(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1狭壁と前記第2狭壁との間隔である導波路幅が一定である区間を第1区間とし、その一方の端部が前記第1区間の一方の端部に接続され、且つ、その他方の端部が前記ショート壁により終端されている区間を第2区間として、
前記第2区間における前記導波路幅は、当該第2区間と前記第1区間との境界から前記ショート壁に近づくにしたがって滑らかに拡幅されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の誘電体導波路。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔第1の実施形態〕
(導体膜包囲型の誘電体導波路1の構成)
本発明の第1の実施形態に係る導体膜包囲型の誘電体導波路について、
図1を参照して説明する。
図1の(a)は、本実施形態に係る導体膜包囲型の誘電体導波路1の斜視図である。
図1の(b)は、導体膜包囲型の誘電体導波路1の平面図である。
図1の(c)は、導体膜包囲型の誘電体導波路1の断面図であり、
図1の(a)に示したAA’線を含み、且つ、後述する第1広壁21及び第2広壁22に直交する断面における断面図である。
【0025】
なお、
図1の(a)、(b)、(c)に示す座標系は、次のように定められている。後述する基板11の主面の法線に平行な軸をz軸と定め、細長い基板11が延伸されている方向をx軸と定め、z軸及びx軸の各々と直交する方向をy軸と定める。また、z軸のうち、基板11の2つの主面のうち、後述する誘電体層32が形成されていない側の主面から誘電体層32が形成されている主面に向かう方向をz軸正方向と定め、x軸のうち、後述するショート壁25から遠ざかる方向をx軸正方向と定め、z軸正方向及びx軸正方向とともに右手系を構成するようにy軸正方向を定めている。
【0026】
図1の(a)〜(c)に示すように、導体膜包囲型の誘電体導波路1は、基板11と、基板11の表面を覆う導体層と、モード変換部31とを備えている。この導体層は、設けられている基板11の表面に応じて、第1広壁21、第2広壁22、第1狭壁23、第2狭壁24、及びショート壁25と呼び分けられる。
【0027】
このように、基板11の表面は、導体層によって覆われている。本願明細書では、誘電体導波路1のような誘電体導波路のことを導体膜包囲型の誘電体導波路と称する。導体膜包囲型の誘電体導波路は、請求の範囲に記載した誘電体導波路の一態様である。なお、請求の範囲に記載した誘電体導波路は、導体膜包囲型の誘電体導波路と、例えば第1の変形例において説明するポスト壁導波路(
図2参照)とをその範疇に含む。
【0028】
(基板11)
図1の(a)に示すように、基板11は、誘電体により構成された細長い板状部材である。以下において、基板11を構成する6つの表面のうち、面積が最も大きな2つの表面を基板11の主面と称す。また、2つの主面と交わり(本実施形態では直行し)、基板11を平面視した場合に基板11の外縁を形成する表面を側面と称する。側面は、y軸正方向側の側面である第1の側面と、y軸負方向側の側面である第2の側面と、x軸負方向側の側面である第3の端面とにより構成されている。なお、
図1の(b)及び(c)に示すように、x軸方向における基板11の第3の側面の位置をx軸の原点と定めている。また、本実施形態において、基板11の横断面(yz平面に沿った断面)における断面形状は、長方形である。基板11は、後述するように導波領域12を構成する。したがって、導体膜包囲型の誘電体導波路1は、導波領域12の横断面における断面形状が長方形である矩形導波路である。
【0029】
なお、本実施形態において、基板11(すなわち導波領域12)の横断面における断面形状が長方形であるものとして説明した。しかし、基板11の横断面における断面形状は、長方形をベースとして、その長方形の4つの角を滑らかな曲線又は直線に沿って切り落とした形状であってもよい。長方形の4つの角を滑らかな曲線に沿って切り落とした形状は、角丸長方形である。また、長方形の4つの角を直線に沿って切り落とした形状は、微視的に見れば8角形であるが巨視的に見れば長方形である。請求の範囲に記載の「略長方形」は、上述した角丸長方形、及び、微視的に見れば8角形であるが巨視的に見れば長方形である形状を指す。
【0030】
図1の(b)に示すように、基板11は、平面視した場合に、その幅W
1が一定である第1区間S
1と、その幅W
1が基板11の第3の側面(x軸負方向側の側面)に近づくにしたがって滑らかに拡幅されている第2区間S
2とにより構成されている。したがって、第2区間S
2は、テーパ形状となるように成形されている。なお、
図1の各図においては、第1区間S
1と第2区間S
2との境界を二点鎖線により図示している。
図1の(b),(c)に示すように、この境界の位置をx
2とする。
【0031】
本実施形態では、基板11を構成する誘電体として石英を採用している。しかし、基板11を構成する誘電体として、他の誘電体(例えばポリテトラフルオロエチレン系樹脂や液晶ポリマー樹脂などの樹脂材料)を採用してもよい。
【0032】
(導体層)
図1の(a)及び(b)に示すように、基板11の表面を覆う導体層のうち、第1広壁21及び第2広壁22は、基板11の2つの主面上に設けられた導体層であり、導体膜包囲型の誘電体導波路1の一対の広壁を構成する。上記導体層のうち、第1狭壁23及び第2狭壁24は、それぞれ、基板11の第1の側面上及び第2の側面上に設けられた導体層であり、導体膜包囲型の誘電体導波路1の一対の狭壁を構成する。上記導体層のうち、ショート壁25は、基板11の第3の側面上に設けられた導体層である。本実施形態において、ショート壁25は、第1広壁21及び第2広壁22と直行しており、第1区間S
1における第1狭壁23及び第2狭壁24とも直行している。このように、導体膜により表面を覆われた基板11は、所定の動作帯域の電磁波をx軸方向に沿って導波する導波領域12を構成する。したがって、上述した基板11の幅W
1は、第1狭壁23と第2狭壁24との間隔と等しく、導波領域12の幅W
1であるとも表現できる。導波領域12の幅W
1は、特許請求の範囲に記載の導波路幅に対応する。
【0033】
上述したように基板11は、第1区間S
1と第2区間S
2とを有し、且つ、第2区間S
2がx軸負方向に向かって拡幅されたテーパ形状となるように成形されている。したがって、位置xがx>x
2である領域からx=0に向かって(x軸負方向に向かって)近づいていく場合に、導波領域12の幅W
1は、(1)第1区間S
1(x
2≦xである区間)において一定であり、(2)第2区間S
2(0≦x<x
2である区間)において拡幅され、(3)位置xがx=0である第2区間S
2の終端においてショート壁25の幅W
2と一致する。後述する柱状導体34は、その位置x
1が、0<x
1<x
2を満たす位置に形成されている。したがって、幅W
2は、後述する柱状導体34が設けられた位置x
1における導波領域12の幅W
1を上回る。
【0034】
上記導体層によって表面を覆われているため、基板11の内部にはカットオフ周波数f
co以上の周波数を有する高周波が閉じ込められる。したがって、基板11は、導体膜包囲型の誘電体導波路1の導波領域12として機能する。後述するモード変換部31を用いてマイクロストリップ線路から導体膜包囲型の誘電体導波路1に入力された電磁波は、基板11の内部をx軸正方向に向かって伝搬する。同様に、基板11の内部をx軸負方向に向かって伝搬してきた電磁波は、モード変換部31を用いてマイクロストリップ線路に出力される。
【0035】
本実施形態では、第1広壁21、第2広壁22、第1狭壁23、第2狭壁24及びショート壁25を構成する導体として銅を採用するが、他の導体(例えばアルミニウムなどの金属)であってもよい。また、第1広壁21、第2広壁22、第1狭壁23、第2狭壁24及びショート壁25を構成する導体膜の厚さは限定されるものではなく、任意の厚さを採用することができる。すなわち、導体膜は、薄膜、箔(フィルム)、及び板と呼ばれる態様のうち何れの態様であってもよい。薄膜、箔(フィルム)、及び板においては、薄膜が最も厚さが薄く、箔、板の順番で厚さが厚くなる。
【0036】
(モード変換部31)
図1の(b)及び(c)に示すように、モード変換部31は、第1広壁21と、誘電体層32と、信号線33と、柱状導体34とを備えている。
【0037】
誘電体層32は、第1広壁21の表面上に積層され、当該表面を覆うように形成されている。本実施形態では、誘電体層32は、ポリイミド樹脂製である。なお、誘電体層32を構成する材料は、ポリイミド樹脂に限定されるものではなく、誘電体として機能する材料であればよい。
【0038】
ショート壁25近傍には、第1広壁が設けられている側(z軸正方向側)の主面(特許請求の範囲における導波領域の表面)から基板11の内部にブラインドビアが設けられている。このブラインドビアの内壁には、導体膜(本実施形態においては銅製)が形成されている。この導体膜は、柱状導体34を形成する。前記ブラインドビアが形成されている位置は、x軸方向においてx
1であり、y軸方向において導波領域12の幅W
1の中央である。本実施形態において、x
1<x
2である。すなわち、柱状導体34は、第2区間S
2の内側に形成されている。しかし、柱状導体34が形成されるx軸方向の位置は、x
1<x
2に限定されるものではなく、x
1=x
2又はx
1>x
2であってもよい。なお、以下において、ショート壁25と柱状導体34との間隔(すなわちx軸方向における位置x
1)のことを間隔D
BSと呼ぶ。
【0039】
第1広壁21には、平面視した場合に柱状導体34を包含する領域にアンチパッド(特許請求の範囲における開口の輪郭)が形成されており、その内側領域に第1広壁21と離間したパッドが形成されている。このパッドは、柱状導体34と導通している。
【0040】
誘電体層32には、平面視した場合に柱状導体34を包含する位置に開口が形成されている。
【0041】
本実施形態において、柱状導体34、パッド、アンチパッド、及び誘電体層32の開口の各々は、平面視した場合に同心円状に配置されている。
【0042】
信号線33は、誘電体層32の表面に形成され、その長手方向がx軸方向に沿うように配置された帯状導体である。信号線33の一方の端部である端部331は、その直径が柱状導体34の直径を上回る円形に形成されている。端部331は、パッドを介して柱状導体34と導通している。信号線33は、平面視した場合に、端部331が柱状導体34及びパッドと重畳するように、且つ、信号線33自体が端部331からショート壁25に近づく方向(x軸負方向)に向かって延伸するように配置されている。
【0043】
このように構成されたモード変換部31において、信号線33と第1広壁21とは、マイクロストリップ線路を形成し、且つ、柱状導体34は、(1)当該マイクロストリップ線路を伝搬する電磁波のモードと、(2)導体膜包囲型の誘電体導波路1の導波領域12である基板11の内部を伝搬する電磁波のモードとを変換する。したがって、モード変換部31は、マイクロストリップ線路のモードと基板11の内部のモードとを変換するモード変換部として機能する。換言すれば、モード変換部31は、導体膜包囲型の誘電体導波路1の一方の入出力ポートである第1のポートとして機能する。
【0044】
なお、本実施形態においては、
図1に示すように、導体膜包囲型の誘電体導波路1の第1のポート(x軸負方向側のポート)のみを用いて導体膜包囲型の誘電体導波路1の構成を説明してきた。導体膜包囲型の誘電体導波路1の他方のポートである第2のポート(x軸正方向側のポート)は、第1のポートと同じように構成されていてもよいし、方向性結合器やダイプレクサなどの伝送デバイスに対して直接接続されていてもよい。
【0045】
(モード変換部31の反射特性)
このように構成されたモード変換部31は、間隔D
BSや、ショート壁の幅W
2や、導波領域12の幅W
1や、導波領域12の厚さや、柱状導体34の長さなどを設計パラメータとして、反射特性(換言すれば透過特性)を制御することができる。反射特性は、SパラメータS11の周波数依存性のことであり、透過特性は、SパラメータS21の周波数依存性のことである。
【0046】
従来の導体膜包囲型の誘電体導波路、すなわち、導波領域の幅が全区間において一定であり、導波領域の幅とショート壁の幅とが等しい導体膜包囲型の誘電体導波路の設計パラメータは、例えば以下のようにして定められる。
【0047】
これらの設計パラメータのうち導波領域に関する設計パラメータである幅W
1は、基本的に所定の動作帯域に基づいて定められる。なお、導波領域の厚さは、基板11の厚さと等しく、使用する基板11を決定した時点で自動的に定められる。
【0048】
これまでは、所定の動作帯域の中心周波数f
cを1.5で除した周波数をカットオフ周波数f
coとして、カットオフ周波数f
coに対応する管内波長と等しくなる幅W
1を採用していた。例えば、所定の動作帯域が71GHz以上86GHz以下である場合、f
c=78.5GHzであり、f
co=52.33GHzに対応する管内波長(=1.54mm)と等しくなる幅を導波領域の幅として採用していた。
【0049】
背景技術の欄において上述したように、中心周波数f
cを1.5で除したことで得られるカットオフ周波数f
coに基づいて導波領域の幅を定めた導体膜包囲型の誘電体導波路においては、間隔D
BSを最適化された値である基準値よりも大きく設定することによってローバンドにおける反射特性を改善できることが分かっていた。背景技術の欄ではポスト壁導波路を用いてこのことを説明していたが、間隔D
BSを用いた反射特性の制御は、導体膜包囲型の誘電体導波路においても有効である。
【0050】
しかし、発明が解決しようとする課題に記載したように、近年、導波路のサイズをコンパクト化したいという要望がある。このことは、導体膜包囲型の誘電体導波路において、導波領域の幅を縮小したいということと同義である。導波領域の幅を縮小した場合(例えば導波領域の幅として1.32mmを採用した場合)、導体膜包囲型の誘電体導波路のカットオフ周波数f
coは、高周波側へシフトする。したがって、導波領域の幅を縮小することによって、導体膜包囲型の誘電体導波路のカットオフ周波数f
coは、動作帯域の下限に近づく。
【0051】
このように導波領域の幅を縮小した導体膜包囲型の誘電体導波路において間隔D
BSを最適化された値である基準値よりも大きく設定した場合、後述する比較例の結果(
図6参照)として説明するように、ローバンドにおける反射特性を改善することができなかった。
【0052】
(導体膜包囲型の誘電体導波路1の効果)
以上の課題を、本実施形態の導体膜包囲型の誘電体導波路1は、ショート壁25の幅W
2を柱状導体34が設けられた位置x
1における幅W
1を上回るように設計することによって解決することができる。例えば、本実施形態では、第1区間における幅W
1をW
1=1.32mmに設定し、幅W
2をW
2=1.8mmに設定することによってローバンドにおける反射特性を改善することができる。
【0053】
したがって、導体膜包囲型の誘電体導波路1は、導波領域12の幅W
1を従来よりも狭く設計した場合(すなわち、カットオフ周波数が動作帯域の下限値に接近した場合)であっても、所定の動作帯域の中心周波数f
cよりも低周波側の帯域においても良好な反射特性を示す。例えば、所定の動作帯域がEバンドの一部である71GHz以上86GHz以下の帯域であり、その中心周波数f
cが78.5GHzである場合に、78.5GHzよりも低周波側の帯域であるローバンド(71GHz以上76GHz以下)においても、導体膜包囲型の誘電体導波路1は、良好な反射特性を示す。
【0054】
以上のように、導体膜包囲型の誘電体導波路1は、従来よりも幅W
1をコンパクトに設計することができる。上述したようなモード変換部を備えた導体膜包囲型の誘電体導波路において、幅W
2が幅W
1を上回るように構成するという技術は、導波路として導体膜包囲型の誘電体導波路を備えた如何なる伝送デバイス(例えば方向性結合器及びダイプレクサ)にも適用可能である。すなわち、幅W
2が幅W
1を上回るように構成することによって、導体膜包囲型の誘電体導波路のみならず方向性結合器及びダイプレクサのコンパクト化を図ることができる。
【0055】
また、導体膜包囲型の誘電体導波路1において、第2区間S
2において導波領域12の幅W
1は、第2区間S
2と第1区間S
1との境界からショート壁25に近づくにしたがって滑らかに拡幅されている。この構成によれば、第2区間S
2は、幅W
1が急激に(不連続的に)変化する部分を含まない。換言すれば、第2区間S
2は、その特性インピーダンスが急激に(不連続的に)変化する部分を含まない。したがって、導体膜包囲型の誘電体導波路1は、第2区間S
2における幅W
1を拡幅する場合に生じ得る反射損失を抑制することができる。
【0056】
また、幅W
2が位置x
1における幅W
1を上回るように構成するという技術は、導体膜包囲型の誘電体導波路のみならず第1の変形例において後述するようにポスト壁導波路(例えば
図2参照)にも適用することができる。この技術を適用したポスト壁導波路は、本実施形態の導体膜包囲型の誘電体導波路1と同様の効果を奏する。すなわち、幅W
2が幅W
1を上回るように構成するという技術は、導体膜包囲型の誘電体導波路及びポスト壁導波路を含む広義の誘電体導波路(請求の範囲に記載の誘電体導波路と同義)に対して好適に用いることができる。
【0057】
〔第1の変形例〕
第1の実施形態では、導波領域12が基板11により構成され、一対の広壁21,22と、一対の狭壁23,24と、ショート壁25とが何れも、基板11の表面を覆う導体膜により構成された導体膜包囲型の誘電体導波路1を例に本発明について説明した。
【0058】
本発明の第1の変形例では、導体膜包囲型の誘電体導波路1と同様の構成をポスト壁の技術を用いて実現したポスト壁導波路について、
図2を参照して説明する。ポスト壁導波路1Aに代表されるポスト壁導波路は、請求の範囲に記載した誘電体導波路の一態様である。
図2の(a)は、本変形例に係るポスト壁導波路1Aの平面図である。
図2の(b)は、ポスト壁導波路1Aの断面図であり、
図2の(a)に示したBB’線を含み、且つ、後述する第1広壁21A及び第2広壁22Aに直交する断面における断面図である。なお、
図2の各図に図示した座標系は、
図1の各図に図示した座標系と同様に定められている。
【0059】
ポスト壁導波路1Aを構成する各部材の部材番号は、導体膜包囲型の誘電体導波路1を構成する各部材の部材番号に対して、その末尾に「A」を追加することによって得られる。本変形例では、導体膜包囲型の誘電体導波路1と異なる構成についてのみ説明し、導体膜包囲型の誘電体導波路1と同じ構成については、その説明を省略する。
【0060】
(ポスト壁導波路1Aの構成)
図2の(a)〜(b)に示すように、ポスト壁導波路1Aは、基板11Aと、第1導体膜21Aと、第2導体膜22Aと、誘電体層32Aを含むモード変換部31Aとを備えている。モード変換部31Aは、
図1に図示した導体膜包囲型の誘電体導波路1のモード変換部31と同じように構成されている。
【0061】
基板11Aは、基板11と同様に石英製の基板である。しかし、基板11Aは、基板11と比較して、以下の点が異なる。
【0062】
基板11は、細長い板状部材(
図1参照)であり、幅W
1が一定である第1区間S
1と、幅W
1が第3の側面(ショート壁25が積層される側面)に向かって滑らかに拡幅された第2区間S
2とを含んでいた。
【0063】
それに対して、
図2の(a)に示すように、基板11Aは、細長い板状部材であるものの、その全幅は、後述する導波領域12Aの幅W
1A及びショート壁25Aの幅W
2Aの双方を上回る。
【0064】
第1導体膜21Aは、基板11Aの一方の主面(後述する誘電体層32Aが積層される側の主面であり、z軸正方向側の主面)に積層された導体膜である。
【0065】
第2導体膜22Aは、基板11Aの他方の主面(z軸負方向側の主面)に積層された導体膜である。
【0066】
第1導体膜21A及び第2導体膜22Aは、ポスト壁導波路1Aの導波領域12Aを規定する一対の広壁をなす。したがって、以下では、第1導体膜21A及び第2導体膜22Aのことを、それぞれ、第1広壁21A及び第2広壁22Aとも呼ぶ。
【0067】
一対の狭壁である第1狭壁23A及び第2狭壁24Aと、ショート壁25Aとは、第1広壁21A及び第2広壁22Aとともに導波領域12Aを規定する。第1狭壁23A、第2狭壁24A、及びショート壁25Aの各々は、
図2に示すように、ポスト壁により構成されている。
【0068】
第1狭壁23A、第2狭壁24A、及びショート壁25Aを構成するポスト壁は、複数の導体ポストを所定の間隔で柵状に配列したものである。第1狭壁23A、第2狭壁24A、及びショート壁25Aの各々は、それぞれ、複数の導体ポストである導体ポスト23Ai、導体ポスト24Aj、及び導体ポスト25Akにより構成される。ここで、i,j,kは、各導体ポストの本数を一般化して表したものである。M,Nを任意の正の整数として、M<Nである場合に、i,jは、1<i,j≦N(i,jは正の整数)を満たし、kは、1<k≦M(kは正の整数)を満たす。
【0069】
基板11Aを平面視した場合、基板11Aの内部には、複数の導体ポスト(導体ポスト23Ai、導体ポスト24Aj、及び導体ポスト25Ak)からなる柵状のポスト壁が設けられている(
図2の(a)参照)。複数の導体ポスト23Aiは、第1狭壁23Aを構成し、複数の導体ポスト24Ajは、第2狭壁24Aを構成し、複数の導体ポスト25Akは、ショート壁25Aを構成する。第1狭壁23A、第2狭壁24A、及びショート壁25Aの各々は、それぞれ、
図1に示した導体膜包囲型の誘電体導波路1の第1狭壁23、第2狭壁24、及びショート壁25に対応する。複数の導体ポスト23Aiにより構成された第1狭壁23Aは、隣接する導体ポスト同士の間隔に応じて、所定の波長以上の電磁波を反射する仮想的な導体壁として振る舞う。この導体壁の仮想的な反射面は、複数の導体ポスト23Aiの各々の中心軸を含む1つの面に沿って形成される。
図2の(a)において、第1狭壁23Aの仮想的な反射面は、仮想線(二点鎖線)を用いて図示されている。同様に、
図2の(a)において、第2狭壁24Aの仮想的な反射面及びショート壁25Aの仮想的な反射面も仮想線(二点鎖線)を用いて図示されている。
【0070】
ポスト壁導波路1Aにおいて、導体膜からなる一対の広壁21A,22Aと、ポスト壁からなる一対の狭壁23A,24Aの仮想的な反射面と、ポスト壁からなるショート壁25Aの仮想的な反射面とにより取り囲まれた領域が導波領域12Aを構成する。基板11Aを平面視した場合において、導体ポスト23Ai、導体ポスト24Aj、及び導体ポスト25Akの各導体ポストは、ポスト壁導波路1Aの導波領域12Aの外縁の形状が
図1に示す導体膜包囲型の誘電体導波路1の導波路領域の形状(すなわち、基板11の形状)と一致するように配置されている。
【0071】
本実施形態において、各導体ポストは、基板11Aの一方の主面から他方の主面まで貫通するビア(貫通孔)の内壁に形成された筒状の導体膜によって構成されている。この導体膜は、金属製(例えば銅製)である。なお、各導体ポストは、ビアの内部に導体(例えば金属)を充填することによって得られた円柱状の導体棒によって構成されていてもよい。
【0072】
このように構成されたポスト壁導波路1Aは、導体膜包囲型の誘電体導波路1と同様に、ショート壁25Aの幅W
2Aが、柱状導体34Aが設けられた位置x
1Aにおける導波領域12Aの幅W
1A(特許請求の範囲に記載の導波路幅)を上回る。
【0073】
また、ポスト壁導波路1Aは、第1区間S
1Aと、第2区間S
2Aとを含む。第1区間S
1Aは、幅W
1Aが一定である区間である。第2区間S
2Aは、その一方の端部(x軸正方向側の端部)が第1区間S
1Aの一方の端部(x軸負方向側の端部)に接続され、且つ、その他方の端部がショート壁25Aにより終端されている区間である。第2区間S
2Aにおける幅W
1は、第1区間S
1Aと第2区間S
2Aとの境界(x=x
2Aの位置)からショート壁25A(x=0の位置)に近づくにしたがって滑らかに拡幅されている。
【0074】
(ポスト壁導波路1Aの効果)
ポスト壁の技術を利用したポスト壁導波路1Aは、管壁が金属板により構成された導波管と比較して、製造コストを抑制できる、小型化を図ることができる、軽量である、といった長所を有する。また、ポスト壁導波路1Aは、導波路に加えて、フィルタや、方向性結合器や、ダイプレクサなどの伝送デバイスを1枚の基板を用いて集積化することができる。また、その基板の表面上に様々な電子部品(例えば、抵抗器やコンデンサや高周波回路など)を容易に実装することができる。したがって、ポスト壁導波路1Aは、導体膜包囲型の誘電体導波路1と比較して、伝送デバイス及び電子部品を集積する場合の集積度を高めることができる。
【0075】
ポスト壁導波路1Aは、ポスト壁導波路の技術を用いて製造可能であるという点に起因する効果以外には、
図1に図示した導体膜包囲型の誘電体導波路1と同じ効果を奏する。したがって、ここでは、それらの効果に関する記載を省略する。
【0076】
〔第2,第3の変形例〕
第1の実施形態及び第1の変形例では、第1狭壁及び第2狭壁の双方がテーパ形状をなしている例について説明した。これを変形し、第1狭壁23及び第2狭壁24の何れか一方がテーパ形状をなすよう構成した第2,第3の変形例について、図面を参照して説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0077】
(導体膜包囲型の誘電体導波路1Bの構成)
図3の(a)は、本発明の第2の変形例に係る導体膜包囲型の誘電体導波路1Bの平面図である。
図3の(b)は、導体膜包囲型の誘電体導波路1Bの断面図であり、
図3の(a)に示したCC’線を含み、且つ、後述する第1広壁21B及び第2広壁22Bに直交する断面における断面図である。
図3の(a)及び(b)に示すように、導体膜包囲型の誘電体導波路1Bは、基板11Bと、第1広壁21Bと、第2広壁22Bと、第1狭壁23Bと、第2狭壁24Bと、ショート壁25Bと、モード変換部31Bとを含む。これらの構成要素のうち、基板11B、第1広壁21B、第2広壁22B、ショート壁25B及びモード変換部31Bは、第1の実施形態における基板11、第1広壁21、第2広壁22、ショート壁25及びモード変換部31とそれぞれ同様に構成される。導体膜包囲型の誘電体導波路1Bは、
図1に示した導体膜包囲型の誘電体導波路1と同様に、導体膜包囲型の誘電体導波路の一例である。
【0078】
第1狭壁23Bは、導体膜包囲型の誘電体導波路1Bを平面視した場合に、x軸に沿って一直線状に配置されている。一方、第2狭壁24Bは、第2区間S
2Bと第1区間S
1Bとの境界からショート壁25Bに近づくにしたがって、第1狭壁23Bから滑らかな曲線に沿って離間していくように配置されている。したがって、ショート壁25Bの幅W
2Bは、柱状導体34Bが形成されている位置x
1における幅W
1Bを上回る。
【0079】
導体膜包囲型の誘電体導波路1Bにおいては、幅W
2Bが位置x
1Bにおける幅W
1Bを上回っていればよく、ショート壁25Bのy軸方向における位置は、限定されるものではない。
【0080】
本発明の一態様においては、
図1に示した導体膜包囲型の誘電体導波路1のように、ショート壁25の幅W
2の中点と、第1区間S
1における幅W
1の中点とが、y軸方向において一致していてもよいし、
図3の(a)に示した導体膜包囲型の誘電体導波路1Bのように、ショート壁25Bの幅W
2Bの中点と、第1区間S
1Bにおける幅W
1Bの中点とが、y軸方向において異なっていてもよい。また、導体膜包囲型の誘電体導波路1Bのように、ショート壁25Bの幅W
2Bの中点と、第1区間S
1Bにおける幅W
1Bの中点とが、y軸方向において異なっている場合、幅W
2Bは、(1)
図3の(a)に示すようにy軸に沿った2つの方向のうち一方の方向(
図3の(a)ではy軸負方向)のみに向かって拡幅されていてもよいし、(2)y軸に沿った2つの方向(y軸正方向及びy軸負方向)に向かって拡幅されていてもよい。この点については、後述するポスト壁導波路1Cにおいても同様である。
【0081】
(ポスト壁導波路1Cの構成)
図4の(a)は、本発明の第3の変形例に係るポスト壁導波路1Cの平面図である。
図4の(b)は、ポスト壁導波路1Cの断面図であり、
図4の(a)に示したDD’線を含み、且つ、後述する第1広壁21C及び第2広壁22Cに直交する断面における断面図である。
図4の(a)及び(b)に示すように、ポスト壁導波路1Cは、基板11Cと、第1広壁21Cと、第2広壁22Cと、第1狭壁23Cと、第2狭壁24Cと、ショート壁25Cと、モード変換部31Cとを含む。これらの構成要素のうち、基板11C、第1広壁21C、第2広壁22C及びモード変換部31Cは、第1の変形例であるポスト壁導波路1Aの基板11A、第1広壁21A、第2広壁22A、及びモード変換部31Aとそれぞれ同様に構成される。また、一対の狭壁23C,24C及びショート壁25Cは、第1の変形例における一対の狭壁23A,24A及びショート壁25Aと同様にポスト壁により構成される。
【0082】
複数の導体ポスト23Ciからなる第1狭壁23Cは、
図3の(a)に図示した第1狭壁23Bに対応するポスト壁を形成し、複数の導体ポスト24Ciからなる第2狭壁24Cは、
図3の(a)に図示した第2狭壁24Bに対応するポスト壁を形成する。したがって、ショート壁25Cの幅W
2Cは、柱状導体34Cが形成されている位置x
1Cにおける幅W
1Cを上回る。
【0083】
(導体膜包囲型の誘電体導波路1B及びポスト壁導波路1Cの主な効果)
導体膜包囲型の誘電体導波路1Bのような構成を採用することによって、例えば、互いに並走する2本の導体膜包囲型の誘電体導波路1B(第1及び第2の導体膜包囲型の誘電体導波路1B)を備えた伝送デバイスにおいて、第1及び第2の導体膜包囲型の誘電体導波路1Bの各々をより近づけた状態で配置することができる。これは、第1の導体膜包囲型の誘電体導波路1Bを
図3の(a)に示した状態で配置し、第1狭壁23Bを含むzx面を対称面として、第1の導体膜包囲型の誘電体導波路1Bと鏡映対称になるように第2の導体膜包囲型の誘電体導波路1Bを配置することによって、第1の導体膜包囲型の誘電体導波路1Bと第2の導体膜包囲型の誘電体導波路1Bとの間に隙間を生じさせることなく配置することができるためである。互いに並走する2本の導体膜包囲型の誘電体導波路1Bを備えた伝送デバイスとしては、方向性結合器及びダイプレクサが挙げられる。なお、この点について、ポスト壁導波路1Cは、導体膜包囲型の誘電体導波路1Bと同じ効果を奏する。
【0084】
導体膜包囲型の誘電体導波路1B及びポスト壁導波路1Cは、上述した効果以外には、
図1に図示した導体膜包囲型の誘電体導波路1及び
図2に図示したポスト壁導波路1Aと同じ効果を奏する。したがって、ここでは、それらの効果に関する記載を省略する。
【0085】
〔実施例〕
(第1の実施例及び第2の実施例)
次に、
図2に示したポスト壁導波路1Aのモデルと、
図3の(b)に示したポスト壁導波路1Cのモデルとを用いて、それぞれの反射特性(SパラメータS11の周波数依存性)をシミュレーションした。シミュレーションに用いたポスト壁導波路1Aのモデル及びポスト壁導波路1Cのモデルを、それぞれ、本発明の第1の実施例及び第2の実施例とする。
【0086】
第1の実施例のポスト壁導波路1A及び第2の実施例のポスト壁導波路1Cは、Eバンドに含まれる71GHz以上86GHz以下の帯域を動作帯域とするように設計されており、特に71GHz以上76GHz以下の帯域であるローバンドを主たる動作帯域とするように設計されている。
【0087】
第1の実施例のポスト壁導波路1Aは、基板11Aとして厚さが520μmである石英基板を採用している。基板11Aの2つの主面上には、厚さが10μmである銅製の導体膜が形成されている。これらの導体膜は、広壁21A,22Aとして機能する。
【0088】
第1狭壁23Aを構成する導体ポスト23Ai、第2狭壁24Aを構成する導体ポスト24Aj、及びショート壁25Aを構成する導体ポスト25Akの各々は、基板11Aを貫通する貫通ビアの内壁に銅製の導体膜を形成することによって構成されている。
【0089】
第1の実施例のポスト壁導波路1Aは、各設計パラメータとして以下の値を採用している。
・幅:W
1A=1.32mm
・カットオフ周波数:f
c=58.98GHz
・幅:W
2A=1.8mm
・間隔:D
BSA=584μm
・第2区間S
2Aの長さ:x
2A=750μm
従来であれば、71GHz以上86GHz以下の帯域を動作帯域とする場合、幅W
1として1.54mm、すなわちカットオフ周波数f
coとして52.33GHzを採用していた。それに対し、第1の実施例のポスト壁導波路1Aでは、導波路のコンパクト化を図るために、第1区間S
1Aにおける幅W
1Aとして1.32mmを採用している。
【0090】
第2の実施例のポスト壁導波路1Cは、幅W
2Cとして1.6mmを採用し、その他の各設計パラメータとして、第1の実施例のポスト壁導波路1Aと同じ値を採用している。
【0091】
(比較例)
本実施例のポスト壁導波路1A及びポスト壁導波路1Cの比較例として用いるポスト壁導波路101,101A,101Bの構成について、
図5を参照して説明する。
図5は、ポスト壁導波路101,101A,101Bの平面図である。
【0092】
ポスト壁導波路101,101A,101Bの各々は、ポスト壁導波路1A及びポスト壁導波路1Cと比較して、幅W
102が幅W
101と等しい点のみが相違している。すなわち、ポスト壁導波路101,101A,101Bの各々は、ショート壁125の幅W
102としてW
102=W
101=1.32mmを採用している。換言すれば、ポスト壁導波路101,101A,101Bの各々においては、その全区間において幅W
101が1.32mmで一定である。なお、ポスト壁導波路101を構成する各部材の部材番号は、ポスト壁導波路1Aを構成する各部材の部材番号を100番台に変更したうえで、その部材番号からアルファベットの「A」を取り除くことによって得られる。したがって、ここでは、ポスト壁導波路101,101A,101Bの構成に関する詳しい説明を省略する。
【0093】
ポスト壁導波路101は、Eバンドに含まれる71GHz以上86GHz以下の帯域を動作帯域とするように設計されており、間隔D
BSとして584μmを採用している。
【0094】
また、ポスト壁導波路101A及びポスト壁導波路101Bは、それぞれ、間隔D
BSとして634μm及び684μmを採用している。これは、後述するように、ローバンドにおける反射特性を向上させることを期待して実施した設計パラメータの変更である。
【0095】
なお、間隔D
BS以外の構成において、ポスト壁導波路101A,101Bは、ポスト壁導波路101と同様に構成されている。
【0096】
(反射特性)
図6は、第1の実施例であるポスト壁導波路1A、第2の実施例であるポスト壁導波路1C、及び、比較例であるポスト壁導波路101,101A,101Bの各々の反射特性を示すグラフである。なお、
図6に図示した二点鎖線は、71GHz及び76GHzを示す。すなわち、2本の二点鎖線により挟まれた帯域がローバンドである。
【0097】
まず、ポスト壁導波路101を基準とする。
図6に示すように、ポスト壁導波路101の反射特性は、SパラメータS11が最小となる周波数であるピーク周波数が76.5GHz程度であり、そのピークにおけるSパラメータS11は、−50dB程度であった。
【0098】
また、そのピーク周波数から、周波数が低周波側又は高周波側へ遠ざかるにしたがって、SパラメータS11が増加する。特にローバンドにおけるSパラメータS11の増加の度合いが急激であり、71GHzにおいては、SパラメータS11が−20dBを上回ることが分かった。
【0099】
そこで、ポスト壁導波路101A,101Bの各々では、ローバンドにおける反射特性を向上させることを期待して、間隔D
BSの値を584μmから、それぞれ、634μm及び684μmへ拡大した。
【0100】
図6によれば、ポスト壁導波路101Aのピーク周波数は、約74.5GHzであり、そのピークにおけるSパラメータS11は、−32dB程度であった。また、ポスト壁導波路101Bのピーク周波数は、約71.5GHzであり、そのピークにおけるSパラメータS11は、−26dB程度であった。
【0101】
これらの結果から、間隔D
BSの値を拡大することによってピーク周波数が低周波側へのシフトするものの、それとともに反射特性が劣化してしまうことが分かった。したがって、コンパクト化を図るために幅W
101を従来よりも狭い1.32mmとしたポスト壁導波路においては、ローバンドにおける反射特性を改善するための手法として、間隔D
BSを拡大する手法は不適当であることが分かった。
【0102】
一方、
図6によれば、第1の実施例であるポスト壁導波路1Aのピーク周波数は、約72GHzであり、そのピークにおけるSパラメータS11は、−44dB程度であった。また、第2の実施例であるポスト壁導波路1Cのピーク周波数は、約74.2GHzであり、そのピークにおけるSパラメータS11は、−63dB程度であった。
【0103】
これらの結果より、ショート壁の幅W
2Aが位置x
1Aにおける導波領域12Aの幅W
1Aを上回るように、又は、ショート壁の幅W
2Cが位置x
1Cにおける導波領域12Cの幅W
1Cを上回るようにポスト壁導波路1A,1Cを構成することによって、ピークにおけるSパラメータS11の値を顕著に劣化させることなくピーク周波数を低周波側へシフトさせることができることが分かった。換言すれば、ポスト壁導波路101A及びポスト壁導波路101Cは、所定の動作帯域(71GHz以上86GHz以下)の中心周波数(78.5GHz)よりも低周波側の帯域であるローバンド(71GHz以上76GHz以下)においても良好な反射特性を有することが分かった。
【0104】
なお、これらの結果より、幅W
2A又は幅W
2Cを適宜調整することによって、ローバンドに含まれる任意の周波数をピーク周波数とする反射特性が良好なポスト壁導波路を設計可能であることが分かった。
【0105】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【解決手段】誘電体導波路(1)は、第1広壁(21)、第2広壁(22)、第1狭壁(23)、第2狭壁(24)、及びショート壁(25)により規定され、且つ、誘電体により満たされた導波領域(12)と、導波領域(12)の表面から内部に至る柱状導体(34)を含むモード変換部(31)とを備える。ショート壁(25)の幅(W