(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の態様は、様々な修正形態および代替形態の影響を受けやすいが、その詳細は、例として図面に示されており、また説明される。しかしながら、本開示の態様を説明した特定の実施形態に限定するものではなく、本開示の趣旨および範囲にある全ての修正形態、均等物、および代替形態を網羅するものである。
【0011】
以下定義する用語に関し、これらの定義は、異なる定義を特許請求の範囲または本明細書の他の箇所で与えない限り、適用される。
本明細書の全ての数値は、明確に示すか否かに関わらず、用語「約」によって修正されると考えられる。用語「約」は、一般的に、当業者が、引用した値に等価であるとみなす(すなわち、同じ機能または結果を有する)、ある範囲の数を指す。多くの場合、用語「約」は、有効数字に丸められる数を含むことを示す。
【0012】
端点による数値の範囲の詳細は、その範囲内の全ての数を含む(例えば、1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
様々な構成要素、特徴および/または仕様に関するいくつかの好適な寸法、範囲および/または値が開示されるが、本開示を実施しようとする当業者は、所望の寸法、範囲および/または値が、それらの明白に開示されたものからずれ得ることを理解する。
【0013】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容においてそうではないと明白に示さない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲では、用語「または」は、一般的に、その意味では、内容においてそうではないと明白に示さない限り、「および/または」を含んで用いられる。
【0014】
以下の詳細な説明は図面を参照して読む必要があり、図面では、異なる図にある同様の要素には同じ符号を付している。詳細な説明、および必ずしも縮尺通りではない図面は、例示的実施形態を示し、および本開示の範囲を限定するものではない。図示の例示的実施形態は例示にすぎない。任意の例示的実施形態の選択された特徴は、そうではないと明白に示さない限り、追加的な実施形態に組み込んでもよい。
【0015】
図1に例示的な再開通カテーテル10を示す。再開通カテーテル10は主カテーテルシャフト12を含んでもよく、このカテーテルシャフトは、カテーテルシャフト12の基端部16にあるハブアセンブリ14から拡張可能部材まで延在し、この拡張可能部材は、カテーテルシャフト12の先端部18に近接したカテーテルシャフト12の先端部分に装着された膨張可能なバルーン20として示す。拡張可能部材を膨張可能なバルーン20として示すが、一部の実施形態では、拡張可能部材は、自動的にまたは手動で拡張できる1つまたは複数の、あるいは複数のストラット、または他の手動で拡張可能なまたは自動的に拡張可能な構造から形成された、拡張可能なフレームワークとしてもよい。
【0016】
カテーテル10は、患者の血管系の離れた位置に送達するためにガイドワイヤー22上を前進するように構成される。例えば、カテーテル10は、ガイドワイヤールーメン24を有するシングルオペレータエクスチェンジ型(SOE:single−operator−exchange)カテーテルとして構成してもよく、このガイドワイヤールーメンは、先端ポート26から、バルーン20の基端側から近距離におよびハブアセンブリ14から先端側に位置する基端ガイドワイヤーポート28まで延在する。そのような構成では、ガイドワイヤー22は、先端ポート26と基端ポート28との間を、ガイドワイヤールーメン24を通って延在し、かつ、カテーテルシャフト12の基端部16まで、基端ポート28の基端側からカテーテルシャフト12の外側に沿って延在する。他の例では、カテーテル10は、オーバーザワイヤー(OTW:over−the−wire)カテーテルとして構成してもよく、このカテーテルは、カテーテル10の先端チップ(distal tip)の先端ポート26からハブアセンブリ14の基端ガイドワイヤーポート30までカテーテル10の全長を通って延在するガイドワイヤールーメン24を有する。
図1は、そのような構成を、ガイドワイヤー22の基端側に延在する部分を破線にして示す。カテーテル10がSOEカテーテルである場合には、ハブアセンブリ14は基端ガイドワイヤーポート30を含まなくてもよく、および/または、カテーテル10がOTWカテーテルである場合には、基端ガイドワイヤーポート28は存在しなくてもよい。
【0017】
カテーテルシャフト12はまた、ハブアセンブリ14の膨張ポート34からバルーン20の内部に延在する膨張ルーメン32を含む。膨張ルーメン32は、医療処置中に膨張用流体をバルーン20に送達して、バルーン20を膨張させるように構成される。
【0018】
カテーテル10はまた、主カテーテルシャフト12から開口部44を通って延在する可撓性チューブ部材40を含む。例えば、開口部44は、主カテーテルシャフト12のチューブ部材の側壁を通って延在する側面開口部としてもよいし、または開口部44は、主カテーテルシャフト12のチューブ部材の先端部にある先端開口部としてもよい。可撓性チューブ部材40は、バルーン20の膨張時にバルーン20の外面が可撓性チューブ部材40に係合できるように、バルーン20の外側の一部に沿って延在してもよい。可撓性チューブ部材40は、主カテーテルシャフト12の一部に固定されるバルーン20の基端側のくびれた部分(waist)46の外側に延在するように、バルーン20の基端側の位置で主カテーテルシャフト12から延在し、かつ、そこから先端方向へ延在する。場合によっては、可撓性チューブ部材40の先端チップ42は、主カテーテルシャフト12の一部に固定されるバルーン20の先端側のくびれた部分48に近接して終端する。
【0019】
可撓性チューブ部材40は、撓むことが可能な再入チューブまたは向き変更チューブ(例えば、「スティンガー(stinger)」)とみなされるが、湾曲したまたは撓んだ形態になるまで、主カテーテルシャフト12から離れるように(例えば、主カテーテルシャフト12の長手方向中心軸から離れるように)撓むことができるように可撓性を有する。可撓性チューブ部材40は、その側壁を通って形成された1つまたは複数の、あるいは複数の切込みまたはスリットを含むことで、ある程度の側方の可撓性を備えることが可能である。例えば、可撓性チューブ部材40は、所望の程度の側方への可撓性をもたらすために、その側壁を通って形成されてその長さに沿って延在するらせん状の切込みまたはスリット、その側壁を通って形成されてその長さに沿ってその周囲に部分的に延在する複数の切込みまたはスリットの構成、または別の方法で形成された切込みまたはスリットの別の構成を含むことができる。
【0020】
一部の実施形態では、可撓性チューブ部材40は、例えば、ステンレス鋼またはニチノールなどのニッケル−チタン合金を含む金属材料、ポリアミド、ポリエーテルブロックアミド、ポリエチレン、またはポリエチレンテレフタレートなどのポリマー材料、または金属材料とポリマー材料の組み合わせで形成される。
【0021】
可撓性チューブ部材40は、カテーテル10を介して長尺状の医療機器を標的位置まで送達するように構成された第3の装置送達ルーメン38を画定する。装置送達ルーメン38は、ハブアセンブリ14のアクセスポート36から主カテーテルシャフト12を通って可撓性チューブ部材40の先端チップ42まで延在する。それゆえ、長尺状の医療機器は、医療処置の最中に装置送達ルーメン38を通して挿入されて、可撓性チューブ部材40の先端チップ42から前進させられる。
【0022】
一部の実施形態では、
図2Aに示す通り、カテーテルシャフト12、またはその一部は、外側チューブ部材50と、外側チューブ部材50を通って延在する第1の内側チューブ部材52と、外側チューブ部材50を通って延在する第2の内側チューブ部材54とを含む。第1の内側チューブ部材52はガイドワイヤールーメン24を画定し、また、第2の内側チューブ部材54は装置送達ルーメン38を画定する。第2の内側チューブ部材54は、外側チューブ部材50内へと延在している可撓性チューブ部材40の延長部としてもよい。あるいは、第2の内側チューブ部材54は、可撓性チューブ部材40に固定されかつそこから延出して、内部に装置送達ルーメン38を提供してもよい。そのような実施形態では、バルーン20の基端側のくびれた部分46が外側チューブ部材50の先端部に固定される一方で、バルーン20の先端側のくびれた部分48が第1の内側チューブ部材52の先端部に固定されて、バルーン20の内部に延在するように、主カテーテルシャフト12を構成する。さらに、膨張ルーメン32は、外側チューブ部材50と第1および第2の内側チューブ部材52、54との間に画定される。
【0023】
他の実施形態では、
図2Bに示すように、カテーテルシャフト12、またはその一部は、複数のルーメンが内部に形成された押し出しシャフト56としてもよい。例えば、押し出しシャフト56は、ガイドワイヤールーメン24、膨張ルーメン32、および装置送達ルーメン38を含む。そのような実施形態では、バルーン20の基端側のくびれた部分46が押し出しシャフト56の一部に固定される一方で、バルーン20の先端側のくびれた部分48が、押し出しシャフト56の別の部分またはそこから延出するチューブ部材に固定されて、バルーン20の内部に延在するように、主カテーテルシャフト12を構成する。
【0024】
カテーテル10はまた、バルーン20から先端方向に延在する先端チップ58を含む。先端チップ58は、その内部を貫通しかつその先端において先端ポート26に対して開口するルーメンを有し、先端ポート26から延出するガイドワイヤー22を収容する。先端チップ58は、無外傷性先端、例えば、典型的な血管形成術用バルーンカテーテルを備える先端と同様の可撓性の低デュロメータ先端としてもよい。他の実施形態では、先端チップ58は、血管の組織層の穿孔および/または切開を容易にするように構成される。例えば、先端チップ58は、鋭く硬いおよび/または穿孔性の特徴部を含む。一実施形態では、
図1に示すように、先端チップ58は、角度をつけた先端縁部を備えることで、先のとがった切込みまたは穿孔縁部を設けることもできる。
【0025】
図3は、カテーテル10の、バルーン20における断面図である。
図3に示すように、膨張時、バルーン20は、中心球根状部分60と、球根状部分60から第1の方向に延在する第1の翼部分62と、球根状部分60から、第1の方向と略反対の第2の方向に延在する第2の翼部分64とを含む。したがって、第1および第2の翼部分62、64は、中心球根状部分60から反対方向において外側に延在する。バルーン20は、膨張するときに、
図3に示す球根状部分60および翼部分62、64を維持するように、非伸張性すなわちより堅い材料で形成される。翼部分62、64は、血管壁の曲率に従って、使用中に、可撓性チューブ部材40を血管の真腔の中心の方へ略向けるように構成される。さらに、球根状部分60は、可撓性チューブ部材40に接触して押圧し、それにより、バルーン20が膨張すると可撓性チューブ部材40を撓ませるように、構成される。
【0026】
図4および
図5は、バルーン20が収縮して送達形態にあるカテーテル10の例示的な構成を示す。図示されるように、収縮しているバルーン20は、可撓性チューブ部材40の周りに折り畳まれて、カテーテル10の先端部分に対して小さな送達形状をもたらす。例えば、折り畳まれた送達形態では、カテーテル10の外径は、約3フレンチ(1mm)〜約5フレンチ(1.67mm)、例えば約3フレンチ(1mm)、約3.5フレンチ(1.17mm)、約4フレンチ(1.33mm)、約4.5フレンチ(1.5mm)または約5フレンチ(1.67mm)を有してもよい。一部の実施形態では、可撓性チューブ部材40の先端チップ42は、バルーン20の折り畳み部分内に包まれているため、バルーン20および可撓性チューブ部材40を血管系の標的位置に送達する最中に、不注意に血管壁と接触しないように覆って保護される。例えば、
図5に示すように、翼62、64を形成するバルーンの材料の各部分は、可撓性チューブ部材40の周りに折り畳まれて、カテーテルシャフト12の長手方向中心軸に略平行する長尺状の形態に維持される。
【0027】
図6は、カテーテル10が、可撓性チューブ部材40を湾曲形態に撓ませるのを容易にするために、プルワイヤー70、または他の作動機構を含む代替的な実施形態を示す。例えば、プルワイヤー70は、可撓性チューブ部材40の先端チップ42に近接する先端部分に固定された先端部を有する。それゆえ、プルワイヤー70は、カテーテル10の基端部に延在するか、またはカテーテル10の基端部でアクセス可能な作動可能な部品に取り付けられることで、操作者によって操作されて、可撓性チューブ部材40を撓ませて湾曲形態にする。
【0028】
図7に示すように、可撓性チューブ部材40は、主カテーテルシャフト12の長手方向中心軸Xに対して略平行な長手方向中心軸Yに沿って可撓性チューブ部材40が延在する略軸方向に整列した形態Aから、可撓性チューブ部材40の先端部分が長手方向軸Yから離れる湾曲形態へ湾曲するまたは撓むように構成される。例えば、一部の実施形態では、可撓性チューブ部材40の先端部分は、90°未満、例えば場合によっては約30°、約45°、または約60°の曲率の角度(すなわち、弧の角度)θ
1を有する湾曲形態Bに湾曲または撓むことができる。他の実施形態では、可撓性チューブ部材40の先端部分は、約90°の曲率の角度(すなわち、弧の角度)θ
2を有する湾曲形態Cに湾曲または撓むことができる。さらに他の実施形態では、可撓性チューブ部材40の先端部分は、90°超、例えば場合によっては約95°以上、約100°以上、または約105°以上の曲率の角度(すなわち、弧の角度)θ
3を有する湾曲形態Dに湾曲または撓むことができる。本明細書で説明するように、「弧の角度」または「曲率の角度」は、可撓性チューブ部材40が長手方向軸Yから離れるように湾曲し始める長手方向軸Yに沿った点から、可撓性チューブ部材40の先端チップ42にある開口部の中心まで、可撓性チューブ部材40の先端部分が湾曲する角度を意図する。
【0029】
一部の実施形態、例えば先端チップ42が先細のまたは先のとがった先端を含む実施形態では、先端チップ42におけるルーメン38の開口部は、湾曲形態において基端方向に対面する。例えば、先端チップ42におけるルーメン38の開口部は、可撓性チューブ部材40の先端部分が90°以上、95°以上、100°以上、または105°以上の弧の角度で撓むと、基端方向に対面する。それゆえ、そのような実施形態では、可撓性チューブ部材40のルーメン38の先端開口部から前進させられた長尺状の医療機器は、例えば基端方向すなわち逆方向に方向付けられる。
【0030】
図8は、血管壁80の2つの組織層間に形成された内膜下腔に位置決めされたカテーテル10の先端部分の断面図である。血管80は、一般に、3つの組織層、最内層すなわち内膜層(すなわち内膜)82、中間層すなわち中膜層(すなわち中膜)84、および最外層すなわち外膜層(外膜)86を有し、中膜層84は内膜層82と外膜層86との間に位置している。内膜層82は、血管80の管腔88を覆う内皮細胞の層、ならびに、ほとんどが疎性結合組織で構成された内皮下層である。中膜層84は、主に周囲に配置された平滑筋細胞で形成された筋層である。血管壁80の外面層を形成する外膜層86は、主に、線維芽細胞および関連の膠原線維で構成された疎性結合組織で形成される。
【0031】
本明細書でさらに説明するように、バルーン20を含むカテーテル10の先端部分を、血管壁80の組織層の切開などによって血管壁80に形成された内膜下腔(すなわち、内膜層82と外膜層86との間の腔)に前進させる。内膜下腔に位置決めしたら、血管壁80の内膜層82と外膜層86との間でバルーン20を膨張させる。バルーン20が膨張すると、バルーン20の翼62、64が広がって内膜層82と外膜層86との間で膨張して、可撓性チューブ部材40をバルーン20の球根状部分60の半径方向内側に向ける。さらに、バルーン20の球根状部分60は膨張して可撓性チューブ部材40を押圧し、可撓性チューブ部材40を血管80の真腔88の方へ撓ませる。可撓性チューブ部材40に対する球根状部分60の膨張によって、可撓性チューブ部材40の先端チップ42が、真腔88まで内膜層82を穿孔し、ルーメン38を通って前進させた長尺状の医療機器を真腔88に再入できるようにする。外側の外膜層86は内側の内膜層82よりも弾性が劣るため、バルーン20の膨張によって生成された力は、外側の外膜層86を伸張させるのではなく、内側の内膜層82に対して真腔88の方への第1の曲げまたは折り畳みを生じさせる。
【0032】
血管の管腔にある閉塞部、例えば慢性完全閉塞(CTO)に対して医療機器を通過させて血管を再開通させることが、望ましくなかったり、困難であったり、あるいは不可能な場合がある。そのような場合には、カテーテル10を使用して内膜下からアプローチすることによって血管を再開通させることが可能である。
図9〜14を参照すると、カテーテル10を使用して、閉塞した血管を再開通させる例示的な方法のいくつかの態様が示されている。
図9に示すように、ガイドワイヤー22を、最初は血管80の管腔88を通って、管腔88を詰まらせる閉塞部90の基端部に近接した位置まで前進させる。その後、ガイドワイヤー22を、閉塞部90の基端部に近接した位置で、内膜層82を貫通させて外側に、血管壁80へと入りこむように前進させる。ガイドワイヤー22の先端が内膜層82と外膜層86との間に配置された状態で、ガイドワイヤー22をさらに内膜下で先端方向へ前進させ、内膜層82と外膜層86との間に内膜下腔を形成する。
図10に示すように、ガイドワイヤー22の先端が、血管壁80の組織層の切開などによって形成された内膜下腔における、閉塞部90の先端部の先端側に配置されるまで、ガイドワイヤー22を内膜下で前進させる。
【0033】
その後、
図11に示すように、再開通カテーテル10を、閉塞部90の基端側の真腔88から、内膜層82と外膜層86との間の内膜下腔内へ、ガイドワイヤー22上を先端方向へ前進させて、内膜下腔内においてバルーン20を含むカテーテル10の先端部分が閉塞部90の先端部の先端側に配置される位置へと前進させる。再開通カテーテル10を、送達形態、例えばバルーン20が収縮して折り畳まれた形態で、主カテーテルシャフト12から延在する可撓性チューブ部材40に巻き付いた状態で、内膜下腔を通って前進させる。カテーテル10の先端チップ58が、血管の組織層の穿孔および/または切開を容易にするように構成されている場合は、先端チップ58の先のとがった剛性または穿孔特徴部を使用して、カテーテル10を先端方向へ前進させるときに、血管壁80の組織層を穿孔および/または切開する。
【0034】
バルーン20が閉塞部90の先端部の先端側に位置決めされた状態で、
図12に示すように、内膜層82と外膜層86との間に形成された内膜下腔においてバルーン20を膨張させる。バルーン20が膨張すると、バルーン20の翼62、64が広がって内膜層82と外膜層86との間で膨張して、バルーン20の球根状部分60の半径方向内側に可撓性チューブ部材40を向ける。さらに、バルーン20の球根状部分60が膨張して可撓性チューブ部材40を押圧して、血管80の真腔88の方へ可撓性チューブ部材40を撓ませる。可撓性チューブ部材40に対する球根状部分60の膨張によって、可撓性チューブ部材40の先端チップ42が内膜層82を穿孔し、その結果、真腔88に再入して、ルーメン38を通って前進させた長尺状の医療機器で、閉塞部90の先端側の真腔88に再入できるようにする。場合によっては、湾曲形態への可撓性チューブ部材40の湾曲を容易にするおよび/または強めるためにプルワイヤー70を作動させる。主カテーテルシャフト12の先端およびバルーン20を含む主カテーテルシャフト12の先端部分、ならびにガイドワイヤー22は、可撓性チューブ部材40を湾曲形態に撓ませて真腔88に入り込んだ後も、内膜下腔に配置されたままとなる。
【0035】
上述の通り、可撓性チューブ部材40が主カテーテルシャフト12に平行して延在する略軸方向に整列した形態から、可撓性チューブ部材40の先端部分が主カテーテルシャフト12の長手方向軸から離れるように湾曲する湾曲形態へと湾曲または撓むように、可撓性チューブ部材40を構成することが可能である。例えば、一部の実施形態では、
図12に示すように、可撓性チューブ部材40の先端部分は、約90°または90°超、例えば場合によっては約95°以上、約100°以上、または約105°以上の曲率の角度(すなわち、弧の角度)を有する湾曲形態へと湾曲または撓むことができる。
【0036】
その後、
図13に示すように、カテーテル10の装置送達ルーメン38を通って長尺状の医療機器100を前進させて、可撓性チューブ部材40から、可撓性チューブ部材40の先端チップ42の開口部を通って閉塞部90の先端側の真腔88に出るようにする。
図13に示す実施形態では、可撓性チューブ部材40は、その先端チップ42にあるルーメン38の先端開口部が基端方向に対面して、閉塞部90の先端部に対面するように、湾曲することができる。したがって、長尺状の医療機器100は、可撓性チューブ部材40から出ると、閉塞部90の先端部に向かって基端側に方向付けられるか、または前進させられる。長尺状の医療機器100が、アテレクトミー装置、針付きカテーテル、スタイレット、またはガイドワイヤーなどの閉塞横断デバイスである場合、長尺状の医療機器を、可撓性チューブ部材40のルーメン38の先端開口部から閉塞部90の先端部の方へ基端側に方向付けまたは前進させて、逆行して閉塞部90に入り込ませるか、またはそこを貫通させる。
【0037】
図13に示すように、場合によっては、長尺状の医療機器100は、閉塞部90に入り込むまたはそこを貫通するための切断用先端102が取り付けられた長尺状のシャフト104を有するアテレクトミー装置としてもよい。例えば、切断用先端102は、回転可能な切断用先端またはバー(burr)、例えばマイクロバー、拡張可能なバー、角度のつけられたバー、改良型のワイヤー先端バー、ダイヤモンドコートバー、または他の切断装置としてもよい。他の例では、切断用先端102は、閉塞部90を通る経路を焼灼するように構成されたアブレーション電極または超音波振動子であってもよい。
【0038】
閉塞部90の先端側の再入箇所から、逆方向に(すなわち基端方向に)長尺状の医療機器100(例えば閉塞横断デバイス)を閉塞部90の先端部まで前進させる。そのような方法においては、
図14に示すように、閉塞部90の先端部から基端部まで逆行させて、閉塞部90を通って長尺状の医療機器100を前進させて、閉塞部90を通る経路を形成して血管を再開通させ、かつ、閉塞部90を通る経路を提供し、そこを通って血液が流れるようにしてもよい。
【0039】
閉塞部90をそのように横断する逆行アプローチでは、流体の流れおよびそれに関連した環境をあまり気にしなくてもよい。例えば、閉塞部90の穿孔中または焼灼中に形成された塞栓は、アテレクトミー装置が閉塞部90を前進するとき、閉塞部90から先端側に流れる。
【0040】
他の実施形態では、
図15に示すように、内膜層82と外膜層86との間に形成された内膜下腔においてバルーン20を膨張させてもよく、可撓性チューブ部材40に対してバルーン20の球根状部分60を膨張させて、血管80の真腔88の方へ可撓性チューブ部材40を撓ませて、可撓性チューブ部材40を湾曲形態にする。可撓性チューブ部材40に対する球根状部分60の膨張によって、可撓性チューブ部材40の先端チップ42が内膜層82を穿孔するようにし、その結果、真腔88に再入して、ルーメン38を通って前進させた長尺状の医療機器を、閉塞部90の先端側で真腔88に再入できるようにする。場合によっては、プルワイヤー70を作動させて、湾曲形態へと可撓性チューブ部材40を湾曲させるのを容易にしおよび/またはその湾曲を強めてもよい。主カテーテルシャフト12の先端およびバルーン20を含む主カテーテルシャフト12の先端部分、ならびにガイドワイヤー22は、可撓性チューブ部材40が湾曲形態に撓んで真腔88に入り込んだ後も、内膜下腔に配置されたままであってもよい。
【0041】
あるいは、可撓性チューブ部材40に対する球根状部分60の膨張によって、可撓性チューブ部材40の先端チップ42を内膜層82の方へ向けるようにし、かつ、長尺状の医療機器、例えばガイドワイヤー、スタイレット、針、または他の装置を、可撓性チューブ部材40を通って前進させて内膜層82を穿孔し、閉塞部90から先端側の真腔88に再入するようにしてもよい。
【0042】
上述の通り、可撓性チューブ部材40が主カテーテルシャフト12に平行に延在する略軸方向に整列した形態から、可撓性チューブ部材40の先端部分が主カテーテルシャフト12の長手方向軸から離れる湾曲形態へ湾曲または撓むように、可撓性チューブ部材40を構成してもよい。例えば、
図15に示すように、可撓性チューブ部材40の先端部分が、90°未満の曲率の角度(すなわち、弧の角度)を有する湾曲形態に湾曲または撓むことにより、可撓性チューブ部材40の先端チップ42におけるルーメン38の先端開口部が、先端方向に対面する。
【0043】
その後、
図16に示すように、カテーテル10の装置送達ルーメン38を通って長尺状の医療機器100を前進させ、かつ、可撓性チューブ部材40の先端チップ42にある開口部を通して、可撓性チューブ部材40から、閉塞部90の真腔88に出るようにしてもよい。
図16に示す実施形態では、可撓性チューブ部材40の先端チップ42においてルーメン38の先端開口部が先端方向に対面し、その結果、閉塞部90の先端部から離れるように対面するように、可撓性チューブ部材40を湾曲させる。したがって、長尺状の医療機器100は、可撓性チューブ部材40から出ると、閉塞部90の先端部から離れるように、真腔88を通って先端方向に方向付けまたは前進させられる。
【0044】
閉塞部90を通る経路が形成されたら、閉塞部90を通って、および、内膜下トラック(subintimal track)を経由して閉塞部90を周ってのいずれかで、1つまたは複数の追加的な医療機器を、血管80を通って前進させて経路を拡大し、および/または、閉塞部90の先端方向へ通過させて別の医療処置を行うことも可能である。
【0045】
本開示の態様は、本明細書で説明しかつ考慮した特定の実施形態以外の様々な形態で示し得ることを、当業者は認識するであろう。それゆえ、形状および詳細における変形や変更は、添付の特許請求の範囲として説明される本開示の範囲および趣旨から逸脱することなくなされ得る。