(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの第2並列共振子は、それぞれ弾性波の伝搬方向において前記IDT電極の両側に配置された、複数本のストリップを備えた開放型の反射器を備える、請求項1に記載のフィルタ。
前記少なくとも1つの第1並列共振子および前記少なくとも1つの第2並列共振子は、それぞれ弾性波の伝搬方向において前記IDT電極の両側に配置された、複数本のストリップを備えた反射器を有し、
前記少なくとも1つの第2並列共振子は、前記反射器の前記ストリップの本数が前記少なくとも1つの第1並列共振子における前記反射器の前記ストリップの本数よりも少ない、請求項1に記載のフィルタ。
複数の前記直列共振子は、弾性波の伝搬方向において前記IDT電極の両側に反射器を備え、複数の前記直列共振子の少なくとも1つの前記反射器は浮き電位になっている、請求項1乃至4のいずれかに記載のフィルタ。
前記少なくとも1つの第2並列共振子は、前記IDT電極が、複数本の第1電極指と、これに交差する複数本の第2電極指とを備え、複数本の前記第1電極指と複数本の前記第2電極指とは互いに異なる電位に接続されており、複数本の前記第1電極指のそれぞれの先端を結ぶ仮想線が弾性波の伝搬方向に対して傾斜している、請求項1乃至6のいずれかに記載のフィルタ。
前記少なくとも1つの第2並列共振子は、前記IDT電極が、複数本の第1電極指と、これに交差する複数本の第2電極指とを備え、複数本の前記第1電極指と複数本の前記第2電極指とは互いに異なる電位に接続されており、複数本の前記第1電極指は、隣り合って配置される2本以上の隣接電極指を含む、請求項1乃至7のいずれかに記載のフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の一実施形態に係るフィルタ,分波器および通信装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0009】
フィルタは、いずれの方向が上方または下方とされてもよいものであるが、以下では、便宜的に、直交座標系xyzを定義するとともに、z方向の正側を上方として、上面、下面等の用語を用いるものとする。なお、直交座標系xyzは、フィルタの形状に基づいて定義されているものであり、圧電基板の結晶軸を指すものではない。
【0010】
<<第1実施形態>>
<通信装置>
図1は、本開示の実施形態に係る通信装置101の要部を示すブロック図である。通信装置101は、電波を利用した無線通信を行うものである。分波器7は、通信装置101において送信周波数の信号と受信周波数の信号とを分波する機能を有している。
【0011】
通信装置101において、送信すべき情報を含む送信情報信号TISは、RF−IC(Radio Frequency Integrated Circuit)103によって変調および周波数の引き上げ(搬送波周波数の高周波信号への変換)がなされて送信信号TSとされる。送信信号TSは、バンドパスフィルタ105によって送信用の通過帯域以外の不要成分が除去され、増幅器107によって増幅されて分波器7に入力される。分波器7は、入力された送信信号TSから送信用の通過帯域以外の不要成分を除去してアンテナ109に出力する。アンテナ109は、入力された電気信号(送信信号TS)を無線信号に変換して送信する。
【0012】
通信装置101において、アンテナ109によって受信された無線信号は、アンテナ109によって電気信号(受信信号RS)に変換されて分波器7に入力される。分波器7は、入力された受信信号RSから受信用の通過帯域以外の不要成分を除去して増幅器111に出力する。出力された受信信号RSは、増幅器111によって増幅され、バンドパスフィルタ113によって受信用の通過帯域以外の不要成分が除去される。そして、受信信号RSは、RF−IC103によって周波数の引き下げおよび復調がなされて受信情報信号RISとされる。
【0013】
送信情報信号TISおよび受信情報信号RISは、適宜な情報を含む低周波信号(ベースバンド信号)でよく、例えば、アナログの音声信号もしくはデジタル化された音声信号である。無線信号の通過帯域は、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)等の各種の規格に従ったものでよい。変調方式は、位相変調、振幅変調、周波数変調もしくはこれらのいずれか2つ以上の組み合わせのいずれであってもよい。
【0014】
<分波器>
図2は、本開示の一実施形態に係るフィルタ1を用いた分波器7の構成を示す回路図である。より具体的には、分波器7とアンテナ109とを示す回路図であり、アンテナを除く部分が分波器7である。分波器7は、
図1において通信装置101に使用されている分波器である。分波器7は、第1フィルタ11と第2フィルタ12とを備えている。この例では、第1フィルタ11として送信フィルタを、第2フィルタ12として、送信フィルタよりも通過帯域が高周波側に位置する受信フィルタを備える場合を示している。第1フィルタ11および/または第2フィルタ12を構成するフィルタは、圧電基板2上に配置された共振子で構成されている。
【0015】
フィルタ1は、例えば、
図2に示した分波器7における第1フィルタ11である。第1フィルタ11は複数のSAW共振子でラダー型フィルタ回路を構成している。第1フィルタ11は、
図2に示すように、圧電基板2(不図示)と、圧電基板2上に形成された直列共振子S1〜S3および並列共振子P1〜P3を有する。
【0016】
分波器7は、第1端子8と第2端子9と第3端子10とを備えている。この例では第1端子8はアンテナ端子として機能し、第2端子9は送信端子として機能し、第3端子10は受信端子として機能する。そして、分波器7は、第1端子8と第2端子9との間に配置された第1フィルタ11と、第1端子8と第3端子10との間に配置された第2フィルタ12とから主に構成されている。
【0017】
第2端子9には増幅器107からの送信信号TSが入力される。第2端子9に入力された送信信号TSは、第1フィルタ11において送信用の通過帯域以外の不要成分が除去されて第1端子8に出力される。また、第1端子8にはアンテナ109から受信信号RSが入力され、第2フィルタ12において受信用の通過帯域以外の不要成分が除去されて第3端子10に出力される。
【0018】
第1フィルタ11は、この例では、ラダー型SAWフィルタによって構成されている。ここで、SAWとは弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)を指す。具体的に第1フィルタ11は、その入力側と出力側との間において直列に接続された3個の直列共振子S1、S2、S3と、直列共振子同士を接続するための配線である直列腕と基準電位部Gndとの間に設けられた3個の並列共振子P1、P2、P3とを有する。すなわち、第1フィルタ11は3段構成のラダー型フィルタである。ただし、第1フィルタ11においてラダー型フィルタの段数は任意である。
【0019】
並列共振子P1、P2、P3と基準電位Gndとの間には、インダクタLが設けられている。このインダクタLのインダクタンスを所定の大きさに設定することによって、送信信号の伝送特性を調整することができる。
【0020】
第2フィルタ12は、例えば、多重モード型SAWフィルタ17と、その入力側に直列に接続された補助共振子18とを有している。なお、本実施形態において、多重モードは、2重モードを含むものとする。多重モード型SAWフィルタ17は、平衡−不平衡変換機能を有しており、第2フィルタ12は平衡信号が出力される2つの受信端子10に接続されている。第2フィルタ12は多重モード型SAWフィルタ17によって構成されるものに限られず、ラダー型フィルタによって構成してもよいし、平衡−不平衡変換機能を有していないフィルタであってもよい。
【0021】
第1フィルタ11、第2フィルタ12および第1端子8の接続点と基準電位Gndとの間には、インダクタなどからなるインピーダンスマッチング用の回路を挿入してもよい。
【0022】
<フィルタ>
ラダー型フィルタを構成する第1フィルタ11に使用するフィルタ1について説明する。フィルタ1を用いることにより、送信信号の通過周波数の帯域外において減衰を大きくすることができる。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係るフィルタ1の構成を示す平面図である。
図3は模式図であるため、電極指32やストリップ42の本数やピッチ、デューティー等は実際とは異なる。
【0024】
図3に示す通り、フィルタ1は、圧電基板2と、複数の直列共振子S1〜S3と、複数の並列共振子P1〜P3とを備える。直列共振子S1〜S3,並列共振子P1〜P3は、入力部Iと出力部Oとの間に配線20によりラダー型に接続されている。具体的には、配線20は、直列共振子S1〜S3を直列に接続する直列腕20sと、並列共振子P1〜P3を直列腕20sと基準電位Gndとの間に接続する並列腕20pとを有する。そして、入力部Iは第2端子9に電気的に接続される。出力部Oは第1端子8に電気的に接続される。
【0025】
直列共振子S1〜S3,並列共振子P1〜P3のそれぞれは弾性波(SAW:Surface Acoustic Wave)素子で構成される。なお、圧電基板2の外縁の表示は省略している。
【0026】
図4は、例えば、直列共振子S1を構成する模式的な弾性波素子の平面図であり、
図5は
図4のV−V線における要部拡大断面図である。SAW素子は、
図4および
図5に示すように、圧電基板2の上面2Aに設けられたIDT(Interdigital Transducer)電極3を備える。これらの図に示すように、SAW素子は反射器4を備えてもよい。
【0027】
圧電基板2は、ニオブ酸リチウム(LiNbO
3)結晶またはタンタル酸リチウム(LiTaO
3)結晶からなる圧電性を有する単結晶の基板によって構成されている。具体的には、例えば、圧電基板2は、36°〜48°Y−XカットのLiTaO
3基板によって構成されている。圧電基板2の平面形状および各種寸法は適宜に設定されてよい。一例として、圧電基板2の厚み(z方向)は、0.2mm以上0.5mm以下である。
【0028】
IDT電極3は、
図4に示すように、第1櫛歯電極30aおよび第2櫛歯電極30bを有している。なお、以下の説明では、第1櫛歯電極30aおよび第2櫛歯電極30bを単に櫛歯電極30といい、これらを区別しないことがある。そして、第1櫛歯電極30aと第2櫛歯電極30bとは互いに異なる電位に接続されている。
【0029】
櫛歯電極30は、
図4に示すように、互いに対向する2本のバスバー31と、各バスバー31から他のバスバー31側へ延びる複数の電極指32とを有している。そして、1対の櫛歯電極30は、第1電極指32aと第2電極指32bと、弾性波の伝搬方向に互いに噛み合うように(交差するように)配置されている。すなわち、第1電極指32aと第2電極指32bとが交互の配列されている。
【0030】
また、櫛歯電極30は、それぞれの電極指32と対向するダミー電極指33を有している。第1ダミー電極指33aは、第1バスバー31aから第2電極指32bに向かって延びている。第2ダミー電極指33bは、第2バスバー31bから第1電極指32aに向かって延びている。なお、ダミー電極指33を配置しなくてもよい。
【0031】
バスバー31は、例えば、概ね一定の幅で直線状に延びる長尺状に形成されている。従って、バスバー31の互いに対向する側の縁部は直線状である。複数の電極指32は、例えば、概ね一定の幅で直線状に延びる長尺状に形成されており、弾性波の伝搬方向に概ね一定の間隔で配列されている。
【0032】
IDT電極3を構成する一対の櫛歯電極30の複数の電極指32は、ピッチPt1となるように設定されている。ピッチPt1は、例えば、共振させたい周波数での弾性波の波長λの半波長と同等となるように設けられている。波長λ(2×Pt1)は、例えば、1.5μm以上6μm以下である。IDT電極3は、ほとんどの複数の電極指32がピッチPt1となるように配置することにより、複数の電極指32が一定の周期となるような配置となるため、弾性波を効率よく発生させることができる。
【0033】
ここでピッチPt1は、伝搬方向において、第1電極指32aの中心から、当該第1電極指32aに隣接する第2電極指32bの中心までの間隔を指すものである。各電極指32は、弾性波の伝搬方向における幅w1が、SAW素子に要求される電気特性等に応じて適宜に設定される。電極指32の幅w1は、例えば、ピッチPt1に対して0.3倍以上0.7倍以下である。
【0034】
このように電極指32を配置することで、複数の電極指32に直交する方向に伝搬する弾性波が発生する。従って、圧電基板2の結晶方位を考慮したうえで、2本のバスバー31は、弾性波を伝搬させたい方向に交差する方向において互いに対向するように配置される。複数の電極指32は、弾性波を伝搬させたい方向に対して直交する方向に延びるように形成される。なお、弾性波の伝搬方向は複数の電極指32の向き等によって規定されるが、本実施形態では、便宜的に、弾性波の伝搬方向を基準として、複数の電極指32の向き等を説明することがある。
【0035】
各電極指32(第1電極指32a,第2電極指32b)の本数は片側あたり50〜350本である。
【0036】
複数の電極指32の長さ(バスバーから先端までの長さ)は、例えば、概ね同じに設定される。対向する電極指32同士の噛み合う長さ(交差幅)は10〜300μmである。なお、各電極指32の長さや交差幅を変えてもよく、例えば伝搬方向に進むにつれて長くしたり、短くなるようにしたりしてもよい。具体的には、各電極指32の長さを伝搬方向に対して変化させることにより、アポダイズ型のIDT電極3を構成してもよく、この場合、横モードのスプリアスを低減させたり、耐電力性を向上させたりすることができる。
【0037】
IDT電極3は、圧電基板2の上面2Aに直接配置されていてもよいし、別の部材からなる下地層を介して圧電基板2の上面2Aに配置されていてもよい。別の部材は、例えば、Ti、Cr、あるいはこれらの合金等からなる。下地層を介してIDT電極3を圧電基板2の上面2Aに配置する場合は、別の部材の厚みはIDT電極3の電気特性に殆ど影響を与えない程度の厚み(例えば、Tiの場合はIDT電極3の厚みの5%の厚み)に設定される。
【0038】
また、IDT電極3を構成する電極指32上には、SAW素子1の温度特性を向上させるために、質量付加膜を積層してもよい。質量付加膜としては、例えばSiO
2等を用いることができる。
【0039】
IDT電極3は、電圧が印加されると、圧電基板2の上面2A付近においてx方向に伝搬する弾性波を励起する。励起された弾性波は、電極指32の非配置領域(隣接する電極指32間の長尺状の領域)との境界において反射する。そして、電極指32のピッチPt1を半波長とする定在波が形成される。定在波は、当該定在波と同一周波数の電気信号に変換され、電極指32によって取り出される。このようにして、SAW素子1は、1ポート共振子として機能する。
【0040】
反射器4は、弾性波の伝搬方向においてIDT電極3を挟むように配置されている。反射器4は、概ねストリップ状に形成されている。すなわち、反射器4は、弾性波の伝搬方向に交差する方向において互いに対向する反射器バスバー41と、これらバスバー41間において弾性波の伝搬方向に直交する方向に延びる複数のストリップ42(反射電極指42ともいう)とを有している。反射器バスバー41は、例えば、概ね一定の幅で直線状に延びる長尺状に形成されており、弾性波の伝搬方向に平行に配置されている。
【0041】
複数の反射電極指42は、IDT電極3で励起される弾性波を反射させるピッチPt2に配置されている。ピッチPt2は、IDT電極3のピッチPt1を弾性波の波長λの半波長に設定した場合、ピッチPt1と同じ程度に設定すればよい。波長λ(2×Pt2)は、例えば、1.5μm以上6μm以下である。ここでピッチPt2は、伝搬方向において、反射電極指42の中心から、隣接する反射電極指42の中心までの間隔を指すものである。反射電極指42の本数は、例えば20〜30本程度とすればよい。
【0042】
また、複数の反射電極指42は、概ね一定の幅で直線状に延びる長尺状に形成されている。反射電極指42の幅は、例えば、電極指32の幅w1と概ね同等に設定することができる。反射器4は、例えば、IDT電極3と同一の材料によって形成されるとともに、IDT電極3と同等の厚みに形成されている。
【0043】
反射器4は、IDT電極3に対して間隔を空けて配置されている。ここで間隔は、IDT電極32の反射器4側の端部に位置する電極指32の中心から反射器4のIDT電極32側の端部に位置する反射電極指42の中心までの間隔を指すものである。間隔は、通常、IDT電極3の電極指32のピッチPt1(またはPt2)と同じとなるように設定されている。
【0044】
保護層5は、
図5に示すように、IDT電極3および反射器4上を覆うように、圧電基板2上に設けられている。具体的には、保護層5は、IDT電極3および反射器4の表面を覆うとともに、圧電基板2の上面2AのうちIDT電極3および反射器4から露出する部分を覆っている。保護層5の厚みは、例えば、1nm以上800nm以下である。
【0045】
保護層5は、絶縁性を有する材料からなり、腐食等から保護することに寄与する。好適には、保護層5は、温度が上昇すると弾性波の伝搬速度が速くなるSiO
2などの材料によって形成されており、これによって弾性波素子1の温度の変化による電気特性の変化を小さく抑えることもできる。また、保護層5をSiNxで構成した場合には、耐湿性に優れることから、信頼性の高い弾性波素子1を提供することができる。
【0046】
図4,
図5に示す例は、直列共振子S1を例に説明したが、他の直列共振子S2,S3も、電極指32の本数、ピッチ等の設計を適宜調整の上、同様の構成とすることができる。
【0047】
並列共振子P1〜P3は、基本的には
図4,
図5に示すSAW素子と同じ構成であるが、以下の点で直列共振子S1〜S3と異なる。
【0048】
まず、並列共振子P1〜P3のうち少なくとも1つを、第1並列共振子Pxに、少なくとも1つを第2並列共振子Pyとする。第1並列共振Pxは、直列共振子S1〜S3の共振周波数より低い共振周波数を有するものである。すなわち、第1並列共振子Pxは、直列共振子S1〜S3の共振周波数と第1並列共振子Pxの反共振周波数とを略一致させることで、フィルタ1の通過帯域を構成するものである。この例では、並列共振子P1,P3を第1並列共振子Pxとする。
【0049】
第2並列共振子Pyは、直列共振子S1〜S3の反共振周波数よりも高い共振周波数を有する。この例では、並列共振子P2を第2並列共振子Pyとする。
【0050】
なお、第1並列共振子Px、第2並列共振子Pyの共振周波数の比較となる直列共振子は、本フィルタが適用される通過帯域内に共振周波数が位置するものすべてとする。言い換えると、直列腕20sに配置されていても、通過帯域の外側に共振周波数を有するような共振子は、本例の直列共振子とは区別し、比較対象から外す。
【0051】
各並列共振子P1〜P3(Px,Py)の共振周波数および反共振周波数は、例えば、電極指32のピッチにより調整することができる。
【0052】
フィルタ1は、上述のような並列共振子P1〜P3(Px,Py)を備える。これにより、フィルタ1の通過帯域外における減衰を大きくすることができる。すなわち、通過帯域から高周波側に離れるに従い、減衰量のベースラインが上昇していく領域において減衰を大きくすることがきる。
【0053】
通過帯域の高周波側に他のフィルタ(例えば第2フィルタ12)の通過帯域がある場合には、アイソレーションを高めるために減衰域が設定され、減衰域における減衰量を十分なレベルに到達させる必要がある。これに対して、本実施形態のフィルタ1によれば、フィルタ1の通過帯域の外側のうち高周波側において、第2並列共振子Pyの共振周波数が位置する。共振周波数ではインピーダンスが最小となるので、第2並列共振子Py側に信号が流れやすくなり、透過側には信号が流れにくくなる。これにより、減衰域における減衰量を高めることができる。ここで、減衰量は減衰極近傍におけるインピーダンスレベルで決まるので、必ずしも第2フィルタ12の通過帯域内に第2並列共振子Pyの共振周波数が位置する必要はないが、第2フィルタ12の通過帯域内に位置させてもよい。
【0054】
同様に、減衰量は減衰極近傍におけるインピーダンスレベルで決まるので、必ずしも第1フィルタ11の通過帯域外に第2並列共振子Pyの共振周波数が位置する必要はないが、第1フィルタ11の通過帯域外に位置させてもよい。
【0055】
上述の通り第2並列共振子Pyの共振周波数近傍での減衰特性を向上させる一方で、第2並列共振子Pyの反共振周波数近傍では減衰特性が悪化することが懸念される。また、第2並列共振子Pyの共振周波数以下に位置するフィルタ1の挿入損失悪化も懸念される。
図3に示す例では、この第2並列共振子Pyの静電容量を他の並列共振子(P1,P3)に比べて十分小さくしている。具体的には、電極指32の本数を少なく、交差幅を小さくしている。さらに詳しくは、第1並列共振子Pxの静電容量の1/3以下としている。共振子の容量が大きくなると周波数全体を通じてインピーダンスが小さくなる。そのため、通過帯域内の信号も第2並列共振子Pyを介してグランド側に流れてしまうためロスが大きくなってしまう。これに対して、第2並列共振子Pyの容量を小さくすることで、第2並列共振子Pyのインピーダンスが大きくなるため、反共振周波数近傍の損失が大きくなり、減衰特性の悪化を抑制することができる。また、共振周波数以下のインピーダンスも大きくなることにより、フィルタ1の挿入損失への影響も抑制することができる。また、第2並列共振子Pyの容量が他の通常の共振子に比べて10%以下とする場合には、さらにロスの発生を抑制することができる。
なお、第2並列共振子Pyによりフィルタ1の通過帯域のインピーダンス整合がずれる場合があるため、その他共振子の周波数ピッチや静電容量も合わせて調整している。
【0056】
また、
図3に示す例では、直列共振子S1〜S3の反射器4を浮き電極としている。言い換えると、直列共振子S1〜S3の反射器4を浮き電位としている。これにより、入射波と反射波の位相差を0°に近くすることができ、共振特性を向上させることができるので、共振特性を向上させることができる。これにより、フィルタの挿入損失を低減することができる。
【0057】
一方で、並列共振子P1,P3の反射器4は、基準電位に接続される側の第2櫛歯電極30bの第2バスバー31bと反射器4とが連続して一体的に形成されることで、電気的に接続されている。これにより、並列共振子P1,P3の反射器4が基準電位に接続される。このような構成とすることにより、並列共振子P1,P3(第1並列共振子Px)において、SAWの入射波と反射波との位相差を180°に近くすることができ、キャンセルさせることができる。これにより、反共振特性を改善することができるので、フィルタ1の通過帯域中央におけるロスを低減することができる。また、並列共振子Pの反射器4が第2櫛歯電極30bと同電位であることから、反射器4を基準電位Gnd(この例では接地電位)に接続するための配線として利用することもできる。これにより、配線の取り回しに自由度が高まり、小型化に寄与することができる。さらに、基準電位に接続される配線の幅を拡げることができ、電気抵抗を小さくすることでロスを小さくすることができる。
【0058】
なお並列共振子Pのうち第2並列共振子Py(P2)の反射器4は浮電極としてもよい。具体的には、第2並列共振子Py(P2)は、第2櫛歯電極30bの第2バスバー31bと反射器4とが分離しており電気的に接続されていない。
【0059】
この場合には、第2並列共振子Pyにおいて、入射波と反射波との位相差を0°に近くすることができ、共振特性を向上させることができる。これにより、第1並列共振子Pxのインピーダンスが小さくなり、第2並列共振子Pyを介して信号がグランド側に流れるため、共振周波数付近での減衰量をさらに多くすることができる。なお、この例では、第1並列共振子Pxの反射器4を基準電位に接続させたが、全ての並列共振子Pの反射器4を浮電極としてもよい。
【0060】
なお、
図3に示す例では、並列共振子P1〜P3のうち、最も出力部Oに近い側の共振子を第1並列共振子Pxとした。出力部Oがアンテナ端子として機能する第1端子8に接続される場合には、アンテナ109とのインピーダンス整合をとるために、他の並列共振子と大きく設計の異なる第2並列共振子Pyを遠ざけてもよい。また、
図16に示すように、並列共振子P1〜P3のうち、最も出力部Oに近い側の共振子を第2並列共振子Pyとしてもよい。また、第1並列共振子Pxは1つであってもよいし、2以上あってもよい。同様に第2並列共振子Pyも1つであってもよいし、2以上あってもよい。第2並列共振子Pyを複数設けると、減衰する帯域を広くすることや、減衰する帯域を複数設けることができるという効果がある。その際の各第2並列共振子Pyは設計を変更し、所望の周波数帯、減衰量に合わせるようにしてもよい。
【0061】
また、直列共振子S1〜S3,並列共振子P1〜P3の反射器4は上述の接続関係に限定されない。たとえば、直列共振子S1〜S3の反射器4を基準電位に接続してもよい。
【0062】
<<第2実施形態>>
第1実施形態では、第2並列共振子Pyは、第1並列共振子Pxとはその共振周波数と静電容量とのみを異なる設計思想で設計した例を用いて説明したが、反射器4を異ならせてもよい。具体的には、第1並列共振子Pxの反射器4は反射器バスバー41で各ストリップ42を接続しているが、第2並列共振子Pyの反射器4は反射器バスバー41のない開放型としてもよい。以下、第1実施形態と異なる部分のみを説明し、重複する説明を省略する。
【0063】
図6に、本実施形態に係るフィルタ1に用いられる第2並列共振子Pyの模式的な上面図を示す。
図6において、反射器4は複数本の反射電極指42からなる。反射電極指42は互いに接続されておらず、開放型となっている。
【0064】
このように反射器4を開放型とすることで、共振子の反射効率が低下してQ値が低下するため、反共振周波数におけるインピーダンスZが低下する。これにより反共振周波数近傍においても第2並列共振子Py側に信号を流れやすくすることができるため、反共振周波数の周波数における減衰量を高めることができる。すなわち、反射器4を開放型とすることで、反共振周波数におけるインピーダンスの小さい共振子とすることが重要である。
【0065】
<<第3実施形態>>
第1実施形態では、第2並列共振子Pyは、第1並列共振子Pxとはその共振周波数と静電容量とのみを異なる設計思想で設計した例を用いて説明したが、
図14に示すように、反射器4を含まない、IDT電極3のみを備える共振子としてもよい。以下、第1実施形態と異なる部分のみを説明し、重複する説明を省略する。
【0066】
図14は、本実施形態の第2並列共振子Pyを示す上面図である。第2並列共振子Pyにおいて反射器4をなくすことで、共振子の反射効率が低下してQ値が低下するため反共振周波数におけるインピーダンスZが低下する。これにより反共振周波数近傍においても第2並列共振子Py側に信号を流れやすくすることができるため、反共振周波数の周波数における減衰量を高めることができる。すなわち、反射器4をなくすことで、反共振周波数におけるインピーダンスの小さい共振子とすることが重要である。
【0067】
<<第4実施形態>>
第1実施形態では、第2並列共振子Pyは、第1並列共振子PXとはその共振周波数と静電容量とのみを異なる設計思想で設計した例を用いて説明したが、
図15に示すように、反射器4の反射電極指42を少なくした共振子としてもよい。以下、第1実施形態と異なる部分のみを説明し、重複する説明を省略する。
【0068】
図15は、本実施形態に係るフィルタ1の上面図である。第2並列共振子Pyの反射器4のストリップ42の本数は、第1並列共振子Pxの反射器4のストリップ42の本数よりも少なくなっている。
【0069】
通常、反射器4の反射電極指42は、入力される信号の周波数によって損失を低減させるために必要な本数が決まってくる。例えば1.8GHz以上のHi−Bandでは通常30本程度の反射電極指42が必要であり、例えば800MHzのLo−Bandでは通常20本程度の反射電極指42が必要となる。いずれの場合であっても、反射電極指42の本数が必要となる本数の半分程度となると、共振子としての損失が顕著となる。これに対して、第2並列共振子Pyの反射器4は、通常設計の反射電極指42の本数に比べ半分以下の本数とする。
【0070】
言い換えると、第2並列共振子Pyの反射電極指42の本数は、第1並列共振子Pxの反射電極指42の本数よりも少なくなっている。
【0071】
第2並列共振子Pyにおいて反射器4の反射電極指42数を減らすことで、共振子の反射効率が低下してQ値が低下するため反共振周波数におけるインピーダンスZが低下する。これにより反共振周波数近傍においても第2並列共振子Py側に信号を流れやすくすることができるため、反共振周波数の周波数における減衰量を高めることができる。すなわち、反射器4の反射電極指42数を減らすことで、反共振周波数におけるインピーダンスの小さい共振子とすることが重要である。
【0072】
<<第5実施形態>>
第1実施形態では、第2並列共振子Pyは、第1並列共振子Pxとはその共振周波数と静電容量とのみを異なる設計思想で設計した例を用いて説明したが、IDT電極3の形状を異ならせてもよい。具体的には、第2並列共振子Pyを斜め共振子としてもよい。以下、第1実施形態と異なる部分のみを説明し、重複する説明を省略する。
【0073】
図7に、本実施形態に係るフィルタ1に用いられる第2並列共振子Pyの模式的な上面図を示す。
図7において、第1バスバー31a、第2バスバー31bが延びる方向は、弾性波の伝搬方向に対して傾斜している。言い換えると、第1電極指32aの先端を結ぶ仮想線(L1)は、弾性波の伝搬方向に対して傾斜している。同様に、第2電極指32bの先端を結ぶ仮想線(L2)も弾性波の伝搬方向に対して傾斜している。傾斜角度は2°を越えて、10°以下の範囲で適宜設計すればよい。反射器4も同様の傾斜角を有していてもよい。仮想線L1と仮想線L2とは略平行となっている。
【0074】
このように共振子が斜めとなっていることで、共振子の電気機械結合係数が低下するため反共振周波数におけるインピーダンスZが低下する。これにより反共振周波数近傍においても第2並列共振子Py側に信号を流れやすくすることができるため、反共振周波数の周波数における減衰量を高めることができる。すなわち共振子が斜めとなっていることで、反共振周波数におけるインピーダンスの小さい共振子とすることが重要である。
【0075】
<<第6実施形態>>
第1実施形態では、第2並列共振子Pyは、第1並列共振子Pxとはその共振周波数と静電容量とのみを異なる設計思想で設計した例を用いて説明したが、IDT電極3の一部を間引いてもよい。以下、第1実施形態と異なる部分のみを説明し、重複する説明を省略する。
【0076】
図8に、本実施形態に係るフィルタ1に用いられるIDT電極3の一部を間引いた第2並列共振子Pyの模式的な上面図を示す。
図8において、IDT電極3は、第1電極指32a、第2電極指32bは、通常交互に配置されているが、一部において同じ側の電極指32が隣り合って並んでいる(例えば第1電極指32aが並んでいたり、第2電極指32bが並んでいたりする)部分を有している。このような同じ電位に接続される電極指32のうち隣り合って配置されたものを隣接電極指32cとする。
図8に破線で示す領域32xのように、一方の電極指32(例えば第2電極指32b)があるべき部分になく、その両隣にある他方の電極指(例えば第1電極指32a)が一体となり、太い電極指となっていてもよい。この太い電極指は3本分、5本分・・・等の奇数本分が配置される領域を被覆する太さとなる。
【0077】
このようにIDT電極3の一部を間引いたことで、反共振周波数におけるインピーダンスZが低下する。これにより反共振周波数近傍においても第2並列共振子Py側に信号を流れやすくすることができるため、反共振周波数の周波数における減衰量を高めることができる。すなわちIDT電極3の一部を間引いたことで、反共振周波数におけるインピーダンスの小さい共振子とすることが重要である。
【0078】
なお、上述の実施形態2〜6は、いずれも第2並列共振子Pyの反共振周波数におけるインピーダンスを小さくするための構成を示すものであり、適宜組み合わせてもよい。たとえば、反射器4を開放型とし、かつIDT電極3を斜めにしたものとしてもよい。
【0079】
上述の実施形態では、共振周波数のインピーダンスは大きく変化しないため、いずれの場合も共振周波数近傍の減衰特性改善の効果を得ることが可能であるが、若干のインピーダンス変化は見られるため、要求特性によって適宜組み合わせることができる。例えば、フィルタ1の高周波側近傍に第1の減衰域が位置し、かつその減衰域高周波側近傍にも別の第2の減衰域がある場合には、第2並列共振子Pyの反共振周波数のインピーダンスを低下させることとともに、反共振周波数を第2の減衰域からできるだけ遠ざけることが望ましい。このような場合には、第2並列共振子Pyの共振周波数と反共振周波数の間隔をできるだけ小さくする必要がある。ここで、共振子を斜め型にすることで反共振周波数のインピーダンス低下と共に共振周波数と反共振周波数の間隔も低減できるため、例えば共振子を斜め型にし、かつ反射器4をなくした構造とすることで、良好な特性を得ることができる。
【0080】
同様に、第2並列共振子Pyの共振周波数と反共振周波数の間隔を狭くするために、
図22に示すように、第2並列共振子Pyに並列に付加容量Cを接続てもよい。
【0081】
また、第2並列共振子Pyの反共振周波数を第1の減衰域の外側もしくは、第2の減衰域の外側に位置させるために、第2並列共振子Pyの共振周波数と反共振周波数の間隔を広くするために直列にインダクタンスを接続したりしてもよい。
【0082】
また、上述の例では、単体の圧電基板2を用いたが、
図21に示すように、圧電基板2と支持基板25とが貼りあわされた素子基板26を用いていてもよい。具体的には、素子基板26は、圧電基板2と、圧電基板2の下面(第2面)に貼り合わされた支持基板25とでなる。
【0083】
圧電基板2の厚さは、例えば、一定であり、その大きさは、フィルタ1が適用される技術分野やフィルタ1に要求される仕様等に応じて適宜に設定されてよい。一例として、圧電基板2の厚さは、1〜30μmである。圧電基板2の平面形状および各種寸法も適宜に設定されてよい。
【0084】
支持基板25は、例えば、圧電基板2の材料よりも熱膨張係数が小さい材料によって形成されている。従って、温度変化が生じると圧電基板2に熱応力が生じ、この際、弾性定数の温度依存性と応力依存性とが打ち消し合い、ひいては、フィルタ1の電気特性の温度変化が補償される。このような材料としては、例えば、サファイア等の単結晶、シリコン等の半導体および酸化アルミニウム質焼結体等のセラミックを挙げることができる。なお、支持基板25は、互いに異なる材料からなる複数の層が積層されて構成されていてもよい。
【0085】
支持基板25の厚さは、例えば、一定であり、その厚さは、圧電基板2の厚さと同様に適宜に設定されてよい。ただし、支持基板25の厚さは、温度補償が好適に行われるように、圧電基板2の厚さを考慮して設定される。一例として、圧電基板2の厚さ5〜30μmに対して、支持基板25の厚さは75〜300μmである。支持基板25の平面形状および各種寸法は、例えば、圧電基板2と同等である。
【0086】
圧電基板2および支持基板25は、例えば、接着層を介して互いに貼り合わされている。接着層の材料は、有機材料であってもよいし、無機材料であってもよい。有機材料としては、例えば、熱硬化性樹脂等の樹脂が挙げられる。無機材料としては、例えば、SiO
2が挙げられる。また、両基板は、接着面をプラズマやイオンガン,中性子ガンなどで活性化処理した後に接着層無しに貼り合わせる、いわゆる直接接合によって貼り合わされていても良い。
【実施例】
【0087】
本実施形態のフィルタ1の効果を確認するために、フィルタ1のモデルを設定しシミュレーションを実施して評価を行なった。モデルのSAW素子の基本構成は以下の通りである。
【0088】
[圧電基板2]
材料:46°YカットX伝搬LiTaO
3基板
厚み:15〜30μm
なお、圧電基板2の裏面にはSi基板を貼り合わせている
[IDT電極3]
材料:Al−Cu合金
(ただし、圧電基板2と導電層15との間には6nmのTiからなる下地層がある。)
厚さ(Al−Cu合金層):176nm
IDT電極3の電極指32:
(デューティー:w1/Pt1)0.5
(交差幅W)10〜30λ (λ=2×Pt1)
(電極本数)150〜500本
(電極ピッチ)1.0〜1.2μm
[反射器4]
材料:Al−Cu合金
(ただし、圧電基板2と導電層15との間には6nmのTiからなる下地層がある)
厚さ(Al−Cu合金層):176nm
反射電極指42の本数:30本
反射電極指42のピッチPt2:1.0〜1.2μm
[保護層5]
材料:SiO
2
厚さ:15nm
このような基本構成のSAW素子を用いて、実施例1として、
図9に示すに4つの直列共振子S1〜S4と4つの並列共振子P1〜P4をラダー型に接続したフィルタ素子を形成した。そして、並列共振子P2を第2並列共振子Pyとした。
【0089】
[Pyの基本構成]
材料:Al−Cu合金
(ただし、圧電基板2と導電層15との間には6nmのTiからなる下地層がある。)
厚さ(Al−Cu合金層):176nm
IDT電極3の電極指32:
(デューティー:w1/Pt1)0.5
(交差幅W)7λ (λ=2×Pt1)
(電極本数)50本
(電極ピッチ)1.02μm
[反射器4]
材料:Al−Cu合金
(ただし、圧電基板2と導電層15との間には6nmのTiからなる下地層がある)
厚さ(Al−Cu合金層):176nm
反射電極指42の本数:20本
反射電極指42のピッチPt2:1.02μm
[保護層5]
材料:SiO
2
厚さ:15nm
<実施例1>
上述の基本構成に加え、実施例1として、第2並列共振子Pyの構成は、第1実施形態の例をモデルとしたものを設定した。具体的には、直列共振子S1〜S4の共振周波数、反共振周波数はそれぞれ、およそ1760MHzとおよそ1820MHzとし、第1並列共振子Pxの共振周波数、反共振周波数はそれぞれ、およそ1700MHzとおよそ1810MHzとし、第2並列共振子Pyの共振周波数、反共振周波数はそれぞれ1880MHz、1920MHzとした。また、第1並列共振子Pxの静電容量をおよそ3pFとしたのに対して、第2並列共振子Pyの静電容量はおよそ0.7pFとした。ただし、第1並列共振子Pxおよび第2並列共振子Pyの反射器4は、直列共振子S1〜S4と同様に浮き電極としている。
【0090】
これに対して、比較例として、第2並列共振子Pxを設けないものを準備した。
【0091】
このような実施例1のフィルタと比較例のフィルタのフィルタ特性を
図10に示した。
図10において、横軸は周波数、縦軸は減衰量を示し、破線で比較例に係るフィルタの特性を、実線で実施例1に係るフィルタの特性を示している。
【0092】
この図からも明らかなように、通過帯域よりも高い共振周波数を有する共振子を並列腕に設けることで、通過帯域の外側の高周波側領域(特に1850MHz〜1890MHz)において減衰量を多くすることができることが確認できた。
【0093】
<実施例2>
次に実施例2として、第2並列共振子Pyの構成を第2実施形態の例とした場合についてシミュレーションした。実施例1と実施例2の第2並列共振子のインピーダンス特性を
図11Aに示し、反共振周波数近傍のインピーダンス特性を
図11Bに示す。
図11A,
図11Bにおいて、横軸は周波数、縦軸はインピーダンスを示し、実線で実施例1に係る特性を、太線で実施例2に係る特性を示している。
【0094】
この図からも明らかなように、実施例2の第2並列共振子Pyは反共振特性がなまり、インピーダンスが小さくなっていることが分かった。
【0095】
次に、
図12に、実施例1,実施例2のフィルタ特性を示した。
図12において、横軸は周波数、縦軸は減衰量を示し、実線で実施例1に係るフィルタの特性を、太線で実施例2に係るフィルタの特性を示している。
【0096】
この図からも明らかなように、実施例2に係るフィルタは、1880MHz近傍の減衰量は実施例1と同等の値を得た一方で、1920MHz近傍の減衰量を約7dB改善できていることを確認できた。なお、実施例1と実施例2とでは、挿入損失、第2フィルタ12(Rxフィルタ)とのアイソレーション特性は同等の特性を得ており問題ないことを確認している。
【0097】
以上より、反射器4を開放型とすることで、さらに広い範囲で高い減衰量を得ることができることが確認できた。
【0098】
<実施例3>
次に実施例3として、第2並列共振子Pyの構成を第3実施形態の例とした場合についてシミュレーションした。実施例2と実施例3のフィルタ特性を示した。
図13において、横軸は周波数、縦軸は減衰量を示し、太線で実施例2に係るフィルタの特性を、実線で実施例3に係るフィルタの特性を示している。
【0099】
この図からも明らかなように、実施例3に係るフィルタは、1880MHz近傍の減衰量、1920MHz近傍の減衰量ともに、実施例2と同等の値を得たことを確認できた。なお、実施例2と実施例3とでは、挿入損失、第2フィルタ12(Rxフィルタ)とのアイソレーション特性は同等の特性を得ており問題ないことを確認している。
【0100】
以上より、反射器4をなくしても、広い範囲で高い減衰量を得ることができることが確認できた。
【0101】
<実施例4>
次に実施例4として、第1並列共振子Pxの反射器4を基準電位に接続し、第2並列共振子Pyの反射器4を直列共振子S1〜S4と同様に浮き電極とした場合についてシミュレーションした。
【0102】
モデルとなるSAW素子の基本構成は下記の通りである。
【0103】
[圧電基板2]
材料:46°YカットX伝搬LiTaO
3基板
[IDT電極3]
材料:Al−Cu合金
(ただし、圧電基板2と導電層15との間には6nmのTiからなる下地層がある。)
厚さ(Al−Cu合金層):414nm
IDT電極3の電極指32:
(デューティー:w1/Pt1)0.5
(交差幅W)10〜30λ (λ=2×Pt1)
(電極本数)120〜200本
(電極ピッチ)2.25〜2.45μm
[反射器4]
材料:Al−Cu合金
(ただし、圧電基板2と導電層15との間には6nmのTiからなる下地層がある)
厚さ(Al−Cu合金層):414nm
反射電極指42の本数:20本
反射電極指42のピッチPt2:2.25〜2.45μm
[保護層5]
材料:SiO
2
厚さ:15nm
このような基本構成のSAW素子を用いて、実施例4として、
図17に示すに4つの直列共振子S1〜S4と4つの並列共振子P1〜P4をラダー型に接続したフィルタを形成した。そして、並列共振子P4を第2並列共振子Pyとした。
【0104】
[Pyの基本構成]
材料:Al−Cu合金
(ただし、圧電基板2と導電層15との間には6nmのTiからなる下地層がある。)
厚さ(Al−Cu合金層):414nm
IDT電極3の電極指32:
(デューティー:w1/Pt1)0.5
(交差幅W)7λ (λ=2×Pt1)
(電極本数)50本
(電極ピッチ)2.14μm
[反射器4]
材料:Al−Cu合金
(ただし、圧電基板2と導電層15との間には6nmのTiからなる下地層がある)
厚さ(Al−Cu合金層):414nm
反射電極指42の本数:20本
反射電極指42のピッチPt2:2.14μm
[保護層5]
材料:SiO
2
厚さ:15nm
なお、直列共振子S1〜S4の反射器4は浮き電極とし、並列共振子P1〜P3の反射器4は基準電位に接続した。そして、並列共振子P4の反射器4は浮き電極とした。並列共振子P4の容量は他の並列共振子の容量の7%程度にあたる4pFとした。
【0105】
これに対して、比較例2として、第2並列共振子Pyを設けないもの、比較例3として、並列共振子P4の反射器4を基準電位に接続したものについても準備した。
【0106】
このような実施例1のフィルタ素子と比較例2のフィルタ素子のフィルタ特性を
図18に、実施例4のフィルタ素子と比較例3のフィルタ素子のフィルタ特性を
図19にそれぞれ示した。
図18,
図19において、横軸は周波数、縦軸は減衰量を示す。両図とも、破線で比較例(比較例2,比較例3)に係るフィルタの特性を、実線で実施例4に係るフィルタ1の特性を示している。
【0107】
この図からも明らかなように、通過帯域よりも高い共振周波数を有する共振子を並列腕に設け、さらに、その反射器を浮き電極とすることで、通過帯域の外側の高周波側領域において減衰量を多くすることができることが確認できた。特に、第2並列共振子Pyの反射器を浮き電位に接続することで、通過帯域外側の高周波側に位置する減衰域における最大値を低減することができる。また、ロスが増加していないことも確認できた。
【0108】
なお、上述の例では、直列共振子S1〜S4の反射器4を浮き電極とし、並列共振子P1〜P3の反射器4を接地電位とした。これによる効果を検証する。具体的には全ての共振子S1〜S4,P1〜P4の反射器4を浮き電極とした比較例4と並列共振子P1〜P4の反射器4を接地電位に接続した比較例5について同様にフィルタ特性を測定した。
【0109】
比較例4,5の基本構成は以下の通りとした。
【0110】
[圧電基板2]
材料:38.7°YカットX伝搬LiTaO
3基板
[IDT電極3]
材料:Al−Cu合金
厚さ(Al−Cu合金層):198nm
IDT電極3の電極指32:
(デューティー:w1/Pt1)0.55
(交差幅W)10〜30λ (λ=2×Pt1)
(電極本数)50〜400本
(電極ピッチ)1.1〜1.4μm
[反射器4]
材料:Al−Cu合金
厚さ(Al−Cu合金層):198nm
反射電極指42の本数:20〜30本
反射電極指42のピッチPt2:1.1〜1.4μm
[保護層5]
材料:SiO
2
厚さ:15nm
【0111】
図20に比較例4,5のフィルタ特性を示す。
図20において横軸は周波数を、縦軸は減衰量を示し、比較例4の特性を破線で、比較例5の特性を実線で示した。
図20Aからも明らかなように、通過帯域の損失が比較例5で約0.3dB改善されていることが分かる。同様に
図20Bから明らかなように、通過帯域外の損失が比較例5で約0.3dB改善されていることが分かる。
【0112】
このように、直列共振子Sの反射器4を浮かせて、並列共振子Pの反射器4を接地することにより、通過帯域内外において損失が改善されることが確認された。以上より、第1並列共振子Px以外の並列共振子P1〜P3は接地することで、損失改善することが確認された。
【0113】
上述の実施例1〜4より、第2並列共振子Pyを設けることで、通過帯域内外におい帯域外における減衰が改善されることが確認された。