(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
天井下地構造における隣り合う吊りボルト間に筋交いを入れ、筋交いの上端部を一方の吊りボルトの上端部に筋交い上端部取付金具を介して取り付け、筋交いの下端部を他方の吊りボルトの下端部に近い野縁受けの所要部に取り付ける筋交いの取付装置であって、
筋交い上端部取付金具は、両側板部とつなぎ部とで平面視略コ字状に形成され、つなぎ部の内面側に吊りボルトに螺合する雌ねじ部を形成した第一金具と、両挟持板部とつなぎ部とで第一金具とは逆向きの平面視略コ字状に形成され、第一金具の両側板部を両側から両挟持板部により挟持する第二金具と、第一金具の両側板部間に配置されるカムと、第一金具の両側板部と第二金具の両挟持板部とカムとを貫通してこれらを回動可能に連結する連結手段と、第二金具のつなぎ部に設けたネジ孔に螺入され、一端部側が両挟持板部間に突入され且つ他端部側が筋交いの上端部に取り付けられる筋交い取付用ボルトとを備え、第一金具、第二金具及びカムは夫々ダイキャストからなり、カムは、第一金具の両側板部間を上下に挿通した吊りボルトに対向する一側面部には吊りボルトに係合する上下複数の凹凸条部を形成し、他側面部には筋交い取付用ボルトの一端部が押接するようになっていて、吊りボルトの上端部側で筋交い取付用ボルトを螺進してカムの他側面部に押し付けることにより、カムの一側面部の凹凸条部を吊りボルトに係合させると共に、第一金具の雌ねじ部を吊りボルトに螺合させるようにした筋交いの取付装置。
筋交い上端部取付金具のカムは、その重心が連結手段より上位側で且つ他側面部側寄りにあって、筋交い取付用ボルトをカムの他側面部から引き離した状態では、カムの自重によってカムの一側面部の凹凸条部が吊りボルトから離間するようになっている請求項1に記載の筋交いの取付装置。
連結手段は、第一金具の両側板部と第二金具の両挟持板部とカムとを貫通するボルトと、このボルトの先端部に螺着されるナットとからなる請求項1〜3の何れかに記載の筋交いの取付装置。
【背景技術】
【0002】
天井下地構造は、天井部に埋設したインサートナットに吊りボルトの上端部を螺着し、吊りボルトの下端部にハンガーを取り付け、このハンガーに野縁受けを支持し、この野縁受けにクリップを介し野縁を吊支し、この野縁に天井材を取り付けるようになっている。このような天井下地構造では、地震発生時における天井材の損壊落下を防止するために、隣り合う吊りボルト間に筋交いを入れるようにしている。しかして、従来における筋交いの取付装置として、
図8の(a) ,(b) に示されるようなものがある。
【0003】
図8の(a) ,(b) には、筋交い(図示せず)の上端部を、隣り合う吊りボルトの一方の吊りボルト1の上端部に取り付けるための筋交い上端部取付金具33を示す。この筋交い上端部取付金具33は、直角三角形状の一対の側板部31a,31aとつなぎ部31bとで平面視略コ字状に形成され、つなぎ部31bの内面側に吊りボルト1に螺合する雌ねじ部37を設けた第一金具と31と、両挟持板部32a,32aとつなぎ部32bとで平面視略コ字状に形成され、その両挟持板部32a,32aで第一金具31の両側板部31a,31aをその傾斜辺側から挟持する第二金具32と、第二金具32の両挟持板部32a,32aを第一金具と31の側板部31a,31aに回動可能に連結するボルト35及びナット36と、第二金具32のつなぎ32bに設けたネジ孔39に螺入されていて、一端部が吊りボルト1に噛合され、他端部が筋交い38の上端部に取り付けられる筋交い取付用ボルト34とを備え、吊りボルト1の上端部側において筋交い取付用ボルト34を締め込み方向に回転させることにより、筋交い取付用ボルト34の一端部を吊りボルト1に噛合させると共に、第一金具31の雌ねじ部37を吊りボルト1に螺合させて、筋交いの上端部を吊りボルト1の上端部に取付固定するようにしたもので、第一金具31及び第二金具32は夫々鋼板をプレス加工して形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の筋交い取付装置における筋交い上端部取付金具33は、第一金具31及び第二金具32が夫々鋼板のプレス加工により形成されていることから、筋交い取付用ボルト34を吊りボルト1に近づく方向に螺進して、筋交い取付用ボルト34の一端部を吊りボルト1に噛合させると共に、第一金具31の雌ねじ部37を吊りボルト1に螺合させる時に、第二金具32のつなぎ部32bが手前側へ引っ張られて変形し、筋交い取付用ボルト34の一端部が吊りボルト1のネジ部から離脱し易くなり、また筋交い取付用ボルト34の一端部は、
図8の(b) に示すように、吊りボルト1のネジ部に対し一点Pのみの点接触状態で噛合するために、その噛合状態が不安定となり、筋交い上端部取付金具33を吊りボルト1に対し安定良く確実に固定させることができないというような問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題に鑑み、筋交い上端部取付金具を吊りボルト1に対し安定良く確実に固定させることのできる筋交いの取付装置提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、天井下地構造における隣り合う吊りボルト1,1間に筋交い2を入れ、筋交い2の上端部を一方の吊りボルト1の上端部に筋交い上端部取付金具3を介して取り付け、筋交い2の下端部を他方の吊りボルト1の下端部に近い野縁受けUの所要部に取り付ける筋交いの取付装置であって、
筋交い上端部取付金具3は、両側板部4,4とつなぎ部5とで平面視略コ字状に形成され、つなぎ部5の内面側に吊りボルト1に螺合する雌ねじ部6を形成した第一金具11と、両挟持板部7,7とつなぎ部8とで第一金具11とは逆向きの平面視略コ字状に形成され、第一金具11の両側板部4,4を両側から両挟持板部7,7により挟持する第二金具第二金具12と、第一金具11の両側板部4,4間に配置されるカム9と、第一金具11の両側板部4,4と第二金具12の両挟持板部7,7とカム9とを貫通してこれらを回動可能に連結する連結手段10と、第二金具12のつなぎ部8に設けたネジ孔17に螺入され、一端部側13aが両挟持板部7,7間に突入され且つ他端部側13bが筋交い2の上端部に取り付けられる筋交い取付用ボルト13とを備え、第一金具11、第二金具12及びカム9は夫々ダイキャストからなり、カム9は、第一金具11の両側板部4,4間を上下に挿通した吊りボルト1に対向する一側面部9cには吊りボルト1に係合する上下複数の凹凸条部18を形成し、他側面部9dには筋交い取付用ボルト13の一端部13aoが押接するようになっていて、吊りボルト1の上端部側で筋交い取付用ボルト13を螺進してカム9の他側面部9dに押し付けることにより、カム9の一側面部9cの凹凸条部18を吊りボルト1に係合させると共に、第一金具11の雌ねじ部6を吊りボルト1に螺合させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1に記載の筋交いの取付装置において、筋交い上端部取付金具3のカム9は、その重心が連結手段10より上位側で且つ他側面部9d側寄りにあって、筋交い取付用ボルト13をカム9の他側面部9dから引き離した状態では、カム9の自重によってカム9の一側面部9cの凹凸条部18が吊りボルト1から離間するようになっていることを特徴とする
【0008】
請求項3は、請求項1又は2に記載の筋交いの取付装置において、カム9の他側面部9dには、筋交い取付用ボルト13の一端部13aoが
押接するネジ部19が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4は、請求項1〜3の何れかに記載の筋交いの取付装置において、連結手段10は、第一金具11の両側板部4,4と第二金具12の両挟持板部7、7とカム9とを貫通するボルト10aと、このボルト10aの先端部に螺着されるナット10bとからなることを特徴とする。
【0010】
請求項5は、請求項1〜4の何れかに記載の筋交いの取付装置において、第一金具11、第二金具12及びカム9は夫々亜鉛合金ダイキャストからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、筋交い上端部取付金具3は、平面視略コ字状の第一金具11と、第一金具11とは逆向きの平面視略コ字状を成し、第一金具11の両側板部4,4を両側から挟持する第二金具第二金具12と、第一金具11の両側板部4,4間に配置されるカム9と、第一金具11の両側板部4,4と第二金具12の両挟持板部7,7とカム9とを回動可能に連結する連結手段10と、第二金具12のつなぎ部8に設けたネジ孔17に螺入され、一端部13a側が両挟持板部7,7間に突入され、他端部側13bが筋交い2の上端部に取り付けられる筋交い取付用ボルト13とを備えてなるもので、第一金具11、第二金具12及びカム9が夫々ダイキャストからなるため、従来の筋交い上端部取付金具33のように第一金具31及び第二金具32が夫々鋼板でプレス加工されたものに比べ、機械的強度である引張強さ及び硬さが高く、従って筋交い上端部取付金具3を回転させて、筋交い取付用ボルト13を螺進しても、第一金具11及び第二金具12が変形するようなことがない。
【0012】
また、カム9は、第一金具11の両側板部4,4間を上下に挿通した吊りボルト1に対向する一側面部9cに吊りボルト1に係合する上下複数の凹凸条部18を形成していて、他側面部9dに筋交い取付用ボルト13の一端部13aoが押接することにより、カム9の一側面部9cの上下複数の凹凸条部18が吊りボルト1に係合するようになっており、しかもカム9は第一金具11の両側板部4,4間に配置されているから、カム9の一側面部9cの複数条の凹凸条部18が吊りボルト1に対し安定状態で的確に係合すると共に、吊りボルト1とカム9と第一金具11と第二金具12と筋交い取付用ボルト13とが一体化して、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1に対して安定良く強固に固定させることができる。また第一金具11、第二金具12及びカム9が夫々ダイキャストからなるもので、第一金具11のつなぎ部5の雌ねじ部6、第二金具12のつなぎ部8のネジ孔17、カム9の一側面部9cの凹凸条部18は、夫々の表面がきめ細かく綺麗で高精度に形成されているから、吊りボルト1に対する第一金具11の雌ねじ部6の螺合状態、第二金具12のネジ孔17に対する筋交い取付用ボルト13の螺合状態、吊りボルト1に対するカム9の一側面部9cの凹凸条部18の係合状態が、夫々的確且つ安定状態となり、従って筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1に対して一層安定良く強固に固定させることができる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、筋交い上端部取付金具3のカム9は、その重心が連結手段10より上位側で且つ他側面部9d側寄りにあって、筋交い取付用ボルト13をカム9の他側面部9dから引き離した状態では、カム9の自重でカム9の一側面部9cの凹凸条部18が吊りボルト1から離間して吊りボルト1に対し非係合状態となるから、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の上端部に取り付けるにあたって、この筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の下端部側から上端部側へスライドさせる時に、カム9の一側面部9cに形成されている凹凸条部18の上端部が吊りボルト1のネジ部1aに引っ掛かることがなく、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の上端部までスムーズにスライドさせることができる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、カム9の他側面部9dには、筋交い取付用ボルト13の一端部13aoが
押接するネジ部19が形成されているから、筋交い取付用ボルト13の一端部13aoをカム9の他側面部9dに食い付かせることができ、それによりカム9の一側面部9cの凹凸条部18を吊りボルト1に対しより一層安定状態で強固に係合させることができる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、連結手段10を、第一金具11の両側板部4,4と第二金具12の両挟持板部7、7とカム9とを貫通するボルト10aと、このボルト10aの先端部に螺着されるナット10bとからなるものとすることにより、連結手段10の構造が簡単で、取付けが容易となる。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、第一金具11、第二金具12及びカム9が夫々亜鉛合金ダイキャストからなるものでは、アルミニウム合金や銅合金等の他の合金と比較しても、機械的強度が高く、より精密な精度が得られ、凹凸条部18や各ネジ部の表面がきめ細かく、高精度で綺麗に形成されるため、吊りボルト1に対する第一金具11の雌ねじ部6の螺合状態、第二金具12のネジ孔17に対する筋交い取付用ボルト13の螺合状態、吊りボルト1に対するカム9の一側面部9cの凹凸条部18の係合状態及びカム9の他側面部9dのネジ部19に対する筋交い取付用ボルト13の一端部13aoの螺合状態が、夫々より一層的確で安定したものとなり、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1に対しより一層安定状態で且つ強固に固定させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、
図1には、天井部Sに埋設したインサートナットTに吊りボルト1の上端部を螺着し、吊りボルト1の下端部にハンガーHを取り付け、このハンガーHに野縁受けUを支持し、この野縁受けUにクリップ(図示せず)を介して野縁Nを吊支し、この野縁Nに天井材Cを取り付けるようにした天井下地構造を示すと共に、この天井下地構造における隣り合う吊りボルト1,1間に筋交い2を入れ、筋交い2の上端部を隣り合う一方の吊りボルト1の上端部に筋交い上端部取付金具3を介して取り付け、筋交い2の下端部を他方の吊りボルト1の下端部に近い野縁受けUの所要部に取り付けた状態を示している。筋交い2は、その一例を
図2及び
図3に示すように、ウエブ2aと両フランジ部2b,2bとによって形成される軽量形鋼の溝形材からなる。
【0019】
筋交い上端部取付金具3は、
図2〜
図7に示すように、両側板部4,4とつなぎ部5とで平面視略コ字状に形成され、つなぎ部5の内面側に吊りボルト1に螺合する雌ねじ部6を形成した第一金具11と、両挟持板部7,7とつなぎ部8とで第一金具11とは逆向きの平面視略コ字状に形成され、第一金具11の両側板部4,4を両側から両挟持板部7,7によって挟持する第二金具12と、第一金具11の両側板部4,4間に配置されるカム9と、第一金具11の両側板部4,4と第二金具12の両挟持板部7,7とカム9とを貫通してこれらを回動可能に連結する連結手段10と、第二金具12のつなぎ部8に設けられたネジ孔17に螺入され、一端部側13aが両挟持板部7,7間に突入され且つ他端部側13bが筋交い2の上端部に取り付けられる筋交い取付用ボルト13とによって構成されている。
【0020】
第一金具11、第二金具12及びカム9は、夫々亜鉛合金を使用した亜鉛合金ダイキャストからなるものである。ダイキャストとは、金属溶湯を精密な金型に圧力をかけて流し込むことによって、高精度で鋳肌(表面)の優れた鋳物を製造できる鋳造方法を言うが、鋳造方法だけでなく、ダイキャストによる製品をも言うこともあり、ここではダイキャストによる製品を言うものとする。このダイキャストとしては、亜鉛合金ダイキャストの他に、銅合金やアルミニウム合金やマグネシウム合金を使用した銅合金ダイキャスト、アルミニウム合金ダイキャスト、マグネシウム合金ダイキャスト等からなるものがある。亜鉛合金は、その主要成分が、亜鉛の他に、アルミニウム、銅、マグネシウムで構成された合金で、亜鉛合金ダイキャストは、銅合金ダイキャストやアルミニウム合金ダイキャストやマグネシウム合金ダイキャスト等の他の合金ダイキャストと比べても、機械的強度、特に引張強さ及び硬さが大きい。尚、亜鉛合金の融点は387℃であり、また銅合金は黄銅で900℃程度、アルミニウム合金は580℃、マグネシウム合金は595℃である。
【0021】
上記のような亜鉛合金ダイキャストからなる第一金具11は、
図4に示すように、両側板部4,4とつなぎ部5とにより平面視略コ字状に形成されていて、つなぎ部5の断面半円状の内面側には、吊りボルト1のネジ部1aに螺合する雌ねじ部6を形成している。両側板部4,4間の間隔は、吊りボルト1の直径と略同じである。また両側板部4,4には連結手段10を構成するボルト10aが挿通するボルト挿通孔14,14が設けてある。この第一金具11は、亜鉛合金ダイキャストからなるため、機械的強度である引張強さ及び硬さが高く、十分な剛性を有する上に、つなぎ部5の内面側にある雌ねじ部6は、表面がきめ細かく綺麗で高精度に形成されている。
【0022】
同じく亜鉛合金ダイキャストからなる第二金具12は、
図5に示すように、両挟持板部7,7とつなぎ部8とより第一金具11とは逆向きの平面視略コ字状に形成されていて、
図3に示すように両挟持板部7,7により第一金具11の両側板部4,4を両側から挟持するように配置される。両挟持板部7,7間の間隔は、第一金具11の両側板部4,4の外法寸法より僅かに大きい。また両挟持板部7,7には連結手段10のボルト10aが挿通するボルト挿通孔16,16が設けられ、またつなぎ部8には筋交い取付用ボルト13が螺合するネジ孔17が設けられている。この第二金具12も、亜鉛合金ダイキャストであることから、機械的強度の引張強さ及び硬さが高く、十分な剛性を有すると共に、つなぎ部8に設けてあるネジ孔17も、表面がきめ細かく綺麗で高精度に形成されている。
【0023】
第一金具11及び第二金具12と同じく亜鉛合金ダイキャスト製のカム9は、
図3に示すように第一金具11の両側板部4,4間で自由に回転できるように間隔より僅かに大きい厚みを有している。このカム9は、
図6から分かるように、正面視略々扇形を成して、上面9aが円弧状に形成され、下面9bが平坦状に形成され、そして第一金具11の両側板部4,4間を上下に挿通した吊りボルト1に対向する一側面部9cの上部側には吊りボルト1のネジ部1aに係合する凹凸条部18が上下複数条に形成され、その反対側の他側面部9dには筋交い取付用ボルト13の一端部13aoが押接するようになっていて、当該他側面部9dには筋交い取付用ボルト13の一端部13aoが噛合するネジ部19が形成され、またカム9の中央部にはボルト挿通孔20が形成されている。またこのカム9も、亜鉛合金ダイキャストであることにより、引張強さ及び硬さが高く、十分な剛性を有すると共に、一側面部9c側の凹凸条部18及び他側面部9d側のネジ部19は、表面がきめ細かく綺麗で高精度に形成されている。
【0024】
筋交い取付用ボルト13は、その一端部側13aが第二金具12のつなぎ部8にあるネジ孔17に螺入され、その他端部側13bが筋交い2の上端部に取り付けられるものであるが、この実施形態では、筋交い取付用ボルト13の他端部側13bが偏平板状に形成されて、この偏平板状部13bが
図2及び
図3に示すように筋交い2のウエブ2aの内面にビス21で取り付けられるようになっている。
【0025】
上記した第一金具11、第二金具12及びカム9を組み付けるには、第一金具11の両側板部4,4間にカム9を挿入配置すると共に、第一金具11の両側板部4,4をその両側3から挟持するように第二金具12を配置した状態で、第二金具12の挟持板部7に設けてあるボルト挿通孔16から第一金具11の側板部4のボルト挿通孔14及びカム9のボルト挿通孔20に亘ってボルト13を挿通し、これにより第一金具11、第二金具12及びカム9を互いに回動可能に連結し、しかしてボルト10aの先端部にナット10bを螺着すればよい。第二金具12にはボルト挿通孔17に筋交い取付用ボルト13の一端部側13aを螺入する。尚、ボルト10a及びナット10bが連結手段10を構成する。
【0026】
上記のように第一金具11と第二金具12とカム9とを組み付けた状態において、カム9は、
図7の(b) から分かるように、その重心が連結手段10よりも上位側で且つ他側面部9d側寄りにあって、筋交い取付用ボルト13をカム9の他側面部9dから引き離した状態ではカム9の自重によりカム9の一側面部9c上端部側の凹凸条部18が吊りボルト1から離間して吊りボルト1に対し非係合状態となるように構成されている。
【0027】
上述した筋交い上端部取付金具3を有する筋交い取付装置による筋交い2の取付施工について、
図1、
図2及び
図7を参照しながら以下に説明する。
【0028】
先ず、上端部が天井部SのインサートナットTに螺着され、下端部にハンガーHを介して野縁受けUが支持された吊りボルト1の下端部側において、筋交い上端部取付金具3の第一金具11、第二金具12及びカム9を組み付ける際に、第一金具11のつなぎ部5内面側の雌ねじ部6と、両側板部4,4間に挿入したカム9との間に、吊りボルト1を挿通した状態にしておき、そして第二金具12のつなぎ部8にあるネジ孔17に筋交い取付用ボルト13の一端部側13aを螺入し、その他端部側13bを筋交い2の上端部に取り付けた状態で、例えば野縁Nより下方の低位置で筋交い2の下部側を手で把持して、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の下端部から上端部までスライドさせていく。
【0029】
この筋交い上端部取付金具3のスライド時、筋交い取付用ボルト13の一端部13aoがカム9の他側面部9dに当接しないようにそれから引き離した状態とすることにより、カム9は、
図7の(b) を参照して分かるように、矢印aに示すように回転し、一側面部9c上端部側の凹凸条部18が吊りボルト1から離間して吊りボルト1に対し非係合状態となるから、カム9の一側面部9cの凹凸条部18の上端部が吊りボルト1のネジ部1aに引っ掛かることがなく、従って筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の上端部までスムーズにスライドさせることができる。
【0030】
こうして筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の上端部までスライドさせて第一金具11の上端面が天井部Sの下面に当接したならば、筋交い2を吊りボルト1に対し所要の傾斜角度位置に保持した状態で、この筋交い2を回転させながら筋交い取付用ボルト13を螺進して、この筋交い取付用ボルト13の一端部13aoをカム9の他側面部9dのネジ部19に螺合させた状態で押し付けることによって、その反対側にあるカム9の一側面部9cの凹凸条部18を吊りボルト1のネジ部1aに食い込むように係合させると共に、第一金具11を手前側へ引き込んでつなぎ部5内面側の雌ねじ部6を吊りボルト1のネジ部1aに的確に螺合させる。これにより、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の上端部に対し強固に取り付けることができる。
【0031】
上記のようにして筋交い上端部取付金具3を一方の吊りボルト1の上端部に取り付けた後、筋交い2の下端部を、
図1に示すように、他方の吊りボルト1の下端部に近い野縁受けUの所要部に取り付ける。この筋交い2の下端部の取付けにあたっては、
図1に概略示すように、筋交い2の下端部に設けてあるビス挿通孔(図示せず)からタッピングビス22を野縁受けUにねじ込むことによって、筋交い2の下端部を野縁受けUに固定する。
【0032】
上述した筋交い上端部取付金具3は、平面視略コ字状の第一金具11と、第一金具11とは逆向きの平面視略コ字状に形成され、第一金具11の両側板部4,4を両側から挟持する第二金具第二金具12と、第一金具11の両側板部4,4間に配置されるカム9と、第一金具11の両側板部4,4と第二金具12の両挟持板部7,7とカム9とを回動可能に連結する連結手段10と、第二金具12のつなぎ部8に設けたネジ孔17に螺入され、一端部側13aがネジ孔17から両挟持板部7,7間に突入され、他端部側13bが筋交い2の上端部に取り付けられる筋交い取付用ボルト13とを備えてなるもので、第一金具11、第二金具12及びカム9は夫々亜鉛合金ダイキャストからなるため、
図8に示す従来の筋交い上端部取付金具33のように第一金具31及び第二金具32が夫々鋼板をプレス加工して形成されたものに比べると、機械的強度、特に引張強さ及び硬さが高く、十分な剛性を有し、従って筋交い上端部取付金具3を回転させて筋交い取付用ボルト13を螺進しても、第一金具11及び第二金具12が変形するようなことがなく、しかも筋交い取付用ボルト13の一端部13aoは、第二金具12の両挟持板部7,7間に突入してカム9の他側面部9dのネジ部19に螺合するから、カム9の他側面部9dの凹凸条部18が吊りボルト1のネジ部1aに対してより安定良く的確に係合すると共に、吊りボルト1とカム9と第一金具11と第二金具12と筋交い取付用ボルト13とが一体化して、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1に対し安定良く強固に固定させることができる。
【0033】
また、第一金具11、第二金具12及びカム9が夫々亜鉛合金のダイキャストからなるもので、第一金具11のつなぎ部5の雌ねじ部6、第二金具12のつなぎ部8のネジ孔17、カム9の一側面部9cの凹凸条部18及びその他側面部9dのネジ部19は、夫々の表面がきめ細かく綺麗で高精度に形成されているから、吊りボルト1に対する第一金具11の雌ねじ部6の螺合状態、第二金具12のネジ孔17に対する筋交い取付用ボルト13の螺合状態、吊りボルト1に対するカム9の一側面部9cの凹凸条部18の係合状態、及びカム9の他側面部9dのネジ部19に対する筋交い取付用ボルト13の一端部13aoの螺合状態が、夫々的確且つ安定状態となり、従って筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1に対し安定良く確実に固定させることができる。
【0034】
また、上述した筋交い上端部取付金具3のカム9は、重心が連結手段10より上位側で且つ他側面部9d側寄りにあって、筋交い取付用ボルト13をカム9の他側面部9dから引き離した状態では、カム9の自重でカム9の一側面部9cの凹凸条部18が吊りボルト1から離間して吊りボルト1に対し非係合状態となるから、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の上端部に取り付けるにあたって、この筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の下端部側から上端部側へスライドさせる時に、カム9の一側面部9cに形成されている凹凸条部18の上端部が吊りボルト1のネジ部1aに引っ掛かることがなく、筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1の上端部までスムーズにスライドさせることができる。
【0035】
また、上述した筋交い上端部取付金具3では、カム9の他側面部9dに、筋交い取付用ボルト13の一端部13aoが
押接するネジ部19を形成しているが、カム9の他側面部9dにはネジ部19を必ずしも形成する必要はなく、非ネジ部の状態でもよい。しかしながら、そのようなネジ部19を形成することによって、筋交い取付用ボルト13の一端部13aoをカム9の他側面部9dに食い付かせ、それによりカム9の一側面部9cの凹凸条部18を吊りボルト1に対しより一層安定良く的確に係合させることができる。
【0036】
また、上述した筋交い上端部取付金具3において、連結手段10を、第一金具11の両側板部4,4と第二金具12の両挟持板部7、7とカム9とを貫通するボルト10aと、このボルト10aの先端部に螺着されるナット10bとからなるものとすることにより、連結手段10の構造が簡単で、取付けが容易となる。
【0037】
また、上述した筋交い上端部取付金具3では、第一金具11、第二金具12及びカム9は夫々亜鉛合金のダイキャストからなるものとしているが、亜鉛合金のダイキャストに限らず、アルミニウム合金や銅合金のダイキャスト等の他のダイキャストを使用することができる。但し、亜鉛合金のダイキャストからなるものは、アルミニウム合金や銅合金等の他の合金よりも更に引張強さ及び硬さが高く、高い剛性を有し、鋳肌がきめ細かく綺麗で高精度に形成されることから、吊りボルト1に対する第一金具11の雌ねじ部6の螺合状態、第二金具12のネジ孔17に対する筋交い取付用ボルト13の螺合、吊りボルト1にタイスにカム9の一側面部9cの凹凸条部18の係合及びカム9の他側面部9dのネジ部19に対する筋交い取付用ボルト13の一端部13aoの螺合状態が夫々より一層的確で安定した状態となり、従って筋交い上端部取付金具3を吊りボルト1に対しより一層安定良く、強固に固定させることができる。