特許第6408757号(P6408757)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408757
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ピアノアクション
(51)【国際特許分類】
   G10C 3/18 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   G10C3/18 110
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-135473(P2013-135473)
(22)【出願日】2013年6月27日
(65)【公開番号】特開2015-11125(P2015-11125A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月21日
【審判番号】不服2017-6238(P2017-6238/J1)
【審判請求日】2017年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】寺井 康志
【合議体】
【審判長】 清水 正一
【審判官】 小池 正彦
【審判官】 坂東 大五郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第5022302(US,A)
【文献】 英国特許出願公告第439144(GB,A)
【文献】 実開平2−119695(JP,U)
【文献】 特開2011−203478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10B3/12
G10C3/12
G10H1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
打弦用の複数のハンマーと、前記各ハンマーを回動自在に支持するハンマーシャンクと、前記ハンマーの打弦後における前記ハンマーシャンクの回動を規制するハンマーレールと、前記ハンマーレール上に載置され、前記ハンマーシャンクの衝突時に発生する運動エネルギーを吸収するハンマークッションとを有するアップライトピアノ型アクションにおいて、
前記ハンマーの打弦に際してハンマーと弦との位置関係について何ら操作を行わない状態での演奏時に、前記ハンマークッションは、前記ハンマーシャンクとの当接面に対して平行とならない角度を有して配置され、前記ハンマーシャンクの衝突時において、ハンマーシャンクの下方位置において先に当接する形状とした
ことを特徴とするピアノアクション。
【請求項2】
前記ハンマークッションは、前記ハンマーシャンクの長手方向に分割されたフェルト材と低反発ウレタン樹脂材とにより構成された請求項1に記載のピアノアクション。
【請求項3】
前記ハンマークッションは、前記低反発ウレタン樹脂材が前記ハンマーシャンクとの当接面に対して平行とならない角度を有して配置された請求項2に記載のピアノアクション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アップライトピアノのハンマーレール装置におけるピアノアクションに関し、特に、演奏性に優れたピアノアクションの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アップライトピアノのハンマーレール装置において、打弦用ハンマーは、回動自在のハンマーシャンクに支持され、打弦後には慣性力によって弦と反対方向に回動する。打弦用ハンマーの動きは、ハンマーシャンクがハンマーレールに衝突することによって止められる。この時、ハンマーシャンクの停止時に衝突音等が発生するのを防止するために、ハンマーレールの当接面にはフェルト等の部材によって構成されたハンマークッションが取り付けられている。
【0003】
上述したピアノアクションの構造によれば、ハンマーの慣性が大きいために、ハンマーシャンクがハンマークッションに当たって跳ね返る際に、極めて速い鍵盤の連打で演奏する場合などにおいては、ハンマーの跳ね返り位置が一定しないことから、空打ち(音が出ない状態)が生じることがあり、良好な演奏に支障を来すとの問題があった。
【0004】
そこで、ハンマーレールにおける反発係数を抑えて、衝突時のハンマーシャンクの運動エネルギーを吸収するため、例えば特許文献1に示されるように、緩衝性を有する部材としてウレタン等によってハンマークッションを形成し、その表面にハンマーシャンク衝突時の振動を吸収するスリット入りのクッションガードを設けた構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−8634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したピアノアクションの構造によると、ハンマークッションの反発係数を抑える構造(例えば、ウレタン等の樹脂を使用)の場合、ハンマーシャンクの当接面において衝突音が増加するという現象が生じることが確認できた。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて提案されたもので、ハンマークッションでの衝突音の発生を防止するとともに、極めて速い鍵盤の連打で演奏する場合などにおいても優れた演奏再現性を確保できるピアノアクションの構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の請求項1は、打弦用の複数のハンマーと、前記各ハンマーを回動自在に支持するハンマーシャンクと、前記ハンマーの打弦後における前記ハンマーシャンクの回動を規制するハンマーレールと、前記ハンマーレール上に載置され、前記ハンマーシャンクの衝突時に発生する運動エネルギーを吸収するハンマークッションとを有するアップライトピアノ型アクションにおいて、
通常の演奏時に、前記ハンマークッションは、前記ハンマーシャンクとの当接面に対して平行とならない角度を有して配置され、前記ハンマーシャンクの衝突時において、ハンマーシャンクの下方位置において先に当接する形状としたことを特徴としている。
【0012】
請求項2は、請求項1のピアノアクションにおいて、前記ハンマークッションは、前記ハンマーシャンクの長手方向に分割されたフェルト材と低反発ウレタン樹脂材とにより構成されたことを特徴としている。
【0013】
請求項3は、請求項2のピアノアクションにおいて、前記ハンマークッションは、前記低反発ウレタン樹脂材が前記ハンマーシャンクとの当接面に対して平行とならない角度を有して配置されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のピアノアクションによれば、ハンマークッションは、ハンマーシャンクとの当接面に対して平行とならない角度を有してハンマーレール上に配置することで、ハンマーシャンクがハンマークッションの一部分に先に当接し、その後のハンマークッションの撓みにより全体が当接するよう動作するので、優れた緩衝効果を発揮させることができる。
【0015】
また、ハンマーシャンクがハンマークッションの一部分に先に当接することで、衝突開始時における当接部分の面積を少なくすることで、衝突音を減じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態のピアノアクションを備えたハンマーレール装置の全体構造を示す側断面説明図である。
図2図1のハンマーレール装置におけるピアノアクション部分の側面説明図である。
図3】緩衝材の反発力特性を示すグラフであり、(a)はニードルフェルトを使用した場合の反発力特性図 、(b)は低反発ウレタン樹脂材を使用した場合の反発力特性図である。
図4】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
図5】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
図6】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
図7】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
図8】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
図9】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
図10】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
図11】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
図12】他の実施形態の一例を示すピアノアクション部分の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
本発明の実施形態によるピアノアクションを備えたハンマーレール装置は、図1に示すように、鍵盤21、ハンマー31、アクション41などを備えて構成されている。
図1は、ハンマーレール装置の離鍵状態が示されており、演奏者側から見て手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。また、同図を含むすべての図面では、便宜上、ハッチングが省略されている。
【0018】
鍵盤21は、左右方向(図1の奥行き方向)に並んだ多数の鍵22(1つのみ図示)によって構成されている。各鍵22は、筬23に立設されたバランスピン23aに回動自在に支持されており、筬23は、棚板11の上面に取り付けられている。
【0019】
ハンマー31は、鍵22ごとに設けられており(1つのみ図示)、各ハンマー31は、断面円形の細長い棒状に形成されたハンマーシャンク32と、ハンマーシャンク32の上端部に設けられたハンマーヘッド33を有している。
ハンマーシャンク32は、アクション41の後述するバット44の上面に立設されており、上下方向に延びている。
離鍵状態では、ハンマーシャンク32は、後述するハンマーレール1のハンマークッション(緩衝材)100に当接しており、ハンマーヘッド33は、後方に鉛直に張られた弦Sに対向している。なお、ハンマーレール1及びその上に配置された緩衝材100は、左右方向(図1の表裏方向)に連続する長尺状に形成されている。
【0020】
アクション41は、鍵22ごとに設けられたウィッペン42、ジャック43およびバット44を有しており、左右方向に長く延びるセンターレール13に取り付けられ、鍵盤21の後端部の上方に配置されている。
ウィッペン42およびバット44は、上記のセンターレール13に取り付けられたウィッペンフレンジ45およびバットフレンジ46に、それぞれ回動自在に支持されている。
ウィッペン42は、離鍵状態において、対応する鍵22の後端部に載置されている。
ジャック43は、ウィッペン42の上端部に回動自在に支持されており、離鍵状態において、バット44に下方から係合している。
【0021】
以上の構成により、鍵22が押鍵されると、ウィッペン42は、鍵22により突き上げられることによって、ジャック43とともに上方に回動し、それに伴い、ジャック43は、バット44を突き上げる。
この動作により、ハンマー31は、バット44とともに弦Sに向かって回動し、ハンマーレール1から離れ、その後、ハンマーヘッド33が弦Sを打弦することによって、ピアノ音が発生する。
そして、押鍵が終了すると、ウィッペン42、ジャック43およびハンマー31が、押鍵前の元の位置に戻り、ハンマー31は、ハンマーレール1のハンマークッション(緩衝材)100に当接する。
【0022】
この一連動作において、ハンマーシャンク32がハンマークッション(緩衝材)100に当たって跳ね返る際に、極めて速い鍵盤の連打で演奏する場合などにおいては、ハンマー33の跳ね返り位置が一定せず動作が不安定になるため、空打ち(音が出ない状態)の現象が生じることがあった。本発明は、この現象が発生するのを防ぐための構造であり、ハンマーレール1のハンマークッション(緩衝材)100の形状を工夫したものである。
【0023】
また、ハンマーレール装置は、ハンマーレール1と、ハンマーレール1を回動自在に支持するブラケット12を有している。このブラケット12は、棚板11の後端部の左端部(低音側の端部)、中央および右端部(高音側の端部)にそれぞれ設けられている(右端部のもののみ図示)。各ブラケット12は、例えばアルミニウム軽合金により構成され、上下方向に延びており、その上端部が、アクションボルトにより支柱(いずれも図示せず)に固定されるとともに、下端部が、棚板11に載置されたアクションベース(図示せず)に固定されている。
【0024】
ブラケット12は、その中央から前方に延びるレール支持部12a(ストッパ)を有しており、このレール支持部12aの上面の前端部には、例えばフェルトで構成された緩衝材12bが貼り付けられている。
また、ブラケット12の下部に、前述したセンターレール13が固定されている。
【0025】
次に、本実施形態が備えるピアノアクションにおける特徴部分の構成について、図1及び図2を参照して説明する。
従来から存在しているハンマーレール1上に配置されたハンマークッション(緩衝材)100の形状は、ハンマーシャンク32とハンマークッション100の上面とが平行に位置して当接面を形成しているのに対して、本実施形態におけるハンマークッション100は、ハンマーシャンク32との当接面に対して平行とならない角度を有して配置されている。
すなわち、従前の構造が、ハンマーシャンク32がハンマークッション100全体に当接する形状であるのに対して、ハンマーシャンク32がハンマークッション100の一部分に先に当接し、その後の緩衝材100の撓みにより全体が当接する形状に形成されている。より具体的には、ハンマーシャンク32の側面位置がハンマークッション100の上面に当接し始めた位置におけるハンマーシャンク32とハンマークッション100との成す所定角度θが、3度以上の角度を有するように形成する。
例えば、図1及び図2の例では、従前と同じ形状のハンマーレール1に対して、緩衝材の上面を所定角度θ傾斜させたハンマークッション100を載置することで、ハンマーシャンク32の下方側に位置するほどハンマーレール1に対して緩衝材の上面が突出した形状に構成している。
【0026】
また、ハンマークッション(緩衝材)100は、全体を低反発ウレタン樹脂材で構成している。低反発ウレタン樹脂材は、従来から使用されているニードルフェルトの反発力特性に比較して、反発力の吸収性に優れ、具体的には、ニードルフェルトの特性(図3(a))に比較して、ハンマーシャンクの動作収束時間が短くなる特性(図3(a))を備えている。図3に示した特性グラフは、時間(横軸)に対して、ハンマーシャンク32のハンマーレール1からの距離(縦軸)を測定したものである。
また、ハンマークッション(緩衝材)100に使用する低反発ウレタン樹脂材の反発弾性率は、0.20程度以下であるのが好ましい。
【0027】
図4は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマークッション(緩衝材)100の形状について、ハンマーシャンク32の衝突時において、ハンマーシャンク32の上方位置で先に当接する形状とした例である。図4において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
また、この例において、ハンマークッション(緩衝材)100は、その全体を低反発ウレタン樹脂材で構成している。
【0028】
図5は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマークッション(緩衝材)100の形状について、上下の両端に突出部100aを設けた形状としている。この場合、ハンマーシャンク32の緩衝材100への衝突時において、先ず突出部100aが当接することになる。図5において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
また、この例においては、ハンマークッション(緩衝材)100の全体を低反発ウレタン樹脂材で構成している。
【0029】
図6は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマークッション(緩衝材)100の形状については図4と同じであるが、緩衝材100をハンマーレール1側の低反発ウレタン樹脂材101と、その上に配置したフェルト材102の2層構造で構成したものである。この場合、ハンマーシャンク32が緩衝材100に衝突時に、先ず、フェルト材102の上方位置が当接することになる。図6において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
【0030】
図7は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマークッション(緩衝材)100の形状については図2と同じであるが、緩衝材100をハンマーレール1側のフェルト材102と、その上に配置した低反発ウレタン樹脂材101との2層構造で構成したものである。この場合、ハンマーシャンク32の緩衝材100への衝突時に、先ず、低反発ウレタン樹脂材101の下方位置が当接することになる。図7において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
【0031】
図8は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマークッション(緩衝材)100の形状について、中央位置に断面が円弧状となる円弧突出部100bを設けた形状としている。この場合、ハンマーシャンクが緩衝材100に衝突時に、先ず中央の円弧突出部100bが当接することになる。図8において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
また、この例においては、ハンマークッション(緩衝材)100の全体を低反発ウレタン樹脂材で構成している。
【0032】
図9は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマークッション(緩衝材)100の形状について、中央位置に山状突出部100cを設けた形状としている。この場合、ハンマーシャンク32が緩衝材100に衝突時に、先ず中央の山状突出部100cが線接触で当接することになる。図9において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
また、この例においては、ハンマークッション(緩衝材)100の全体を低反発ウレタン樹脂材で構成している。
【0033】
図10は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマーレール1の上面1aに従前のハンマーレール1に対して傾斜(所定角度θ)を施すことにより、その上に載置した緩衝材100のハンマーシャンク32への衝突時において、ハンマーシャンク32の下方位置で先に当接するように構成したものである。
すなわち、ハンマークッション(緩衝材)100自体の形状については、上面側に傾斜を施すことなく断面を方形状とし、ハンマーレール1の上面1aに載置した際に、ハンマーシャンク32との当接面に対して平行とならない角度を有するようになっている。図10において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
また、この例においては、ハンマークッション(緩衝材)100の全体を低反発ウレタン樹脂材で構成している。
【0034】
図11は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマークッション(緩衝材)100がハンマーシャンク32の長手方向で分割された低反発ウレタン樹脂材101とフェルト材102とで構成されている。
すなわち、ハンマーレール1の上面における下方位置に傾斜面(所定角度θ)を施し、当該位置に断面方形状の低反発ウレタン樹脂材101を載置し、その上方位置に断面方形状のフェルト材102を載置して構成することにより、ハンマークッション(緩衝材)100のハンマーシャンク32への衝突時において、ハンマーシャンク32の下方位置で先に低反発ウレタン樹脂材101に当接するように構成したものである。図11において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
【0035】
図12は、ピアノアクションの他の実施形態を示すもので、ハンマークッション100がハンマーシャンク32の長手方向で分割された2個の低反発ウレタン樹脂材101で構成されている。
すなわち、ハンマーレール1の上面1aにそれぞれ傾斜を施すことにより、その上に方形状の緩衝材100をそれぞれ載置した場合に、図5の実施形態と同様にハンマークッション100の両端部で突出部が形成されたのと同様に、ハンマーシャンク32への衝突時において、緩衝材100の両端位置で先に当接する効果を得ることができる。
各ハンマークッション(緩衝材)100自体の形状については、上面側に傾斜を施すことなく断面を方形状とし、ハンマーレール1の上面1aに載置した際に、ハンマーシャンク32との当接面に対して平行とならない角度(所定角度θ)を有するようになっている。図10において、図1及び図2と同じ構成を採る部分については同一符号を付している。
また、この例においては、2個の緩衝材100は、それぞれ全体を低反発ウレタン樹脂材で構成している。
【0036】
上述した各実施形態によれば、ハンマークッション(緩衝材)100は、ハンマーシャンク32との当接面に対して平行とならない角度を有してハンマーレール1上に配置されているので、ハンマーシャンク32がハンマークッション100の一部分に先に当接し、その後の緩衝材100の撓みにより全体が当接するよう動作するので、優れた緩衝効果を発揮させることが可能となるため、ハンマー31の跳ね返り位置を一定にして動作を安定化させることができる。
また、衝突開始時における当接部分の面積を少なくすることで、衝突音を減じることができる。
その結果、低反発係数を有する低反発樹脂部材をハンマークッション(緩衝材)100として使用した場合においても、衝突時の音の発生を抑制の維持しつつ、極めて速い鍵盤の連打で演奏する場合などにおいても、優れた演奏再現性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0037】
1…ハンマーレール、 21…鍵盤、 22…鍵、 31…ハンマー、 32…ハンマーシャンク、 33…ハンマーヘッド、 41…アクション、 100…ハンマークッション(緩衝材)、 100a…突出部、 100b…円弧突出部、 100c…山状突出部、 101…低反発ウレタン樹脂材、 102…フェルト材、 S…弦、 θ…所定角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12