特許第6408574号(P6408574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6408574ネブライザにおいて使用するメッシュ、及びこのメッシュを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408574
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ネブライザにおいて使用するメッシュ、及びこのメッシュを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20181004BHJP
   B05B 1/14 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
   A61M11/00 300Z
   !B05B1/14 Z
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-528630(P2016-528630)
(86)(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公表番号】特表2016-525407(P2016-525407A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】IB2014063121
(87)【国際公開番号】WO2015011608
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年7月6日
(31)【優先権主張番号】13306051.7
(32)【優先日】2013年7月22日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】ハイルケマ マルカス
(72)【発明者】
【氏名】プリットチャード ジョン ニゲル
(72)【発明者】
【氏名】サンダース レナタス ヘンドリカス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル シャフト ヨハネス クリスティアーン
【審査官】 杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−508078(JP,A)
【文献】 特開平04−100557(JP,A)
【文献】 特開2005−296737(JP,A)
【文献】 特開2008−132495(JP,A)
【文献】 特開昭59−052562(JP,A)
【文献】 特開2010−167272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
B05B 1/00− 3/18
B05B 7/00− 9/08
B05B 17/00−17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネブライザにおいて液滴を形成するのに使用するメッシュにおいて、前記メッシュは、
−貫通している複数の穴を持つ、第1の材料から作られる第1の部分、及び
−前記第1の部分と接触している、第2の材料から作られる第2の部分であり、前記第2の部分は、貫通している対応する複数の穴を持ち、前記第2の部分にある前記複数の穴は、前記メッシュの排出側に向けてノズルを形成する、第2の部分
を有し、前記第1の材料は前記第2の材料より高密度であり、
前記第1の材料から作られる前記第1の部分にある前記複数の穴は、前記メッシュの吸入口を形成する第1の開口である、
前記第2の材料から作られる前記第2の部分にある前記複数の穴は、前記メッシュの排出口を備える前記ノズルを形成する第2の開口である、
前記第2の部分は、前記吸入口と前記排出口との間に遷移部を備える、及び
前記排出口は、前記吸入口より小さい、
メッシュ。
【請求項2】
前記ノズルを形成する前記第2の開口は、流れる方向に減少する幅を有する先細る断面を持つ、及び
前記第2の材料は、前記ノズルの口を形成する、増大する材料の厚さを備える、
請求項1に記載のメッシュ。
【請求項3】
前記第1の材料から作られる前記第1の部分にある前記複数の穴は、第1の開口径を持つ第1の穴形状を備える、
前記第2の材料から作られる前記第2の部分にある前記複数の穴は、第2の開口径を持つ第2の穴形状を備える、
前記第2の開口径は、前記第1の開口径よりも小さい、並びに
前記第1の部分にある前記複数の穴は、第1の供給口を備える、及び前記第2の部分にある前記複数の穴は、前記第1の供給口より下流に配される第2の排出口としてノズルを設ける、
請求項1又は2に記載のメッシュ。
【請求項4】
前記第1の材料は、8g/cmより高い及び/又は22g/cmより低い密度を持つ材料である、及び/又は
前記第2の材料は、0.8g/cmより高い及び/又は3g/cmより低い密度を持つ材料である、
請求項1乃至3の何れか一項に記載のメッシュ。
【請求項5】
i)前記第1の材料は、金属又は金属合金である、及び/又は
ii)前記第2の材料は、シリコン、ポリマー又はエポキシである
と規定される請求項1乃至4の何れか一項に記載のメッシュ。
【請求項6】
i)前記第1の材料は、ステンレス鋼、プラチナ、コバルト、金、タングステン又はニッケルパラジウムである、及び/又は
ii)前記第2の材料は、ポリカーボネート又はポリイミドである、
と規定される請求項5に記載のメッシュ。
【請求項7】
前記第2の部分にある前記複数の穴は、前記第1の部分にある前記穴の直径と概ね同じである直径から、前記メッシュの前記排出側においてより小さな直径に先細る直径を持つ、
請求項1乃至の何れか一項に記載のメッシュ。
【請求項8】
前記第1の材料は、前記複数の穴を有する層又はプレートとして設けられ、前記第2の材料は、前記第1の部分の前記穴に少なくとも部分的に置かれる複数のインレーとして設けられ、各インレーは、前記第1の材料にある前記穴の1つを一部満たし、前記第2の材料で形成されるノズルを持つ、及び/又は
前記第1の材料は、前記複数の穴を有する第1の層又はプレートとして設けられ、前記第2の材料は、前記ノズルが形成される第2の層又はプレートとして設けられる、
請求項1乃至の何れか一項に記載のメッシュ。
【請求項9】
前記第1の部分は、前記ネブライザに共振空洞を作るのに十分な質量を持つ、及び/又は
前記第1の部分は、少なくとも0.04g/cmの単位面積当たりの質量を持つ、
請求項1乃至の何れか一項に記載のメッシュ。
【請求項10】
ネブライザのユーザが排出口を介して息を吸うとき、空気が吸入口及び前記排出口を介して、前記ネブライザに流入し、通過して、前記ユーザの身体内に流れるように配される前記吸入口及び前記排出口を持つ本体を有するネブライザにおいて、
前記排出口は、マウスピース又は顔若しくは鼻マスクの形状で、又は別個の交換可能なマウスピース又は顔若しくは鼻マスクに接続されるのに適した形状で設けられる、
前記吸入口と前記排出口との間に、液体を蓄えるための噴霧室をさらに有する、及び
前記ネブライザは、薬剤又は薬物をユーザに送るために前記ユーザが息を吸うとき、微細な液滴が前記ネブライザに流入した空気と混合するような、請求項1乃至の何れか一項に記載のメッシュを備える、
ネブライザ。
【請求項11】
ネブライザにおいて液滴を形成するのに使用するメッシュを製造する方法において、
a)貫通して形成される複数の穴を持つ、第1の材料から作られる第1の部分を設けるステップ、
b)前記メッシュの排出側に向けてノズルを形成するために、前記第1の材料よりも低密度の第2の材料から作られる第2の部分を使用するステップであり、前記第2の部分は、前記第1の部分と接触して置かれ、前記第2の部分は、貫通して形成される対応する複数の穴を持つ、ステップ
を有する方法であり、
前記貫通して形成される複数の穴を持つ、前記第1の材料から作られる第1の部分を設ける前記ステップは、
−前記メッシュの吸入口を形成する第1の開口として、前記第1の材料から作られる前記第1の部分に前記複数の穴を設けるステップ、
を有する、
前記貫通して形成される複数の穴を持つ、前記第2の材料から作られる第2の部分を使用する前記ステップは、
−前記メッシュの排出口を備えるノズルを形成する第2の開口として、前記第2の材料から作られる第2の部分に前記複数の穴を設けるステップ、
を有する、並びに
前記第2の部分は、前記吸入口と前記排出口との間に遷移部を備え、及び
前記排出口は、前記吸入口より小さい、
方法。
【請求項12】
前記貫通して形成される複数の穴を持つ、前記第1の材料から作られる第1の部分を設ける前記ステップは、
a1)前記第1の材料から作られる第1の部分を設けるステップ、及び
a2)前記第1の部分を貫通する複数の穴を形成するステップ
を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
i)ステップb)において、流れる方向に減少する幅を持つ先細る断面を持つ前記ノズルを形成する前記第2の開口が設けられ、
ステップb)において、前記第2の材料は、前記ノズルの口を形成する増大する材料の厚さを備える、及び/又は
ii)ステップa)において、前記第1の材料から作られる、前記第1の部分にある前記複数の穴は、第1の開口径を持つ第1の穴形状を備え、
ステップb)において、前記第2の材料から作られる、前記第2の部分にある前記複数の穴は、第2の開口径を持つ第2の穴形状を備え、前記第2の開口径は、前記第1の開口径より小さい、
ステップa)において、前記第1の部分にある前記複数の穴は、第1の供給口を備える、及び
ステップb)において、前記第2の部分にある前記複数の穴は、前記第1の供給口より下流に配される第2の排出口として前記ノズルを備える、
と規定される請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の部分を設けるステップは、前記第1の材料の層又はプレートを設けるステップを有する、
請求項11乃至13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の材料は、複数の穴を有する層又はプレートとして設けられる、及び
前記第2の材料は、前記第1の部分の前記穴に少なくとも部分的に置かれる複数のインレーとして設けられ、各インレーは、前記第1の材料にある前記穴の1つを一部満たし、前記第2の材料で形成されるノズルを有する、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記メッシュの排出側に向けてノズルを形成するために第2の部分を使用する前記ステップは、
b1)前記第2の材料の層又はプレートと設けるステップ、
b2)前記第2の材料で前記対応する複数の穴を形成するステップ、及び
b3)前記第1の部分を前記第2の部分に接合又は付着するステップ、
を有し、及び/又は
前記メッシュの排出側に向けてノズルを形成するために第2の部分を使用する前記ステップは、
b4)前記第1の部分にある前記複数の穴を前記第2の材料で満たすステップ、及び
b5)前記第2の材料で前記複数の穴を形成するステップ、
を有する請求項11乃至15の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネブライザに蓄えられる液体を噴霧して、微細な液滴にするネブライザにおいて使用するメッシュに関し、特に必要な範囲内にある出口直径を持つ複数のノズルを持つメッシュ、及び上記メッシュを製造する方法、並びにネブライザに関する。
【背景技術】
【0002】
ネブライザ、又は時には噴霧器と呼ばれ、液体から微細なスプレー又はエアロゾルを発生させる装置である。ネブライザにとって特に有用な応用は、吸入により患者に投与するための、溶解若しくは浮遊した微粒子状の薬物を含む微細なスプレーを供給することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圧電メッシュに基づくネブライザ(その1つの種類は、圧電素子及びメッシュからなる"平板"形状を使用してエアロゾルを生成する)は、上記薬物送達装置においてエアロゾルを発生させるのに通例は使用され、それにより、圧電素子はメッシュを用いて液体を振動させ、微細なエアロゾルのスプレーを生成する。メッシュは多数(例えば5000から15000個)の小さなノズル又は穴を含み、液滴を形成するために、液体がこれらノズル又は穴を通ることができる。メッシュはノズルプレート、開口プレート又は膜としても知られている。
【0004】
図1は、例示的なネブライザ2を示す。このネブライザ2は、ネブライザ2のユーザが排出口8を介して息を吸うとき、空気が吸入口6及び排出口8を介して、ネブライザ2に流入し、通過して、ユーザの身体内に流れるように配される吸入口6及び排出口8を持つ本体4を有する。排出口8は通例、マウスピース又は顔若しくは鼻マスクの形式で、又は別個の交換可能なマウスピース又は顔若しくは鼻マスクに接続するのに適した形式で設けられる。
【0005】
ネブライザ2は、吸入口6と排出口8との間に、噴霧される(すなわち、微細なミスト又はスプレーにされる)液体12、例えば薬剤又は薬物を蓄えるための噴霧室10を有する。ネブライザ2は、薬剤又は薬物をユーザに送るためにユーザが息を吸うとき、液体12の微細な液滴がネブライザ2に流入した空気と混合するように構成される。
【0006】
例えば圧電素子のようなアクチュエータ14は、噴霧室10に蓄えられる液体12を攪拌又は振動させるために、噴霧室10のある壁部に沿って設けられる。メッシュ16は、噴霧室10においてアクチュエータ14の向かい側に位置決められ、噴霧される液体12がアクチュエータ14とメッシュ16との間の空洞に保持される。メッシュは、多数のノズルを有し、液体12がこれらノズルを通過して、液滴を形成する。メッシュ16は、液体12及びアクチュエータ14に面している吸入側18と、液体12の液滴が現れる、吸入側18の反対側にある排出側20とを持つ。
【0007】
図1に示されていなくても、ネブライザ2は、他の噴霧される液体を保持する及び必要な量の液体12が噴霧室10に維持されるように噴霧室10に接続される貯留槽を有してもよい。
【0008】
アクチュエータ14は、液滴を作るためにメッシュ16にあるノズルを介して液体12を押す超音波圧力波を液体12に作るように動作する。
【0009】
患者は一般に、特定の治療投与において一定量の薬剤を投与しなければならないので、治療時間は主にネブライザにより発生する液滴の質量流量により決定される。特に、投薬量が多い新しい薬剤、例えば生物製剤にとって、治療時間は、現在利用可能なネブライザを用いて数時間にまでなり得る。
【0010】
息を吸うとき、薬が治療効果を持つように、及び特に薬が肺に蓄積されるようにするために、薬のエアロゾルの液滴のサイズは、治療上狭い範囲内にしなければならない。薬が肺の一部に蓄積される液滴のサイズが決定される。図2のグラフは、粒子のサイズが口及び喉、気道並びに肺胞領域における蓄積率にどの位影響しているかを示す。
【0011】
薬が肺の奥深くに蓄積され、口及び喉の蓄積が最小となる場合、1−5μmのサイズの枠であることが図2から分かる。多くの医用応用にとって、5μmの質量中央径(MMD)が液滴の上限と考えられる。5μmのMMDは、薬物の50%が5μmより小さな液滴で含まれることを意味している。
【0012】
メッシュにより形成される液滴のサイズは、ノズルの出口直径(すなわちメッシュの液滴が現れる側、すなわち図1のネブライザ2のメッシュ16の排出側にあるノズルの直径)により決められる。液滴の直径は、図3に示されるようにノズルの出口直径dの凡そ2倍である。これは、メッシュ16が2.5μmの平均出口直径を持つノズルを持つべきことを意味している。
【0013】
簡略化したモデルにおいて、全ノズルは、アクチュエータ14の各サイクル中に1つの液滴を作る。故に、より大きな液滴は、ネブライザ2からのより高い質量流量となる。
【0014】
ロバストな製品にとって、一定のアクチュエータ振動周波数でのエアロゾルの質量流量の製品毎の変動は低くなるべきである。故に、この出力変動に制限を規定することは、ノズルの出口直径に関する許容変動に影響を与える。
【0015】
ある実施例において、質量流量に関し±25%の変動が許容可能であると仮定される。圧力波の度にノズル毎に1つの液滴が作られると仮定すると、質量流量は、ノズルの出口直径dの3乗に依存する液滴の体積Vdrop(Vdrop=(4π/3)・(d/2))に依存している。液滴の質量の25%の変化は従って液滴の直径の7.7%の変化に対応している。
【0016】
液体の1分当たりのグラム数に関してエアロゾルの出力は、規定制限内の1.64(90%)の標準偏差であるとみなすと仮定される。液滴のサイズに関し許される標準偏差σdropは、7.7/1.64=4.7%である。液滴の直径ddropがある定数cで乗算されたノズルの出口直径dと等しいと仮定すると、σdrop=c・σnozzleである。2.5μmの出口直径を持つノズルにより4.5μmの直径を持つ液滴が生成されると仮定すると、ノズルの出口直径dの0.065μmの変動である2.6%が得られる。従って、ノズルの出口直径dに厳密な許容誤差が存在する。
【0017】
ノズルの出口直径dの厳密な許容誤差に加え、メッシュ16は、効果的に動作するために、単位面積当たり一定の質量を持つ必要がある。メッシュ16の質量は、(図1にtmeshと示される)メッシュ16の厚さが(図1にtseparationと示される)アクチュエータ14からのメッシュ16の距離間隔よりも大幅に小さいと考えられる必要がある。アクチュエータ14により発生する圧力波がメッシュ16により反射され、アクチュエータ14に戻される場合、共振空洞が作られる。反射される圧力波は、圧力をさらに増大させるのに役立ち、エネルギーをシステム内に保持し、アクチュエータ14により液体に入力される必要があるエネルギーを僅かにする。場合によっては、単位面積当たり0.04グラム/cmの質量を持つメッシュ16がこの共振空洞を作るのに十分である。
【0018】
しかしながら、メッシュ16の厚さは小さくすべきであるという付加制約によって、メッシュ16の単位面積当たりの質量は、例えばステンレス鋼、プラチナ又はニッケルパラジウムのような高密度の金属からメッシュ16を形成することにより通常は唯一達成されることができる。
【0019】
従って、メッシュ16は、ノズルの出口直径に厳密な許容誤差を及び共振空洞を作るのに十分なメッシュの単位面積当たりの質量を用いて作られるべきであるという問題がある。加えて、メッシュ16は一般にネブライザの交換可能な部分であるため、このメッシュ16を製造するコストは低くなるべきである。現在市場にある製品は、(プラチナ又はニッケルパラジウムを使用する)電鋳法(electroformation)又は(ステンレス鋼に)レーザー穴あけ(laser-drilling)を使用して、メッシュ16を作っている。しかしながら、必要なノズルの出口直径及びこの直径の変動は、これらの技術を用いて達成するには難しく、0.065μmの標準偏差が達成される場合、製造工程による低い収益及び高コストとなる。
【0020】
従って、ノズルの出口直径に厳密な許容誤差を及び共振空洞を作るのに必要とされるメッシュの単位面積当たりの質量を持ち、高い収益の製造工程を用いて低いコストで製造され得るメッシュの必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、独立請求項の内容により解決され、他の実施例は、従属請求項に含まれている。本発明の以下に説明する態様は、ネブライザにおいて液滴を形成するのに使用するメッシュ、並びにネブライザにおいて液滴を形成するのに使用するメッシュを製造する方法にも応用することに注意すべきである。
【0022】
本質的により正確な製造方法を用いて、他の種類の材料でノズルの出口直径の厳密な許容誤差を達成することが可能であることは分かっている。例えば、化学エッチングするシリコンのノズル又はレーザーエッチングするポリマーのノズルは、前記要求される許容誤差を満すが、これらの材料から作られるメッシュは、質量の要件を満たすほどの十分な高密度ではない。
【0023】
故に、本発明に従って、2つの異なる種類の材料からの有用な特性が組み合わされてメッシュを形成するハイブリッド形状を有するメッシュを提供する。特に、メッシュのある部分は、必要なメッシュの単位面積当たりの質量を提供する第1の材料から作られる及びメッシュのもう1つの部分は、必要な出口直径を持つノズルを形成するのに使用される(第1の材料より低密度の)第2の材料から作られる。
【0024】
特に、本発明の第1の態様に従って、ネブライザにおいて液滴を形成するのに使用するメッシュを提供し、このメッシュは、貫通する複数の穴を持つ、第1の材料から作られる第1の部分、及びこの第1の部分と接触している第2の材料から作られる第2の部分を有し、第2の部分は、貫通する対応する複数の穴を持ち、第2の部分にある前記複数の穴は、メッシュの排出側に向けてノズルを形成し、前記第1の材料は前記第2の材料より高密度である。
【0025】
例に従って、第1の材料から作られる第1の部分にある複数の穴は、メッシュの吸入口を形成する第1の開口である。第2の材料から作られる第2の部分にある複数の穴は、メッシュの排出口を備えるノズルを形成する第2の開口である。第2の部分は、吸入口と排出口との間に遷移部を備える。排出口は、吸入口よりも小さい。
【0026】
例に従って、ノズルを形成する第2の開口は、流れる方向に減少する幅を持つ先細る断面を持つ。第2の材料は、ノズルの口を形成する増大する材料の厚さを備える。
【0027】
例に従って、第1の材料から作られる第1の部分にある複数の穴は、第1の開口径を持つ第1の穴形状を備える。第2の材料から作られる第2の部分にある複数の穴は、第2の開口径を持つ第2の穴形状を備える。第2の開口径は、第1の開口径より小さい。第1の部分にある複数の穴は、第1の供給口を備え、第2の部分にある複数の穴は、第1の供給口より下流に配される第2の排出口としてノズルを備える。
【0028】
例に従って、第1の材料は、8g/cmより高い及び/又は22g/cmより低い密度を持つ材料である。
【0029】
例に従って、第1の材料は、金属又は金属合金とすることができる。特に、第1の材料は、ステンレス鋼、プラチナ、コバルト、金、タングステン又はニッケルパラジウムとすることができる。
【0030】
例に従って、第2の材料は、0.8g/cmより高い及び/又は3g/cmより低い密度を持つ材料である。
【0031】
例に従って、第2の材料は、シリコン、ポリマー又はエポキシとすることができる。特に、第2の材料は、ポリカーボネート、ポリイミド又はエポテック(登録商標)353NDとすることができる。
【0032】
例において、各ノズルは、メッシュの排出側に既定の範囲内にある直径を持つ。
【0033】
例に従って、第2の部分にある複数の穴は、第1の部分にある穴の直径と概ね同じである直径から、メッシュの排出側に既定の範囲内にある直径に先細る直径を持つ。
【0034】
第2の部分の第2の材料は従って、ノズルを形成するのに第1の材料よりも多く貢献している。簡単に言うと、第1の材料は、基礎構造を提供するのに用いられるが、第2の材料は、正確なノズルの形状、寸法及び位置を提供するのに用いられる。
【0035】
幾つかの実施例において、第1の部分は第1の材料からなる層又はプレートである。
【0036】
幾つかの実施例において、第2の部分は第2の材料からなる層又はプレートである。
【0037】
幾つかの実施例において、第2の材料からなる層又はプレートは、第1の材料からなる層又はプレートに接合又は付着される。
【0038】
代替実施例において、第2の部分は、第1の部分の穴に置かれる第2の材料を有する。
【0039】
幾つかの実施例において、第1の部分にある複数の穴は、概ね一様な直径又はメッシュの吸入側にある直径から、メッシュの他方の側にあるより小さな直径に先細る直径を持つ。
【0040】
例に従って、第1の材料は、複数の穴を有する層又はプレートとして設けられ、第2の材料は、第1の部分の穴に少なくとも部分的に置かれる複数のインレー(inlay)として設けられ、各インレーは、第1の材料にある穴の1つを一部満たし、第2の材料で形成されるノズルを持つ。
【0041】
例に従って、第1の材料は、複数の穴を有する第1の層又はプレートとして設けられ、第2の材料は、そこにノズルか形成される第2の層又はプレートとして設けられる。
【0042】
例に従って、第1の部分は好ましくは、ネブライザにおいて共振空洞を作るのに十分な質量を持つ。
【0043】
例に従って、それに加え若しくはその代わりに、第1の部分は、少なくとも0.04g/cm2の単位面積当たりの質量を持つ。
【0044】
本発明の第2の態様に従って、上述したようなメッシュを有するネブライザを提供する。
【0045】
例に従って、ネブライザは、ネブライザのユーザが排出口を介して息を吸うとき、空気が吸入口及び排出口を介して、ネブライザに流入し、通過して、ユーザの身体内に流れるように配される吸入口及び排出口を持つ本体を有する。排出口は、マウスピース又は顔若しくは鼻マスクの形式で、又は別個の交換可能なマウスピース又は顔若しくは鼻マスクに接続するのに適した形式で設けられる。さらに、吸入口と排出口との間に、液体を蓄えるための噴霧室が設けられる。ネブライザは、薬剤又は薬物をユーザに送るためにユーザが息を吸うとき、微細な液滴がネブライザに流入した空気と混合するような、上述したメッシュと共に構成される。
【0046】
本発明の第3の態様に従って、ネブライザにおいて液滴を形成するのに使用するメッシュを製造する方法を提供する。この方法は、貫通して形成される複数の穴を持つ、第1の材料から作られる第1の部分を設けるステップa)及びメッシュの排出側に向けてノズルを形成するために、第1の材料より低密度の第2の材料から作られる第2の部分を使用するステップb)を有し、第2の部分は第1の部分と接触して置かれ、第2の部分は、貫通して形成される対応する複数の穴を持つ。
【0047】
例において、第1の材料は、8g/cmより高い及び/又は22g/cmより低い密度を持つ材料である。第1の材料は金属又は金属合金とすることができる。特に、第1の材料は、ステンレス鋼、プラチナ、コバルト、金、タングステン又はニッケルパラジウムとすることができる。
【0048】
例に従って、貫通して形成される複数の穴を持つ、第1の材料から作られる第1の部分を設ける前記ステップは、
a1)第1の材料から作られる第1の部分を設けるステップ、及び
a2)第1の部分を貫通する複数の穴を形成するステップ
を有する。
【0049】
幾つかの実施例において、第1の部分を貫通する複数の穴を形成する前記ステップは、レーザー穴あけを使用するステップを有する。
【0050】
代替実施例において、第1の部分を設ける前記ステップは、電鋳法を使用するステップを有する。
【0051】
例において、第2の材料は、0.8g/cmより高い及び/又は3g/cmより低い密度を持つ材料である。第2の材料は、シリコン、ポリマー又はエポキシとすることができる。特に、第2の材料は、ポリカーボネート、ポリイミド又はエポテック(登録商標)353NDとすることができる。
【0052】
幾つかの実施例において、第2の部分を貫通して形成される複数の穴は、化学エッチング、レーザーエッチング又はレーザー穴あけを使用して形成される。
【0053】
例に従って、貫通して形成される複数の穴を持つ、第1の材料から作られる第1の部分を設ける前記ステップは、
−メッシュの吸入口を形成する第1の開口として、第1の材料から作られる第1の部分に複数の穴を設けるステップ、
を有する。
【0054】
貫通して形成される複数の穴を持つ、第2の材料から作られる第2の部分を使用するステップは、
−前記メッシュの排出口を持つノズルを形成する第2の開口として、第2の材料から作られる第2の部分に複数の穴を設けるステップ、
を有する。
【0055】
第2の部分は、吸入口と排出口との間に遷移部を備える。さらに、排出口は吸入口よりも小さい。
【0056】
例に従って、ステップb)において、流れる方向に減少する幅を持つ先細る断面を持つ、前記ノズルを形成する第2の開口が設けられる、及びステップb)において、前記第2の材料は、前記ノズルの口を形成する増大する材料の厚さを備える。
【0057】
例に従って、ステップa)において、第1の材料から作られる第1の部分にある複数の穴は、第1の開口径を持つ第1の穴形状を備える。ステップb)において、第2の材料から作られる第2の部分にある複数の穴は、第2の開口径を持つ第2の穴形状を備え、第2の開口径は第1の開口径より小さい。
【0058】
ステップa)において、第1の部分にある複数の穴は、第1の供給口を設ける。
【0059】
ステップb)において、第2の部分にある複数の穴は、第1の供給口より下流に配される第2の排出口としてノズルを設ける。
【0060】
幾つかの実施例において、第1の部分を提供するステップは、第1の材料からなる層又はプレートを設けるステップを有する。
【0061】
例に従って、第1の材料は、複数の穴を有する層又はプレートとして設けられ、第2の材料は、第1の部分の穴に少なくとも部分的に置かれる複数のインレーとして設けられ、各インレーは、第1の材料にある穴の1つを一部満たし、第2の材料で形成されるノズルを持つ。
【0062】
例に従って、メッシュの排出側に向けてノズルを形成するために第2の部分を使用する前記ステップは、
b1)第2の材料の層又はプレートを設けるステップ、
b2)第2の材料に対応する複数の穴を形成するステップ、及び
b3)第1の部分を第2の部分に接合又は付着させるステップ
を有する。
【0063】
代替例に従って、メッシュの排出側に向けてノズルを形成するために第2の部分を使用する前記ステップは、
b4)第2の材料で第1の部分にある複数の穴を満たすステップ、及び
b5)第2の材料に複数のノズルを形成するステップ
を有する。
【0064】
好ましくは、第1の部分は、ネブライザに共振空洞を作るのに十分な質量を持つ。
【0065】
好ましくは、第1の部分は、少なくとも0.04g/cmの単位面積当たりの質量を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】ノズルプレートを有する例示的なネブライザのブロック図。
図2】身体の異なる部位における、粒子サイズと粒子の蓄積率との関係を説明するグラフ。
図3】ノズルの出口直径と粒子サイズとの関係を説明する図。
図4】本発明によるメッシュを製造する一般的な方法を説明するフローチャート。
図5】本発明の第1の実施例によるメッシュの断面図。
図6】前記第1の実施例によるメッシュを製造する方法を説明するフローチャート。
図7a図6の方法のステップを説明する図。
図7b図6の方法のステップを説明する図。
図7c図6の方法のステップを説明する図。
図7d図6の方法のステップを説明する図。
図7e図6の方法のステップを説明する図。
図8】ステンレス鋼にドリルで穴を開けた穴の画像。
図9】化学エッチングの一般原理を説明する図。
図10】レーザーエッチングの一般原理を説明する図。
図11】ポリカーボネートにレーザーエッチングを行ったノズルの様々な画像。
図12】本発明の第2の実施例によるメッシュの断面図。
図13】前記第2の実施例によるメッシュを製造する方法を説明するフローチャート。
図14a図13の方法のステップを説明する図。
図14b図13の方法のステップを説明する図。
図14c図13の方法のステップを説明する図。
図14d図13の方法のステップを説明する図。
図15a図13の方法のステップを説明する図。
図15b図13の方法のステップを説明する画像。
図15c図13の方法のステップを説明する画像。
図15d図13の方法のステップを説明する画像。
図15e図13の方法のステップを説明する画像。
図15f図13の方法のステップを説明する画像。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に開示される実施例から明らかであり、これら実施例を用いて説明される。
【0068】
本発明は、図1に示されるように薬剤からエアロゾルを生成するのに使用するための圧電メッシュベースのネブライザを参照して以下に述べるが、本発明は、液体を噴霧する他の種類の製品、例えば空気加湿器、シェーバー、スチームアイロン及び香水スプレーにも応用可能であることが分かる。ネブライザ2に使用されるメッシュ16もノズルプレート、開口プレート及び膜として従来知られている。
【0069】
上述したように、製造工程による低収益及び高コストをもたらすメッシュを製造する現在の技術(特に電鋳法及びレーザー穴あけを使用する技術)が抱える問題に取り組むために、本発明は、(幾つかの事例では、使用される組立技術から生じる)2つの異なる種類の材料からの有用な特性が組み合わされてメッシュ16を形成するハイブリッド形状を有するメッシュ16を提供する。特に、メッシュ16のある部分は、メッシュ16の単位面積当たりの必要な質量を提供する第1の材料、例えば金属又は金属合金から作られ、メッシュ16のもう1つの部分は、第1の材料より低密度の第2の材料から作られ、この第2の材料は、メッシュ16の排出側20に少なくともノズルの部分を形成するのに使用される。必要とされる許容誤差内で必要とされる出口直径を備えるノズルが作られることを可能にする製造技術が使用される(及び従来の技術よりも高い収益を生じさせる)ような第2の材料が選択される。
【0070】
ある例において、図4に示されるように、ネブライザにおいて液滴を形成するのに使用するメッシュを製造する方法が提供され、この方法は、
a)貫通して形成される複数の穴を持つ、第1の材料から作られる第1の部分を設けるステップ101、及び
b)メッシュの排出側に向けてノズルを形成するために、第1の材料より低密度の第2の材料から作られる第2の部分を使用するステップ103であり、第2の部分は、第1の部分と接触して置かれ、第2の部分は、対応する貫通して形成される複数の穴を持つ、ステップ103、
を有する。
【0071】
図4は、本発明に従ってメッシュ16を製造する若しくは組み立てる方法の一例を説明している。第1のステップ、ステップ101は、メッシュ16の第1の部分を設けるステップを有する。この第1の部分は通例、層又は基板形式である。第1の部分は、メッシュ16の質量要件が満たされることを可能にするのに十分な密度(すなわち、穴が形成された後、第1の部分が少なくとも0.04グラム/cmの単位面積当たりの質量を持つことを可能にするのに十分な密度)を持つ第1の材料から作られる。第1の材料は、金属又は金属合金、例えばステンレス鋼、プラチナ、コバルト、金、タングステン若しくはニッケルパラジウムとすることができる。一般に、8g/cmより高い及び/又は22g/cmより低い密度を持つ材料がメッシュ16の第1の部分を形成するのに使用するのに適している。一例において、8から22g/cmの範囲にある密度を持つ材料は、メッシュ16の第1の部分を形成するのに使用される。
【0072】
ステップ101において設けられる第1の部分は、貫通して形成される複数の穴も有する。上述したように、メッシュ16は通例、メッシュ内に5000から15000個の間の穴若しくはノズルを持つが、メッシュ16の要求に応じて、他の数の穴が第1の部分に形成され得ることも分かっている。これら穴は、例えば円形のような如何なる適切な形状、一般には円形、楕円形、矩形等とすることができる。
【0073】
ステップ101において、複数の穴を備える第1の部分を形成するのに使用される技術は、この第1の部分が作られる材料によって決まる。例えば、第1の部分がステンレス鋼から作られる場合、ステップ101は、ステンレス鋼の層又はシートを設けて、穴を形成するためにレーザー穴あけを使用するステップを有することができる。
【0074】
ステップ101に用いられ得る別の技術は、電気めっきを使用する電鋳法である。電気めっきは、溶解する金属陽イオンが電極にコヒーレント金属被覆を形成するように、電流を使用して溶解する金属陽イオンを還元する処理である。電鋳は、電気めっきを使用して、基板電極上に特定の形状を持つ構造体を構築する。この構造体はその後、電極から切り離される。特に、金属層は基板電極上で成長し、高分子レジストのような非導電層を用いて、前記金属層の成長から遮蔽されるエリアが選択される。従って、非導電材料で満たされた穴を持つ金属構造が成長され、この非導電材料は次いで、穴を開くために取り除かれ、第1の部分を設ける。
【0075】
メッシュ16の排出側20にあるノズルの出口は、第2の材料から形成されるので、第1の部分にある穴の直径が特に精密である必要はない。しかしながら、例えば15μmの最小直径は、小さな流路を流れる液体が受ける抵抗により設定される。最大直径は、目標とされるメッシュにおける穴の密度(すなわち、メッシュ16の吸入側18における単位面積当たりの穴の数)により決められる選択であり、その目標が5000個から15000個のノズルを備えるメッシュ16であり、その厚さが100μmよりも小さいメッシュを達成することであるとき、一般に20μmである。
【0076】
このメッシュ16における穴の密度(すなわち、メッシュ16の吸入側18における単位面積当たりの穴の数)に関して、メッシュ16における穴の密度及び/又は直径を増大させることは、単位面積当たりの全質量を減らすことであり、故により大きな穴の密度及び/又は直径は、メッシュ16の第1の部分に対しかなり大きな厚さを必要とすることも分かる。従って、メッシュ16の第1の部分の厚さは、単位面積当たりの必要な質量により決定される、及び第1の部分を形成するのに使用される材料と第1の部分における穴の径及び形状との関数である。例として、50μm離した正六角形のパターンで配される、30μmの均一直径を持つ穴を備え、ステンレス鋼から作られる第1の部分にとって、100μmの厚さのステンレス鋼の層は、前記質量の要件を満たしている。
【0077】
上述したレーザー穴あけ及び電鋳技術に加え、当業者は、第1の部分及び/又は第1の部分にある穴を作るのに使用される他の技術に気付いている。
【0078】
次いで、ステップ103において、第1の材料より低密度の第2の材料は、メッシュ16の第2の部分を形成するのに使用され、この第2の部分はメッシュ16の排出側20にノズルを形成する。第2の材料は、第2の材料において必要とされる出口直径及び許容誤差(例えば2.5μm±0.065μm)を持つノズルを形成するのに十分な精度を持つ組立技術が使用されることを可能にする材料である。第2の材料は、シリコン、ポリマー又はエポキシとすることができる。適切なポリマーは、ポリカーボネート及びポリイミドを含み、適切なエポキシはエポテック(登録商標)353NDである。メッシュ16の第2の部分は、5μmより大きい及び/又は20μmより小さい厚さを持つことができる。例において、前記厚さは、5から20μmの範囲内である。一般的に、0.8g/cmより高い及び/又は3g/cmより低い密度を持つ材料は、メッシュ16の第2の部分を形成するのに使用するのに適している。例において、0.8から3g/cmの範囲内にある密度を持つ材料は、メッシュ16の第2の部分を形成するのに使用される。
【0079】
ステップ103を実施する別の方法が以下により詳細に説明される。
【0080】
(これ以上詳細に示されない)例において、貫通して形成される複数の穴を持つ、第1の材料から作られる第1の部分を設けるステップは、
−メッシュの吸入口を形成する第1の開口として、第1の材料から作られる第1の部分に複数の穴を設けるステップ
を有する。
【0081】
貫通して形成される複数の穴を持つ、第2の材料から作られる第2の穴を使用するステップは、
−メッシュの排出口を備えるノズルを形成する第2の開口として、第2の材料から作られる第2の部分に複数の穴を設けるステップ
を有する。
【0082】
第2の部分は、吸入口と排出口との間に遷移部を備える。さらに、排出口は吸入口より小さい。
【0083】
(これ以上詳細に示されない)もう1つの例において、ステップb)において、流れる方向に減少する幅を持つ先細る断面を持つノズルを形成する第2の開口が設けられる。ステップb)において、第2の材料はノズルの口を形成する増大する材料の厚さを備える。
【0084】
(これ以上詳細に示されない)他の例において、ステップa)において、第1の材料から作られる第1の部分における複数の穴は、第1の開口径を持つ第1の穴形状を備える。ステップb)において、第2の材料から作られる第2の部分における複数の穴は、第2の開口径を持つ第2の穴形状を備え、第2の開口径は第1の開口径よりも小さい。
【0085】
ステップa)において、第1の部分における複数の穴は、第1の供給口を備える。
【0086】
ステップb)において、第2の部分における複数の穴は、第1の供給口より下流に配される第2の排出口としてノズルを備える。
【0087】
さらに他の例(図示せず)において、第1の材料は、複数の穴を有する層又はプレートとして設けられる。第2の材料は、第1の部分の穴に少なくとも部分的に置かれる複数のインレーとして設けられ、各インレーは、第1の材料にある穴の1つを一部満たし、第2の材料に形成されるノズルを持つ。
【0088】
例において、第1の材料から作られる第1の部分における複数の穴はメッシュの吸入口を形成する第1の開口であるメッシュが設けられる。例えば、図5において、吸入口は、24で示される穴の(横長で配される図5に対して)上側又は端部により設けられる。図12において、吸入口も24'で示される穴の(横長で配される図12に対して)上側又は端部により設けられる。第2の材料から作られる第2の部分における複数の孔は、図5では30及び図12では30'で示されるメッシュの排出口を持つノズルを形成する第2の開口である。第2の部分は従って、図5及び図12に示されるように、吸入口と排出口との間に遷移部を備える。図5及び図12にも示されるように、排出口は、吸入口より小さい。
【0089】
もう1つの例において、ノズルを形成する第2の開口は、流れる方向に減少する幅を持つ先細る断面を持つ。これは、夫々2つの例示的な実施例の図5及び12に示される。第2の材料は、ノズルの口を形成する増大する材料の厚さを備えていることを述べておく。言い換えると、第2の材料は、開口流路の実際の成形又は形成に使用される。
【0090】
他の例において、第1の材料から作られる第1の部分における複数の穴は、第1の開口径を持つ第1の穴形状を備える。例えば、図5において、第1の開口の穴形状は、平行な側壁と共に、例えば第1の材料において円筒部分として示される。図12において、第1の開口の穴形状は、先細る側壁と共に、例えば第1の材料において円錐部として示される。第2の材料から作られる第2の部分における複数の穴は、第2の開口径を持つ第2の穴形状を備える。例えば、図5において、第2の開口の穴形状は、流れる方向に減少する幅で示され、この減少は、第1の材料により設けられる開口形状に比べ、様々な程度で、例えばより大きな程度で提供される。図5及び図12にも示されるように、第2の開口径は、第1の開口径よりも小さい。従って、第1の部分における複数の穴は、第1の供給口を提供し、第2の部分における複数の穴は、第1の供給口より下流に配される第2の排出口としてノズルを提供する。本発明に従って、ノズルとして排出口の精確な径及び形状は、第2の材料により設けられる、故に夫々の材料特性を利用することにより設けられる。
【0091】
図5は、本発明の第1の実施例に従って製造されるメッシュ16を通る断面図である。このメッシュ16において、(第1の材料から作られる)第1の部分22は、層又はプレートであり、複数の穴24は第1の部分を貫通して形成される。説明される実施例において、複数の穴24は、他の穴の輪郭も可能であるが、第1の部分22にわたり概ね均一直径を持つ。特に、第1の部分22にある穴24から第2の部分26にある穴へ円滑な遷移を備えることが望ましく、故に、第1の部分22における穴24は好ましくは、メッシュ16の吸入側18を形成する第1の部分22の側から、第2の部分26と接触して置かれる側に向けて先細る。例えば、第1の部分22における穴24は、第1の部分22の吸入側18において25μmの直径から、第1の部分22の接合側(すなわち、吸入側18の反対側であり、第2の部分26と接触している側)において15μmの直径に先細る。
【0092】
上述したように、第1の層22の一方の側は、メッシュ16の吸入側18を形成する。第1の層22の他方の(接合する)側は、層又はプレート26の形式である(第2の材料から作られる)第2の部分26と接触している。この第2の部分26の反対側(すなわち、第1の部分22と接合する又は接触している側の反対側)は、メッシュ16の排出側20を形成する。第2の部分26は、第1の部分22にある複数の穴24に対応する複数のノズル28(すなわち、第1の部分にある穴24と概ね位置合わせている複数のノズル)を持ち、各穴24及び対応するノズル28は、液体がメッシュ16の吸入側18から排出側29に通過する流路を形成する。
【0093】
第2の部分26にあるノズル28は、このノズルの直径が一般的に第1の部分22の接合側(すなわち、吸入側18の反対側)にある穴24と同じ直径から、メッシュ16の排出側20において所望する出口直径まで細くなるように形成される。好ましくは、不連続性がメッシュ16の液滴発生性能を低下させ得るので、第1の部分22と第2の部分26との間の接合面において、第1の部分の穴24の直径と、第2の部分26のノズル26の直径との間に実質的な不連続性を無くすべきである。ノズル28の出口は、図5において30で示される。各ノズル28の輪郭は、ノズルの出口30に向けて望ましい直径まで、(直線若しくは湾曲した輪郭を持つノズルを作る)線形で若しくは非線形で先細ることができる。
【0094】
例において、第1の材料は、複数の穴を有する第1の層又はプレートとして設けられる。第2の材料は、図5に示されるように、そこにノズルが形成される第2の層又はプレートとして設けられる。
【0095】
図6のフローチャートは、図5に示されるような第1の実施例に従ってメッシュ16を製造する例示的な方法を説明している。図7(a)−(e)は、図6の方法のステップを説明している。
【0096】
従って、第1のステップ、ステップ122において、及び図7(a)に示されるように、第1の材料の層状の第1の部分22が設けられる。上述したように、メッシュ16が噴霧室10及びアクチュエータ14と共に共振空洞を作るのに必要とされる質量を提供するために第1の材料が選択される。本実施例における第1の材料は好ましくは金属又は金属合金、例えばステンレス鋼、プラチナ又はニッケルパラジウムである。当業者は、第1の材料から第1の部分を形成するのに適した(電鋳法又はレーザー穴あけ/エッチングのような)技術を分かっていて、これらの技術はここでは説明されない。
【0097】
次いで、ステップ124において、及び図7(b)に示されるように、第1の部分22を貫通する複数の穴24が形成される。上述したように、第1の部分がステンレス鋼から作られる場合、複数の穴24は、レーザー穴あけを使用して形成される。図8は、(このステンレス鋼のプレートにある穴24が吸入(見える)側18において約30μmの直径から、接合側において約10μmまで先細ることに注目すべきであるが)これら穴24がレーザー穴あけされたステンレス鋼のプレートの拡大画像である。他の実施例において、例えば第1の部分22がプラチナ若しくはニッケルパラジウムから作られる場合、この第1の部分22は、(ステップ122及び124に説明される、並びに図7(a)及び(b)に示されるようなステップを、図4に示されるような1つのステップに効率的に減らす)電気めっきを使用する電鋳法により形成されるとき、穴24が作られる。
【0098】
ステップ126において、及び図7(c)に示されるように、第2の材料の層又はプレートの形状である第2の部分26が設けられる。上述したように、この第2の部分は、使用される製造技術が必要とされる出口直径を持つノズルを第2の部分26に形成することを可能にするように選択される。本実施例における第2の材料は好ましくはシリコン又はポリマーである。当業者は、例えば穴を定めるためにフォトリソグラフィーを使用して第2の材料から第2の部分を形成するのに適した技術を分かっていて、これらの技術はここでは説明されない。
【0099】
ステップ128において、及び図7(d)に示されるように、第2の部分26を貫通する複数のノズル28が形成され、第2の部分26の一方の側にあるノズル28の直径は、第1の部分22の接合側にある穴24の直径に略等しく、第2の部分26の他方の側にあるノズル28の直径は、必要な許容誤差内にある必要な径(例えば2.5μm±0.065μm)である。
【0100】
第2の材料がシリコンの場合、ノズル28は、化学エッチングを使用して第2の部分26に形成されることができる。シリコンに化学エッチングを行う技術が従来よく知られ、ここでは詳細に説明されていなくても、図9は、化学エッチングの一般原理を説明している。特に、所望するノズルのパターンが形成されるテンプレートであるレジスト31が第2の部分26より上に置かれ、第2の部分のエッチングされない部分を保護する。第2の材料を溶かし、ノズル28を形成する化学溶剤が第2の部分26の露出した部分(すなわち、レジスト31により保護されていない部分)に塗布される。
【0101】
第2の材料がポリマーの場合、ノズル28は、レーザーエッチングを使用して第2の部分26に形成されることができる。ポリマーにレーザーエッチングを行う技術が従来よく知られ、ここでは詳細に説明されていなくても、図10は、レーザーエッチングの一般原理を説明している。特に、所望するノズルのパターンが形成されるテンプレートであるマスク32がレンズ34と共に第2の部分26より上に置かれ、レーザー光36がマスク32及びレンズ34を通り第2の部分26に照らされる。このレーザー光は、第2の部分26の露出した部分(すなわちマスク32で覆われていない部分)をエッチング除去する/蒸発させ、ノズル28を形成する。ガス流38は、レーザー光36により蒸発した第2の材料を取り除くために与えられる。通例、150−400nmの波長を持つエキシマレーザーが使用され、このレーザーは、1パルス毎に第2の部分26から約0.15μmの材料を取り除くためにパルスが発せられる。
【0102】
図11の画像は、ポリマー(特にポリカーボネート)にレーザーエッチングを行ったノズル28の(様々な拡大レベルでの)様々な図を示す。
【0103】
一度第1の部分22及び第2の部分26が組み立てられると、これらの部分22及び26は、メッシュ16を形成するために互いに接触して置かれ、第1の部分22にある各穴24は、第2の部分26にあるノズル28と概ね位置合わせている(ステップ130及び図7(e))。特定の実施例において、接着剤が穴24又はノズル28に侵入するのを防ぐように注意が払われなければならないが、第1の部分22は、接着剤又は接着フィルムを用いて第2の部分に接合又は付着される。
【0104】
図6に示されるステップ122から128は説明した順に行われる必要はないこと、及び幾つかの実施例において、ステップ128/130は、ステップ122/124の前に若しくはそれらと概ね同じときに行われることができることも分かる。
【0105】
図12は、本発明の第2の実施例に従って製造されるメッシュ16'を通る断面である。このメッシュ16'において、(第1の材料から作られる)第1の部分22'は、層又はプレートを有し、この第1の部分を貫通する複数の穴24'が形成される。本発明のこの実施例において、第1の部分22'の厚さは、5μmより大きい及び/又は30μmより小さくすることができる。第2の実施例の例示的な実施において、第1の部分22'の厚さは、5から30μmの範囲内である。説明される実施例において、穴24'の直径は、(メッシュ16'の吸入側18'に対応する)第1の部分22'の頂部からメッシュ16'の排出側20'に向けて先細る。代替実施例において、穴24'の直径は、第1の部分22'を通じて均一と(すなわち先細ることなく)することができる。
【0106】
上述したように、第1の層22'の一方の側は、メッシュ16'の吸入側18'を形成する。本実施例において、第1の層22'の他方の側がメッシュ16'の排出側20'の部分を形成する。第1の部分22'は、(第2の材料から作られる)第2の部分26'と接触している。本実施例において、第2の材料は、穴24'を満たすのに使用され、次いで第2の材料でノズル28が形成される。メッシュ16'の排出側20'にある第2の材料のノズル28の直径は、必要な径及び許容誤差(例えば2.5μm±0.065μm)を有する。ノズル28'の出口は、図12において30'で示されている。各ノズル28の輪郭は、ノズルの出口30'に向けて所望する直径まで、(直線又は湾曲した輪郭を持つノズル28'を作る)線形若しくは非線形で先細ることができる。
【0107】
例において、第1の材料は、複数の穴を有する層又はプレートとして設けられる。第2の材料は、第1の部分の穴に少なくとも部分的に置かれる複数のインレーとして設けられ、各インレーは、第1の材料にある穴の1つを一部満たし、図12に示されるように、第2の材料で形成されるノズルを持つ。
【0108】
図13のフローチャートは、図12に示されるような第2の実施例に従ってメッシュ16'を製造する例示的な方法を説明している。図14(a)−(d)は、図13の方法のステップを説明している。
【0109】
ステップ132及び134は、図6に示されると共に、上述したようなステップ122及び124と類似している。
【0110】
一度複数の穴24'が第1の部分22'に形成されると、(ステップ136及び図14(c)に示されるように)穴24'は、第2の材料で満たされる。本実施例において、第2の材料は、穴24'に注ぎ込まれることができ、第2の部分26'を形成することになるエポキシ又は液体ポリマーとすることができる。
【0111】
図15(a)−(d)の画像は、医療用のエポキシ26'で満たされた穴24'を備える金属箔22'を様々な拡大レベルで示す。
【0112】
次いで、ステップ138(及び図14(d)に示されるように)、第2の材料の部分26'の各々を貫通する穴が作られ、メッシュ16'の排出側20'に向けてノズル28'を形成する。第1の実施例にあるように、穴/ノズル28'は、化学エッチング又はレーザーエッチングを用いて作られることができる。もう1つの方法として、穴/ノズル28'は、レーザー穴あけを用いて作られることができる。図15(e)及び(f)は、第2の材料にレーザー穴あけを行ったノズル28'を備える、図15(a)−(d)による金属箔を示す。
【0113】
穴/ノズル28'が形成された後、メッシュ16'は完成する。
【0114】
従って、より高い収益の製造工程を用いて低コストで製造され得るネブライザにおいて共振空洞を作るのに必要とされる、ノズルの出口直径に厳密な許容誤差と質量とを持つメッシュが提供される。
【0115】
例において、図1に示されるネブライザと同じ設計のネブライザが設けられる。このネブライザは、ネブライザのユーザが排出口を介して息を吸うとき、空気が吸入口及び排出口を介して、ネブライザに流入し、通過して、ユーザの身体内に流れるように配される吸入口及び排出口を持つ本体を有する。排出口は、マウスピース又は顔若しくは鼻マスクの形状で、又は別個の交換可能なマウスピース又は顔若しくは鼻マスクに接続するのに適した形状で設けられる。さらに、液体を蓄えるために、吸入口と排出口との間に噴霧室が設けられる。ユーザが息を吸い、ユーザに薬剤又は薬物を送るとき、微細な液滴がネブライザに流入した空気と混合するように配される。従って、詳細に上述したようなメッシュが設けられる。
【0116】
本発明の実施例は、他の内容を参照して説明されることも述べなければならない。特に、幾つかの実施例は、方法形式の請求項を参照して説明している一方、その他の実施例は、装置形式の請求項を参照して説明している。しかしながら、特に他に知らされない限り、ある形式の内容に属する特徴の如何なる組み合わせに加え、異なる内容に関する特徴の如何なる組み合わせも本出願で開示されると考えられることは、上記及び下記の説明から推測されるだろう。しかしながら、全ての特徴は、組み合わされることができ、これら特徴を単に足すよりも多くの相乗効果を提供する。
【0117】
本発明は図面及び上記説明において詳細に説明並びに開示されている一方、そのような説明及び開示は、説明的又は例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。つまり、本発明は開示した実施例に限定されない。
【0118】
図面、明細書及び付随する特許請求の範囲を学ぶことにより、請求する本発明を実施する当業者が開示した実施例の変形例を理解する及び生じさせることができる。
【0119】
請求項において、"有する"という言葉は、他の要素又はステップを排除するものではなく、複数あると述べないことが、それらが複数あることを排除するものではない。1つの処理器又は他のユニットが請求項に挙げられる幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。ある方法が互いに異なる従属請求項に挙げられるという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利に使用され得ないことを示しているのではない。請求項における如何なる参照符号もその範囲を限定するとは考えるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7(a)】
図7(b)】
図7(c)】
図7(d)】
図7(e)】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14(a)】
図14(b)】
図14(c)】
図14(d)】
図15(a)-15(d)】
図15(e)】
図15(f)】