(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408632
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】非定常的なオーディオ信号からのノイズのある信号の識別
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20181004BHJP
G10L 25/84 20130101ALI20181004BHJP
【FI】
A61B5/02 350
G10L25/84
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-55091(P2017-55091)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-38787(P2018-38787A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】201621030833
(32)【優先日】2016年9月9日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】510337621
【氏名又は名称】タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TATA Consultancy Services Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202577
【弁理士】
【氏名又は名称】林 浩
(72)【発明者】
【氏名】ウキル アリジット
(72)【発明者】
【氏名】バンディオパディヤイ ソマ
(72)【発明者】
【氏名】プリ チェタンヤ
(72)【発明者】
【氏名】パル アルパン
(72)【発明者】
【氏名】シン リトゥラジ
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー アヤン
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー デバヤン
【審査官】
高松 大
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−309075(JP,A)
【文献】
特表2013−518607(JP,A)
【文献】
特表2010−529494(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0120479(US,A1)
【文献】
特開2009−128906(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/063794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02
G10L 25/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサに実装された方法(300)であって、前記方法は、
非定常的なオーディオ信号と関連付けられた複数の特徴の特徴セット(F)を受信する工程(302)と、
複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)を備えるトレーニング・セットを受信する工程(304)と、
前記トレーニング・セットおよび前記特徴セット(F)に基づいてユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成する工程(306)と、
前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちの前記ユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の非バイアス閾値を動的に生成する工程(308)と、
(i)テスト信号の前記ユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられた前記ユニーク特徴属性値(UFAV)および前記極性(P)と(ii)前記ユニーク特徴属性値(UFAV)および前記極性(P)の前記動的に生成された非バイアス閾値に基づく統計的分離によって、前記テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別する工程(310)と、
1つ以上の予め定義された条件に基づいて前記非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号およびノイズの多いテスト信号のうちの1つとしてさらに分類する工程(312)と
を備える、プロセッサに実装された方法。
【請求項2】
前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成する工程は、
前記複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた前記複数の特徴の各々に関して特徴値を抽出する工程と、
(i)少なくとも第1の予め決定されたパーセンテージの前記複数の前記非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および少なくとも第2の予め決定されたパーセンテージの前記複数の前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)に関して、前記非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と関連付けられた最小特徴値が、前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた最大特徴値より大きい、ならびに(ii)少なくとも前記第1の予め決定されたパーセンテージの前記複数の前記非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および少なくとも前記第2の予め決定されたパーセンテージの前記複数の前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)に関して、前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた最小特徴値が、前記非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と関連付けられた最大特徴値より大きい、のうちの1つの条件が満たされるならば、前記特徴セット(F)からの各特徴をユニークな弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークな弁別的特徴として分類する工程と
を備える、請求項1に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項3】
前記第1の予め決定されたパーセンテージおよび前記第2の予め決定されたパーセンテージは、90%である、請求項2に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項4】
前記ユニーク特徴属性値(UFAV)は、(i)前記複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値と(ii)前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号の前記ユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値との平均である、請求項1に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項5】
前記テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別する工程は、
クリーンなバケット(BC)のカーディナリティおよびノイズのあるバケット(BN)のカーディナリティに対する厳しい多数投票ルールに基づく、前記テスト信号の前記ユニークかつ弁別的特徴の前記クリーンなバケット(BC)および前記ノイズのあるバケット(BN)へのバケッティング、ならびに
クリーンなバケット(BC)のカーディナリティおよびノイズのあるバケット(BN)のカーディナリティに対する重み付き多数投票ルールに基づく、前記テスト信号の前記ユニークかつ弁別的特徴の前記クリーンなバケット(BC)および前記ノイズのあるバケット(BN)へのバケッティング
のうちの1つの条件を備える、請求項1に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項6】
前記非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号として分類する工程は、
前記1つ以上の予め定義された条件:
前記クリーンなバケット(BC)のカーディナリティが前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)の前記カーディナリティより第1の予め決定された値だけ小さい、および
前記ユニーク特徴属性値(UFAV)と、前記ノイズのある信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた前記値との間のユークリッド距離が、前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)の前記カーディナリティの少なくとも一部分において前記ユニーク特徴属性値(UFAV)より第2の予め決定された値だけ小さい
からの1つの条件を満たすことを備える、請求項5に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項7】
前記クリーンなバケット(BC)の前記カーディナリティは、前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)の前記カーディナリティの少なくとも3分の1である、請求項6に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項8】
前記ユニーク特徴属性値(UFAV)と、前記ノイズのある信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた前記値との間の前記ユークリッド距離は、前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)の前記カーディナリティの少なくとも50%において前記ユニーク特徴属性値(UFAV)の10%以下である、請求項6に記載のプロセッサに実装された方法。
【請求項9】
システム(100)であって、前記システムは、
1つ以上のハードウェアプロセッサ(104)に作動的に結合されて、命令を記憶するように構成された1つ以上のデータ記憶デバイス(102)を備え、前記命令は、前記1つ以上のハードウェアプロセッサによって
非定常的なオーディオ信号と関連付けられた複数の特徴の特徴セット(F)を受信し、
複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)を備えるトレーニング・セットを受信し、
前記トレーニング・セットおよび前記特徴セットに基づいてユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成し、
前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちの前記ユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の非バイアス閾値を動的に生成し、
(i)テスト信号の前記ユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられた前記ユニーク特徴属性値(UFAV)および前記極性(P)と(ii)前記ユニーク特徴属性値(UFAV)および前記極性(P)の前記動的に生成された非バイアス閾値とに基づく統計的分離によって、前記テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別して、
1つ以上の予め定義された条件に基づいて前記非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号およびノイズの多いテスト信号のうちの1つとしてさらに分類する
ように実行するために構成された、システム(100)。
【請求項10】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、
前記複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた前記複数の特徴の各々に関して特徴値を抽出する工程と、
(i)第1の予め決定されたパーセンテージの前記複数の前記非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および第2の予め決定されたパーセンテージの前記複数の前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)に関して、前記非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と関連付けられた最小特徴値が、前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた最大特徴値より大きい、ならびに(ii)少なくとも前記第1の予め決定されたパーセンテージの前記複数の前記非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および前記第2の予め決定されたパーセンテージの前記複数の前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)に関して、前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた最小特徴値が、前記非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と関連付けられた最大特徴値より大きい、のうちの1つの条件が満たされるならば、前記特徴セットからの各特徴をユニークな弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークな弁別的特徴として分類する工程と
によって、前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成するようにさらに構成された、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の予め決定されたパーセンテージおよび前記第2の予め決定されたパーセンテージは、90%である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記ユニーク特徴属性値(UFAV)は、(i)前記複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値と(ii)前記非定常的なノイズのあるオーディオ信号の前記ユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値との平均である、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、
クリーンなバケット(BC)のカーディナリティおよびノイズのあるバケット(BN)のカーディナリティに対する厳しい多数投票ルールに基づく、前記テスト信号の前記ユニークかつ弁別的特徴の前記クリーンなバケット(BC)および前記ノイズのあるバケット(BN)へのバケッティング、ならびに
クリーンなバケット(BC)のカーディナリティおよびノイズのあるバケット(BN)のカーディナリティに対する重み付き多数投票ルールに基づく、前記テスト信号の前記ユニークかつ弁別的特徴の前記クリーンなバケット(BC)および前記ノイズのあるバケット(BN)へのバケッティング
のうちの1つの条件が満たされるならば、前記テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別するようにさらに構成された、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つ以上のハードウェアプロセッサは、1つ以上の予め定義された条件:
前記クリーンなバケット(BC)のカーディナリティが前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)の前記カーディナリティより第1の予め決定された値だけ小さい、および
前記ユニーク特徴属性値(UFAV)と、前記ノイズのある信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた前記値との間のユークリッド距離が、前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)の前記カーディナリティの少なくとも一部分において前記ユニーク特徴属性値(UFAV)より第2の予め決定された値だけ小さい
からの1つの条件が満たされるならば、前記非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号としてさらに分類するようにさらに構成された、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記クリーンなバケット(BC)の前記カーディナリティは、前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)の前記カーディナリティの少なくとも3分の1である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ユニーク特徴属性値(UFAV)と、前記ノイズのある信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた前記値との間の前記ユークリッド距離は、前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)の前記カーディナリティの少なくとも50%において前記ユニーク特徴属性値(UFAV)の10%以下である、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
コンピュータプログラム製品であって、その中に具現されたコンピュータ可読プログラムを有する非一時的コンピュータ可読媒体を備え、前記コンピュータ可読プログラムは、コンピューティングデバイス上で実行されたときに、コンピューティングデバイスに、
非定常的なオーディオ信号と関連付けられた複数の特徴の特徴セット(F)を受信し、
複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)を備えるトレーニング・セットを受信し、
前記トレーニング・セットおよび前記特徴セット(F)に基づいてユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成し、
前記ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちの前記ユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の非バイアス閾値を動的に生成し、
(i)テスト信号の前記ユニークかつ弁別的な特徴の各々と関連付けられた前記ユニーク特徴属性値(UFAV)および前記極性(P)と(ii)前記ユニーク特徴属性値(UFAV)および前記極性(P)の前記動的に生成された非バイアス閾値とに基づく統計的分離によって、前記テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別して、
1つ以上の予め定義された条件に基づいて、前記非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号およびノイズの多いテストのうちの1つとしてさらに分類する
ようにさせる、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2016年9月9日出願のインド特許出願第201621030833号からの優先権を主張する。前述の出願は参照によってその内容の全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本明細書における実施形態は、一般に、非定常的なオーディオ信号からのノイズのある信号の識別に関し、より詳しくは、ノイズのあるオーディオ信号からノイズの少ないオーディオ信号のより細かい分類を行う能力を用いたノイズのある信号の識別を自動化するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心音図(PCG:phonocardiogram)のような非定常的な生理的オーディオ信号は、しばしば、さらなる意思決定および解析を大いに誤りやすくするのに十分多くのノイズ成分を含む。自動化された方法によるノイズのある非定常的な生理的オーディオ信号の検出または識別が示唆するのは、さらなる解析がクリーンで非定常的な生理的オーディオ信号に対してのみ行われることであろう。例として、心音記録における自動化された病理の分類は、50年以上にわたって行われてきたが依然として課題を提起する。心音分類に関する現在の研究は、主としてクリーンな記録のみを正当と認めるため、欠陥がある。しかしながら、実際のところ、PCG記録は低信号品質を有し、しばしば多量のノイズが存在する。従って、是非必要なのは、別の状況では拒絶されるノイズのある成分からノイズの少ない記録成分をさらに抽出して、さらなる解析の間にノイズの少ない成分中のクリティカルな情報が確実に見逃されないようにすることである。
【発明の概要】
【0004】
本開示の実施形態は、本発明者によって認識された従来のシステムにおける上述の技術的問題の1つ以上に対する解決策として技術的な改良を提示する。
【0005】
一態様において、プロセッサに実装された方法が提供され、方法は、非定常的なオーディオ信号と関連付けられた複数の特徴の特徴セット(F:feature set)を受信する工程と;複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C:clean audio signals)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N:non−stationary noisy audio signals)を備えるトレーニング・セットを受信する工程と;トレーニング・セットおよび特徴セット(F)に基づいてユニークかつ弁別的特徴セット(UF:unique and distinctive feature set)を生成する工程と;ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV:unique feature attribute value)および極性(P:polarity)の非バイアス閾値を動的に生成する工程と;(i)テスト信号のユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)と(ii)ユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の動的に生成された非バイアス閾値とに基づく統計的分離によって、テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別する工程と;1つ以上の予め定義された条件に基づいて非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号およびノイズの多いテスト信号のうちの1つとしてさらに分類する工程とを備える。
【0006】
別の態様では、システムが提供され、システムは、1つ以上のプロセッサに作動的に結合されて、命令を記憶するように構成された1つ以上のデータ記憶デバイスを備え、命令は、1つ以上のプロセッサによって、非定常的なオーディオ信号と関連付けられた複数の特徴の特徴セット(F)を受信し;複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)を備えるトレーニング・セットを受信し;トレーニング・セットおよび特徴セットに基づいてユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成し;ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の非バイアス閾値を動的に生成し;(i)テスト信号のユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)と(ii)ユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の動的に生成された非バイアス閾値とに基づく統計的分離によって、テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別して;1つ以上の予め定義された条件に基づいて非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号およびノイズの多いテスト信号のうちの1つとしてさらに分類するように実行するために構成される。
【0007】
さらに別の態様では、コンピュータプログラム製品が提供され、コンピュータプログラム製品は、その中に具現されたコンピュータ可読プログラムを有する非一時的コンピュータ可読媒体を備え、コンピュータ可読プログラムは、コンピューティングデバイス上で実行されたときに、コンピューティングデバイスに、非定常的なオーディオ信号と関連付けられた複数の特徴の特徴セット(F)を受信し;複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)を備えるトレーニング・セットを受信し;トレーニング・セットおよび特徴セットに基づいてユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成し;ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の非バイアス閾値を動的に生成し;(i)テスト信号のユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)と(ii)ユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の動的に生成された非バイアス閾値とに基づく統計的分離によって、テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別して;1つ以上の予め定義された条件に基づいて非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号およびノイズの多いテスト信号のうちの1つとしてさらに分類するようにさせる。
【0008】
本開示のある実施形態において、1つ以上のハードウェアプロセッサは、複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた複数の特徴の各々に関して特徴値を抽出する工程と;(i)非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と関連付けられた最小特徴値が、非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた最大特徴値より複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)の第1の予め決定されたパーセンテージおよび複数の非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)の第2の予め決定されたパーセンテージだけ大きい、ならびに(ii)非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた最小特徴値が、非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と関連付けられた最大特徴値より複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)の少なくとも第1の予め決定されたパーセンテージおよび複数の非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)の第2の予め決定されたパーセンテージだけ大きい、のうちの1つの条件が満たされるならば、特徴セットからの各特徴をユニークな弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークな弁別的特徴として分類する工程とによって、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成するようにさらに構成される。
【0009】
本開示のある実施形態において、第1の予め決定されたパーセンテージおよび第2の予め決定されたパーセンテージは、90%である。
【0010】
本開示のある実施形態において、ユニーク特徴属性値(UFAV)は、(i)複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値と(i)非定常的なノイズのあるオーディオ信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値との平均である。
【0011】
本開示のある実施形態において、1つ以上のハードウェアプロセッサは、クリーンなバケット(B
C)のカーディナリティおよびノイズのあるバケット(B
N)のカーディナリティに対する厳しい多数投票ルールに基づく、テスト信号のユニークかつ弁別的特徴のクリーンなバケット(B
C)およびノイズのあるバケット(B
N)へのバケッティング、ならびにクリーンなバケット(B
C)のカーディナリティおよびノイズのあるバケット(B
N)のカーディナリティに対する重み付き多数投票ルールに基づく、テスト信号のユニークかつ弁別的特徴のクリーンなバケット(B
C)およびノイズのあるバケット(B
N)へのバケッティング、のうちの1つの条件が満たされるならば、テスト信号を非定常的なノイズのあるテスト信号または非定常的なクリーンなテスト信号として識別するようにさらに構成される。
【0012】
本開示のある実施形態において、1つ以上のハードウェアプロセッサは、1つ以上の予め定義された条件、クリーンなバケット(B
C)のカーディナリティが、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティより第1の予め決定された値だけ大きい、およびユニーク特徴属性値(UFAV)と、ノイズのある信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値との間のユークリッド距離が、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティの少なくとも一部分においてユニーク特徴属性値(UFAV)より第2の予め決定された値だけ小さい、からの1つの条件が満たされるならば、非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号としてさらに分類するようにさらに構成される。ある実施形態では、クリーンなバケット(B
C)のカーディナリティは、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティの少なくとも3分の1である。ある実施形態では、ユニーク特徴属性値(UFAV)と、ノイズのある信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値との間のユークリッド距離は、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティの少なくとも50%においてユニーク特徴属性値(UFAV)の10%以下である。
【0013】
当然のことながら、前述の一般的な記載および以下の詳細な記載は、例示的かつ説明的であるに過ぎず、請求されるように、本開示の実施形態を限定するものではない。
【0014】
図面を参照すると、本明細書における実施形態が以下の詳細な記載からさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示のある実施形態による、非定常的なオーディオ信号からノイズのある信号を識別するためのシステムの例示的なブロック図を示す。
【
図2】本開示のある実施形態による、非定常的なオーディオ信号からノイズのある信号を識別するための方法の例示的な高レベルのフローチャートを示す。
【
図3】本開示のある実施形態による、非定常的なオーディオ信号からノイズのある信号を識別するための方法の例示的なフロー図を示す。
【
図4A】本開示のある実施形態による、受信されたトレーニング・セットおよび特徴セットに基づいてユニークかつ弁別的特徴セットを生成するステップのための代表的なブロック図を示す。
【
図4B】ユニークかつ弁別的特徴セットのうちのユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値および極性の非バイアス閾値を動的に生成するステップのための代表的なブロック図を示す。
【
図4C】統計的分離に基づくテスト信号のノイズのある信号またはクリーンな信号としての識別のステップのための代表的なブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
当業者には当然のことながら、本明細書におけるいずれのブロック図も本主題の原理を採用した例示的なシステムの概念図を表す。同様に、当然のことながら、いずれのフローチャート、フロー図、状態遷移図、疑似コードなども、コンピューティングデバイスまたはプロセッサが明示的に示されるか否かに係わらず、コンピュータ可読媒体で実質的に表され、かかるコンピューティングデバイスまたはプロセッサによって実行されてもよい様々な処理を表す。
【0017】
添付図面を参照して例示的な実施形態が記載される。図中で参照番号の最上位桁(単数または複数)は、参照番号が最初に現われる図を特定する。便利であればどこでも、複数の図面を通じて同じかまたは同様の部分を指すために同じ参照番号が用いられる。本明細書では開示される原理の例および特徴が記載されるが、開示される実施形態の精神および範囲から逸脱することなく、修正、適合、および他の実装が可能である。以下の詳細な記載は、例示的に過ぎないと見做されるものとし、真の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【0018】
詳細な説明を提示する前に、留意すべきは、以下の考察のすべてが、記載される特定の実装に係わらず、本質的に例示的であり、限定的ではないことである。
【0019】
本開示のシステムおよび方法が目指すのは、非定常的なオーディオ信号からノイズのある信号を識別して、それらをノイズの少ない、およびノイズの多い非定常的なオーディオ信号にさらに分類することである。これは、ノイズのある信号がさらなる処理を拒絶されたときにノイズの少ない非定常的なオーディオ信号に含まれるかもしれないクリティカルな情報が失われないことを確実にする。ある実施形態では、かかる非定常的なオーディオ信号が心音図(PCG)のような生理的信号であってもよい。
【0020】
次に図面、より詳しくは、複数の図の全体にわたって同様の参照文字が対応する特徴を一貫して示す
図1から4を参照して、好ましい実施形態が示され、これらの実施形態が以下の例示的なシステムおよび方法に照らして記載される。
【0021】
図1は、本開示のある実施形態による、非定常的なオーディオ信号からノイズのある信号を識別するためのシステム100の例示的なブロック図を示す。ある実施形態において、システム100は、1つ以上のプロセッサ104、通信インターフェース・デバイス(単数または複数)または入力/出力(I/O:input/output)インターフェース(単数または複数)106、および1つ以上のプロセッサ104に作動的に結合された1つ以上のデータ記憶デバイスまたはメモリ102を含む。ハードウェアプロセッサである1つ以上のプロセッサ104は、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理装置、ステートマシン、グラフィックスコントローラ、論理回路素子、および/または動作命令に基づいて信号を操作する任意のデバイスとして実装できる。他の能力のうちでも、プロセッサ(単数または複数)は、メモリに記憶されたコンピュータ可読命令をフェッチして実行するように構成される。ある実施形態において、システム100は、様々なコンピューティングシステム、例えば、ラップトップコンピュータ、ノートブック、ハンドへルドデバイス、ワークステーション、メインフレームコンピュータ、サーバ、ネットワーククラウドなどに実装できる。
【0022】
I/Oインターフェース(単数または複数)106は、様々なソフトウェアおよびハードウェア・インターフェース、例えば、ウェブインターフェース、グラフィカルユーザインタフェースなどを含むことができ、有線ネットワーク、例えば、LAN、ケーブルなど、およびWLAN、セルラ、または衛星のようなワイヤレスネットワークを含めて、多種多様なネットワークN/Wおよびプロトコル・タイプ内の多重通信を容易にすることができる。ある実施形態において、I/Oインターフェース・デバイス(単数または複数)は、いくつかのデバイスを互いに、または他のサーバへ接続するための1つ以上のポートを含むことができる。
【0023】
メモリ102は、例えば、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM:static random access memory)およびダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM:dynamic random access memory)のような揮発性メモリ、および/またはリードオンリーメモリ(ROM:read only memory)、消去可能プログラマブルROM、フラッシュメモリのような不揮発性メモリ、ハードディスク、光ディスクならびに磁気テープを含めて、当技術分野で知られる任意のコンピュータ可読媒体を含んでもよい。ある実施形態では、システム100の1つ以上のモジュール(図示せず)をメモリ102に記憶できる。
【0024】
図2は、本開示のある実施形態による、非定常的なオーディオ信号からノイズのある信号を識別するための方法の例示的な高レベルのフローチャート200を示す。ある実施形態において、本開示の方法は、示されるような2つの主なステージを備える。全般的にブロック202として参照されるステージ1では、非定常的なオーディオ・テスト信号が非定常的なクリーンなオーディオ信号または非定常的なノイズのあるオーディオ信号のいずれかとして自動的に分類される。全般的にブロック204として参照されるステージ2では、非定常的なノイズのあるオーディオ信号が、さらなる情報のためにさらに解析されてもよい非定常的なノイズの少ないオーディオ信号か、または拒絶されて、さらなる解析に必要とされることのない非定常的なノイズの多いオーディオ信号として自動的にさらに分類される。
【0025】
図3は、本開示のある実施形態による、非定常的なオーディオ信号からノイズのある信号を識別するための方法300の例示的なフロー図を示す。ある実施形態において、システム100は、1つ以上のプロセッサ104に作動的に結合されて、命令を記憶するように構成された1つ以上のデータ記憶デバイスまたはメモリ102を備え、命令は、1つ以上のプロセッサ104によって方法300のステップを実行するために構成される。次に、
図3を参照して
図2のステージ1およびステージ2が詳細に説明される。
【0026】
ある実施形態において、ステップ302では、システム100の1つ以上のプロセッサは、非定常的なオーディオ信号と関連付けられた複数の特徴の特徴セット(F)を受信するように構成される。ある実施形態において、非定常的なオーディオ信号は、スペクトル・セントロイド、短時間エネルギー、スペクトル・ロールオフ、スペクトル・フラックスなどのような複数の関連付けられた特徴をもつ生理的オーディオ信号であってもよい。特徴セット(F)は、本開示のシステム100の性能改善に向けて考慮中の非定常的なオーディオ信号と関連付けられてもよい、すべての可能な特徴をカバーするのに十分に網羅的であってもよい。
【0027】
ある実施形態において、ステップ304では、システム100の1つ以上のプロセッサ104は、複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)を備えるトレーニング・セットを受信するように構成される。
【0028】
ある実施形態において、ステップ306では、
図4Aに示されるように、システム100の1つ以上のプロセッサ104は、ステップ304で受信されたトレーニング・セットおよびステップ302で受信された特徴セットに基づいてユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成するように構成される。最初に、システム100は、複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)および非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた複数の特徴の各々に関して特徴値を抽出する。次の条件、
(i)非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と関連付けられた最小特徴値が、非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた最大特徴値より複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)の少なくとも第1の予め決定されたパーセンテージおよび複数の非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)の少なくとも第2の予め決定されたパーセンテージだけ大きい、
(ii)非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)と関連付けられた最小特徴値が、非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と関連付けられた最大特徴値より複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)の少なくとも第1の予め決定されたパーセンテージおよび複数の非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)の少なくとも第2のパーセンテージだけ大きい
のうちの1つが満たされるならば、特徴セット(F)からの各特徴がユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークかつ弁別的特徴として分類される。
【0029】
ある実施形態において、第1の予め決定されたパーセンテージおよび第2の予め決定されたパーセンテージは、90%である。
【0030】
ある例示的な実施形態において、例えば、特徴セット(F)からの特徴は、「ピーク振幅」である。トレーニング・セットが10個のクリーンなオーディオ信号(C)および10個のノイズのあるオーディオ信号(N)を含むと仮定すると、10個のクリーンなオーディオ信号(C)および10個のノイズのある信号(N)の各々に対して特徴値が抽出されてもよい。特徴「ピーク振幅」は、次の2つの条件のうちの1つが満たされる場合にのみユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークかつ弁別的特徴として分類されてもよい。
(i)トレーニング・セット中の10Cおよび10Nのオーディオ信号からの少なくとも9個のクリーンなオーディオ信号(C)および少なくとも9個のノイズのあるオーディオ信号(N)に関して、10個のクリーンなオーディオ信号(C)のピーク振幅の最小値>10個のノイズのあるオーディオ信号(N)のピーク振幅の最大値、このケースでは極性が+1である。
(ii)トレーニング・セット中の10Cおよび10Nのオーディオ信号からの少なくとも9個のクリーンなオーディオ信号(C)および少なくとも9個のノイズのあるオーディオ信号(N)に関して、10個のノイズのあるオーディオ信号(N)のピーク振幅の最小値>10個のクリーンなオーディオ信号(C)のピーク振幅の最大値、このケースでは極性が−1である。
【0031】
例示的な実施形態から、注目されるのは、ユニークかつ弁別的特徴として分類されてもよい特徴がオーディオ信号のクリーンな部類またはオーディオ信号のノイズのある部類のいずれかに近い関連付けられた値を有し、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティ(cardinality(濃度))が特徴セット(F)のカーディナリティ以下、すなわち、|UF|≦|F|である大部分(典型的に90%)のケースにおいてそれらを区別できることである。特徴セットが非定常的な生理的オーディオ信号に関するスペクトル・セントロイド、短時間エネルギー、スペクトル・ロールオフ、スペクトル・フラックスのような特徴を含んでもよい別の実施例では、ユニークかつ弁別的特徴セットUF={高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)係数の10%トリム平均、高速フーリエ変換係数の歪度、80%のFFTエネルギーがそれ未満に含まれる周波数、高速フーリエ変換係数(Fast Fast Fourier transform co−efficients)の尖度}である。
【0032】
本開示に従って、ノイズのある、およびクリーンなオーディオ信号を明確に区別するユニークかつ互いに排他的な特徴が自動的に生成される。さらに、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)を生成するステップは、特定の分類器に依存しない。
【0033】
クリーンな、およびノイズのある非定常的な生理的オーディオ信号をユニークかつ弁別的特徴セット(UF)に関して区別するために、ステップ308では、システム100の1つ以上のプロセッサ104は、
図4Bに示されるように、自動化された仕方で、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のうちのユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特性属性値(UFAV)および極性(P)の非バイアス閾値を動的に生成するように構成される。本開示のステップ308は、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)および/またはトレーニング・セットが変化した場合に閾値が自動的かつ動的に確実に調整されるようにする。
【0034】
動的に生成される非バイアス閾値は、ユニーク特徴属性値および極性からなるタプル、すなわち、動的非バイアス自動閾値DUAT(Dynamic Unbiased Automatic Threshold)=[ユニーク特徴属性値(UFAV),極性(P)]であり、ここで極性は、クリーンな信号に関して考慮され、正極性(P=1)は、オーディオ信号のUFAV値がそのUFVのDUATの値より大きいときに、その信号がクリーンな傾向があることを意味する。例えば、UFAVのうちの1つが信号振幅の平均であり、その特徴(信号振幅の平均)のUFAVがρにセットされた場合、P=1は、テスト信号の信号振幅がρより大きければ、テスト信号がクリーンな傾向があることを示す。
【0035】
本開示に従って、UFAVは、システム100の出力の精度向上を確実にするために、大多数の非定常的なクリーンなオーディオ信号(C)と非定常的なノイズのあるオーディオ信号(N)とから等距離にある。ある実施形態では、ユニーク特徴属性値(UFAV)は、(i)複数の非定常的なクリーンなオーディオ信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値と(ii)非定常的なノイズのあるオーディオ信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値との平均、すなわち、UFAV
n=mean(median(UF
n,{1,...(|C+N|)}),n∈|UF|であり、これは、ユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値の中央値の完全なトレーニング・セットにわたる平均である。UFAVは、そのユニークな特徴に関してクリーンな信号とノイズのある信号とを高い確率で分けるポイントである。
【0036】
ある実施形態において、ステップ310では、システム100の1つ以上のプロセッサ104は、
図4Cに示されるように、(i)テスト信号のユニークかつ弁別的特徴の各々と関連付けられたユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)と(ii)ユニーク特徴属性値(UFAV)および極性(P)の動的に生成された非バイアス閾値とに基づく統計的分離によって、テスト信号を非定常的なノイズのあるオーディオ信号または非定常的なクリーンなオーディオ信号として識別するように構成される。ある実施形態では、ユニークかつ弁別的特徴の総数がクリーンなバケット(B
C)のカーディナリティおよびノイズのあるバケット(B
N)のカーディナリティに対する厳しい多数投票ルールに基づいて、クリーンなバケット(B
C)およびノイズのあるバケット(BN)へバケッティングされる。ある実施形態において、クリーンなバケット(B
C)のカーディナリティとノイズのあるバケット(B
N)のカーディナリティとが等しければ、クリーンなバケット(B
C)の方により多くの重みを与えることもできる、重み付き多数投票ルールが採用されてもよい。曖昧さがあればそれを避けるために、決定過程では、ceil(|UF|/2)個のバケットがクリーンな部類からであれば、テスト信号がクリーンあるとして識別される。従って、|UF|=B
C+B
NおよびB
C=ceil(|UF|/2)ならびにB
N=|UF|−ceil(|UF|/2)のテスト信号については、そのテスト信号がクリーンであるとして分類される。例として、(B
C)=5および(B
N)=4としてバケッティングされたテスト信号について識別された9個のユニークかつ弁別的特徴があれば、ceil(|9|/2)=ceil(4.5)=5である。その場合にはこのテスト信号が非定常的なクリーンなオーディオ信号として分類されてもよい。
【0037】
ある実施形態では、
図2のステージ1は、本明細書に先に記載されたステップ302から310を備えてもよく、
図2のステージ2は、
図3ならびに
図4A、
図4Bおよび
図4Cを参照して本明細書に以下に記載されるステップ312を備えてもよい。
【0038】
ある実施形態において、ステップ312では、システム100の1つ以上のプロセッサ104は、非定常的なノイズのあるテスト信号をノイズの少ないテスト信号およびノイズの多いテスト信号のうちの1つとしてさらに分類するように構成される。非定常的なノイズのあるテスト信号のノイズの少ないテスト信号としてのより細かいレベルの分類は、以下の条件、(i)クリーンなバケット(B
C)のカーディナリティが、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティより第1の予め決定された値だけ大きい、(ii)ユニーク特徴属性値(UFAV)と、ノイズのある信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値との間のユークリッド距離が、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティの少なくとも一部分においてユニーク特徴属性値(UFAV)より第2の予め決定された値だけ小さい、のうちの1つに基づく。
【0039】
ある実施形態において、ノイズのあるテスト信号は、クリーンなバケット(B
C)のカーディナリティが、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティの少なくとも3分の1、すなわち、|UF|/3≦B
C<ceil(|UF|/2)であれば、ノイズが少ないとしてさらに分類されてもよい。
【0040】
ある実施形態において、ノイズのあるテスト信号は、ユニーク特徴属性値(UFAV)と、ノイズのある信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値との間のユークリッド距離が、ユニークかつ弁別的特徴セット(UF)のカーディナリティの少なくとも50%においてユニーク特徴属性値(UFAV)の10%以下であれば、ノイズが少ないとしてさらに分類されてもよい。例として、I(=|UF|)個のユニークな特徴があり、UF
i={E
i},i∈I、ここでE
iは、ユニーク特徴属性値を表すとしよう。各ユニークな特徴に関して、ノイズのあるテスト信号のユニークかつ弁別的特徴と関連付けられた値がΨ
iであり、ユークリッド距離Θ
i=||E
i−Ψ
i||である。Θ
i≦0.1×E
i,i∈ceil(I/2)であれば、そのノイズのあるテスト信号は、ノイズが少ないとして識別される。
【0041】
実験データ
本開示の方法およびシステムをPhysionet challenge2016のデータセットに対してテストし、実績を本明細書に以下に示されるようにレポートする:
公的に利用可能な心音図データ(
https://physionet.org/pn3/challenge/2016/)からの非定常的な生理的オーディオ信号を実験に用いた。
利用可能なデータセット:120個のN信号、3129個のC信号
トレーニング・セット:(N90&C90)
テスト・セット:(N30&C3039)
このトレーニング・セットは、5秒から120秒強継続する、合計3,126個の心音記録を含んだ5つのデータベース(AからE)からなる。この実験では、4つの特徴がユニークかつ弁別的特徴であることがわかった。
1.フーリエ係数の10%トリム平均
2.フーリエ係数の歪度
3.80%のエネルギーがそれ未満に存在する周波数
4.フーリエ係数の尖度
対応するUFAV:[255.05,+1]、[0.0003,−1]、[32.6,−1]、[10.1237,+1]。
本開示の方法およびシステムに基づいて、前述の実験が85.52%の精度でノイズ検出をもたらした。
【0042】
非定常的なオーディオ信号からノイズのある信号を識別するための従来から知られたシステムおよび方法は、非定常的なノイズのある信号をノイズのある成分とクリーンな成分とに分類することに向けられる。特に、PCG記録のような非定常的な生理的オーディオ信号は、クリティカルな情報を含むかもしれない多くのノイズ成分を有する。従来から知られたシステムおよび方法の自動化は、時間の節約をもたらすに過ぎず、さらなる解析がクリーンな成分のみに制限され続け、結果として、拒絶されたノイズのある成分中に存在したかもしれないクリティカルな情報を見逃すことになるであろう。本開示のシステムおよび方法は、まず第1に動的かついずれの分類器にも依存しない仕方でノイズのある信号の自動的な識別を容易にすることによって、この技術的な問題に対処する。この識別は、ノイズのある成分をノイズの少ない成分にさらに分類することも可能にし、このノイズの少ない成分は、解析のためにさらに採用されてもよく、それによって非定常的なオーディオ信号からできるだけ多くのクリティカルな情報を確実に引き出すことができる。
【0043】
本開示の実施形態を当業者が作製して用いることを可能にするために、書面の記載によって本明細書の主題が説明される。本明細書において定義される主題の実施形態の範囲は、当業者が想起する他の修正を含んでもよい。かかる他の修正が特許請求の範囲の文言と異ならない同様の要素を有するか、またはそれらの文言と非実質的にしか相違しない同等の要素を含むならば、それらの修正は、本範囲内にあるものとする。
【0044】
しかしながら、保護の範囲は、かかるプログラムへ、加えてメッセージをその中に有するコンピュータ可読手段へ拡張され、かかるコンピュータ可読記憶手段は、プログラムがサーバもしくはモバイルデバイスまたは任意の適切なプログラマブルデバイス上で作動するときに方法の1つ以上のステップを実施するためのプログラムコード手段を含むことを理解すべきである。ハードウェアデバイスは、例えば、サーバもしくはパーソナルコンピュータなどのような任意の種類のコンピュータ、またはそれらの任意の組み合わせを含めて、プログラムできる任意の種類のデバイスとすることができる。デバイスは、さらに、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC:application−specific integrated circuit)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field−programmable gate array)のような、例えば、ハードウェア手段とすることができる手段を含んでもよく、または、ハードウェアおよびソフトウェア手段の組み合わせ、例えば、ASICおよびFPGA、または少なくとも1つのマイクロプロセッサおよびソフトウェア・モジュールがその中にある少なくとも1つのメモリを含んでもよい。従って、これらの手段は、ハードウェア手段およびソフトウェア手段の両方を含むことができる。本明細書に記載される方法の実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェアで実装できるであろう。デバイスもソフトウェア手段を含んでもよい。代わりに、本開示の実施形態が、例えば、複数のCPUを用いて種々のハードウェアデバイス上に実装されてもよい。
【0045】
本明細書における実施形態は、ハードウェアおよびソフトウェア要素を備えることができる。ソフトウェアで実装される実施形態は、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含むが、それらには限定されない。本開示のシステムを備える様々なモジュールによって行われ、本明細書に記載される機能は、他のモジュールまたは他のモジュールの組み合わせで実装されてもよい。この記載において、コンピュータで利用可能な媒体、またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、機器、またはデバイスによって、またはそれらと接続して用いるためのプログラムを備える、記憶する、通信する、伝搬するか、または輸送することができる任意の機器とすることができる。本明細書に記載される様々なモジュールは、ソフトウェアおよび/またはハードウェア・モジュールとして実装されてもよく、任意のタイプの非一時的コンピュータ可読媒体または他の記憶デバイスに記憶されてもよい。非一時的コンピュータ可読媒体のいくつかの非限定の例は、CD、DVD、BLU−RAY(登録商標)、フラッシュメモリ、およびハードディスクドライブを含む。
【0046】
さらにまた、処理ステップ、方法ステップ、技術などがシーケンシャルに記載されるかもしれないが、かかる処理、方法および技術が交互に作動するように構成されてもよい。言い換えれば、記載されるステップの任意のシーケンスまたは順序は、ステップがその順序で行われるという要件を必ずしも示さない。本明細書に記載される処理のステップが任意の実用的な順序で行われてもよい。さらにまた、いくつかのステップが同時に行われてもよい。
【0047】
例示されるステップは、示される例示的な実施形態を説明するために提示されたものであり、予想すべきは、進行する技術開発が特定の機能が行われる仕方を変化させるであろうということである。本明細書では、これらの例が限定ではなく、説明のために提示される。さらにまた、記載の便宜上、本明細書では機能的ビルディング・ブロックの境界が任意に定義された。指定される機能およびそれらの関係が然るべく実行される限り、代わりの境界を定義することができる。(本明細書に記載されるものの等価物、拡張、変形、逸脱などを含む)選択肢が当業者には本明細書に含まれる教示に基づいて明らかであろう。かかる選択肢は、開示される実施形態の範囲および精神のうちにある。さらに、単語「備える」、「有する」、「含む(containing)」、および「含む(including)」ならびに他の同様の語形は、意味が等しいものとし、これらの単語のいずれかに続く項目(単数または複数)がかかる項目(単数または複数)の網羅的なリストを意味せず、リストされた項目(単数または複数)のみに限定されることも意味しないという点で、非限定的であることが意図される。同様に留意すべきは、本明細書および添付される特許請求の範囲では、文脈が明らかに別様に指示しない限り、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「前記(the)」が複数の参照を含むことである。
【0048】
本開示および例は、例示的であるに過ぎないと見なされるものとし、開示される実施形態の真の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって示される。