(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
積層板材料には近年の高密度化や高信頼性への要求から、高い銅箔接着性や耐熱性、良好な低熱膨張性等が必要とされるが、微細配線形成のため銅箔接着性は、銅箔引き剥がし強さが1.0kN/m以上であることが望ましく、1.2kN/m以上であることがより望ましい。
また、高密度化のためビルドアップ材等を用いてより高多層化することも必要であり、高いリフロー耐熱性が必要であるが、リフロー耐熱性評価の指針となる銅付き耐熱性(T−300)は、30分以上ふくれ等が生じないことが望ましい。
さらに、高密度化に伴い基材はより薄型化される方向にあり、熱処理時における基材のそりが小さいことが必要となる。低そり化のためには基材の面方向が低熱膨張性であることが有効であり、その熱膨張係数は7ppm/℃以下であることが望ましく、5ppm/℃以下であることがより望ましい。
さらに、高速応答性の要求も増え続けており、基材の比誘電率は4.7以下、更には4.5以下であること、また誘電正接は0.010以下が、好ましくは0.009以下、更には0.008以下であることが望ましい。
このような状況の中、鋭意研究により以下に説明する発明に至った。
【0011】
本発明は、(a)上記の式(I)で示される構造と、側鎖に少なくとも2個の反応性置換基を有するシロキサン樹脂と、(b)1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物と、(c)1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物とを、(d)反応触媒として有機金属塩を用いて、芳香族系有機溶媒中で(a)の反応性置換基とシアネート基の付加反応、及びトリアジン環化反応させることにより得られる熱硬化性の相
溶化樹脂である。以下、この相
溶化樹脂について詳細に説明する。
【0012】
本発明の相
溶化樹脂を製造する際に用いる成分(a)のシロキサン樹脂は、下記式(I)で示される構造と、側鎖に少なくとも2個の反応性置換基を有するものであれば特に限定されない。なお、ここでいう反応性置換基とは、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、シクロアルキルエポキシ基およびメルカプト基から選ばれる基を意味する。
【化2】
【0013】
このように側鎖に少なくとも2個以上の反応性置換基を有するシロキサン樹脂のうち、各々の置換基が同一または隣接したケイ素原子と結合していないシロキサン樹脂は反応点が近接しないために、熱硬化後に反応性置換基が残りにくく吸水性や誘電特性が良好となる。また、側鎖に反応性基を有すると、反応点が嵩高くなり加水分解を受けにくくなり、シロキサン樹脂の分離を抑制することができる。
【0014】
このようなシロキサン樹脂としては、例えば水酸基で置換された化合物は信越化学工業(株)製、商品名X−22−4039(水酸基当量:950g/mol)、商品名X−22−4015(水酸基価:1900g/mol)等が挙げられ、アミノ基で置換された化合物は信越化学工業(株)製、商品名KF−868(アミノ基当量:8800g/mol)、商品名KF−865(アミノ基当量:5000g/mol)、商品名KF−864(アミノ基当量:3800g/mol)、商品名KF−859(アミノ基当量:6000g/mol)、商品名KF−8004(アミノ基当量:1500g/mol)、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名FZ−3705(アミノ基当量:4000g/mol)、商品名BY16−849(アミノ基当量:600g/mol)商品名BY16−890(アミノ基当量:1800g/mol)、商品名BY16−208(アミノ基当量:3600g/mol)等が挙げられ、エポキシ基で置換された化合物は信越化学工業(製)X−22−343(エポキシ基当量:525g/mol)、KF−1001(エポキシ基当量:3500)、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名SF8411(エポキシ基当量:3200g/mol)等が挙げられ、エポキシシクロヘキシル基で置換された化合物は信越化学工業(製)、商品名KF−102(エポキシ基当量:3600g/mol)、商品名X−22−2046(トルエン50%カット品、エポキシ基当量:600g/mol)、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名BY16−839(エポキシ基当量:3700g/mol)、等が挙げられ、メルカプト基で置換された化合物は信越化学工業(製)、商品名KF−2001(メルカプト基当量:1900g/mol)、商品名KF−2004(メルカプト基当量:30000g/mol)等が挙げられ、カルボキシル基で置換された化合物は信越化学工業(製)、商品名X−22−3701E(カルボキシル基当量:4000g/mol)、東レ・ダウコーニング(株)製、商品名BY16−880(カルボキシル基当量:3500g/mol)、等が挙げられる。これらの中で、反応性に優れる点から、水酸基とアミノ基が好ましい。また、置換基の位置は側鎖のみに限定されず、末端置換基を有するシロキサン樹脂を用いることもできる。
【0015】
本発明の相
溶化樹脂を製造する際に用いる成分(b)の1分子中に少なくとも2個のシアネート基を有する化合物は、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、ビスフェノールF型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、誘電特性、耐熱性、難燃性、低熱膨張性、及び安価である点から、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂、下記式(II)に示すノボラック型シアネート樹脂が特に好ましい。
【化3】
(mは正の数)
一般式(II)で示されるノボラック型シアネート樹脂の平均繰り返し数:mは、特に限定されないが、0.1〜30が好ましい。0.1より多いと結晶化が抑制され取り扱いが容易となり、30より少ないと硬化物が脆くなりにくい。
【0016】
本発明の相
溶化樹脂を製造する際に用いる成分(c)の1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物は、例えば、ビスフェノールA系、ビスフェノールF系、テトラメチルビスフェノールF系、ビスフェノールS系、ビスフェノールK系、ビフェノール系、テトラメチルビフェノールビフェニル系、ノボラック系、多官能フェノール系、ナフタレン系、脂環式系及びアルコール系等のグリシジルエーテル、グリシジルアミン系並びにグリシジルエステル系等のエポキシ樹脂が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用することができる。これらの中で、高剛性、誘電特性、耐熱性、難燃性、耐湿性及び低熱膨張性の点からナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂等のナフタレン環含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のビフェニル基含有エポキシ樹脂が好ましく、芳香族系有機溶剤への溶解性の点からナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましく、安価であることやエポキシ当量が小さく少量の配合でよいことから、下記式(III)に示すビフェニル型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【化4】
【0017】
本発明の相溶性樹脂の製造に用いる成分(d)の反応触媒の有機金属塩は、例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸コバルト、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト等が挙げられる。
【0018】
反応に際しては、上記の(a)と(b)と(c)の総和100重量部あたりの(a)の使用量を10〜50重量部の範囲とし、(b)の使用量を40〜80重量部の範囲とし、(c)の使用量を10〜50重量部の範囲とし、これらを例えば予めトルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる溶媒中に均一に溶解し、80℃〜120℃程度の反応温度で(a)の反応性置換基とシアネート基の付加反応、及びトリアジン環化反応させ、(b)のシアネート基を有する化合物の反応率(消失率)を好ましくは30〜70mol%となるように反応を行う必要がある。ここで、反応溶媒にはトルエン、キシレン、メシチレンから選ばれる芳香族系溶媒が好適であり、必要により少量の他の溶剤を用いてもよいが、所望の反応が遅くなり、耐熱性等が低下する。また、ベンゼンは毒性が強く、メシチレンよりも分子量の大きい芳香族系溶媒はプリプレグの製造塗工時に残溶剤となりやすいので好ましくない。
【0019】
反応率が30mol%以上であると、得られる樹脂が相
溶化され、樹脂が分離、白濁するようなことがない。また、反応率が70mol%以下であると、得られる熱硬化性の樹脂が溶剤に不溶化するようなことがなく、Aステージのワニス(熱硬化性樹脂組成物)が製造できなくなったり、プリプレグのゲルタイムが短くなり過ぎ、プレスの際に成形性が低下するようなこともない。なお、イミノカーボネート化反応に代表される付加反応とは、水酸基またはカルボキシル基とシアネート基ではイミノカーボネ−ト結合(−O−(C=NH)−O−)が生成され、アミノ基とシアネート基ではイミノカルバメート結合(−O−(C=NH)−NH−)が生成され、エポキシ基とシアネート基ではオキサゾリン環が生成され、メルカプト基とシアネート基ではイミノチオカーボネート結合(−O−(C=NH)−S−)が生成される反応を示す。トリアジン環化反応は、シアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応である。
【0020】
また、このシアネート基が3量化しトリアジン環を形成する反応により3次元網目構造化が進行するが、この時(c)である1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物が3次元網目構造中に均一に分散され、これによって(a)成分と(b)成分と(c)成分と(d)成分が均一に分散された熱硬化性の相
溶化樹脂が製造される。ここで、(a)の使用量が10重量部を超えると、得られる基材の面方向の低熱膨張性が得られ、また(a)の使用量が50重量部未満であると、耐熱性や耐薬品性が低下せず良好である。(b)の使用量が40重量部を超えると得られる樹脂の相
溶性が良好となり、また(b)の使用量が80重量部を未満であると、得られる基材の面方向の低熱膨張性が得られ良好である。(c)の使用量が10重量部を超えると、耐湿耐熱性が低下せず良好であり、また(c)の使用量が50重量部を未満であると、銅箔接着性や誘電特性が低下せず良好となる。
【0021】
反応触媒の(d)成分の使用量は、(a)と(b)と(c)の各成分の総和100重量部に対して、0.0001〜0.004重量部が好ましい。この範囲であると、反応に長時間を要したり、反応速度が速すぎて終点管理が難しくなるようなこともない。ここで、(b)のシアネート基を有する化合物の反応率は、GPC測定により反応開始時の(b)のシアネート基を有する化合物のピーク面積と、所定時間反応後のピーク面積を比較し、ピーク面積の消失率から求められる。
【0022】
本発明で言う相
溶化樹脂とは、構成成分が相互に分離せずに均一に混合された樹脂のことである。シロキサン樹脂は低極性のため、シアネート樹脂やエポキシ樹脂とは分離しやすいが、本発明の手法を用いて反応させることで相互に混合された相
溶化樹脂となり、シロキサン樹脂の有する低熱膨張性が発現する。得られた樹脂溶液を加熱乾燥させて目視で確認し、均一で透明な樹脂硬化物になっていることが相
溶化の判断基準である。
【0023】
また、本発明の相
溶化樹脂を合成する際、反応には有機溶媒を使用することが好ましい。この反応で使用される有機溶媒は特に制限されないが、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチルエステルやγ−ブチロラクトン等のエステル系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられ、1種又は2種以上を混合して使用できる。
これらの中で、溶解性が良好であることや、揮発性が高く残溶剤として残りにくい点、反応触媒の作用を阻害しにくい点からトルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶剤の使用が好ましい。
【0024】
本発明の熱硬化性の相
溶化樹脂には、熱硬化後の残存シアネート基を減らす目的でフェノール樹脂やフェノール類などの化合物を更に添加することができる。フェノール類などの化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、ノニルフェノール、p−クミルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール等の単官能化合物が挙げられる。ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールK、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ジ−ter.ブチルハイドロキノン、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、メチルカテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジメチルナフタレン、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン等の二官能化合物があげられる。
【0025】
また、フェノール樹脂としては、フェノール類、又はナフトール類とアルデヒド類との縮合物、フェノール類又はナフトール類とキシリレングリコールとの縮合物、フェノール類又はナフトール類とビスメトキシメチルビフェニルとの縮合物、フェノール類とイソプロペニルアセトフェノンとの縮合物、フェノール類とジシクロペンタジエンの反応物等が挙げられる。これらは、公知の方法により得ることが出来る。
【0026】
縮合物を得るため縮合に用いるフェノール類としては、上記において例示したようなフェノールやクレゾールなどの各種化合物があげられ、同様にナフトール類としては、1−ナフトール、2−ナフトールの他、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジメチルナフタレン、トリヒドロキシナフタレン等があげられる。
更に、縮合に用いるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、カプロンアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロルベンズアルデヒド、ブロムベンズアルデヒド、グリオキザール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジピンアルデヒド、ピメリンアルデヒド、セバシンアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド、サリチルアルデヒド、フタルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0027】
本発明の熱硬化性の相
溶化樹脂には、低熱膨張性や耐熱性、難燃性等の向上化のために無機充填材を用いるのが望ましく、特に溶融シリカを用いるのが好ましく、中でも官能基を有するシラン化合物で表面を処理した溶融シリカを用いるのがより好ましい。官能基を有するシラン化合物には、官能基とアルコキシル基を有するシラン化合物であればどのようなものでも良く、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが上げられる。この中でも特に、下記式(IV)で示されるN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが分散性の点で好ましい。
【化5】
【0028】
無機充填材への表面処理方法の例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤やエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系有機溶剤に、溶融シリカを添加して混合した後、例えば、上記構造式(IV)で示されるトリメトキシシラン化合物を添加して60℃〜120℃で、0.5〜5時間程度攪拌しながら反応(表面処理)させることにより得られる。また、アドマテックス社等から商業的にも入手でき、例えば、アドマテックス社製の商品名SC−2050KNKや、SC−2050HNK等がある。
【0029】
また、シリカの形状は低熱膨張性及び樹脂に充填した際の高流動性から球状が好ましい。
その平均粒子径は0.1〜10μmであることが好ましく、0.3〜8μmであることがより好ましい。該溶融球状シリカの平均粒子径を0.1μm以上にすることで、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保つことができ、さらに10μm以下にすることで、粗大粒子の混入確率を減らし粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めた時、ちょうど体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0030】
これら溶融シリカの使用量は、固形分換算の該相溶性樹脂100重量部に対し、10〜300重量部とすることが好ましく、100〜250重量部とすることがより好ましく、150〜250重量部とすることが特に好ましい。10重量部以上であると、基材の剛性や、耐湿耐熱性、難燃性が十分であり、また、300重量部以下であると成形性や耐めっき液性等の耐薬品性が向上する。
【0031】
本発明の熱硬化性の相
溶化樹脂には、他の無機充填剤を使用してもよく、例えば、破砕シリカ、マイカ、タルク、ガラス短繊維又は微粉末及び中空ガラス、炭酸カルシウム、石英粉末、金属水和物等が挙げられ、これらの中で、低熱膨張性や高弾性、耐熱性、難燃性の点から、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物が好ましく、さらに金属水和物の中でも、高い耐熱性と難燃性が両立する点から熱分解温度が300℃以上である金属水和物、例えばベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)、あるいはギブサイト型水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を熱処理によりその熱分解温度を300℃以上に調整した化合物、水酸化マグネシウム等がより好ましく、特に、安価であり、350℃以上の特に高い熱分解温度と、高い耐薬品性を有するベーマイト型水酸化アルミニウム(AlOOH)が特に好ましい。これらの無機充填剤使用量は、固形分換算の該相溶性樹脂100重量部に対し、0〜200重量部とすることが好ましく、10〜150重量部とすることがより好ましく、50〜150重量部とすることが特に好ましい。10重量部を超えると難燃性が十分となり、200重量部未満であると耐めっき液性等の耐薬品性や成形性が低下せず、良好となる。
【0032】
本発明の熱硬化性の相
溶化樹脂には、耐熱性や難燃性、銅箔接着性等の向上化のため硬化促進剤を用いることが望ましく、硬化促進剤の例としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸錫、オクチル酸コバルト等の有機金属塩、イミダゾール類及びその誘導体、第三級アミン類及び第四級アンモニウム塩等が挙げられる。硬化促進剤を使用しないと、耐熱性や難燃性、銅箔接着性等が不足する場合がある。
【0033】
本発明の熱硬化性の相
溶化樹脂には、任意に他の難燃剤の併用ができるが、臭素や塩素を含有する含ハロゲン系難燃剤や熱分解温度が300℃未満である金属水酸化物等は本発明の目的にそぐわない。他の難燃剤の併用の例としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、リン酸エステル系化合物、ホスファゼン、赤リン等のリン系難燃剤、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機難燃助剤等が挙げられる。特に、モリブデン酸亜鉛をタルク等の無機充填剤に担持した無機難燃助剤は、難燃性のみならずドリル加工性をも著しく向上化させるので、特に好ましい無機難燃助剤である。モリブデン酸亜鉛の使用量は本発明の相
溶化樹脂100重量部に対し、5〜20重量部とすることが好ましい。5重量部未満であると難燃性やドリル加工性の向上効果がみられなかったり、また20重量部を超えるとワニスのゲルタイムが短くなり過ぎ、プレスにより積層板を成形する際に成形性が低下する場合がある。
【0034】
本発明の相
溶化樹脂には、靭性や流動性を改善するため、任意に公知の熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填剤等の併用ができる。
熱可塑性樹脂の例としては、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、キシレン樹脂、石油樹脂及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
エラストマーの例としては、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン及びカルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
有機充填剤の例としては、シリコーンパウダー、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、並びにポリフェニレンエーテル等の有機物粉末等が挙げられる。
【0035】
また、本発明の相
溶化樹脂においては、任意に紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤及び密着性向上剤等の添加も可能であり、特に限定されない。これらの例としては、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系やスチレン化フェノール等の酸化防止剤、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤、スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、尿素シラン等の尿素化合物やシランカップリング剤等の密着性向上剤等が挙げられる。
【0036】
本発明のプリプレグは、前記した本発明の熱硬化性の相
溶化樹脂、あるいは必要に応じて他の成分を添加した熱硬化性の相
溶化樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工してなるものである。以下、本発明のプリプレグについて詳述する。
【0037】
本発明のプリプレグは、本発明の熱硬化性の相
溶化樹脂あるいは相
溶化樹脂組成物を、基材に含浸又は塗工し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して本発明のプリプレグを製造することができる。本発明の基材として、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びにそれらの混合物等が挙げられる。これらの基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等の形状を有するが、材質及び形状は、目的とする成形物の用途や性能により選択され、必要により、単独又は2種類以上の材質及び形状を組み合わせることができる。基材の厚さは、特に制限されず、例えば、約0.03〜0.5mmを使用することができ、シランカップリング剤等で表面処理したもの又は機械的に開繊処理を施したものが、耐熱性や耐湿性、加工性の面から好適である。該基材に対する相
溶化樹脂あるいは相
溶化樹脂組成物の付着量が、乾燥後のプリプレグの樹脂含有率で、20〜90重量%となるように、基材に含浸又は塗工した後、通常、100〜200℃の温度で1〜30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、本発明のプリプレグを得ることができる。
【0038】
本発明の積層板は、前述の本発明のプリプレグを用いて、積層成形して、形成することができる。本発明のプリプレグを、例えば、1〜20枚重ね、その片面又は両面に銅及びアルミニウム等の金属箔を配置した構成で積層成形することにより製造することができる。金属箔は、電気絶縁材料用途で用いるものであれば特に制限されない。また、成形条件は、例えば、電気絶縁材料用積層板及び多層板の手法が適用でき、例えば多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用し、温度100〜250℃、圧力2〜100kg/cm
2、加熱時間0.1〜5時間の範囲で成形することができる。また、本発明のプリプレグと内層用配線板とを組合せ、積層成形して、多層板を製造することもできる。
【実施例】
【0039】
次に、下記の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明をいかなる意味においても制限するものではない。
【0040】
製造例1:相
溶化樹脂(1−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、アルコール変性シロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−4039、水酸基当量;950):200.0gと、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で6時間反応を行った。その後、室温に冷却し熱硬化性の相
溶化樹脂(1−1)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が60%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の樹脂の生成物のピークが確認された。この反応溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物が透明であり分離が生じなかったため相
溶化樹脂であることが確認された。
【0041】
製造例2:相
溶化樹脂(1−2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset PT−15、重量平均分子量500〜1,000):800.0gと、アミン変性シロキサン樹脂(信越化学社製;商品名KF−864、アミノ基当量;3,800):100.0gと、ナフトールアラルキル・クレゾール共重合型エポキシ樹脂(日本化薬社製;商品名NC−7000L、エポキシ当量;230):100.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で4時間反応を行った。その後、室温に冷却し熱硬化性の相
溶化樹脂(1−2)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.1分付近に出現する合成原料のノボラック型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のノボラック型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が43%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の樹脂の生成物のピークが確認された。この反応溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物が透明であり分離が生じなかったため相
溶化樹脂であることが確認された。
【0042】
製造例3:相
溶化樹脂(1−3)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ジシクロペンタジエン型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset DT−4000,重量平均分子量500〜1,000):400.0gと、カルボキシル変性シロキサン樹脂(信越化学社製;商品名X−22−3701E、カルボキシル基当量;4,000):100.0gと、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製;商品名NC−3000H、エポキシ当量;280):500.0gと、メシチレン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.30g添加し、約110℃で3時間反応を行った。その後、室温に冷却し、熱硬化性の相
溶化樹脂(1−3)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.0分付近に出現する合成原料のジシクロペンタジエン型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のジシクロペンタジエン型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が43%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の樹脂の生成物のピークが確認された。この反応溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物が透明であり分離が生じなかったため相
溶化樹脂であることが確認された。
【0043】
製造例4:相
溶化樹脂(1−4)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):400.0gと、エポキシ変性シロキサン樹脂(信越化学社製;商品名KF−1001、エポキシ基当量;3,500):500.0gと、ナフタレン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学社製;商品名エピクロンHP−4032、エポキシ当量;150):100.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で4時間反応を行った。その後、室温に冷却し熱硬化性の相
溶化樹脂(1−4)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が55%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の樹脂の生成物のピークが確認された。この反応溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物が透明であり分離が生じなかったため相
溶化樹脂であることが確認された。
【0044】
製造例5:相
溶化樹脂(1−5)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ノボラック型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset PT−15,重量平均分子量500〜1,000):600.0gと、チオール変性シロキサン樹脂(信越化学社製;商品名KF−2001、チオール基当量;1,900):200.0gと、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で6時間反応を行った。その後、室温に冷却し熱硬化性の相
溶化樹脂(1−5)の溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.1分付近に出現する合成原料のノボラック型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のノボラック型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が50%であった。また、約10.9分付近、及び8.0〜10.0付近に出現する熱硬化性の樹脂の生成物のピークが確認された。この反応溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物が透明であり分離が生じなかったため相
溶化樹脂であることが確認された。
【0045】
製造例6:トリメトキシシラン化合物により表面処理(湿式処理)された溶融シリカ(2−1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、溶融シリカ(アドマテックス社製;商品名SO−25R、粒径0.5μm、球状):700.0gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル:1000.0gを配合し、攪拌しながらN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製;商品名KBM−573):7.0gを添加した。次いで80℃に昇温し、80℃で1時間反応を行い溶融シリカの表面処理(湿式処理)を行った後、室温に冷却し、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理(湿式処理)された溶融シリカ(2−1)の分散液を得た。
【0046】
比較製造例1:(比較1)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、アミン変性シロキサン樹脂(信越化学社製;商品名KF−864、水酸基当量;3,800):200.0gと、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で1時間反応を行った。その後、室温に冷却し(比較1)の反応溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が20%であった。この反応溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物表面に分離が生じたため相
溶化していないことが確認された。また、この溶液は翌日結晶化により沈殿物が生じた。
【0047】
比較製造例2:(比較2)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積3リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、エポキシ変性シロキサン樹脂(信越化学社製;商品名KF−1001、エポキシ基当量;3,500):200.0gと、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186):200.0gと、トルエン:1000.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約120℃で6時間反応を行った。その後、室温に冷却し(比較2)の反応溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が76%であった。反応溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物が透明であり分離が生じなかったため相
溶化樹脂であることが確認された。
【0048】
比較製造例3:(比較3)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、ビスフェノールA型シアネート樹脂(ロンザジャパン社製;商品名Primaset BADCy):600.0gと、アミン変性シロキサン樹脂(信越化学社製;商品名KF−864、アミノ基当量;3,800):200.0gと、トルエン:800.0gを投入した。次いで、攪拌しながら120℃に昇温し、樹脂固形分が溶解し均一な溶液になっていることを確認した後、ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液を0.01g添加し、約110℃で3時間反応を行った。その後、室温に冷却し(比較3)の反応溶液を得た。この反応溶液を少量取り出し、GPC測定(ポリスチレン換算、溶離液:テトラヒドロフラン)を行ったところ、溶出時間が約12.4分付近に出現する合成原料のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積が、反応開始時のビスフェノールA型シアネート樹脂のピーク面積と比較し、ピーク面積の消失率が53%であった。反応溶液を、熱風乾燥機で170℃、15分乾燥させることで得られる樹脂硬化物を目視で評価し、樹脂硬化物が透明であり分離が生じなかったため相
溶化樹脂であることが確認された。
【0049】
(実施例1〜6、比較例1〜4)
製造例1〜5により得られた相
溶化樹脂、及び比較製造例1〜3で得られた樹脂、及び、製造例6又は商業的に入手した溶融シリカ、また、必要により無機充填剤、難燃助剤、硬化促進剤、及び希釈溶剤にメチルエチルケトンを使用して、表1と表2に示した配合割合(重量部)で混合して樹脂分60wt%の均一なワニスを得た。
次に、上記ワニスを厚さ0.2mmのSガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分加熱乾燥して樹脂含有量55重量%のプリプレグを得た。次に、このプリプレグを4枚重ね、18μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力25kg/cm
2、温度230℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。このようにして得られた銅張積層板を用いて、銅箔接着性(銅箔ピール強度)、ガラス転移温度、はんだ耐熱性、線熱膨張係数、難燃性、ドリル加工性、比誘電率(1GHz)、誘電正接(1GHz)について以下の方法で測定・評価し、表3と表4に評価結果を示した。
【0050】
(1)銅箔接着性(銅箔ピール強度)の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより1cm幅の銅箔を形成して評価基板を作製し、引張り試験機を用いて銅箔の接着性(90°ピール強度)を測定した。
【0051】
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の面方向の熱膨張特性を観察することにより評価した。
【0052】
(3)線熱膨張係数の測定
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、評価基板の面方向の30℃〜100℃の線熱膨張率を測定した。
【0053】
(4)はんだ耐熱性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた5cm角の評価基板を作製し、平山製作所(株)製プレッシャー・クッカー試験装置を用いて、121℃、2atmの条件で4時間までプレッシャー・クッカー処理を行った後、温度288℃のはんだ浴に、評価基板を20秒間浸漬した後、外観を観察することによりはんだ耐熱性を評価した。
【0054】
(5)銅付き耐熱性(T−300)の評価
銅張積層板から5mm角の評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、TMA2940)を用い、300℃で評価基板の膨れが発生するまでの時間を測定することにより評価した。
【0055】
(6)難燃性の評価
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板から、長さ127mm、幅12.7mmに切り出した試験片を作製し、UL94の試験法(V法)に準じて評価した。
【0056】
(7)比誘電率及び誘電正接の測定
得られた銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除いた評価基板を作製し、Hewllet・Packerd社製比誘電率測定装置(製品名:HP4291B)を用いて、周波数1GHzでの比誘電率及び誘電正接を測定した。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
表1および表2中の数字は、固形分の重量部により示されている。注書きは、それぞれ
*1:溶融シリカに対し1.0wt%のN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理された溶融シリカ(アドマテック社製;商品名SC−2050KNK、粒径0.5μm、球状、希釈溶剤;メチルイソブチルケトン)
*2:溶融シリカに対し1.0wt%のN−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランにより表面処理された溶融シリカ(アドマテック社製;商品名SC−2050HNK、粒径0.5μm、球状など、希釈溶剤;シクロヘキサノン)
*3:ベーマイト型水酸化アルミニウム(河合石灰社製;商品名BMT−3L,熱分解温度:400℃)
*4:モリブデン酸亜鉛をタルクに担持した無機難燃助剤(シャーウィン・ウィリアムス社製;商品名 ケムガード1100)
*5:ナフテン酸亜鉛の8wt%ミネラルスピリット溶液
*6:ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製;商品名YX−4000、エポキシ当量;186)
*7:溶融シリカ(アドマテック社製;商品名SO−25R、粒径0.5μ、球状など)
*8:溶融シリカに対し1.0wt%のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(下記式Vに示す)により表面処理された溶融シリカ(アドマテック社製;商品名SC1030−MJA、希釈溶剤;メチルエチルケトン)
【化6】
を意味する。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
表から明らかなように、本発明の実施例は、Tg、銅箔ピール強度、耐熱性、低熱膨張性、難燃性、銅付き耐熱性、低誘電特性、低誘電正接性の全てに優れている。一方、比較例は、Tg、銅箔ピール強度、耐熱性、低熱膨張性、難燃性、銅付き耐熱性、低誘電特性、低誘電正接性の全てを満たすものは無く、いずれかの特性に劣っている。