(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408553
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】接着PTFE電極を備えた磁気流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/58 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
G01F1/58 C
【請求項の数】20
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-501835(P2016-501835)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公表番号】特表2016-511426(P2016-511426A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】US2014025361
(87)【国際公開番号】WO2014159867
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】13/826,793
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(72)【発明者】
【氏名】スミス, ジョセフ アラン
(72)【発明者】
【氏名】インスト, ステファン リチャード
(72)【発明者】
【氏名】モラレス, ネルソン モーリシオ
【審査官】
細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04388834(US,A)
【文献】
特開2010−127939(JP,A)
【文献】
特開平09−166463(JP,A)
【文献】
実開昭60−168020(JP,U)
【文献】
欧州特許出願公開第00116875(EP,A1)
【文献】
特開昭59−168323(JP,A)
【文献】
特開昭63−081214(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/58
G01F 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプと、
前記パイプの外面に隣接して位置付けられた磁気コイルと、
前記パイプの内面を覆う非導電性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ライナと、
前記非導電性PTFEライナに結合された導電性PTFEパッチ電極であって、該パッチ電極の内端が非導電性PTFEライナの内面と面一にして前記パイプの内部に露出され、前記パッチ電極の外端が非導電性PTFEライナの外面と面一にして前記パイプの電極孔に合致されている、導電性PTFEパッチ電極と
を具備した磁気流量計。
【請求項2】
前記導電性PTFEパッチ電極は前記外端に螺子付き成形インサートを含む、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項3】
前記電極孔を貫通して延び、前記螺子付き成形インサートにねじ込まれることで、前記パッチ電極から前記パイプの外部の電気回路への電気接続を提供する電極延長部を更に具備する、請求項2に記載の磁気流量計。
【請求項4】
前記パッチ電極に埋設された第1端を有し、且つ、前記電極孔を貫通して第2端に延びる可撓性電気導体を更に具備する、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項5】
前記導電性PTFEパッチ電極は前記非導電性PTFEライナにPFAによって接着されている、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項6】
前記導電性PTFEパッチ電極は30KΩよりも小さい抵抗を有する、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項7】
前記パッチ電極の前記外端に結合された薄いPFA膜が前記パイプと前記パッチ電極とを電気的に絶縁する、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項8】
前記パッチ電極に係合するばね付勢プローブを有する電極延長部を更に具備する、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項9】
前記パッチ電極は円錐台形状を有する、請求項1に記載の磁気流量計。
【請求項10】
前記パッチ電極の前記内端は前記外端よりも小径である、請求項9に記載の磁気流量計。
【請求項11】
磁気流量計のためのライナ及び電極のアセンブリにおいて、
非導電性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ライナと、
前記非導電性PTFEライナに結合されて一体的なPTFEチューブを形成する第1及び第2導電性PTFEパッチ電極であって、前記導電性PTFEパッチ電極の内端及び外端が前記非導電性PTFEライナの内面及び外面と面一である、第1及び第2導電性PTFEパッチ電極と
を具備したライナ及び電極のアセンブリ。
【請求項12】
前記各PTFEパッチ電極は外端に螺子付き成形インサートを含む、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記螺子付き成形インサートに接続されて前記パッチ電極への電気接続を提供する電極延長部を更に具備する、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記パッチ電極に埋設された端を有した可撓性電気導体を更に具備する、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記導電性PTFEパッチ電極は前記非導電性PTFEライナにPFAによって接着されている、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記導電性PTFEパッチ電極は30KΩよりも小さい抵抗を有する、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記パッチ電極の外端を覆って接着された薄いPFA膜を更に具備する、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記パッチ電極と係合するばね付勢プローブを備えた電極延長部を更に具備する、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記パッチ電極は円錐台形状を有する、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項20】
前記パッチ電極の前記内端は他端よりも小径である、請求項19に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に流体の処理、特に流体の測定及び制御に関する。特に、本発明は磁気流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気流量計(又は磁気メータ)は、ファラデーの電磁誘導作用によって流体を測定する。流量計はコイル(単数又は複数)を励磁してパイプ部を横断する磁場を発生させ、該磁場はプロセス流体を横断する起電力(EMF)を誘起する。流速は誘起されたEMFに比例し、体積流量は流速及び流積に比例する。
【0003】
一般的に、流体の電磁測定技術は、水ベースの流体、イオン性溶液及びその他の導電性液体の流れに適用可能である。特定の用途には水処理設備、高純度な薬の製造、衛生的な
食品及び飲料の製造及び有害且つ腐食性のプロセス流を含む化学的処理が含まれる。また、磁気流量計は、研磨且つ腐食性のスラリーを利用した水圧破壊技術を含む炭化水素の燃料産業及びその他の炭化水素の抽出及び処理方法に用いられている。
【0004】
磁気流量計は、(例えば、オリフィスプレート又はベンチュリ管に沿う)圧力降下のために差圧ベースの技術が適しない適用分野にて、迅速且つ正確な流体の測定を提供する。また、磁気流量計は、タービンロータ、渦励振要素又はパイロット管等の機械要素内へのプロセス流体の導入が困難又は実施不能であるときに使用される。
【0005】
磁気流量計は、導管又はパイプを通じて流れる導電性の流体が該流量計によって発生された磁場内を通過して移動する際、流体の流れと直交する方向に流体を跨ぐ電圧を測定することで、流体の流量を決定する。電圧は2つの電極間で測定され、これら電極は流体と接触し且つパイプの両側に位置付けられている。パイプ壁は非導電性であるか又は導電性であるならば、流体の流れを跨いで発生される電圧の短絡を阻止するために、非導電性ライナを有していなければならない。
【0006】
磁気流量計は、プロセス流体から送信器に電圧を伝える電極を必要とする。電極に関して、ユーザが所望する鍵となる特性の幾つかは、低い輪郭(低ノイズ)、低コスト、材料の適合性、耐被覆性(非付着性)、そして、広い圧力及び温度での実行レンジである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
オイル及びガスの産業分野への磁気流量計の適用は、磁気流量計のライニング及び電極が高圧に晒されるために挑戦的なものとなる。このことは特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ライニングの場合である。何故なら、PTFEは「冷たい流れ」に対しては役立つものの、圧力及び温度の下で膨縮する。この結果、PTFEライナ及び電極が分離して、電極を汚すプロセス流体の漏れ経路が見出されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
磁気流量計はパイプを含み、該パイプはその内面に非導電性PTFEライナを備えている。非導電性PTFEライナには複数の導電性PTFEパッチ電極が接着され、各パッチ電極の内端はパイプの内部に露出し、各パッチ電極の外端はパイプの電極孔
に合致されている。
【0009】
ライナ及び電極アセンブリは、非導電性PTFEライナに接着された第1及び第2導電性パッチ電極を含む。パッチ電極の内端はライナの内面形状に一致している。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】導電性PTFEパッチ電極を備えたPTFEライナの斜視図である。
【
図3】PTFEライナ及び
図2の導電性PTFEパッチ電極の断面斜視図である。
【
図4】パッチ電極内に螺子付き成形インサートを備えたPTFEライナ及び導電性パッチ電極を示す断面図である。
【
図5】パッチ電極内に一部が埋設された可撓性回路リボンを備えたPTFEライナ及び導電性パッチ電極の断面図である。
【
図6A】パッチ電極に接触するばね付勢の電極延長部を備えたPTFEライナ及び導電性パッチ電極を示す図である。
【
図6B】パッチ電極に接触するばね付勢の電極延長部を備えたPTFEライナ及び導電性パッチ電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は磁気流量計10を示し、該磁気流量計10は主セクション(即ち、流路管)10A及び副セクション(即ち、送信器)10Bを含む。流路管10Aはパイプ12、絶縁ライナ14、電極16A,16B及び磁場コイル18A,18Bを有する。
【0012】
流路管10Aの主要機能は、測定される流体の速度に比例した電圧を発生することである。磁場コイル18A,18Bはこれらコイルを通じて電流が流れることで励磁されて磁場を発生する。コイル駆動電流の方向は周期的に逆転され、こにより、磁場コイル18A,18Bによって発生される磁場はその方向が変更される。流路管10Aの内部を通じて流れるプロセス流体は、流体内に電圧を誘起する流動導体として機能する。流路管10Aの内周面に面一にして取り付けられた電極18A,18Bは、導電性のプロセス流体に電気的に接触した状態にあり、流体に存在する電圧を取り出す。電圧の短絡を防止するため、流体は電気絶縁材料内に収容されていなければならない。パイプ12が金属管であるとき、絶縁はライナ14によって提供され、該ライナ14はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の非導電性材料である。
【0013】
送信器10Bは電極16A,16B間に発生した電圧を判断し、監視又は制御システムに標準化信号を送信する。送信器10Bは、信号処理装置20、デジタル処理装置22、コイルドライバ24及び通信インタフェース26を含む。信号の変換、調整及び送信は送信器10Bの基本的な機能である。
【0014】
コイル駆動電流(AC又はパルス化DC)はコイルドライバ24によってコイル18A,18Bに供給される。駆動電流はコイル18A,18Bを励磁し、プロセス流体を横断する磁場が発生される。磁場は電極16A,16Bによって検出可能なEMFを誘起する。流路管10Aを通じての流体の流速はEMFに比例する。
【0015】
信号処理装置20は電極16A,16Bに接続されている一方、アースされている。アース接続はパイプ12に対してなされるか、又は、フランジ或いは該パイプの上流又は下流のパイプ部分に対してなすこともできる。信号処理装置20は電極16Aでの電位VA、そして、電極16Bでの電位VBを監視する。信号処理装置20は電極16A,16B間の電位差を表す電圧を発生し、電極電圧を表すデジタル信号に変換する。デジタル処理装置22は信号処理装置20から受け取ったデジタル信号に信号処理及びグルーミングを更に実行する。デジタル処理装置22は、流体に関する測定値を通信インタフェース16に供給し、該通信インタフェース26はその値を監視又は制御システム(図示しない)に伝達する。通信インタフェース26による伝達は、4〜20mA間で変化するアナログの電流レベル、デジタル情報が4〜20mAの電流で調整されるHART(登録商標)通信プロトコル、デジタルバス上でのフィールドバス(Fieldbus)又はプロフィバス(Profibus)通信プロトコル、又は、例えばワイヤレスハート(WirelessHART(IEC62951))等の無線プロトコルを使用した無線ネットワーク上での無線通信の形態をとることができる。
【0016】
耐久性及び化学的な攻撃に対する優れた耐性を得るため、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は磁気流量計のライナにとって一般的な材料選択である。磁気流量計へのPTFEライナの使用が挑戦されたとき、ライナが電極に対して位置ずれし、電極回りでのプロセス流体の漏れ又は導電性パイプの壁に対する電極の短絡を発生させる可能性がある。これらの課題は、オイル及びガスの産業分野で要求されている高圧仕様の磁気流量計にとって特に挑戦的なものとなる。PTFEは圧力及び温度下にて膨縮し、電極アセンブリに対するPTFEライナの位置ずれは問題となる。
【0017】
本発明は、非導電性PTFEライナに接着された導電性PTFEパッチ電極を使用した解法を提供することにある。導電性PTFEパッチ電極は炭素粒子(グラファイト)で含浸され、30KΩよりも小さい抵抗を有する。導電性PTFEパッチ電極は非導電性PTFEライナの孔に合致する形状を有することができ、これにより、導電性PTFEパッチ電極は、その内端面がPTFEライナの内面形状に一致し、その外端面がPTFEライナの外面形状に一致した状態で、孔内に密嵌する。導電性PTFEパッチ電極及び非導電性PTFEライナは接着剤としてのPFAを使用して一緒に接着可能である。これらは全体として、磁気流量計を貫通するポリマ製の単一の流路隔壁を形成する。PTFEパッチ電極及びPTFEライナは互いに接着されて一緒に動き、冷たい流れが漏れを引き起こすことはない。
【0018】
図2及び
図3は本発明の一実施形態を図解する。
図2において、PTFEパッチ電極30は非導電性PTFEライナ14内に示されている。
図3はライナ14及びパッチ電極30での拡大断面図を示す。本実施形態において、パッチ電極30はライナ14のテーパ孔32に合致する円錐台形状を有する。パッチ電極30の内端34は細い側の端となり、ライナ14の内面と面一である。パッチ電極30の外端3
3はライナ14の外面40と面一である。薄いPFA層42は孔32の壁を一面に覆い、パッチ電極30の周壁と孔32の壁との間の接着剤として働く。
【0019】
本実施形態において、薄いPFA層はパッチ電極30の外端3
3及びライナ14の外面の一部を覆い、パッチ電極30の外端を囲んでいる。層44は導電性パッチ電極30を覆う絶縁隔壁として働き、これにより、パッチ電極30はパイプ12の導電性内壁に対して短絡しない。
【0020】
パッチ電極30とパイプ12の外面との間には電気的な接続が提供されなければならない。該電気的な接続は多様に異なるやり方で提供可能である。
図4は、ライナ14及び互いに180°離れて位置付けられたパッチ電極30A,30Bの断面図である。
【0021】
本実施形態において、パッチ電極30Aは螺子付き成形インサート50Aを含み、パッチ電極30Bは螺子付き成形インサート50Bを含む。ライナ14がパイプ12内に位置付けられ、そして、パッチ電極30A,30Bはパイプ12を貫通する電極孔(又はトンネル)に合致される。パッチ電極30A,30Bへの電気接続は電極延長部51A,51Bを介してなされ、これら電極延長部51A,51Bは電極孔を貫通して延び、インサート50A,50Bにそれぞれねじ込まれる。
【0022】
図5は他の実施形態を図解する。可撓性回路リボン52A,52Bは、パッチ電極30A,30Bに埋設された一端をそれぞれ有する。可撓性回路リボン52A,52Bはパイプ12内の電極孔を貫通して延び、電極30A,30Bへの電気接続をそれぞれ提供する。
【0023】
図6A及び
図6Bは他の実施形態を示し、ここでは、電極延長部54がばね付勢されたピン又はプローブ56を含み、該ピン又はプローブ56がパッチ電極30との接触をなす。ピン56は
図6Aに見ることができ、
図6Aは低い圧力/温度の条件下での電極延長部54、ライナ14及びパッチ電極30の相対位置を示す。
図6Bは高い圧力/温度の条件の下でのライナ14、パッチ電極30及び電極延長部54を示す。
【0024】
図6Aは単一のばね付勢ピン(ピン56)を備えた電極延長部54を示しているが
他の実施形態では、パッチ電極30との接触面積を増加させるため、多数のばね付勢ピンを使用することもできる。
【0025】
パッチ電極30との電気的な接触をなすには、パッチ電極30とパイプを貫通する電極孔又はトンネルと
が合致(アライメント)されていなければならない。パイプ12内にライナ14を挿入する前には、パッチ電極30A,30Bの外端3
3を覆うPFA保護層44の小さな領域がパッチ電極30A,30Bと電極延長部54A,54Bとの間の電気的な接続を高めるために除去可能である。
【0026】
非導電性PTFEライナの孔に接着された導電性PTFEパッチ電極の使用は、多くの重要な利点を提示する。第1に、PTFEパッチ電極はライナに嵌合し、パッチ電極の内面はライナの内面に合致する。このような低い輪郭をなす電極の幾何学的構成は流体が完全に乱されないことを意味する。このことは、ノイズを低減し、流量計の正確さを改善する。第2に、導電性PTFEパッチ電極は非導電性PTFEライナに接着され、流量計を通じて流れるプロセス流体に対する不浸透性隔壁を形成する。全体として、パッチ電極及びライナは漏れの観点からみて事実上分離不能である。
【0027】
本発明は例示の実施形態を参照して記述されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、多様な変更が可能で、そして、構成要素の等価物への置換が可能であることを当業者は理解している。付け加えて、本発明の本質の範囲を逸脱することなく、特別な状況な状況や材料に本発明の教示を適応させるべく多様な改良をなすことができる。それ故、本発明は開示された特定の実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲内の全ての実施形態を含むものである。