(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408688
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】パワーインダクター
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20181004BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 B
H01F17/04 F
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-504690(P2017-504690)
(86)(22)【出願日】2015年6月1日
(65)【公表番号】特表2017-524255(P2017-524255A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】KR2015005454
(87)【国際公開番号】WO2016021818
(87)【国際公開日】20160211
【審査請求日】2017年3月24日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0101508
(32)【優先日】2014年8月7日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0120128
(32)【優先日】2014年9月11日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2015-0062601
(32)【優先日】2015年5月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509275998
【氏名又は名称】モダ−イノチップス シーオー エルティディー
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100129229
【弁理士】
【氏名又は名称】村澤 彰
(72)【発明者】
【氏名】パク,インキル
(72)【発明者】
【氏名】ノ,テヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョンテ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソンフン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,チョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,キチョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,チョンギュ
【審査官】
右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−042102(JP,A)
【文献】
特開2008−072073(JP,A)
【文献】
特表2014−503118(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/042691(WO,A1)
【文献】
特開平11−150357(JP,A)
【文献】
特表2013−521414(JP,A)
【文献】
特開2014−013824(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0038417(US,A1)
【文献】
特開2010−010536(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0308072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 27/28
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末及びポリマーを含むボディと、
前記ボディの内部に設けられた少なくとも1つの基材と、
前記基材の少なくとも一方の面の上に設けられた少なくとも1つのコイルパターンと、
前記コイルパターンとボディとの間に形成された絶縁層と、
を備え、
前記絶縁層は、パリレンにより形成され
前記金属粉末は、表面にパリレンが1μm〜10μmの厚さでコーティングされたパワーインダクター。
【請求項2】
前記ボディは、熱伝導性フィラーをさらに含む請求項1に記載のパワーインダクター。
【請求項3】
前記金属粉末は、含鉄金属合金粉末を含む請求項1に記載のパワーインダクター。
【請求項4】
前記熱伝導性フィラーは、MgO、AlN、カーボン系の物質よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含む請求項2に記載のパワーインダクター。
【請求項5】
前記熱伝導性フィラーは、前記金属粉末100wt%に対して0.5wt%〜3wt%の含量で含まれ、0.5μm〜100μmの大きさを有する請求項4に記載のパワーインダクター。
【請求項6】
前記基材は、銅張積層板により形成されるか、あるいは、含鉄金属板の両面の上に銅箔が貼り合わせられた請求項1に記載のパワーインダクター。
【請求項7】
前記絶縁層は、前記パリレンを気化させて前記コイルパターンの上に均一な厚さでコーティングされた請求項1に記載のパワーインダクター。
【請求項8】
前記絶縁層は、3μm〜100μmの厚さに形成された請求項7に記載のパワーインダクター。
【請求項9】
前記ボディの外側に形成されて前記コイルパターンと接続された外部電極をさらに備える請求項7に記載のパワーインダクター。
【請求項10】
前記基材は少なくとも2以上設けられ、前記コイルパターンは、前記少なくとも2以上の基材の上にそれぞれ形成される請求項7に記載のパワーインダクター。
【請求項11】
前記ボディの外側に設けられ、前記少なくとも2以上のコイルパターンを接続する接続電極をさらに備える請求項10に記載のパワーインダクター。
【請求項12】
前記少なくとも2以上のコイルパターンとそれぞれ接続されて前記ボディの外側に形成された少なくとも2以上の外部電極を備える請求項11に記載のパワーインダクター。
【請求項13】
前記複数の外部電極は、前記ボディの同じ側面に互いに離れて形成されるか、あるいは、前記ボディの異なる側面に形成された請求項12に記載のパワーインダクター。
【請求項14】
前記ボディの少なくとも1つの領域に設けられ、前記ボディの透磁率よりも高い透磁率を有する磁性層をさらに備える請求項7に記載のパワーインダクター。
【請求項15】
前記磁性層は、熱伝導性フィラーを含んで形成された請求項14に記載のパワーインダクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーインダクターに係り、特に、インダクタンス(Inductance)特性に優れており、しかも、絶縁特性及び熱的安定性が向上したパワーインダクターに関する。
【背景技術】
【0002】
パワーインダクターは、主として携帯機器内のDC−DCコンバーターなどの電源回路に設けられる。この種のパワーインダクターは、電源回路の高周波化及び小型化が進むことに伴い、既存の巻線型チョークコイル(Choke Coil)の代わりに好んでよく用いられている。なお、パワーインダクターは、携帯機器のサイズの縮小化及び多機能化が進むことに伴い、小型化、高電流化、低抵抗化などに向けた開発が行われている。
【0003】
パワーインダクターは、多数の磁性体(フェライト)または低誘電率の誘電体からなるセラミックシートが積み重ねられた積層体状に製造される。このとき、セラミックシートの上には金属パターンがコイルパターン状に形成されているが、それぞれのセラミックシートの上に形成されたコイルパターンは、それぞれのセラミックシートに形成された導電性ビアにより接続され、シートが積み重ねられる上下方向に沿って重なり合う構造を有する。このようなパワーインダクターを構成するボディは、従来には、多くの場合、ニッケル(Ni)−亜鉛(Zn)−銅(Cu)−鉄(Fe)の4元系で構成された磁性体材料を用いて製作していた。
【0004】
ところが、磁性体材料は、飽和磁化値が金属材料に比べて低いが故に、最近の携帯機器が必要とする高電流特性を実現することができなくなる虞がある。このため、パワーインダクターを構成するボディを金属粉末を用いて製作することにより、ボディを磁性体で製作した場合に比べて相対的に飽和磁化値を高めることができる。しかしながら、金属を用いてボディを製作する場合、高周波における渦電流損及びヒステリシス損が高くなって材料の損失が大幅に増えてしまうという問題が生じる虞がある。このような材料の損失を低減するために、金属粉末の間をポリマーで絶縁する構造を適用している。
【0005】
しかしながら、金属粉末及びポリマーを用いてボディを製造したパワーインダクターは、温度が上昇することに伴い、インダクタンスが低くなるという問題がある。すなわち、パワーインダクターが適用された携帯機器の発熱によりパワーインダクターの温度が上昇し、これにより、パワーインダクターのボディを構成する金属粉末が加熱されながらインダクタンスが低くなるという問題が生じる。
【0006】
また、パワーインダクターは、ボディの内部においてコイルパターンとボディの内部の金属粉末とが接触する虞があるが、これを防ぐために、コイルパターンとボディとを絶縁せねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2007−0032259号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ボディ内の熱を放出することにより、温度に対する安定性を向上させ、これにより、インダクタンスの低下を防ぐことのできるパワーインダクターを提供する。本発明は、コイルパターンとボディとの間の絶縁性を向上させることのできるパワーインダクターを提供する。本発明は、容量及び透磁率を向上させることのできるパワーインダクターを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によるパワーインダクターは、
金属粉末及びポリマーを含むボディと、前記ボディの内部に設けられた少なくとも1つの基材と、前記基材の少なくとも一方の面の上に設けられた少なくとも1つのコイルパターンと、前記コイルパターンとボディとの間に形成された絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、パリレンにより形成され
、前記金属粉末は、表面にパリレンが1μm〜10μmの厚さでコーティングされる。
【0010】
前記ボディは
、熱伝導性フィラーを
さらに含む。
【0011】
前記金属粉末は、含鉄金属合金粉末を含む。
【0014】
前記熱伝導性フィラーは、MgO、AlN、カーボン系の物質よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含む。
【0015】
前記熱伝導性フィラーは、前記金属粉末100wt%に対して0.5wt%〜3wt%の含量で含まれ、0.5μm〜100μmの大きさを有する。
【0016】
前記基材は、銅張積層板により形成されるか、あるいは、含鉄金属板の両面の上に銅箔が貼り合わせられる。
【0017】
前記絶縁層は、前記パリレンを気化させて前記コイルパターンの上に均一な厚さでコーティングされる。
【0018】
前記絶縁層は、3μm〜100μmの厚さに形成される。
【0019】
前記パワーインダクターは、前記ボディの外側に形成されて前記コイルパターンと接続された外部電極をさらに備える。
【0020】
前記基材は少なくとも2以上設けられ、前記コイルパターンは、前記少なくとも2以上の基材の上にそれぞれ形成される。
【0021】
前記パワーインダクターは、前記ボディの外側に設けられ、前記少なくとも2以上のコイルパターンを接続する接続電極をさらに備える。
【0022】
前記パワーインダクターは、前記少なくとも2以上のコイルパターンとそれぞれ接続されて前記ボディの外側に形成された少なくとも2以上の外部電極を備える。
【0023】
前記複数の外部電極は、前記ボディの同じ側面に互いに離れて形成されるか、あるいは、前記ボディの異なる側面に形成される。
【0024】
前記パワーインダクターは、前記ボディの少なくとも1つの領域に設けられ、前記ボディの透磁率よりも高い透磁率を有する磁性層をさらに備える。
【0025】
前記磁性層は、熱伝導性フィラーを含んで形成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の実施形態によるパワーインダクターは、ボディが金属粉末、ポリマー及び熱伝導性フィラーを用いて製作される。熱伝導性フィラーが含まれることにより、ボディの熱を外部に円滑に放出することができ、これにより、ボディの加熱に伴うインダクタンスの低下を防ぐことができる。
【0027】
また、コイルパターンの上にパリレン(parylene)をコーティングすることにより、コイルパターンの上にパリレンを均一な厚さに形成することができ、これにより、ボディとコイルパターンとの間の絶縁性を向上させることができる。
【0028】
さらに、ボディの内部に設けられてコイルパターンが形成された基材を金属磁性体で製作することにより、パワーインダクターの透磁率の低下を防ぐこともでき、ボディに少なくとも1つの磁性層を設けることにより、パワーインダクターの透磁率を向上させることができる。
【0029】
一方、少なくとも一方の面にコイル状のコイルパターンがそれぞれ形成された少なくとも2以上の基材がボディ内に設けられることにより、1つのボディ内に複数のコイルを形成することができ、これにより、パワーインダクターの容量を増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるパワーインダクターの斜視図である。
【
図2】
図1のA−A'線に沿って切り取った状態の断面図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態によるパワーインダクターの断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態によるパワーインダクターの断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態によるパワーインダクターの断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態によるパワーインダクターの斜視図である。
【
図7】
図6のA−A'線に沿って切り取った状態の断面図である。
【
図8】
図6のB−B'線に沿って切り取った状態の断面図である。
【
図9】本発明の第4の実施形態によるパワーインダクターの斜視図である。
【
図10】
図9のA−A'線に沿って切り取った状態の断面図である。
【
図11】
図9のB−B'線に沿って切り取った状態の断面図である。
【
図12】は、本発明の第4の実施形態の変形例によるパワーインダクターの斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態によるパワーインダクターの製造方法を説明するために順番に示す断面図である。
【
図14】本発明の一実施形態によるパワーインダクターの製造方法を説明するために順番に示す断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態によるパワーインダクターの製造方法を説明するために順番に示す断面図である。
【
図16】比較例及び実施例によるパワーインダクターの断面イメージである。
【
図17】比較例及び実施例によるパワーインダクターの断面イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態による「パワーインダクター」について詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化され、単にこれらの実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。
【0032】
図1は、本発明の第1の実施形態によるパワーインダクターの斜視図であり、
図2は、
図1のA−A'線に沿って切り取った状態の断面図である。
【0033】
図1及び
図2を参照すると、本発明の第1の実施形態によるパワーインダクターは、熱伝導性フィラー130を含むボディ100と、ボディ100の内部に設けられた基材200と、基材200の少なくとも一方の面の上に形成されたコイルパターン300(310、320)と、ボディ100の外部に設けられた外部電極400(410、420)と、を備えていてもよい。なお、前記パワーインダクターは、コイルパターン310、320の上に形成された絶縁層500をさらに備えていてもよい。
【0034】
ボディ100は、例えば、六面体状であってもよい。しかしながら、ボディ100は、六面体以外の多面体の形状を有していてもよい。このようなボディ100は、金属粉末110、ポリマー120及び熱伝導性フィラー130を含んでいてもよい。金属粉末110は、平均粒径が1μm〜50μmであってもよい。また、金属粉末110としては、同じ粒径の単一の粒子または2種以上の粒子を用いてもよく、複数の粒径を有する単一の粒子または2種以上の粒子を用いてもよい。例えば、30μmの平均粒径を有する第1の金属粒子及び3μmの平均粒径を有する第2の金属粒子を混合して用いてもよい。粒径が異なる2種以上の金属粉末110を用いる場合、ボディ100の充填率を高めることができて容量を最大限に実現することができる。
【0035】
例えば、30μmの金属粉末を用いる場合、30μmの金属粉末の間には空隙が発生する虞があり、これにより、充填率が低くならざるを得ない。しかしながら、30μmの金属粉末の間にこれよりも小さい3μmの金属粉末を混合して用いることにより、充填率を高めることができる。このような金属粉末110としては、含鉄(Fe)金属物質を用いてもよいが、例えば、鉄−ニッケル(Fe−Ni)、鉄−ニッケル−ケイ素(Fe−Ni−Si)、鉄−アルミニウム−ケイ素(Fe−Al−Si)及び鉄−アルミニウム−クロム(Fe−Al−Cr)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属を含んでいてもよい。すなわち、金属粉末110は、鉄を含んで磁性組織を有していてもよく、磁性を帯びる金属合金により形成されて所定の透磁率を有していてもよい。また、金属粉末110は、表面が磁性体によりコーティングされてもよいが、金属粉末110とは透磁率が異なる物質によりコーティングされてもよい。例えば、磁性体は、金属酸化物磁性体により形成されてもよいが、ニッケル酸化物磁性体、亜鉛酸化物磁性体、銅酸化物磁性体、マンガン酸化物磁性体、コバルト酸化物磁性体、バリウム酸化物磁性体及びニッケル−亜鉛−銅酸化物磁性体よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の酸化物磁性体を用いてもよい。すなわち、金属粉末110の表面にコーティングされる磁性体は、含鉄金属酸化物により形成されてもよく、金属粉末110よりも高い透磁率を有することが好ましい。一方、金属粉末110が磁性を帯びるが故に、金属粉末110が互いに接触すると、絶縁が破壊され、短絡が生じる虞がある。このため、金属粉末110は、表面が少なくとも1つの絶縁体によりコーティングされてもよい。例えば、金属粉末110は、表面が酸化物によりコーティングされてもよく、パリレン(parylene)などの絶縁性高分子物質によりコーティングされてもよいが、パリレンによりコーティングされることが好ましい。パリレンは、1μm〜10μmの厚さでコーティングされてもよい。ここで、パリレンが1μm未満の厚さに形成されると、金属粉末110の絶縁効果が低下する虞があり、10μmを超える厚さに形成されると、金属粉末110のサイズが増加してボディ100内の金属粉末110の分布が減って透磁率が低くなる虞がある。なお、パリレンに加えて種々の絶縁性高分子物質を用いて金属粉末110の表面をコーティングしてもよい。一方、金属粉末110をコーティングする酸化物は、金属粉末110を酸化させて形成してもよくTiO
2、SiO
2、ZrO
2、SnO
2、NiO、ZnO、CuO、CoO、MnO、MgO、Al
2O
3、Cr
2O
3、Fe
2O
3、B
2O
3及びBi
2O
3よりなる群から選ばれるいずれか一種がコーティングされてもよい。ここで、金属粉末110は、二重構造の酸化物によりコーティングされてもよく、酸化物及び高分子物質の二重構造にコーティングされてもよい。いうまでもなく、金属粉末110は、表面が磁性体によりコーティングされた後に絶縁体によりコーティングされてもよい。このように金属粉末110の表面が絶縁体によりコーティングされることにより、金属粉末110間の接触による短絡を防ぐことができる。このとき、酸化物、絶縁性高分子物質などを用いて金属粉末110をコーティングしたり、磁性体及び絶縁体の二重にコーティングされたりする場合であっても、1μm〜10μmの厚さでコーティングされてもよい。ポリマー120は、金属粉末110間を絶縁するために金属粉末110と混合されてもよい。すなわち、金属粉末110は、高周波における渦電流損及びヒステリシス損が高くなって材料の損失が大幅に増えるという問題が生じる虞があるが、このような材料の損失を低減すべく、金属粉末110の間を絶縁するためのポリマー120を含めてもよい。このようなポリマー120としては、エポキシ(epoxy)、ポリイミド(polyimide)及び液晶ポリマー(Liquid Crystalline Polymer;LCP)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上のポリマーが挙げられるが、これに制限されない。また、ポリマー120は、金属粉末110の間に絶縁性を提供するものであり、熱硬化性樹脂からなることが好ましい。熱硬化性樹脂としては、例えば、ノボラックエポキシ樹脂(Novolac Epoxy Resin)、フェノキシ型エポキシ樹脂(Phenoxy Type Epoxy Resin)、BPA型エポキシ樹脂(BPA Type Epoxy Resin)、BPF型エポキシ樹脂(BPF Type Epoxy Resin)、水素化BPAエポキシ樹脂(Hydrogenated BPA Epoxy Resin)、ダイマー酸改質エポキシ樹脂(Dimer Acid Modified Epoxy Resin)、ウレタン改質エポキシ樹脂(Urethane Modified Epoxy Resin)、ゴム改質エポキシ樹脂(Rubber Modified Epoxy Resin)及びDCPD型エポキシ樹脂(DCPD Type Epoxy Resin)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上が挙げられる。ここで、ポリマー120は、金属粉末100wt%に対して2.0wt%〜5.0wt%の含量で含まれてもよい。ところが、ポリマー120の含量が増大する場合、金属粉末110の体積分率が低下して飽和磁化値を高める効果が正常に実現されないという問題が生じ、しかも、ボディ100の磁性特性、すなわち、透磁率を低下させる虞がある。これに対し、ポリマー120の含量が減少する場合、インダクターの製造過程において用いられる強酸または強塩基溶液などが内部に浸透してインダクタンス特性を損なってしまうという問題が生じる虞がある。このため、ポリマー120は、金属粉末110の飽和磁化値及びインダクタンスを低下させない範囲内で含まれてもよい。また、熱伝導性フィラー130は、外部の熱によりボディ100が加熱されてしまうという問題を解消するために含まれる。すなわち、外部の熱によりボディ100の金属粉末110が加熱されることがあるが、熱伝導性フィラー130が含まれることにより、金属粉末110の熱を外部に放出することができる。このような熱伝導性フィラー130は、MgO、AlN、カーボン系の物質よりなる群から選ばれるいずれか一種以上を含んでいてもよいが、これに制限されない。ここで、カーボン系の物質は炭素を含み、様々な形状を呈してもよいが、例えば、黒鉛、カーボンブラック、グラフェン、グラファイトなどが含まれてもよい。さらに、熱伝導性フィラー130は、金属粉末110 100wt%に対して0.5wt%〜3wt%の含量で含まれてもよい。熱伝導性フィラー130の含量が前記範囲未満である場合には熱放出効果が得られず、前記範囲を超える場合には金属粉末110の透磁率を低下させてしまう。さらにまた、熱伝導性フィラー130は、例えば、0.5μm〜100μmの大きさを有していてもよい。すなわち、熱伝導性フィラー130は、金属粉末110よりも大きくても(または、小さくても)よい。一方、ボディ100は、金属粉末110、ポリマー120及び熱伝導性フィラー130を含む材料からなる複数枚のシートを積み重ねて製作されてもよい。ここで、複数枚のシートを積み重ねてボディ100を製作する場合、各シートの熱伝導性フィラー130の含量は異なっていてもよい。例えば、基材200を中心として上側及び下側に遠ざかるにつれてシート内の熱伝導性フィラー130の含量は増大してもよい。なお、ボディ100は、金属粉末110、ポリマー120及び熱伝導性フィラー130を含む材料からなるペーストを所定の厚さで印刷して形成する方法や、このようなペーストを枠に入れて圧着する方法など必要に応じて様々な方法により形成されてもよい。このとき、ボディ100を形成するために積み重ねられるシートの枚数または所定の厚さで印刷されるペーストの厚さは、パワーインダクターに求められるインダクタンスなどの電気的な特性を考慮して適正な枚数や厚さに決定されればよい。
【0036】
基材200は、ボディ100の内部に設けられてもよい。基材200は、少なくとも1つ以上設けられてもよい。例えば、基材200は、ボディ100の内部にボディ100の長軸方向に沿って設けられてもよい。ここで、基材200は、1以上に設けられてもよいが、例えば、2つの基材200が外部電極400の形成方向と直交する方向、例えば、垂直方向に所定の間隔だけ離れて設けられてもよい。このような基材200は、例えば、銅張積層板(Copper Clad Lamination;CCL)または金属磁性体などにより製作されてもよい。このとき、基材200は、金属磁性体により製作されることにより透磁率を増加させ、容量を手軽に実現することができる。すなわち、銅張積層板(CCL)は、ガラス強化繊維に銅箔(foil)を貼り合わせて製作する。ところが、銅張積層板(CCL)は透磁率を有さないが故に、パワーインダクターの透磁率を低下させる虞がある。しかしながら、金属磁性体を基材200として用いると、金属磁性体が透磁率を有するため、パワーインダクターの透磁率を低下させなくなる。このような金属磁性体を用いた基材200は、含鉄金属、例えば、鉄−ニッケル(Fe−Ni)、鉄−ニッケル−ケイ素(Fe−Ni−Si)、鉄−アルミニウム−ケイ素(Fe−Al−Si)及び鉄−アルミニウム−クロム(Fe−Al−Cr)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属からなる所定の厚さの板に銅箔を貼り合わせて製作してもよい。すなわち、鉄を含んで少なくとも1つの金属からなる合金を所定の厚さの板状に製作し、金属板の少なくとも一方の面に銅箔を貼り合わせることにより基材200が製作されてもよい。また、基材200の所定の領域には少なくとも1つの導電性ビア(図示せず)が形成されてもよく、導電性ビアにより基材200の上側及び下側にそれぞれ形成されるコイルパターン310、320が電気的に接続されてもよい。導電性ビアは、基材200に厚さ方向に沿って貫通するビア(図示せず)を形成した後、ビアに導電性ペーストを充填するなどの方法を用いて形成してもよい。
【0037】
コイルパターン300(310、320)は、基材200の少なくとも一方の面、好ましくは、両面に形成されてもよい。これらのコイルパターン310、320は、基材200の所定の領域、例えば、中央部から外側に向かってスパイラル状に形成されてもよく、基材200の上に形成された2つのコイルパターン310、320が接続されて1つのコイルをなしてもよい。ここで、上側のコイルパターン310及び下側のコイルパターン320は、互いに同じ形状に形成されてもよい。また、コイルパターン310、320が重なり合うように形成されてもよく、コイルパターン310が形成されていない領域に重なり合うようにコイルパターン320が形成されてもよい。これらのコイルパターン310、320は、基材200に形成された導電性ビアにより電気的に接続されてもよい。コイルパターン310、320は、例えば、厚膜印刷、塗布、蒸着、メッキ及びスパッタリングなどの方法を用いて形成してもよい。さらに、コイルパターン310、320及び導電性ビアは、銀(Ag)、銅(Cu)及び銅合金のうちの少なくとも一種を含む材料により形成されてもよいが、これに制限されない。一方、コイルパターン310、320をメッキ工程を用いて形成する場合、例えば、基材200の上にメッキ工程を用いて金属層、例えば、銅層を形成し、リソグラフィ工程を用いてパターニングしてもよい。すなわち、基材200の表面に形成された銅箔をシート層として銅層をメッキ工程を用いて形成し、これをパターニングすることによりコイルパターン310、320を形成してもよい。いうまでもなく、基材200の上に所定の形状の感光膜パターンを形成した後にメッキ工程を行って露出された基材200の表面から金属層を成長させた後、感光膜を除去することにより所定の形状のコイルパターン310、320を形成してもよい。一方、コイルパターン310、320は多層に形成されてもよい。すなわち、基材200の上側に形成されたコイルパターン310の上側に複数のコイルパターンがさらに形成されてもよく、基材200の下側に形成されたコイルパターン320の下側に複数のコイルパターンがさらに形成されてもよい。コイルパターン310、320が多層に形成される場合、下層と上層との間に絶縁層が形成され、絶縁層に導電性ビア(図示せず)が形成されて多層コイルパターンが接続されてもよい。
【0038】
外部電極400(410、420)は、ボディ100の両端部に形成されてもよい。例えば、外部電極400は、ボディ100の長軸方向に向かい合う2つの側面に形成されてもよい。このような外部電極400は、ボディ100のコイルパターン310、320と電気的に接続されてもよい。すなわち、コイルパターン310、320の少なくとも一方の端部がボディ100の外側に露出され、外部電極400がコイルパターン310、320の端部と接続されるように形成されてもよい。このような外部電極400は、導電性ペーストにボディ100を浸漬する方法を用いてボディ100の両端に形成してもよく、あるいは、印刷、蒸着及びスパッタリングなどの様々な方法を用いてボディ100の両端に形成してもよい。外部電極400は、電気伝導性を有する金属により形成されてもよいが、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、パラジウム及びこれらの合金よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属により形成されてもよい。なお、外部電極400は、表面にニッケルメッキ層(図示せず)または錫メッキ層(図示せず)がさらに形成されてもよい。
【0039】
絶縁層500は、コイルパターン310、320と金属粉末110とを絶縁するためにコイルパターン310、320とボディ100との間に形成されてもよい。すなわち、絶縁層500がコイルパターン310、320を覆うように基材200の上部及び下部に形成されてもよい。このような絶縁層500は、コイルパターン310、320の上にパリレンをコーティングして形成してもよい。例えば、コイルパターン310、320が形成された基材200を蒸着チャンバー内に設けた後にパリレンを気化させて真空チャンバーの内部に供給することにより、コイルパターン310、320の上にパリレンを蒸着してもよい。例えば、パリレンを気化器(Vaporizer)において1次的に加熱して気化させて下記の一般式1のようなダイマー(dimer)状態にした後、2次的に加熱して下記の一般式2のようにモノマー(Monomer)状態に熱分解させ、蒸着チャンバーに連設されたコールドトラップ(Cold Trap)及び機械的な真空ポンプ(Mechanical Vaccum Pump)を用いてパリレンを冷却させると、パリレンはモノマー状態から一般式3のようにポリマー状態に変換されてコイルパターン310、320の上に蒸着される。いうまでもなく、絶縁層500は、パリレン以外の絶縁性高分子、例えば、エポキシ、ポリイミド及び液晶ポリマーから選ばれるいずれか一種以上の物質により形成されてもよい。しかしながら、パリレンをコーティングすることにより、コイルパターン310、320の上に均一な厚さで絶縁層500を形成することができ、薄肉に形成しても他の物質に比べて絶縁特性を向上させることができる。すなわち、絶縁層500としてパリレンをコーティングする場合、ポリイミドを形成する場合に比べて薄肉に形成しながら絶縁破壊電圧を増加させて絶縁特性を向上させることができる。また、コイルパターン310、320のパターン間の間隔に応じてパターン間を埋め込んで均一な厚さに形成されてもよく、パターンの段差に沿って均一な厚さに形成されてもよい。すなわち、コイルパターン310、320のパターン間の間隔が遠い場合、パターンの段差に沿って均一な厚さでパリレンがコーティング可能であり、パターン間の間隔が近い場合、パターン間を埋め込んでコイルパターン310、320の上に所定の厚さに形成可能である。ここで、絶縁層500は、パリレンを用いて3μm〜100μmの厚さに形成してもよい。パリレンが3μm未満の厚さに形成されると、絶縁特性が低下する虞があり、100μmを超える厚さに形成する場合、同じサイズ内において絶縁層500が占める厚さが増加してボディ100の体積が小さくなり、これにより、透磁率が低下する虞がある。いうまでもなく、絶縁層500は、所定の厚さのシートにより製作された後にコイルパターン310、320の上に形成されてもよい。
【0043】
上述したように、本発明の第1の実施形態によるパワーインダクターは、コイルパターン310、320とボディ100との間にパリレンを用いて絶縁層500を形成することにより、絶縁層500を薄肉に形成しながらも絶縁特性を向上させることができる。また、金属粉末110及びポリマー120だけではなく、熱伝導性フィラー130を含めてボディ100を製作することにより、金属粉末110の加熱によるボディ100の熱を外部に放出することができてボディ100の温度の上昇を防ぐことができ、これにより、インダクタンスの低下などの問題を防ぐことができる。さらに、ボディ100の内部の基材200を金属磁性体により形成することにより、パワーインダクターの透磁率の減少を防ぐことができる。
【0044】
図3は、本発明の第2の実施形態によるパワーインダクターの断面図である。
【0045】
図3を参照すると、本発明の第2の実施形態によるパワーインダクターは、熱伝導性フィラー130を含むボディ100と、ボディ100の内部に設けられた基材200と、基材200の少なくとも一方の面の上に形成されたコイルパターン310、320と、ボディ100の外部に設けられた外部電極410、420と、コイルパターン310、320の上にそれぞれ設けられた絶縁層500と、ボディ100の上部及び下部にそれぞれ設けられた少なくとも1つの磁性層600(610、620)と、を備えていてもよい。すなわち、本発明の一実施形態に磁性層600がさらに配設されて本発明の他の実施形態が実現されてもよい。このような本発明の第2の実施形態について、本発明の第1の実施形態とは異なる構成を中心として説明すると、下記の通りである。
【0046】
磁性層600(610、620)は、ボディ100の少なくとも1つの領域に設けられてもよい。すなわち、第1の磁性層610がボディ100の上部の表面に形成され、第2の磁性層620がボディ100の下部の表面に形成されてもよい。ここで、第1及び第2の磁性層610、620は、ボディ100の透磁率を増加させるために設けられ、ボディ100よりも高い透磁率を有する物質により製作されてもよい。例えば、ボディ100の透磁率が20であり、第1及び第2の磁性層610、620は40〜1000の透磁率を有するように設けられてもよい。これらの第1及び第2の磁性層610、620は、例えば、磁性体粉末及びポリマーを用いて製作してもよい。すなわち、第1及び第2の磁性層610、620は、ボディ100よりも高い透磁率を有するようにボディ100の磁性体よりも高い磁性を有する物質により形成されてもよく、さらに高い磁性体の含有率を有するように形成されてもよい。ここで、ポリマーは、金属粉末100wt%に対して15wt%で添加されてもよい。また、磁性体粉末としては、ニッケル磁性体(Ni Ferrite)、亜鉛磁性体(Zn Ferrite)、銅磁性体(Cu Ferrite)、マンガン磁性体(Mn Ferrite)、コバルト磁性体(Co Ferrite)、バリウム磁性体(Ba Ferrite)及びニッケル−亜鉛−銅磁性体(Ni−Zn−Cu Ferrite)よりなる群から選ばれるいずれか一種以上またはこれらの一種以上の酸化物磁性体を用いてもよい。すなわち、含鉄金属合金粉末または含鉄金属合金酸化物を用いて磁性層600を形成してもよい。さらに、金属合金粉末に磁性体をコーティングして磁性体粉末を形成してもよい。例えば、ニッケル酸化物磁性体、亜鉛酸化物磁性体、銅酸化物磁性体、マンガン酸化物磁性体、コバルト酸化物磁性体、バリウム酸化物磁性体及びニッケル−亜鉛−銅酸化物磁性体よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の酸化物磁性体を、例えば、含鉄金属合金粉末にコーティングして磁性体粉末を形成してもよい。すなわち、含鉄金属酸化物を金属合金粉末にコーティングして磁性体粉末を形成してもよい。いうまでもなく、ニッケル酸化物磁性体、亜鉛酸化物磁性体、銅酸化物磁性体、マンガン酸化物磁性体、コバルト酸化物磁性体、バリウム酸化物磁性体及びニッケル−亜鉛−銅酸化物磁性体よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の酸化物磁性体を、例えば、含鉄金属合金粉末と混合して磁性体粉末を形成してもよい。すなわち、含鉄金属酸化物を金属合金粉末と混合して磁性体粉末を形成してもよい。一方、第1及び第2の磁性層610、620は、金属粉末及びポリマーに熱伝導性フィラーをさらに含めて製作してもよい。熱伝導性フィラーは、金属粉末100wt%に対して0.5wt%〜3wt%で含有されてもよい。これらの第1及び第2の磁性層610、620は、シート状に製作されて複数枚のシートが積み重ねられたボディ100の上部及び下部にそれぞれ設けられてもよい。さらにまた、金属粉末110、ポリマー120及び熱伝導性フィラー130を含む材料からなるペーストを所定の厚さで印刷する方法、ペーストを枠に入れて圧着する方法などを用いてボディ100を形成した後、ボディ100の上部及び下部に磁性層610、620をそれぞれ形成してもよい。いうまでもなく、磁性層610、620は、ペーストを用いて形成してもよいが、ボディ100の上部及び下部に磁性物質を塗布して磁性層610、620を形成してもよい。
【0047】
一方、本発明の第2の実施形態によるパワーインダクターは、
図4に示すように、ボディ100と基材200との間の上部及び下部に第3及び第4の磁性層630、640がさらに設けられてもよく、
図5に示すように、これらの間に第5及び第6の磁性層650、660がさらに設けられてもよい。すなわち、ボディ100内に少なくとも1つの磁性層600が設けられてもよい。このような磁性層600は、シート状に製作されて複数枚のシートが積み重ねられたボディ100の間に設けられてもよい。すなわち、ボディ100を製作するための複数枚のシートの間に少なくとも1つの磁性層600を設けてもよい。また、金属粉末110、ポリマー120及び熱伝導性フィラー130を含む材料からなるペーストを所定の厚さで印刷してボディ100を形成する場合に印刷中に磁性層を形成してもよく、ペーストを枠に入れて圧着する場合であっても磁性層をその間に入れて圧着してもよい。いうまでもなく、磁性層600は、ペーストを用いて形成してもよいが、ボディ100を印刷するときに軟磁性物質を塗布してボディ100内に磁性層600を形成してもよい。
【0048】
上述したように、本発明の他の実施形態によるパワーインダクターは、ボディ100に少なくとも1つの磁性層600を設けることにより、パワーインダクターの磁性率を向上させることができる。
【0049】
図6は、本発明の第3の実施形態によるパワーインダクターの斜視図であり、
図7は、
図6のA−A’線に沿って切り取った状態の断面図であり、
図8は、
図6のB−B’線に沿って切り取った状態の断面図である。
【0050】
図6から
図8を参照すると、本発明の第3の実施形態によるパワーインダクターは、ボディ100と、ボディ100の内部に設けられた少なくとも2以上の基材200(210、220)と、少なくとも2以上の基材200のそれぞれの少なくとも一方の面の上に形成されたコイルパターン300(310、320、330、340)と、ボディ100の外部に設けられた外部電極410、420と、コイルパターン300の上に形成された絶縁層500と、ボディ100の外部に外部電極410、420から離れて設けられ、ボディ100の内部の少なくとも2以上の基板200のそれぞれに形成された少なくとも1つのコイルパターン300と接続された接続電極700と、を備えていてもよい。以下の説明に当たっては、一実施形態及び他の実施形態の説明と重複する内容についての説明は省略する。
【0051】
少なくとも2以上の基材200(210、220)は、ボディ100の内部に設けられてもよい。例えば、少なくとも2以上の基材200は、ボディ100の内部にボディ100の長軸方向に沿って設けられ、ボディ100の厚さ方向に所定の間隔だけ離れて設けられてもよい。
【0052】
コイルパターン300(310、320、330、340)は、少なくとも2以上の基材200のそれぞれの少なくとも一方の面、好ましくは、両面に形成されもよい。ここで、コイルパターン310、320は、第1の基板210の下部及び上部にそれぞれ形成されて第1の基材210に形成された導電性ビアにより電気的に接続されてもよい。同様に、コイルパターン330、340は、第2の基板220の下部及び上部にそれぞれ形成されて第2の基材220に形成された導電性ビアにより電気的に接続されてもよい。これらの複数のコイルパターン300は、基材200の所定の領域、例えば、中央部から外側に向かってスパイラル状に形成されてもよく、基材200の上に形成された2つのコイルパターンが接続されて1つのコイルを構成してもよい。すなわち、1つのボディ100内に2以上のコイルが形成されてもよい。ここで、基材200の上側のコイルパターン310、330及び下側のコイルパターン320、340は、互いに同じ形状に形成されてもよい。なお、複数のコイルパターン300が重なり合うように形成されてもよく、上側のコイルパターン310、330が形成されていない領域に重なり合うように下側のコイルパターン320、340が形成されてもよい。
【0053】
外部電極400(410、420)は、ボディ100の両端部に形成されてもよい。例えば、外部電極400は、ボディ100の長軸方向に向かい合う2つの側面に形成されてもよい。このような外部電極400は、ボディ100のコイルパターン300と電気的に接続されてもよい。すなわち、複数のコイルパターン300の少なくとも一方の端部がボディ100の外側に露出され、外部電極400が複数のコイルパターン300の端部と接続されるように形成されてもよい。例えば、コイルパターン310は、コイルパターン310、330と接続されるように形成されてもよく、コイルパターン320は、コイルパターン320、340と接続されるように形成されてもよい。
【0054】
接続電極700は、外部電極400が形成されていないボディ100の少なくとも一方の面の上に形成されてもよい。このような接続電極700は、第1の基材210の上に形成されたコイルパターン310、320の少なくともいずれか1つと、第2の基材220の上に形成されたコイルパターン330、340の少なくともいずれか1つとを接続するために設けられる。このため、ボディ100の外部の接続電極700により第1の基材210の上に形成されたコイルパターン310、320と第2の基材220の上に形成されたコイルパターン330、340とが電気的に互いに接続されてもよい。このような接続電極700は、導電性ペーストにボディ100を浸漬したり、印刷、蒸着及びスパッタリングを行ったりするなど様々な方法によりボディ100の一方の側面に形成されてもよい。接続電極700は、電気伝導性を与えるための金属であり、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、パラジウム及びこれらの合金よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属を含んでいてもよい。このとき、接続電極700の表面に、必要に応じて、ニッケルメッキ層(図示せず)または錫メッキ層(図示せず)がさらに形成されてもよい。
【0055】
上述したように、本発明の第3の実施形態によるパワーインダクターは、少なくとも一方の面にコイルパターン300がそれぞれ形成された少なくとも2以上の基材200がボディ100内に設けられることにより、1つのボディ100内に複数のコイルを形成してもよく、これにより、パワーインダクターの容量を増やすことができる。
【0056】
図9は、本発明の第4の実施形態によるパワーインダクターの斜視図であり、
図10及び
図11は、
図9のA−A’線及びB−B’線に沿って切り取った状態の断面図である。
【0057】
図9から
図11を参照すると、本発明の第4の実施形態によるパワーインダクターは、ボディ100と、ボディ100の内部に設けられた少なくとも2以上の基材200(210、220)と、少なくとも2以上の基材200のそれぞれの少なくとも一方の面の上に形成されたコイルパターン300(310、320、330、340)と、ボディ100の向かい合う2つの側面に設けられ、コイルパターン310、320とそれぞれ接続された第1の外部電極800(810、820)と、ボディ100の向かい合う2つの側面に第1の外部電極810、820から離れて設けられ、コイルパターン330、340とそれぞれ接続された第2の外部電極900(910、920)と、を備えていてもよい。すなわち、少なくとも2以上の基材200の上にそれぞれ形成されたコイルパターン300が異なる第1及び第2の外部電極800、900により接続されることにより、1つのボディ100内に2以上のパワーインダクターが実現される。
【0058】
第1の外部電極800(810、820)は、ボディ100の両端部に形成されてもよい。例えば、第1の外部電極810、820は、ボディ100の長軸方向に向かい合う2つの側面に形成されてもよい。これらの第1の外部電極810、820は、第1の基材210の上に形成されたコイルパターン310、320と電気的に接続されてもよい。すなわち、コイルパターン310、320の少なくとも一方の端部が向かい合う方向のボディ100の外側に露出され、第1の外部電極810、820がコイルパターン310、320の端部と接続されるように形成されてもよい。これらの第1の外部電極810、820は、導電性ペーストにボディ100を浸漬したり、印刷、蒸着及びスパッタリングを行ったりするなど様々な方法を用いてボディ100の両端に形成した後にパターニングして形成してもよい。また、第1の外部電極810、820は、電気導電性を有する金属により形成されてもよいが、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、パラジウム及びこれらの合金よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属により形成されてもよい。一方、第1の外部電極810、820は、表面にニッケルメッキ層(図示せず)または錫メッキ層(図示せず)がさらに形成されてもよい。
【0059】
第2の外部電極900(910、920)は、ボディ100の両端部に形成され、第1の外部電極810、820から離れて形成されてもよい。すなわち、第1の外部電極810、820及び第2の外部電極910、920は、ボディ100の同じ側面に形成されてもよいが、これらは互いに離れて形成される。これらの第2の外部電極910、920は、第2の基材220の上に形成されたコイルパターン330、340と電気的に接続されてもよい。すなわち、コイルパターン330、340の少なくとも一方の端部が向かい合う方向のボディ100の外側に露出され、第2の外部電極910、920がコイルパターン330、340の端部と接続されるように形成されてもよい。このとき、コイルパターン330、340は、コイルパターン310、320と同じ方向で露出されるが、重なり合うことなく所定の間隔だけ離れて露出されることにより、第1及び第2の外部電極800、900とそれぞれ接続されてもよい。これらの第2の外部電極910、920は、第1の外部電極810、810と同じ工程により同時に形成されてもよい。すなわち、第2の外部電極910、920は、導電性ペーストにボディ100を浸漬したり、印刷、蒸着及びスパッタリングを行ったりするなど様々な方法を用いてボディ100の両端に形成した後にパターニングして形成してもよい。また、第2の外部電極910、920は、電気導電性を有する金属により形成されてもよいが、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、パラジウム及びこれらの合金よりなる群から選ばれるいずれか一種以上の金属により形成されてもよい。一方、第2の外部電極910、920は、表面にニッケルメッキ層(図示せず)または錫メッキ層(図示せず)がさらに形成されてもよい。
【0060】
図12は、本発明の第4の実施形態の変形例によるパワーインダクターの断面図であり、第1の外部電極810、820及び第2の外部電極910、920が異なる方向に形成される。すなわち、第1の外部電極810、820及び第2の外部電極910、920は、ボディ100の互いに直交する側面に形成されてもよい。例えば、第1の外部電極810、820がボディ100の長軸方向に向かい合う2つの側面に形成され、第2の外部電極910、920がボディ100の短軸方向に向かい合う2つの側面に形成されてもよい。
【0061】
図13から
図15は、本発明の一実施形態によるパワーインダクターの製造方法を説明するために順番に示す断面図である。
【0062】
図13を参照すると、基材200の少なくとも一方の面、好ましくは、一方の面及び他方の面の上に所定の形状のコイルパターン310、320を形成する。基材200は、銅張積層板(CCL)または金属磁性体などにより製作されてもよいが、実効透磁率を増やし且つ容量を実現し易い金属磁性体を用いることが好ましい。例えば、基材200は、含鉄金属合金からなる所定の厚さの金属板の一方の面及び他方の面に銅箔を貼り合わせることにより製作されてもよい。また、コイルパターン310、320は、基材200の所定の領域、例えば、中央部から円形のスパイラル状に形成されたコイルパターンにより形成されてもよい。このとき、基材200の一方の面の上にコイルパターン310を形成した後、基材200の所定の領域を貫通し且つ導電物質が埋め込まれた導電性ビアを形成し、基材200の他方の面の上にコイルパターン320を形成してもよい。導電性ビアは、レーザーなどを用いて基材200の厚さ方向にビア孔を形成した後、ビア孔に導電性ペーストを充填して形成してもよい。さらに、コイルパターン310は、例えば、メッキ工程を用いて形成してもよいが、このために、基材200の一方の面の上に所定の形状の感光膜パターンを形成し、基材200上の銅箔をシードとして用いたメッキ工程を行って露出された基材200の表面から金属層を成長させた後に感光膜を除去することにより形成してもよい。いうまでもなく、コイルパターン320は、基材200の他方の面の上にコイルパターン310と同じ方法を用いて形成してもよい。一方、コイルパターン310、320は、多層に形成されてもよい。コイルパターン310、320が多層に形成される場合、下層と上層との間に絶縁層が形成され、絶縁層に導電性ビア(図示せず)が形成されて多層コイルパターンが接続されてもよい。このように基材200の一方の面及び他方の面の上にコイルパターン310、320をそれぞれ形成した後、コイルパターン310、320を覆うように絶縁層500を形成する。絶縁層500は、パリレンなどの絶縁性高分子物質をコーティングして形成してもよい。すなわち、コイルパターン310、320が形成された基材200を蒸着チャンバー内に設けた後にパリレンを気化させて真空チャンバーの内部に供給することにより、コイルパターン310、320の上にパリレンを蒸着してもよい。例えば、パリレンを気化器において1次的に加熱して気化させてダイマー(dimer)状態にした後、2次的に加熱してモノマー(Monomer)状態に熱分解し、蒸着チャンバーに連設されたコールドトラップ及び機械的真空ポンプを用いてパリレンを冷却させると、パリレンはモノマー状態からポリマー状態に変換されてコイルパターン310、320の上に蒸着される。ここで、パリレンを気化させてダイマー状態にするための1次加熱工程は、100℃〜200℃の温度及び1.0Torrの圧力下で行ってもよく、気化されたパリレンを熱分解してモノマー状態にするための2次加熱工程は、400℃〜500℃の温度及び0.5Torr以上の圧力下で行ってもよい。さらにまた、モノマー状態をポリマー状態にしてパリレンを蒸着するために、蒸着チャンバーは、常温、例えば、25℃の温度及び0.1Torrの圧力を保ってもよい。このようにコイルパターン310、320の上にパリレンをコーティングすることにより、コイルパターン310、320の段差に沿って絶縁層500がコーティングされ、これにより、絶縁層500が均一な厚さに形成可能である。いうまでもなく、絶縁層500は、エポキシ、ポリイミド及び液晶ポリマーよりなる群から選ばれるいずれか一種以上の物質を含むシートをコイルパターン310、320の上に密着することにより形成してもよい。
【0063】
図14を参照すると、金属粉末110、ポリマー120及び熱伝導性フィラー130を含む材料からなる複数枚のシート100a〜100hを設ける。ここで、金属粉末110としては、含鉄(Fe)金属物質を用いてもよく、ポリマー120としては、金属粉末110の間を絶縁可能なエポキシ、ポリイミドなどを用いてもよく、熱伝導性フィラー130としては、金属粉末110の熱を外部に放出可能なMgO、AlN、カーボン系の物質などを用いてもよい。また、金属粉末110の表面が磁性体、例えば、金属酸化物磁性体によりコーティングされてもよく、パリレンなどの絶縁性物質によりコーティングされてもよい。ここで、ポリマー120は、金属粉末100wt%に対して2.0wt%〜5.0wt%の含量で含まれてもよく、熱伝導性フィラー130は、金属粉末110100wt%に対して0.5wt%〜3wt%の含量で含まれてもよい。これらの複数枚のシート100a〜100hをコイルパターン310、320が形成された基材200の上部及び下部にそれぞれ配置する。一方、複数枚のシート100a〜100hは、熱伝導性フィラー130の含量が異なっていてもよい。例えば、基材200の一方の面及び他方の面から上側及び下側に進むにつれて熱伝導性フィラー130の含量が高くなってもよい。すなわち、基材200に接するシート100a、100dの上側及び下側に配設されるシート100b、100eの熱伝導性フィラー130の含量がシート100a、100dの熱伝導性フィラー130の含量よりも高く、シート100b、100eの上側及び下側に配設されるシート100c、100fの熱伝導性フィラー130の含量がシート100b、100eの熱伝導性フィラー130の含量よりも高くてもよい。このように基材200から遠ざかるにつれて熱伝導性フィラー130の含量が高くなることにより、熱伝達効率をなお一層向上させることができる。一方、本発明の他の実施形態において提示されたように、最上層及び最下層シート100a、100hの上部及び下部に第1及び第2の磁性層610、620をそれぞれ設けてもよい。第1及び第2の磁性層610、620は、シート100a〜100hよりも高い透磁率を有する物質により製作されてもよい。例えば、第1及び第2の磁性層610、620は、シート100a〜100hの透磁率よりも高い透磁率を有するように磁性粉末及びエポキシ樹脂を用いて製作してもよい。なお、第1及び第2の磁性層610、620に熱伝導性フィラーがさらに含まれてもよい。
【0064】
図15を参照すると、基材200を間に挟んで複数枚のシート100a〜100hを積み重ねて押し付けた後に成形してボディ100を形成する。また、ボディ100の両端部にコイルパターン310、320の引き出された部分と電気的に接続されるように外部電極400を形成してもよい。外部電極400は、導電性ペーストにボディ100を浸漬する方法、ボディ10の両端部に導電性ペーストを印刷する方法、蒸着及びスパッタリングを行う方法を用いて形成してもよい。ここで、導電性ペーストとしては、外部電極400に電気伝導性を与える金属物質を用いてもよい。なお、外部電極400の表面には、必要に応じて、ニッケルメッキ層及び錫メッキ層をさらに形成してもよい。
【0065】
図16は、比較例によるポリイミドを絶縁層として形成したパワーインダクターの断面イメージであり、
図17は、実施例によるパリレンを絶縁層として形成したパワーインダクターの断面イメージである。
図17に示すように、パリレンの場合、コイルパターン310、320の段差に沿って薄肉に形成されるが、
図16に示すように、ポリイミドはパリレンに比べて厚肉に形成される。また、比較例及び実施例によるパワーインダクターの静電気放電(ESD)特性を測定するためにそれぞれ20個の比較例及び実施例によるパワーインダクターに400Vの電圧を1回〜10回繰り返し印加したが、ポリイミドを絶縁層として形成した比較例の場合、20個のうち19個が短絡されたのに対し、パリレンを絶縁層として形成した実施例の場合には20個にいずれも短絡が生じなかった。さらに、絶縁パワー電圧を測定したところ、比較例の場合に約25Vであり、実施例の場合に約86Vであった。このため、コイルパターン310、320及びボディ100の絶縁のための絶縁層500をパリレンにより形成することにより、薄肉に絶縁層を形成することができ、絶縁特性などを向上させることができる。
【0066】
本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、異なる様々な形態に具体化可能である。すなわち、上記の実施形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に本発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明の範囲は本願の特許請求の範囲により理解されるべきである。