有機化合物は、平均で1分子当たり1〜2個の脂肪族不飽和有機基、例えば、アルケニル又はアルキニル基、並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上の反応基を有してもよい。成分c)に適した有機化合物の例としては、限定するものではないが、アリルアクリレート及びアリルメタクリレート(AMA);及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
成分c)の量は、成分(b)の種類、量及びSiH含有量並びに選択される成分c)の種類などの様々な要因に依存する。しかしながら、成分c)の量は、SiH
tot/Vi
totの範囲を1/1〜1/1.4、あるいは1/1.2〜1.1/1とするのに十分である。比SiH
tot/Vi
totは、成分(b)並びに、存在する場合には成分g)鎖延長剤及び/又は成分h)末端封鎖剤(後述)上のケイ素結合水素原子の重量パーセントを、組み合わされた成分(a)及びc)上の脂肪族不飽和有機基の全重量パーセントで割ったものを意味する。
【0034】
成分d)は、成分(a)、(b)、及びc)の反応を促進するヒドロシリル化触媒である。成分d)は成分(a)、(b)、及びc)の反応を促進するのに十分な量で添加されてもよく、この量は、例えば、プロセスに用いられる全成分の総重量に対して、0.1百万分率(ppm)〜1000ppm、あるいは1ppm〜500ppm、あるいは2ppm〜200ppm、あるいは5ppm〜20ppmの白金族金属をもたらすのに十分であってもよい。
【0035】
好適なヒドロシリル化触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。成分d)は、白金(pt)、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム金属若しくはこれらの有機金属化合物、又はこれらの組み合わせから選択される白金族金属を含んでもよい。成分d)の例としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及び前記化合物と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体のような化合物又はマトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金化合物が挙げられる。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されてもよい。あるいは、触媒は1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金錯体を含んでよい。触媒が低分子量オルガノポリシロキサンの白金錯体である場合、触媒の量はプロセスで用いられる成分の総重量に対して0.04%〜0.4%の範囲であってもよい。
【0036】
成分d)に適したヒドロシリル化触媒は、例えば、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号並びに欧州特許第0 347 895 B号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその製造方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されているように、当該技術分野において既知である。
【0037】
成分(e)は、異性体減少剤である。特定の実施形態において、異性体減少剤はカルボン酸化合物を含む。カルボン酸化合物は、(1)カルボン酸、(2)カルボン酸の無水物、(3)カルボン酸シリルエステル、及び/又は(4)本発明の方法の反応における反応又は分解により上記のカルボン酸化合物(即ち、(1)、(2)及び/又は(3))を生成する物質を含んでもよい。これらのカルボン酸化合物の1つ以上の混合物を異性体減少剤として使用してもよいことは理解されるべきである。例えば、カルボン酸シリルエステルは、異性体減少剤としてカルボン酸の無水物と組み合わせて用いてもよい。更に、1種以上のカルボン酸化合物の混合物を異性体減少剤として用いてもよい。例えば、2つの異なるカルボン酸シリルエステルを同時に用いてもよく、又は2つのカルボン酸シリルエステルを、カルボン酸の無水物と同時に用いてもよい。
【0038】
異性体減少剤が(1)カルボン酸を含む場合、カルボキシル基を有する任意のカルボン酸を用いてもよい。カルボン酸の好適な例としては、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、モノカルボン酸、及びジカルボン酸が挙げられる。飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、水素原子などは、通常、これらのカルボン酸においてカルボキシル基以外の部分として選択される。好適なカルボン酸の具体例は、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ラウリン酸、及びステアリン酸などの飽和モノカルボン酸;シュウ酸及びアジピン酸などの飽和ジカルボン酸;安息香酸及びp−フタル酸などの芳香族カルボン酸;これらのカルボン酸の炭化水素基の水素原子がハロゲン原子又は有機シリル基で置換されているカルボン酸、例えば、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−クロロ安息香酸、及びトリメチルシリル酢酸;アクリル酸、メタクリル酸、及びオレイン酸などの不飽和脂肪酸;並びにカルボキシル基に加えて、ヒドロキシ基、カルボニル基、又はアミノ基を有する化合物、即ち、例えば、乳酸などのヒドロキシ酸、アセト酢酸などのケト酸、グリオキシル酸などのアルデヒド酸、及びグルタミン酸などのアミノ酸が挙げられる。
【0039】
異性体減少剤が(2)カルボン酸の無水物を含む場合、カルボン酸の酸無水物の好適な例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸及び無水安息香酸が挙げられる。反応系での反応又は分解によって得られるこうしたカルボン酸の無水物としては、塩化アセチル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル、及びその他のカルボン酸ハロゲン化物、酢酸亜鉛及び酢酸タリウムなどのカルボン酸金属塩、及びプロピオン酸(2−ニトロベンジル)のような光又は熱によって分解されるカルボン酸エステルが挙げられる。
【0040】
異性体減少剤が(3)カルボン酸シリルエステルを含む実施形態において、カルボン酸シリルエステルの好適な例は、トリアルキルシリル化カルボン酸、例えば、ギ酸トリメチルシリル、酢酸トリメチルシリル、プロピオン酸トリエチルシリル、安息香酸トリメチルシリル及びトリフルオロ酢酸トリメチルシリル;並びにジ−、トリ−又はテトラカルボキシシリレート、例えば、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、及びシリコンテトラベンゾエートである。
【0041】
異性体減少剤は、一般的には、熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサンの総重量に対して、0.001〜1重量%、あるいは0.01〜0.1重量%の範囲の量で用いられる。異性体減少剤として好適な市販のカルボン酸シリルエステルの例としては、Dow Corning Corporation(Midland,MI)から入手可能なDOW CORNING(登録商標)ETS 900又はXIAMETER(登録商標)OFS−1579シランが挙げられる。
【0042】
異性体減少剤(e)は、上記のように0.001〜1重量%などの十分な量で添加されて、ポリオルガノシロキサン(b)のSiH基の反応種c)の脂肪族不飽和基へのα付加を、ポリオルガノシロキサン(b)のSiH基の反応種c)の脂肪族不飽和基へのβ付加よりも促進する。β位付加の結果、その後ポリオルガノシロキサンが更に反応して、Si−OH及びそれに伴う水酸化ケイ素生成物(D(Oz)及び/又はT(Oz)単位と呼ばれることもある)を生成する場合がある。理論に束縛されるものではないが、Si−OHの生成は、熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサンの水分硬化を促進すると考えられる。生成したD(Oz)単位の相対量は、ポリオルガノシロキサン(b)のSiH基の反応種c)の脂肪族不飽和基へのβ位付加の量と相関し、NMRによって測定できる。
【0043】
十分な量の異性体減少剤(e)を用いて本発明に従って製造した熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサンは、生成した熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサン中に存在するD(Oz)単位の量の減少を、特定の実施形態においては少なくとも10%の減少で生じ(NMRによって測定)、これは、特定の実施形態において、ポリオルガノシロキサン(b)のSiH基の反応種c)の脂肪族不飽和基へのβ位付加の少なくとも10%の減少に相当する。
【0044】
熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサンは、(f)熱伝導性充填剤などの充填剤も含む。特定の実施形態において、充填剤(f)は、熱伝導性充填剤に加えて、補強充填剤、増量充填剤、又はこれらの組み合わせも含んでもよい。
【0045】
熱伝導性充填剤は、熱伝導性及び導電性の両方であってもよい。あるいは、熱伝導性充填剤は、熱伝導性及び電気絶縁性であってもよい。熱伝導性充填剤は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウム三水和物、チタン酸バリウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、炭素繊維、ダイヤモンド、黒鉛、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、金属粒子、オニックス、炭化ケイ素、炭化タングステン、酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。熱伝導性充填剤は、金属充填剤、無機充填剤、溶融性充填剤、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。金属充填剤は、金属の粒子及び粒子表面上に層を有する金属粒子を含む。これらの層は、例えば、粒子の表面上の金属窒化物層又は金属酸化物層であってもよい。好適な金属充填剤の例としては、アルミニウム、銅、金、ニッケル、銀、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される金属の粒子、あるいはアルミニウムの粒子が挙げられる。好適な金属充填剤は、更に、上記金属の粒子表面上に窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化ニッケル、酸化銀、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される層を有する上記金属粒子によって例示される。例えば、金属充填剤は、表面上に酸化アルミニウム層を有するアルミニウム粒子を含んでもよい。
【0046】
無機充填剤としては、オニキス;アルミニウム三水和物、酸化アルミニウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、及び酸化亜鉛などの金属酸化物;窒化アルミニウム及び窒化ホウ素などの窒化物;炭化ケイ素及び炭化タングステンなどの炭化物;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、無機充填剤の例には酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及びこれらの組み合わせが挙げられる。溶融性充填剤は、Bi、Ga、In、Sn、又はこれらの合金を含んでもよい。溶融性充填剤は、場合により、Ag、Au、Cd、Cu、Pb、Sb、Zn、又はこれらの組み合わせを更に含んでもよい。好適な溶融性充填剤の例としては、Ga、In−Bi−Sn合金、Sn−In−Zn合金、Sn−In−Ag合金、Sn−Ag−Bi合金、Sn−Bi−Cu−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Sb合金、Sn−Ag−Cu合金、Sn−Ag合金、Sn−Ag−Cu−Zn合金、及びこれらの組み合わせが挙げられる。溶融性充填剤は、50℃〜250℃、あるいは150℃〜225℃の範囲の融点を有する。溶融性充填剤は、共晶合金、非共晶合金、又は純金属であってもよい。溶融性充填剤は市販されている。
【0047】
例えば、溶融性充填剤は、Indium Corporation of America(Utica,N.Y.,U.S.A.)、Arconium(Providence,R.I.,U.S.A.)、及びAIM Solder(Cranston,R.I.,U.S.A.)から入手可能である。アルミニウム充填剤は、例えば、Toyal America,Inc.(Naperville,Illinois,U.S.A.)、及びValimet Inc.(Stockton,California,U.S.A.)から市販されている。銀充填剤は、Metalor Technologies U.S.A.Corp.(Attleboro,Massachusetts,U.S.A.)から市販されている。銀フレーク充填剤は、American Chemet Corporation(Chicago,Illinois)によって商標名RA−127で販売されている。
【0048】
熱伝導性充填剤は、当該技術分野において既知であり、市販されており、例えば、米国特許第6,169,142号(4段、7〜33行)を参照されたい。例えば、CB−A20S及びAl−43−Meは、Showa−Denkoから市販されている異なる粒径の酸化アルミニウム充填剤であり、AA−04、AA−2、及びAA18は、Sumitomo Chemical Companyから市販されている酸化アルミニウム充填剤である。酸化亜鉛、例えば、KADOX(登録商標)及びXX(登録商標)の商標を有する酸化亜鉛は、Zinc Corporation of America(Monaca,Pennsylvania,U.S.A.)から市販されている。
【0049】
熱伝導性充填剤粒子の形状は特に限定されないが、円形又は球形粒子は、組成物中の熱伝導性充填剤の高配合によって望ましくないレベルまで粘度が増加するのを防止することができる。
【0050】
熱伝導性充填剤は、単一の熱伝導性充填剤、又は充填剤の粒子形状、平均粒径、粒径分布、及び種類などの少なくとも1つの特性が異なる2つ以上の熱伝導性充填剤の組み合わせであってもよい。例えば、より大きな平均粒径を有する第1の酸化アルミニウムと、より小さな平均粒径を有する第2の酸化アルミニウムなどの、無機充填剤同士の組み合わせを用いることが望ましい場合がある。あるいは、例えば、より大きな平均粒径を有する酸化アルミニウムと、より小さな平均粒径を有する酸化亜鉛との組み合わせを使用することが望ましい場合がある。あるいは、より大きな平均粒径を有する第1のアルミニウムと、より小さな平均粒径を有する第2のアルミニウムなどの、金属充填剤同士の組み合わせを用いることが望ましい場合がある。あるいは、アルミニウム充填剤と酸化アルミニウム充填剤との組み合わせ、アルミニウム充填剤と酸化亜鉛充填剤との組み合わせ、又はアルミニウム充填剤と、酸化アルミニウム充填剤と、酸化亜鉛充填剤との組み合わせなどの、金属充填剤と無機充填剤との組み合わせを用いることが望ましい場合がある。より大きな平均粒径を有する第1の充填剤及び第1の充填剤より小さな平均粒径を有する第2の充填剤の使用は、充填効率を向上させ、粘度を低減し、熱伝達を向上させる場合がある。
【0051】
熱伝導性充填剤の平均粒径は、選択される熱伝導性充填剤の種類、硬化性シリコーン組成物に添加される正確な量、及び硬化組成物が熱界面材料(TIM)として使用される場合、組成物の硬化生成物が用いられるデバイスのボンドライン厚などの、様々な要因に依存するであろう。しかしながら、熱伝導性充填剤は、0.1μm〜80μm、あるいは0.1μm〜50μm、あるいは0.1μm〜10μmの範囲の平均粒径を有し得る。
【0052】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物における(f)の一部としての熱伝導性充填剤の量は、選択される硬化メカニズム及び選択される具体的な熱伝導性充填剤などの様々な要因に依存する。しかしながら、(f)の一部としての熱伝導性充填剤の量は、熱伝導性熱ラジカル硬化性接着剤組成物の30体積%〜80体積%、あるいは50体積%〜75体積%の範囲であってもよい。理論に束縛されるものではないが、(f)の一部としての熱伝導性充填剤の量が80体積%を超える場合、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は架橋していくつかの用途にとって不十分な寸法完全性を有する硬化シリコーンを形成する可能性があり、(f)の一部としての熱伝導性充填剤の量が30%未満である場合、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物から調製される硬化シリコーンは、TIM用途にとって不十分な熱伝導性を有する可能性があると考えられる。
【0053】
アルミナ粉末が熱伝導性充填剤として使用される場合、それは好ましくは、第1の球状アルミナ充填剤と、異なる、好ましくは、より小さな平均粒径を有する第2の球状又は不規則形状アルミナ粉末との混合物である。熱伝導性充填剤(f)の量は、典型的には、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物が約1ワット毎メートルケルビン以上の熱伝導率を有するような量で添加される。これは、充填効率を向上し、粘度の低減及び熱伝達の増強が可能である。
【0054】
特定の実施形態において、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、場合により補強充填剤を更に含んでもよく、補強充填剤は、存在する場合、熱伝導性熱ラジカル硬化性接着剤組成物中の全成分の重量に対して0.1%〜95%、あるいは1%〜60%の範囲の量で添加されてもよい。補強充填剤の正確な量は、組成物の硬化生成物の形態(例えば、ゲル又はゴム)、及びその他の充填剤が添加されるかどうか、といった様々な要因に依存する。好適な補強充填剤の例としては、チョップドKEVLAR(登録商標)のようなチョップドファイバー、並びに/又はヒュームドシリカ、シリカエアロゲル、シリカキセロゲル及び沈殿シリカのような補強シリカ充填剤が挙げられる。ヒュームドシリカは、当該技術分野において既知であり、例えば、Cabot Corporation(Massachusetts,U.S.A.)から名称CAB−O−SILで販売されているヒュームドシリカが市販されている。
【0055】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、場合により、増量充填剤を、熱伝導性熱ラジカル硬化性接着剤組成物中の全成分の重量に対して0.1%〜95%、あるいは1%〜60%、あるいは1%〜20%の範囲の量で更に含んでもよい。増量充填剤の例としては、破砕石英、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム(例えば、沈降炭酸カルシウム)、酸化亜鉛、タルク、珪藻土、酸化鉄、粘土、雲母、二酸化チタン、ジルコニア、砂、カーボンブラック、グラファイト、又はこれらの組み合わせが挙げられる。増量充填剤は当該技術分野において既知であり、例えば、U.S.Silica(Berkeley Springs,WV)により名称MIN−U−SILで販売されている破砕シリカなどが、市販されている。好適な沈降炭酸カルシウムとしては、SolvayからのWinnofil(登録商標)SPM並びにSMIからのUltrapflex(登録商標)及びUltrapflex(登録商標)100が挙げられる。
【0056】
充填剤(f)は、充填剤処理剤(g)も含んでよい。充填剤処理剤(g)は処理剤であってもよく、これは当該技術分野において既知である。充填剤処理剤(g)の量は、成分(f)に選択される熱伝導性充填剤の種類及び量並びに充填剤(f)がin situで充填剤処理剤で処理されるか、組み合わせる前に前処理されるかなどの様々な要因によって変動し得る。しかしながら、成分は、充填剤(f)の重量及び充填剤の種類に基づいて、0.1%〜5%の範囲の量の充填剤処理剤(g)を含んでもよい。
【0057】
充填剤処理剤(g)は、アルコキシシランのようなシラン、アルコキシ官能性オリゴシロキサン、環状ポリオルガノシロキサン、ジメチルシロキサン若しくはメチルフェニルシロキサンのようなヒドロキシル官能性オリゴシロキサン、ステアレート、又は脂肪酸を含んでもよい。アルコキシシランは、式:R
10pSi(OR
11)
(4−p)を有してもよく、式中、下付き文字pは、1、2、又は3であり;あるいは、pは3である。各R
10は独立して、炭素原子1〜50個の一価有機基、例えば、炭素原子1〜50個、あるいは炭素原子6〜18個の一価炭化水素基である。R
10に好適な一価炭化水素基の例には、ヘキシル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル及びオクタデシルなどのアルキル基、並びに、ベンジル、フェニル及びフェニルエチルなどの芳香族基が挙げられる。R
10は、飽和又は不飽和、並びに、分枝状又は非分枝状の一価炭化水素基であることができる。あるいは、R
10は、飽和した非分枝状の一価炭化水素基であることができる。各R
11は、炭素原子1〜4個、あるいは炭素原子1〜2個の飽和炭化水素基であってもよい。
【0058】
アルコキシシラン充填剤処理剤(g)の例には、へキシルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルエチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
アルコキシ官能性オリゴシロキサンも充填剤処理剤(g)として使用できる。アルコキシ官能性オリゴシロキサン及びその製造方法は当該技術分野において既知であり、例えば、欧州特許第1 101 167 A2号を参照されたい。例えば、アルコキシ官能性オリゴシロキサンとしては、式(R
14O)
qSi(OSiR
122R
13)
(4−q)のものが挙げられる。式中、下付き文字qは1、2又は3であり、あるいはqは3である。各R
12は独立して、飽和及び不飽和の、炭素原子数1〜10個の一価炭化水素基から選択できる。各R
13は、少なくとも11個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の一価炭化水素基とすることができる。各R14は、アルキル基とすることができる。
【0060】
あるいは、充填剤処理剤(g)は、シリカ充填剤の処理に一般的に使用される有機ケイ素化合物のいずれかとすることができる。有機ケイ素化合物の例としては、限定するものではないが、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、及びトリメチルモノクロロシランのようなオルガノクロロシラン;ヒドロキシ末端ブロックジメチルシロキサンオリゴマー、ヘキサメチルジシロキサン、及びテトラメチルジビニルジシロキサンのようなオルガノシロキサン;ヘキサメチルジシラザン及びヘキサメチルシクロトリシラザンのようなオルガノシラザン;並びにメチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのようなオルガノアルコキシシランが挙げられる。ステアリン酸塩の例としてはステアリン酸カルシウムが挙げられる。脂肪酸の例としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、タロー、ココナツ油、及びこれらの組み合わせが挙げられる。充填剤処理剤及びその使用方法の例は、例えば、欧州特許第1 101 167 A2号並びに米国特許第5,051,455号、同第5,053,442号、及び同第6,169,142号(第4段落第42行〜第5段落第12行)に開示されている。
【0061】
充填剤処理剤(g)としては、アルコキシシリル官能性アルキルメチルポリシロキサン(例えば、R
22wR
23xSi(OR
24)
(4−w−x)の部分加水分解縮合物又は共加水分解縮合物又は混合物)、又は類似の材料を挙げることができ、加水分解性基はシラザン、アシルオキシ又はオキシモを含んでもよい。これらの全てにおいて、Siに結合された基の1つ、例えば、上記式のR
22は、長鎖不飽和一価炭化水素又は一価芳香族官能性炭化水素である。各R
23は独立して一価炭化水素基であり、各R
24は独立して炭素原子1〜4個の一価炭化水素基である。上記式中、下付き文字wは1、2、又は3であり、下付き文字xは0、1、又は2であるが、ただし、和(w+x)は1、2、又は3である。当業者は、成分(IX)(下記参照)の接着促進剤として記載されたアルコキシシラン及びメルカプト官能性化合物を、別の方法として、充填剤(f)用の充填剤処理剤(g)に追加して、又はその代わりに、使用してもよいことを認識するであろう。当業者は、過度の実験なしに、充填剤の分散を助けるために具体的な処理を最適化することができるだろう。
【0062】
その他の充填剤処理剤(g)としては、アルケニル官能化ポリオルガノシロキサンが挙げられる。好適なアルケニル官能性ポリオルガノシロキサンとしては、限定するものではないが、以下のものが挙げられ:
【化1】
式中、下付き文字qは、1,500までの値を有する。その他の処理剤としては、片末端封鎖アルコキシ官能性ポリジオルガノシロキサン、即ち、一端にアルコキシ基を有するポリジオルガノシロキサンが挙げられる。かかる処理剤は、次式によって例示され:R
25R
262SiO(R
262SiO)
uSi(OR
27)
3、式中、下付き文字uは0〜100、あるいは1〜50、あるいは1〜10、あるいは3〜6の値を有する。各R
25は、独立して、Me、Et、Pr、Bu、ヘキシル、及びオクチルなどのアルキル基;並びにVi、アリル、ブテニル、及びヘキセニルなどのアルケニル基から選択される。各R
26は、独立して、Me、Et、Pr、Bu、ヘキシル、及びオクチルなどのアルキル基である。各R
27は、独立してMe、Et、Pr、及びBuなどのアルキル基である。あるいは、各R
25、各R
26、及び各R
27はMeである。あるいは、各R
25はビニル基(Vi)である。あるいは、各R
26及び各R
27はメチル(Me)である。
【0063】
あるいは、水素結合可能なポリオルガノシロキサンが、充填剤処理剤(g)として有用である。熱伝導性充填剤の表面を処理するこの方策は、相溶化部分を充填剤面に繋ぎ止める手段として、クラスタ化若しくは分散された、又はその両方の、多数の水素結合を利用する。水素結合可能なポリオルガノシロキサンは、平均で、1分子当たり少なくとも1個の水素結合可能なケイ素結合基を有する。この基は、多数のヒドロキシル官能基を有する有機基、又は少なくとも1個のアミノ官能基を有する有機基から選択されてもよい。水素結合可能なポリオルガノシロキサンとは、水素結合が、ポリオルガノシロキサンの熱伝導性充填剤への主な結合形態であることを意味する。ポリオルガノシロキサンは、熱伝導性充填剤との共有結合を形成できなくてもよい。水素結合可能なポリオルガノシロキサンは、糖−シロキサンポリマー、アミノ官能性ポリオルガノシロキサン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、水素結合可能なポリオルガノシロキサンは、糖−シロキサンポリマーであってもよい。
【0064】
成分(II)は、ラジカル開始剤である。ラジカル開始剤は、熱ラジカル開始剤であってもよい。熱ラジカル開始剤としては、限定するものではないが、ジクミルペルオキシド、n−ブチル4,4’−ビス(ブチルペルオキシ)バレレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5トリメチルシクロヘキサン、ジ−t−ブチルペルオキシド及び2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−2,5ジメチルヘキサン、1,1−ビス(tert−アミルペルオキシ)シクロヘキサン(Luperox(登録商標)531M80);2,2−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ブタン;2,4−ペンタンジオンペルオキシド(Luperox(登録商標)224)、2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(Luperox(登録商標)101)、2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシン;2−ブタノンペルオキシド、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ジ−tert−アミルペルオキシド(Luperox(登録商標)DTA(登録商標))、ラウロイルペルオキシド(Luperox(登録商標)LP)、tert−ブチルヒドロペルオキシド;tert−ブチルペルアセテート;tert−ブチルペルオキシベンゾエート;tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート;ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;ジクロロベンゾイルペルオキシド(R.T.Vanderbilt Company,Inc.(Norwalk,Connecticut,USA)からVarox(登録商標)DCBPとして入手可能);ジ(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ(4−メチルベンゾイル)ペルオキシド、ブチル4,4−ジ(tert−ブチルペルオキシ)バレレート、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン;tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート;tert−ブチルクミルペルオキシド;ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート(Perkadox 16として入手可能);ジセチルペルオキシジカーボネート;ジミリスチルペルオキシジカーボネート;2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、ジオクタノイルペルオキシド;tert−ブチルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート;tert−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルペルオキシピバレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
かかる熱ラジカル開始剤(II)の例は、以下の商標名で市販されている:Arkema,Inc.(Philadelphia,Pennsylvania,U.S.A.)が販売するLuperox(登録商標);Akzo Nobel Polymer Chemicals LLC(Chicago,Illinois,U.S.A.)が販売するTrigonox及びPerkadox、E.I.duPont deNemours and Co.(Wilmington,Delaware,USA)が販売するVAZO;R.T.Vanderbilt Company,Inc.(Norwalk,Connecticut,U.S.A.)が販売するVAROX(登録商標);並びにSyrgis Performance Initiators,Inc.(Helena,Arkansas,U.S.A.)が販売するNorox。
【0066】
あるいは、ラジカル開始剤(II)は、ラジカル重合の開始剤としてレドックス試薬を含んでもよい。レドックス試薬は、ペルオキシドとアミン又は遷移金属キレートとの組み合わせであってもよい。レドックス試薬の例としては、限定するものではないが、過酸化ベンゾイル及びアセチルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド;クメンヒドロペルオキシド及びt−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド;メチルエチルケトンペルオキシド及びシクロヘキサノンペルオキシドのようなケトンペルオキシド;ジクミルペルオキシド及びジ−t−ブチルペルオキシド(ti−t−butyl peroxid)のようなジアルキルペルオキシド;t−ブチルペルオキシアセテートのようなペルオキシエステル;並びにチオグリセロール及びピラゾール及び/又はピラゾロンの組み合わせが挙げられる。あるいは、レドックス試薬の例としては、ジメチルアニリン、3,5−ジメチルピラゾール、チオグリセロール、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。好適なレドックス試薬開始剤の例は当技術分野において既知であり、米国特許第5,459,206号で例示されている。他の好適なペルオキシドは当技術分野において既知であり、例えば、ラウロイルペルオキシド(ArkemaのLuperox(登録商標)LP)、ジクロロベンゾイルペルオキシド(R.T.Vanderbilt Company,Inc.のVarox(登録商標)DCBP)及び6N tert−ブチルヒドロペルオキシドが市販されている。
【0067】
ラジカル開始剤(I)の濃度は、熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン(I)の重量に対して0.01%〜15%、あるいは0.1%〜5%、あるいは0.1%〜2%の範囲であってもよい。
【0068】
熱伝導性熱ラジカル硬化接着剤組成物は、場合により、1つ以上の追加成分を含んでもよい。追加成分の例としては、(III)シリコーン希釈剤、(III)クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン、(V)水分硬化開始剤、(VI)架橋剤、(VII)水分硬化ポリマー、(VIII)溶媒、(IX)接着促進剤、(X)着色剤、(XI)反応性希釈剤、(XII)腐食防止剤、(XIII)重合阻害剤、及び(XIV)酸受容体、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
任意成分(III)は、シリコーン反応性希釈剤である。シリコーン反応性希釈剤(III)は、硬化性シリコーン組成物の粘度を低下して、より流動可能とすることによって、硬化性シリコーン組成物の分与を助ける。
【0070】
特定の実施形態において、使用されるシリコーン反応性希釈剤(II)の量は、熱伝導性熱ラジカル硬化性接着剤組成物のシリコーンマトリックスの全重量に対して20〜90重量%、あるいは40〜70重量%、あるいは55〜80重量%、あるいは55〜75重量%、あるいは70重量%の範囲である。
【0071】
シリコーン反応性希釈剤(III)は、一官能性シリコーン反応性希釈剤、二官能性シリコーン反応性希釈剤、多官能性シリコーン反応性希釈剤、又はこれらの組み合わせであってもよい。選択されるシリコーン反応性希釈剤は、硬化性基などの様々な要因に依存するであろう。しかしながら、好適なシリコーン反応性希釈剤の例としては、アクリレート、無水マレイン酸又は無水メタクリル酸などの無水物、一官能性エポキシ化合物などのエポキシ、グリシジルメタクリレートなどのメタクリレート、オキセタン、酢酸ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン、スチレン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
特定の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)を、第1の実施形態において次の反応の反応生成物として、形成してもよい:
a)平均で1分子当たり10〜200個のケイ素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
b)1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基と1個以上の硬化性基とを有する反応種との、
c)異性体減少剤及びd)ヒドロシリル化触媒及びe)ヒドロシリル化触媒阻害剤の存在下での反応。
【0073】
他の特定の実施形態において、追加の任意成分も第1の実施形態のシリコーン反応性希釈剤(III)に含んでもよい。
【0074】
第1の実施形態におけるシリコーン反応性希釈剤(III)の成分a)は、平均で1分子当たり10〜200個のケイ素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンである。成分a)は分枝状でも線状でもよい。成分a)は、一官能性(即ち、1個のケイ素結合水素原子を含有する)、二官能性(即ち、2個のケイ素結合水素原子を含有する)、多官能性(即ち、2個を超えるケイ素結合水素原子を含有する)、又はこれらの組み合わせであってもよい。成分a)は、以下の特性のうち少なくとも1つが異なり、それぞれ平均で1分子当たり10〜200個のケイ素原子を有する、2種以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含む組み合わせであってもよい:構造、粘度、重合度、及び配列。
【0075】
特定の実施形態において、成分a)は、両端が水素原子で終端されたポリジオルガノシロキサンであってもよい。両端が水素原子で終端されたポリジオルガノシロキサンの1例は、式HR
2Si−(R
2SiO)
a−SiR
2Hを有し、式中、各Rは独立して、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルのようなアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジルのようなアリールによって例示される一価炭化水素基である。下付き文字aは、0〜400、あるいは10〜200の範囲の平均値を有する。
【0076】
あるいは、成分a)は、分枝状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであってもよい。成分b)の分枝状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、式Si−(OSiR
22)
b(OSiHR
2)
b’(OSiR
23)
c(OSiR
22H)
(4−c)であり、式中、各R
2は独立して脂肪族不飽和を含まない一価有機基であり、下付き文字bは0〜10の範囲の値を有し、下付き文字b’は0〜10の範囲の値を有し、下付き文字cは0〜1の範囲の値を有する。
【0077】
あるいは、下付き文字bは0であってもよい。下付き文字b’が0のとき、下付き文字cも0である。R
2に適した一価有機基としては、限定するものではないが、一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロへキシルのようなシクロアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられる。
【0078】
第1の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)の成分b)は反応種である。反応種b)は、シリコーン反応性希釈剤において硬化性基を提供できるいかなる種であってもよい。反応種は、成分a)のケイ素結合水素原子との付加反応を行うことができる脂肪族不飽和有機基を平均で1分子当たり少なくとも1個有する。成分b)は、1分子当たり1個以上のラジカル硬化性基を更に含む。ラジカル硬化性基は、シリコーン反応性希釈剤を放射線硬化性にする官能性(反応性)基である。成分b)上のラジカル硬化性基は、アクリレート基、メタクリレート基、及びこれら組み合わせから選択されてもよい。
【0079】
例えば、成分b)は式R
3dSiR
4(3−d)のシランを含んでもよく、式中、下付き文字dは1〜3の範囲の値を有し、各R
3は独立して脂肪族不飽和有機基であり、各R
4は独立してアクリレート基及びメタクリレート基を含有する有機基から選択される。
【0080】
あるいは、成分b)は(ケイ素原子を含有しない)有機化合物を含んでもよい。成分b)の有機化合物は、平均で1分子当たり1〜2個の脂肪族不飽和有機基、例えば、アルケニル又はアルキニル基、並びにアクリレート基及びメタクリレート基から選択される1個以上の反応基を有してもよい。成分b)に適した有機化合物の例としては、限定するものではないが、アリルアクリレート及びアリルメタクリレート(AMA)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0081】
成分b)の量は、成分a)の種類、量及びSiH含有量並びに選択される成分b)の種類などの様々な要因に依存する。しかしながら、成分b)の量は、SiH
tot/Vi
totを1/1〜1/1.4、あるいは1/1.2〜1.1/1の範囲とするのに十分である。比SiH
tot/Vi
totは、成分b)上のケイ素結合水素原子の総量の重量パーセントを、成分a)上の脂肪族不飽和有機基の全重量パーセントで割ったものを意味する。
【0082】
第1の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)の成分(c)は、異性体減少剤である。特定の実施形態において、異性体減少剤はカルボン酸化合物を含む。カルボン酸化合物は、(1)カルボン酸、(2)カルボン酸無水物、(3)カルボン酸シリルエステル、及び/又は(4)本発明の方法の反応における反応又は分解により上記のカルボン酸化合物(即ち、(1)、(2)及び/又は(3))を生成する物質を含んでもよい。これらのカルボン酸化合物の1つ以上の混合物を異性体減少剤として使用してもよいことは理解されるべきである。例えば、カルボン酸シリルエステルは、異性体減少剤としてカルボン酸の無水物と組み合わせて用いてもよい。更に、1種以上のカルボン酸化合物の混合物を異性体減少剤として用いてもよい。例えば、2つの異なるカルボン酸シリルエステルを同時に用いてもよく、又は2つのカルボン酸シリルエステルを、カルボン酸の無水物と同時に用いてもよい。
【0083】
異性体減少剤が(1)カルボン酸を含む場合、カルボキシル基を有する任意のカルボン酸を用いてもよい。カルボン酸の好適な例としては、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸、モノカルボン酸、及びジカルボン酸が挙げられる。飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、水素原子などは、通常、これらのカルボン酸においてカルボキシル基以外の部分として選択される。好適なカルボン酸の具体例は、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、ヘキサン酸、シクロヘキサン酸、ラウリン酸、及びステアリン酸などの飽和モノカルボン酸;シュウ酸及びアジピン酸などの飽和ジカルボン酸;安息香酸及びp−フタル酸などの芳香族カルボン酸;これらのカルボン酸の炭化水素基の水素原子がハロゲン原子又は有機シリル基と置換されているカルボン酸、例えば、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、p−クロロ安息香酸、及びトリメチルシリル酢酸など;アクリル酸、メタクリル酸、及びオレイン酸などの不飽和脂肪酸;並びにカルボキシル基に加えて、ヒドロキシ基、カルボニル基、又はアミノ基を有する化合物、即ち、例えば、乳酸などのヒドロキシ酸、アセト酢酸などのケト酸、グリオキシル酸などのアルデヒド酸、及びグルタミン酸などのアミノ酸が挙げられる。
【0084】
異性体減少剤が(2)カルボン酸の無水物を含む場合、カルボン酸の酸無水物の好適な例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸及び無水安息香酸が挙げられる。反応系での反応又は分解によって得られるこうしたカルボン酸の無水物としては、塩化アセチル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル、及びその他のカルボン酸ハロゲン化物、酢酸亜鉛及び酢酸タリウムなどのカルボン酸金属塩、及びプロピオン酸(2−ニトロベンジル)のような光又は熱によって分解されるカルボン酸エステルが挙げられる。
【0085】
異性体減少剤が(3)カルボン酸シリルエステルを含む実施形態において、カルボン酸シリルエステルの好適な例は、トリアルキルシリル化カルボン酸、例えば、ギ酸トリメチルシリル、酢酸トリメチルシリル、プロピオン酸トリエチルシリル、安息香酸トリメチルシリル及びトリフルオロ酢酸トリメチルシリル;並びにジ−、トリ−又はテトラカルボキシシリレート、例えば、ジメチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、及びシリコンテトラベンゾエートである。
【0086】
異性体減少剤は、一般的には、形成されたシリコーン反応性希釈剤の全重量に対して0.001〜1重量%、あるいは0.01〜0.1重量%の範囲の量で用いられる。異性体減少剤として好適な市販のカルボン酸シリルエステルの例としては、Dow Corning Corporation(Midland,MI)から入手可能なDOW CORNING(登録商標)ETS900又はXIAMETER(登録商標)OFS−1579シランが挙げられる。
【0087】
異性体減少剤(c)は、上記のように0.001〜1重量%等の十分な量で添加されて、ポリジオルガノシロキサン(a)のSiH基の反応種b)の脂肪族不飽和基へのα付加を、ポリジオルガノシロキサン(a)のSiH基の反応種b)の脂肪族不飽和基へのβ付加よりも促進する。β位付加の結果、その後ポリオルガノシロキサンが更に反応して、Si−OH及びそれに伴う水酸化ケイ素生成物(D(Oz)及び/又はT(Oz)単位と呼ばれることもある)を生成する場合がある。理論に束縛されるものではないが、Si−OHの生成は、シリコーン反応性希釈剤(III)のポリジオルガノシロキサンの水分硬化を促進すると考えられる。生成したD(Oz)単位の相対量は、ポリオルガノシロキサン(ii)のSiH基の反応種(c)の脂肪族不飽和基へのβ位付加の量と相関し、NMRによって測定できる。
【0088】
第1の実施形態におけるシリコーン反応性希釈剤(III)の成分d)は、成分a)とb)の反応を加速するヒドロシリル化触媒である。成分d)は成分(a)及び(b)の反応を促進するのに十分な量で添加されてもよく、この量は、例えば、プロセスに用いられる全成分の総重量に対して、0.1百万分率(ppm)〜1000ppm、あるいは1ppm〜500ppm、あるいは2ppm〜200、あるいは5ppm〜150ppmの白金族金属をもたらすのに十分であってもよい。
【0089】
好適なヒドロシリル化触媒は、当該技術分野において既知であり、市販されている。成分d)は、白金(pt)、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム又はイリジウム金属若しくはこれらの有機金属化合物、又はこれらの組み合わせから選択される白金族金属を含んでもよい。成分d)の例としては、塩化白金酸、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、及び前記化合物と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体のような化合物又はマトリックス若しくはコアシェル型構造中にマイクロカプセル化された白金化合物が挙げられる。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金錯体が挙げられる。これらの錯体は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化されてもよい。あるいは、触媒は1,3−ジエテニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンの白金錯体を含んでよい。触媒が低分子量オルガノポリシロキサンの白金錯体である場合、触媒の量はプロセスで用いられる成分の総重量に対して0.04%〜0.4%の範囲であってもよい。
【0090】
成分d)に適したヒドロシリル化触媒は、米国特許第3,159,601号、同第3,220,972号、同第3,296,291号、同第3,419,593号、同第3,516,946号、同第3,814,730号、同第3,989,668号、同第4,784,879号、同第5,036,117号及び同第5,175,325号並びに欧州特許第0 347 895 B号に記載されている。マイクロカプセル化されたヒドロシリル化触媒及びその製造方法は、米国特許第4,766,176号及び同第5,017,654号に例示されているように、当該技術分野において既知である。
【0091】
第1の実施形態におけるシリコーン反応性希釈剤(III)の成分e)は、触媒阻害剤であり、成分d)(ヒドロシリル化触媒)を不活性化し、形成されるシリコーン反応性希釈剤を安定化するために添加される。好適な触媒阻害剤のいくつかの例としては、エチレン若しくは芳香族不飽和アミド;アセチレン化合物、例えば2−エチニル−イソプロパノール、2−エチニル−ブタン−2−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン;3,5−ジメチル−1−ヘキセン−1−イン、3−エチル−3−ブテン−1−イン若しくは3−フェニル−3−ブテン−1−イン;エチレン不飽和イソシアネート;シリル化アセチレンアルコール、例えばトリメチル(3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オキシ)シラン、ジメチル−ビス−(3−メチル−1−ブチン−オキシ)シラン、メチルビニルビス(3−メチル−1−ブチン−3−オキシ)シラン、及び((1,1−ジメチル−2−プロピニル)オキシ)トリメチルシラン;不飽和炭化水素ジエステル;共役エン−イン、例えば2−イソブチル−1−ブテン−3−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3−メチル−3−ヘキセン−1−イン、1−エチニルシクロヘキセン、3−エチル−3−ブテン−1−イン、及び3−フェニル−3−ブテン−1−イン;オレフィンシロキサン、例えば1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、若しくは1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン;1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン;上記の共役エン−イン及び上記のオレフィンシロキサンの混合物;ヒドロペルオキシド;ニトリル及びジアジリン;不飽和カルボン酸エステル、例えばマレイン酸ジアリル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジアリル、及びマレイン酸ビス−2−メトキシ−1−メチルエチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノイソオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノアリル、マレイン酸2−メトキシ−1−メチルエチル;ジエチルフマレートのようなフマレート;アルコールがベンジルアルコール若しくは1−オクタノール及びエテニルシクロへキシル−1−オールである、フマレート/アルコール混合物;トリブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールのような窒素含有化合物;トリフェニルホスフィンのような同様のリン含有化合物;硫黄含有化合物;ヒドロペルオキシ化合物;又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0092】
阻害剤は、成分d)ヒドロシリル化触媒を不活性化するのに効果的な量で用いられる。その量は触媒の種類及び量並びに選択される阻害剤の種類に応じて変わるが、その量は成分a)100重量部当たり0.001〜3重量部、あるいは0.01〜1重量部の範囲であってもよい。
【0093】
成分a)〜e)に加えて、その他の任意成分を、第1の実施形態のシリコーン反応性希釈剤(III)の形成に使用してもよい。例えば、特定の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤は、f)重合阻害剤及びg)末端封鎖剤を更に含んでもよい。
【0094】
第1の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)の任意成分f)は重合阻害剤である。不飽和基(例えば、メタクリレート、アクリレート、ビニル又はアリル)は、望ましくないラジカルプロセスによって自家重合し得る。これらのラジカルプロセスは、重合阻害剤の添加によって軽減できる。アクリレート及びメタクリレート硬化性基に好適な重合阻害剤の例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:2,6−ジ−tert−ブチル−4−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DBAP)、ヒドロキノン(HQ)、4−メトキシフェノール(MEHQ)、4−エトキシフェノール、4−プロポキシフェノール、4−ブトキシフェノール、4−ヘプトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−メトキシフェノール、2,5−ジクロロヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2−アセチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノベンゾエート、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ジメルカプトベンゼン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、4−アミノフェノール、2−アミノフェノール、2−N,N−ジメチルアミノフェノール、2−メルカプトフェノール、4−メルカプトフェノール、カテコールモノブチルエーテル、4−エチルアミノフェノール、2,3−ジヒドロキシアセトフェノン、ピロガロール−1,2−ジメチルエーテル、2−メチルチオフェノール、t−ブチルカテコール、ジ−tert−ブチルニトロキシド、ジ−tert−アミルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−エタノールオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ、3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ、2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−3−アザシクロペンチル−3−オキシ、2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリニル−1−オキシ−3−カルボン酸、2,2,3,3,5,5,6,6−オクタメチル−1,4−ジアザシクロヘキシル−1,4−ジオキシ、4−ニトロソフェノラートの塩、2−ニトロソフェノール、4−ニトロソフェノール、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、メチレンブルー、鉄、フェノチアジン(PTZ)、3−オキソフェノチアジン、5−オキソフェノチアジン、フェノチアジン二量体、1,4−ベンゼンジアミン、N−(1,4−ジメチルフェニル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びその塩、酸化窒素、ニトロベンゼン、p−ベンゾキノン、ペンタエリスリチル=テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリルジチオプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソトリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチル(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−エチリデンビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン、若しくはその異性体、これらの2つ以上の組み合わせ、又は上記の1つ以上と酸素分子との組み合わせ。存在する場合、重合阻害剤は、100ppm〜4,000ppmの範囲の量で硬化性シリコーン組成物に添加されてもよい。
【0095】
第1の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)の任意成分g)は末端封鎖剤である。末端封鎖剤は、1分子当たり1個の水素原子を有するポリジオルガノシロキサンであってもよい。代表的な末端封鎖剤は、式R
53Si−(R
52SiO)
e−SiR
52Hを有してもよい。この式において、各R
5は独立して一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルのようなアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル及びベンジルのようなアリールであり;下付き文字eは0〜10の範囲、あるいは1〜10、あるいは1の値を有する。別の代表的な末端封鎖剤は、式R
63Si−(R
62SiO)
f−(HR
6SiO)−SiR
63を有してもよい。この式において、各R
6は独立して一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルのようなアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル及びベンジルのようなアリールである。下付き文字fは0〜10の範囲、あるいは0の値を有する。
【0096】
末端封鎖剤は、系において使用可能なSiHのモルパーセントとして用いられる場合、より高い引張特性のより緩いネットワークを生成するという利益をもたらし得る。添加される末端封鎖剤の量は、本プロセスで使用される全ての成分の総重量に対して0〜15%の範囲、あるいは2%〜15%、あるいは10%であってもよい。
【0097】
本プロセスにおいて末端封鎖剤を有することの第2の利益は、反応前の粘度の初期低減であり、これは反応を促進し、不十分な混合及び局所ゲル形成によるゲル化の傾向を低減する場合がある。
【0098】
成分中のケイ素結合水素原子の重量%/成分中のヒドロシリル化が可能な不飽和有機基の重量%(一般的にはSiH
tot/Vi
tot比と呼ばれる)は、1/1.4〜1/1、あるいは1/1.2〜1/1.1の範囲であってもよい。この比において、SiH
totは、シリコーン反応性希釈剤中の成分のいずれかのケイ素結合水素原子の量を指す。Vi
totは、シリコーン反応性希釈剤中の脂肪族不飽和有機基の総量を指す。
【0099】
特定の実施形態において、第1の実施形態のシリコーン反応性希釈剤(III)は、
1)
a)平均で1分子当たり10〜200個のケイ素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
b)1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基と1個以上の硬化性基とを有する反応種と、を含む成分を、
c)異性体減少剤及びd)ヒドロシリル化触媒、及び場合によりf)重合阻害剤及びg)末端封鎖剤の存在下で、同時反応させることよって形成される。
【0100】
得られるa)、b)、c)、d)及び場合によりf)及びg)の混合物は、室温で成分c)の添加の前に剪断されてもよい。続いて、温度を50℃〜100℃、あるいは70℃〜85℃まで上げることによって反応を開始させることができ、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により約2170cm
−1で観測したSiHピークがスペクトルのバックグラウンドまで減少するのに必要な時間によって測定したときに、SiHの全てが反応するまで温度を維持する。
【0101】
次に、得られた混合物に触媒阻害剤e)を添加して、ヒドロシリル化触媒c)を不活性化する。特定の実施形態において、触媒阻害剤e)の導入は、反応混合物a)、b)、c)、d)並びに場合によりf)及びg)の温度を最低反応温度の50℃よりも低温、例えば室温まで、低下させた後に行われる。形成されたシリコーン反応性希釈剤(III)は、後の使用のために保管してもよい。
【0102】
別の又は第2の実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)は、次の反応の反応生成物として形成されてもよい:
a)次式によるシロキサン化合物であって、
【化2】
式中、
Rは、1〜6個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、
R’は、3〜12個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、
R’’は、H又はCH
3であり、
下付き文字m及びnはそれぞれ独立して1〜10の値を有する、シロキサン化合物と、
b)平均で1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンとの、
c)第1のヒドロシリル化触媒及びd)第1のヒドロシリル化触媒の阻害剤、並びにその他の追加任意成分の存在下での反応。
【0103】
第2の実施形態のシリコーン反応性希釈剤(III)の成分b)は、平均で1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサンであり、この脂肪族不飽和有機基は、シロキサン化合物a)のケイ素結合水素原子とヒドロシリル化反応を行うことができる。成分b)は、線状又は分枝状構造を有してもよい。あるいは、成分b)は、線状構造を有してもよい。成分b)は、以下の特性のうち少なくとも1つが異なる2種以上のポリオルガノシロキサンを含む組み合わせであってもよい:構造、粘度、重合度、及び配列。
【0104】
成分b)は、10の最小平均重合度(平均DP)を有する。あるいは、成分b)の平均DPは100〜1000、あるいは100〜200の範囲であってもよい。成分a)のポリオルガノシロキサンの分布DPは二峰性であることができる。例えば、成分b)は、ポリジオルガノシロキサンの平均DPが10〜1000の範囲内であるという条件で、2のDPを有する1つのアルケニル末端ポリジオルガノシロキサン及び10より高いDPを有する別のアルケニル末端ポリジオルガノシロキサンを含むことができる。しかしながら、b)に用いるのに適したポリオルガノシロキサンは、10未満のDPを有するポリオルガノシロキサンは10を超えるDPを有するポリオルガノシロキサンと組み合わされるという条件で、10の最小重合度(DP)を有する。成分a)に適したポリジオルガノシロキサンは、当技術分野において既知であり、市販されている。例えば、Dow Corning(登録商標)SFD−128は、800〜1000の範囲のDPを有し、Dow Corning(登録商標)SFD−120は、600〜700の範囲のDPを有し、Dow Corning(登録商標)7038は、100のDPを有し、Dow Corning(登録商標)SFD−119は、150のDPを有する。上記は全て、Dow Corning Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されるビニル末端ポリジメチルシロキサンである。成分b)が二峰性分布を有する場合、より低いDPを有するポリオルガノシロキサン(低DPポリオルガノシロキサン)は、より高いDPを有するポリオルガノシロキサン(高DPポリオルガノシロキサン)よりも少ない量で存在する。例えば、二峰性分布では、低DPポリオルガノシロキサン/高DPポリオルガノシロキサンの比は10/90〜25/75の範囲であってもよい。
【0105】
成分b)は、式(I)、式(II)、又はこれらの組み合わせのポリオルガノシロキサンによって例示される。式(I)は、R
12R
2SiO(R
12SiO)
a(R
1R
2SiO)
bSiR
12R
2であり、式(II)はR
13SiO(R
12SiO)
c(R
1R
2SiO)
dSiR
13である。上記の式中、各R
1は独立して脂肪族不飽和を含まない一価有機基であり、各R
2は独立して脂肪族不飽和有機基であり、下付き文字aは2〜1000の範囲の平均値を有し、下付き文字bは0〜1000の範囲の平均値を有し、下付き文字cは0〜1000の範囲の平均値を有し、下付き文字dは4〜1000の範囲の平均値を有する。式(I)及び(II)において、10≦(a+b)≦1000であり、10≦(c+d)≦1000である。
【0106】
R
1に好適な一価有機基としては、限定するものではないが、一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルのようなアルキル;シクロへキシルのようなシクロアルキル;並びにフェニル、トリル、キシリル、ベンジル、及び2−フェニルエチルのようなアリールが挙げられる。各R
2は独立して、脂肪族不飽和一価有機基である。R
2は脂肪族不飽和一価炭化水素基、例えば、ビニル、アリル、プロぺニル、及びブテニルのようなアルケニル基;並びにエチニル及びプロピニルのようなアルキニル基であってもよい。
【0107】
成分b)は、i)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリジメチルシロキサン、ii)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、iii)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリメチルビニルシロキサン、iv)トリメチルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、v)トリメチルシロキシで末端処理したポリメチルビニルシロキサン、vi)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、vii)ジメチルビニルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、viii)フェニル、メチル、ビニルシロキシで末端処理したポリジメチルシロキサン、ix)ジメチルヘキセニルシロキシで末端処理したポリジメチルシロキサン、x)ジメチルヘキセニルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、xi)ジメチルヘキセニルシロキシで末端処理したポリメチルヘキセニルシロキサン、xii)トリメチルシロキシで末端処理したポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、又はxiii)これらの組み合わせ、のようなポリジオルガノシロキサンを含んでもよい。
【0108】
第2の実施形態のシリコーン反応性希釈剤(III)におけるシロキサン化合物a)とポリオルガノシロキサンb)との相対量は、SiH:ビニルの重量比が0.8:1〜1:1の範囲となるように変動してもよい。
【0109】
第2の実施形態においてシリコーン反応性希釈剤(III)の形成に使用してもよい好適なヒドロシリル化触媒d)及びヒドロシリル化触媒阻害剤e)としては、上記段落[00087]〜[00091]に記載されたヒドロシリル化触媒のそれぞれが挙げられ、ここでは繰り返さない。
【0110】
成分a)〜d)に加え、その他の任意成分を、この代替実施形態によるシリコーン反応性希釈剤(III)の形成に使用してもよく、その例としてはf)重合阻害剤及びg)末端封鎖剤が挙げられ、その説明は第1の実施形態によるシリコーン反応性希釈剤(III)の形成に関する上記段落[0092]〜[00094]と同じであり、ここでは繰り返さない。
【0111】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(IV)は、クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサンである。本明細書に含まれ得るクラスタ化官能性ポリオルガノシロキサンの例は、米国特許出願公開第2012/0245272号(Dent et.al.)に開示されている。本明細書に使用できる別のクラスタ化官能性ポリオルガノシロキサンは、上記の熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノポリシロキサン(I)の成分(a)〜(e)及びDent et.al.に記載の追加の任意成分などの反応の反応生成物を含んでもよい。
【0112】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(V)は、水分硬化開始剤(即ち、縮合反応触媒)である。縮合反応触媒の例は当該技術分野において既知であり、米国特許第4,962,076号;同第5,051,455号;同第5,053,442号;同第4,753,977号第4段落第35行〜第5段落第57行;及び同第4,143,088号第7段落第15行〜第10段落第35行に開示されている。縮合反応触媒の量は、選択される触媒の種類及び組成物中の残りの成分の選択などの様々な要因に依存するが、縮合反応触媒の量は熱伝導性熱ラジカル硬化接着剤組成物の重量に対して0.001%〜5%の範囲であってもよい。
【0113】
好適な縮合反応触媒としては、ルイス酸;第1級、第2級、若しくは第3級有機アミン;金属酸化物;チタン化合物;スズ化合物;ジルコニウム化合物;又はこれらの組み合わせが挙げられる。縮合反応触媒は、金属の電気化学系列における鉛からマンガンまでの範囲の金属のカルボン酸塩を含むことができる。あるいは、縮合反応触媒はキレート化チタン化合物、テトラアルコキシチタネートのようなチタネート、チタンエステル、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。好適なチタン化合物の例としては、限定するものではないが、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、テトラブトキシチタネート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、及びビス(エトキシアセトアセトネート)ジイソプロポキシチタン(IV)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、縮合反応触媒は、ジブチルスズジアセテートのようなスズ化合物;ジブチルスズジラウレート;ジブチルスズオキシド;第一スズオクトエート;酸化スズ;テトラブチルチタネート、テトラエチルヘキシルチタネート及びテトラフェニルチタネートのようなチタンエステル;テトラキス(トリメチルシロキシ)チタン及びビス(トリメチルシロキシ)−ビス(イソプロポキシ)チタンのようなシロキシチタネート;並びにビス(アセチルアセトニル)ジイソプロピルチタネートのようなβ−ジカルボニルチタン化合物;又はこれらの組み合わせを含んでもよい。あるいは、縮合反応触媒はヘキシルアミンのようなアミン;又はアミンの酢酸塩若しくは第4級塩を含んでもよい。
【0114】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(VI)は、架橋剤である。架橋剤の種類及び量は、成分(VII)上の硬化性基の種類及び量などの様々な要因に依存するであろう。
【0115】
特定の実施形態において、架橋剤(VI)は縮合反応架橋剤であって、例えば、トリアルコキシシラン、例えばプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びメチルトリエトキシシラン;アセトキシシラン、例えばメチルトリアセトキシシラン又はエチルトリアセトキシシラン;ケトキシモシラン、例えばメチルトリ(メチルエチルケトキシモ)シラン、テトラ(メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、及びビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン;アルキルオルトシリケート、例えばテトラエチルオルトシリケート、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、及び一般的にアルキルポリシリケートと称されるこれらのオルトシリケートの縮合生成物;メチルビニルビス(n−メチルアセトアミド)シラン;並びにこれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0116】
特定の実施形態において、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物に使用される架橋剤(VI)の量は、様々な要因に依存するが、主として成分(I)及び(II)に含有される硬化性基の種類及び量に基づく。特定の実施形態において、架橋剤(VI)の量は、下記の成分(VII)の全重量に対して0.1〜50重量%、例えば、0.5〜30重量%である。
【0117】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(VII)は、次式のオルガノポリシロキサンポリマーを含む水分硬化ポリマーである:成分(VII)は、次式のオルガノポリシロキサンポリマーを含む水分硬化ポリマーである:(OR
7)
3−zR
6zSi−Q−(R
252SiO
2/2)y−Q−SiR
6z(OR
7)
3−z、式中、各R
25は独立して1〜6個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカルであり、各R
6は独立して1〜6個の炭素原子を有する一価炭化水素ラジカルであり、各R
7は独立してアルキルラジカル及びアルコキシアルキルラジカルからなる群から選択され、Qは二価の連結ラジカルであり、下付き文字zは0、1又は2の値を有し、下付き文字yは60〜1000の値を有する。
【0118】
特定の実施形態において、水分硬化ポリマー(VI)は熱伝導性熱ラジカル硬化性接着剤組成物の重量に対して0.1〜5重量%の範囲の量で存在する。
【0119】
Qラジカルは、硬化ラジカルのケイ素原子を樹脂のケイ素原子に連結する二価の連結ラジカルである。Qは、典型的には、ケイ素原子を加水分解に安定な方法で連結するために使用される二価ラジカルの種類から選択され、その例としては、限定するものではないが、炭化水素、例えば、エチレン、プロピレン、及びイソブチレンのようなアルキレン並びにフェニレン;シロキサン、例えば、ポリジメチルシロキサン;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、Qの二価連結ラジカル中の炭化水素ラジカル単位の数は、2〜12、あるいは2であり、Qの二価連結ラジカル中のシロキサンラジカル単位の数は、0〜20、あるいは2である。
【0120】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(VIII)は、溶媒である。好適な溶媒の例としては、有機溶媒、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、デシルアルコール又はウンデシルアルコールのようなアルコール、及びこれらの組み合わせ;非架橋性シリコーン溶媒、例えば、トリメチルシロキシで末端処理したポリジメチルシロキサン、トリメチルシロキシで末端処理したポリメチルフェニルシロキサン)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。シリコーン溶媒の例は当該技術分野において既知であり、例えば、Dow Corning Corporation(Midland,Michigan,U.S.A.)からDow Corning(登録商標)OS Fluidsとして市販されている。成分(VIII)の量は、熱伝導性熱ラジカル硬化接着剤組成物の重量に対して0.001%〜90%の範囲であってもよい。
【0121】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(IX)は、接着促進剤である。好適な接着促進剤の例としては、エポキシ官能性アルコキシシラン、若しくはメルカプト官能性化合物のようなアルコキシシラン;アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせ:メルカプト官能性化合物;不飽和化合物;エポキシ官能性シラン;エポキシ官能性シロキサン;エポキシ官能性シラン若しくはエポキシ官能性シロキサンとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンの反応生成物などの組み合わせ;又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適な接着促進剤は当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、Silquest(登録商標)A186はCrompton OSi Specialties(Middlebury,Connecticut,USA)から市販されているβ−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシランである。CD9050は、金属基板への接着をもたらし、放射線硬化性組成物用に設計された接着促進剤として有用な一官能性酸エステルである。CD9050はSartomer Co.から市販されている。SR489Dはトリデシルアクリレートであり、SR395はイソデシルアクリレートであり、SR257はステアリルアクリレートであり、SR506はイソボロニルアクリレートであり、SR833Sはトリシクロデカンジメタノールジアクリレートであり、SR238は1,6−ヘキサンジオールジアクリレートであり、SR351はトリメチロールプロパントリアクリレートであり、これらも全てSartomer Co.から市販されている。組成物に添加する接着促進剤(IX)の量は、選択される具体的な接着促進剤、組成物の他の成分、及び組成物の最終用途などの様々な要因に依存するが、その量は熱伝導性熱ラジカル硬化接着組成物の重量に対して0.01%〜5%の範囲であってもよい。金属への接着を促進するのに有用な他の好適な接着促進剤としては、無水マレイン酸、無水メタクリル酸無、及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。
【0122】
成分(IX)は不飽和又はエポキシ官能性化合物であることができる。好適なエポキシ官能性化合物は、当該技術分野において既知であり、市販されており、例えば、米国特許第4,087,585号、同第5,194,649号、同第5,248,715号及び同第5,744,507号(第4〜5段落)を参照されたい。成分(g)は不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含んでもよい。例えば、官能性アルコキシシランは式R
20vSi(OR
21)
(4−v)を有することができ、式中、下付き文字字vは1、2、又は3であり、あるいはvは1である。
【0123】
各R
20は独立して一価有機基であるが、ただし、少なくとも1つのR
20は不飽和有機基又はエポキシ官能性有機基である。R
20のエポキシ官能性有機基の例としては、3−グリシドキシプロピル及び(エポキシシクロへキシル)エチルが挙げられる。R
20の不飽和有機基の例としては、3−メタクリロイルオキシプロピル、3−アクリロイルオキシプロピル、並びに、ビニル、アリル、ヘキセニル、ウンデシレニルなどの不飽和一価の炭化水素基が挙げられる。
【0124】
各R
21は、独立して、1〜4個の炭素原子、あるいは1〜2個の炭素原子の非置換飽和炭化水素基である。R
21は、メチル、エチル、プロピル及びブチルにより例示される。
【0125】
好適なエポキシ官能性アルコキシシランの例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。あるいは、好適な接着促進剤の例としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びグリシドキシプロピルトリメトキシシランとアルミニウムキレート又はジルコニウムキレートとの組み合わせが挙げられる。
【0126】
成分(IX)は、上記のようなヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランの反応生成物、又は、ヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとエポキシ官能性アルコキシシランとの物理的ブレンドなどのエポキシ官能性シロキサンを含んでもよい。成分(IX)は、エポキシ官能性アルコキシシランとエポキシ官能性シロキサンの組み合わせを含んでもよい。例えば、成分(VII)の例としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと、ヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンと3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応生成物との混合物、あるいは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニルシロキサンの混合物、あるいは、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの混合物が挙げられる。反応生成物としてではなく物理的ブレンドとして使用される場合、これらの成分は、多分画キットに別々に保管されてもよい。
【0127】
好適なメルカプト官能性化合物としては、オルガノメルカプタン、メルカプト含有シラン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好適なメルカプト含有シランとしては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。好適なメルカプト官能性化合物は、米国特許第4,962,076号に開示されている。当業者は、本明細書に記載の特定の成分を2つ以上又は異なる目的のために組成物に添加してもよいことを認識するであろう。例えば、アルコキシシランは、接着促進剤、充填剤処理剤、及び/又は架橋剤として、縮合反応硬化性シリコーン組成物に用いることができる。
【0128】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(X)は、着色剤(例えば、染料又は顔料)である。好適な着色剤の例としては、カーボンブラック、Stan−Tone 40SP03 Blue(PolyOneから市販されている)及びColorant BA 33酸化鉄顔料(Cathay Pigments(USA),Inc.(Valparaiso,IN 46383 USA)から市販されている)が挙げられる。着色剤の例は、当技術分野において既知であり、米国特許第4,962,076号;同第5,051,455号;及び同第5,053,442号に開示されている。硬化性シリコーン組成物に添加される着色剤の量は、組成物の他の成分、及び選択される着色剤の種類などの様々な要因に依存するが、その量は組成物の重量に対して0.001%〜20%の範囲であってもよい。
【0129】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(XI)は、シリコーン反応性希釈剤(III)とは異なる反応性希釈剤である。成分(XI)は、熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン(I)上の官能基と反応する希釈剤であってもよい。反応性希釈剤は、一官能性反応性希釈剤、二官能性反応性希釈剤、多官能性反応性希釈剤、又はこれらの組み合わせであってもよい。選択される反応性希釈剤(XI)は、熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン(I)上の硬化性基などの様々な要因に依存するであろう。しかしながら、好適な反応性希釈剤の例としては、アクリレート、無水マレイン酸又は無水メタクリル酸などの無水物、一官能性エポキシ化合物などのエポキシ、グリシジルメタクリレートなどのメタクリレート、オキセタン、酢酸ビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、フルオロアルキルビニルエーテル、N−ビニルピロリドンなどのビニルピロリドン、スチレン、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0130】
一官能性アクリレート及びメタクリレートエステルは、Sartomer、RohmHaas、Hitachi Chemical、Arkema,Inc.、Cytec、Sans Ester Corp、Rahn、及びBomar Specialties Co.のような会社から市販されている。具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、シクロへキシルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロへキシルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−tert−オクチルアクリルアミド、N−ブトキシアクリルアミド、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジシクロペンタジエニルオキシエチルメタクリレート、2−シアノエチルアクリレート、3−シアノプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、グリシジルメタクリレート、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、n,n’−m−フェニレンジマレイミド、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、金属ジアクリレート、金属ジメタクリレート、金属モノメタクリレート、金属ジアクリレート(二官能性)、金属ジメタクリレート(二官能性)、トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、トリブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルメタクリレート、ジメトキシシリルプロピルメタクリレート、ジエトキシシリルプロピルメタクリレート、ジブトキシシリルプロピルメタクリレート、ジイソプロポキシシリルプロピルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリエトキシシリルプロピルアクリレート、トリブトキシシリルプロピルアクリレート、ジメトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジエトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジブトキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジイソプロポキシメチルシリルプロピルアクリレート、ジメトキシシリルプロピルアクリレート、ジエトキシシリルプロピルアクリレート、ジブトキシシリルプロピルアクリレート、及びジイソプロポキシシリルプロピルアクリレートが挙げられる。
【0131】
好適なビニルエーテルの例としては、限定するものではないが、ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。ビニルエーテルは当技術分野において既知であり、欧州ドイツのBASF AGから市販されている。成分(IX)の量は選択される具体的な反応性希釈剤などの様々な要因に依存するが、その量は熱伝導性熱ラジカル硬化接着剤組成物の重量に対して0.01〜10%の範囲であってもよい。当業者は、本明細書に記載の反応性希釈剤のいくつか(例えば二官能性及び多官能性アクリレート及びメタクリレート)は、(I)の成分c)として上述した反応種に加えて、又はその代わりとしても、使用できることを認識するであろう。
【0132】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(XII)は、腐食防止剤である。好適な腐食防止剤の例としては、ベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、並びに市販の腐食防止剤、例えば、R.T.Vanderbiltの2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール誘導体(CUVAN(登録商標)826)及びアルキルチアジアゾール(CUVAN(登録商標)484)が挙げられる。成分(XII)の量は、熱伝導性熱ラジカル硬化接着剤組成物の重量に対して0.05%〜0.5%の範囲であってもよい。
【0133】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(XIII)は、重合阻害剤である。アクリレート及びメタクリレート硬化性基に好適な重合阻害剤の例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる:2,6−ジ−tert−ブチル−4−(ジメチルアミノメチル)フェノール(DBAP)、ヒドロキノン(HQ)、4−メトキシフェノール(MEHQ)、4−エトキシフェノール、4−プロポキシフェノール、4−ブトキシフェノール、4−ヘプトキシフェノール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−メトキシフェノール、2,5−ジクロロヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、2−アセチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノベンゾエート、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ジメルカプトベンゼン、2,3,5−トリメチルヒドロキノン、4−アミノフェノール、2−アミノフェノール、2−N,N−ジメチルアミノフェノール、2−メルカプトフェノール、4−メルカプトフェノール、カテコールモノブチルエーテル、4−エチルアミノフェノール、2,3−ジヒドロキシアセトフェノン、ピロガロール−1,2−ジメチルエーテル、2−メチルチオフェノール、t−ブチルカテコール、ジ−tert−ブチルニトロキシド、ジ−tert−アミルニトロキシド、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−ジメチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、4−エタノールオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルオキシ、2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ、3−アミノ−2,2,5,5−テトラメチル−ピロリジニルオキシ、2,2,5,5−テトラメチル−1−オキサ−3−アザシクロペンチル−3−オキシ、2,2,5,5−テトラメチル−3−ピロリニル−1−オキシ−3−カルボン酸、2,2,3,3,5,5,6,6−オクタメチル−1,4−ジアザシクロヘキシル−1,4−ジオキシ、4−ニトロソフェノラートの塩、2−ニトロソフェノール、4−ニトロソフェノール、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、サリチル酸銅、メチレンブルー、鉄、フェノチアジン(PTZ)、3−オキソフェノチアジン、5−オキソフェノチアジン、フェノチアジン二量体、1,4−ベンゼンジアミン、N−(1,4−ジメチルフェニル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−1,4−ベンゼンジアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン及びその塩、酸化窒素、ニトロベンゼン、p−ベンゾキノン、ペンタエリスリチル=テトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジラウリルジチオプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、テトラキス[メチレン3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソトリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチル(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)、イソオクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−エチリデンビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、トリエチレングリコール−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチルヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン、若しくはその異性体、これらの2つ以上の組み合わせ、又は上記の1つ以上と酸素分子との組み合わせ。存在する場合、重合阻害剤は、100ppm〜4,000ppmの範囲の量で硬化性シリコーン組成物に添加されてもよい。重合阻害剤は当該技術分野において既知であり、例えば、欧州特許第1 359 137号に開示されている。
【0134】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の成分(XIV)は、酸受容体である。酸受容体は酸化マグネシウムのような金属酸化物を含んでもよい。酸受容体は当技術分野において既知であり、Rhenofit F、Star Mag CX−50、Star Mag CX−150、BLP−3、及びMaxOx98LRなどの商品名で市販されている。Rhenofit Fは、Rhein Chemie Corporation(Chardon,OH,USA)の酸化カルシウムであった。Star Mag CX−50は、Merrand International Corp.(Portsmouth,NH,USA)の酸化マグネシウムであった。MagOX 98LRは、Premier Chemicals LLC(W.Conshohocken,PA,USA)の酸化マグネシウムであった。BLP−3は、Omya Americas(Cincinnati,OH,USA)の炭酸カルシウムであった。
【0135】
本発明の熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、上記のように、好ましくは既知方法「In Situ法」で形成される。
【0136】
In Situ法では、一実施形態において、シリコーン反応性希釈剤(III)は予め作製され(上記の可能な実施形態のいずれかに従って)、下記の方法の間に任意成分として導入され、同時に熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン(I)がそのプロセスにより作製される。
【0137】
プロセスの工程1において、充填剤(f)と、平均で1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和有機基を有するポリオルガノシロキサン(即ち、上記の熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン(I)の成分(a))とを包含する容器内で、マスターバッチが形成される。この混合物を、室温で剪断して均質にしてもよい。
【0138】
工程1)の充填剤(f)は、熱伝導性充填剤を含有し、1種の粒径であることも、又は異なる粒径及び異なる粒径分布の組み合わせであることもできる。特定の実施形態において、この第1工程で添加される充填剤(f)は、表面積がより大きい粒子(即ち、0.5m
2/g以上の平均表面積を有する粒子)である。
【0139】
次に、工程2において、充填剤処理剤(g)を混合物に添加し、室温で剪断して均質にする。あるいは、充填剤処理剤(g)を、工程1において、充填剤(f)及びポリオルガノシロキサン(a)に同時に添加してもよい。
【0140】
次に、工程3において、ポリオルガノシロキサン(a)の存在下で熱伝導性充填剤を充填剤処理剤(g)で確実にin situ処理するのに十分な温度まで、混合物を加熱する。処理反応は、温度を50℃〜300℃の範囲、あるいは100℃〜150℃の範囲まで上げることによって開始されてもよい。
【0141】
次に、工程4において、工程3の反応生成物を30℃未満、例えば、10〜15℃まで冷却し、熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン(I)を構成する成分の残り、即ち平均で1分子当たり4〜15個のケイ素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン(成分(b))、1分子当たり少なくとも1個の脂肪族不飽和有機基と1個以上の硬化性基とを有する反応種(成分(c)、ヒドロシリル化触媒(成分(d)、及び異性体減少剤(成分(e)と混合する。特定の実施形態において、工程4の一部として、重合阻害剤(XIII)を添加してもよい。
【0142】
次に、任意追加の工程5において、上記のプロセスは、工程4の後にヒドロシリル化触媒を不活性化するために、第1の実施形態におけるシリコーン反応性希釈剤(III)の形成方法に関して上に記載された触媒阻害剤e)のような触媒阻害剤の添加する工程、及び工程4の生成物を精製する工程を、更に含んでもよい。
【0143】
次に、工程6において、工程4又は工程5で得られた混合物を、室温で剪断してもよい。
【0144】
次いで、工程7において、混合物の温度を50℃〜100℃、あるいは70℃〜85℃まで上げることによってクラスタ化官能性反応を開始させてもよく、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)により約2170cm
−1で観測したSiHピークがスペクトルのバックグラウンドまで減少するのに必要な時間によって測定したときに、工程4の混合物のSiHの実質的に全てが反応するまでその温度を維持する。
【0145】
工程7の完了後、工程8において、混合物を50℃未満に冷却し、場合によりシリコーン反応性希釈剤(III)を混合物に添加する。更に、追加の充填剤(f)、追加の充填剤処理剤(g)、又これらの組み合わせなどのその他の任意成分も工程8で導入してよく、得られた混合物を均質に混合する。
【0146】
工程8で導入される充填剤(f)には、熱伝導性充填剤があり、1種の粒径であることも、表面積がより大きい粒子(即ち、0.5m
2/g以上の平均表面積を有する粒子)と表面積がより小さい粒子(即ち、0.5m
2/g未満の平均表面積を有する粒子)とを含む、異なる粒径及び異なる粒径分布の組み合わせであることもできる。
【0147】
更に、工程8で導入される充填剤(f)は、オクタデシルメルカプタンなどのアルキルチオール、並びにオレイン酸、ステアリン酸、チタン酸塩、チタン酸塩カップリング剤、ジルコン酸塩カップリング剤などの脂肪酸、並びにこれらの組み合わせを有することができる。別の言い方をすれば、工程8で導入される充填剤(f)を、本明細書で以後「汚れた充填剤」(dirty filler)と呼ぶ。逆に、工程1で添加される充填剤(f)は「汚れた充填剤」ではなく、オクタデシルメルカプタンなどのアルキルチオール、及びオレイン酸、ステアリン酸、チタン酸塩、チタン酸塩カップリング剤、ジルコン酸塩カップリング剤などの脂肪酸、並びにこれらの組み合わせを含有しない、より純粋な形態の充填剤である。別の言い方をすれば、工程1の充填剤は、高度に純粋な充填剤である。
【0148】
次に、工程9において、工程8で添加した任意の追加充填剤を処理するために、混合物を室温に維持するか又は50℃〜110℃、あるいは70℃〜85℃の高温に加熱する。
【0149】
特定の実施形態において、シリコーン組成物に望ましい熱伝導性充填剤負荷レベルが達成されるまで、工程8及び9を繰り返すことができる。
【0150】
次に、工程10において、反応容器の温度を冷却し、段落[00109]〜[00133]に記載の追加成分(III)〜(XIV)のいずれかを、得られた混合物とブレンドし、均質になるまで混合する。特定の実施形態において、追加成分(III)〜(XIV)の追加の前に温度を50℃未満に冷却する。追加成分(III)〜(XIV)のそれぞれを、順次、又は全て一度に、又は連続するグループで、添加してもよい。
【0151】
最後に、工程11において、温度を30℃未満に冷却し、ラジカル開始剤(II)を混合物に添加し、均質に混合して熱伝導性熱ラジカル硬化性接着剤組成物を形成する。あるいは、特定の実施形態においては、ラジカル開始剤(II)を、温度が30℃未満のときに工程10の一環として添加してもよい。
【0152】
In Situ法に従って形成された熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、0.5W/mK(ワット毎メートルケルビン)超、あるいは1W/mK超、あるいは1.5W/mK超の熱伝導性を達成した。
【0153】
上記のIn Situ法によって形成される熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物、及び得られた熱伝導性熱ラジカル硬化性接着剤組成物を硬化することによって調製される硬化シリコーンコーティングは、マイクロエレクトロニクス及びマクロエレクトロニクス応用の両分野を含むエレクトロニクス分野並びに光エレクトロニクス分野及び熱伝導性接着剤の製造のような熱伝導性エレクトロニクス分野において有用である。本発明の熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、熱ラジカル硬化及び水分硬化のいずれでも硬化されることから、ラジカル硬化接着剤組成物又は水分硬化接着剤組成物よりも多様な基板に使用できる。
【0154】
こうした熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物から調製された硬化シリコーン接着剤は、アルミニウム、銅、及び無電解ニッケルのような金属を含む各種エレクトロニクス基板;並びにFR4、ナイロン、ポリカーボネート、Lucite(ポリメチルメタクリレート、PMMA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びSolvay液晶ポリマーのようなポリマー基板に接着することができる。
【0155】
本発明による複合物品は、好ましくは上述の熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物からなり、単一基板に、又は複数の基板の間に、配置又は塗布することができる。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物が塗布される基板の少なくとも1つの表面は、ポリマー又は主に無機の表面を有する必要がある。任意の追加の基板は、有機、熱可塑性、熱硬化性、金属、セラミック、又は他の好適な無機材料であることができる。基材は、プリント回路基板のような多層であることができ、その場合、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物と基板又は複合材物品の基板との間の接着の改良が得られる。
【0156】
複合材物品は、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物を複合材物品の基材の少なくとも1つの表面に接合することによって作製される。これは、組成物を150℃未満、あるいは70〜100℃の温度で硬化し、伝導性硬化性組成物及び基材が一緒にしっかりと接合されて複合材物品を形成するような十分な接着を達成することによって実施される。
【0157】
ポリマー基板がガラス強化ポリブチレンテレフタレート(PBT)のような材料である場合、硬化性組成物を基板表面上で硬化するための上限温度は、80℃未満であってよい。最大の効果を得るためには、温度は、−40℃〜80℃、あるいは0℃〜60℃、あるいは25℃〜60℃の範囲であるべきである。組成物を基板上で硬化させる時間は、5秒〜24時間、あるいは30秒〜2時間の範囲であることができる。これは、組成物がに十分に硬化され、基板に十分に接着されることを確実とする。硬化性組成物は、メーター混合、押出し、及び/又はロボット若しくは手動塗布の使用によって塗布できる。
【0158】
完全に接合された複合材物品は、伝導性硬化性組成物を、前記ポリマー基板の少なくとも1つの表面上に、水の沸点(100℃)未満の温度にて配置し、次いで、熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の硬化及びポリマー基材(単数又は複数)への接合を同時に行うことによって作製できる。これは、基材(単数又は複数)を予備乾燥する必要をなくす。複合材物品は、室温でも同様に硬化及び接合することができ、硬化用オーブンを使用する必要がなくなる。
【0159】
多成分組成物の混合及び分与は、いくつかの方法で実施できる。例えば、組成物を、所望の体積比で、バッグ内の空気中で又は加圧ガンを通して混合できる。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物の粘度及び密度を、効率的な混合及び分与が可能になるように個別に調節すると有益である。様々な密度の充填剤、並びに溶媒、モノマー及びポリマーのような粘度調整剤を使用して、これらの特性の制御を行うことができる。早すぎる硬化並びに混合及分与装置の閉塞を最小限に抑えるため、基板上に分与する前に、混合装置内の環境から酸素を排除することも有益である。
【0160】
本発明の熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、導電性ゴム、導電性テープ、導電性硬化性接着剤、導電性発泡体、及び導電性感圧接着剤の調製に有用である。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、導電性シリコーン接着剤の調製に特に有用である。導電性シリコーン接着剤は、ダイ接着用接着剤、ハンダ代替品、並びに導電性コーティング及びガスケットなどの多数の用途がある。特に、導電性シリコーン接着剤は、電子部品を可撓性又は剛性基材に接合するのに特に有用である。
【0161】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、電子部品の組み立てにも、ハンダ代替法として、電気及び熱界面材料として、並びに伝導性インクとして、使用できる。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、剛性部品又は可撓性エラストマーの形態であることができ、分与して、ロール状に又はフィルムとしてシート状に(感圧接着剤のように)予備硬化することができる。上記組成物は、最終用途において適所に分与及び硬化することもできる。発泡された熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、電気及び電子ハウジングなどの用途にガスケット及びシールとして使用して、電磁及び無線周波数ノイズがシール部分を通過するのを防止することもできる。
【0162】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、熱伝導性ゴム、熱伝導性テープ、熱伝導性硬化型接着剤、熱伝導性発泡体、及び熱伝導性感圧接着剤の調製にも同様に有用である。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、熱伝導性シリコーン接着剤の調製に特に有用である。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、ダイ接着用接着剤、ハンダ代替品、並びに熱伝導性コーティング及びガスケットなどのいくつかの用途を有する。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、電子部品を可撓性又は剛性基材に接合するのに特に有用である。
【0163】
熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、電子部品の組み立てにも、ハンダ代替法として、熱界面材料として、及び熱伝導性インク又はグリースとして、使用できる。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、剛性部品又は可撓性エラストマーの形態であることができ、分与して、ロール状又はフィルムとしてシート状に(感圧接着剤のように)予備硬化することができる。上記組成物は、最終用途において適所に変位(displaced)及び硬化することもできる。部分的に硬化した熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、熱伝導性グリースとして使用できる。発泡された熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物は、ガスケット及びシールとして、電気及び電子ハウジングにおいて使用できる。熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン組成物が熱伝導性接着剤である場合、特に、ヒートシンク又は放熱装置がポリマーマトリックスを有する場合に、伝導性硬化型組成物は、熱界面材料としての特定の利点を提供し、ヒートシンク、熱スプレッダ、又は放熱装置間の良好な結合強度を与える。
【0164】
当業者が本明細書に教示する発明を理解及び認識できるように以下の実施例が示され、これらの実施例は本明細書に添付される請求項に見出される本発明の範囲を制限するために使用されるべきではないことが理解されている。特に明記しない限り、実施例中の全ての部及び百分率は重量基準であり、全ての測定値は、25℃で得た。
比較例
【0165】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0166】
NMR:溶液状態
29Si−及び
13C−NMRスペクトルを、Mercury VX 400MHz分光計で、室温(20〜22℃)にて、16mmのSiフリープローブに入れたCDCl3(Isotec)を用いて記録した。Cr(acac)
3(クロムアセチルアセトナト)(20mM)をNMRサンプルに緩和剤として添加した。
29Si NMRスペクトルを79.493MHzで取得し、5HzのLorentzianライン拡大で処理した。
29Si原子核の緩和時間が長いため、スペクトルは半定量的でしかないが、同一条件下で得たスペクトルの相対的比較は、定量的であるとみなした。
13C NMRスペクトルは、100.626MHzで取得し、3HzのLorentzianライン拡大で処理した。いずれの原子核についても、一般的に、十分な感度を達成するために256−512回の積算が90°パルス幅と同時に加えられる;パルス間に6秒(
29Si)又は12秒(13C)の遅延を使用した。ゲート付きデカップリングを用いて、有害な核オーバーハウザー効果を取り除いた。ケミカルシフトは、外部のテトラメチルシラン(TMS)を基準にした。
I.実施例の成分一覧:
DOW CORNING(登録商標)SFD−119;0.46重量%ビニル線状ポリジメチルシロキサン
DOW CORNING(登録商標)SFD−117;0.2重量%ビニル線状ポリジメチルシロキサン
DOW CORNING(登録商標)SFD−120;0.13重量%ビニル線状ポリジメチルシロキサン
DOW CORNING(登録商標)SFD−128;0.088重量%ビニル線状ポリジメチルシロキサン
DOW CORNING(登録商標)Q2−5057S;0.15重量%SiHメチルハイドロジェンシリコーン、線状;
DOW CORNING(登録商標)Q2−556S;0.027重量%SiHメチルハイドロジェンシリコーン、線状;
メチルハイドロジェンシロキサン;1.67重量%SiHメチルハイドロジェンシリコーン、環状;
DOW CORNING(登録商標)2−0707;白金触媒0.52重量%白金;
MB2030−(DOW CORNING(登録商標)SFD−128/シリカブレンド);
メチルトリメトキシシラン(MTM);DOW CORNING(登録商標)Z6070;
OFS−1579/ETS900−メチル及びエチルトリアセトキシシランの混合物;
DOW CORNING(登録商標)Z−6030 SILANEメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン;
DOW CORNING(登録商標)Z−2306 SILANEイソブチルトリメトキシシラン(IBTMS);
DOW CORNING(登録商標)Z−6341SILANE n−オクチルトリエトキシシラン(nOTE);
ジアリルマレエート(DAM)Bimax Inc.(Glen Rock,Pennsylvania)から入手可能;
アリルメタクリレート(AMA)BASF Corporation(Florham Park,New Jersey)から入手可能
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)Sigma Aldrich(Milwaukee,Wisconsin)から入手可能;
酸化マグネシウム(MAGOX SUPER PREMIUM);Premier Magnesia(W.Conshohocken,PA 19428 USAA)から入手可能;
DAW−45;酸化アルミニウム充填剤、Denkaから商業的に入手可能;
AL−43−ME;酸化アルミニウム充填剤、Showo−Denkoから商業的に入手可能;
CB−A20S;酸化アルミニウム充填剤、Showo−Denkoから商業的に入手可能;
Varox(登録商標)DCBP−50ペースト;R T Vanderbilt Co.(Norwalk CT 06856 USA)から入手可能;
Perkadox L−50−PS;Azko Nobel Polymer LLC(Chicago IL USA)の製品;
TAIC;Sigma−Aldrich Corp.(St.Louis,MO,USA)のトリアチルイソシアヌレート;
TYZOR TNBT;Dorf Ketal Speciality Catalysts,LLC(3727 Greenbriar Dr.,Stafford,TX 77477 USA)から入手可能;
TINOPAL OB、BASF Corporation(100 Campus Drive Florham Park,New Jersey 07932 USA)の蛍光増白剤;
DOW CORNING(登録商標)TC 1−4173は、一液型白金添加硬化熱伝導性接着剤である。
II.異性体減少剤がシリコーン反応性希釈剤に与える影響(試料1及び2)
【0167】
50リットルのTurelloミキサーに、6196.7gの鎖延長剤Q2−5567S、1.3gのBHT、及び318.69gのAMAを仕込んだ。この混合物を、窒素雰囲気中で2%の酸素を用いて不活性化し、10分間撹拌し、この時点で6.64gの白金触媒を添加した。混合物を更に10分間撹拌した後、温度を50℃に設定した。温度を50℃で30分間保持した後、9.96gのDAMを添加した。混合物を更に10分間撹拌した。温度を、10kPa(75トル)の真空において、50℃で30分間保持した。得られた組成物(試料1)を30℃未満に冷却した後、梱包した。
【0168】
50リットルのTurelloミキサーに、6196.7gの鎖延長剤Q2−5567S、1.3gのBHT、318.69gのAMA、及び1.3gのOFS−1579異性体減少剤を仕込んだ。この混合物を、窒素雰囲気中で2%の酸素を用いて不活性化し、10分間撹拌し、この時点で6.64gの白金触媒を添加した。混合物を更に10分間撹拌した後、温度を50℃に設定した。温度を50℃で30分間保持した後、9.96gのDAMを添加した。次いで、混合物を更に10分間撹拌した。温度を、10kPa(75トル)の真空において、50℃で30分間保持した。得られた組成物(試料2)を30℃未満に冷却した後、梱包した。
【0169】
試料1及び2の粘度(センチポアズ(cps)単位)を、3番スピンドルを用いたBrookfield LVF粘度計で、毎分60回転で測定した。結果は、表3に示すように、異性体減少剤の導入(試料2)は、90日にわたって比較的安定な粘度をもたらすが、異性体減少剤を使用しない対応する実施例(試料1)の粘度は、90日後にほぼ2倍の粘度に増大した。
【表1】
III.熱伝導性熱ラジカル硬化性シリコーン接着剤の調製
A:異性体減少剤を用いた熱伝導性クラスタ化官能性ポリオルガノシロキサン(TC CFP)の調製
【0170】
0.9L(4分の1ガロン)のBaker Perkinミキサーに、133.2gのDOW CORNING(登録商標)SFD120ポリマー、991gのAl−43−ME(Al2O3充填剤)、99.1gのDAW−45(Al2O3充填剤)及び35.8gのDOW CORNING(登録商標)Z−6341(充填剤処理剤)を仕込んだ。仕込みの際は、Al−43−ME及びZ−6341を3段階で仕込み、上記の総量に到達するようにした。この3段階の仕込みと仕込みの間に、室温で2〜5分間の混合を行い、充填剤に調和させた。全ての材料(上記)をミキサーに添加した後、混合物を20分間ブレンドし、その後温度を149℃に設定した。温度は、真空及びN2条件で、149℃で30分間保持した。次いで、混合物を30℃未満に冷却した。3.93gの環状メチルハイドロジェンシロキサンの均質化予備混合物、並びに7.94gの鎖延長剤Q2−5057S、0.025gのBHT、12.25gのAMA、及び0.025gのOFS−1579異性体減少剤を仕込んだ。混合物を室温で更に10分間ブレンドし、この時点で0.18gの白金触媒を添加した。混合物を更に10分間ブレンドした後、温度を80℃に設定した。温度を80℃で30分間保持した後、50℃未満に冷却し、0.27gのDAMを添加した。混合物を更に5分間ブレンドした後、温度を50℃に設定した。温度を50℃及び真空にて15分間保持した。続いて、混合物を35℃未満に冷却した後、梱包した。得られたポリマーを、以後、TC CFPと呼ぶ。
B.シリコーン反応性希釈剤(SRD−1)合成
【0171】
50リットルのTurelloミキサーに、6196.7gの鎖延長剤Q2−5567S、1.3gのBHT、318.69gのAMA、及び1.3gのOFS−1579異性体減少剤を仕込んだ。この混合物を、窒素雰囲気中で2%の酸素を用いて不活性化し、10分間撹拌し、この時点で6.64gの白金触媒を混合物に添加した。混合物を更に10分間撹拌した後、温度を50℃に設定した。温度を50℃で30分間保持した後、9.96gのDAMを添加した。混合物を更に10分間撹拌した。温度を、50℃及び10kPa(75トル)の真空で、30分間保持した。続いて、混合物を35℃未満に冷却した。得られたポリマーを、以後SRD−1と呼ぶ。
C.熱伝導性接着剤(TCA)の調製
【0172】
599gのTC CFP、645.9gのDAW−45(Al2O3充填剤)、3.5gのMgO2及び134.3gのSRD−1を、0.9L(4分の1ガロン)のBaker Perkinミキサーに添加した。混合物(M−5)を、真空下で室温(<30℃)にて30分間混合した。接着剤組成物は、下の表2に定める促進剤パッケージ及びラジカル開始剤を更に添加することによって調製した。
【表2】
IV.接着剤組成物の物理的特性の評価
【0173】
TCA配合物の粘度測定:以下の実施例において、Brooksfieldコーンプレート型粘度計(DV−II、スピンドル52番、速度2rpm)及びBrooksfield RVF粘度計(スピンドル7番、速度2rpm(低剪断)及び20rpm(高剪断))を使用して、様々な熱伝導性接着剤配合物の粘度を測定した。
【0174】
Alclad(商標)パネル上での試料調製2.5cm×8cm(1”×3”)Al Alclad(商標)パネル(Alcoaより入手可能)をアセトンで清浄した(3点の試料を調製)。Spheriglassスペーサビーズ(Potters Industries Inc.350 North Baker Drive,Canby,OR 97013−0607)を用いて、用途に適したボンドラインを確立した(即ち、23mil)。
【0175】
次に、接着剤をAlclad(商標)アルミニウム基板に塗布した。2個の1cm(3/8”)バインダークリップをスペーサ法と共に使用して、硬化中の基板を固定した。硬化条件は、85℃で30分であった。試料の2分の1は室温で評価して、エージング、残りの試料は150℃のオーブンに3日間置いた。
【0176】
試験は、インストロン5566張力計で、5cm/分(2インチ/分)で実施した(Instron Worldwide Headquarters,825 University Ave.,Norwood,MA 02062−2643)。コーティングした基板の重ね剪断接着特性を、ピーク応力について、ポンド/平方インチ(PSI)単位で評価し、その結果を下の表6〜8に示す。
【0177】
熱伝導性接着剤(TCA)配合物の物理試験及び熱伝導率用試料調製:歯科用コップに入ったTCA材料を冷凍庫から取り出し、少なくとも1時間、室温近くまで自然昇温させた。続いて、材料のコップをチャンバ内に置き、15分間、完全真空に引いた。続いて、約56〜58gの材料を、10cm×10cm×0.19cm(4”×4”×0.075”)のチェース内に慎重に注ぎ、材料に入る空気を最小限に抑えるようにした。チェースは、材料の取出しを助けるため及び平滑な表面を作るための両側のテフロンシート、並びにスラブの成形を助ける2枚の受板と共に使用した。2枚の受板の間のチェースを、続いて、Dakeホットプレスに、85℃及び98067ニュートン(10トンの力)で30分間置いた。
【0178】
硬化後、材料をホットプレスから取り出し、室温まで自然冷却した。続いて、材料のスラブを縁周辺でトリミングし、チェースから取り出した。このスラブから、「犬用の骨」形のカッター及びプレスを用いて、引張及び伸び試験用に5点の試料を切り取った。3点(ラベル表示したRT試料)は、硬化の24時間後に試験した。残りの2点の試料は、150℃で3日間の後で試験し、TRT試料とラベル表示した。
【0179】
インストロンT2000張力計を使用して、「Standard Tensile Test」と題された試験プログラムで、物理的試験を実施した。続いて、スラブの残余(引張を実施しなかった部分)を、デュロメータ及び熱伝導率測定に使用した。3点の試験片を積み重ねると、6mmの厚さに達した(積層体と呼ぶ)。ショアAデュロメータについては、5つの読取値を得た。HotDisk熱試験機(TPS 2500S Therm Test Inc)については、2つの積層体を熱試験プローブの上下に配置した。出力0.25w及び時間測定10秒の設定で、測定を実施した。
【表3】
【0180】
表3で確認されるように、類似のレオロジー特性を示す本発明による接着剤組成物(表2接着剤)が、本発明の組成物によって得られた。
【表4】
【0181】
表4で確認されるように、本発明の接着剤組成物(表2接着剤)は、>1.5W/mKの熱伝導率、デュロメータ硬度、引張強度、伸び、及びAlclad(商標)Al基板上での重ね剪断に関して十分な物理的特性を示した。更に、本発明の接着剤組成物(表2接着剤)は、白金触媒添加の化学による接着剤系よりも低温(実際の硬化条件又はボンドライン硬化条件)で硬化した。シリコーン反応性希釈剤を接着剤配合物に導入することで、85℃の低温で30分間の硬化特性を維持した。
【0182】
本開示は例示的に記載したものであり、使用されている用語は、限定ではなく記述の性質を持つ語であることを意図することが理解されるべきである。明らかに、本開示の多くの修正及び変更が上記教示に照らして可能である。したがって、添付される特許請求の範囲内で、本開示を具体的に記載されたやり方以外で実施してもよいことが理解されるべきである。