(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<模様紙>
当該模様紙は3層以上の抄き合せによる多層構造を有する。この多層構造は表面に位置する第1紙層及びこの第1紙層の直下に積層される第2紙層を含む3層以上の紙層である。第1紙層及び第2紙層以外の紙層(以下、「その他の紙層」ともいう)は、第2紙層の直下に抄き合せにより積層される。すなわち、表面側から順に、第1紙層、第2紙層、その他の紙層の順に多層に抄き合せ積層される。
【0018】
当該模様紙の層数の上限としては、6層が好ましく、5層がより好ましい。上記層数が7層以上であると生産工程が複雑となるおそれがある。
【0019】
[第1紙層]
第1紙層は当該模様紙の表面に位置する紙層である。上記第1紙層の原料繊維としては例えば木材パルプ、古紙パルプ、非木材パルプ、合成繊維等が挙げられる。また、第1紙層は本発明の効果を損なわない範囲でその他の抄紙用薬剤を含有してもよい。
【0020】
(原料繊維)
上記木材パルプとしては、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)等の機械パルプが挙げられる。
【0021】
上記古紙パルプとしては、例えば茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙、更紙古紙、これらの古紙を脱墨処理した脱墨パルプ(DIP)等が挙げられる。
【0022】
上記非木材パルプとしては、例えばリンターパルプ、麻、バガス、ケナフ、エスパルト草、竹、わら等が挙げられる。
【0023】
上記合成繊維としては、例えばポリビニルアルコール系繊維、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル系繊維、ナイロン等のポリアミド系繊維、アセテート等のセルロース系繊維、プロミックス等のタンパク質系繊維、レーヨン等のセルロース系再生繊維、アクリロニトリル系繊維、炭素繊維、ポリオレフィン系繊維、ビニロン繊維などが挙げられる。
【0024】
第1紙層の原料繊維としては、強度及び透明性を両立する観点から、これらの中で漂白処理を施した木材パルプが好ましく、LBKP、NBKPがさらに好ましい。第1紙層としては、これらの原料繊維を1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
第1紙層におけるLBKPの含有量としては、100質量%が好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、80質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。このように第1紙層のLBKPの含有量を上記範囲内とすることで、第1紙層の印刷適性、透明度及び強度を共に高いレベルとすることができる。
【0026】
(その他の抄紙用薬剤)
上記その他の抄紙用薬剤としては、例えばサイズ剤、紙力増強剤、歩留向上剤、填料、顔料、染料等が挙げられる。
【0027】
上記サイズ剤としては、例えばロジンサイズ、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)、ポリビニルアルコール(PVA)等の公知のサイズ剤を用いることができる。また、第1紙層におけるサイズ剤の含有量としては、5kg/t以上15kg/t以下が好ましく、7kg/t以上12kg/t以下がより好ましい。
【0028】
上記紙力増強剤としては乾燥紙力増強剤や湿潤紙力増強剤があり、乾燥紙力増強剤としては、例えばカチオン澱粉、両性澱粉、ポリアクリルアミド(PAM)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられ、湿潤紙力増強剤としては、例えばポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等が挙げられる。上記紙力増強剤の電荷としては特に限定されず、カチオン性、アニオン性又は両性のいずれを用いてもよい。また、第1紙層における紙力増強剤の含有量としては、5kg/t以上15kg/t以下が好ましく、7kg/t以上12kg/t以下がより好ましい。
【0029】
上記填料としては、例えば再生粒子、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、サチンホワイト、ケイ酸アルミニウム、ケイソウ土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機填料;スチレン系プラスチックピグメント、アクリル系プラスチックピグメント、ポリエチレン、マイクロカプセル、尿素/ホルマリン樹脂、メラミン樹脂等の有機填料等が挙げられる。
【0030】
第1紙層の坪量としては、5g/m
2以上25g/m
2以下であり、6g/m
2以上23g/m
2以下がより好ましく、7g/m
2以上20g/m
2以下がさらに好ましい。第1紙層の坪量が上記上限を超えると、第2紙層に含まれる粉砕物が視認しづらくなるおそれがある。逆に、第1紙層の坪量が上記下限未満の場合、第1紙層の強度が不十分となるおそれがある。
【0031】
第1紙層の灰分は、視認性と印刷適性を確保する観点から、極力少なくすることが好ましい。第1紙層の坪量が20g/m
2超25g/m
2以下の場合の第1紙層の灰分の上限としては、1.5質量%が好ましく、1.2質量%がより好ましい。一方、上記第1紙層の灰分の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましい。
【0032】
また、第1紙層の坪量が5g/m
2以上20g/m
2以下の場合の第1紙層の灰分の上限としては、5.5質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。一方、上記第1紙層の灰分としては、1.5質量%超が好ましく、1.6質量%超がより好ましい。
【0033】
第1紙層の灰分が上記上限を超えると、第1紙層の表面強度が低下し、当該模様紙の印刷適正が不十分となるおそれがある。また、第2紙層に含まれる粉砕物が視認しづらくなるおそれがある。特に、古紙パルプや非木材パルプを第1紙層の原料として用いる場合、古紙及び非木材繊維由来の灰分を考慮し、これらのパルプの使用量を調整する必要がある。逆に、第1紙層の灰分が上記下限未満の場合、当該模様紙の製造コストが増大するおそれがある。
【0034】
第1紙層の白紙不透明度としては、40%以上60%以下が好ましく、45%以上60%以下がより好ましく、50%以上60%以下がさらに好ましい。上記白紙不透明度が上記上限を超えると、本来の透明紙としての機能が得られにくいおそれがある。逆に、上記白紙不透明度が上記下限未満の場合、第1紙層の表面側に設けられる印刷情報と第2紙層の粉砕物が醸し出す模様とが重なり、印刷情報の顕在性が損なわれるおそれがある。
【0035】
[第2紙層]
第2紙層は、上記第1紙層の裏面側直下に積層され、植物の乾燥粉砕物を含有する層である。第2紙層の原料繊維としては、上記第1紙層において例示したものと同様の繊維が挙げられる。また、第2紙層は本発明の効果を損なわない範囲で、その他の抄紙用薬剤を含有してもよい。
【0036】
第2紙層の原料繊維としては、木材パルプ、非木材パルプが好ましく、化学パルプ、リンターパルプがより好ましい。第2紙層の原料繊維として木材パルプを用いると第2紙層の強度が増すため、当該模様紙を段ボール箱等に好適に用いることができる。一方、第2紙層の原料繊維として非木材パルプを用いると第2紙層の柔軟性が増すため、当該模様紙を手提げ袋等に好適に用いることができる。
【0037】
第2紙層が含有できるその他の抄紙用薬剤としては、上記第1紙層において例示したものと同様のものが挙げられる。第2紙層におけるサイズ剤の含有量としては、5kg/t以上13kg/t以下が好ましく、7kg/t以上11kg/t以下がより好ましい。第2紙層における紙力増強剤の含有量としては、5kg/t以上15kg/t以下が好ましく、7kg/t以上12kg/t以下がより好ましい。第2紙層における歩留向上剤の含有量としては、10kg/t以上25kg/t以下が好ましく、12kg/t以上20kg/t以下がより好ましい。
【0038】
第2紙層が含有する植物の乾燥粉砕物は、第1紙層及び第2紙層の原料繊維と薬品の吸着性が異なる。このため、第2紙層におけるサイズ剤の含有量を第1紙層におけるサイズ剤の含有量より少なくすることで、抄き合せによる第1紙層のサイズムラの低減が図れ、好適な印刷適性を確保することができる。
【0039】
同様に、第2紙層における紙力増強剤の含有量を第1紙層における紙力増強剤の含有量より少なくすることで、第2紙層の柔軟性を確保でき、カレンダ等の平坦化処理による当該模様紙の平坦性を好適に確保することができ、印刷適性を向上することができる。
【0040】
また、第2紙層は美粧性を向上させる観点から着色されていてもよい。この着色方法としては、原料繊維に染料、顔料等を添加する方法等が挙げられる。この染料及び顔料としては、通常紙の染色に用いられるものが挙げられる。
【0041】
第2紙層の坪量としては、15g/m
2以上50g/m
2以下が好ましく、18g/m
2以上48g/m
2以下がより好ましい。第2紙層の坪量が上記上限を超えると、当該模様紙の厚みが不必要に肥大化するおそれがある。逆に、第2紙層の坪量が上記下限未満の場合、第2紙層の強度が不十分となるおそれがある。
【0042】
(植物の乾燥粉砕物)
植物の乾燥粉砕物は第2紙層に含有される。この粉砕物は第1紙層を通して当該模様紙の表面側から視認できる。これにより、当該模様紙の美粧性が向上する。また、上記粉砕物は植物由来であるため鉱物等由来の粉砕物に比べ塑性変形しやすい。その結果、通常の抄紙工程におけるカレンダー処理により粉砕物が変形し、当該模様紙の表面の平滑性が向上する。従って、印刷適正を向上させるための追加の工程を必要とせず、低コストで印刷適正に優れる模様紙を得ることができる。
【0043】
上記粉砕物としては、植物由来であり、紙に添加できる程度に粉砕できるものであれば特に限定されないが、例えば果物及び野菜の外被、果物及び野菜の茎、果物及び野菜の種、穀物の外被、茶葉及びコーヒー豆の抽出残渣等の非食部などが挙げられる。これらの中で、蜜柑の外皮、蜜柑の種、桃の種、柿の種、バナナの茎から得られるバナナ繊維、茶殻、コーヒー豆が好ましい。これらの非食部は、農作物等の収穫過程及び農作物等を食品に加工する過程で大量に得ることができ、加工も容易である。従って、当該模様紙を安価に製造することができる。このコーヒー豆としては、豆を焙煎したもの、この焙煎した豆からコーヒーを抽出した後の残渣、シルバースキン等を用いることができ、これらの中でシルバースキンが好ましい。
【0044】
粉砕物の粒径としては、0.5mm以上10mm以下が好ましく、1mm以上7mm以下がより好ましく、2mm以上5mm以下がさらに好ましい。粉砕物の粒径が上記上限を超えると、当該模様紙の表面の凹凸が大きくなり、印刷適正が低下するおそれがある。逆に、粉砕物の粒径が上記下限未満の場合、粉砕物が視認しづらくなり、美粧性に劣るおそれがある。なお、ここで粒径とは、目視及び光学顕微鏡により当該模様紙を観察し、5cm
2内の各粉砕物の最小外接円の直径を平均した値である。
【0045】
上記粉砕物の含有量としては、第2紙層全体の0.5質量%以上20質量%以下であり、2質量%以上18質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。粉砕物の含有量が上記上限を超えると、粉砕物が脱落しやすくなるおそれがある。逆に、粉砕物の含有量が上記下限未満の場合、当該模様紙の美粧性が向上しづらくなるおそれがある。
【0046】
上記粉砕物は漂白されていてもよい。粉砕物が濃色の場合、漂白を行い淡色とすることで、印刷された文字等をより鮮明なものとすることができ、美粧性が向上する。この漂白に用いる薬品としては、通常漂白に用いるものを採用でき、例えば次亜塩素酸ソーダ等が挙げられる。
【0047】
上記粉砕物の製造方法としては、植物を乾燥させ、ハンマーミル、ボールミル、サンドミル、コーヒーミル等を用いて粉砕する方法が挙げられる。また、パルプの叩解処理に用いるシングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー等を用いて粉砕してもよい。さらに、植物を乾燥させたものを上記原料繊維に添加し、その後パルプの叩解処理を行うことで原料繊維と共に植物の乾燥物を粉砕してもよい。
【0048】
[その他の紙層]
その他の紙層は、第2紙層の裏面側直下に積層される層である。その他の紙層により、第2紙層の裏面側からの植物の乾燥粉砕物の脱落が低減される。その他の紙層の原料繊維としては、上記第1紙層において挙げたものと同様の繊維が挙げられる。また、その他の紙層は本発明の効果を損なわない範囲で、その他の抄紙用薬剤を含有してもよい。
【0049】
その他の紙層は1層のみでもよく、複数の層であってもよい。その他の紙層が複数の層である場合、それらの層は同一でもよく、異なっていてもよい。
【0050】
その他の紙層の原料繊維としては古紙パルプが好ましい。その他の紙層に古紙パルプを用いることで、当該模様紙を安価に製造することができる。
【0051】
その他の紙層が含有できるその他の抄紙用薬剤としては、上記第1紙層において例示したものと同様のものが挙げられる。その他の紙層におけるサイズ剤の含有量としては、5kg/t以上13kg/t以下が好ましく、7kg/t以上11kg/t以下がより好ましい。その他の紙層における歩留向上剤の含有量としては、20kg/t以上40kg/t以下が好ましく、25kg/t以上35kg/t以下がより好ましい。
【0052】
その他の紙層における紙力増強剤の含有量としては、5kg/t以上15kg/t以下が好ましく、7kg/t以上12kg/t以下がより好ましい。また、その他の紙層が複数の層である場合、最外層(当該模様紙の最も裏面側に位置する層)のみが紙力増強剤を含有することが好ましい。このように最外層のみが紙力増強剤を含有することで、紙力増強剤の使用量を抑えつつ当該模様紙の強度を保つことができ、当該模様紙の製造にかかるコストを低減することができる。
【0053】
その他の紙層の1層あたりの坪量としては、20g/m
2以上55g/m
2以下が好ましく、22g/m
2以上50g/m
2以下がより好ましい。このようにその他の紙層の1総当たりの坪量を上記範囲とすることで当該模様紙の強度及び加工性が共に向上する。
【0054】
また、その他の紙層を第1紙層又は第2紙層と同様のものとすることもできる。この場合、好適な原料繊維、その他の抄紙用薬剤の含有量及び坪量は上記第1紙層及び第2紙層と同じとなる。具体的には、その他の紙層のうち最も裏面側に位置する紙層が第1紙層と同様のものであり、かつこの最も裏面側に位置する紙層の内側に位置する層が第2紙層と同様のものであることが好ましい。このように、裏面側においても粉砕物を含有する紙層及びその外側を被覆する紙層を備えることで、当該模様紙は表面及び裏面の両方において美粧性等に優れる。
【0055】
[塗工層]
当該模様紙は視認性を阻害しない範囲で塗工層を有してもよい。この塗工層は、塗工液を当該模様紙に塗工、噴霧等することにより形成できる。また、塗工層は第1層の表面及び上記最外層の裏面に積層されてもよく、第1層の表面又は最外層の裏面のいずれか一方の面上のみに積層されてもよい。また、当該模様紙の各紙層の間に積層されてもよい。
【0056】
上記塗工に用いる装置としては、例えばサイズプレス、ブレードメタリングサイズプレス、ロッドメタリングサイズプレス、ブレードコーター、バーコーター、ゲートロールコーター、ロッドコーター、エアナイフコーター等が挙げられる。また、上記噴霧に用いる方法としては、例えば公知のスプレー装置等を用いることができる。
【0057】
(塗工液)
上記塗工液の形態としては、溶液、エマルジョン等が挙げられる。また、塗工液中に含まれる塗工用薬剤としては、例えば外添紙力増強剤、表面サイズ剤、バインダー、顔料、染料、蛍光増白剤、消泡剤、着色剤、保水剤等が挙げられる。
【0058】
上記塗工液は表面サイズ剤を含有することが好ましい。塗工液が表面サイズ剤を含有することで、当該模様紙からの粉砕物の脱落をより低減できる。このような表面サイズ剤としては、例えば上記第1紙層において例示したサイズ剤と同様のものが挙げられる。これらの中で、ポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。
【0059】
上記塗工液中の表面サイズ剤の含有量としては、0質量%以上5質量%以下が好ましく、0質量%以上2質量%以下がより好ましい。上記表面サイズ剤の含有量を上記範囲とすることで、粉砕物の脱落を低減しつつ、印刷適正及び美粧性を共に高いレベルとすることができる。
【0060】
<模様紙の物性>
当該模様紙の坪量としては、40g/m
2以上600g/m
2以下が好ましく、50g/m
2以上500g/m
2以下がより好ましく、60g/m
2以上300g/m
2以下がさらに好ましい。このように当該模様紙の坪量を上記範囲とすることで当該模様紙の強度が向上する傾向がある。
【0061】
当該模様紙の表面の接触時間120秒の吸水度としては、20g/m
2以上100g/m
2以下が好ましく、40g/m
2以上80g/m
2以下がより好ましい。また、裏面の接触時間120秒の吸水度としては、20g/m
2以上100g/m
2以下が好ましく、40g/m
2以上80g/m
2以下がより好ましい。上記吸水度を上記範囲とすることで当該波板原紙の不用意な濡れに伴う強度低下を低減できる。なお、ここで吸水度(単位:g/cm
3)はJIS−P−8140:1998「紙及び板紙−吸水度試験方法−コッブ法」に準拠して評価する。
【0062】
当該模様紙の縦目方向の引裂強度としては、800mN以上1,500mN以下が好ましく、900mN以上1,400mN以下がより好ましい。一方、当該模様紙の横目方向の引裂強度としては、900mN以上1,600mN以下が好ましく、1,000mN以上1,500mN以下がより好ましい。このように当該模様紙の引裂強度を上記範囲とすることで当該模様紙の強度が向上する傾向がある。なお、ここで引裂強度(単位:mN)はJIS−P−8116:2000「紙−引裂強さ試験方法−エルメンドルフ形引裂試験機法」に準拠して評価する。
【0063】
当該模様紙の縦目方向の引張強度としては、2kN/m以上12kN/m以下が好ましく、4kN/m以上8kN/m以下がより好ましい。一方、当該模様紙の横目方向の引張強度としては、0.8kN/m以上6kN/m以下が好ましく、1.2kN/m以上4.5kN/m以下が好ましい。このように当該模様紙の引張強度を上記範囲とすることで当該模様紙の強度が向上する傾向がある。なお、ここで引張強度(単位:kN/m)はJIS−P−8113:2006「紙及び板紙−引張特性の試験方法−第2部:定速伸張法」に準拠して評価する。
【0064】
当該模様紙の層間強度としては、80mJ以上150mJ以下が好ましく、90mJ以上130mJ以下がより好ましい。当該模様紙の層間強度が上記上限を超えると、当該模様紙の柔軟性が低下するおそれがある。逆に、当該模様紙の層間強度が上記下限未満の場合、当該模様紙の強度が不十分となるおそれがある。なお、ここで層間強度(単位:mJ)はTAPPI UM403に準拠しインターナルボンドテスターを用いて測定する。
【0065】
当該模様紙のサイズ度としては、20秒以上100秒以下が好ましく、40秒以上95秒以下がより好ましい。当該模様紙のサイズ度が上記上限を超えると、印刷、接着等の加工が困難になるおそれがある。逆に、当該模様紙のサイズ度が上記下限未満の場合、当該模様紙が水濡れし易く、包装材として使用し難くなるおそれがある。なお、ここでサイズ度(単位:秒)はJIS−P−8122:2004「紙及び板紙−サイズ度試験方法−ステキヒト法」に準拠して評価する。
【0066】
当該模様紙の表面における表面強度としては、5A以上が好ましく、7A以上がより好ましい。一方、当該模様紙の裏面における表面強度としては、3A以上が好ましく、5A以上がより好ましい。上記表面強度が上記下限未満の場合、印刷適正が低下するおそれがある。なお、ここで表面強度(単位:A)はTAPPI UM591に準拠し、IGT印刷機を用いて測定する。
【0067】
当該模様紙の表面における粉砕物の占める割合(粉砕物の面積率)としては、2質量%以上50質量%以下が好ましく、2質量%以上30質量%以下がより好ましく、2質量%以上20質量%以下がより好ましい。上記面積率が上記上限を超えると、印刷内容が見づらくなるおそれがある。逆に、上記面積率が上記下限未満の場合、当該模様紙の美粧性が向上しづらくなるおそれがある。なお、ここで粉砕物の面積率はJAPAN TAPPI
No.43「紙、板紙及びパルプ−きょう雑物試験方法」に準拠し測定する。
【0068】
<模様紙の製造方法>
当該模様紙の製造方法は、例えば原料パルプスラリーを調製する工程(以下、「スラリー調製工程」ともいう)、植物の乾燥粉砕物を製造する工程(以下、「粉砕物製造工程」ともいう)、上記植物の乾燥粉砕物等を添加する工程(以下、「粉砕物等添加工程」ともいう)並びに第1紙層、第2紙層及びその他の紙層を抄紙する工程(以下、「抄紙工程」ともいう)を主に備える。以下、各工程について詳説する。
【0069】
(スラリー調製工程)
本工程では上記原料繊維を離解分散させることで原料パルプスラリーを得る。その際、上記原料繊維と共に上記その他の抄紙用薬剤を任意に分散させてもよい。
【0070】
離解分散方法としては、例えば攪拌機を備えたタンク内で原料パルプ、その他の抄紙用薬剤等を分散させる方法等が挙げられる。
【0071】
また、上記原料繊維が木材パルプの場合、叩解処理を行うことが好ましい。このように叩解処理を行うことにより木材パルプの柔軟性等が向上する。叩解処理に用いる機器としては、リファイナー、ビーター等が挙げられる。
【0072】
(粉砕物製造工程)
本工程では上記粉砕物を製造する。この製造方法としては、上記植物の乾燥粉砕物において挙げた方法を採用できる。また、上述のように、パルプの叩解工程と植物の乾燥物の粉砕を同時に行ってもよい。
【0073】
(粉砕物等添加工程)
本工程では上記粉砕物を原料パルプスラリーに添加、又は粉砕前の植物の乾燥物を原料繊維に添加する。上述のように、パルプの叩解工程と植物の乾燥物の粉砕を同時に行う場合、本工程は粉砕物製造工程の前に行われる。また本工程は上記粉砕物製造工程の後、抄紙工程の前に行われてもよい。さらに、本工程は抄紙工程と同時に行われてもよい。この場合、原料パルプスラリー及び粉砕物は抄紙機上で混合される。
【0074】
(抄紙工程)
本工程では、原料パルプスラリーから第1紙層、第2紙層及びその他の紙層を順に抄紙することで、多層構造の当該模様紙を抄き合わせる。
【0075】
抄紙方法としては、例えば酸性抄紙法、中性抄紙法、アルカリ性抄紙法等が挙げられる。抄紙機としては、例えばワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート、サイズプレスパート及びカレンダーパートを備えるような、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、円網抄紙機、円網短網コンビネーション抄紙機等が挙げられ、円網抄紙機が好ましい。
【0076】
抄き合わせられた当該模様紙は乾燥に付される。この乾燥方法としては、例えば熱風加熱、ガスヒーター加熱、赤外線ヒーター加熱等が挙げられる。
【0077】
乾燥後の当該模様紙にカレンダー処理を行うことが好ましい。このカレンダー処理により当該模様紙は平面方向に圧縮され、当該模様紙中の粉砕物が変形する。その結果当該模様紙の平坦性が向上し、印刷適正が向上する。また、カレンダー処理等により当該模様紙の透明性を調節することができる。
【0078】
また、当該模様紙の製造方法は、抄紙工程中に紙層の間に塗工液を塗工し、又は抄紙工程後に当該模様紙の表面等に上記塗工液を塗工し塗工層を形成する工程(以下、「塗工層形成工程」ともいう)をさらに備えていてもよい。当該模様紙の表面等に塗工液を塗工する場合、塗工層形成工程はカレンダー処理前に行ってもよく、カレンダー処理後に行ってもよい。
【0079】
上記の当該模様紙の製造方法における温度、圧力、時間、設備等の工程条件は使用原料等に従って適宜設定される。各工程の段階数も、1段階で行ってもよく、多段階で行ってもよい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、本実施例で行った品質及び性能の評価方法は以下のとおりである。
【0081】
<評価方法>
[坪量(単位:g/m
2)]
JIS−P−8124:2011「紙及び板紙−坪量の測定方法」に準拠し評価した。
【0082】
[灰分(単位:質量%)]
JIS−P−8251:2003「紙,板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して評価した。
【0083】
[白紙不透明度(単位:%)]
JIS−P−8149:2000「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して評価した。
【0084】
[粉砕物の脱落]
粉砕物の脱落について、目視により以下の基準に基づき評価した。
◎:粉砕物の脱落がない。
○:粉砕物の脱落が僅かに発生した。
△:粉砕物の脱落が多少発生した。
×:粉砕物の脱落が多く発生した。
なお、◎、○、△は実使用可能であった。
【0085】
[印刷適正]
模様紙の印刷適正について、目視により以下の基準に基づき評価した。
◎:印刷の欠けがない。
○:印刷の欠けが僅かに発生した。
△:印刷の欠けが多少発生した。
×:印刷の欠けが多く発生した。
なお、◎、○、△は実使用可能であった。
【0086】
[美粧性]
模様紙の美粧性について、目視により以下の基準に基づき評価した。
○:粉砕物が視認でき、美粧性に優れる。
×:粉砕物が視認しづらく、美粧性に劣る。
なお、○は実使用可能であった。
【0087】
<実施例1>
以下の原料を用いて、下記の製造方法に従い、第1紙層、第2紙層及びその他の紙層(2層)からなる4層の模様紙を得た。
【0088】
[スラリー調製工程]
(第1紙層用原料パルプスラリー)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量%及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量%を配合した後、ダブルディスクリファイナーを用いて第1紙層用原料パルプスラリーを調整した。
【0089】
(第2紙層用原料パルプスラリー)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)60質量%及び針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量%を配合した後、ダブルディスクリファイナーを用いて第2紙層用原料パルプスラリーを調整した。
【0090】
(その他の紙層用原料パルプスラリー)
クラフト古紙を配合した後、ダブルディスクリファイナーを用いてその他の紙用原料パルプスラリーを調整した。
【0091】
[粉砕物製造工程]
清水中に桃の種の乾燥物を添加し、濃度2.5質量%の混合液とした。この混合液をシングルディスクリファイナーに投入し桃の種を粉砕した。
【0092】
[抄紙工程及び粉砕物添加工程]
これらの原料パルプスラリーを用い、円網抄紙機にて第1紙層、第2紙層及びその他の紙層の紙層を抄き合わせた後、水分を51%に調整し、鏡面仕上げされたヤンキードライヤー表面に圧接しながら乾燥した。さらに、グロスカレンダーの加圧条件を変えつつ模様紙を製造した。
【0093】
<実施例2〜8及び比較例1〜8>
実施例1の原料等を表1及び表2に記載のように変更した以外は実施例1と同様にして模様紙を製造した。この模様紙の物性及び評価結果を表1〜表3に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
表3の結果から明らかなように、実施例の模様紙では粉砕物の脱落が低減され、印刷適性及び美粧性にも優れていた。これに対し、比較例の模様紙ではこれらの性能は不十分であった。