(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記の化学式(1)で示されるノニオン界面活性剤(E)をさらに含み、処理剤の不揮発分に占める前記成分(E)の重量割合が3〜20重量%である、請求項1〜3のいずれかに記載の短繊維用繊維処理剤。
R1−A−(TO)m−H (1)
(但し、式中、R1は炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基である。Aは、酸素原子又はカルボキシレート基であり、Tは炭素数2〜4のアルキレン基であり、mは2〜15の整数である。)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維処理剤は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)を特定の比率で含有する。以下、各成分について説明する。
【0011】
[成分(A)]
成分(A)は、炭素数14〜22のアルキル基を有するアルキルホスフェート塩及び/又は炭素数14〜22のアルキル基を有するポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩である。成分(A)は、繊維処理剤に撥水性を低下させずに制電性を付与する成分であるが、繊維を変色させ易い成分でもある。変色させ易い原因は定かではないが、成分(A)は、中和度にもよるが一般的にpHが高くアルカリ性であることから、繊維に内添されている酸化防止剤の構造を変化させ繊維を変色させると推定している。
後述する成分(B)と後述する成分(C)と併用することで、制電性に優れると同時に変色防止の役割を果たす。
成分(A)が成分(B)及び成分(C)と併用することで変色防止に効果がある理由は定かではないが、アルキルホスフェート塩のアルキル基が繊維に吸着する前にシリコーン成分及びエステル成分が繊維に吸着するため、アルキルホスフェート塩による繊維の変色が妨げられるものと推定している。
アルキルホスフェート塩またはポリオキシアルキレンアルキルホスフェート塩を構成するアルキル基の炭素数が14未満の場合、撥水性が劣る。一方、該アルキル基の炭素数が22超の場合、難水溶性となり溶液安定性が低下してスカム発生の原因となる。該アルキル基の炭素数は、15〜20が好ましく、15〜18がより好ましく、16〜18がさらに好ましい。
【0012】
アルキルホスフェート塩を構成する塩としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属塩、アミン塩又はアンモニウム塩等が挙げられ、制電性を付与する観点から、中でもアルカリ金属塩が好ましい。アルキルホスフェート塩を構成する塩は、1種又は2種以上から構成されてもよい。
アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、中でもカリウム塩が好ましい。
【0013】
炭素数14〜22のアルキル基を有するアルキルホスフェート塩及び/又は炭素数14〜22のアルキル基を有するポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩の具体例としては、例えば、ミリスチルホスフェートカリウム塩、セチルホスフェートカリウム塩、ステアリルホスフェートカリウム塩、イソステアリルホスフェートカリウム塩、ベヘニルホスフェートカリウム塩、ミリスチルホスフェートナトリウム塩、セチルホスフェートナトリウム塩、ステアリルホスフェートナトリウム塩、イソステアリルホスフェートナトリウム塩、ベヘニルホスフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加ミリスチルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加セチルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加ステアリルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加イソステアリルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加ベヘニルホスフェートカリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加ミリスチルホスフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加セチルホスフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加ステアリルホスフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレン3モル付加イソステアリルホスフェートナトリウム塩、ポリオキシエチレン6モル付加ベヘニルホスフェートナトリウム塩等が挙げられ、中でも、セチルホスフェートカリウム塩、セチルホスフェートナトリウム塩、ステアリルホスフェートカリウム塩、ステアリルホスフェートナトリウム塩、が好ましい。これらのアルキルホスフェート塩は、1種又は2種以上を使用してもよい。ここで記載しているホスフェート塩とはモノエステル体、ジエステル体、ポリエステル体のいずれでも良く、これらの混合物でも良い。
【0014】
[成分(B)]
成分(B)は、炭素数6〜22の炭化水素基を有するアルコールと炭素数6〜22の炭化水素基を有する脂肪酸とのエステル化合物である。成分(B)は、撥水性を付与する。前記成分(A)及び後述する成分(C)と併用することで変色防止の役割を果たす。変色防止する原因は定かではないが、成分(B)は繊維との馴染みが良く、繊維内部に浸透して酸化防止剤を保護していると推定している。また成分(B)は水に溶解しないが、成分(A)と併用使用される事で、水に分散させる事ができる。成分(E)と併用されるとより水への分散が良くなる。
炭素数6〜22の炭化水素基を有するアルコールとしては、ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノール、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
炭素数6〜22の炭化水素基を有する脂肪酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、イコサン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
前記成分(B)の融点が高くなると水に分散しにくくなり、溶液安定性が低下するのでスカムが増加する傾向にある。前記成分(B)の融点は、撥水性とスカム低減の両立の観点から、20℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましく、10℃以下がさらに好ましい。20℃超では、固体性が高くなり、溶液安定性が著しく悪くなり製綿時のスカム発生が多くなる。溶液安定性を良くするために乳化剤を使用すると乳化剤の影響により撥水性が低下することがある。前記成分(B)の融点の好ましい下限値は、撥水性とスカム低減の両立の観点から、−20℃である。
なお、本発明における融点は、次のように測定した。両端開管の毛細管(内径1mm、外径2mm以下、長さ50〜80mm)に測定試料を約10mmの高さまで採取する。これをBUCHI製融点測定装置M−565へセットし、融点以下の温度より1℃/分で昇温する。測定試料が溶融し、透明になった温度を融点とする。
【0015】
[成分(C)]
成分(C)は、シリコーン化合物である。成分(C)は、主に撥水性に優れる成分である。
シリコーン化合物としては、ジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、エステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、アミド変性シリコーン、イミド変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、カルボキシアミド変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、メタクリル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、及び上記変性シリコーンの変性シロキサン単位の2種以上を併用して製造される変性シリコーン(例えば、アミノ・ポリエーテル変性シリコーン等)等が挙げられる。中でもジメチルシリコーンが好ましい。
【0016】
成分(C)は撥水性に優れる成分であるが、成分(C)は、製綿ラインの金属部やゴム部に付着し堆積してスカムになり易い。成分(C)は、成分(A)、成分(B)と併用されることで金属やゴム部への付着性が弱くなり、スカム発生を抑制することができる。
【0017】
成分(C)の動粘度(mm
2/S)については、特に限定はされないが、スカム発生を抑制の観点から、1〜10000mm
2/Sが好ましく、10〜5000mm
2/Sがより好ましく、50〜1000mm
2/Sが特に好ましい。
【0018】
[成分(D)]
本発明の繊維処理剤は、成分(D)をさらに含むと、制電性が優れるため、好ましい。成分(D)は、撥水性を低下させる成分であるが、成分(A)と併用使用されることで撥水性を低下せずに制電性を付与できる。撥水性が低下しない原因は定かではないが、成分(A)と成分(D)が金属錯体を形成することで、成分(D)の水への浸透力が抑制されると推定している。
【0019】
成分(D)は、炭素数6〜10のアルキル基を有するアルキルホスフェート塩及び/又は炭素数6〜10のアルキル基を有するポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩である。
炭素数6〜10のアルキル基を有するアルキルホスフェート塩及び/又は炭素数6〜10のアルキル基を有するポリオキシアルキレン基含有アルキルホスフェート塩の具体例としては、例えば、ヘキシルホスフェートカリウム塩、ヘキシルホスフェートナトリウム塩、2−エチルヘキシルホスフェートカリウム塩、2−エチルヘキシルホスフェートナトリウム塩、オクチルホスフェートカリウム塩、オクチルホスフェートナトリウム塩、デシルホスフェートカリウム塩、デシルホスフェートナトリウム塩、オクチルホスフェートアンモニウム塩、ポリオキシエチレン8モル付加オクチルホスフェートカリウム塩などが挙がられ、中でも、オクチルホスフェートカリウム塩、オクチルホスフェートナトリウム塩、デシルホスフェートカリウム塩、デシルホスフェートナトリウム塩、が好ましい。これらのアルキルホスフェート塩は、1種又は2種以上を使用してもよい。ここで記載しているホスフェート塩とはモノエステル体、ジエステル体、ポリエステル体のいずれでも良く、これらの混合物でも良い。
【0020】
[ノニオン界面活性剤(E)]
本発明の繊維処理剤は、ノニオン界面活性剤(E)を含むと、処理剤の溶液安定性が良くなるためスカム低減効果があり、好ましい。
ノニオン界面活性剤(E)は、上記化学式(1)で示される化合物である。
式中、R
1は炭素数8〜22の脂肪族炭化水素基である。R
1の炭素数は、8〜20が好ましく、9〜19がより好ましく、10〜18がさらに好ましい。8未満では、撥水性又は乳化性が不足することがあり、22超では、乳化力が不足することがある。
(TO)
mとしては、炭素数が2〜4であり、オキシエチレン基を含有することが、製綿時のスカム発生が少ないため、好ましい。
(TO)
mとしては、ブロック体でもよく、ランダム体でもよい。また、(TO)
mに占めるオキシエチレン基の割合が20〜100モル%が好ましく、60〜100モル%がより好ましい。
mは1〜15の整数であり、2〜13が好ましく、3〜10がより好ましく、4〜8がさらに好ましい。1未満では、乳化性が不足することがあり、15超では、撥水性を低下させることがある。
【0021】
[短繊維用繊維処理剤]
本発明の短繊維用繊維処理剤は、上記成分(A)、上記成分(B)及び上記成分(C)を必須に含有する繊維処理剤である。
前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(A)の重量割合が10〜60重量%であり、15〜55重量%がより好ましく、20〜50重量%がさらに好ましく、25〜45重量%が特に好ましい。10重量%未満では制電性が不足し、60重量%超では変色防止性が不足する。
前記処理剤の不揮発分に占める成分(B)の重量割合が20〜60重量%であり、25〜55重量%がより好ましく、26〜50重量%がさらに好ましく、30〜45重量%が特に好ましい。20重量%未満では撥水性と変色防止性が不足し、60重量%超では制電性が不足し、溶液安定性が著しく低下しスカムが発生する。
前記処理剤の不揮発分に占める成分(C)の重量割合が5〜40重量%であり、5〜35重量%がより好ましく、5〜30重量%がさらに好ましく、5〜25重量%が特に好ましい。5重量%未満では撥水性が不足し、40重量%超ではスカムが増加する。
処理剤の不揮発分に占める前記成分(A)、前記成分(B)及び前記成分(C)の合計は50重量%超が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましい。
上限値は、100重量%が好ましく、95重量%がより好ましく、90重量%がさらに好ましい。
【0022】
前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(A)の重量割合が前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(C)の重量割合よりも多いと、制電性が向上し、スカムが低減するため、好ましい。
【0023】
上記成分(D)をさらに含む場合には、前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(D)の重量割合は、3〜10重量%が好ましく、4〜9重量%がより好ましく、4.5〜8重量%がさらに好ましく、4〜7重量%が特に好ましい。3重量%未満では制電性が不足することがあり、10重量%超では撥水性が不足することがある。
【0024】
上記成分(E)をさらに含む場合には、前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(D)の重量割合は、3〜20重量%が好ましく、5〜19重量%がより好ましく、6〜18重量%がさらに好ましく、7〜15重量%が特に好ましい。3重量%未満では乳化性が悪くなりスカムが増加することがあり、20重量%超では撥水性が不足することがある。
【0025】
本発明の短繊維用繊維処理剤は、良好なカード通過性により、不織布作製時の地合いに優れるため、特に不織布製造用合成繊維に用いられると好ましい。
本発明の短繊維用繊維処理剤は、効果的に撥水性が付与されるという観点から、ポリオレフィン系繊維(ポリオレフィン繊維やポリオレフィン繊維を含む複合繊維)、ポリエステル系繊維(ポリエステル繊維やポリエステル繊維を含む複合繊維)等の不織布製造用合成繊維に本発明の繊維処理剤は好適である。
【0026】
本発明の短繊維用繊維処理剤は、必要に応じて水および/または溶剤を含有していてもよく、水を必須に含有することが好ましい。本発明に使用する水としては、純水、蒸留水、精製水、軟水、イオン交換水、水道水等のいずれであってもよい。短繊維用繊維処理剤を製造する際の短繊維用繊維処理剤全体に占める不揮発分の重量割合は、10〜60重量%が好ましく、15〜50重量%が特に好ましい。
【0027】
また、本発明の短繊維用繊維処理剤には、必要に応じて、抗菌剤、酸化防止剤、防腐剤、艶消し剤、顔料、防錆剤、芳香剤、消泡剤等がさらに含まれていてもよい。
【0028】
〔短繊維用繊維処理剤の製造方法〕
本発明の短繊維用繊維処理剤の製造方法としては、公知の方法を採用できる。例えば、成分(B)と成分(C)と必要に応じて成分(E)を配合し約60℃の温度で撹伴する。次に、成分(A)と必要に応じて成分(D)の水溶液を配合して約70℃の温度で均一に攪拌する。次いで、攪拌しながら所定量の水を注入し希釈すると10〜60重量%の短繊維用繊維処理剤が得ることができる。成分(C)は事前に少量の界面活性剤で乳化物状態にしてから配合しても良い。
【0029】
〔撥水性繊維〕
本発明の撥水性繊維は、不織布製造用合成繊維(繊維本体)とこれに付着した上記短繊維用繊維処理剤とから構成される撥水性繊維であり、一般的には所定の長さに切断した短繊維である。短繊維用繊維処理剤の不揮発分の付着率は、前記撥水性繊維に対して0.1〜2重量%が好ましく、0.3〜1重量%がさらに好ましい。撥水性繊維に対する短繊維用繊維処理剤の不揮発分の付着率が0.1重量%未満では、繊維をカード処理する時に制電制が低下することがある。一方、短繊維用繊維処理剤の不揮発分の付着率が2重量%を超えると、繊維をカード処理する時に巻付きが多くなって生産性が大幅に低下したり、不織布等のベトツキが大きくなることがある。
【0030】
不織布製造用合成繊維(繊維本体)としては、たとえば、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、塩ビ繊維、2種類以上の熱可塑性樹脂からなる複合繊維等であり、複合繊維の組み合わせとしては、ポリオレフィン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂の場合、例えば、高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、直鎖状高密度ポリエチレン/ポリプロピレン、低密度ポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの二元共重合体または三元共重合体/ポリプロピレン、直鎖状高密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン等が挙げられる。また、ポリオレフィン系樹脂/ポリエステル系樹脂の場合、例えば、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、直鎖状高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、低密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂/ポリエステル系樹脂の場合、例えば、共重合ポリエステル/ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。さらにポリアミド系樹脂/ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂/ポリアミド系樹脂等からなる繊維も例示することができる。これら不織布製造用合成繊維(繊維本体)のなかでも、柔らかな肌触りが好まれる理由から、不織布製造用ポリオレフィン系繊維(ポリオレフィン繊維やポリオレフィン繊維を含む複合繊維)、不織布製造用ポリエステル系繊維(ポリエステル繊維やポリエステル繊維を含む複合繊維)等の疎水性合成繊維に本発明の短繊維用繊維処理剤は好適であり、さらには不織布製造用ポリオレフィン系繊維に本発明の短繊維用繊維処理剤は好適である。
【0031】
繊維の断面構造は鞘芯型、並列型、偏心鞘芯型、多層型、放射型あるいは海島型が例示できるが、繊維製造工程での生産性や、不織布加工の容易さから、偏心を含む鞘芯型または並列型が好ましい。また、断面形状は円形または異形形状とすることができる。異形形状の場合、例えば扁平型、三角形〜八角形等の多角型、T字型、中空型、多葉型等の任意の形状とすることができる。
【0032】
本発明の短繊維用繊維処理剤は、そのまま希釈等せずに繊維本体に付着させてもよく、水等で不揮発分全体の重量割合が0.5〜5重量%となる濃度に希釈してエマルジョンとして繊維本体に付着させてもよい。短繊維用繊維処理剤を繊維本体へ付着させる工程は、繊維本体の紡糸工程、延伸工程、捲縮工程等のいずれであってもよい。本発明の短繊維用繊維処理剤を繊維本体に付着させる手段については、特に限定はなく、ローラー給油、ノズルスプレー給油、ディップ給油等の手段を使用してもよい。繊維の製造工程やその特性に合わせ、より均一に効率よく目的の付着量が得られる方法を採用すればよい。また、乾燥の方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【0033】
〔不織布の製造方法〕
不織布の製造方法として、特に限定なく、公知の方法を採用できる。原料繊維としては短繊維や長繊維を用いることができる。原料繊維が短繊維のウェブ形成方式としては、カード方式やエアレイド方式等の乾式法や抄紙方式等の湿式法が挙げられる。また原料繊維が長繊維のウェブ形成方式としては、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等が挙げられる。また、繊維間結合方式としては、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、スティッチボンド法等が挙げられる。
本発明の不織布の製造方法は、本発明の撥水性繊維(例えば短繊維)をカード機等に通し繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを熱処理する工程を含むものが好ましい。すなわち、本発明の短繊維用繊維処理剤は、不織布の製造において繊維ウェブを熱処理する工程を有する場合に、特に好適に使用されるものである。
繊維ウェブを熱処理して接合させる方法としては、加熱ロールまたは超音波によるによる熱圧着、加熱空気による熱融着、熱圧着点(ポイントボンディング)法等の熱融着法が挙げられる。繊維ウェブを熱処理して接合させる一例としては、芯に高融点の樹脂を使用し鞘に低融点の樹脂を使用する鞘芯型の複合繊維の場合、低融点の樹脂の融点付近で熱処理することで、繊維交点の熱接着を容易に行なうことができる。
不織布の製造方法としては、短繊維用繊維処理剤が付与された短繊維をカード機等に通しウェブとしたものを上述のように熱処理して接合させ一体化する方法、エアレイド法でパルプ等を積層する際に本発明の撥水性繊維(短繊維)と混綿して、上述のように熱処理して接合させる方法等も挙げられる。その他、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法等により得られた繊維成形体に対して、本発明の短繊維用繊維処理剤を付着させたものを加熱ロールまたは加熱空気等で熱処理して、または加熱ロールまたは加熱空気等で熱処理したものに本発明の短繊維用繊維処理剤を付着させて、不織布を製造する方法も挙げられる。
【0034】
スパンボンド法の一例としては、複合繊維樹脂を紡糸し、次に、紡出された複合長繊維フィラメントを冷却流体により冷却し、延伸空気によってフィラメントに張力を加えて所期の繊度とする。その後、紡糸されたフィラメントを捕集ベルト上に捕集し、接合処理を行ってスパンボンド不織布を得る。接合手段としては、加熱ロールまたは超音波によるによる熱圧着、加熱空気による熱融着、熱圧着点(ポイントボンディング)法等がある。
得られたスパンボンド不織布に本発明の短繊維用繊維処理剤を付与する方法としては、グラビア法、フレキソ法、ゲートロール法等のロールコーティング法、スプレーコーティング法等で行うことができるが、不織布への塗布量を片面ずつ調節できるものであれば特に限定されるものではない。また、乾燥の方法としては、熱風および赤外線により乾燥させる方法、熱源に接触させて乾燥させる方法等を用いてよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示される「パーセント(%)」及び「部」は、特に限定しない限り、「重量%」及び「重量部」を示す。なお、実施例及び比較例において、短繊維用繊維処理剤の各特性の評価は次の方法に従って行った。
(実施例1〜8及び比較例1〜4)
表1〜2に示す各成分及び水を混合して、繊維処理剤全体に占める不揮発分の重量割合が25重量%の実施例1〜8、比較例1〜4の繊維処理剤をそれぞれ調製した。得られた繊維処理剤をそれぞれ約60℃の温水で不揮発分の重量割合が0.9重量%の濃度になるよう希釈して希釈液を得た。
次に、繊維本体300gに対しそれぞれの繊維処理剤の希釈液150gをディップ給油法で付着させ、撥水性繊維に付着する繊維処理剤の不揮発分の付着量を0.45重量%にした。繊維本体は、繊維処理剤等の繊維処理剤が付着していない、ポリプロピレン(芯)−ポリエチレン(鞘)系複合繊維であり、単繊維繊度が2.2Dtex、繊維長が38mmのものであった。それぞれの繊維処理剤の希釈液を付着させた繊維を、80℃の温風乾燥機の中に2時間入れた後、室温で8時間以上放置して乾燥させて、撥水性繊維を得た。
【0036】
得られた撥水性繊維をそれぞれ開繊工程およびカード試験機を用いたカード工程に通し、目付25g/m
2のウェブを作製した。その際、それぞれの撥水性繊維について、下記に示す評価方法でカード工程における物性(制電性)を評価した。得られたウェブを用いて変色防止性を評価した。得られたウェブをエアースルー型熱風循環乾燥機中135℃で熱処理してウェブを固定し、不織布を得た。得られた不織布について、下記に示す評価方法で物性(撥水性)をそれぞれ評価した。その結果を表3〜4に示す。
【0037】
[製綿工程のスカム発生の有無]
製綿工程のスカム発生の代用評価として、ポリエステルフィラメントを用いてスカム評価を行った。
各短繊維用繊維処理剤の有効10%濃度エマルションを市販のポリエステルフィラメント(200d/24f)の脱脂糸に定量ポンプを用いて、OPU=1.0%となるように給油した。
各短繊維用繊維処理剤付着糸を40mmφ梨地クロムピン上、糸速度200m/分、入張力25g、接触角180度で一定長(10000m)走行させたときのピン上に蓄積するスカムの有無を肉眼で判定した。3以上であると実用に供し得る。
〔判定基準〕
5 … スカム発生が見られない
4 … スカム発生が僅かに見られる
3 … スカムが少し発生する
2 … スカム発生が見られる
1 … スカムの発生が多く見られる
【0038】
[撥水性]
不織布(25g/m
2)を15cm角に切断し、JIS L 1092の6.1耐水度A法(低水圧法)による(a)静水圧法に準拠して耐水圧を測定し以下の基準で評価した。なお、5が最も良い評価である。3以上であると実用に供し得る。
5 … 45mm以上
4 … 35mm以上〜45mm未満
3 … 30mm以上〜35mm未満
2 … 20mm以上〜30mm未満
1 … 20mm未満
【0039】
[変色防止性]
カード試験機を用いて試料短繊維40gをカーディングして得られたウェブ1gを5cm×5cm四方に切り取り、切り取ったウェブを紗(ポリエステル製)で包んだ。下部にガスバーナーを装着したアルミ製の箱の上部より試料(紗で包んだウェブ)を吊るして、箱の中心付近に配置した。さらに試料付近の温度が90〜100℃になるように、ガスバーナーの火力を調整しながら7時間熱処理した。処理したウェブおよび未処理のウェブを色差計(ミノルタ色彩色差計CR−400)にて、YI(Yellowness Index:JIS K7103に準拠)値を測定した。耐変色性を表すΔYIは下記式で算出し、以下の基準で評価した。なお、5が最も良い評価である。3以上であると実用に供し得る。
ΔYI=(熱処理後のウェブのYI値)−(熱処理前のウェブのYI値)
評価 : ΔYI
5 : 4未満
4 : 4以上〜5未満
3 : 5以上〜6未満
2 : 6以上〜8未満
1 : 8以上
【0040】
[カード工程評価]
(制電性)
カード試験機を用いて20℃×45%RHの条件で試料撥水性繊維40gをシリンダー回転数970rpm(設定可能な最高回転数)でミニチュアカード機に通す。発生した静電気の電圧を測定し、以下の基準で評価する。なお、5が最も良い評価であり、3以上であると実用に供し得る。
5…0.5kV未満、4…0.5〜1.0kV、3…1.0kV超〜1.5kV、
2…1.5kV超〜2.0kV、1…2.0kVより大
【0041】
なお、表1における各成分は以下の通りである。
POE(10)とは、ポリオキシエチレン10モル付加を意味する。
化合物A−1 :ステアリルホスフェートカリウム塩
化合物A−2 :セチルホスフェートトリエタノールアミン塩
化合物A−3 :ステアリルホスフェートナトリウム塩
化合物B−1 :オレイルオレエート(融点3℃)
化合物B−2 :2−エチルヘキシルステアレート(融点4℃)
化合物B−3 :ステアリルステアレート(融点55℃)
化合物C−1 :ジメチルシリコーン(350mm
2/S)
化合物C−2 :アミノ変性シリコーン(500mm
2/S)
化合物D−1 :ヘキシルホスフェートカリウム塩
化合物D−2 :オクチルホスフェートカリウム塩
化合物E−1 :POE(10)ラウリルエーテル
化合物E−2 :ポリエチレングリコール(分子量400)ラウリルエステル
化合物E−3 :POE(7)ステアリルエーテル
化合物F :POE(10)硬化ヒマシ油エーテル
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表1及び2から分かるように、本願発明の短繊維用繊維処理剤は、下記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)を必須に含有する繊維処理剤であって、前記処理剤の不揮発分に占める前記成分(A)の重量割合が10〜60重量%、前記成分(B)の重量割合が20〜60重量%、前記成分(C)の重量割合が5〜40重量%であるために、変色防止性に優れ、かつ、製綿時のスカム発生が少ない。
一方、成分(B)がない場合(比較例1)、成分(A)がない場合(比較例2及び3)、成分(C)がない場合(比較例4)には、本願課題のいずれかが達成できていない。