特許第6408738号(P6408738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6408738-放熱構造体の製造方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6408738
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】放熱構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20181004BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   H01L23/36 M
   H01L23/36 D
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2018-98553(P2018-98553)
(22)【出願日】2018年5月23日
【審査請求日】2018年5月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100113561
【弁理士】
【氏名又は名称】石村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】吉本 光彦
(72)【発明者】
【氏名】下山 卓宏
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 真実
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−044090(JP,A)
【文献】 特開2013−151655(JP,A)
【文献】 特開2007−153969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性接着シートの硬化体、前記硬化体の一方の表面に直接接合されている部材(M1)、及び前記硬化体の他方の表面に直接接合されている部材(M2)を有し、前記部材(M1)及び前記部材(M2)の前記硬化体との各接合面は、少なくとも金属及び樹脂のいずれかを含む放熱構造体の製造方法であって、
前記熱伝導性接着シート、樹脂及び無機フィラーを含むBステージシートであり、
前記樹脂は、ブロックウレタンプレポリマー、エポキシ化合物及び硬化触媒を含む樹脂組成物からなり、
前記ブロックウレタンプレポリマーは、脂肪族ジイソシアネート化合物と両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエンポリオールとの反応生成物の末端イソシアネート基が、芳香族ヒドロキシ化合物でブロックされたものであり、前記反応生成物における前記脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位が、前記水添ポリブタジエンポリオール由来の構成単位1モルに対して1.3〜2.8モルであり、
前記エポキシ化合物は、エポキシ基を2〜6個有し、前記エポキシ基が前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して0.9〜2.5モルであり、
前記無機フィラーは、平均粒径が10μm超100μm以下の球状粒子(f1)、及び、平均粒径0.1μm以上10μm以下の球状粒子(f2)を含み、前記無機フィラー中の前記球状粒子(f1)の含有量が58.0〜80.0質量%であり、
前記無機フィラーの含有量が80.0〜94.0質量%であ
前記部材(M1)と前記部材(M2)とで前記熱伝導性接着シートを挟装した構造前駆体を作製する工程と、
前記構造前駆体の前記熱伝導性接着シートを220〜260℃で硬化させて、前記熱伝導性接着シートの硬化体と、前記部材(M1)及び前記部材(M2)とが接合された放熱構造体を得る工程を有する、放熱構造体の製造方法
【請求項2】
前記無機フィラーが、マグネシア、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム及び結晶性シリカから選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の放熱構造体の製造方法
【請求項3】
前記熱伝導性接着シートの厚みが100μm以上500μm未満である、請求項1又は2に記載の放熱構造体の製造方法
【請求項4】
前記Bステージシートは、下記測定条件にて測定したタック力の値tBが0.1〜10.0N/cm2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放熱構造体の製造方法
<測定条件>
25℃にて、アルミニウム板面上に固定した30mm×30mm×厚さ0.3mmのシート試料の上に、15mm×15mm×15mmのアルミニウム製ブロックを載せ、メカニカルフォースゲージを用いて、前記ブロックの上から鉛直方向に荷重50Nで10秒間押しつけた後、鉛直方向に引き上げて、前記シート試料と前記ブロックとを剥離するのに要する力を測定し、この測定値をタック力とする。
【請求項5】
前記Bステージシートを220〜240℃で硬化させたCステージシートについて、前記測定条件にて測定したタック力の値tCが0.2N/cm2以上、かつ、前記tCと前記tBの比tC/tBが1.5以上である、請求項4に記載の放熱構造体の製造方法
【請求項6】
前記部材(M1)及び前記部材(M2)のいずれか一方が、発熱性電子部品の構成部材である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の放熱構造体の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の発熱性電子部品等における放熱経路の形成に好適に用いることができる熱伝導性接着シート及びその製造方法、並びに、前記熱伝導性接着シートを用いた放熱構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に用いられているLEDやCPU、パワー半導体等の電子部品は、電子機器の使用時に大きな発熱を伴う。このような発熱は、電子機器の正常な作動を妨げたり、さらに、故障や破損を招いたりするおそれがある。このため、上記のような電子部品等の発熱体から発生する熱を、ヒートシンクや金属フレーム等の放熱体を用いて外部に逃がすようにしている。
その際、放熱効果を高めるために、発熱体と放熱体との間に、熱伝導性が高い電気絶縁性材料からなるシートを挟装して、発熱体から放熱体への熱伝導が効率よく行われるようにしている。このようなシートは、一般に、放熱シートや熱伝導性シート等と呼ばれている(以下、これらを放熱シートと総称する場合もある。)。
【0003】
近年、電子機器用の各種部品の小型化や高性能化に伴い、前記発熱に対する対策が、より一層重要となっている。このため、放熱シートには、熱伝導性及び電気絶縁性はもちろん、衝撃や振動等の外部応力を受けた場合においても、クラックが生じたり、ずれたりすることなく、放熱経路を確実に確保できるものであることが求められている。
【0004】
このような課題に対しては、放熱シートを接着可能な構成とした種々の方法が提案されている。
例えば、特許文献1には、放熱部材と筐体等との間に、放熱部材及び該放熱部材の移動を阻止する移動阻止膜を配することが記載されている。
また、特許文献2には、有機ケイ素化合物を絶縁性樹脂に含有させてなる接着絶縁シートを用いて、加水分解及び脱水縮合反応を生じさせて、金属製の基板と放熱板とを接着させることが記載されている。
また、特許文献3には、無機フィラーとエポキシ樹脂とその硬化剤を含み、Bステージ状態にある接着シートを、金属基板と金属箔との間に配置し、Cステージ状態まで硬化させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−100803号公報
【特許文献2】特開平9−224764号公報
【特許文献3】特開2009−49062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、樹脂材料からなる放熱部材を化学的又は電子的に結合させるための移動阻止膜を塗布等により成膜した後に、前記放熱部材を塗布するため、塗布の工程における手間及び時間が多くなり、また、加工コストも嵩む。
【0007】
一方、上記特許文献2に記載の方法では、(接着)絶縁シート自体が、接着性を有するものであるが、有機ケイ素化合物と絶縁性樹脂との脱水縮合反応時にアルコールのガスが発生し、このガスが接着界面に残存すると、熱伝導を低下させることとなり、また、膨れにより接着界面の剥離を生じるおそれがある。さらに、前記有機ケイ素化合物の反応性の観点から、無機フィラーを添加することによって、該接着絶縁シートの熱膨張又は熱収縮を抑制することは困難である。
【0008】
また、上記特許文献3に記載の接着シートは、エポキシ樹脂がバインダー成分であるため、エポキシ基の高い反応性により、保管時や使用時における制約が大きく、取り扱い性に劣る。また、硬化時の加熱条件によっては、未反応のエポキシ残基等の残渣分が、分解や蒸発により接着界面にガス溜まりを生じ、このガスが、上記と同様に、熱伝導を低下させることとなり、また、膨れにより接着界面の剥離を生じるおそれがある。
【0009】
したがって、放熱シートとしては、熱伝導性及び電気絶縁性はもちろん、十分な接着性を有し、該放熱シートを備えた放熱構造における放熱経路を確実に確保できること、さらに、このような放熱構造を簡便に形成し得るものであることが望まれている。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、電子機器等における放熱構造において、熱伝導性、電気絶縁性及び接着性に優れ、放熱経路を確実に確保することができ、しかも、形成工程を簡便化することができる熱伝導性接着シート及びその製造方法、並びに、前記熱伝導性接着シートを用いた放熱構造体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、所定のブロックウレタンプレポリマー、所定のエポキシ化合物、及び硬化触媒を含む樹脂組成物からなる樹脂、及び所定の無機フィラーを含むBステージシートが、熱伝導性接着シートとして好適であることを見出したことに基づくものである。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[9]を提供する。
[1]樹脂及び無機フィラーを含む熱伝導性接着シートであって、該熱伝導性接着シートはBステージシートであり、前記樹脂は、ブロックウレタンプレポリマー、エポキシ化合物及び硬化触媒を含む樹脂組成物からなり、前記ブロックウレタンプレポリマーは、脂肪族ジイソシアネート化合物と両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエンポリオールとの反応生成物の末端イソシアネート基が、芳香族ヒドロキシ化合物でブロックされたものであり、前記反応生成物における前記脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位が、前記水添ポリブタジエンポリオール由来の構成単位1モルに対して1.3〜2.8モルであり、前記エポキシ化合物は、エポキシ基を2〜6個有し、前記エポキシ基が前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して0.9〜2.5モルであり、前記無機フィラーは、平均粒径が10μm超100μm以下の球状粒子(f1)、及び、平均粒径0.1μm以上10μm以下の球状粒子(f2)を含み、前記無機フィラー中の前記球状粒子(f1)の含有量が58.0〜80.0質量%であり、前記無機フィラーの含有量が80.0〜94.0質量%である、熱伝導性接着シート。
[2]前記無機フィラーが、マグネシア、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム及び結晶性シリカから選ばれる1種以上を含む、上記[1]に記載の熱伝導性接着シート。
[3]厚みが100μm以上500μm未満である、上記[1]又は[2]に記載の熱伝導性接着シート。
[4]前記Bステージシートは、下記測定条件にて測定したタック力の値tBが0.1〜10.0N/cm2である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の熱伝導性接着シート。
<測定条件>
25℃にて、アルミニウム板面上に固定した30mm×30mm×厚さ0.3mmのシート試料の上に、15mm×15mm×15mmのアルミニウム製ブロックを載せ、メカニカルフォースゲージを用いて、前記ブロックの上から鉛直方向に荷重50Nで10秒間押しつけた後、鉛直方向に引き上げて、前記シート試料と前記ブロックとを剥離するのに要する力を測定し、この測定値をタック力とする。
[5]前記Bステージシートを220〜240℃で硬化させたCステージシートについて、前記測定条件にて測定したタック力の値tCが0.2N/cm2以上、かつ、前記tCと前記tBの比tC/tBが1.5以上である、上記[4]に記載の熱伝導性接着シート。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の熱伝導性接着シートの製造方法であって、前記樹脂組成物及び前記無機フィラーを含む混合物を調製する工程と、前記混合物を成形して、シート成形体を作製する工程と、前記シート成形体を120〜180℃で5〜60分間加熱して半硬化させることにより、前記熱伝導性接着シートを得る工程とを含む、熱伝導性接着シートの製造方法。
【0013】
[7]上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の熱伝導性接着シートの硬化体、前記硬化体の一方の表面に直接接合されている部材(M1)、及び前記硬化体の他方の表面に直接接合されている部材(M2)を有し、前記部材(M1)及び前記部材(M2)の前記硬化体との各接合面は、少なくとも金属及び樹脂のいずれかを含む、放熱構造体。
[8]前記部材(M1)及び前記部材(M2)のいずれか一方が、発熱性電子部品の構成部材である、上記[7]に記載の放熱構造体。
[9]上記[7]又は[8]に記載の放熱構造体の製造方法であって、前記部材(M1)と前記部材(M2)とで前記熱伝導性接着シートを挟装した構造前駆体を作製する工程と、前記構造前駆体の前記熱伝導性接着シートを220〜260℃で硬化させて、前記熱伝導性接着シートの硬化体と、前記部材(M1)及び前記部材(M2)とが接合された放熱構造体を得る工程を有する、放熱構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱伝導性接着シートは、熱伝導性、電気絶縁性及び接着性に優れており、これを用いることにより、電子機器等の放熱経路を確実に確保することができる放熱構造を形成することができ、しかも、このような放熱構造の形成工程を簡便化することができる。
したがって、本発明によれば、前記熱伝導性接着シートを用いて、放熱性に優れた放熱構造体及びその製造方法を好適に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例において接着性(タック力)の測定方法を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の熱伝導性接着シート及びその製造方法、並びに、前記熱伝導性接着シートを用いた放熱構造体及びその製造方法について詳細に説明する。
【0017】
[熱伝導性接着シート]
本発明の熱伝導性接着シートは、所定の樹脂、及び所定の無機フィラーを含むものであり、Bステージシートである。そして、前記樹脂は、所定のブロックウレタンプレポリマー、所定のエポキシ化合物、及び所定の硬化触媒を含む樹脂組成物からなる。
ここで、「Bステージシート」とは、半硬化(Bステージ)状態の熱硬化性樹脂を含む組成物からなるシートを意味する。半硬化状態の程度は特定されない。
また、本明細書で言う「Cステージ」とは、Bステージに対して用いられる用語であり、熱硬化性樹脂がほぼ完全に硬化した状態を意味する。
【0018】
前記熱伝導性接着シートは、前記樹脂組成物及び前記無機フィラーを含む混合組成物が半硬化(Bステージ化)してなる樹脂シートである。このような半硬化状態においては、前記樹脂組成物中のバインダー成分である前記ブロックウレタンプレポリマー及び前記エポキシ化合物のイソシアネート基及びエポキシ基が残存している状態であり、Bステージシートの表面に残存するこれらの官能基により、被接着物に対する適度な接着力が得られる。例えば、被接着物がアルミニウムや銅等の金属である場合、該金属表面の酸化等による水酸基や収着水との反応により接着すると推測される。また、例えば、被接着物がパワー半導体の外装樹脂である場合、該外装樹脂中に残存する官能基や収着水との反応により接着すると推測される。
また、前記熱伝導性接着シートは、柔軟性に優れ、被接着物に対する適度な接着性(タック力)を有するとともに、容易に貼り直しできるリワーク性にも優れている。
さらに、前記熱伝導性接着シートを所定の位置に配置した後、加熱することによって、あるいはまた、配置箇所近傍の発熱性電子部品等から発生する熱によって、さらに接着力が増す。このため、前記熱伝導性接着シートは、接着性に優れた放熱構造体を構成することができ、簡便な手段で、安定した熱伝導性及び高い電気絶縁性を発揮することができる。
【0019】
前記熱伝導性接着シートの接着性の程度は、具体的には、以下のようなタック力を有していることが好ましい。前記Bステージシートは、下記測定条件にて測定したタック力の値tBが0.1〜10.0N/cm2であることが好ましく、より好ましくは0.2〜8.0N/cm2である。
【0020】
<測定条件>
25℃にて、アルミニウム板面上に固定した30mm×30mm×厚さ0.3mmのシート試料の上に、15mm×15mm×15mmのアルミニウム製ブロックを載せ、メカニカルフォースゲージを用いて、前記ブロックの上から鉛直方向に荷重50Nで10秒間押しつけた後、鉛直方向に引き上げて、前記シート試料と前記ブロックとを剥離するのに要する力を測定し、この測定値をタック力とする。
【0021】
なお、前記ブロックの前記シート試料との接触面は、十点平均粗さRzJISが5.0〜10.0μmとする。本明細書で言う十点平均粗さRzJISは、JIS B 0601:2013に準拠して基準長さ0.8mmで測定された値であり、測定回数20回の平均値とする。
また、測定中に、前記シート試料が前記アルミニウム板から剥離しないように、前記シート試料の上面から、剥離紙を介して、該シート試料全面を前記アルミニウム板に荷重200N以上で押しつけて固定する。
また、前記シート試料と前記ブロックとを剥離するのに要する力とは、メカニカルフォースゲージによる引き上げ時の最大荷重とする。
前記タック力は、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
前記Bステージシートのタック力の値tBが上記範囲内であることにより、前記熱伝導性接着シート(Bステージシート)は、被接着物に対して適度な接着性(タック力)を有するとともに、貼り直しも容易であり、取り扱い性に優れていると言える。
【0023】
また、前記Bステージシートを220〜240℃で硬化させたCステージシートについて、前記測定条件にて測定したタック力の値tCが0.2N/cm2以上、かつ、前記tCと前記tBの比tC/tBが1.5以上であることが好ましい。Cステージシートの接着性は高いほど好ましいが、実際上、より好ましくは、tCは1.0〜50.0N/cm2、また、tC/tBは1.6〜10.0である。
前記BステージシートをCステージ化させた後のタック力の値tC及びtC/tBが上記範囲内であることにより、前記Cステージシートは、前記Bステージシートよりもタック力が増大し、接着性に優れた放熱構造体を構成することができ、熱伝導性接着シートとして、より優れているものであると言える。
【0024】
前記熱伝導性接着シートは、前記樹脂及び前記無機フィラーを主成分とするものであり、後述する添加剤等の他の成分を含んでいてもよいが、十分な熱伝導性、電気絶縁性及び接着性を得る観点から、熱伝導性接着シートの構成成分のうち、前記樹脂及び前記無機フィラーの合計含有量は、90.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは95.0質量%以上、さらに好ましくは98.0〜98.8質量%である。
【0025】
前記熱伝導性接着シートは、厚みが100μm以上500μm未満であることが好ましく、より好ましくは150〜450μm、さらに好ましくは200〜400μmである。
前記厚みが100μm以上であれば、該熱伝導性接着シートが取り扱いやすく、また、十分な電気絶縁性が得られやすい。また、500μm未満であれば、十分な熱伝導性が得られる。
【0026】
(樹脂)
前記樹脂は、ブロックウレタンプレポリマー、エポキシ化合物、及び硬化触媒を含む樹脂組成物からなる。
前記ブロックウレタンプレポリマーは、脂肪族ジイソシアネート化合物と両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエンポリオールとの反応生成物の末端イソシアネート基が、芳香族ヒドロキシ化合物でブロックされたものであり、前記反応生成物における前記脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位が、前記水添ポリブタジエンポリオール由来の構成単位1モルに対して1.3〜2.8モルである。また、前記エポキシ化合物は、エポキシ基を2〜6個有し、前記エポキシ基が、前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して0.9〜2.5モルである。
【0027】
後述するように、前記樹脂組成物を120℃以上に加熱することにより、硬化反応が進行し、前記樹脂が得られる。前記樹脂は、主に、以下の2種の架橋重合反応から構成されるゲル状のネットワーク構造を有する。
第1の架橋重合反応は、前記脂肪族ジイソシアネート化合物と前記水添ポリブタジエンポリオールとの反応生成物の末端の、前記芳香族ヒドロキシ化合物でブロックされたイソシアネート基が脱ブロック化されて、2量化によるウレトジオン、又は3量化によるイソシアヌレートを生成する多量化反応である。これにより、前記樹脂には、柔軟性や接着性(タック力)、ゴム弾性等の特性が付与される。
第2の架橋重合反応は、前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基による前記エポキシ化合物のエポキシ基の開環反応である。
さらに、脱ブロック化された前記イソシアネート基と前記エポキシ化合物のエポキシ基との反応による硬化反応も生じる。
これらの反応によって形成された前記樹脂におけるゲル状のネットワークは、相互侵入高分子網目(IPN:Interpenetrating Polymer Network)構造であると考えられる。前記樹脂は、このようなIPN構造を構築していることにより、優れた柔軟性、熱伝導性及び接着性等を有する熱伝導性接着シートを構成することができる。
【0028】
前記樹脂組成物は、100℃以下で、硬化することなく、前記無機フィラーと混合して適度な粘度で捏和することができ、また、このような粘度を少なくとも6時間保持することができる。このため、前記無機フィラーを均一に分散及び充填させる上で、適度な粘度で十分な捏和時間を確保することができ、取り扱い性に優れている。
なお、前記樹脂組成物は、後述する添加剤等の他の成分を含んでいてもよいが、前記樹脂組成物のうち、溶剤を除く含有成分中の前記ブロックウレタンプレポリマーと前記エポキシ化合物の合計量は、前記樹脂の柔軟性や接着性等の観点から、70.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70.0〜100質量%、さらに好ましくは75.0〜100質量%である。
【0029】
〔ブロックウレタンプレポリマー〕
前記樹脂組成物に含まれるブロックウレタンプレポリマーは、脂肪族ジイソシアネート化合物と両末端に水酸基を有する水添ポリブタジエンポリオールとの反応生成物において、前記反応生成物が末端に有しているイソシアネート基が、芳香族ヒドロキシ化合物でブロックされた構造を有している。前記反応生成物における前記脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位は、前記水添ポリブタジエンポリオール由来の構成単位1モルに対して1.3〜2.8モルである。
なお、上記のようなプレポリマーは、前記反応生成物の構造を1種の化合物として特定することが困難であることから、該プレポリマーの構造も1種の化合物として特定することは困難であり、反応に供する物を用いた表現で表している。
【0030】
<脂肪族ジイソシアネート化合物>
前記脂肪族ジイソシアネート化合物は、前記ブロックウレタンプレポリマーの構成原料であり、前記水添ポリブタジエンポリオールと反応する化合物である。前記脂肪族ジイソシアネート化合物における「脂肪族」とは、「芳香族」ではないことを意味し、置換基の炭化水素基が、直鎖状、分岐状又は環式であってもよい。
前記脂肪族ジイソシアネート化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、HMDIやIPDI等は、立体障害が大きく、イソシアネート多量化反応が生じ難いため、多量化のしやすさの観点から、比較的単純な構造であるHDIが特に好ましい。
一方、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)やトルエンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ジイソシアネート化合物は、これらを用いて生成したブロックウレタンプレポリマーのウレタン基の凝集力が強く、溶融温度が高い。このため、硬化反応を生じることなく、プレポリマーの状態を維持して、無機フィラーと混合して捏和することができる温度範囲が狭く、均一な樹脂組成物を調製する際の取り扱い性に劣る。さらに、芳香族ジイソシアネート化合物由来のウレタン基は、脂肪族ジイソシアネート化合物由来のウレタン基と比べて、ウレタン基の分解温度が低くなる傾向にあり、得られる樹脂の耐熱性が劣る。
【0031】
前記反応生成物における前記脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位は、前記水添ポリブタジエンポリオール由来の構成単位1モルに対して1.3〜2.8モルであり、好ましくは1.4〜2.7モル、さらに好ましくは1.5〜2.5モルである。
前記脂肪族ジイソシアネート化合物由来の構成単位が1.6モル以上であることにより、前記ブロックウレタンプレポリマーの分子量の増大が抑制され、均一な樹脂組成物を得るための混合時に取り扱いやすい。また、2.8モル以下であれば、イソシアネートの多量化反応により、前記樹脂組成物中の前記ブロックウレタンプレポリマーに対する前記エポキシ化合物の相対モル量が抑制されることにより、熱伝導性接着シートの接着性を低下させる要因の1つである、該熱伝導性接着シート中に残存する未反応のエポキシ残基等の残渣分の分解によるガスの発生が抑制される。
【0032】
<水添ポリブタジエンポリオール>
前記水添ポリブタジエンポリオールは、前記ブロックウレタンプレポリマーの構成原料であり、前記脂肪族ジイソシアネート化合物との反応物である。前記水添ポリブタジエンポリオールは、ブタジエンを原料とし、両末端に水酸基を有するポリオール化合物であって、二重結合残基が水添化されたものである。高分子量のものは、得られる樹脂に柔軟性を付与しやすい。一方、低分子量のものは、得られる樹脂の耐熱性を高めることができる。
前記水添ポリブタジエンポリオールの数平均分子量は、粘度、耐熱性及び入手容易性等の観点から、800〜5000であることが好ましい。なお、本明細書における数平均分子量は、JIS K1557−1:2007に準拠して測定した水酸基価に基づいて、水添ポリブタジエンポリオールが2個の水酸基を有するものとみなして算出した値である。
【0033】
前記水添ポリブタジエンポリオールとしては、例えば、市販品である、GI−3000(数平均分子量3753(カタログ公表値3000))、GI−2000(数平均分子量カタログ公表値2000)、GI−1000(数平均分子量カタログ公表値1000)(いずれも日本曹達株式会社製)等を好適に使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、GI−3000が特に好ましい。
ポリウレタン原料として一般的に用いられる、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオール等は、前記樹脂の耐熱性の点で、水添ポリブタジエンポリオールに比べて劣る。このため、本発明では、ポリオール化合物のうち、前記水添ポリブタジエンポリオールを用いる。
【0034】
<芳香族ヒドロキシ化合物>
前記芳香族ヒドロキシ化合物は、前記反応生成物の末端イソシアネート基のブロック剤として用いられる化合物であり、芳香環を有し、該芳香環を構成する1個以上の水素原子が水酸基に置換された芳香族化合物である。前記芳香環は、ベンゼン環であることが好ましく、さらに、ベンゼン環の2個の水素原子が水酸基に置換されたベンゼンジオールがより好ましい。前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基が前記末端イソシアネート基と反応してウレタン結合を形成することにより、前記反応生成物の末端イソシアネート基がブロックされる。
なお、イソシアネート基のブロック剤には、アミン系化合物もあるが、これは、エポキシ化合物との反応性が高く、これに伴い、前記ブロックウレタンプレポリマーの硬化が促進されることなるため好ましくない。
【0035】
前記芳香族ヒドロキシ化合物としては、具体的には、フェノール、1−クレゾール、2−クレゾール、3−クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3−イソプロピルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、3−tert−ブチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2,5−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール、2−プロポキシフェノール、3−プロポキシフェノール、4−プロポキシフェノール、1,2−ベンゼンジオール、1,3−ベンゼンジオール(レゾルシノール)、1,4−ベンゼンジオール、1,3,5−ベンゼントリオール、4−tert−ブチルカテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、特に、レゾルシノール及びビスフェノールFは、イソシアネート基をブロック化した後、120℃程度と比較的低い温度で脱ブロック化させることができるため、イソシアネート基と前記エポキシ化合物のエポキシ基との反応により前記樹脂を得る際の加熱時における脱ブロック化容易性の観点から好ましい。
【0036】
〔エポキシ化合物〕
前記エポキシ化合物は、エポキシ基を2〜6個有するものであり、好ましくは2〜5個である。ゲル状のネットワークを有する樹脂を得るためには、エポキシ基が2個以上である必要があり、また、6個以下であることにより、柔軟性を有する好適なゲル状のネットワークを有する樹脂が得られる。
また、前記エポキシ化合物のエポキシ基は、前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して0.9〜2.5モルであり、好ましくは0.9〜2.2モル、より好ましくは1.0〜2.0モル、さらに好ましくは1.0〜1.2モルである。エポキシ基が0.9モル以上であれば、十分な耐熱性を有する樹脂が得られる。また、2.5モル以下であれば、十分な柔軟性を有する樹脂が得られる。
【0037】
前記エポキシ化合物は、好適なゲル状のネットワークを有する樹脂を得るため、多官能であり、かつ、構造がコンパクトであることが好ましい。このような観点から、分子量が2000未満であり、かつ、エポキシ当量が300g/eq未満であることが好ましい。分子量は、200〜2000であることがより好ましく、さらに好ましくは300〜1500である。
前記エポキシ樹脂としては、前記樹脂組成物中の他の反応物との相溶性や耐熱性等の観点から、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンやトリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルアミン型エポキシ基を有する化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
〔硬化触媒〕
前記硬化触媒は、前記反応生成物のブロックされているイソシアネート基の脱ブロック化を行い、イソシアネート多量化反応を促進するとともに、前記エポキシ化合物のエポキシ基と前記芳香族ヒドロキシ化合物のフェノール性水酸基との反応を促進するものである。
【0039】
前記硬化触媒としては、第四級アンモニウム塩が好適に用いられ、より好ましくはテトラアルキルアンモニウム塩が用いられる。具体的には、テトラメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、テトラエチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、エチルトリメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、トリエチルメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩、テトラメチルアンモニウムギ酸塩、テトラエチルアンモニウムギ酸塩、エチルトリメチルアンモニウムギ酸塩、トリエチルメチルアンモニウムギ酸塩、テトラメチルアンモニウムフェノール塩、テトラエチルアンモニウムフェノール塩、エチルトリメチルアンモニウムフェノール塩、トリエチルメチルアンモニウムフェノール塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、トリエチルメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩が特に好ましい。
前記硬化触媒の添加量は、前記ブロックウレタンプレポリマーと前記エポキシ化合物の合計量に対して、0.1〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.9質量%、さらに好ましくは0.3〜0.6質量%である。
【0040】
〔添加剤〕
前記樹脂組成物には、前記ブロックウレタンプレポリマー、前記エポキシ化合物及び前記硬化触媒以外に、前記熱伝導性接着シートに求められる特性に応じて、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤等の添加剤が添加されていてもよい。これらの添加剤は、前記樹脂組成物中の他の成分と相溶性を有しているものが好ましい。これらの各添加剤は、必要に応じて任意に添加されるものであり、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記難燃剤としては、例えば、ホスファゼン化合物、縮合リン酸エステル等が挙げられる。前記難燃剤の添加量は、前記ブロックウレタンプレポリマーと前記エポキシ化合物の合計量に対して、1.0〜40.0質量%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜35.0質量%、さらに好ましくは3.0〜30.0質量%である。
前記可塑剤としては、例えば、キシレン系樹脂、流動パラフィン、エステル系等の可塑剤が挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系等の酸化防止剤が挙げられる。
前記可塑剤や前記酸化防止剤等の各添加量は、前記ブロックウレタンプレポリマーと前記エポキシ化合物の合計量に対して、0.5〜10.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.7〜8.0質量%、さらに好ましくは0.8〜5.0質量%である。
【0042】
〔溶剤〕
前記樹脂組成物は、適度な粘度で均一な状態で混合されるようにするため、溶剤を任意に含んでいてもよい。前記溶剤は、前記熱伝導性接着シートからの発生ガスによる接着性低下を抑制する観点から、前記樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させる際に揮発するものであることが好ましい。
前記溶剤としては、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記溶剤は、前記樹脂組成物中の含有量が、30.0〜70.0質量%であることが好ましく、より好ましくは35.0〜60.0質量%、さらに好ましくは40.0〜60.0質量%である。
【0043】
〔樹脂組成物の製造方法〕
前記樹脂組成物は、その製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、以下の工程(1−1)〜(1−3)を経る製造方法により得ることができる。具体的には、前記脂肪族ジイソシアネート化合物と前記水添ポリブタジエンポリオールとを、ウレタン化触媒存在下で反応させて、末端にイソシアネート基を有する前記反応生成物を得る工程(1−1)と、前記反応生成物に前記芳香族ヒドロキシ化合物を添加し、前記イソシアネート基のブロック化反応を行い、前記ブロックウレタンプレポリマーを得る工程(1−2)と、前記ブロックウレタンプレポリマーに、少なくとも、前記エポキシ化合物及び前記硬化触媒を配合し、前記樹脂組成物を得る工程(1−3)とを経る製造方法である。
【0044】
<工程(1−1)>
まず、工程(1−1)では、前記脂肪族ジイソシアネート化合物と前記水添ポリブタジエンポリオールとを、ウレタン化触媒存在下で反応させて、末端にイソシアネート基を有する反応生成物を得る。
【0045】
工程(1−1)で得られる反応生成物は、前記脂肪族ジイソシアネート化合物のイソシアネート基と前記水添ポリブタジエンポリオールの両末端の水酸基とが、ウレタン結合を形成するウレタン化反応によって生じる。このようなウレタン化反応は、反応促進のため、ウレタン化触媒を用いて行うことが好ましい。
ウレタン化触媒を用いずにウレタン化反応を進行させるためには、100℃以上に加熱する必要があり、このような高温下では、前記脂肪族ジイソシアネート化合物が揮発しやすくなり、反応系が不均一になりやすく、好ましくない。
前記ウレタン化触媒は、特に限定されるものではないが、例えば、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、DBUが好適に用いられる。
前記ウレタン化触媒の添加量は、ウレタン化反応が十分に促進される量であればよく、前記脂肪族ジイソシアネート化合物、前記水添ポリブタジエンポリオール及び前記ウレタン化触媒の合計量に対して、0.01〜0.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量%、さらに好ましくは0.02〜0.1質量%である。
【0046】
<工程(1−2)>
工程(1−2)では、前記工程(1−1)で得られた反応生成物に前記芳香族ヒドロキシ化合物を添加し、イソシアネート基のブロック化反応を行い、前記ブロックウレタンプレポリマーを得る。
【0047】
前記芳香族ヒドロキシ化合物の添加量は、樹脂組成物の粘度の上昇抑制や、得られる前記樹脂の柔軟性等の観点から、該芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基が、前記脂肪族ジイソシアネート化合物のイソシアネート基1モルに対して0.8〜1.1モルとなる量であることが好ましく、より好ましくは0.8〜1.0モル、さらに好ましくは0.9〜1.0モルである。
【0048】
前記芳香族ヒドロキシ化合物によるブロック化反応は、粘度の上昇を伴う。また、芳香族ヒドロキシ化合物は、その融点以上で溶融した後、ブロック化反応を開始するが、そのような高温下では、可逆反応である脱ブロック化反応も生じるため、ブロック化反応を完結させることが困難である。
このため、前記ブロック化反応を効率的に完結させるためには、反応温度を80〜60℃、好ましくは70℃程度にまで低下させ、かつ、適宜、溶剤を用いて反応物を希釈して、反応系の粘度を低下させることが好ましい。
前記溶剤としては、反応物の溶解性等の観点から、例えば、トルエン、THF等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、揮発性や低吸湿性等の観点から、トルエンが好適に用いられる。
【0049】
また、前記樹脂組成物を用いて前記熱伝導性接着シートを製造する際、混合される無機フィラーの分散性及び充填性を確保するため、前記ブロックポリウレタンプレポリマーは、例えば、トルエン等の溶剤を用いて希釈した溶液として調製しておくことが好ましい。
このときの前記ブロックポリウレタンプレポリマー溶液の濃度は、前記熱伝導性接着シートを製造する際の前記無機フィラーの分散性及び充填性の確保や製造の効率化等の観点から、20.0〜60.0質量%であることが好ましく、より好ましくは30.0〜50.0質量%、さらに好ましくは35.0〜45.0質量%である。
【0050】
<工程(1−3)>
工程(1−3)では、前記工程(1−2)で得られたブロックウレタンプレポリマーに、少なくとも、前記エポキシ化合物及び前記硬化触媒を配合し、前記樹脂組成物を得る。前記エポキシ化合物及び前記硬化触媒は、均一に配合する観点から、前記ブロックポリウレタンプレポリマーの希釈に用いたものと同様の溶剤で希釈しておくことが好ましい。
【0051】
前記樹脂組成物は、前記ブロックウレタンプレポリマーに、前記エポキシ化合物及び前記硬化触媒を配合した後、均一に混合されたものであることが好ましい。
混合方法は、前記樹脂組成物中で配合成分を均一に溶解又は分散させることができれば、特に限定されるものではない。例えば、前記配合成分を密閉容器内に収容して容器ごと振とうして混合してもよく、また、容器内に収容した前記配合成分を撹拌羽根により撹拌して混合してもよい。
前記樹脂組成物には、前記ブロックウレタンプレポリマー、前記エポキシ化合物及び前記硬化触媒以外に、前記熱伝導性接着シート求められる特性に応じて、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤等の上述したような添加剤を添加してもよい。
【0052】
(フィラー)
フィラーは、無機フィラーを主成分とするものであり、前記熱伝導性接着シート中の該無機フィラーの含有量は、80.0〜94.0質量%であり、好ましくは85.0〜94.0質量%、より好ましくは90.0〜93.0質量%である。前記熱伝導性接着シートは、このように多量の無機フィラーを含むことにより、優れた熱伝導性を発揮することができ、また、多量の無機フィラーを含んでいても、クラック等を生じることはなく、十分な柔軟性や接着性を有している。
【0053】
前記無機フィラーとしては、電気絶縁性の観点から、例えば、マグネシア、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、結晶性シリカ等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、熱伝導性の観点からは、マグネシア、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムが好ましい。また、難燃性の観点からは、水酸化マグネシウムが好ましい。
【0054】
前記無機フィラーの形状は、熱伝導性接着シートの成形加工性を考慮して、主として球状であることが好ましい。前記成形加工性を損なわない範囲において、板状や破砕状のものを含んでいてもよい。具体的には、前記無機フィラー中、球状粒子が80.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは85.0質量%以上、さらに好ましくは90.0質量%以上である。
性能及びコストのバランスを勘案して、例えば、球状マグネシアと球状アルミナの併用や、球状マグネシアと粒径の異なる2種の球状アルミナとの併用等であることが好ましい。このような併用の際の各種形状及び材質の比率は、前記樹脂との親和性、樹脂組成物との混合時の分散流動性や粘度、さらに、熱伝導性接着シートの燃焼性等を考慮して、適宜定めることができる。
なお、ここで言う形状は、明確に定義されるものではないが、「球状」とは、真球度は問わず、丸みを帯びており、角を有していてもよいが、外観上、ほぼ球状と認識されるものであればよい。また、「板状」とは、球状に対して言うものであり、一般的に、扁平又は平面的であると認識されるものである。
【0055】
前記無機フィラーの粒径は、前記樹脂に対する分散性及び充填性、また、熱伝導性接着シートの柔軟性が損なわれない程度であることが好ましい。具体的には、平均粒径が0.1〜100μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜50μm、さらに好ましくは0.3〜30μmである。
本発明では、前記無機フィラーとしては、平均粒径が10μm超100μm以下の球状粒子(f1)、及び、平均粒径0.1μm以上10μm以下の球状粒子(f2)を含む混合物が用いられる。このとき、前記無機フィラー中の前記球状粒子(f1)の含有量は58.0〜80.0質量%であり、好ましくは60.0〜78.0質量%、より好ましくは65.0〜75.0質量%である。
なお、本発明における無機フィラーの平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置で求めた粒度分布における累積体積50%における粒径とする。
【0056】
前記無機フィラーは、前記樹脂との親和性を高める観点から、カップリング剤で表面処理しておくことが好ましい。前記カップリング剤としては、具体的には、アルミニウムキレート化合物が好適に用いられる。その中でも、特に、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
前記アルミニウムキレート化合物は、前記無機フィラーの合計量に対して0.1〜5.0質量%添加することが好ましく、より好ましくは0.3〜2.0質量%、さらに好ましくは0.5〜1.5質量%である。
前記表面処理は、例えば、トルエン等の溶剤中に、前記無機フィラー及び前記アルミニウムキレート化合物を分散させた後、前記溶剤を留去や乾燥等により除去することにより行うことができる。
【0057】
[熱伝導性接着シートの製造方法]
前記熱伝導性接着シートは、その製造方法は特に限定されるものではないが、本発明の製造方法により好適に製造することができる。
本発明の熱伝導性接着シートの製造方法は、前記樹脂組成物及び前記無機フィラーを含む混合物を調製する工程(2−1)と、前記混合物を成形して、シート成形体を作製する工程(2−2)と、前記シート成形体を150〜180℃で5〜60分間加熱して半硬化させることにより、前記熱伝導性接着シートを得る工程(2−3)とを経るものである。
このような製造方法によれば、前記シート成形体を半硬化状態とすることができ、Bステージシートである前記熱伝導性接着シートを容易に得ることができる。
【0058】
(工程(2−1))
工程(2−1)では、前記樹脂組成物及び前記無機フィラーを含む混合物を調製する。
前記混合物は、均一な混合物を得やすくするため、前記樹脂組成物の製造で用いられるのと同様の溶剤を含んでいてもよい。
【0059】
前記樹脂組成物と前記無機フィラーとの配合比は、得られる熱伝導性接着シートに求められる熱伝導性や柔軟性等に応じて適宜調整することができる。前記無機フィラーの配合量は、前記樹脂組成物と該無機フィラーとの合計100質量部に対して、80.0〜94.0質量部であることが好ましく、より好ましくは85.0〜93.0質量部、さらに好ましくは90.0〜93.0質量部である。
【0060】
前記樹脂組成物と前記無機フィラーとの混合方法は、特に限定されるものではない。前記樹脂組成物を溶剤で希釈して用いる場合には、例えば、前記無機フィラーとともに、自転公転ミキサー等の撹拌機や分散機等を用いて混合した後、前記溶剤を留去や乾燥等により除去することにより、前記混合物を得ることができる。また、溶剤を用いない場合には、バルク状態で、3本ロールミル等の混練機を用いて、前記樹脂組成物と前記無機フィラーとを配合することにより、前記混合物を得ることができる。
【0061】
(工程(2−2))
工程(2−2)では、前記工程(2−1)で得られた前記混合物を成形して、シート成形体を作製する。
前記シート成形体の作製は、具体的には、例えば、熱平プレス機等のプレス装置を用いて、前記混合物を捏和及び圧延することにより行うことができる。前記混合物が未硬化の状態を維持することができるように、120℃以下で行うことが好ましい。また、前記混合物が均一な状態となるように、加圧する圧力を変えながら、繰り返し行うことが好ましい。
前記圧延の際は、該圧延を行う前記プレス装置に対する前記シート成形体の接着を防止する観点から、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂フィルム等を離型フィルムとして用いて行うようにしてもよい。
なお、均一な熱伝導性接着シートを得るため、前記シート成形体は、後の工程(2−3)の前に、脱泡処理しておくことが好ましい。前記脱泡処理は、例えば、150℃未満の温度に加熱して、2〜10分間程度の短時間での真空脱泡により行うことが好ましい。
【0062】
(工程(2−3))
工程(2−3)では、前記シート成形体を150〜180℃で5〜60分間加熱して半硬化させることにより、前記熱伝導性接着シートを得る。
本工程において、加熱半硬化させることにより、Bステージシートである前記熱伝導性接着シートが得られる。半硬化の程度は、特に限定されるものではなく、得られる熱伝導性接着シートの取り扱いやすさを考慮して、上記の加熱温度及び加熱時間の範囲内で適宜調整することができる。
【0063】
前記加熱半硬化は、例えば、熱プレス機等により、前記シート成形体を加圧しながら行うことが好ましい。この際、前記熱プレス機等に対する前記シート成形体の接着を防止する観点から、前記圧延の場合と同様に、PTFE等のフッ素樹脂フィルム等を離型フィルムとして用いて行うようにしてもよい。加圧圧力は、得られる熱伝導性接着シートに求められる厚みや大きさ等に応じて、適宜設定される。通常は、0.01〜5MPa程度である。
【0064】
加熱温度は、前記シート成形体を、Cステージ化させることなく、半硬化状態とする観点から、150〜180℃であることが好ましく、より好ましくは155〜175℃、さらに好ましくは160〜175℃である。均一なBステージシートが得られるようにする観点から、段階的に昇温することが好ましい。
加熱時間は、得られる熱伝導性接着シートに求められる厚みや大きさ等に応じて、5〜60分間の範囲内で適宜設定することができる。
例えば、厚み300μmの熱伝導性接着シートを得る場合には、前記シート成形体を前記離型フィルムで挟んだ状態で、160〜175℃で10〜30分間加熱することが好ましい。さらに、前記熱伝導性接着シートは、加熱途中から、前記離型フィルムを剥がした状態とすることにより、前記溶剤等から生じるガスを揮発させやすくすることができる。このようにして加熱することは、使用時における発生ガスのない高品質の熱伝導性接着シートを得る観点から好ましい。
【0065】
[放熱構造体]
本発明の放熱構造体は、上記の本発明の熱伝導性接着シートを用いて構成され、前記熱伝導性接着シートの硬化体、前記硬化体の一方の表面に直接接合されている部材(M1)、及び前記硬化体の他方の表面に直接接合されている部材(M2)を有するものである。そして、前記部材(M1)及び前記部材(M2)の前記硬化体との各接合面は、少なくとも金属及び樹脂のいずれかを含むことが好ましい。
Bステージシートである前記熱伝導性接着シートは、さらに硬化反応が進行し、Cステージ化した状態で、前記部材(M1)及び前記部材(M2)との間に挟装されることにより、より強固に接着し、優れた熱伝導性及び電気絶縁性を発揮し得る前記放熱構造体を構成することができる。
前記熱伝導性接着シートは、前記硬化反応の進行において、前記部材(M1)及び前記部材(M2)との接着界面にガス溜まりを生じることがなく、このような発生ガスによる接着性の低下を招くことがないため、放熱経路を安定的に確保するために好適に用いることができる。
【0066】
前記部材(M1)及び前記部材(M2)における前記硬化体との各接合面の好ましい材質としては、金属、樹脂、カーボン等が挙げられる。前記接合面の少なくとも一部が、これらのうちから選ばれる材質であることが好ましく、金属及び樹脂から選ばれるいずれかを含むことがより好ましい。特に、前記部材(M1)及び前記部材(M2)のいずれか一方が、発熱性電子部品の構成部材である場合に、前記熱伝導性接着シートの優れた熱伝導性及び電気絶縁性を発揮させることができる。
前記発熱性電子部品としては、例えば、LED、CPU、パワー半導体等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、使用時の発熱温度が175℃以下である電子部品に適用される。
前記放熱構造体における放熱構造としては、例えば、パワー半導体等の封止樹脂とアルミニウムや銅等の金属フレームとの間、パワー半導体等の放熱板と放熱フィンとの間、パワー半導体等の封止樹脂と放熱フィンとの間、パワー半導体等の金属基板(メッキも含む)と放熱フィンとの間等において、放熱経路を形成するための構造が挙げられる。
【0067】
[放熱構造体の製造方法]
前記放熱構造体は、その製造方法は特に限定されるものではないが、以下に示す本発明の製造方法により好適に製造することができる。
本発明の製造方法は、前記部材(M1)と前記部材(M2)とで前記熱伝導性接着シートを挟装した構造前駆体を作製する工程(3−1)と、前記構造前駆体の前記熱伝導性接着シートを220〜260℃で硬化させて、前記熱伝導性接着シートの硬化体と、前記部材(M1)及び前記部材(M2)とが接合された放熱構造体を得る工程(3−2)を経るものである。
【0068】
(工程(3−1))
工程(3−1)では、前記部材(M1)と前記部材(M2)とで前記熱伝導性接着シートを挟装して、構造前駆体を作製する。
前記熱伝導性接着シートは、適度な接着力を有しているため、前記部材(M1)と前記部材(M2)とを位置固定することができる。また、前記熱伝導性接着シートは、柔軟性に優れ、適度な接着性を有しており、容易に貼り直すことが可能であるため、該熱伝導性接着シートの配置位置を誤った場合であっても、貼り直して位置調整することができる。このように、前記熱伝導性接着シートは取り扱いやすいものであり、これを用いることにより、前記構造前駆体を簡便に作製することができる。
【0069】
(工程(3−2))
工程(3−2)では、前記工程(3−1)で得られた構造前駆体の前記熱伝導性接着シートを220〜260℃で硬化させて、前記熱伝導性接着シートの硬化体と、前記部材(M1)及び前記部材(M2)とが接合された放熱構造体を得る。
前記熱伝導性接着シートを上記のように高温加熱することにより、1〜10分間程度でCステージ化させることができ、前記部材(M1)、前記熱伝導性接着シートの硬化体、及び前記部材(M2)が、強固に接合された放熱構造体を得ることができる。また、本工程では、BステージシートをCステージ化させるため、熱伝導性の樹脂組成物を塗布して硬化させる場合よりも、短時間で加熱硬化させることができ、また、安定した形態で放熱構造体を製造することができる。
【0070】
加熱温度は、上記のように短時間で効率的にCステージ化させる観点から、また、前記硬化体の劣化を考慮して、220〜260℃であることが好ましく、より好ましくは230〜260℃、さらに好ましくは240〜260℃である。
なお、前記熱伝導性接着シートを短時間でCステージ化させることは必要でない場合、80〜175℃程度での加熱により、時間をかけて硬化させて、硬化の進行に伴い、接着力を徐々に高めるようにしてもよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0072】
[ブロックウレタンプレポリマー(P)の製造]
下記のブロックウレタンプレポリマーの製造例で使用した原料を以下に示す。
<脂肪族ジイソシアネート化合物>
・ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);「デスモジュール(登録商標) H」、住化コベストロウレタン株式会社製
<水添ポリブタジエンポリオール>
・「GI−3000」、日本曹達株式会社製、分子量3753、水酸基価29.9KOHmg/g
<芳香族ヒドロキシ化合物>
・レゾルシノール;試薬特級;和光純薬株式会社製
・ビスフェノールF;「レヂトップBPF−SG」、群栄化学工業株式会社製
<ウレタン化触媒>
・1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、サンアプロ株式会社製
<溶剤>
トルエン;試薬特級、和光純薬株式会社製
【0073】
(P製造例1)
300mlセパラブルフラスコに、脂肪族ジイソシアネート化合物2.56g(水添ポリブタジエンポリオール1モルに対して1.6モル)、及び水添ポリブタジエンポリオール35.74gを入れ、撹拌羽根、撹拌モーター、ジムロート冷却管、及び窒素導入管を取り付けた。フラスコ内を流量200ml/分で窒素パージし、該フラスコを75℃のオイルバスに浸漬して30rpmにて5分間撹拌した後、回転数を150rpmに上げて5分間撹拌し、前記フラスコ内の内容物を均一に混合した。
ウレタン化触媒0.02gを添加して3時間反応させ、反応生成物について赤外線吸収(IR)スペクトルを測定し、水酸基に由来する3300cm-1のシグナルが消失していることを確認した。
前記オイルバスを125℃に昇温して前記フラスコを十分に加熱した後、レゾルシノール1.68gを投入した。400rpmにて3分間撹拌した後、オイルバスを110℃に降温して50rpmにて撹拌した。前記フラスコ内の内容物が110℃になった時点で、脱水トルエン(モレキュラーシーブ4Aで脱水処理)22.90gを加え、撹拌速度を徐々に上げて150rpmで固定し、オイルバスを70℃に降温して3時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトルにて、イソシアネート基由来の2270cm-1のシグナルが消失していることを確認した。
得られた反応生成物を、室温(25℃)まで放冷後、トルエン37.10gを加えて撹拌混合し、ブロックウレタンプレポリマー溶液(P1)(濃度(計算値)40.0質量%)を得た。
【0074】
(P製造例2)
300mlセパラブルフラスコに、脂肪族ジイソシアネート化合物2.53g(水添ポリブタジエンポリオール1モルに対して1.6モル)、及び水添ポリブタジエンポリオール35.25gを入れ、撹拌羽根、撹拌モーター、ジムロート冷却管、及び窒素導入管を取り付けた。フラスコ内を流量200ml/分で窒素パージし、該フラスコを75℃のオイルバスに浸漬して30rpmにて5分間撹拌した後、回転数を150rpmに上げて5分間撹拌し、前記フラスコ内の内容物を均一に混合した。
ウレタン化触媒0.02gを添加して3時間反応させ、反応生成物について赤外線吸収(IR)スペクトルを測定し、水酸基に由来する3300cm-1のシグナルが消失していることを確認した。
前記オイルバスを125℃に昇温して前記フラスコを十分に加熱した後、ビスフェノールF3.01gを投入した。400rpmにて3分間撹拌した後、オイルバスを110℃に降温して50rpmにて撹拌した。前記フラスコ内の内容物が110℃になった時点で、脱水トルエン(モレキュラーシーブ4Aで脱水処理)22.59gを加え、撹拌速度を徐々に上げて150rpmで固定し、オイルバスを70℃に降温して3時間反応させた。反応生成物について、IRスペクトルにて、イソシアネート基由来の2270cm-1のシグナルが消失していることを確認した。
得られた反応生成物を、室温(25℃)まで放冷後、トルエン36.60gを加えて撹拌混合し、ブロックウレタンプレポリマー溶液(P2)(濃度(計算値)40.8質量%)を得た。
【0075】
[樹脂組成物(R)の製造]
下記の樹脂組成物の製造例で使用した原料を以下に示す。
<ブロックウレタンプレポリマー>
(P1)上記P製造例1で製造したブロックウレタンプレポリマー溶液
(P2)上記P製造例2で製造したブロックウレタンプレポリマー溶液
<エポキシ化合物>
(E1)4官能アミン型エポキシ樹脂(4官能ポリグリシジルアミン:テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン);「エポトート(登録商標) YH−434L」、新日鉄住金化学株式会社製、エポキシ当量118.1g/eq、濃度50.5質量%トルエン溶液として調製
(E2)ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;「EPICLON(登録商標) HP−7200L」、DIC株式会社製、エポキシ当量247g/eq、エポキシ基約6個、濃度50.5質量%トルエン溶液として調製
<硬化触媒>
・トリエチルメチルアンモニウム2−エチルヘキサン酸塩;「U−CAT(登録商標) 18X」、サンアプロ株式会社製、濃度10.0質量%トルエン溶液として調製
<添加剤>
・酸化防止剤:3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ピロピオニロキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン;「スミライザー(登録商標) GA−80」、住友化学株式会社製
・難燃剤:ホスファゼン系難燃剤;「SPB−100」、大塚化学株式会社製
<溶剤>
・トルエン;試薬特級、和光純薬株式会社製
【0076】
(R製造例1)
250mlポリエチレン製広口瓶に、ブロックウレタンプレポリマー溶液(P1)80.07g、エポキシ化合物(溶液)(E1)3.86g及びエポキシ化合物(溶液)(E2)3.86g((E1)及び(E2)の合計エポキシ基が前記芳香族ヒドロキシ化合物の水酸基1モルに対して1.0モル、エポキシ当量(計算値)159.8g/eq)、硬化触媒(溶液)1.08g、並びに、添加剤として、酸化防止剤0.35g、及び難燃剤10.78gを入れ、振とうして混合し、樹脂組成物溶液(R1)(濃度47.16質量%(計算値))を得た。
【0077】
(R製造例2〜4)
R製造例1において、下記表1のR製造例2〜4に示す原料配合組成に変更し、それ以外はR製造例1と同様にして、樹脂組成物溶液(R2)〜(R4)を得た。
なお、下記表1において、エポキシ化合物のエポキシ基の数は、エポキシ当量に基づく計算値で示す。
【0078】
【表1】
【0079】
[フィラー(F)の調製]
下記のフィラーの調製例で使用した原料を以下に示す。
<無機フィラー>
・球状マグネシア;平均粒径20μm
・球状アルミナ;平均粒径2.8μm
・球状アルミナ;平均粒径0.5μm
・板状水酸化マグネシウム;平均粒径1.6μm
<カップリング剤>
・アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート
<着色剤>
・カーボンブラック;平均粒径48nm
<溶剤>
・トルエン;試薬特級、和光純薬株式会社製
【0080】
(F調製例1)
100mlポリエチレン製広口瓶に、球状マグネシア52.60g、球状アルミナ(平均粒径2.8μm)18.24g、球状アルミナ(平均粒径0.5μm)0.77g、及び板状水酸化マグネシウム4.58g、及び着色剤0.08gを入れ、振とうして混合した。
これに、カップリング剤0.87g、及び溶剤22.86gを添加し、振とうして混合した。
その後、自転公転ミキサーを用いて、2000rpmで2分間撹拌し、次いで、超音波洗浄機にて30分間分散処理し、再び、自転公転ミキサーにて2000rpmで2分間撹拌した。そして、得られた混合物を60℃で温風乾燥し、さらに、70℃で5時間真空乾燥して、フィラー(F1)を得た。
【0081】
(F調製例2及び3)
F調製例1において、下記表2のF調製例2及び3に示す原料配合組成に変更し、それ以外はF調製例1と同様にして、フィラー(F2)及び(F3)を得た。
【0082】
【表2】
【0083】
[熱伝導性接着シートの製造]
(実施例1)
50mlスクリュー管瓶に、フィラー(F1)18.80g、及び樹脂組成物溶液(R1)3.00gを入れ、自転公転ミキサーを用いて、2000rpmで2分間撹拌し、次いで、超音波洗浄機にて30分間分散処理し、再び、自転公転ミキサーにて2000rpmで2分間撹拌混合した。得られた混合物をステンレス製バットに取り出し、バットを90℃のホットプレートに載せて30分間加熱した後、90℃で30分間真空乾燥し、溶剤を揮発させて除去した。
この混合物の約10gを、厚み200μmのPTFEシートの間に挟み込み、上下のPTFEシートの外面から、110℃の熱平プレス機を用いて加圧を繰り返すことにより、捏和し、圧延した。前記捏和及び前記圧延は、初回軸力を10kNとし、その後、軸力を5kNずつ高くして加圧し、1回毎に折り畳みながら計10回、さらに、軸力を60kNに固定して加圧し、1回毎に折り畳みながら計10回行った。
再度折り畳んで、厚み350μmのシム2枚をPTFEシートに挟み込んで成形し、最終厚みが約350μm、径が約110mmの円板状のシート成形体を得た。そして、このシート成形体の上面側のPTFEシートを剥ぎ取り、140℃で3分間真空脱泡を行った。
脱泡したシート成形体、及び厚み300μmのシム2枚を、厚み50μmのPTFEシートの間に挟み込み、小型圧縮成形機にて、175℃で、1.2kNで30秒間、5kNで2分間、10kNで12分30秒間、さらに、1.2kNで15分間加圧加熱し、径が約120mmの円板状の熱伝導性接着シートを作製した。
【0084】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
実施例1において、下記表3の実施例2〜4及び比較例1〜3のそれぞれに示す原料配合組成に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、熱伝導性接着シートを作製した。
【0085】
[測定評価]
上記実施例及び比較例で得られた各熱伝導性接着シート(シート試料)について、以下の各種測定評価を行った。これらの評価結果を下記表3にまとめて示す。なお、表3における「−」の表記は、測定未実施であることを示している。
【0086】
(厚み)
デジタルシックネスゲージ(「SMD−540S2」、株式会社テクロック製)にて、シート試料の任意の5箇所で厚みを測定し、これらの平均値を厚みとした。
厚みが100〜500μmであれば、熱伝導性接着シートとしての取り扱い性等に優れていると言える。
【0087】
(硬さ)
シート試料を厚みが20mm以上(約20mm)となるように積層したサンプルについて、アスカーC型デュロメーター(「アスカーゴム硬度計C型」、高分子計器株式会社製)を用いて、シート試料の硬さを測定した。
硬さは、熱伝導性接着シートの柔軟性の指標となる。JIS K 7312:1996の硬さ試験タイプCに準拠して測定した硬さの値が大きい方が硬いことを示しており、95以下であれば、熱伝導性接着シートとして十分な柔軟性を有していると言える。
【0088】
(熱伝導率)
熱伝導率は、密度、比熱及び熱拡散率の積で表される。したがって、シート試料の密度、比熱及び熱拡散率を測定することにより、熱伝導率を算出して求めた。
熱伝導率が3.0W/(m・K)以上であれば、十分な熱伝導性が得られると言える。
密度、比熱及び熱拡散率は、それぞれ、以下に示す方法により測定した。
【0089】
〔密度〕
直径9mmの彫刻刃付きポンチを用いてシート試料を打ち抜き、重量、及び厚みを上記と同様にして測定し、密度を算出した。
【0090】
〔比熱〕
示差走査熱量計(DSC;「Thermo Plus DSC8230」、株式会社リガク製)を用いて、α−アルミナを標準物質として測定した。
【0091】
〔熱拡散率〕
温度波熱分析法にて評価した。測定条件は、以下のとおりである。
測定装置:「アイフェイズモバイル 1u」、株式会社アイフェイズ製
試料サイズ:10mm×10mm
測定モード:オート測定
測定温度:23℃
【0092】
(電気絶縁性)
耐電圧測定により、シート試料の電気絶縁性を評価した。
150mm×200mm、厚さ2mmのアルミニウム板上にシート試料を載せ、10mm角のアルミニウム角棒を対極として、耐電圧測定装置(「TOS9201」、菊水電子工業株式会社製)を用いて、AC50Hz、電圧0〜5kVで掃引し、電流閾値上限1mAにおける絶縁破壊の有無を確認した。
評価基準は、以下のとおりである。
○:絶縁破壊なし
×:絶縁破壊あり
【0093】
(接着性)
シート試料(Bステージート)のタック力の値tBを、下記に示す方法により測定した。
熱伝導性接着シート(Bステージシート)のタック力は、該熱伝導性接着シートが、被接着物との間で、取り扱い性及びリワーク性に優れた接着性を有しているか否かの指標となる。
【0094】
以下、図1に示す概略断面図を参照して、具体的な測定方法の手順を説明する。
(1)25℃にて、表面が平坦な机の上に、150mm×150mm×厚み3mmのアルミニウム板1を水平に置き、該アルミニウム板1の面(RzJIS:6.40μm)の上に、30mm×30mm×厚さ0.3mmのシート試料2を載置した。シート試料2の上にPTFEシートを載せ、該PTFEシートの上からシート試料2の全面を約250N以上でアルミニウム板1に押しつけて、シート試料2をアルミニウム板1上に貼着させて固定した。
(2)15mm×15mm×15mmのアルミニウム製ブロック3(シート試料2と接触する底面のRzJIS:9.27μm)の1対の対向する側面の中央部に直径3mmの貫通孔を設けた。前記貫通孔に、直径約0.6mm、長さ120mmの針金4を2本束ねて通し、ブロック3の上方で撚り合わせた。
(3)アルミニウム製ブロック3をシート試料2上に載置し、アルミニウム製ブロック3の上面をメカニカルフォースゲージ(「FB−50N」、株式会社イマダ製)(図示せず)で、5秒間につき5Nずつ荷重を増加させながら鉛直方向に押しつけて(図中下向き矢印)、50Nに達した時点で10秒間保持した。
(4)アルミニウム板1を手で固定し、針金4にメカニカルフォースゲージのフックを引っ掛けて、5秒間につき約5Nずつ引っ張り荷重を増加させながら鉛直方向に引き上げた(図中上向き矢印)。
(5)アルミニウム板1とアルミニウム製ブロック3とが剥離された際の引っ張り荷重を測定し、その最大値をタック力とした。本評価においては、測定回数5回の平均値を求めた。
【0095】
また、上記測定方法の(1)〜(3)を順次行った後、設定温度240℃の乾燥器内に入れた。240℃に達してから3分間(乾燥機に入れてから約7分間)加熱した。取り出した後、室温(25℃)まで放冷し、シート試料の硬化体を作製した。
このアルミニウム製ブロック付きのシート試料の硬化体について、上記測定方法(4)及び(5)と同様にして、シート試料の硬化体(Cステージシート)のタック力の値tCを測定した。
そして、tC/tBの値を求めた。tC/tBの値が1.5以上であれば、BステージシートをCステージ化することにより、タック力が十分に増大し、熱伝導性接着シートとして、より優れているものであると言える。
【0096】
【表3】
【0097】
表3に示した結果から分かるように、実施例1〜4の各熱伝導性接着シートは、熱伝導性、電気絶縁性及び接着性に優れたものであることが認められた。
一方、無機フィラー中の平均粒径が10μm超100μm以下の球状粒子(f1)が多すぎる場合(比較例3)は、シート成形を行うことが困難であった。また、無機フィラーの含有量が多すぎる場合(比較例1)、及び前記球状粒子(f1)が少なすぎる場合(比較例2)は、十分に延伸させて薄くしたシートを成形することが困難であり、シート辺縁部にクラックが生じ、測定限界を超える硬さであり、硬さの測定が困難であった。亀裂を生じていることにより、電気絶縁性も不十分であり、熱伝導率及び接着性の評価は行わなかった。
【符号の説明】
【0098】
1 アルミニウム板
2 シート試料(熱伝導性接着シート)
3 アルミニウム製ブロック
4 針金
【要約】
【課題】電子機器等における放熱構造において、熱伝導性、電気絶縁性及び接着性に優れ、放熱経路を確実に確保することができ、しかも、形成工程を簡便化することができる熱伝導性接着シート及びその製造方法、並びに、前記熱伝導性接着シートを用いた放熱構造体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】所定の樹脂及び所定の無機フィラーを含み、Bステージシートであり、前記樹脂が、ブロックウレタンプレポリマー、エポキシ化合物及び硬化触媒を含む樹脂組成物からなる、熱伝導性接着シートを用いて、放熱構造体を形成する。
【選択図】なし
図1