(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6408736
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20181004BHJP
B23K 20/26 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
B23K20/12 340
B23K20/26
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-63419(P2018-63419)
(22)【出願日】2018年3月29日
【審査請求日】2018年3月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小田倉 富夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕喜
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 章弘
(72)【発明者】
【氏名】船原 恒平
(72)【発明者】
【氏名】石黒 幸一
(72)【発明者】
【氏名】篠原 俊
(72)【発明者】
【氏名】杉本 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】西口 勝也
(72)【発明者】
【氏名】田中 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 泰博
【審査官】
柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−137070(JP,A)
【文献】
特許第4511526(JP,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0255884(US,A1)
【文献】
特開2007−268558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
B23K 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部材同士を摩擦撹拌接合により接合する摩擦撹拌接合装置であって、
第1着脱機構部を有する装置本体と、
複数の第2着脱機構部を有するスイング機構部と、
前記スイング機構部に回動可能に支持されるホルダ部と、
前記ホルダ部に保持される接合ツールと、を備え、
前記スイング機構部の所望のスイング方向に応じて前記複数の第2着脱機構部のいずれかを選択し、
当該選択した第2着脱機構部を前記第1着脱機構部へ嵌合することで前記接合ツールを前記装置本体に装着することを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置であって、
前記第1着脱機構部は、上下動駆動機構部を介して前記装置本体に設けられることを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
【請求項3】
請求項2に記載の摩擦撹拌接合装置であって、
前記装置本体に接続されるC型フレームを備え、
前記第1着脱機構部は、前記上下動駆動機構部を介して前記C型フレームの一端に接続され、
前記C型フレームの他端に前記接合ツールからの押圧力を受け止める押圧力受け部が設けられることを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合装置であって、
前記第2着脱機構部を前記第1着脱機構部へ嵌合した後、前記第1着脱機構部に対する前記第2着脱機構部の位置を保持する保持機構を有することを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
【請求項5】
被接合部材同士を摩擦撹拌接合により接合する摩擦撹拌接合装置であって、
複数の関節を有し、三次元空間を自在に移動可能な多軸ロボットアームと、
前記多軸ロボットアームの先端に接続され、一端に第1着脱機構部を有するC型フレームと、
複数の第2着脱機構部を有するスイング機構部と、
前記スイング機構部に回動可能に支持されるホルダ部と、
前記ホルダ部に保持される接合ツールと、
前記C型フレームの他端に接続され、前記接合ツールからの押圧力を受け止める押圧力受け部と、を備え、
前記スイング機構部の所望のスイング方向に応じて前記複数の第2着脱機構部のいずれかを選択し、
当該選択した第2着脱機構部を前記第1着脱機構部へ嵌合することで前記接合ツールを前記C型フレームに装着することを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
【請求項6】
請求項5に記載の摩擦撹拌接合装置であって、
前記第1着脱機構部は、上下動駆動機構部を介して前記C型フレームに設けられることを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の摩擦撹拌接合装置であって、
前記第2着脱機構部を前記第1着脱機構部へ嵌合した後、前記第1着脱機構部に対する前記第2着脱機構部の位置を保持する保持機構を有することを特徴とする摩擦撹拌接合装置。
【請求項8】
被接合部材同士を摩擦撹拌接合により接合する摩擦撹拌接合方法であって、
(a)被接合部材の接合方向に応じてスイング機構部の複数の着脱機構部から所望のスイング方向の着脱機構部を選択し、当該選択した着脱機構部を装置本体の着脱機構部に装着するステップと、
(b)前記スイング機構部のスイング条件及び接合ツールの接合条件を制御部に入力するステップと、
(c)前記制御部の指令に基づき前記スイング機構部及び前記接合ツールを制御しながら前記被接合部材の接合部を摩擦撹拌接合するステップと、
を有することを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
【請求項9】
請求項8に記載の摩擦撹拌接合方法であって、
前記(c)工程において、前記スイング機構部の前記装置本体への装着方向に対し、略同一方向に前記接合ツールをスイングさせることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
【請求項10】
請求項8に記載の摩擦撹拌接合方法であって、
前記(c)工程において、前記スイング機構部の前記装置本体への装着方向に対し、略垂直方向に前記接合ツールをスイングさせることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
【請求項11】
請求項8に記載の摩擦撹拌接合方法であって、
前記(c)工程において、前記スイング機構部の前記装置本体への装着方向に対し、略斜め45度方向に前記接合ツールをスイングさせることを特徴とする摩擦撹拌接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接合部材同士を摩擦撹拌接合により接合する摩擦撹拌接合装置と摩擦撹拌接合方法に係り、特に、多種多様な被接合部材の接合に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
円柱状の接合ツールを回転させて発生する摩擦熱で被接合材料を軟化させ、その部分を撹拌することで被接合材料同士を接合する摩擦撹拌接合(FSW:Friction Stir Welding)は、材料以外の素材を用いないため、疲労強度が高く、材料も溶融しないことから溶接変形(ひずみ)の少ない接合が可能であり、航空機や自動車のボディなど、幅広い分野での応用が期待されている。
【0003】
低コスト・大量生産が求められる自動車ボディの生産では、FSW装置を用いて自動車用鋼板などの被接合部材を接合する場合、従来、接合速度が速く、動作が比較的単純で自動化が容易なスポットFSWが広く採用されてきた。
【0004】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「接合ヘッドに保持された接合ツールをスイングしてスポット的に摩擦撹拌接合する技術」が開示されている。
【0005】
特許文献1では、接合強度をより高めるため、接合ツールをスイングして金属結合領域を大きくする方法が示されている。この方法は、C型フレームを被接合部材に差し込んだ方向のみでのスイングによる接合であるが、従来のスポット接合と比較すると、スイングした分だけ接合強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4511526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、上記特許文献1は、摩擦撹拌接合を用いてスポット接合を行う際に、接合ツールをスイングして接合領域を大きくし、接合強度を高める技術であるが、幅広の鋼板を接合するときには、基本的にスポット接合と同じ回数の接合が必要とされる。また、スイングする方向は一方向のみであり、スイングする方向と直角方向に対しては、被接合部材同士の接合強度を高めることは期待できない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、従来よりも少ない接合回数で十分な接合強度を確保することが可能な摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の別の目的は、接合方向を容易に変更可能な摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、被接合部材同士を摩擦撹拌接合により接合する摩擦撹拌接合装置であって、第1着脱機構部を有する装置本体と、複数の第2着脱機構部を有するスイング機構部と、前記スイング機構部に回動可能に支持されるホルダ部と、前記ホルダ部に保持される接合ツールと、を備え、
前記スイング機構部の所望のスイング方向に応じて前記複数の第2着脱機構部のいずれかを選択し、当該選択した第2着脱機構部を前記第1着脱機構部へ嵌合することで前記接合ツールを前記装置本体に装着することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、被接合部材同士を摩擦撹拌接合により接合する摩擦撹拌接合装置であって、複数の関節を有し、三次元空間を自在に移動可能な多軸ロボットアームと、前記多軸ロボットアームの先端に接続され、一端に第1着脱機構部を有するC型フレームと、複数の第2着脱機構部を有するスイング機構部と、前記スイング機構部に回動可能に支持されるホルダ部と、前記ホルダ部に保持される接合ツールと、前記C型フレームの他端に接続され、前記接合ツールからの押圧力を受け止める押圧力受け部と、を備え、
前記スイング機構部の所望のスイング方向に応じて前記複数の第2着脱機構部のいずれかを選択し、当該選択した第2着脱機構部を前記第1着脱機構部へ嵌合することで前記接合ツールを前記C型フレームに装着することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、被接合部材同士を摩擦撹拌接合により接合する摩擦撹拌接合方法であって、(a)被接合部材の接合方向に応じてスイング機構部の複数の着脱機構部から所望の
スイング方向の着脱機構部を選択し、当該選択した着脱機構部を装置本体の着脱機構部に装着するステップと、(b)前記スイング機構部のスイング条件及び接合ツールの接合条件を制御部に入力するステップと、(c)前記制御部の指令に基づき前記スイング機構部及び前記接合ツールを制御しながら前記被接合部材の接合部を摩擦撹拌接合するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも少ない接合回数で十分な接合強度を確保することが可能な摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法を実現できる。
【0014】
また、接合方向を容易に変更可能な摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法を実現できる。
【0015】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る摩擦撹拌接合装置の全体概要を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る接合ヘッドアタッチメントの構成を示す上面図(平面図)である。(
図1のA−A’方向矢視図)
【
図3】本発明の一実施形態に係る接合ヘッドアタッチメントの構成を示す上面図(平面図)である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る接合ヘッドアタッチメントの構成を示す上面図(平面図)である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る摩擦撹拌接合方法を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る摩擦撹拌接合装置の全体概要を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る摩擦撹拌接合装置の全体概要を示す図である。
【
図8A】本発明の摩擦撹拌接合による接合部を示す図である。
【
図8B】従来の摩擦撹拌接合による接合部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において、同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例1】
【0018】
図1から
図5及び
図8A,
図8Bを参照して、実施例1の摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法について説明する。
図1は本実施例の摩擦撹拌接合装置1の全体概要を示している。
図2は
図1におけるA−A’方向矢視図であり、スイング機構部6及び接合ヘッド7などからなる接合ヘッドアタッチメントの構成を示している。
図3は
図2の接合ヘッドアタッチメントの装着位置を変えた状態を示す図であり、
図4は
図2の変形例を示す図である。
図5は本実施例の摩擦撹拌接合方法を示すフローチャートである。
図8Aは本発明の摩擦撹拌接合による被接合部材(自動車用鋼板)53の接合部54の様子を示し、
図8Bは従来の摩擦撹拌接合による被接合部材(自動車用鋼板)53の接合部54の様子を示している。
【0019】
図1に示すように、摩擦撹拌接合装置1は主要な構成として、装置本体2、上下動駆動機構部3を介して装置本体2に接続される第1着脱機構部4、第1着脱機構部4に嵌合されてスイング機構部6を装置本体2に装着する第2着脱機構部5a、回動機構部8を介してスイング機構部6に接続されるホルダ部(接合ヘッド)7、ホルダ部(接合ヘッド)7により保持される接合ツール部9を備えている。第2着脱機構部5aを第1着脱機構部4に嵌合(装着)することで、スイング機構部6、ホルダ部(接合ヘッド)7、接合ツール部9が装置本体2に装着される。
【0020】
上下動駆動機構部3には、
図1に例示するように、例えばボールスクリューなどが用いられる。接合ツール部9はショルダ10及び接合ピン11で構成され、ショルダ10を介して接合ピン11がホルダ部(接合ヘッド)7に保持される。
【0021】
この接合ピン11が被接合部材(図示せず)の突き合せ部に挿入され、高速回転することで接合ピン11と被接合部材の間に摩擦熱が発生し、摩擦熱により被接合部材内で塑性流動が生じ、接合部が撹拌される。接合ピン11が移動すると撹拌部(接合部)が冷却されて、被接合部材同士が接合される。
【0022】
装置本体2には、摩擦撹拌接合装置1の動作を制御する制御部(制御装置)12が設置されている。制御部(制御装置)12は、スイング機構部6による接合ツール部9のスイング量やスイング速度を制御するスイング制御信号、接合ツール部9による接合条件を決定する接合条件信号、上下動駆動機構部3による接合ツール部9の高さ方向(Z方向)の保持位置(接合ピン9の挿入量)を決定する保持位置決定信号などの接合パラメータ(FSW接合条件)を記憶する記憶部(図示せず)を備えている。
【0023】
摩擦撹拌接合装置1により被接合部材の摩擦撹拌接合を行う際、制御部(制御装置)12からの制御信号(指令)に基づき、上下動駆動機構部3、スイング機構部6、接合ツール部9の各部の動作を制御する。
【0024】
図1及び
図2に示す摩擦撹拌接合装置1では、図中の矢印で示すように、接合ツール部9はスイング機構部6の装置本体2への装着方向(X方向)に対し、略同一方向(つまりX方向)にスイングする。この装置構成で被接合部材(自動車用鋼板)53の摩擦撹拌接合を行った場合、
図8Bに示すように、被接合部材(自動車用鋼板)53の長手方向(すなわちY方向)に対して十分な接合強度を得ようとする場合、接合部54を長手方向(Y方向)にできるだけ多くの接合部54(
図8Bでは8箇所の接合部)を形成する必要がある。
【0025】
そこで、本実施例では、
図2,
図3に示すように、スイング機構部6に複数の第2着脱機構部(ここでは、3つの第2着脱機構部5a,5b,5c)を設けている。従って、装置本体2側の第1着脱機構部4に嵌合させるスイング機構部6の第2着脱機構部を第2着脱機構部5aから第2着脱機構部5bに付け替えることで、接合ツール部9のスイング方向を90度変えることができる。つまり、スイング機構部6の装置本体2への装着方向に対し、略垂直方向にスイング機構部6(接合ツール部9)をスイングさせることができる。なお、
図3ではスイング機構部6は紙面の下方向にスイングするが、スイング機構部6の第2着脱機構部を第2着脱機構部5cに付け替えることで、スイング機構部6を紙面の上方向にスイングさせることができる。
【0026】
これにより、
図8Aに示すように、被接合部材(自動車用鋼板)53の長手方向(Y方向)に対して少ない接合部54の形成で(
図8Aでは
図8Bの半分の4箇所の接合部)、被接合部材(自動車用鋼板)53の長手方向(Y方向)に対して十分な接合強度を得ることができる。つまり、装置本体2に対する被接合部材(自動車用鋼板)53の向き(位置)を変える必要がなく、接合ヘッドアタッチメントの装置本体への装着位置を変えるのみで、従来よりも少ない接合回数で被接合部材(自動車用鋼板)53の長手方向(Y方向)に対して十分な接合強度を確保することができる。
【0027】
なお、第2着脱機構部5a,5b,5cを第1着脱機構部4へ嵌合(装着)した後、第1着脱機構部4に対する第2着脱機構部5a,5b,5cの位置を保持する保持機構を設けるのが望ましい。第2着脱機構部5a,5b,5cを第1着脱機構部4へ確実に保持(固定)することで安定した接合を行うことができる。
【0028】
図4は
図2及び
図3に示す接合ヘッドアタッチメントの変形例である。
図4に示すように、スイング機構部6に設ける第2着脱機構部5aに替えて、接合ヘッドアタッチメントを装置本体に装着した際、スイング機構部6(すなわち接合ツール部9)のスイング方向が角度θ(
図4では約45度)を有するように第2着脱機構部5dを設けている。これにより、スイング機構部6の装置本体2への装着方向に対し、角度θ方向(略斜め45度方向)に接合ツール部9をスイングさせることができる。
【0029】
図5を用いて、上記で説明した本実施例の摩擦撹拌接合装置による代表的な摩擦撹拌接合方法を説明する。
【0030】
先ず、被接合部材の所望の接合方向に合わせてスイング機構部6の着脱機構部(第2着脱機構部5a〜5d)を選択し、装置本体2(上下動駆動機構部3)の着脱機構部(第1着脱機構部4)に装着する。(ステップS1)
次に、制御部(制御装置)12にスイング機構部6のスイング条件、接合ツール部9の接合条件、接合ツール部9の高さ(Z方向の位置)を入力し、記憶部に記憶(登録)する。(ステップS2)
続いて、制御部(制御装置)12からの制御信号(指令)に基づき、接合ツール部9を被接合部材の接合部(被接合部材同士の突き合わせ部)の所定の位置へ挿入する。(ステップS3)
続いて、制御部(制御装置)12からの制御信号(指令)に基づき、接合ツール部9の高さ(Z方向の位置)を上下動駆動機構部3により制御しながら被接合部材の接合部に沿ってスイング(移動)させ、接合部を摩擦撹拌接合する。(ステップS4)
最後に、制御部(制御装置)12からの制御信号(指令)に基づき、接合ツール部9のスイング量(移動量)が所定の値(位置)に達した時点で接合ツール部9を被接合部材の接合部から引き抜き、摩擦撹拌接合処理を終了する。(ステップS5)
以上説明したように、本実施例の摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法によれば、従来よりも少ない接合回数で十分な接合強度を確保することができる。また、従来よりも簡便な方法で接合方向を容易に変更することが可能となる。
【実施例2】
【0031】
図6を参照して、実施例2の摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法について説明する。
図6は本実施例の摩擦撹拌接合装置21の全体概要を示している。
【0032】
図6に示すように、摩擦撹拌接合装置21は主要な構成として、装置本体22、上下動駆動機構部(第1上下動駆動機構部)23を介して装置本体22に接続されるC型フレーム24、上下動駆動機構部(第2上下動駆動機構部)25を介してC型フレーム24の一端に接続される第1着脱機構部26、第1着脱機構部26に嵌合されてスイング機構部28をC型フレーム24に装着する第2着脱機構部27a、回動機構部30を介してスイング機構部28に接続されるホルダ部(接合ヘッド)29、ホルダ部(接合ヘッド)29により保持される接合ツール部31を備えている。第2着脱機構部27aを第1着脱機構部26に嵌合(装着)することで、スイング機構部28、ホルダ部(接合ヘッド)29、接合ツール部31がC型フレーム24(装置本体22)に装着される。
【0033】
上下動駆動機構部(第1上下動駆動機構部)23,上下動駆動機構部(第2上下動駆動機構部)25には、
図6に例示するように、例えばボールスクリューなどが用いられる。接合ツール部31はショルダ32及び接合ピン33で構成され、ショルダ32を介して接合ピン33がホルダ部(接合ヘッド)29に保持される。
【0034】
C型フレーム24は、上下動駆動機構部(第1上下動駆動機構部)23を介して装置本体22に接続される被保持部(立上部)24a、上下動駆動機構部(第2上下動駆動機構部)25を介して第1着脱機構部26に接続されるホルダ部保持部24b、C型フレーム24の他端に接続され、摩擦撹拌接合時に接合ツール部31からの押圧力を受け止める押圧力受け部24cで構成され、略C型(略コの字型)形状を有している。
【0035】
装置本体22には、摩擦撹拌接合装置21の動作を制御する制御部(制御装置)34が設置されている。制御部(制御装置)34は、接合ツール部31による接合条件を決定する接合条件信号(接合指令信号)や上下動駆動機構部(第1上下動駆動機構部)23によるC型フレーム24の装置本体22に対する高さ方向(Z方向)の保持位置を決定する保持位置決定信号、上下動駆動機構部(第2上下動駆動機構部)25による第1着脱機構部26のC型フレーム24(ホルダ部保持部24b)に対する高さ方向(Z方向)の保持位置を決定する保持位置決定信号などの接合パラメータ(FSW接合条件)を記憶する記憶部(図示せず)を備えている。
【0036】
本実施例の摩擦撹拌接合装置21は以上のように構成されており、実施例1と同様に、第2着脱機構部27aを第1着脱機構部26に嵌合(装着)することで、スイング機構部28、ホルダ部(接合ヘッド)29、接合ツール部31がC型フレーム24(装置本体22)に装着される。従って、例えばC型フレーム24側の第1着脱機構部26に嵌合させるスイング機構部28の第2着脱機構部を第2着脱機構部27aから第2着脱機構部27bに付け替えることで、接合ツール部31のスイング方向を90度変更することができる。
【0037】
実施例1の
図4のように、スイング機構部28に設ける第2着脱機構部27aに替えて、接合ヘッドアタッチメントを装置本体に装着した際、スイング機構部28(すなわち接合ツール部31)のスイング方向が角度θ(
図4のように例えば約45度)を有するように第2着脱機構部を設けてもよい点や、被接合部材の所望の接合方向に合わせてスイング機構部28の着脱機構部(
図6では第2着脱機構部27a,27b)を選択する点など、その他の構成及び動作(作用)は基本的に実施例1と同様であるため、繰り返しとなる詳細な説明は省略する。
【0038】
本実施例においても、従来よりも少ない接合回数で十分な接合強度を確保することができるなど、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例では、上下動駆動機構部(第1上下動駆動機構部)23を介して装置本体22にC型フレーム24を接続しており、なおかつ、上下動駆動機構部(第2上下動駆動機構部)25を介して接合ヘッドアタッチメント(スイング機構部28及び接合ツール部31)をC型フレーム24に接続しているため、C型フレーム24の装置本体22に対する高さ(Z方向の位置)及びスイング機構部28(接合ツール部31)のC型フレーム24に対する高さ(Z方向の位置)を制御しながら摩擦撹拌接合を行うことができ、より精度の高い摩擦撹拌接合が可能となる。
【実施例3】
【0039】
図7を参照して、実施例3の摩擦撹拌接合装置及び摩擦撹拌接合方法について説明する。
図7は本実施例の摩擦撹拌接合装置41の全体概要を示している。
【0040】
図7に示すように、摩擦撹拌接合装置41は主要な構成として、多軸ロボット42、多軸ロボット42に接続されるC型フレーム43、上下動駆動機構部44を介してC型フレーム43の一端に接続される第1着脱機構部45、第1着脱機構部45に嵌合されてスイング機構部47をC型フレーム43に装着する第2着脱機構部46a、回動機構部49を介してスイング機構部47に接続されるホルダ部(接合ヘッド)48、ホルダ部(接合ヘッド)48により保持される接合ツール部50を備えている。第2着脱機構部46aを第1着脱機構部45に嵌合(装着)することで、スイング機構部47、ホルダ部(接合ヘッド)48、接合ツール部50がC型フレーム43(多軸ロボット42)に装着される。接合ツール部50はショルダ51及び接合ピン52で構成され、ショルダ51を介して接合ピン52がホルダ部(接合ヘッド)48に保持される。
【0041】
多軸ロボット42は、一般的にロボットアームと呼ばれる垂直多関節ロボットであり、多関節構造とサーボモーターによって三次元空間を自在に動作(移動)することができる。関節の数(軸数)によって可動範囲が変化するが、ここでは台座部42a上に下腕部42b、上腕部42c、手首部42dを有する三軸タイプのロボットアームの例を示す。多軸ロボット42の白丸部分が関節である。
【0042】
なお、摩擦撹拌接合装置41はサーボアンプや基板などが収納された制御装置(図示せず)を備えており、この制御装置からの指令(プログラム信号)により多軸ロボット42の動きやスイング機構部47のスイング条件、接合ツール部50の接合条件を総合的にコントロールする。
【0043】
多軸ロボット42の手首部42dの先端には、C型フレーム43が回動可能に接続されている。C型フレーム43は、多軸ロボット42の手首部42dに接続される被保持部(立上部)43a、被保持部43aの一方の端部に接続されて上下動駆動機構部44を介して第1着脱機構部45を支持するホルダ部保持部43b、被保持部(立上部)43aの他方の端部に接続されて接合ツール部50からの押圧力を受け止める押圧力受け部43cから構成されている。
【0044】
なお、
図7では被保持部(立上部)43a、ホルダ部保持部43b、押圧力受け部43cが一体物としてC型フレーム43を構成する例を示しているが、各部位がそれぞれ別体として形成され、それらを組み合せることでC型フレーム43を構成する例も含んでいる。
【0045】
ホルダ部(接合ヘッド)48は、上下動駆動機構部44を介してC型フレーム43(ホルダ部保持部43b)と接続されており、C型フレーム43に対して上下方向(
図7のZ方向)に動作する。
【0046】
接合ツール部50は、ショルダ51、接合ピン52で構成され、接合ピン52を高速回転させながら被接合部材(図示せず)に所定の深さまで挿入し、接合部(接合線)に沿って移動させることで摩擦撹拌接合を行う。
【0047】
本実施例の摩擦撹拌接合装置41は以上のように構成されており、実施例1と同様に、第2着脱機構部46aを第1着脱機構部45に嵌合(装着)することで、スイング機構部47、ホルダ部(接合ヘッド)48、接合ツール部50がC型フレーム43(多軸ロボット42)に装着される。従って、例えばC型フレーム43側の第1着脱機構部45に嵌合させるスイング機構部47の第2着脱機構部を第2着脱機構部46aから第2着脱機構部46bに付け替えることで、接合ツール部50のスイング方向を90度変更することができる。
【0048】
実施例1の
図4のように、スイング機構部47に設ける第2着脱機構部46aに替えて、接合ヘッドアタッチメントを装置本体に装着した際、スイング機構部47(すなわち接合ツール部50)のスイング方向が角度θ(
図4のように例えば約45度)を有するように第2着脱機構部を設けてもよい点や、被接合部材の所望の接合方向に合わせてスイング機構部47の着脱機構部(
図7では第2着脱機構部46a,46b)を選択する点など、その他の構成及び動作(作用)は基本的に実施例1と同様であるため、繰り返しとなる詳細な説明は省略する。
【0049】
本実施例においても、従来よりも少ない接合回数で十分な接合強度を確保することができるなど、実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例では、C型フレーム43を多軸ロボットアーム42により保持しているため、接合点(接合面)を三次元空間において自在に移動することができ、自動車のボディのように立体的に配置され、曲面を含む複雑な形状の被接合部材の摩擦撹拌接合を精度よく行うことができる。
【0050】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…摩擦撹拌接合装置、2…装置本体、3…上下動駆動機構部(ボールスクリュー)、4…第1着脱機構部、5,5a,5b,5c,5d…第2着脱機構部、6…スイング機構部、7…ホルダ部(接合ヘッド)、8…回動機構部、9…接合ツール部、10…ショルダ、11…接合ピン、12…制御部(制御装置)、21…摩擦撹拌接合装置、22…装置本体、23,25…上下動駆動機構部(ボールスクリュー)、24…C型フレーム、24a…被保持部(立上部)、24b…ホルダ部保持部、24c…押圧力受け部、26…第1着脱機構部、27,27a,27b…第2着脱機構部、28…スイング機構部、29…ホルダ部(接合ヘッド)、30…回動機構部、31…接合ツール部、32…ショルダ、33…接合ピン、34…制御部(制御装置)、41…摩擦撹拌接合装置、42…多軸ロボット、42a…台座部、42b…下腕部、42c…上腕部、42d…手首部、43…C型フレーム、43a…被保持部(立上部)、43b…ホルダ部保持部、43c…押圧力受け部、44…上下動駆動機構部(ボールスクリュー)、45…第1着脱機構部、46,46a,46b…第2着脱機構部、47…スイング機構部、48…ホルダ部(接合ヘッド)、49…回動機構部、50…接合ツール部、51…ショルダ、52…接合ピン、53…被接合部材(自動車用鋼板)、54…接合部。
【要約】
【課題】
従来よりも少ない接合回数で十分な接合強度を確保することが可能な摩擦撹拌接合装置を提供する。
【解決手段】
被接合部材同士を摩擦撹拌接合により接合する摩擦撹拌接合装置であって、第1着脱機構部を有する装置本体と、複数の第2着脱機構部を有するスイング機構部と、前記スイング機構部に回動可能に支持されるホルダ部と、前記ホルダ部に保持される接合ツールと、を備え、前記複数の第2着脱機構部のいずれかを前記第1着脱機構部へ嵌合することで前記接合ツールを前記装置本体に装着することを特徴とする。
【選択図】
図1