(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408502
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ガスサンプリング容器
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20181004BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
G01N1/22 C
G01N1/10 R
G01N1/22 Y
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-44772(P2016-44772)
(22)【出願日】2016年3月8日
(65)【公開番号】特開2017-161312(P2017-161312A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231235
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】上村 隆裕
【審査官】
三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】
実開平01−120647(JP,U)
【文献】
特公昭47−026571(JP,B1)
【文献】
特開平05−206527(JP,A)
【文献】
特開2000−171362(JP,A)
【文献】
米国特許第04991449(US,A)
【文献】
特開平07−020012(JP,A)
【文献】
特開平11−118787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22
G01N 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状容器の一端に入口弁を、他端に出口弁を有するガスサンプリング容器において、前記入口弁の下流側に、焼結金属フィルタを設けたことを特徴とするガスサンプリング容器。
【請求項2】
前記入口弁は、パージ弁と導入弁とを一体化した2連3方弁であることを特徴とする請求項1記載のガスサンプリング容器。
【請求項3】
前記焼結金属フィルタは、前記入口弁に一体的に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のガスサンプリング容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスサンプリング容器に関し、詳しくは、低温液化ガスを気化させてサンプリングするためのガスサンプリング容器に関する。
【背景技術】
【0002】
液化酸素、液化窒素、液化アルゴン、液化天然ガスなどの低温液化ガスの品質検査は、低温液化ガスを気化させたガスを分析することによって行われている。低温液化ガスを気化させてサンプリングする手段として、サンプリング対象となる低温液化ガスを伝熱管内に導入して気化させる気化器と、該気化器で気化したガスを導入して貯蔵するサンプリングシリンダとを備えた低温液化ガス用ガス化サンプリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−120647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたサンプリング装置では、気化器の部分の構成が複雑であり、サンプリングが高精度で行えないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構成で低温液化ガスを気化させたガスを効率よくサンプリングすることができるガスサンプリング容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のガスサンプリング容器は、筒状容器の一端に入口弁を、他端に出口弁を有するガスサンプリング容器において、前記入口弁の下流側に、焼結金属フィルタを設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明のガスサンプリング容器は、前記入口弁がパージ弁と導入弁とを一体化した2連3方弁であること、また、前記焼結金属フィルタが前記入口弁に一体的に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスサンプリング容器によれば、低温液化ガスが焼結金属フィルタを通過することにより、数μmあるいはそれ以下の大きさに細分化された液滴となるので、筒状容器内に流入した時点で速やかに気化して容器内に貯蔵される。したがって、伝熱管や加熱手段などを備えた気化器を設けることなく、極めて簡単な装置構成で、低温液化ガスを気化させたガスを容器内にサンプリングすることができる。また、気化後のガスは、そのまま容器内に貯蔵された状態になるため、低温液化ガス中に含まれる不純物を確実に容器内に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のガスサンプリング容器を使用した低温液化ガスサンプリング装置の一形態例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明のガスサンプリング容器を使用した低温液化ガスサンプリング装置の一形態例を示している。まず、ガスサンプリング容器11は、金属製、例えばステンレス鋼製の円筒状容器12の一端に入口弁13を、他端に出口弁14を、それぞれ有するとともに、前記入口弁13の下流側に、焼結金属フィルタ15を設けたものである。また、入口弁13には、該入口弁13までの経路のパージをより確実に行えるように、パージ弁13aと導入弁13bとを一体化した2連3方弁を使用している。
【0011】
焼結金属フィルタ15は、金属製の粉体を溶融点前後の温度で焼き固めることにより、数μm程度、あるいはそれ以下の大きさの微細孔を形成したものであって、周知のように、各種流体中から微細固形物を分離するためのフィルタとして広く用いられている。このような焼結金属フィルタ15の上流側から液体状態を保持可能な温度、即ち沸点以下の温度で低温液化ガスを供給し、低温液化ガスが液体状態を保持できない温度、即ち沸点以上の温度の円筒状容器12内に放出することにより、焼結金属フィルタ15の微細孔を通過することによって数μmあるいはそれ以下の大きさに細分化された液滴となった低温液化ガスを円筒状容器12内で速やかに気化させることができ、気化したガスを円筒状容器12内に貯蔵することができる。
【0012】
これにより、分析対象となる低温液化ガス中に含まれる各種不純物成分、特に、硫黄成分や水分などの不純物も確実に円筒状容器12内に取り込むことができる。
【0013】
前記ガスサンプリング容器11を使用した低温液化ガスサンプリング装置20は、コールドエバポレーター21内に貯留された低温液化ガスの一部を抜き出し、気化させたガスを円筒状容器12内に貯蔵するためのものであって、予冷用、パージ用などの各種配管、各種弁及び各種機器を備えている。
【0014】
すなわち、ガスサンプリング容器11の入口弁13とコールドエバポレーター21との間の上流側配管には、上流側から順に、コールドエバポレーター出口弁22と、放出弁23と、入口側遮断弁24とが設けられ、ガスサンプリング容器11の出口弁14の下流側の下流側配管には、上流側から順に、圧力計25、安全弁26、出口側遮断弁27及び流量計28が設けられている。
【0015】
以下、低温液化ガスサンプリング装置20によってコールドエバポレーター21内の低温液化ガスを気化させてガスサンプリング容器11の円筒状容器12内に貯蔵する手順を説明する。
【0016】
まず、全ての弁を閉じた状態で、入口弁13に上流側配管を接続するとともに、出口弁14に下流側配管を接続する。次に、円筒状容器12内に残留しているガスを放出するため、出口弁14、出口側遮断弁27の順に開き、円筒状容器12内のガスを大気圧まで放出する。円筒状容器12内が大気圧になったら、出口弁14、出口側遮断弁27の順に閉じる。
【0017】
次に、上流側配管内から空気成分などの不純物を除去するとともに、上流側配管を冷却するための予備パージ操作を行う。このとき、コールドエバポレーター21の出口圧が0.01〜20MPaGであることを、適宜な圧力計(図示せず)で確認し、出口圧が1MPaGを超えている場合には、適宜なレギュレーター(図示せず)を用いて1MPaG以下の圧力に減圧する。
【0018】
配管内のパージは、コールドエバポレーター出口弁22、放出弁23、入口側遮断弁24及びパージ弁13aを開き、所定時間経過後、例えば1分経過後にパージ弁13a及び入口側遮断弁24を閉じる。配管が十分に冷却されるまでは、放出弁23から気化ガスが放出され、次第に連続して低温液化ガスが放出される状態になる。
【0019】
予備パージ操作終了後、円筒状容器12内から不純物を排出するためのパージ操作を行う。最初に、円筒状容器12内の昇圧と降圧とを繰り返すバッチパージ操作を行う。このバッチパージ操作では、まず、入口側遮断弁24、導入弁13b、出口弁14の順で開き、放出弁23を閉じる。これにより、コールドエバポレーター21から上流側配管を通して円筒状容器12内に、低温液化ガスが焼結金属フィルタ15で気化したガスが導入され、円筒状容器12内の圧力が次第に上昇する。圧力計25の指示圧が所定圧力に上昇したら、入口側遮断弁24を閉じて出口側遮断弁27を開き、円筒状容器12内のガスを下流側配管から排出する。円筒状容器12内の圧力が所定圧力まで低下したら、出口側遮断弁27を閉じて入口側遮断弁24を開く。
【0020】
入口側遮断弁24及び出口側遮断弁27を交互に開いて円筒状容器12内の昇圧と降圧とを繰り返すバッチパージ操作を所定回数繰り返した後、円筒状容器12内にガスを流通させる流通パージ操作を行う。流通パージ操作では、入口側遮断弁24、導入弁13b及び出口弁14が開いているのを確認した後、出口側遮断弁27を開く。これにより、コールドエバポレーター21からの低温液化ガスが焼結金属フィルタ15で気化し、気化したガスが円筒状容器12内を満たしながら通過して下流側配管から排出される状態になる。このとき、流量計28によって測定したガス流量が所定の流量になるように適宜調節する。
【0021】
前記バッチパージ操作と前記流通パージ操作との合計ガス量が所定量、例えば、円筒状容器12の内容積の100〜200倍程度に達したところで、出口側遮断弁27を閉じる。これにより、低温液化ガスから気化したガスを円筒状容器12内に充填する充填操作が行われる。そして、圧力計25の指示圧が所定の圧力、例えば、0.01〜0.9MPaGの間で安定し、かつ、安全弁26の噴出し圧、例えば0.98MPaGまで達していないことを確認したら、出口弁14、導入弁13bの順で閉じる。
【0022】
このように、予備パージ操作、バッチパージ操作及び流通パージ操作を行った後に充填操作を行うことにより、上流側配管や円筒状容器12に滞留しているガス不純物や付着している不純物を容易かつ確実に除去することができ、コールドエバポレーター21内に貯留された低温液化ガスを抜き出して焼結金属フィルタ15で気化させたガスのみをガスサンプリング容器11の円筒状容器12内に貯蔵した状態にすることができる。その後、上流側配管及び下流側配管をそれぞれ取り外したガスサンプリング容器11を分析場所に搬送して気化ガスに含まれる不純物の分析を行うことにより、低温液化ガス中の不純物を精度よく分析することができる。
【0023】
なお、焼結金属フィルタは、入口弁と一体的に設けることもでき、円筒状容器のガス入口部に設けることもできる。また、入口弁の部分に焼結金属フィルタを設けることにより、通常のガスサンプリング容器を低温液化ガス用サンプリング容器に改造することができる。
【符号の説明】
【0024】
11…ガスサンプリング容器、12…円筒状容器、13…入口弁、13a…パージ弁、13b…導入弁、14…出口弁、15…焼結金属フィルタ、20…低温液化ガスサンプリング装置、21…コールドエバポレーター、22…コールドエバポレーター出口弁、23…放出弁、24…入口側遮断弁、25…圧力計、26…安全弁、27…出口側遮断弁、28…流量計