特許第6408849号(P6408849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408849
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 135/22 20060101AFI20181004BHJP
   C10M 141/08 20060101ALI20181004BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20181004BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20181004BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20181004BHJP
【FI】
   C10M135/22
   C10M141/08
   !C10M129/10
   C10N30:04
   C10N30:10
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-202844(P2014-202844)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2016-69591(P2016-69591A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXTGエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(74)【代理人】
【識別番号】100191330
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】八木下 和宏
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 特表昭62−500590(JP,A)
【文献】 米国特許第4191659(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0554011(EP,A2)
【文献】 DAVEY, W. and EDWARDS, E. D.,WEAR,1957年,1,p.291-304
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10:00− 80:00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油に、〔A〕下記一般式(1)で表される硫黄化合物を潤滑油組成物基準で硫黄元素量として10〜400質量ppm配合し、かつ〔B〕連鎖停止剤を配合した潤滑油組成物であって、含硫黄金属錯体を実質的に含有しないことを特徴する潤滑油組成物。
【化1】
(式中のl,mはそれぞれ個別に5以上の整数を示し、nは1〜3の整数を示す。)
【請求項2】
〔B〕連鎖停止剤がヒンダードフェノールであることを特徴とする請求項1記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
潤滑油基油の硫黄分が10質量ppm以下であることを特徴する請求項1または2記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
燃焼室を潤滑しない機械用潤滑油として用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑油組成物に関し、詳しくは含硫黄金属錯体を実質的に含有せず、今まで以上に酸化安定性、低スラッジ性に優れる潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油はエンジン油、駆動系油、タービン油、作動油、グリースなど様々な用途で使用されている。そのいずれの用途においても、熱や光などにより生成する酸化劣化の活性種であるパーオキシラジカルや過酸化物と接触するため、優れた耐酸化性が求められる。こうしたことから、潤滑油には酸化劣化を防ぐため、酸化防止剤の添加が不可欠である。
潤滑油の酸化防止剤としては、芳香族アミン化合物やフェノール化合物等の連鎖停止剤、硫黄化合物やモリブデン化合物等の過酸化物分解剤などが従来から知られている。また、各種酸化防止剤の性能は、使用温度域で異なることや、相乗効果を期待して複数のものを併用することも行われている(特許文献1)。
芳香族アミン化合物やフェノール化合物などの無灰系の酸化防止剤はスラッジの生成が少ない特長を有している反面、自己犠牲型ゆえ消耗し長期間に潤滑油の劣化を防ぐことができない問題点があった。
一方、ジアルキルジチオリン酸亜鉛やモリブデン化合物など含硫黄金属錯体の過酸化物分解能は、触媒的に作用することが知られており、長期に酸化劣化を防止することができる。しかし、これらは使用過程にスラッジ化して、機器の損傷を招くなどの課題があった。
硫黄系化合物は、含硫黄金属錯体と同様に過酸化物分解剤と機能する。しかし、代表的な硫黄系酸化防止剤であるベンジルジスルフィドなどは、含硫黄金属錯体と比較して活性が低いなどの問題点を抱えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−242085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の硫黄系酸化防止剤と連鎖停止剤の組み合わせでは両立が不可能であった、優れた酸化寿命と低スラッジ性を両立した潤滑油組成物を提供することを目的とするものである。特に使用温度が低く、燃焼室を潤滑しない機械用潤滑油として好適に用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは前記課題について鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、潤滑油基油に、〔A〕下記一般式(1)で表される硫黄化合物を潤滑油組成物基準で硫黄元素量として10〜400質量ppm配合し、かつ〔B〕連鎖停止剤を配合した潤滑油組成物であって、含硫黄金属錯体を実質的に含有しないことを特徴する潤滑油組成物である。
【化1】
(式中のl,mはそれぞれ個別に5以上の整数を示し、nは1〜3の整数である。)
【0007】
また、本発明は、〔B〕連鎖停止剤がヒンダードフェノールであることを特徴とする前記の潤滑油組成物である。
また、本発明は、潤滑油基油の硫黄分が10質量ppm以下であることを特徴する前記の潤滑油組成物である。
さらに、本発明は、燃焼室を潤滑しない機械用潤滑油として用いられることを特徴とする前記の潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑油組成物は、優れた酸化寿命と低スラッジ性を両立した潤滑油組成物であり、使用温度が低い場合に特にその効果を発揮するため、使用温度が低く、燃焼室を潤滑しない機械用潤滑油として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳述する。
【0010】
本発明の潤滑油組成物の潤滑油基油としては、鉱油、合成油および油脂が用いられる。これらは混合物であってもよい。
【0011】
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を1種又は2種以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油又はナフテン系鉱油が挙げられる。
【0012】
合成油としては、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレンとプロピレンとのコオリゴマー、エチレンと1−オクテンとのコオリゴマー、エチレンと1−デセンとのコオリゴマー等のポリα−オレフィン(PAO)又はそれらの水素化物;イソパラフィン;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;ジオクチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジトリデシルグルタレート等の二塩基酸エステル;トリメリット酸等の三塩基酸エステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンオレート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリールモノエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジエーテル、ポリプロピレングリコールジエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコールジエーテル等のポリグリコール;モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、ジアルキルトリフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル等のフェニルエーテル;シリコーン油;パーフルオロエーテル等のフルオロエーテル、等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、これらの水素添加物もしくはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0014】
潤滑油基油の硫黄分は、10質量ppm以下が好ましく、5質量ppm以下がより好ましく、1質量ppm以下が最も好ましい。硫黄分を10質量ppm以下とすることで、酸化安定性をさらに向上させることができる。
なお、本発明でいう硫黄分とは、ICPにより測定される値をいう。
【0015】
潤滑油基油の全芳香族含有量は、特に制限はないが、酸化安定性の観点から、25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明でいう全芳香族含有量とは、石油学会法JPI−5S−49−97「石油製品−炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ」で測定される全芳香族の含有量を意味する。
【0016】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、特に制限はないが、1〜100mm/sが好ましく、5〜80mm/sがより好ましく、10〜50mm/sがさらに好ましい。40℃動粘度が1mm/s未満だと潤滑性が低下し、またミストの発生で作業環境が悪化するため好ましくない。
なお、本発明でいう40℃における動粘度とは、毛細管粘度計法により測定される値をいう。
【0017】
本発明に係る潤滑油基油の粘度指数は、特に制限はないが、100以上であることが好ましく、110以上がより好ましく、120以上がさらに好ましい。一方、200以下であることが好ましい。粘度指数を100以上とすることで、粘度−温度特性および熱・酸化安定性、揮発防止性が良好となり、摩擦係数が低下する傾向にあり、また、摩耗防止性が向上する傾向にある。また、粘度指数が200以下とすることで、低温粘度特性が向上する傾向にある。
なお、本発明でいう粘度指数とは、JIS K 2283に準拠して測定された粘度指数を意味する。
【0018】
本発明の潤滑油組成物は、〔A〕成分として、下記一般式(1)で表される硫黄化合物を含有する。
【0019】
【化2】
【0020】
上記一般式(1)におけるlおよびmは、それぞれ個別に5以上の整数であり、好ましくは6以上であり、より好ましくは7以上である。lおよびmが5未満だと基油に対する溶解性が低下するため好ましくない。一方、lおよびmの上限については特に制限はないが、通常17以下が好ましく、より好ましくは9以下である。
また一般式(1)におけるnは1〜3の整数である。nが3を超えると潤滑油組成物の酸化安定性の改善効果が不十分になる傾向がある。
【0021】
上記一般式(1)で表される硫黄化合物の製造方法は特に限定されず、生成物としてこれら化合物を得られれば良い。
例えば、分子構造中に1つの不飽和結合を有する炭化水素化合物(オレフィン)2分子の硫化物(硫化オレフィン)として得ることができる。このようなオレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン等1−ヘキサデセン、1−オクタデセン等が挙げられる。このとき結合するオレフィンは同一の化合物でも、異なる化合物であっても良い。
【0022】
上記のようなオレフィンの硫化処理等で生成した上記一般式(1)で表される硫黄化合物を精製する方法は、特に限定されず任意の方法が利用できる。例えば、シリカゲルを用いたゲルクロマトグラフィによる抽出などが挙げられる。
【0023】
一般式(1)で示される硫黄化合物の具体例としては、例えば硫化ジカプリル、ニ硫化ジカプリル、三硫化ジカプリル、硫化ジラウリル、ニ硫化ジラウリル、三硫化ジラウリル、硫化ジミリスチル、ニ硫化ジミリスチル、三硫化ジミリスチル、硫化ジセチル、ニ硫化ジセチル、三硫化ジセチル等が挙げられる。
【0024】
上記一般式(1)で表される硫黄化合物の含有量は、硫黄元素量として組成物全量基準で10〜400質量ppmであり、15〜300質量ppmが好ましく、20〜200質量ppmがさらに好ましい。10質量ppm未満だと充分な効果を得ることができず、400質量ppmを超えると潤滑油組成物の耐スラッジ性や腐食防止性が低下する傾向がみられる。
【0025】
本発明の潤滑油組成物は、[B]成分として、連鎖停止剤を含有する。
【0026】
連鎖停止剤としては、具体的には例えば、酸化防止剤として一般に用いられるヒンダードフェノール系化合物や芳香族アミン系化合物、ヒンダードアミン系化合物などが挙げられる。これらのなかでも、ヒンダードフェノールが好ましい。
【0027】
ヒンダードフェノール系化合物としては、具体的には、例えば、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、2,2’−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、及びこれらの混合物等が挙げられる。
また、これらの中でも分子量が240以上のヒンダードフェノール系化合物は、分解温度が高く、より高温条件においてもその酸化防止効果が発揮されるため、より好ましく用いられる。
【0028】
芳香族アミン系化合物としては、具体的には、フェニル−α−ナフチルアミン、アルキルフェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−アルキルアニリン、N,N’−ジアルキルアニリン、N−アルキルベンジジン、4,4−メチレンビス(N,N’−ジメチルアニリン)及びこれらの混合物が挙げられる。ここでアルキル基としては炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられる。
【0029】
ヒンダードアミン系化合物としては、具体例には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−カルボン酸エステルが挙げられる。ここでカルボン酸としては炭素数8〜20の直鎖又は分岐のカルボン酸が挙げられる。
【0030】
連鎖停止剤の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、好ましくは0.01〜10質量%であり、より好ましくは0.05〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜1質量%である。
連鎖停止剤の含有量を0.01質量%以上とすることで十分な酸化防止性が得られ、10質量%以下であると基油への溶解性が十分に得られるため、それぞれ好ましい。
【0031】
本発明の潤滑油組成物は、実質的に含硫黄金属錯体を含有しないことを特徴とする。本発明の潤滑油組成物は、含硫黄金属錯体を実質的に含有しないことにより、低スラッジ性を実現している。
【0032】
含硫黄金属錯体とは、構造中に硫黄原子を含む有機化合物と金属元素との錯体一般を広く意味する。含硫黄金属錯体としては、例えば、ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物、ジチオカルバミン酸モリブデン化合物が挙げられる。
【0033】
ジチオリン酸亜鉛化合物、ジチオカルバミン酸亜鉛化合物、ジチオリン酸モリブデン化合物及びジチオカルバミン酸モリブデン化合物とは、それぞれ下記一般式(2)〜(5)で表される化合物である。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
[式(2)〜(5)中、R〜R16は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数1以上20以下の炭化水素基を表し、X及びXはそれぞれ酸素原子又は硫黄原子を表す。]
【0034】
本発明において、『含硫黄金属錯体を実質的に含有しない』とは、含硫黄金属錯体を全く含有していないか、含有している場合であっても影響が無視できる程度に極めて微量しか含有していないことを言う。
より具体的には、含硫黄金属錯体の含有量は、金属元素量として組成物全量基準で、50質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは20質量ppm以下、さらに好ましくは10質量ppm以下、最も好ましくは0質量ppmである。
【0035】
本発明の潤滑油組成物は、上記構成により酸化安定性および低スラッジ性に優れる潤滑油組成物を得ることができるが、その性能をさらに高める目的で、あるいは潤滑油組成物として必要な性能をさらに付与する目的で、公知の潤滑油添加剤を加えることができる。
かかる添加剤としては、例えば、カルシウムスルホネート等の金属系清浄剤;ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、ポリオレフィンワックス等の造膜剤;脂肪酸アミン塩等の水置換剤;グラファイト、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、ポリエチレン粉末等の固体潤滑剤;アミン、アルカノールアミン、アミド、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、多価アルコールの部分エステル等の腐食防止剤;ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等の金属不活性化剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアルケニルアミンアミノアミド等の無灰分散剤;等が挙げられる。これらの公知の添加剤を併用する場合の含有量は特に制限されないが、これらの公知の添加剤の合計含有量が潤滑油組成物全量基準で0.1〜10質量%となるような量で添加するのが好ましい。
【0036】
本発明の潤滑油組成物の動粘度は、特に制限されないが、潤滑部位への供給容易性の点から、40℃における動粘度は、100mm/s以下であることが好ましく、80mm/s以下であることがより好ましく、50mm/s以下であることがさらに好ましい。
一方、40℃における動粘度は、1mm/s以上であることが好ましく、2mm/s以上であることがより好ましく、3mm/s以上であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明の潤滑油組成物は、優れた酸化寿命と低スラッジ性を両立できるため、広範な用途において好適に使用することができる。特に、120℃以下などの使用温度が低い場合にその効果をより発揮するため、燃焼室を潤滑しない機械用潤滑油として好適に用いることができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた基油及び添加剤は下記の通りである。
【0039】
[潤滑油基油]
基油;高度精製鉱油基油(全芳香族含有量:0.3質量%、硫黄分:0質量ppm、40℃動粘度:35mm/s、粘度指数:120)
【0040】
[硫黄含有化合物]
(〔A〕成分);
A−1;一般式(1)で表される硫黄化合物(l,m=9、n=1、硫黄量:8.6質量%)
A−2;一般式(1)で表される硫黄化合物(l,m=7、n=2〜3、硫黄量:22質量%)
なお、A−1、A−2は、それぞれ1−ドデセンおよび1−デセンを硫化して硫化オレフィンを得、この硫化オレフィンを、シリカゲルによるゲルクロマトグラフィで抽出した画分である。得られたA−1、A−2はC13−NMR、FD−MSおよび元素分析にて同定した。
【0041】
(〔A〕成分以外の硫黄含有化合物);
S−1;nが一般式(1)の規定を外れる硫黄化合物(l,m=9、n=4〜9、硫黄量:32質量%)
S−2;下記式で表されるスルフィド化合物(硫黄量:30質量%)
【化7】

S−3;ジベンジルジスルフィド(東京化成工業株式会社製、硫黄量:26質量%)
【0042】
[〔B〕連鎖停止剤]
B−1;フェノール系酸化防止剤(ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)
B−2;フェノール系酸化防止剤(BASF社製、商品名「L135」)
【0043】
(実施例1〜5および比較例1〜6)
表1に各種の潤滑油基油及び添加剤の配合量と性能を記載した。各添加剤の添加量(質量%)は潤滑油組成物全量基準である。
得られた各組成物について、酸化安定度およびスラッジ防止性能を以下に示すALCOA試験により評価した。この試験はASTM−D943に規定されているタービン油酸化安定度試験(TOSTと略す)と良好な相関性を持つことが知られている。
【0044】
(ALCOA試験)
115mlのフラスコに試験油13mlを採取し、触媒として#240研摩の銅線(1.6mmφ×5cm)を5本入れる。次にフラスコ内を酸素ガスで置換し、すばやく水銀マノメータで密封する。その後、115℃の油浴にフラスコを浸漬し1時間放置する。この時のマノメータの差圧を読み、試験時間0hとして記録する。この値は、本実験に使用した全ての試験油に共通して約200mmHgであった。その後は一定時間ごとに差圧を測定し、酸素圧の降下が50mmHg以上になった時間を試験油の酸化寿命とした。また、試験後の試料油を目視し、不溶分(スラッジ)の有無を確認した。
【0045】
【表1】