(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408809
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】釣糸ガイド及び釣竿並びにガイドリング
(51)【国際特許分類】
A01K 87/04 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
A01K87/04 Z
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-142519(P2014-142519)
(22)【出願日】2014年7月10日
(65)【公開番号】特開2016-15950(P2016-15950A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】神納 芳行
(72)【発明者】
【氏名】山中 慎一郎
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−112674(JP,A)
【文献】
実開昭57−104877(JP,U)
【文献】
特開2000−041539(JP,A)
【文献】
米国特許第02227868(US,A)
【文献】
仏国特許出願公開第01184340(FR,A1)
【文献】
特開2002−262725(JP,A)
【文献】
実開平04−103466(JP,U)
【文献】
英国特許出願公開第00974687(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸が挿通するガイドリングと、該ガイドリングを保持するガイドフレームとを備えた釣糸ガイドであって、
ガイドフレームは、ガイドリングを保持する枠部と、釣竿のブランクに取り付けるための取付脚部と、枠部と取付脚部とを連結する左右一対の支持脚部とを有し、枠部は、金属製の線材がU字状に曲げられることにより、ガイドリングの外周面全周のうち所定範囲のみを周回するように構成され、
ガイドリングの全周のうちガイドフレームの枠部が周回していない非周回部分を保持する補填部材を備え、
補填部材は、ガイドフレームがガイドリングの外周面から離れていく左右二箇所の離反点近傍に位置する左右一対の補填部と、両補填部同士を連結する連結部とを備えた一部材の構成であり、
補填部材は、内面と外面とを有し、補填部材の内面は、ガイドリングの外周面に当接し、補填部材の外面は、取付脚部から離間しており、
補填部材の外面と取付脚部と左右一対の支持脚部との間には空間が形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
補填部材の外面は、ガイドリングの外周面に対応した円弧状部と、該円弧状部の両側にそれぞれ形成されて、ガイドフレームに近づくにつれて徐々にガイドリングから離れていくように凹状に湾曲した左右一対の曲面部とを備えている請求項1記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
補填部材は、左右一対の支持脚部に当接する左右両側面を有し、補填部材の左右両側面には、支持脚部と係合する係合溝がそれぞれ形成されている請求項1記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
釣糸が挿通するガイドリングと、該ガイドリングを保持するガイドフレームとを備えた釣糸ガイドであって、
ガイドフレームは、金属製の線材がU字状に曲げられることにより、ガイドリングの外周面全周のうち所定範囲のみを周回するように構成され、
ガイドフレームがガイドリングの外周面から離れていく左右二箇所において、ガイドリングの外周面には、それぞれ、ガイドフレームとガイドリングの外周面との間の空間を補填する外側に突出する補填用凸部が、ガイドリングの一部分を構成するものとしてガイドリングに一体的に形成されていることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項5】
補填用凸部の外面には、ガイドフレームに近づくにつれて徐々に外側に向かう凹状に湾曲した曲面部を備えている請求項4記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
ガイドリングの内外方向の肉厚は、ガイドフレームが周回している周回部分よりもガイドフレームが周回していない非周回部分の方が厚い請求項4又は5記載の釣り糸ガイド。
【請求項7】
線材の線径は、ガイドリングの中心線の方向の幅に対して、それと等しいかあるいはそれよりも細い請求項1乃至6の何れかに記載の釣糸ガイド。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の釣糸ガイドを備えていることを特徴とする釣竿。
【請求項9】
外周面全周のうち所定範囲のみを周回するように金属製の線材がU字状に曲げられたガイドフレームによって保持されるガイドリングであって、
外周面のうちガイドフレームが離れていく左右二箇所には、それぞれ、ガイドフレームとの間の空間を補填するための外側に突出する補填用凸部が、ガイドリングの一部分を構成するものとしてガイドリングに一体的に形成されていることを特徴とする釣糸ガイドのガイドリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸を案内するための釣糸ガイドと、それを備えた釣竿と、釣糸ガイドのガイドリングに関する。
【背景技術】
【0002】
釣糸を案内するための釣糸ガイドは、例えば下記特許文献1所載のように、金属板を打ち抜くことによって形成されたガイドフレームと、該ガイドフレームの孔に取り付けられて釣糸を案内するガイドリングとを備えたものが一般的である。しかしながら、ガイドフレームが金属板を打ち抜いて形成されたものであるため、強度を確保しつつ軽量化を図ることには限界がある。
【0003】
そこで、本発明者らは、釣糸ガイドの更なる軽量化を図るべく種々検討を重ね、その中でガイドフレームを金属製の線材から構成することを検討した。即ち、金属製の線材をガイドリングの外周面に沿ってU字状に曲げ加工することによって、線材からなるガイドフレームでガイドリングを保持するという構成である。このようにガイドフレームを金属製の線材から構成すれば、従来のようにガイドフレームを金属板から構成する場合に比してガイドフレームを軽量化することができる。そして、金属製の線材でガイドリングの略全周を周回してそれを保持することも可能ではあるが、ガイドリングの全周のうちの所定範囲のみを周回するように線材をU字状に曲げ加工すると、線材の曲げ加工工程も容易になる。
【0004】
しかしながら、線材からなるガイドフレームがガイドリングから離れていく左右二箇所において、ガイドフレームとガイドリングとの間の空間が深い谷のように凹んだ形状となることから、その箇所において糸絡みが発生しやすいということが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−238577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それゆえに本発明は、釣糸ガイドの更なる軽量化を図ると共に糸絡みの発生を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決すべくなされたものであって、本発明に係る釣糸ガイドは、釣糸が挿通するガイドリングと、該ガイドリングを保持するガイドフレームとを備えた釣糸ガイドであって、ガイドフレームは、
ガイドリングを保持する枠部と、釣竿のブランクに取り付けるための取付脚部と、枠部と取付脚部とを連結する左右一対の支持脚部とを有し、枠部は、金属製の線材がU字状に曲げられることにより、ガイドリングの外周面全周のうち所定範囲のみを周回するように構成され、
ガイドリングの全周のうちガイドフレームの枠部が周回していない非周回部分を保持する補填部材を備え、補填部材は、ガイドフレームがガイドリングの外周面から離れていく左右二箇所の離反点近傍に位置する左右一対の補填部と、両補填部同士を連結する連結部とを備えた一部材の構成であり、補填部材は、内面と外面とを有し、補填部材の内面は、ガイドリングの外周面に当接し、補填部材の外面は、取付脚部から離間しており、補填部材の外面と取付脚部と左右一対の支持脚部との間には空間が形成されていることを特徴とする。
【0008】
該構成の釣糸ガイドにあっては、金属製の線材がU字状に曲げられることによりガイドフレームが構成されているので、金属板からなるガイドフレームに比して容易に軽量化できる。一方、ガイドフレームはガイドリングの全周のうちの所定範囲のみを周回しているので、ガイドフレームがガイドリングの外周面から離れていく箇所が左右二箇所存在する。その二箇所は、ガイドフレームが周回していない非周回部分の周方向両端部でもあるが、その二箇所において補填部材がガイドフレームとガイドリングの外周面との間の空間を補填しているので、その二箇所において釣糸が絡みにくくなる。また、補填部材によってガイドフレームとガイドリングの外周面との間の空間が補填されることでガイドリングの保持力も高まり、釣糸ガイドの強度もアップする。
【0009】
特に、補填部材の外
面は、
ガイドリングの外周面に対応した円弧状部と、該円弧状部の両側にそれぞれ形成されて、ガイドフレームに近づくにつれて徐々にガイドリングから離れていくように凹状に湾曲した左右一対の曲面部とを備えていることが好ましく、該曲面部によって糸絡みがより一層抑制される。
【0011】
また、
補填部材は、左右一対の支持脚部に当接する左右両側面を有し、補填部材の左右両側面には、
支持脚部と係合する係合溝がそれぞれ形成されていることが好ましく、ガイドフレームと補填部材との一体性がより一層高まって強度もアップする。
【0012】
また、本発明に係る釣糸ガイドは、釣糸が挿通するガイドリングと、該ガイドリングを保持するガイドフレームとを備えた釣糸ガイドであって、ガイドフレームは、金属製の線材がU字状に曲げられることにより、ガイドリングの外周面全周のうち所定範囲のみを周回するように構成され、ガイドフレームがガイドリングの外周面から離れていく左右二箇所において、ガイドリングの外周面には
、それぞれ、ガイドフレームとガイドリングの外周面との間の空間を補填する
外側に突出する補填用凸部が
、ガイドリングの一部分を構成するものとしてガイドリングに一体的に形成されていることを特徴とする。
【0013】
該構成の釣糸ガイドにあっては、ガイドフレームがガイドリングの外周面から離れていく左右二箇所において、ガイドリングの外周面に補填用凸部が形成されているので、上述の補填部材を備える構成と同様に、その左右二箇所において釣糸が絡みにくくなると共に、ガイドリングの保持力も高まり、釣糸ガイドの強度もアップする。
【0014】
特に、補填用凸部の外面には、ガイドフレームに近づくにつれて徐々に外側に向かう
凹状に湾曲した曲面部を備えていることが好ましく、該曲面部によって糸絡みがより一層抑制される。
【0015】
また、ガイドリングの内外方向の肉厚は、ガイドフレームが周回している周回部分よりもガイドフレームが周回していない非周回部分の方が厚いことが好ましい。非周回部分におけるガイドフレームの厚さを相対的に厚くすることにより、ガイドフレームによって保護されていない非周回部分の強度を確保することができて非周回部分におけるガイドリングの破損を防止できると共に釣糸ガイドの強度も向上でき、また、ガイドリングを全周に亘って肉厚にする構成に比して軽量化も図れる。
【0016】
更に、線材の線径は、ガイドリングの中心線の方向の幅に対して、それと等しいかあるいはそれよりも細いことが好ましく、より一層軽量化することができると共に曲げ加工も容易になる。
【0017】
また、本発明に係る釣竿は、このような釣糸ガイドが装着されたものである。
【0018】
更には、本発明に係る釣糸ガイドのガイドリングは、外周面全周のうち所定範囲のみを周回するように金属製の線材がU字状に曲げられたガイドフレームによって保持されるガイドリングであって、外周面のうちガイドフレームが離れていく左右二箇所には、
それぞれ、ガイドフレームとの間の空間を補填するための
外側に突出する補填用凸部が
、ガイドリングの一部分を構成するものとしてガイドリングに一体的に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、金属製の線材をU字状に曲げてガイドフレームを構成することによりガイドフレームを軽量化でき、補填部材を備えたり、あるいは、ガイドリングの外周面に補填用凸部を形成したりすることで、糸絡みも抑制され、しかも、釣糸ガイドの強度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態における釣糸ガイドを前側からガイドリングの中心線の方向に見た正面図。
【
図3】同釣糸ガイドに使用されている補填部材を示し、(a)はガイドリングを保持する側から見た平面図、(b)は正面図。
【
図4】同釣糸ガイドを釣竿に装着したときの状態を示す要部断面図。
【
図5】本発明の他の実施形態における釣糸ガイドを示す
図1に対応した正面図。
【
図6】同釣糸ガイドに使用されているガイドリングを示し、(a)は正面図、(b)は断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る釣糸ガイドについて
図1〜
図4を参酌しつつ説明する。釣糸ガイド1は、釣糸を直接案内するためのガイドリング2と、該ガイドリング2を保持するためのガイドフレーム3と、ガイドフレーム3がガイドリング2の外周面2bから離れていく左右二箇所においてガイドフレーム3とガイドリング2の外周面2bとの間の空間を補填するための補填部材6とから構成されている。
【0022】
ガイドリング2は、
図1に示すように例えば円形の環状であるが、楕円形や長円形等であってもよい。本実施形態においてはガイドリング2が円形の場合について説明する。ガイドリング2は、例えばSiC(シリコンカーバイト)に代表されるセラミック等の耐摩耗性に優れた硬質材料からなり、釣糸が挿通する糸挿通孔を有しており、内周面2aを釣糸が摺動することで釣糸を直接案内する。
図2に示すようにガイドリング2の外周面2bには、ガイドフレーム3との接触面積を拡大させるために、断面視においてガイドリング2の中心線Tの方向に沿った平面部が形成されている。尚、ガイドリング2の外周面2bに、ガイドフレーム3が係合可能なように内側凸(中止側凸)の溝を周方向に沿って形成してもよく、そのように周方向の溝を形成する場合には、それを全周に亘って形成してもよいし、ガイドフレーム3の周回部分40のみに形成するようにしてもよい。一方、ガイドリング2の内周面2aには断面視において内側凸となる曲面を形成することが好ましく、特に、前後の角部を曲面とすることが好ましい。尚、本実施形態においてガイドリング2の径方向(内外方向)の厚さは全周に亘って略一定となっている。
【0023】
ガイドフレーム3は、その内側にガイドリング2を保持する円弧状の枠部10と、釣竿のブランク4の外周面に取り付けるための取付脚部12と、枠部10と取付脚部12との間に位置して枠部10と取付脚部12とを連結する支持脚部11とから構成される。かかるガイドフレーム3は、金属製の線材から構成されており、一本の線材をガイドリング2の外周面2bに沿ってU字状に曲げ加工することにより形成されている。線材は、例えばチタン合金やステンレス、アルミニウム合金からなる、中実のもの、中空のものであって、特に、軽量化の観点と、ガイドリング2との接触面積を確保しやすいことから、中空のもの、即ち、線状パイプ材が好ましい。線材の線径(外径)は例えば0.3〜6mm、好ましくは1〜3mmであって、ガイドリング2の中心線Tの方向の幅WGと比較すると、それと等しいか、あるいは、それよりも細いものであることが好ましい。軽量化の観点から、ガイドリング2の中心線Tの方向の幅WGよりも細い線状パイプ材を使用することが好ましい。
【0024】
上述したようにガイドフレーム3は一本の線材を曲げ加工することによって形成されているが、その形状は
図1のように正面視においてはU字状に二つ折りの状態に曲げられていて両端部5が一方向に揃えられた状態にあり、
図2のように側面視においては折り曲げ部13によって略くの字状に折り曲げられた状態にある。従って、線材は折り曲げ部13によって二つの領域に区画することができ、折り曲げ部13から両端部5までの先端領域とその間の中間領域とに区画される。先端領域から取付脚部12が構成され、中間領域から枠部10と支持脚部11とが構成される。また、一本の線材を全体としてU字状に曲げてガイドフレーム3を構成しているため、支持脚部11と取付脚部12は何れも線材が左右に二本並んだ二本足の構成となっている。尚、左右の足は左右対称形状とされている。
【0025】
枠部10はガイドリング2の外形形状に沿った略C字状である。従って、枠部10の形状はガイドリング2の形状によって異なり、本実施形態では円形のガイドリング2を使用しているため枠部10もそれに対応して円弧状であるが、楕円形のガイドリング2を使用する場合には枠部10もそれに対応して楕円弧状となる。枠部10は、ガイドリング2の全周のうち所定範囲のみに当接してそれを保持する。枠部10がガイドリング2を周回する周回部分40の中心角は少なくとも180度であることが好ましく、特に、180度〜240度であることが好ましい。従って、枠部10はガイドリング2の少なくとも半周を周回することが好ましい。
【0026】
尚、
図2においては、枠部10における線材の断面形状が元の円形のまま維持された場合を図示しているが、ガイドリング2との接触面積を増大させるべく枠部10の内周面に相当する部分に平面部を形成してもよいし、ガイドリング2の径方向(枠部10の径方向)に圧縮された楕円形状とされてもよい。
【0027】
支持脚部11は、枠部10の周方向両端部からそれぞれ延びている。左右一対の支持脚部11は枠部10から離れる程に互いの間隔を徐々に狭めながらガイドリング2から離れるように延びており、取付脚部11側の端においてはその間隔はほとんど0となっていて互いに左右に当接した状態となっており、左右一対の支持脚部11は全体として正面視略V字状になっている。尚、支持脚部11は直線状に延びていてもよいが、
図1のように正面視において若干左右外側に膨出するように湾曲していてもよい。また、支持脚部11は、
図2に示すように、側面視において若干前側に膨出するように湾曲していることが好ましい。
【0028】
折り曲げ部13によって取付脚部12に対する枠部10及び支持脚部11が所定角度で起立することになり、
図2のように90度未満の傾斜角度であってもよいし、略直角で起立するようにしてもよい。取付脚部12は、ブランクに取り付けるために必要な長さを有している。左右一対の取付脚部12は、互いに当接した状態とされていて後方に向けて一直線状に延びている。
【0029】
補填部材6は、ガイドフレーム3の内側であって、ガイドリング2に対して取付脚部12側(ブランク4への装着状態においてはブランク4に近い側)に位置している。ガイドフレーム3の左右の支持脚部11がそれぞれガイドリング2の外周面2bから離れていく左右二箇所においては、支持脚部11とガイドリング2の外周面2bとの間に急峻な谷状の空間が略V字状となって形成されるが、この左右二箇所の空間を補填部材6が補填している。具体的には、補填部材6は、
図3にも示しているように、左右の空間にそれぞれ位置する左右一対の補填部20と、両補填部20同士を連結する連結部21とを備えた一部材の構成となっている。補填部20は、ガイドリング2とガイドフレーム3との間の空間に対応してその空間に挿入できるように、
図1及び
図3(b)に示すような正面視において、ガイドリング2からガイドフレーム3が離れる離反点Pに向けて徐々に細くなっていく先細り形状とされていて、逆に言えば、その離反点Pから離れる程に幅広となっている。また、連結部21は、ガイドリング2の外周面2bに沿って弧を描くように延びている。
【0030】
補填部材6は、内面22と、外面23と、左右一対の側面24とを備えている。補填部材6の内面22は、ガイドリング2を保持すべくその外周面2bに当接する。従って、補填部材6の内面22は、ガイドリング2の外周面2bに対応して正面視円弧状に形成されている。また、補填部材6の内面22は、ガイドリング2の外周面2bとの接触面積を十分に確保できるようにガイドリング2の外周面2bに対応した断面形状であることが好ましく、本実施形態では、
図2に示すように、ガイドリング2の外周面2bが平面部を有する形状となっているので、それに対応して平面部を有する形状に形成されている。
【0031】
補填部材6の外面23は、内面22とは反対側に位置して内面22と対向している。補填部材6の外面23は、ガイドリング2の外周面2bに対応して、内面22及びガイドリング2と同心円状の円弧状部23aと、該円弧状部23aの両側にそれぞれ形成されて、ガイドフレーム3に近づくにつれて徐々にガイドリング2から離れていくように凹状に湾曲した左右一対の曲面部23bとを備えている。補填部材6の外面23の曲面部23bは、換言すれば、補填部材6の左右方向両端に近づくにつれて徐々に補填部材6の内面22から離れていくように湾曲している。
【0032】
補填部材6の側面24は、ガイドフレーム3の支持脚部11の内側に当接する。補填部材6の側面24には、好ましくは、
図3(a)のように、ガイドフレーム3が係合可能な係合溝24aが形成される。
図3(a)においてガイドフレーム3の断面を二点鎖線で示しているが、係合溝24aは、断面視において、ガイドフレーム3の外径に対応した円弧状である。尚、補填部材6の前後方向の幅は、ガイドリング2の中心線Tの方向に沿った補填部材6の寸法であるが、その幅は、
図2のように、ガイドリング2の中心線Tの方向の幅WGに対して略等しいことが好ましい。従って、補填部材6の前後方向の幅は、ガイドフレーム3を構成している線材の線径よりも大きいことが好ましい。
【0033】
補填部材6の材質は、比重が小さいものが好ましく、例えば、硬質樹脂や繊維強化樹脂とすることができ、特に、強化繊維にカーボン繊維を使用した繊維強化樹脂とすることが好ましい。
【0034】
以上のように構成された釣糸ガイド1は例えば以下のような順で製造される。即ち、ガイドリング2の所定位置に補填部材6の内面22を当接さ
せ両者を接着固定する。そして、線材をU字状に曲げてガイドリング2の外側所定範囲を線材で周回すると共に補填部材6の両側面24の係合溝24aに線材を係合させる。二つ折り状態となった線材の両端部5を互いに接近させて支持脚部11を形成すると共に、線材の両端部5側の所定長さ領域を折り曲げて取付脚部12を形成する。尚、予め線材を最終形状に近い形状にプリフォームしておき、プリフォームにより二つ折り状態とされた線材の間にガイドリング2と補填部材6を挿入して、ガイドリング2と補填部材6を線材で挟み込むように線材を更に曲げ加工して、ガイドリング2、補填部材6、線材即ちガイドフレーム3を一体化してもよい。尚、ガイドフレーム3とガイドリング2や補填部材6を接着固定してもよい。接着剤は補助的に使用してもよい。
【0035】
以上のように構成された釣糸ガイド1は、
図4のように釣竿のブランク4の外周面に取り付けられる。例えば、ブランク4の上に釣糸ガイド1の取付脚部12を載置し、取付脚部12とブランク4とに亘って巻糸7を巻き付けて釣糸ガイド1をブランク4に緊縛する。更に、接着性のある合成樹脂剤を巻糸7の巻き付け部分に塗布して固める。
図4において向かって左側が穂先側であるが、ブランク4への取付状態においてガイドリング2は若干穂先側に傾斜した前傾姿勢となる。但し、直立姿勢であってもよいし、その角度は任意である。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の釣糸ガイド1にあっては、金属製の線材がU字状に曲げられることによりガイドフレーム3が構成されているので、金属板からなるガイドフレーム3に比して容易に軽量化できる。特に、ガイドフレーム3の全体が一本の線材から形成されたワンピース構成となっているので、細い線径の線材であっても必要な強度を容易に確保することができる。特に、線材として線状パイプ材を使用した場合には、軽量であると共に強度も大きく、しかも、ある程度の外径の大きさも確保できるのでガイドリング2や補填部材6との接触面積を容易に確保することもできる。
【0037】
また、支持脚部11と取付脚部12は二本構成であるので、線材から構成されていても強度を容易に確保することができ、ブランク4への取り付け強度も確保できて安定した取付状態が得られる。
【0038】
更に、ガイドフレーム3を構成する線材の線径がガイドリング2の中心線Tの方向の幅WGに対してそれと等しいかあるいはそれよりも細い場合には、線材の線径を細くしてガイドフレーム31の軽量化を図りつつもガイドリング2の幅WGを相対的に広くすることができる。従って、釣糸の案内面であるガイドリング2の内周面2aの中心線Tの方向の幅を十分に確保することができ、釣糸をスムーズに案内することができる。
【0039】
一方、線材をU字状に曲げ加工してガイドフレーム3を構成しているので、ガイドフレーム3はガイドリング2の全周のうち所定範囲のみを周回しているが、ガイドフレーム3がガイドリング2の外周面2bから離れていく左右二箇所の離反点P近傍において、ガイドフレーム3とガイドリング2の外周面2bとの間の空間を補填部材6の補填部20が補填しているので、その二箇所の離反点P近傍において発生しやすい糸絡みが補填部材6の補填部20によって防止されることになる。特に、補填部材6の補填部20の外面23に凹状の曲面部23bが形成されているので、該曲面部23bによって糸絡みがより一層抑制される。
【0040】
また、補填部材6によってガイドフレーム3とガイドリング2の外周面2bとの間の空間が補填されることでガイドリング2の保持力も高まり、釣糸ガイドの強度もアップする。しかも、補填部材6が左右一対の補填部20とそれを連結する連結部21を備えた一体構成となっているので、釣糸ガイド1の組み立て製造が容易である。そのうえ、ガイドフレーム3の両支持脚部11が補填部材6によって架橋されて連結一体化されることになり、ガイドフレーム3とガイドリング2と補填部材6という三つの部材が一体となって釣り糸ガイド1の強度がより一層向上する。特に、補填部材6の左右両側面24に係合溝24aがそれぞれ形成されているので、ガイドフレーム3と補填部材6との一体性がより一層高まって強度もアップする。更に、ガイドリング2の全周のうちガイドフレーム3が周回していない非周回部分41が補填部材6によって保持されるので、ガイドリング2がガイドフレーム3の枠部10と補填部材6とによって保持されることになって、ガイドリング2を保持する保持力が高まる。
【0041】
次に、補填部材6を用いない釣糸ガイド1について
図5及び
図6を参酌して説明する。
図5に示すように、釣糸ガイド1は、ガイドフレーム3と、ガイドリング2とからなる。ガイドフレーム3は、上述したのと同様の構成からなる。そして、上述した補填部材6に代えて、ガイドリング2の外周面2bの二箇所に補填用凸部30が突設されている。該補填用凸部30は、ガイドフレーム3に取り付けられた状態において、ガイドフレーム3がガイドリング2から離れていく左右二箇所において、ガイドリング2とガイドフレーム3との間の空間を補填するように外側に向けて突出している。
【0042】
補填用凸部30の外面(径方向外側の面)は、ガイドフレーム3に当接する当接部31と、ガイドフレーム3には当接しない非当接部32とに区分される。当接部31は、ガイドフレーム3の支持脚部11の内側の面に沿って略直線状に延びていて、円形のガイドリング2に対して接線方向に延びている。また、非当接部32は、上述した補填部材6の曲面部23bと同様に、ガイドフレーム3に近づくにつれて、即ち、当接部31側に向けて、徐々に径方向外側に向かう凹状の曲面部となっている。
【0043】
また、ガイドリング2の内外方向の肉厚は全周に亘って略一定であってもよいが、
図6(b)にも示しているように、ガイドフレーム3が周回する周回部分40よりもガイドフレーム3が周回しない非周回部分41の方が厚いことが好ましい。尚、周回部分40と非周回部分41の境界部分に補填用凸部30が位置している。
【0044】
このように、補填部材6に代えてガイドリング2に補填用凸部30を形成することにより、
図5に示すようにガイドリング2に補填用凸部30を形成しない場合におけるガイドリング2からガイドフレーム3が離れていく当初の離反点P’が取付脚部12側(ブランク4側)に位置ずれして新たな離反点Pとなる。そして、このように補填用凸部30を形成することにより当初の離反点P’近傍における深い谷状の空間がなくなる、あるいは、浅くなって、新しい離反点P近傍における糸絡みを防止することができる。特に、補填部材6の曲面部23bと同様に、補填用凸部30の外面の非当接部32に曲面部を形成することにより、糸絡みがより一層軽減される。
【0045】
また、補填部材6を使用しない分だけ部品点数も削減でき、製造も容易であって、より一層の軽量化もできる。更に、ガイドリング2に補填用凸部30を形成することによってガイドリング2とガイドフレーム3との一体性も高まり釣糸ガイド1の強度も向上する。そして、ガイドリング2の内外方向の肉厚を、周回部分40に比して非周回部分41を相対的に厚くすることで、ガイドフレーム3によって保護されていない非周回部分41の強度を確保することができて非周回部分41におけるガイドリング2の破損を防止できると共に対糸ガイド1の強度も確保でき、また、ガイドリング2を全周に亘って肉厚にする構成に比して軽量化も図れる。
【0046】
尚、上記実施形態では、一対の取付脚部12を揃えて後側に向けて延びる形状としたが、両取付脚部12の一方を前側に他方を後側に向けてもよい。
【0047】
また、釣糸ガイド1は、上述したようなブランク4の外周面に取付固定される、いわゆる外ガイドの他、振り出し竿の外周に遊動自在に装着される、いわゆる遊動ガイドであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 釣糸ガイド
2 ガイドリング
2a 内周面
2b 外周面
3 ガイドフレーム
4 ブランク
5 端部
6 補填部材
7 巻糸
10 枠部
11 支持脚部
12 取付脚部
13 折り曲げ部
20 補填部
21 連結部
22 内面
23 外面
23a 円弧状部
23b 曲面部
24 側面
24a 係合溝
30 補填用凸部
31 当接部
32 非当接部
40 周回部分
41 非周回部分
P 離反点
P’ 離反点