特許第6408786号(P6408786)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408786
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】床梁及び床梁支持構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/06 20060101AFI20181004BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20181004BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   E04C3/06
   E04B1/58 503G
   E04B1/24 B
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-92410(P2014-92410)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-209705(P2015-209705A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】六車 典子
(72)【発明者】
【氏名】田中 都美
(72)【発明者】
【氏名】城所 創
(72)【発明者】
【氏名】日置 達彦
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−219927(JP,A)
【文献】 特開2010−043415(JP,A)
【文献】 特開平06−017507(JP,A)
【文献】 特開2001−107448(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0055970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00−3/46
E04B 1/24
E04B 1/58
E04B 5/02
E04B 5/10
E04F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブと、前記ウェブの上縁に接合された上部フランジと、前記ウェブの下縁に接合された下部フランジとを備え、
前記上部フランジから前記下部フランジまでの高さは、梁中央部より前記梁中央部の長手方向両側に位置する梁端部が低く、
前記上部フランジと前記下部フランジとの少なくとも一方の厚さ寸法は、前記梁端部が前記梁中央部に比べて厚いことを特徴とする床梁。
【請求項2】
請求項1に記載された床梁において、
前記梁端部には、前記上部フランジと前記下部フランジとの間であって前記ウェブと交差するようにスチフナが設けられていることを特徴とする床梁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された床梁において、
前記梁端部には、それぞれ前記上部フランジと前記下部フランジとの間に前記ウェブと平行に補強プレートが設けられていることを特徴とする床梁。
【請求項4】
請求項3に記載された床梁において、
前記補強プレートは、前記ウェブに接合されていることを特徴とする床梁。
【請求項5】
請求項3に記載された床梁において、
前記補強プレートは、前記ウェブから離れて配置され、前記補強プレートの上縁は前記上部フランジの下面と接合され、前記補強プレートの下縁は前記下部フランジの上面と接合されていることを特徴とする床梁。
【請求項6】
ウェブと、前記ウェブの上縁に接合された上部フランジと、前記ウェブの下縁に接合された下部フランジとを備え、前記上部フランジから前記下部フランジまでの高さは、梁中央部より前記梁中央部の長手方向両側に位置する梁端部が低い床梁、を支持する床梁支持構造であって、
前記梁端部を受けるとともに建物躯体に取り付けられたブラケットと、前記ブラケットと前記梁端部とを接合する接合部材とを備え、
前記ブラケットは、前記梁端部の下部フランジを支持する底面部と、前記底面部の両側にそれぞれ設けられ前記ウェブに対向する側面部とを有し、
前記接合部材は、前記下部フランジに予め接合されたナットと、前記底面部の長手方向に形成された長孔を挿通するとともに前記ナットに螺合されるボルトとを備えたことを特徴とする床梁支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの上下にフランジが接合された床梁と、この床梁を建物躯体に支持するための床梁支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
床梁として、H形鋼が利用されている。H形鋼は、ウェブの上下にフランジが接合された形状であり、梁端部が建物躯体にブラケットを介して支持されている。
H形鋼からなる床梁の支持構造として、梁端部の下面を受けるリブが板状の支持体の下端に接合され、この支持体の側面が基礎の側面に対向するとともに、支持体の上端が固定板に接合され、この固定板が柱の側面に固定された取付金具がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−177505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で示される従来例では、取付金具は、H形鋼の梁端部の下面を支持する構成である。そして、床梁として利用されるH形鋼は、その一端部から他端部にかけて同じ梁成とされる。
床梁の強度は大きいほど好ましいものであり、H形鋼からなる床梁では、強度を大きくするには、梁成を長くする必要がある。
【0005】
床梁の梁成を長くすると、床面の高さが高くなって、居室空間が狭くなるか、床梁下端縁が低くなって、床下空間が狭くなる。居室空間が狭いことは好ましくないので、床下空間が狭いものとならざるを得ない。
しかし、床施工後の種々の作業や、建物施工後の床下のメンテナンス作業においては、作業員が床下に潜り込まなければならないため、床下空間が狭いと、作業がしにくくなる。
【0006】
本発明の目的は、作業するための床下空間を確保できる床梁及び床梁支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
図面を参照して説明すると、本発明の床梁1は、ウェブ11と、前記ウェブの上縁に接合された上部フランジ12と、前記ウェブの下縁に接合された下部フランジ13とを備え、前記上部フランジから前記下部フランジまでの高さは、梁中央部1Bより前記梁中央部の長手方向両側に位置する梁端部1Aが低く、前記上部フランジと前記下部フランジとの少なくとも一方の厚さ寸法は、前記梁端部が前記梁中央部に比べて厚いことを特徴とする。
【0008】
この発明では、梁成は、梁中央部より梁端部の高さが低いので、床下の高さ寸法は、梁端部が梁中央部より大きくなる。そのため、梁端部の下での床下空間が広いものとなり、床を施工した後の床下での作業、あるいは、建物施工後の床下のメンテナンス作業が容易となる。梁端部は基礎等の建物躯体に近接しているので、当該作業領域での作業種目が多い。そのため、梁端部での床下スペースを維持できることは、当該領域で作業する上で、好都合である。
さらに、本発明では、梁成が短いのは、梁端部であって、梁中央部ではないから、床梁全体としての強度が低下することがない。つまり、荷重を受けて床梁が撓む場合、その撓み量は、梁中央部が梁端部に比べて大きい。本発明では、梁端部の梁成を短くしても、梁中央部の梁成を少なくとも従来と同じにすることで、床梁全体としての強度を維持できる。梁端部の梁成が短くなった分、床梁全体の強度が低下するとしても、梁中央部の梁成を従来より長いものにすることで、床梁の強度を大きなものにできる。梁中央部での梁成を大きくすることで、床下スペースが狭いものとなっても、当該領域では、作業することが少ないので、作業上の不便は少ない。
【0009】
しかも、この構成では、上部フランジ部と下部フランジ部との少なくとも一方が梁中央部より梁端部が厚いことで、梁成が短い梁端部における梁強度を大きなものにできる。
【0010】
前記梁端部には、前記上部フランジと前記下部フランジとの間であって前記ウェブと交差するようにスチフナ15(151,152,153)が設けられていることが好ましい。
この構成では、スチフナを設けることで、梁成が短い梁端部における梁強度を大きなものにできる。
【0011】
前記梁端部には、それぞれ前記上部フランジと前記下部フランジとの間に前記ウェブと平行に補強プレート6(61,62)が設けられていることが好ましい。
この構成では、補強プレートを設けることで、梁成が短い梁端部における梁強度を大きなものにできる。
【0012】
前記補強プレート61は、前記ウェブに接合されていることが好ましい。
この構成では、補強プレートがウェブに接合されることで、ウェブ全体の厚みが増すことで、大きな補強効果を得ることができる。
【0013】
前記補強プレート62は、前記ウェブから離れて配置され、前記補強プレートの上縁は前記上部フランジの下面と接合され、前記補強プレートの下縁は前記下部フランジの上面と接合されていることが好ましい。
この構成では、補強プレートがウェブから離れて上部フランジと下部フランジとに接合されることで、上部フランジや下部フランジが大きな荷重によって変形することを防止できる。
【0014】
本発明の床梁支持構造は、ウェブと、前記ウェブの上縁に接合された上部フランジと、前記ウェブの下縁に接合された下部フランジとを備え、前記上部フランジから前記下部フランジまでの高さは、梁中央部より前記梁中央部の長手方向両側に位置する梁端部が低い床梁、を支持する構造であって、前記梁端部を受けるとともに建物躯体Aに取り付けられたブラケット3と、前記ブラケットと前記梁端部とを接合する接合部材4とを備え、前記ブラケットは、前記梁端部の下部フランジを支持する底面部32Aと、前記底面部の両側にそれぞれ設けられ前記ウェブに対向する側面部32Bとを有し、前記接合部材は、前記下部フランジに予め接合されたナット41と、前記底面部の長手方向に形成された長孔320を挿通するとともに前記ナットに螺合されるボルト42とを備えたことを特徴とする。
この発明では、ブラケットによって、床梁の梁端部の下方と左右方向との位置決めがされるので、床梁を適正にブラケットに取り付けることができる。
【0015】
しかも、この構成では、底面部に長孔が形成されることで、ブラケットと床梁との床梁長手方向の位置がずれても、床梁をブラケットに容易にボルトとナットで接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態にかかる床梁支持構造の正面図。
図2】床梁の平面図。
図3】床梁の正面図。
図4】床梁の端面図。
図5】床梁の要部を示す正面図。
図6】床梁支持構造の要部を示す正面図。
図7】ブラケットの平面図。
図8】ブラケットの正面図。
図9】ブラケットの断面図。
図10】座金板の平面図。
図11】(A)〜(D)は床梁を製造する手順を示す概略図。
図12】本発明の第2実施形態の床梁の要部を示す正面図。
図13図12中A-A線に沿う矢視断面図。
図14】本発明の第3実施形態の床梁の要部を示す正面図。
図15図14中A-A線に沿う矢視断面図。
図16】本発明の第4実施形態の床梁の要部を示す正面図。
図17図16中A-A線に沿う矢視断面図。
図18】本発明の第5実施形態の床梁の要部を示す正面図。
図19図18中A-A線に沿う矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここで、各実施形態の説明において、同一構成要素は同一符号を付して説明を省略する。
図1から図11には第1実施形態が示されている。
全体構成を示す図1において、第1実施形態は、鋼製の床梁1と、この床梁1の梁端部1Aを建物躯体Aに支持させるための床梁支持構造2とを備える。
本実施形態では、建物躯体Aは、例えば、基礎、土台、大引き等を例示できる。床梁1は、一階部分の床梁に限定されるものではなく、二階以上に設置される床梁であってもよい。
【0018】
床梁1の具体的な構造を図2から図5に基づいて説明する。
図2から図5において、床梁1は、ウェブ11と、ウェブ11の上縁に接合された上部フランジ12と、ウェブ11の下縁に接合された下部フランジ13と、梁端部1Aの端面を覆う端板部14と、上部フランジ12と下部フランジ13との間に設けられたスチフナ15と、を備えている。
上部フランジ12は、ウェブ11の長手方向に沿って同じ厚さ寸法とされる。
【0019】
ウェブ11の梁端部1Aは、下端部が切り欠かかれて形成されている。床梁1の上部フランジ12から下部フランジ13までの長さ(梁成)は、長手方向の両側に位置する梁端部1Aが梁中央部1Bより低い。
梁端部1Aに位置する下部フランジ13は、上部フランジ12と平行に配置された接合片部13Aと、この接合片部13Aに一体形成され梁中央部1Bに端部が接続される傾斜片部13Bとを有する。接合片部13Aの傾斜片部13Bに対する角度のうち鈍角の角度θは、適宜設定されるが、例えば、90°から150°であり、本実施形態は、120°である。図5では、接合片部13Aと傾斜片部13Bの厚さ寸法taは、上部フランジ12の厚さ寸法tより大きい。なお、本実施形態では、上部フランジ12や下部フランジ13等の厚さは適宜設定できるものであり、上部フランジ12が厚く設計されている場合は、上部フランジ12と下部フランジ13との厚さを等しくするものでもよい。
【0020】
梁中央部1Bに位置する下部フランジ13は、上部フランジ12と平行に配置された底面片部13Cを備え、この底面片部13Cの厚さ寸法tbは、上部フランジ12の厚さ寸法tと同じである。底面片部13Cの端部と傾斜片部13Bの端部とは、突き合わされている。
端板部14は、接合片部13Aと上部フランジ12との端縁部に接合されている。端板部14の厚さ寸法teは、接合片部13A及び傾斜片部13Bの厚さ寸法taと同じである。
上部フランジ12、下部フランジ13及び端板部14は、同じ幅寸法である(図2及び図4参照)。なお、本実施形態では、上部フランジ12と下部フランジ13及び端板部14との幅寸法を変えるものでもよく、例えば、上部フランジ12の幅寸法を下部フランジ13及び端板部14の幅寸法よりも大きくしてもよい。
上部フランジ12、下部フランジ13及び端板部14の幅方向(長手方向と直交する方向)の中心にウェブ11が位置している。
【0021】
ここで、床梁1の長さや梁成は、隣合う建物躯体Aの間の寸法、建物躯体Aの幅寸法、その他の条件により決定されるが、例えば、床梁1の全体の長さは、1400mm〜5200mm程度である。梁端部1Aの長さは、450mm〜520mm程度であり、梁中央部の長さは、600mm〜4000mm程度であり、接合片部13Aの長さは、420mm程度である、
梁中央部1Bの梁成は、100mm〜350mm程度であり、梁端部1Aのうち接合片部13Aの領域の梁成は、90mm〜120mm程度である。
接合片部13A、傾斜片部13B及び端板部14の厚さ寸法の上部フランジ12及び底面片部13Cの厚さ寸法に対する比率は、適宜設定されるが、1.2〜2.0倍程度である。例えば、接合片部13A、傾斜片部13B及び端板部14の厚さ寸法を6mmとし、上部フランジ12及び底面片部13Cの厚さ寸法を4.5mmとすることができる。
【0022】
スチフナ15は、底面片部13Cと傾斜片部13Bとの突き合わせ箇所に下端縁が接合された第一スチフナ151と、傾斜片部13Bと接合片部13Aとの接続箇所に下端縁が接合された第二スチフナ152と、接合片部13Aにそれぞれ下端縁が接合された2箇所の第三スチフナ153とを備えている。第一スチフナ151、第二スチフナ152及び第三スチフナ153は、それぞれ上部フランジ12に対して直角となるように上端縁が接合される。
第一スチフナ151は、ウェブ11を挟んだ2枚が対とされている。同様に、第二スチフナ152は、ウェブ11を挟んだ2枚が対とされており、第三スチフナ153は、それぞれウェブ11を挟んだ2枚が対とされている。第一スチフナ151、第二スチフナ152及び第三スチフナ153のウェブ11に対向した側面縁は、それぞれウェブ11に接合されている。
スチフナ15は、上部フランジ12と同じ厚さ寸法である。
【0023】
図6には床梁支持構造2の要部が示されている。
図6において、床梁支持構造2は、梁端部1Aの一部を受けるとともに建物躯体Aに取り付けられたブラケット3と、ブラケット3と梁端部1Aとを接合する接合部材4とを備えている。
接合部材4は、下部フランジ13の接合片部13Aに予め接合されたナット41と、ナット41に螺合されるボルト42とを備えている。接合片部13Aにはナット41に対応する位置にボルト挿通孔130が形成されている。
ボルト42とナット41との間には座金板5が介装されている。
ナット41は、接合片部13Aであって2枚の第三スチフナ153に挟まれた領域に2個配置されている。これらのナット41は、ウェブ11を挟んで対向配置されているため、1つの梁端部1Aにつき4個が配置されることになる(図2参照)。
【0024】
ブラケット3は、建物躯体Aに取り付けられる取付片部31と、取付片部31に接合された本体部32とを有する。
ブラケット3の詳細な構成が図7から図9に示されている。
図7から図9において、取付片部31は、建物躯体Aの側面に当接する平板部311と、平板部311の上端縁に接合され建物躯体Aの上面に係止される係止片部312とを有する。
平板部311と係止片部312とは1枚の金属板をプレス成形等によって折り曲げて形成されるものであり、その成形時において、平板部311と係止片部312との接続部分には複数の補強用リブ313が一体に形成される。補強用リブ313は、金属板をプレス成形等で折り曲げ形成する際に、平板部311と係止片部312とが直角となる部分に形成される凹部と、この凹部に対応する外側の部分に凸部とから構成される。
平板部311にはブラケット3をボルト等の取付具(図示せず)で建物躯体Aに取り付けるための取付孔31Aが複数形成されている。
【0025】
本体部32は、梁端部1Aの接合片部13Aを支持する底面部32Aと、底面部32Aの両側にそれぞれ設けられウェブ11に対向する側面部32Bと、側面部32Bの上端から外側に向けて伸びた鍔部32Cとを有する。
底面部32Aには、床梁1の長手方向に沿ってボルト42を挿通する長孔320が形成されている。
鍔部32Cは、上部フランジ12の幅寸法が下部フランジ13及び端板部14の幅寸法より大きい場合には、上部フランジ12の外側下端を受けることが可能となる。
【0026】
1箇所の長孔320は、それぞれ床梁1の長手方向に沿って配置された2個のナット41に対応したボルト42を挿通するものであり、ナット41がウェブ11を挟んで2列配置されていることから、長孔320は2箇所形成されている。
互いに対向する側面部32Bの間の寸法は、梁端部1Aの水平方向の寸法と同じかやや大きい。
座金板5の構成が図10に示されている。
図10において、座金板5は、平面矩形状の板に4箇所のボルト挿通孔5Aが形成された構造である。本実施形態では、4本のボルト42をそれぞれナット41に螺合する際に1枚の座金板5を用いるため、強度面圧を下げることができる。
【0027】
以上の構成の第1実施形態の床梁1を建物躯体Aで支持する方法を説明する。
まず、図11に基づいて、床梁1を製造する方法を説明する。
図11(A)に示される通り、床梁用のH型鋼(例えば、JISG3353のSWH400)を用意し、梁端部1Aに対応するウェブ11及び下部フランジ13を切断する。
その後、図11(B)に示される通り、長尺状の鋼板から端板部14、接合片部13A及び傾斜片部13Bが一体となった部材を折曲加工等によって予め形成し、この折り曲げられた板状の部材をウェブ11に溶接する。なお、接合片部13Aに予めナット41を溶接等で接合しておく。
【0028】
ここで、溶接箇所は、図11(C)に示される通りである。つまり、底面片部13Cと傾斜片部13Bとの突き合わせ部分P1で溶接する。傾斜片部13B及び接合片部13Aの曲折部とウェブ11の下端縁入隅部との当接部分P2で溶接する。接合片部13Aの上面とウェブ11の下端縁とであって2個のナット41の間の当接部分P3で溶接する。当接部分P3のナット41を挟んだ両側の当接部分P4で溶接する。端板部14とウェブ11の側縁部及び上部フランジ12の端縁との上下に沿った当接部分P5で溶接する。
さらに、図11(D)に示される通り、上部フランジ12と下部フランジ13との間の所定箇所に第一スチフナ151、第二スチフナ152及び第三スチフナ153を溶接等で接合する。
【0029】
次に、このように製造された床梁1を、互いに対向する建物躯体Aにそれぞれ取り付けられたブラケット3に支持する。
そのため、ブラケット3の取付片部31を建物躯体Aに取り付けておき、その後、ブラケット3の本体部32に床梁1の梁端部1Aを支持する。この際、床梁1の長手方向に並んだ2個のナット41が底面部32Aの長孔320に位置するように、床梁1の位置を調整する。
その後、座金板5をブラケット3の底面部32Aの下方に位置させた状態で、ボルト42をナット41に螺合する。
【0030】
従って、第1実施形態では次の作用効果を奏することができる。
(1)ウェブ11と、ウェブ11の上下に接合された上部フランジ12及び下部フランジ13とを備え、上部フランジ12から下部フランジ13までの高さを、梁中央部1Bより梁端部1Aを低くした。そのため、床下の高さは、梁端部1Aが梁中央部1Bより高くなるため、梁端部1Aでの床下空間が広いものとなり、床下での作業が容易となる。
【0031】
(2)下部フランジ13の厚さ寸法を、梁端部1Aが梁中央部1Bに比べて厚く設定したので、梁成が短い梁端部1Aにおける梁強度を大きなものにできる。
【0032】
(3)梁端部1Aにおいて、上部フランジ12と下部フランジ13との間にスチフナ151〜153をウェブ11と直交するように設けた。そのため、梁成が短い梁端部1Aの梁強度をスチフナ151〜153によって大きなものにできる。
【0033】
(4)床梁支持構造2を、梁端部1Aを受けるブラケット3と、ブラケット3と梁端部1Aとを接合する接合部材4とを備えた構成とした。ブラケット3を、梁端部1Aの接合片部13Aを支持する底面部32Aと、底面部32Aの両側にそれぞれ設けられウェブ11に対向する側面部32Bとを有する構成とした。そのため、ブラケット3によって、床梁1の梁端部1Aの下方と左右方向との位置決めがされるので、床梁1を適正にブラケット3に取り付けることができる。
【0034】
(5)接合部材4を、梁端部1Aを構成する接合片部13Aに予め接合されたナット41と、底面部32Aの長手方向に形成された長孔320を挿通するボルト42とを備えて構成した。底面部32Aに形成される長孔320によって、ブラケット3と床梁1との床梁長手方向の位置がずれても、床梁1をブラケット3に容易に取り付けることができる。
【0035】
(6)床梁1は、接合片部13Aに一体形成されかつ接合片部13Aと上部フランジ12との端縁部に接合される端板部14を備えたので、床梁1のねじり等に対する強度を大きなものにできる。
【0036】
本発明の第2実施形態を図12及び図13に基づいて説明する。
第2実施形態は、床梁1に補強プレートを設ける点及びスチフナの設置箇所で第1実施形態とは異なるもので、他の構成は、第1実施形態と同じである。
図12及び図13において、第2実施形態では、スチフナ15のうち第二スチフナ152が省略されて第一スチフナ151及び第三スチフナ153が梁端部1Aに設けられている。なお、上部フランジ12の長手方向と直交する幅方向の寸法は、下部フランジ13の幅方向寸法より長い。
梁端部1Aの上部フランジ12と下部フランジ13との間にはウェブ11と平行に補強プレート6が設けられている。
【0037】
補強プレート6は、ウェブ11の平面に重ねて接合された第一補強プレート61と、第一補強プレート61から離れて配置された第二補強プレート62とを有する。これらの第一補強プレート61と第二補強プレート62とは、ウェブ11を挟んでそれぞれ一対配置されている。
第一補強プレート61と第二補強プレート62との厚さ寸法は、同じであっても、異なってもよい。例えば、第一補強プレート61の厚さ寸法を4.5mmとし、第二補強プレート62の厚さ寸法を6.0mmとする。
【0038】
第一補強プレート61は、平面矩形状であり、その梁中央部側に位置する基端縁は、第一スチフナ151と接合され、梁中央部とは反対側に位置する先端縁は、第三スチフナ153に接合される。
第一補強プレート61は、その上端縁が上部フランジ12から離れており、その下端縁が接合片部13Aから離れている。
第二補強プレート62は、平面が上部フランジ12、接合片部13A、傾斜片部13B、第一スチフナ151及び第二スチフナ側の第三スチフナ153で囲われた形状である。第二補強プレート62の上縁は上部フランジ12の下面と接合されている。第二補強プレート62の下縁は接合片部13Aと傾斜片部13Bとに接合されている。第二補強プレート62は、その基端縁が第一スチフナ151と接合され、その先端縁が第三スチフナ153と接合される。
【0039】
第2実施形態では、第1実施形態の(1)〜(6)と同じ効果を奏することができる他、次の効果を奏することができる。
(7)梁端部1Aには、上部フランジ12と接合片部13A及び傾斜片部13Bとの間にウェブ11と平行に補強プレート6が設けられているから、梁成が短い梁端部1Aにおける梁強度を大きなものにできる。特に、接合片部13Aと傾斜片部13Bという強度が低下している箇所に補強プレート6が設けられるので、効果的な床梁1の補強をすることができる。
【0040】
(8)第一補強プレート61は、ウェブ11に重ねられた状態で接合されている。第一補強プレート61がウェブ11に接合されることで、ウェブ11の全体の厚みを厚くすることで、大きな補強効果を得ることができる。
【0041】
(9)第二補強プレート62は、ウェブ11から離れて配置され、その上縁が上部フランジ12の下面と接合され、その下縁が接合片部13A及び傾斜片部13Bの上面に接合されている。そのため、上部フランジ12や下部フランジ13が大きな荷重によって変形することを防止できる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態を図14及び図15に基づいて説明する。
第3実施形態は、第2実施形態とは第一補強プレート61を設けない点で異なり、他の構成は第2実施形態と同じである。
図14及び図15において、第3実施形態では、補強プレート6は、ウェブ11の平面から離れて配置された第二補強プレート62のみであり、第一補強プレート61が配置されていない。
第3実施形態では、第2実施形態の(1)〜(7)(9)と同じ効果を奏することができる。
【0043】
次に、本発明の第4実施形態を図16及び図17に基づいて説明する。
第4実施形態は、第2実施形態とは、2枚ある第三スチフナ153のうち基端側の1枚を設けない点、並びに、補強プレートの形状が異なる点で異なり、他の構成は第2実施形態と同じである。
図16及び図17において、第4実施形態では、スチフナ15は、第一スチフナ151と端板部14に近接した第三スチフナ153とから構成されている。
第一補強プレート61は、平面矩形状であり、その基端縁は、第一スチフナ151と接合され、その先端縁は、第三スチフナ153に接合される。
【0044】
第二補強プレート62は、上部フランジ12、接合片部13A、傾斜片部13B、第一スチフナ151及び端板部側の第三スチフナ153で囲われた形状である。第二補強プレート62は、その基端縁が第一スチフナ151と接合され、その先端縁が第三スチフナ153と接合される。
第4実施形態では、第2実施形態の(1)〜(9)と同じ効果を奏することができる。
【0045】
次に、本発明の第5実施形態を図18及び図19に基づいて説明する。
第5実施形態は、第2実施形態とは第二補強プレート62を設けない点で異なり、他の構成は第2実施形態と同じである。
図18及び図19において、第5実施形態では、補強プレート6は、ウェブ11の平面に重ねて接合された第一補強プレート61のみであり、第二補強プレート62が配置されていない。そのため、第一補強プレート61が外方に露出することになる。
第5実施形態では、第2実施形態の(1)〜(8)と同じ効果を奏することができる。
【0046】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示される変形をも含むものである。
例えば、前記各実施形態では、床梁1の補強として、スチフナ15及び補強プレート6を設けたが、本発明では、必ずしも、これらの補強部材を設けることを要しない。
また、本発明では、梁端部1Aの形状を平年矩形状としてもよい。
さらに、下部フランジ13の厚さ寸法を、梁端部1Aが梁中央部1Bに比べて厚くしたが、本発明では、上部フランジ12と下部フランジ13との厚さ寸法を同じにしてもよく、仮に、相違させる場合であっても、上部フランジ12の厚さを下部フランジ13に対して厚くするものでもよい。
前記実施形態では、4本のボルト42をそれぞれナット41に螺合する際に1枚の座金板5を用いたが、本発明では、1枚の座金板5を用いる代わりに、ボルト42毎に座金を用いてもよい。
【実施例】
【0047】
本発明の効果を確認するための実施例について説明する。
[試験体]
スチフナ及び補強プレートを設けていない床梁の試験体1と、スチフナのみを設けた床梁の試験体2と、スチフナ及び補強プレートを設けた床梁の試験体3との3種類を用意した。
床梁1は、全長が3298mmであり、梁端部1Aの長さが487mmであり、梁中央部1Bの長さが2324mmである。梁成は、梁中央部1Bが200mmであり、梁端部1Aのうち接合片部13Aに相当する領域が91.5mmである。
試験体2,3では、第一スチフナ151から第三スチフナ153の全てが配置されており、試験体3の補強プレートは、第5実施形態で示されるように、第一補強プレート61のみである。なお、第一補強プレート61の厚さ寸法は6mmである。
【0048】
[試験方法]
建物躯体Aに取り付けられたブラケット3で床梁1の梁端部1Aを支持させる。床梁1の両端縁から所定長さ(梁中央部1Bの位置)にそれぞれ荷重をかける。
各試験体1〜3に、床梁1やブラケット3が破壊するまで荷重をかけ、その際の複数地点での変位を測定する。
【0049】
[試験結果]
スチフナや補強プレートがない試験体1では、上部フランジ12や下部フランジ13の座屈、ウェブ11の破断が生じた。
スチフナ15がある試験体2では、上部フランジ12や下部フランジ13の座屈が生じた。
スチフナ15及び第一補強プレート51がある試験体3では、床梁1自体が破壊される前に、ブラケット3から床梁1が外れた。
以上の試験結果から、スチフナ15及び第一補強プレート61がある試験体3、スチフナ15のみがある試験体2、スチフナ及び補強プレートの双方がない試験体1の順番で、強度が大きいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、住宅、その他の建物の床梁に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…床梁、1A…梁端部、1B…梁中央部、2…床梁支持構造、3…ブラケット、4…接合部材、6…補強プレート、11…ウェブ、12…上部フランジ、13…下部フランジ、13A…接合片部、13B…傾斜片部、13C…底面片部、15…スチフナ、32…本体部、32A…底面部、32B…側面部、41…ナット、42…ボルト、61…第一補強プレート、62…第二補強プレート、151…第一スチフナ、152…第二スチフナ、153…第三スチフナ、A…建物躯体
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