特許第6408702号(P6408702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408702
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】抗酸化点眼薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/353 20060101AFI20181004BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 31/215 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20181004BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20181004BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20181004BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20181004BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20181004BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   A61K31/353
   A61K36/82
   A61K31/14
   A61K31/122
   A61K31/05
   A61K31/19
   A61K31/215
   A61K9/08
   A61K47/18
   A61K47/26
   A61K47/32
   A61P27/02
   A61P27/12
   A61P39/06
   A61P43/00 121
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-519236(P2017-519236)
(86)(22)【出願日】2015年10月9日
(65)【公表番号】特表2017-534607(P2017-534607A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015054841
(87)【国際公開番号】WO2016057871
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】14/512,365
(32)【優先日】2014年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515222528
【氏名又は名称】ケイドー, ピーター エフ.
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ケイドー, ピーター エフ.
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−220340(JP,A)
【文献】 Molecular Vision,2014年 2月,Vol.20,pp.153-162,abstract,p160右欄
【文献】 Int.J.Ophthalmol,2010年,Vol.10,No.3,pp.443-445,Abstract,表1,2
【文献】 Viscotears Liquid Gel carbomer(polyacrylic acid) Patient information Leaflet,2013年,1.6.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 36/00−36/9068
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 27/02
A61P 27/12
A61P 39/06
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点眼薬ディスペンサー及び抗酸化点眼薬の組成物であって、該組成物は、
ピルビン酸塩又はピルビン酸エチルを約4%と、
レスベラトロールを約4%と、
アスタキサンチンを約4%と、
(−)没食子酸エピガロカテキンを含有する緑茶抽出物を約4%と、
カルボマーゲル担体の残部と
から本質的になり、前記カルボマーゲル担体は、
カーボポール980NFを約0.4%と、
ソルビトールを約5.7%と、
セトリミドを約0.01%と、
EDTAを約0.01%と、
脱イオン水の残部と
から本質的になる、点眼薬ディスペンサー及び抗酸化点眼薬の組成物。
【請求項2】
前記組成物は、必要とするヒトにおける酸化ストレスによって誘発される白内障を軽減するために、前記点眼薬ディスペンサーから前記必要とするヒトに局所投与することによって使用される、請求項に記載の点眼薬ディスペンサー及び抗酸化点眼薬の組成物。
【請求項3】
前記組成物は、前記必要とするヒトの各眼に1日2回投与される前記抗酸化点眼薬の組成物の1滴の用量である、請求項に記載の点眼薬ディスペンサー及び抗酸化点眼薬の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、必要とするヒトにおける酸化ストレスによって誘発される網膜変性を軽減するために、前記点眼薬ディスペンサーから前記必要とするヒトに局所投与することによって使用される、請求項に記載の点眼薬ディスペンサー及び抗酸化点眼薬の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、前記必要とするヒトの各眼に1日2回投与される前記抗酸化点眼薬の組成物の1滴の用量である、請求項に記載の点眼薬ディスペンサー及び抗酸化点眼薬の組成物。
【請求項6】
前記組成物は、必要とするヒトにおける酸化ストレスによって誘発されるドライアイで観察される涙液量の低下を軽減するために、前記点眼薬ディスペンサーから前記必要とするヒトに局所投与することによって使用される、請求項に記載の点眼薬ディスペンサー及び抗酸化点眼薬の組成物。
【請求項7】
前記組成物は、前記必要とするヒトの各眼に1日2回投与される前記抗酸化点眼薬の組成物の1滴の用量である、請求項に記載の点眼薬ディスペンサー及び抗酸化点眼薬の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ストレスから生じた眼への損傷(ドライアイ、白内障、網膜変性など)を軽減、予防、又は回復させる局所組成物に関し、特にカルボマーゲル担体中に4種の栄養補助物質を含有する抗酸化点眼薬に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障、黄斑変性症(AMD)及び乾性角結膜炎(KCS、一般にドライアイとして知られている)などの加齢性眼疾患の罹患率は、年齢とともに増加する。白内障は回復可能な加齢に伴う視力喪失の大半を占める一方、AMDは回復不能な失明の主要原因である。KCSは、65歳以上である人々の大多数に影響を与え、著しい眼の不快感及び視覚障害をもたらす。KCSは通常は視力喪失をもたらさないが、未治療のまま放置されると、角膜潰瘍又は角膜瘢痕の原因となり得る痛みを伴う表層角膜炎を引き起こす。
【0003】
加齢に伴う疾患は、獣医学界においても深刻化しつつある問題である。白内障による視力喪失は、犬及び猫の失明の大きな原因である。6ヶ月から10年以上までの異なる臨床的発症を示す進行性網膜萎縮症も、これらの愛玩ペットの多くで発症し得る。これらの網膜変性はまた、強い遺伝的な関連を有する。犬が7〜9歳に近づくにつれて、犬でのドライアイの発症は増加する。KCSは、高齢では雄の犬に比べて雌の犬で増加し、去勢又は不妊手術された雄及び雌の両方で増加する。犬と対比して、猫でのKCSの存在はより潜在性である。
【0004】
加齢に伴う白内障の確立された薬学的治療はなく、患者の視力は手術によってのみ回復することができる。白内障の発症及び進行を10年遅らせることによって、白内障手術の必要性を50%減らすことができると推定されている。白内障の進行を遅らせるための手術でない治療の必要性は、白内障手術が後期AMDの発症率を増加させるという知見によって裏付けられている。現在、地図上萎縮(ドライ型AMD)の発症を予防する又は拡大を減少させるための治療もない。
【0005】
白内障及びAMDの病因ははっきりしていない。しかしながら、いずれも、活性酸素種(ROS)の産生及び上昇した組織の鉄濃度に関連する、喫煙を含む危険因子を有する多因子性疾患である。ドライアイもまた、酸化ストレスが関係する多因子疾患である。喫煙もドライアイの危険性を高め、現在のドライアイの状態を悪化させる。実験に基づくと、鉄濃度の上昇に伴う酸化的損傷の増加は、白内障及びAMDの発症及び進行に関連している。鉄の存在下で産生されたROSは、フェントン反応によるヒドロキシルラジカルの形成をもたらし、またミトコンドリアの機能不全をもたらす。白内障はまた、鉄濃度の上昇に関連する鉄障害である高フェリチン血症の患者においても発症する。鉄代謝及び鉄処理タンパク質の調節不全もまたAMDの病因と関連し、AMD患者の網膜での網膜色素上皮細胞(RPE)及びブルッフ膜で観察されるキレート可能な鉄の増加によって特徴付けられる。鉄過剰はまた、AMDに臨床的に類似する黄斑症にも関連しており、無セルロプラスミン血症の患者における網膜下での複数の黄白色の病変及びRPE細胞萎縮の発症及び進行を含む。
【0006】
研究は、これらの加齢に伴う疾患に関連する酸化経路を標的とすることが治療上有効であることを示している。抗酸化での眼の健康の支援及び白内障発症の低減のための天然の抗酸化物質及び/又はビタミンを含有するほとんどの製剤は、経口投与される。例えば、天然の抗酸化物質とω−3必須脂肪酸の組み合わせ製剤の経口臨床投与は、ドライアイの自覚症状を大幅に改善する一方で、AREDSの天然の抗酸化製剤の経口投与は、進行したAMDへの進行の危険性を25%低下させている。しかし、栄養補助製剤が経口投与されたいくつかの大きな臨床研究では、白内障発症に対するこれらの抗酸化物質の観察されたいずれの効果も小さいようであり、おそらく臨床的又は公衆衛生的に有意でないことを示唆する。ROSはまた、フェントン反応により反応性の高いヒドロキシルラジカルを産生することができる組織の鉄濃度を低下させることによって減少させることができる。鉄濃度を減少させるためにキレート剤を使用する研究は、薬物(デフェロキサミンなど)でキレート療法を受けているβ−サラセミアの患者は白内障の発症率が低いため、ROSもまた眼の水晶体において有益に減少され得ることを示唆している。同様にラットでは、タバコの煙への曝露による白内障は、デフェロキサミンでの治療によって軽減した。フリーラジカル及びキレート鉄を別々に捕捉する能力を有する新規な多機能性酸化防止剤が、白内障形成を遅らせ、かつAMDについてのモデルである網膜を光損傷から保護することもまた示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、上記の問題を解決する抗酸化点眼薬が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
抗酸化点眼薬は、エチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)を含むカルボマーゲル担体中に抗酸化、抗炎症、及びキレート活性を有する4つの栄養補助物質(すなわち、アスタキサンチン、レスベラトロール、ピルビン酸塩及び没食子酸エピガロカテキン(EGCG))を含有する局所眼科用製剤である。その活性成分は、フリーラジカル捕捉及びキレート活性により酸化ストレスを減少させることができる。
【0009】
局所眼科用製剤は、カーボポール980NFを約0.4%、ソルビトールを約5.7%、セトリミドを約0.01%、EDTAを約0.01%、並びに局所用担体の粘度及びpHの両方を調整してpH7.0〜7.4にする適正な量の塩化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含有する脱イオン水の溶液からなる粘性のある賦形剤中のアスタキサンチン、レスベラトロール、ピルビン酸塩又はピルビン酸エチル、及びカメリアシネンシス(Camellia sinensis、EGCGを含有する緑茶抽出物)の混合物からなる。そのカルボマーの賦形剤は、眼の表面への接着を促進し、かつアルドース還元酵素阻害剤Kinostat(商標)を糖尿病の犬に送達するのによく適している市販のOptixcareに類似している。個々の栄養補給成分の範囲は、0.1重量%〜5重量%の範囲で変化し得る。推奨用量は、1日2回(b.i.d.)、各眼に1滴である。局所眼科用製剤は、ヒト又は他の哺乳動物において、酸化ストレスによって引き起こされる白内障を遅らせ、酸化ストレスによって引き起こされる網膜変性を軽減させる。網膜での有効性は、アスタキサンチン、レスベラトロール、ピルビン酸塩及びEGCGを含有する追加の経口カプセルで補うことができる。局所眼科用製剤はまた、ドライアイで観察される涙液量の低下を防止又は軽減する。
【0010】
本発明のこれら及び他の特徴は、以下の発明を実施するための形態及び図面を更に検討することによって容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ラットでの糖尿病の誘発後の週数に応じたラットにおける糖白内障の発症の比較を示すグラフであり、対照サンプル(未治療)、本発明の抗酸化点眼薬で治療したサンプル(Optixcare EH)、及び他の2つの市販の(又はすぐに入手可能な)アイケア製剤を含む。
図2図1のグラフに対応する糖尿病のラットでの水晶体の顕微鏡写真の比較マトリックスであり、ラットの4つのサンプルグループにおける白内障の相対的な進行を示す。
図3】一方の眼をUV照射に曝し、反対側の眼を覆って照射しない対照とした若い雌ラットの4グループでのGSH濃度の比較を示す表であり、対照グループ(未治療)、本発明の抗酸化点眼薬(Optixcare EH)で治療したグループ、及び他のアイケア製剤で治療した2グループを含む。
図4図3に対応するラットの4つのサンプルグループにおける4−ヒドロキシノネナール(4−HNE)の水晶体濃度を示す表である。
図5A】暗所への2週間の適応後に光に曝された3グループのラットの神経網膜における4-ヒドロキシノネナール(HNE)−ヒスチジン付加体濃度を示し、対照グループ(未治療)及び本発明の抗酸化点眼薬(Optixcare EH)で治療したグループを含む。
図5B図5Aに対応する3グループのラットの神経網膜におけるニトロチロシン付加体濃度を示す。
図6A図5Aに対応する3グループのラットの神経網膜におけるチオレドキシン(TRx)の発現を示す表である。
図6B図6Aに対応する3つのグループのラットの神経網膜におけるチオレドキシン還元酵素(TRxR)の発現を示す表である。
図7】5グループの成体Lewisラットにおけるスコポラミンの1日2回の皮下注射によって誘発された涙液量を示すグラフであり、対照グループ(未治療)及び本発明による抗酸化点眼薬(Optixcare EH)で治療したグループを含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
同様の参照文字は、添付図面を通して一貫して対応する特徴を示す。
【0013】
抗酸化点眼薬(本願では、Optixcare Eye Health(Optixcare EH)とも称される)は、カーボポール980NFを約0.4%、ソルビトールを約5.7%、セトリミドを約0.01%、EDTAを約0.01%、並びに局所用担体の粘度及びpHの両方を調整してpH7.0〜7.4にする適正な量の塩化ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含有する脱イオン水の溶液からなる粘性のある賦形剤中のアスタキサンチン、レスベラトロール、ピルビン酸塩又はピルビン酸エチル、及びカメリアシネンシス(Camellia sinensis、EGCGを含有する緑茶抽出物)の混合物からなる局所眼科用製剤である。その組成物は、任意でアスコルビン酸を1%含むことができる。アスコルビン酸は、その混合物の抗酸化防腐剤としての役割を果たすことができる。
【0014】
アスタキサンチンは、ゼアキサンチン、ルテイン、カンタキサンチン及びβ-カロチンよりも10倍高い抗酸化活性を有するカロテノイドである。それは、α−トコフェロール(ビタミンE)よりも100倍高い抗酸化活性を有するので、「スーパービタミンE」と呼ばれている。極性溶媒中で、アスタキサンチンはそのケト−エノール型で平衡して存在し、α-トコフェロールと同様にフリーラジカルの反応を遮断することができる水素原子を有する。アスタキサンチンの3つの立体異性体、2つの鏡像異性体、及び1つのメソ体があり、自然界で3S、3’Sが最も豊富である。インビトロでは、シス−アスタキサンチン、特に9−シス−アスタキサンチンがオールトランス異性体よりも高い抗酸化活性を有する。
【0015】
培養されたヒトの水晶体上皮細胞は、栄養補助物質のアスタキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン及びα-トコフェロールを濃度及び時間依存的に蓄積することができ、アスタキサンチン、ルテイン及びゼアキサンチンはいずれも、UV−B放射線によって引き起こされる酸化ストレスに対するヒトの水晶体上皮細胞の保護においてα-トコフェロールよりも強力であることが報告されている。Brown Norwayラットへ9週間に亘り1日3回局所的に投与したアスタキサンチンの1%懸濁液は、UV−B光(1200mJ/cm2)に曝すことによって誘発される白内障形成を減少させることが報告されている。アスタキサンチンを含む食餌で治療した、ストレプトゾトシンで誘発した糖尿病のラットは白内障がより少なく、食餌に含まれるアスタキサンチンはまた大西洋サケのスモルトにおける白内障形成を減少させる。様々な研究により、ルテイン及びゼアキサンチンがAMDの治療に有効であるのと全く同じように、アスタキサンチンは網膜に対して保護効果を有することもまた示されている。アスタキサンチンは、網膜神経節細胞の減少及びN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)の硝子体内注射によって生じる内網状層の厚さの減少を遅くする。別の臨床研究では、4mgのアスタキサンチンに加えて、10mgのルテイン及び1mgのゼアキサンチン、180mgのビタミンC、30mgのビタミンE、2.5mgの亜鉛、並びに1mgの銅を含有するAZYR錠剤(SIFI社、イタリア カターニア)の非進行AMD患者への12ヶ月間に亘る経口投与は、多局所網膜電図によって測定されるような網膜機能不全の低下をもたらす。
【0016】
レスベラトロールは赤ワインに含まれる抗酸化物質であり、老化防止化合物としてもてはやされている。その抗酸化活性は、共役したヒドロキシル基の存在に起因する。文献で報告されているように、経口投与でのレスベラトロールの生物学的利用能は限られており、グルクロニドによる迅速な代謝及び腸/肝臓による硫酸抱合により、レスベラトロールはおそらく有効な標的組織濃度に到達しない。局所適用はこの代謝を回避することができる。眼内でのレスベラトロールの防御効果は広範囲に及び、抗酸化、抗アポトーシス、抗炎症、抗血管新生及び血管弛緩特性が報告されている。レスベラトロールは、50μMまで用量依存的に、初代培養ヒト網膜色素上皮細胞(HRPE)における炎症性サイトカイン、TGF−β及び低酸素誘発VEGFの分泌を減少させることができる。培養されたヒトRPE19細胞では、50及び100mmol/Lのレスベラトロールの添加はヒトRPE19細胞のインビトロ増殖をそれぞれ10%及び25%減少させ、RPE細胞を過酸化水素誘発細胞死から保護する。レスベラトロールはSIRT1活性物質であり、SIRT1の上方調節は、動物モデルにおいて様々な眼疾患(白内障、網膜変性、視神経炎及びブドウ膜炎など)に対して重要な保護効果を有することが示されている。マウスでは、長期のレスベラトロールでの治療は、白内障形成を含むマウスの加齢に伴う変性及び機能低下を遅らせる。レスベラトロールはまた、AMD及び緑内障に伴う酸化ストレスを改善する。エンドトキシン誘発ブドウ膜炎(EIU)を誘発するためにリポ多糖類(LPS)を注射されたマウスにおいて、LPS注射前のレスベラトロールの経口投与は、酸化的損傷の阻害及び酸化還元感受性のNF−κB活性化を通じて炎症を減少させる。実験の網膜剥離であるラットにおいて、レスベラトロール治療はFoxOファミリーを上方調節し、カスパーゼ3、8、及び9の活性化を阻害する。ウサギ角膜培養モデルにおいて、レスベラトロールは、インターロイキン−8遺伝子の黄色ブドウ球菌に関連する発現を減少させる。
【0017】
組成物中でのアスタキサンチンの存在は、組成物を濃い赤色に変え得る。組成物中で使用されるアスタキサンチンの量を減少させ、レスベラトロールの量を増加させることによって、より明るい色にすることができる。例えば、ピルビン酸塩を1%、EGCGを1%、レスベラトロールを2%、及びアスタキサンチンを0.01%含有する溶液又はゲルは、桃色を有し、ブルックフィールドDV−IIスピンドルNo.T−Fにおいて5RPMで18,000〜22,000cpsの粘度を有することができる。このゲルは、淡い桃色及び甘い香りを有する。
【0018】
ピルビン酸塩は、エチルエステルプロドラッグとして投与された時に、虚血/再灌流傷害並びに出血性及び内毒素性ショックでの臓器系の損傷を減少させる内因性抗酸化物質である。ピルビン酸塩は、サイトカイン発現及び炎症性遺伝子調節に対する直接の有益な効果を有する。文献で報告されているインビトロ水晶体及び糖尿病のラットの研究では、ピルビン酸塩は、水晶体ソルビトール濃度及び脂質過酸化反応を低下させること並びにピルビン酸塩の乳酸塩への還元を促進することによって、糖白内障形成を遅らせた。ピルビン酸塩はまた、30%のガラクトースを与えられたラットにおいて糖白内障を遅らせる。局所適用されたピルビン酸ナトリウム及びそのエチルエステルの両方が、角膜に浸透する。ピルビン酸塩はラジカル捕捉能力も有し、腹腔内投与の後にラットでの亜セレン酸塩の白内障を軽減することができる。
【0019】
緑茶で最も豊富な成分である(−)没食子酸エピガロカテキン(EGCG)は、ビタミンEよりも10倍高い抗酸化活性を有する。文献で報告されているように、それは酸化還元反応性の鉄及び銅をキレートすることができる。局所適用されると、それは水晶体に到達する。EGCGは、培養ヒト上皮細胞においてUVB照射に関連するROS及び過酸化水素を減少させる。それはまた、UVA誘発損傷からトRPE細胞を保護すると共に、ニトロプルシドナトリウムによる酸化ストレスから網膜の光受容体を保護する。培養した角膜上皮細胞において、EGCGは抗炎症及び抗酸化活性を示す。EGCGの局所投与は、ウサギでの角膜血管新生を効果的に阻害する。この阻害効果はおそらく、VEGF及びCOX−2の媒介による血管新生の抑制に関連する。マウスにおける局所的なEGCG治療は、角膜における炎症性サイトカイン発現及びCD11b+細胞の浸潤を抑制することによって、KCSにおける臨床徴候及び炎症性変化を減少させることができる。
【0020】
糖尿病のラットは、アルドース還元酵素の触媒によって形成されるソルビトールの細胞内蓄積に関連する浸透圧ストレスを介して、糖尿病の「糖白内障」を急速に発症することが立証されている。蓄積されたソルビトールは、小胞体(ER)ストレスをもたらす浸透圧ストレスを引き起こし、小胞体(ER)ストレスは続いてROSの産生をもたらす小胞体ストレス応答を引き起こす。アルドース還元酵素阻害剤によるアルドース還元酵素の十分な阻害によるソルビトール形成の防止は、糖尿病性白内障の形成を防止する。対照的に、ERストレスに起因するROSの減少は、白内障の形成を遅らせるだけである。
【0021】
上述した組成物の有効性を明らかにするために、いくつかの実験を行った。
【実施例1】
【0022】
4%(重量/重量)活性成分を含有する1kg製剤の調製
脱イオン水(750g)を室温で適当な大きさのステンレス鋼又はガラス容器に入れ、続いて最終濃度0.01%を得るためにセトリミド0.1gを添加し、溶解するまで混合物を撹拌した。これに続いて、0.01%の最終濃度を得るためにEDTA0.1gを溶解するまで攪拌しながら添加した。次に、5.7%の最終濃度を得るために70%のUSPソルビトール57gを添加して、溶解するまで混合物を撹拌した。これに続いて、4.0%の最終濃度を得るためにレスベラトロール40gを添加した。溶液をよく混合した後、最終濃度0.80%を得るために8gのカルバポール980を添加し、完全に水和するまで混合物を撹拌した。そして、これに続いてそれぞれ4%の最終濃度を得るためにピルビン酸エチル40g及びカメリアシネンシス抽出物(EGCG)40gを添加した。この溶液を5〜10分間混合し、4%の最終濃度を得るためにアスタキサンチン40gを添加した。混合によってアスタキサンチンを分散させた後、5N水酸化ナトリウム溶液でpHを7.0〜7.4に調整した。次いで、適切に脱イオン水を添加して、最終的に添加された水を774.8g(脱イオン水及び水酸化物溶液)に調整した。この濃度を実験研究に用いた。
【実施例2】
【0023】
糖尿病性白内障
この研究のために、Randazzo他によって記載されているようにして(PLoS One, 2011年, 6(4), p.el8980)、75mg/kgのストレプトゾトシンの尾静脈注射によって、若い(100g)Sprague Dawleyラットにおいて糖尿病を誘発させた。次に血糖値>300mg/dLの全てのラットを各6匹の4グループに等しく分けた。第1グループは未治療の対照としての役割を果たし、第2グループには局所的なアルドース還元酵素阻害剤Kinostat(商標)を1日2回各眼に1滴投与した。第3グループには、上述のように調製された、Optixcare EHと称される本発明の抗酸化点眼薬の組成物を1日2回各眼に1滴、局所的に投与した。第4グループには、Tween 80 Ocu-GLO(商標)溶液1mLを1日1回経口投与し、それはOcu-GLO(商標)(Animal Health Quest社、米国 ワシントン州 ベリンハム)のカプセル中に、製造業者が推奨する動物の体重当たりの栄養補助物質の用量をTween混合物の1mLの投与が送達するようにして、適切な量のTween 80の内容物を溶解することによって調製された。1%のトロピカミド点眼液で各眼を拡張した後に、手持ち型スリットランプによって水晶体の変化を毎週観察した。水晶体の変化をポータブルスリットランプによって0〜3のスケールを用いて評価した。0は水晶体変化なし、0.5は縫合強調(suture accentuation)、1は水泡形成、2は皮質混濁、そして3は成熟白内障に相当する。研究は糖尿病の誘発後8週間で終了し、後方アプローチを用いてそれぞれの摘出した眼から水晶体を注意深く取り出し、写真付きの文書で記録した。研究開始時の血糖値を市販の血糖値測定器(TheraSense社製Freestyle、米国 カリフォルニア州 アラメダ)を用いて測定した。試験期間に亘る各ラットの全体としての高血糖を判断するHbAlC濃度を、Bayer Metrika AlcNOW Plus Systemテストキット(米国 カリフォルニア州 サンディエゴ)を使用して試験終了時に測定した。得られた結果(HbAlC、平均±SEM 未治療対照10.7±0.7、Kinostat(商標)11.48±0.2、Optixcare EH 10.6±0.7、Ocu-GLO(商標)10.4±0.76)は、全てのグループのラットが同じく糖尿病であったことを確認した。
【0024】
図1にまとめられるように、全ての若い糖尿病のラットは8週の期間に亘って白内障を急速に発症し、この形成はアルドース還元酵素阻害剤(ARI)Kinostat(商標)の局所投与によって防止された。これらの糖尿病のラットでの白内障の発症及び進行は、Optixcare EHの局所投与による栄養補助物質の投与によって遅れ、Ocu-GLO(商標)の経口投与よりも大きな遅れを示した。これらのスリットランプの観察は、図2に示されるように、解剖された水晶体の顕微鏡検査によって研究の最後に確認された。ARIで治療したラットの水晶体では明らかな水晶体の混濁はなかったが、未治療及び経口治療されたOcu-GLO(商標)の両方のラットは、皮質から成熟白内障までの水晶体変化を示した(図2)。対照的に、主として糖白内障発症の初期段階である縫合強調が、Optixcare EHで治療した糖尿病のラットに存在した。
【実施例3】
【0025】
UV誘発白内障
UV照射への曝露は、白内障発症の別の主要な危険因子である。UV照射はROSを誘発し、ROSは減少した水晶体グルタチオン(GSH、水晶体内の主な抗酸化物質)の急速な喪失をもたらし、その数週間後に水晶体混濁をもたらす。この研究のために、若い雌のSprague Dawleyラットを5つのグループに等しく分けた。1つのグループは照射しない対照としての役割を果たし、第2グループは未治療の照射された対照グループとしての役割を果たした。第3グループには、3%のJHX−4(4−(5−ヒドロキシピリミジン−2−イル)−N,N−ジメチル−3,5−ジオキソピペラジン−1−スルホンアミド(HPLCによる純度99%)を含有する局所Optixcareカルボマーの賦形剤を投与した。第4グループには、上述のように調製された、局所Optixcare EHと称される本発明の抗酸化点眼薬の組成物を投与した。第5グループには、上記のようにして、強制により経口でOcu-GLO(商標)1mLを投与した。治療は、照射の3日前に開始し、実験の終了まで続けた。照射前に、各ラットにケタミン60mg/kg及びキシラジン10mg/kgの混合物の腹腔内(i.p.)注射によって麻酔をし、右眼を1%のトロピカミド点眼液で拡張した。反対側の眼を、黒いテープで適切な位置に保持された眼帯で覆った。それぞれのラットを横向きに寝かせて、一方の目のみを1600μw/cm2のUV光(280〜360nm、UVmax306nm)に15分間曝し、一方で覆われた反対側の眼は下にしてUV曝露を避けた。照射の2日後、各ラットを二酸化炭素窒息で安楽死させた。両眼を摘出し、後方アプローチによって水晶体を注意深く取り出した。各水晶体を氷冷した溶解バッファー(pH7.5)で均質化し、不溶性タンパク質を4℃での遠心分離によって除去した。上清のアリコート中のタンパク質濃度をブラッドフォード分析によって測定した。別のアリコートを等容量の20%TCAでタンパク質除去し、タンパク質除去された上清中のGSH濃度をDTNB法によって412nmで測定した。
【0026】
各眼の水晶体を評価すると、図3に示されるように、UV照射に曝された眼では、曝されなかった反対側の水晶体でのGSH濃度と比較してGSH濃度が有意に低い(p<0.05)ことが示された。局所的な3%のJHX−4の1日2回投与、Optixcare EHの1日2回投与、又は強制によって毎日投与された経口のOcu-GLO(商標)で3日間に亘って前治療したラットの同様の照射は、Ocu-GLO(商標)で治療されたラットにおいてのみGSH濃度が有意に低下したという結果を生じた。Optixcare EH及び3%のJHX−4で局所治療したラットの照射された水晶体でのGSH濃度は、いずれも有意に低くなかった(図3)。UV曝露後の低下したGSH濃度がROS濃度の上昇と関連していることを確認するために、酸化された膜脂質4−ヒドロキシノネナール(4−HNE)の水晶体濃度を、製造者の指示に従ってOxiSelect HNE Adduct Competitive ELISA Assay Kit(Cell Biolabs、Inc.、米国 カリフォルニア州 サンディエゴ)を使用することによって、残りの等均質上清中で競合ELISAを用いて測定した。図4にまとめられるように、UV曝露は4−HNE濃度の増加をもたらし、それは抗酸化剤治療によって、局所JHX−4>局所Optixcare EH>経口Ocu-GLO(商標)の順序で減少した。UV照射に曝した未治療のラットの水晶体での4−HNE濃度と比較して、JHX−4(p<0.01)及びOptixcare EH(p<0.05)で治療したラットでのUVに曝された水晶体では4−HNE濃度が有意に低かった。Ocu-GLO(商標)で治療されたラットの照射された水晶体での4−HNE濃度は、UV照射に曝された未治療のラットの水晶体での濃度と有意に異ならなかった。UVに曝された及び曝されなかった両眼での4−HNEの水晶体濃度は、JHX−4治療ラットにおいてのみ統計的に類似していた。
【実施例4】
【0027】
光誘発網膜変性
暗順応ラットの神経網膜では、光への曝露は、ROSの産生、鉄の調節不全、及びフェリチンからの鉄の放出も生じさせる。加齢黄斑変性症(AMD)のこの動物モデルでは、Wistarラットを、0.05%の多機能性抗酸化剤JHX−4を含む食餌で経口的に治療するか、又はOptixcare EHの1日2回投与で局所的に治療し、2週間の暗順応の開始時に治療を始めた。
【0028】
Randazzo他によって以前に詳細に記載されたように(PLoS One, 2011年, 6(7), p.e21926)、通常のラットの食事(未治療)、通常のラットの食事及び1日2回投与のOptixcare EHでの局所治療、並びに0.05%の多機能性抗酸化剤JHX−4を含有する経口の食餌のいずれかを与えた12匹の4〜5週齢の雄Wistarラットを含む複数のグループを、2週間に亘って暗順応させた。次いで、各グループからのラットを、ライトボックス装置中のアクリル製平底の齧歯類固定器(Plas-labs、Inc.、米国 ミシガン州 ランシング)に別々に配置し、3時間に亘って1000lxの白色蛍光灯(Lights of America社、米国 カリフォルニア州 ロサンゼルス)に曝した。未治療ラットの追加のグループもライトボックス装置内に3時間入れられたが、光に曝されなかった(光での損傷を受けていないラット、NLD)。光照射直後に、各グループからの8匹の光で損傷を受けた(LD)ラット及び8匹のNLDラットを直ちに安楽死させ、神経網膜を摘出した眼から慎重に解剖し、その後の分析のためにドライアイス上で凍結した。続いて解凍した網膜を、4−HNE-His付加体及びニトロチロシンELISAキットを用いてELISA定量用の溶解バッファー中で均質化した。別の解凍した網膜を、チオレドキシン(TRx)及びチオレドキシン還元酵素(TRxR)発現濃度のウェスタンブロット分析のために、Haltプロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテルを含有するRIPAバッファー中で均質化した。タンパク質試料をSDS−PAGEによって分離し、ニトロセルロース膜上に移した。0.1%TBS−T中の5%乾燥ミルクでその膜をブロッキングした後、膜を一次抗体の抗TRx(1:1000希釈)又は抗TRxR(1:2000希釈)と共に4℃で一晩培養した。続いてTBS−Tで洗浄した後、膜をHRP結合二次抗体と共に1時間培養した。タンパク質バンドを、化学発光及びX線フィルムへの露光によって視覚化した。最後に、膜を内部コントロールとしてのGAPDHに対する抗体で再検出した。全ての可視化されたタンパク質濃度は、rsbweb.nih.gov/ij/においてオンラインで入手可能なNIH ImageJプログラムを用いて定量された。
【0029】
一般に、薬物の局所的な点眼では、薬物の十分な網膜濃度が得られない。したがって、光に曝された暗順応ラットへのOptixcare EHの局所投与は、多機能抗酸化剤JHX−4の経口投与と比較して網膜の酸化ストレスのいかなる有意な保護ももたらさないと予想された。驚くべきことに、有効な網膜の抗酸化効果が、局所投与されたOptixcare EHで観察された。Randazzo他によって報告されたように(PLoS One, 2011年, 6(7), p.e21926)、神経網膜を1000lxの光に3時間曝すと、多価不飽和脂肪酸の非酵素的酸化に続いてヒスチジンで形成される4−HNE付加体(図5A参照)及び酸化窒素とスーパーオキシドアニオンとの反応により形成されるペルオキシナイトライトによって酸化されたチロシン残基により生じるニトロチロシン変性タンパク質(図5B参照)を含む酸化ストレスマーカーの増加をもたらした。光照射後にこれらのマーカーの両方が有意に増加したが、同様に光に曝してJHX−4で治療したラットでは、いずれの酸化マーカーも有意に増加しなかった(図6A、6B)。Optixcare EHで治療したラットは、両方の酸化マーカーでの部分的な増加を示した。しかし、これらの増加は、未治療のラットでの増加よりも有意に低かった。急に過度の光に網膜を曝すことによって産生されるROS及びフリーラジカルもまた、チオレドキシン(TRx)/チオレドキシン還元酵素(TRxR)防御システムによってもたらされる。したがって、これらのラットの神経網膜におけるTRx及びTRxRの両方の発現濃度もまた調べた。TRx及びTRxRの両方の発現は、図6A、6Bに示されるように、光に曝された未治療のラットで増加した。光に曝されてJHX−4又はOptixcare EHのいずれかで治療されたラットの神経網膜では、TRxRの発現は有意に低下した(p<0.05)。しかし、TRxの発現はJHX−4によってのみ減少した。
【0030】
JHX−4及びOptixcare EHによる酸化ストレスの減少を、光受容体層の組織学的測定によって確認した。上記のように光に曝した後に、各グループでの選ばれたラットを暗い環境に更に7日間戻した。次いで、各ラットを二酸化炭素窒息によって安楽死させ、各眼の背腹方向に焼灼ツールで印を付けた。そして眼を摘出し、一晩3:1(v/v)のメタノール:酢酸溶液中に固定し、標準的な組織学的方法で処理した。Axiovisionソフトウェアを用いたZeiss AxioPlan顕微鏡(Carl Zeiss Microimaging、Inc.、米国 ニューヨーク州 ソーンウッド)を使用して、H&E染色切片のデジタル画像を得た。Image-Pro Plusソフトウェア(Media Cybernetics社、米国 メリーランド州 シルバースプリング)を使用して視神経乳頭から始めて上下鋸状縁へ向かって延ばして、外顆粒層(ONL)の厚さを400μm間隔で測定した。結果は、強烈な光への曝露は外顆粒層(ONL)において光受容体が薄くなることをもたらし、上半球の損傷が下半球よりも顕著であることを示した。JHX−4で治療したラットでは、光受容体層は、下半球及び上半球の両方においてわずかに減少したのみであった。対照的に、光受容体層は、Optixcare EHで治療したラットでは部分的にのみ保護された。これらの結果は、局所送達にもかかわらず、Optixcare EHは光で損傷を受けたラットの網膜における酸化ストレスを部分的に減少させることができることを示唆している。
【実施例5】
【0031】
スコポラミン誘発ドライアイ
Optixcareは、麻酔中の脱水から目を保護するために及びドライアイの補助的な支援として獣医市場で用いられている市販のカルボマーベースの眼用潤滑剤である。Optixcareは、涙液量が安定して保持されて眼表面の潤滑を維持するように涙液膜の特性を高めることによって眼の不快感を和らげるように設計されたポリ(アクリル酸)ポリマーからなる、眼の快適性のための薬剤(comfort agent)の種類に属する。他のそのような薬剤には、水を保持するヒアルロン酸が含まれる。Optixcare、Optixcare H(ヒアルロン酸を含有するOpticare)及びヒアルロン酸製剤のIdrop Vet Plus Opthalmic Solution(Imed Pharma社の局所ヒアルロン酸、カナダ ドラーデゾルモ)はドライアイの臨床症状を緩和するために獣医市場で使用されており、Optixcare EHの成分は抗酸化だけでなく抗炎症活性も有するので、実際にドライアイを治療することに関してOptixcare EHの潜在的な効果を調査した。ドライアイを180〜200gのメスのLewisラット30匹に誘発させて、5グループに分けた。1つは未治療の対照としての役割を果たし、他の各グループには1日2回各眼にOptixcare、Optixcare H、Idrop Vet Plus Opthalmic Solution、本発明の抗酸化点眼薬の組成物(Optixcare EH)のいずれかを1滴投与した。24mgのスコポラミンを含有する0.1mL水溶液を1日2回(合計用量48mg/日)皮下注射することによって、ドライアイを全てのラットに誘発した。各ラットをイソフルランで麻酔することにより、Zone-Quick(商標)フェノールレッドスレッド(FCI Opthalmics社、米国 マサチューセッツ州 ペンブローク)を使用して、投与前に毎週涙液量を測定した。下瞼を下に引っ張り、鉗子を用いて、各糸の折り畳まれた3mmの端を外眼角から約1/3の距離の位置で眼瞼結膜に配置した。開いた目の中にその糸を15秒間放置し、次に下瞼を静かに下へ引っ張り、糸を上方向に動かして取り除いた。そして、糸の赤く染色された長さを直ちに測定した。図7にまとめられるように、両眼の平均として測定された各ラットの涙液量は未治療のラットにおいて経時的に減少し、快適性のための薬剤Optixcare、Optixcare H、又はi-Dropヒアルロン酸のいずれの局所投与も、この涙液量の減少を変えなかった。対照的に、涙液量は、同様にスコポラミンを注射して本発明のOptixcare EHの組成物を投与したラットにおいて維持された。これは、栄養補助物質である抗酸化物質の添加が、ドライアイのための補助的治療として機能するようにOptixcareの能力を変えることを示した。
【0032】
この組成物は、低密度ポリエチレン(LDPE)チューブ、例えば15gの白色の低密度ポリエチレン(LDPE)チューブに配置され、及び/又はそこから投薬されることができる。そのチューブは、ポリエチレンのそれぞれの2層の間に接着して挟まれたエチレンビニルアルコールの共重合体障壁を含む5つの層を含むことができる。チューブは、例えば、0.047インチのオリフィスを備えたディスペンサーの先端と、直径7/8インチの滑らかでねじが切られた閉鎖部とを含むことができる。
【0033】
本発明は上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲内のあらゆる実施形態を包含することが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7