特許第6408546号(P6408546)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホクシン産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6408546-燃料油移送装置 図000002
  • 特許6408546-燃料油移送装置 図000003
  • 特許6408546-燃料油移送装置 図000004
  • 特許6408546-燃料油移送装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408546
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】燃料油移送装置
(51)【国際特許分類】
   B67D 7/78 20100101AFI20181004BHJP
   B63B 11/04 20060101ALI20181004BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20181004BHJP
   B67D 7/82 20100101ALI20181004BHJP
【FI】
   B67D7/78 Z
   B63B11/04 B
   F02M37/00 301C
   F02M37/00 301J
   F02M37/00 P
   B67D7/82
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-244560(P2016-244560)
(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公開番号】特開2018-95311(P2018-95311A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】598063041
【氏名又は名称】ホクシン産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075144
【弁理士】
【氏名又は名称】井ノ口 壽
(72)【発明者】
【氏名】千々波 孝泰
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/047566(WO,A1)
【文献】 実開昭60−107402(JP,U)
【文献】 特開2003−97502(JP,A)
【文献】 特開平7−317614(JP,A)
【文献】 特開2005−297951(JP,A)
【文献】 特開2018−96350(JP,A)
【文献】 特開2018−96349(JP,A)
【文献】 特開2018−96348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 31/125
F02M 37/00
B63B 11/04
B63J 2/14
B63H 21/38
F15B 1/26
B67D 7/00−7/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油貯蔵タンクと、該燃料油貯蔵タンクから吸入された燃料油を加熱する燃料油澄タンクと、加熱された燃料油を前記燃料油貯蔵タンクに戻すために一時的に貯留する燃料油サービスタンクとを備えて前記燃料油を循環させることができる燃料油移送装置において、
前記燃料油貯蔵タンクは、底部に向け開口するベルマウスを有する吸入管と、前記燃料油貯蔵タンク内で部分的に他の空間と区分けされて前記吸入管を覆うことが可能な空間を形成する小区画と、を備え、
前記小区画は、空間を仕切る既存構造体として備えられている骨材が用いられ、該骨材同士は、中心位相を異ならせて輪郭が互いに交差しない位置に貫通穴が設けられていることを特徴とする燃料油移送装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃料油移送装置において、前記貫通穴同士は、垂直方向あるいは水平方向で中心位相を異ならせてあることを特徴とする燃料油移送装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の燃料油移送装置において、前記骨材の複数を選択することにより前記小区画の容積を決めることを特徴とする燃料油移送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油移送装置に関し、さらに詳しくは、内燃機関などに向け供給される燃料油を貯蔵するために用いられる燃料油貯蔵タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶や発電機などのボイラに用いられる燃料油は、燃料油貯蔵タンクから内燃機関に供給される。燃料油貯蔵タンクに収容される燃料油は、例えば安価なC重油が用いられる。
燃料油は、比較的温度による粘度の変化が大きい。そこで、粘度が低くなる温度を維持することが要求される。この要求を満たすために燃料油貯蔵タンク内の燃料油が加熱される構成が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図3は、燃料油を加熱する構成を用いる燃料油移送装置100を説明するための配管図である。
燃料油移送装置100は、例えば、船舶の底部近傍などに複数備えられている燃料油貯蔵タンク101と、移送ポンプ102を用いて燃料油貯蔵タンク101内から吸入される燃料油を加熱する燃料油澄タンク103と、加熱された燃料油を清浄化して一時的に貯留する燃料油サービスタンク104とを備えている。
燃料油サービスタンク104と燃料油貯蔵タンク101との間の油路には燃料油貯蔵タンク101に向けて加熱済みの燃料油を戻す流下ポンプ105が備えられている。図3中、符号106はヒータを、符号107,108はバルブを、符号109は温度センサをそれぞれ示している。
【0004】
燃料油澄タンク103において加熱された燃料油は、清浄化されてから燃料油サービスタンク104に向け移送され、燃料油澄タンク103およびまたは燃料油サービスタンク104から一部が燃料油貯蔵タンク101に向けて流下ポンプ105を介して小出しに戻される。
燃料油は、一時的に貯留されている燃料油サービスタンク104から船舶や発電機などに用いられる内燃機関等の主機あるいはその他の補機の燃料噴射装置に供給される。
燃料油貯蔵タンク101内に戻される加熱済み燃料油は、主機あるいは補機に供給される量に見合う量が戻され、タンク内の燃料油の一部と混合されてタンク内の部分的な燃料油を30〜40度に加熱する。
【0005】
燃料油貯蔵タンク101は、図4に示されているように、貯蔵されている燃料の一部を対象として加熱するためのボックス状小区画112を備えている。このボックス状小区画112は、貯蔵されている燃料油の温度分布が垂直方向で一様でなくなった場合に発生する移送効率の低下を防止する目的で設けられている。
すなわち、加熱済みの燃料油は加熱されていない燃料油に比べて比重が小さいことが原因して上昇しやすく、燃料油貯蔵タンク内の下側には温度が低く比重が大きい高粘度の燃料油が溜まりやすい。結果として、下側から燃料油を取り出す時には燃料油の粘度が高いことによって移送効率が悪化する。
ボックス状小区画112は、加熱済み燃料油の上昇を抑えて燃料油貯蔵タンク内の垂直方向での温度分布の変化を小さくすることができる。この結果、タンクの底部側から燃料油を取り出すときには、温度低下が少なく粘度の上昇が抑えられて移送効率を損ねない燃料油を取り出せる。
【0006】
図3に示す燃料油貯蔵タンク101に設けられる上述したボックス状小区画112の機能について説明する。
図4において燃料油貯蔵タンク101のボックス状小区画112は、底部近傍に開口を向けたベルマウス110に連通する吸入主管111を備えている。
吸入主管111は、ボックス状小区画112によって覆われている。ボックス状小区画112は、空間を仕切る任意の一側が底面側から上方に向けて切除された切り込み部112Aを有し、切り込み部112Aを用いて燃料油貯蔵タンク101の内部とボックス状小区画内部とが連通されている。
【0007】
ボックス状小区画112は、ベルマウス110から燃料油貯蔵タンク101内に戻された加熱済み燃料油が、ベルマウス110の位置から上昇して離れた位置に向けて流れるのを防ぐ。つまり、ベルマウス110を出た燃料油は、上昇するとボックス状小区画112の天井に衝突して跳ね返る。この結果、燃料油はボックス状小区画112内で乱流を起こしてボックス状小区画112の内部に止まれる。
また、ボックス状小区画112は、内部に溜まるエアを排出して燃料油の流入を許容するためのエア抜き穴112B1を天井に設けている。
【0008】
一方、加熱済み燃料油の流れをベルマウス110の周辺に集約させるための構成として、断面形状がT字状の衝立113を切り込み部112Aの近傍に配置する構成が提案されている(例えば、特許文献1)。
加熱済み燃料油は、ボックス状小区画112の天井に加えて衝立113の水平片113Aに衝突して乱流となり、ボックス状小区画112内での燃料油との混合性が高められる。この結果、ベルマウス110に吸入される燃料油と加熱済み燃料油との混合率が高められて燃料油の加熱効率が高められる。
【0009】
ボックス状小区画112を設けることは、上述したように、加熱済み燃料油を小スペースの空間内に止まらせることにより燃料油の混合率を高めることができ、燃料油の粘度上昇を抑える効果がある。
そこで、船舶などの構造体において新たに小区画を設けようとした場合、既存構造部であるフレームやビームさらには仕切り板などとの干渉を防ぎながら小区画を作らねばならない。しかも、既存構造部との干渉を避けられたとしても、新設のための材料の準備などが必要となり、簡単に小区画を新設あるいは追加することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3807596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、加熱済み燃料油を止まらせて燃料油の混合性を高めることができる小区画を容易に新設することができる構成を備えた燃料油移送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題を解決するために本発明は、底部に向け開口するベルマウスを有する吸入管と、燃料油貯蔵タンク内で部分的に他の空間と区分けされて前記吸入管を覆うことが可能な空間を形成する小区画を燃料油貯蔵タンク内に設ける際に、該小区画が、空間を仕切る既存構造体として備えられている骨材が用いられ、該骨材同士は、中心位相を異ならせて輪郭が互いに交差しない位置に貫通穴が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小区画を新設する場合、空間を仕切る既存構造体として用いられる骨材を用いることができるので、改めて小区画を設置するための材料を準備する必要がない。このため、小区画の新設や追加が簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る燃料油移送装置の構成を示す模式図である。
図2図1に示した燃料油移送装置の燃料油貯蔵タンクの構成を説明するための模式図である。
図3】従来の燃料油移送装置の構成を示す模式図である。
図4図3に示した燃料油貯蔵タンクに用いられる構成を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明を実施するための形態に係る燃料油移送装置1の構成を示す図である。
燃料油移送装置1は、燃料油貯蔵タンク2に連通する燃料油澄タンク3,燃料油サービスタンク4を備えている。
燃料油澄タンク3は、燃料油を加熱するために用いられるタンクであり、図示しないヒータにより、一例として70〜80℃の温度に燃料油が加熱される。
【0016】
燃料油貯蔵タンク2と燃料油澄タンク3とは移送管5によって連通されており、その途中には、移送ポンプ6、温度センサ7および圧力センサ8が配置されている。
温度センサ7は、例えば、移送ポンプ6の燃料油入り口側の温度を計測した結果に応じて燃料油澄タンク3に設けられているヒータのオンオフ制御や温度設定を行うために用いられる。
圧力センサ8は、移送ポンプ6内に吸入される燃料油の圧力変化を監視するために設けられている。圧力変化は、燃料油の粘度変化に応じた流動抵抗の変化を判断するために用いられる。特に、粘度が高くなり流動抵抗が増加した場合には、移送ポンプ6の入り口側の圧力が真空化傾向となる。従って、真空化傾向の圧力変化が検知されると燃料油の粘度を下げるための加熱が必要となる。
燃料油澄タンク3には、移送ポンプ6によって吸入された燃料油の液面を検知するためのレベルセンサ9が設けられている。
レベルセンサ9は、燃料油澄タンク3内に燃料油が所定量導入されたときの液面を検知できるセンサである。レベルセンサ9は、燃料油澄タンク3内に燃料油が所定量導入されたことを検知すると、移送ポンプ6の駆動を停止させるために用いられる。
【0017】
燃料油サービスタンク4は、加熱された燃料油を清浄化した後、一時的に貯留し、内燃機関等に向け燃料油を供給するために用いられるタンクである。燃料油貯蔵タンク2と燃料油サービスタンク4とは吸入管10により連通されており、その途中には、流下ポンプ11が配置されている。燃料油サービスタンク4に貯留されている燃料油の一部は流下ポンプ11によって燃料油貯蔵タンク2に流下されて燃料油貯蔵タンク2内の燃料油の温度を高める。
この場合にいう流下ポンプ11の名称は、燃料油サービスタンク4が燃料油貯蔵タンク2よりも高い位置に配置されている構成を前提としていることが理由である。つまり、上位の燃料油サービスタンク4から、これよりも下位の燃料油貯蔵タンク2に燃料油を流れ落とすように繰り出すことを意味させて流下という表現としている。
【0018】
図1に示す構成では、燃料油澄タンク3および燃料油サービスタンク4がそれぞれ吸入管10に連通された構成を採用している。従って、これら両方のタンク3,4あるいは何れかのタンクから燃料油貯蔵タンク2に向けた燃料油の流路が設定できるように各タンク3,4燃料油の出口の流路に弁12が設けられている。
【0019】
以上の燃料油移送装置1は、移送ポンプ6によって燃料油貯蔵タンク2から燃料油澄タンク3に吸入された燃料油が加熱され、加熱された燃料油が清浄化されたうえで燃料油サービスタンク4に導入され、貯留された燃料油が内燃機関等への供給に備えられる。
燃料油澄タンク3およびまたは燃料油サービスタンク4において一時的に貯留されている燃料油の一部は、流下ポンプ11によって燃料油貯蔵タンク2に戻される。この結果、燃料油貯蔵タンク2内の燃料油は加熱された燃料油と混合されることにより部分的に36〜40℃に加熱される。
【0020】
本実施形態においては、ポンプ同士の稼働時間として、例えば、移送ポンプ6が15分程度そして流下ポンプ11が45分程度を選択されて交互に稼働される。この時間のうちで移送ポンプ6の稼働時間は、例えば、前述した燃料油澄タンク3内のレベルセンサ9によって燃料油の液面が検知されるまでの時間に対応させることができる。つまり、移送ポンプ6の回転数、駆動電流等の定格に基づいた流量で燃料油を流したときの稼働時間内に燃料油の液面がレベルセンサ9によって検知されると燃料油の流動抵抗を生じない燃料油の粘度であると判断でき、この稼働時間を超える場合には燃料油の粘度が高く流動性が悪いと判断できる。また、レベルセンサ9は、燃料油澄タンク3内に導入される燃料油が所定量に達したことを検知すると、移送ポンプ6の稼働を停止させて燃料油が溢れるのを防止する。
なお、停泊中などのように燃料油の消費がないときは、移送ポンプ6の稼働時間が短く、レベルセンサ9が作動するまでの時間が例えば6分程度となる。
【0021】
移送ポンプ6を用いて燃料油貯蔵タンク2から燃料油澄タンク3に向けて燃料油を吸入するルートは、図1において符号F1〜F5で示されている。流下ポンプ11を用いて燃料油サービスタンク4から燃料油貯蔵タンク2に向け燃料油を流下させるルートは、図1において矢印F10〜F12で示されている。
このような構成を用いる燃料油移送装置1は、その主要部の構成が本出願人の先願である特開2012−17123号公報に開示されている。
【0022】
以上の構成を備えた本実施形態による燃料油移送装置1の特徴は、燃料油貯蔵タンクの構造にある。
すなわち、本実施形態による燃料油移送装置1は、図4に示したボックス状小区画と同様な機能を持つ小区画20(図2参照)を新設あるいは追加する場合に、新たな材料を準備することなく既存構造体を成す補強用骨材2A(図2参照)を利用する。
【0023】
図2は、本実施形態にかかる燃料油移送装置1の特徴を説明するための模式図である。
同図に示されているように、燃料油貯蔵タンク2は、詳細を図示しない船体の内部において船底あるいは船上甲板の下方に位置する空間により形成されている。
空間には、図2に示すように、複数の区切り板からなる補強用骨材2Aが設けられている。これら各補強用骨材2Aで区切られた空間を加熱済み燃料油が導入される小区画20として構成することができる。従って、補強用骨材2Aで区切られた空間の数を選択することによって小区画の容積を決めることができる。
補強用骨材2Aにより区切られている空間の一つには、その空間の底部に向け開口しているベルマウス2Bおよびこれに連通すると共に移送管5に接続された吸引主管2Cが配置されている。ベルマウス2Bは、加熱済み燃料油を小区画20の一つに導入するため、および小区画から燃料油を吸入するために用いられる。
【0024】
補強用骨材2A同士には、垂直方向あるいは水平方向で中心位相を異ならせるとともに、輪郭が交差しない位置に形成された貫通穴2A1が備えられている。図2において符号Hは、垂直方向での貫通穴2A1同士の中心位相が異なることを示している。中心位相を異ならせることにより隣り合う小区画から燃料油が流れやすくなるのを阻害することができる。特に輪郭が互いに交差しない位置にそれぞれ形成されることにより連通する箇所が存在しない。これにより、加熱済み燃料油がベルマウス2Bの近傍から遠ざかるのを抑えることができ、ベルマウス2Bにより吸入される燃料油の温度低下による粘度上昇が原因する移送効率の悪化を防ぐことができる。
貫通穴2A1は、通常、作業員が通過できる大きさの穴として設けられている。
各貫通穴2A1の中心位相に応じて、燃料油貯蔵タンク2の底部から高い位置にある場合には梯子2A2が設けられている。なお、図2において符号2Dは、エア抜き穴を示している。
【0025】
以上の構成による燃料油移送装置1は、加熱済み燃料油と燃料油との混合率を高めるために用いられる小区画を新設あるいは追加する場合に既存構造体である補強用骨材2Aをそのまま用いることができる。これにより、小区画の新設や追加に際して新たな材料を準備する必要がない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、ボックス状の小区画の新設あるいは追加に際して、既存構造体を利用することにより、新たに材料などの準備を行う必要がなく、簡単に新設あるいは追加を達成することができる。これにより燃料油貯蔵タンク内で加熱済み燃料油が拡散することが原因する温度低下を防いで燃料油の粘度上昇による移送効率の悪化を確実に阻止できる点で利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0027】
1 燃料油移送装置
2 燃料油貯蔵タンク
2A 補強用骨材
2A1 貫通穴
2B ベルマウス
2C 吸入主管
20 小区画
3 燃料油澄タンク
4 燃料油サービスタンク
5 移送管
6 移送ポンプ
H 中心位相が異なる距離
図1
図2
図3
図4