(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408905
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】防振ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20181004BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20181004BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20181004BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/54
C08K5/103
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-263962(P2014-263962)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-124880(P2016-124880A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】浅野 英亮
【審査官】
藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−059272(JP,A)
【文献】
特開2010−077299(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/105284(WO,A1)
【文献】
特開2012−117012(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0148540(US,A1)
【文献】
特開平01−115943(JP,A)
【文献】
特開2006−199762(JP,A)
【文献】
特開2004−027118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
F16F 1/00−6/00、15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分とともに、下記の(B)〜(D)成分を含有する防振ゴム組成物であって、(A)成分100重量部に対し、(D)成分の含有量が10〜20重量部の範囲であることを特徴とする防振ゴム組成物。
(A)天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエン系ゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つのジエン系ゴム。
(B)シリカ。
(C)シランカップリング剤。
(D)C12〜C22の飽和脂肪酸と、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールとのエステル化合物。
【請求項2】
上記(A)成分100重量部に対し、(B)成分の含有量が5〜100重量部の範囲であり、(C)成分の含有量が0.5〜20重量部の範囲である、請求項1記載の防振ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の防振ゴム組成物の加硫体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車,電車等の車両等に用いられる防振ゴム組成物に関するものであり、詳しくは、自動車等のエンジンの支持機能および振動伝達を抑制するためのエンジンマウント等に使用される防振ゴム組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、防振ゴムは、幅広い分野に適用できるよう、低動倍率化、高減衰化といった、ばね特性やゴム自身の耐久性を向上させるための技術開発が行われている。
【0003】
耐久特性が要求される防振ゴムには、天然ゴム等にシリカとシランカップリング剤を添加したものが適用される。すなわち、シリカ界面の応力緩和により、良好な耐久性が得られることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5108352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の手法では、天然ゴム等のポリマーとシリカの間がシランカップリング剤で拘束され、シリカとポリマーの間の摩擦による減衰効果が阻害されることとなる。よって、この手法では、減衰性を向上させることができないといった問題がある。
【0006】
このような問題を解決するため、例えば、高減衰性の異種ポリマーを配合する検討が進められているが、低温中のばね特性の悪化や、添加したポリマー成分がゴム破壊の起点となり、耐久性が低下してしまう問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、耐久性を損なわせず、減衰性の高い、防振ゴム組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の防振ゴム組成物は、下記の(A)成分とともに、下記の(B)〜(D)成分を含有する防振ゴム組成物であって、(A)成分100重量部に対し、(D)成分の含有量が10〜20重量部の範囲であるという構成をとる。
(A)
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、およびエチレン−プロピレン−ジエン系ゴムからなる群から選ばれた少なくとも一つのジエン系ゴム。
(B)シリカ。
(C)シランカップリング剤。
(D)C12〜C22の飽和脂肪酸と、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールとのエステル化合物。
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者は、ジエン系ゴムとシリカとの組合せにおいて、シリカとポリマーとの摩擦によらずに減衰性を高めるために、飽和脂肪酸とペンタエリスリトールとのエステル化合物を加えることを検討した。上記エステル化合物は、ペンタエリストール系であることから、分岐も多く、高減衰効果が見込まれる。さらに、上記エステル化合物は、脂肪酸系であるため、ゴム練りの際には液状に近くなり、均一分散させることができ、異種ポリマーを添加したときのようにゴム破壊の起点となることもないため、耐久性も低下しない。ここで、飽和脂肪酸のC鎖長が短すぎると、可塑剤として作用して静ばね定数(Ks)を低下させるおそれがあり、逆に、C鎖長が長すぎると融点が上がり、均一分散できなくなり耐久性が低下するおそれがある。以上のことを踏まえ実験を重ねた結果、ジエン系ゴムとシリカとの組合せにおいて、シランカップリング剤を配合しても、C12〜C22の飽和脂肪酸とペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールとのエステル化合物を特定の割合で配合したところ、耐久性に悪影響を与えず、減衰性を付与することができ、所期の目的が達成できることを見いだし、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A成分)とともに、シリカ(B成分)と、シランカップリング剤(C成分)と、C12〜C22の飽和脂肪酸とペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールとのエステル化合物(D成分)とを、特定の割合で配合してなるものである。そのため、本発明の防振ゴム組成物は、耐久性に優れるとともに、減衰性にも優れた効果を奏する。そして、本発明の防振ゴム組成物は、高耐久性と高減衰性とが要求される防振ゴム部材、例えば、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等や、建築・住宅分野における防振ゴム部材の材料として、好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の防振ゴム組成物は、ジエン系ゴム(A成分)と、シリカ(B成分)と、シランカップリング剤(C成分)と、C12〜C22の飽和脂肪酸とペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールとのエステル化合物(D成分)とを、特定の割合で配合してなるものである。
【0013】
上記ジエン系ゴム(A成分)としては
、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)
が用いられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、強度や低動倍率化の点で、天然ゴムが好適に用いられる。
【0014】
つぎに、上記ジエン系ゴム(A成分)とともに用いられる補強剤として、本発明では、耐久性の観点から、シリカ(B成分)が用いられる。上記シリカ(B成分)としては、その窒素吸着比表面積が30〜500m
2/gの範囲にあるものが、補強効果と分散性の観点から好ましい。また、上記シリカとしては、例えば、湿式シリカ、乾式シリカ等が用いられる。そして、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0015】
上記シリカ(B成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100重量部(以下、「部」と略す)に対して、5〜100部の範囲が好ましく、特に好ましくは、20〜60部の範囲である。すなわち、上記配合量が少なすぎると、一定水準の補強性を満足できなくなるからであり、逆に上記配合量が多すぎると、動倍率が高くなったり、粘度が上昇して加工性が悪化したりするといった問題が生じるからである。
【0016】
つぎに、上記ジエン系ゴム(A成分)、シリカ(B成分)とともに用いられるシランカップリング剤(C成分)としては、スルフィド系、メルカプト系、アミノ系、グリシドキシ系、ニトロ系、クロロ系のものが用いられる。特に、ゴムとの反応性の高いスルフィド系、メルカプト系が好ましい。具体的には、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4−トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシランなどのグリシドキシ系、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、3−ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、2−クロロエチルトリメトキシシラン、2−クロロエチルトリエトキシシランなどのクロロ系等があげられる。
【0017】
また、上記シランカップリング剤(C成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、0.5〜20部の範囲が好ましく、より好ましくは1〜10部の範囲である。すなわち、このような配合量でシランカップリング剤を配合すると、耐久性とばね特性のバランスやシリカの分散性の観点で好ましいからである。
【0018】
つぎに、上記ジエン系ゴム(A成分)、シリカ(B成分)、シランカップリング剤(C成分)とともに用いられるエステル化合物(D成分)としては、C12〜C22の飽和脂肪酸と、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールとのエステル化合物が用いられる。すなわち、上記飽和脂肪酸のC鎖長が短すぎると、常温で液状となることから、可塑効果が高く、静ばね定数(Ks)を低下させるおそれがあり、逆に上記飽和脂肪酸のC鎖長が長すぎると、融点が上がり、均一分散できなくなり耐久性が低下するおそれがあるからである。なお、上記エステル化合物は、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0019】
上記のような特定のエステル化合物(D成分)に用いられる飽和脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等があげられる。これらを単独でもしくは二種以上併せて、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと反応させることにより、上記特定のエステル化合物(D成分)を得ることができる。
【0020】
このようにして得られる、上記特定のエステル化合物(D成分)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A成分)100部に対して、10〜20部の範囲であり、好ましくは10〜15部の範囲である。すなわち、上記特定のエステル化合物(D成分)の配合量が少なすぎると、所望の減衰性を得ることができず、逆に多すぎると、減衰性は向上するが、過剰に添加するとブリードを起こし、接着異常を起こすおそれがあるからである。
【0021】
なお、本発明の防振ゴム組成物においては、上記A〜D成分とともに、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、プロセスオイル等を必要に応じて適宜に配合することも可能である。
【0022】
上記加硫剤としては、例えば、硫黄(粉末硫黄,沈降硫黄,不溶性硫黄)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0023】
上記加硫促進剤としては、例えば、チアゾール系,スルフェンアミド系,チウラム系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、架橋反応性に優れる点で、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0024】
上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、特に架橋反応性に優れる点で、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)が好適に用いられる。
【0025】
上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。
【0026】
上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。
【0027】
上記加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化マグネシウム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0028】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0029】
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0030】
本発明の防振ゴム組成物は、例えば、つぎのようにして調製することができる。すなわち、上記ジエン系ゴム(A成分)と、シリカ(B成分)と、シランカップリング剤(C成分)と、特定のエステル化合物(D成分)と、必要に応じて、老化防止剤,プロセスオイル等とを適宜に配合し、これらを、バンバリーミキサー等を用いて、約50℃の温度から混練りを開始し、130〜180℃で、2〜5分間程度混練を行う。つぎに、これに、加硫剤,加硫促進剤等を適宜に配合し、オープンロールを用いて、所定条件(例えば、60℃で5分間)で混練することにより、防振ゴム組成物を調製することができる。その後、得られた防振ゴム組成物を、高温(150〜170℃)で5〜30分間、加硫することにより防振ゴム(加硫体)を得ることができる。
【0031】
そして、防振ゴムの材料として、上記のように本発明の防振ゴム組成物を用いることにより、耐久性を損なわずに、減衰性にも優れた効果を得ることができる。このことから、上記のように調製された本発明の防振ゴム組成物は、高耐久性と高減衰性とが要求される防振ゴム部材、例えば、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等や、建築・住宅分野における防振ゴム部材の材料として、好適に用いることができる。
【実施例】
【0032】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0033】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す材料を準備した。
【0034】
〔NR〕
天然ゴム
【0035】
〔酸化亜鉛〕
酸化亜鉛2種、堺化学工業社製
【0036】
〔ステアリン酸〕
ビーズステアリン酸さくら、日本油脂社製
【0037】
〔老化防止剤〕
アンチゲン6C、住友化学社製
【0038】
〔シリカ〕
ニプシールVN3、東ソーシリカ社製
【0039】
〔カーボンブラック〕
ショウブラックN330、昭和キャボット社製
【0040】
〔ナフテン系オイル〕
サンセン410、日本サン石油社製
【0041】
〔シランカップリング剤〕
NXT Z 45、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアル社製
【0042】
〔エステル化合物(i)〕
ラウリン酸(C12)とペンタエリスリトールとのエステル化合物(DC12(試供品)、理研ビタミン社製)
【0043】
〔エステル化合物(ii)〕
ステアリン酸(C18)とペンタエリスリトールとのエステル化合物(DC18(試供品)、理研ビタミン社製)
【0044】
〔エステル化合物(iii)〕
ベヘン酸(C22)とペンタエリスリトールとのエステル化合物(DC22(試供品)、理研ビタミン社製)
【0045】
〔エステル化合物(iv)〕
カプリン酸(C10)とペンタエリスリトールとのエステル化合物(DC10(試供品)、理研ビタミン社製)
【0046】
〔エステル化合物(v)〕
カプロン酸(C8)とペンタエリスリトールとのエステル化合物(DC8(試供品)、理研ビタミン社製)
【0047】
〔エステル化合物(vi)〕
ステアリン酸(C18)とジペンタエリスリトールとのエステル化合物(L−8483、理研ビタミン社製)
【0048】
〔加硫促進剤〕
サンセラーCZ−G、三新化学社製
【0049】
〔硫黄〕
サルファックスT10、鶴見化学工業社製、
【0050】
〔実施例1〕
NR100部と、酸化亜鉛5部と、ステアリン酸2部と、老化防止剤1部と、シリカ40部と、ナフテン系オイル3部と、シランカップリング剤4部と、エステル化合物(i)を15部とを配合し、これらを、バンバリーミキサーによって、150℃で5分間混練した。つぎに、これに、硫黄1部と、加硫促進剤2部とを配合し、オープンロールを用いて、60℃で5分間混練することにより、防振ゴム組成物を調製した。
【0051】
〔実施例2〜6、比較例1〜4〕
後記の表1に示すように、各成分の配合量等を変更する以外は、実施例1に準じて、防振ゴム組成物を調製した。
【0052】
このようにして得られた実施例および比較例の防振ゴム組成物を用い、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。その結果を、後記の表1に併せて示した。なお、各特性の測定値は、比較例1の防振ゴム組成物における測定値を100とし、この値に対し、各実施例および比較例の防振ゴム組成物における測定値を指数換算したものである。
【0053】
〔減衰性〕
上記作製のテストピースの静ばね定数(Ks)を、JIS K 6394に準じて測定した。また、JIS K 6385に準じて、周波数15Hzでの損失係数(tanδ)を求めた。そして、比較例1(エステル化合物不含組成物)の値に比べ、静ばね定数(Ks)、損失係数(tanδ)のいずれもが上回っているものを「○」、一つでも上回らないものがあるものを「×」と評価した。
【0054】
〔耐久性〕
上記作製のテストピースを、150℃×30分の条件でプレス成形(加硫)して、厚み2mmのゴムシートを作製した。そして、このゴムシートから、JIS3号ダンベルを打ち抜き、このダンベルを用い、JIS K6260に準じてダンベル疲労試験(伸張試験)を行った。そして、その破断時の伸張回数(破断時回数)を測定した。そして、その破断時の伸張回数(破断時回数)が、比較例1と比較して同等以上であったものを「○」、比較例1を下回る結果となったものを「×」と評価した。
【0055】
【表1】
【0056】
上記結果から、実施例のゴム組成物は、比較例のゴム組成物に比べ、減衰性と耐久性との両方において、優れた効果が得られていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の防振ゴム組成物は、耐久性を損なわず、減衰性にも優れた効果を得ることができる。このことから、本発明の防振ゴム組成物は、高耐久性と高減衰性とが要求される防振ゴム部材、例えば、自動車の車両等に用いられるエンジンマウント、スタビライザブッシュ、サスペンションブッシュ等や、建築・住宅分野における防振ゴム部材の材料として、好適に用いることができる。