(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イオン発生装置が配置された前記側壁に、前記シロッコファンに吸い込まれる空気が通過する連通口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の空気改質機器。
【背景技術】
【0002】
室内の空気の質の改善にイオンを用いる空気改質機器は、これまでにも様々なものが提案されている。その一例を特許文献1に見ることができる。
【0003】
特許文献1には空気調節装置が記載されている。この空気調節装置はシロッコファンとそれを収容するケーシングを有し、ケーシング内の通風路には、放電面がシロッコファンの外周面に対向するように、イオン発生装置が配置されている。この構成により「シロッコファン151から吹き出された空気は、直接イオン発生装置170の放電面172に当たるようになる。このため、効率良く気流にイオン発生装置170から放出される正イオンまたは負イオンを含ませることが可能になる。」(段落[0051])という効果がもたらされる。
【0004】
イオン発生装置としては様々な形式のものが実用化されており、その例を特許文献2、3に見ることができる。特許文献2に記載されたイオン発生装置は2本の針状電極を用いて正イオンと負イオンを発生する。特許文献3に記載されたイオン発生装置では針状電極の数が4本になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
正イオンと負イオンによる殺菌作用は良く知られるようになっている。塵埃が付着しやすい空気改質機器のファンにも正イオンと負イオンによる殺菌作用を働かせたいところであるが、単純にファンの風上側にイオン発生装置を配置したのでは、空気がファンを通過する際に正イオンと負イオンが衝突し合って中和され、室内に放出される正イオンと負イオンの量が減少してしまう。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、シロッコファン及びそれを収容するファンケーシングを備えた空気改質機器において、室内に放出される正イオンと負イオンの量にそれほど影響を与えることなく、正イオンと負イオンによる殺菌作用をシロッコファンにも及ぼすことができる空気改質機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る空気改質機器は、シロッコファン及びそれを収容するファンケーシングを備え、前記ファンケーシングは、前記シロッコファンの外周面が対向するインボリュート壁と、前記シロッコファンの両側面が対向する両側壁を含み、前記両側壁の少なくとも一方の側壁に、正イオンと負イオンを発生させるイオン発生装置が配置されるものであり、前記側壁の中で前記シロッコファンの外周部に近接した箇所が前記イオン発生装置の配置箇所として選択されることを特徴としている。
【0009】
上記構成の空気改質機器において、前記イオン発生装置が配置された前記側壁に、前記シロッコファンに吸い込まれる空気が通過する連通口が形成されていることが好ましい。
【0010】
上記構成の空気改質機器において、前記イオン発生装置は、前記側壁に形成された凹部に埋設されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
シロッコファンの回転によって生じる空気流は、シロッコファンの外周面から吐出されてファンケーシングの吹出口に向かう空気流が全てではない。シロッコファンの側面とファンケーシングの側壁との間に、シロッコファンの回転につられて流動する随伴流が発生する。側壁の中でシロッコファンの外周部に近接した箇所に配置されたイオン発生装置から発生した正イオンと負イオンは、大半は吹出口に向かう空気流によって運び去られるが、一部は随伴流に混じる。正イオンと負イオンが混じった随伴流がシロッコファンに吸い込まれてそこから吐出されるときに、正イオンと負イオンによってシロッコファンの殺菌が行われる。これにより、室内に放出される正イオンと負イオンの量を大きく減少させることなく、シロッコファン自体の殺菌も行うことができる。また、正負イオンによってシロッコファン自体および付着した埃が除電され、埃の堆積が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
空気改質機器の一例として取り上げられるのは空気清浄機であり、その第1実施形態を
図1から
図5に示す。空気清浄機1は、正面形状が隅丸正方形であり、上下左右の寸法に比べて前後の奥行きが小さい、薄い箱形の筐体10を備える。筐体10の背面には多数の小孔の集合からなる吸気口11(
図5参照)が形成され、吸気口11の内側にフィルタ室12が区画形成されている。
【0014】
フィルタ室12には塵埃捕集用のフィルタ13が格納される。フィルタ13はHEPAフィルタである。フィルタ室12とフィルタ13はそれぞれ上下2個の部分に分けられており、上下2個の部分の間に所定の間隙が設けられている。後述するシロッコファンを回転させるモータはこの間隙に配置される。
【0015】
フィルタ室12と筐体10の正面との間にはファンケーシング14が形成される。ファンケーシング14は、ファンから吐出された空気を受け入れて吹出口の方へ導く渦巻状空気流路部分を備える。渦巻状空気流路部分は、下流側に向かって断面積が漸増するインボリュート形状となっている。
【0016】
フィルタ室12の内部とファンケーシング14の内部とは多数の小孔の集合からなる連通口15(
図4参照)によって連通する。上下のフィルタ室12のそれぞれに連通口15が設けられている。
【0017】
ファンケーシング14の内部にはシロッコファン16が配置される。シロッコファン16は、円形の主板16aの周縁に多数の羽根16bを配置し、主板16aの中心部に円孔からなる連通口16cを複数個、環状に配列した構造である。シロッコファン16はファンケーシング14の中で、
図2において反時計回りに回転する。ファンケーシング14の末端は吹出口17となる。吹出口17は筐体10の天面に開口している。
【0018】
ファンケーシング14は、
図3あるいは
図5に見られる通り、シロッコファン16の外周面が対向するインボリュート壁14aと、シロッコファン16の両側面が対向する側壁14b、14cとにより構成される。フィルタ室12とファンケーシング14を隔てる仕切壁が側壁14bとなり、筐体10の正面壁が側壁14cとなる。連通口15は側壁14bに形成されている。インボリュート壁14aは渦巻状空気流路部分に、下流側に向かって断面積が漸増するインボリュート形状を与える。
【0019】
インボリュート壁14aには、吹出口17の始まりとなるスロート部を形成する突出部14dが形成されている。インボリュート壁14aは、突出部14dの箇所でシロッコファン16の外周面に最も接近する。
【0020】
上下のフィルタ室12の間隙に配置されたモータ18(
図3参照)がシロッコファン16を回転させると、室内空気が吸気口11からフィルタ室12に吸い込まれる。吸い込まれた空気はフィルタ13を通過し、空気中の塵埃はフィルタ13に捕集される。フィルタ13を通過することで浄化された空気は連通口15を通ってファンケーシング14に入り、シロッコファン16に吸い込まれる。シロッコファン16に吸い込まれた空気はシロッコファン16の外周部から吐出され、ファンケーシング14の内部を旋回して、吹出口17より上方に吹き出される。
【0021】
吹出口17には風向板20が配置される。風向板20は左右方向に長い長方形をしている。風向板20は片面の風向変更面21を吹出口17から吹き出される空気流に干渉させて空気の吹出方向を変える。空気清浄機1においては、風向板20は風向変更面21により空気の吹出方向を前方寄りに変える。
【0022】
風向板20は後端を回動の中心として垂直面内で回動することができるように吹出口17に取り付けられており、図示しないモータによって次の2姿勢のいずれかに保持される。第1の姿勢は風向変更面21によって空気の吹出方向を変える姿勢であり、これを
図5に示す。第2の姿勢は吹出口17を閉ざす姿勢である。風向板20の風向変更面21と反対側の面は平面とされており、この平面は、風向板20が吹出口17を閉ざす状態では筐体10の天面と面一になる。
【0023】
空気清浄機1は、吹出口17から吹き出す空気に、イオン発生装置30で発生させたイオンを混入する。イオン発生装置30は電極間に高圧の交流電圧を印加してプラズマ放電を発生させ、空気中の水分子を帯電させて正イオンH
+(H
2O)
m(mは任意の自然数)と負イオンO
2-(H
2O)
n(nは任意の自然数)を生成する。この正イオンと負イオンは空気中の浮遊細菌の細胞表面で化学反応を生じ、活性種である過酸化水素H
2O
2または水酸基ラジカル・OHを生成する。この活性種の作用によって浮遊細菌の細胞膜が破壊され、浮遊細菌は殺菌される。これにより、室内空気を清浄化することができる。
【0024】
イオン発生装置30は、ファンケーシング14の側壁14bに、その中でもシロッコファン16の外周部に近接した箇所に、配置される。側壁14bには凹部31が形成され、その中にイオン発生装置30が埋設される。
【0025】
イオン発生装置30は2本の針状電極30a、30bにより正イオンと負イオンを発生させる。針状電極30aは針状電極30bよりも一層シロッコファン16に近い位置に、すなわち正面から見たときシロッコファン
16の外周面にほぼ整列する位置に置かれている。
【0026】
イオン発生装置30は特許文献2に記載されたイオン発生装置と同様2本の針状電極を備えるものであるが、特許文献3に記載されたイオン発生装置のように4本の針状電極を備えるものであっても構わない。
【0027】
シロッコファン16を回転させつつイオン発生装置30を動作させると、シロッコファン16の回転によって生じる空気流に、イオン発生装置30から発生した正イオンと負イオンが含まれることになる。イオンを含む空気流の大部分はそのまま吹出口17に向かい、吹出口17から吹き出されて室内の除菌を行う。
【0028】
イオンを含む空気流の一部は、そのまま吹出口17に向かうのでなく、シロッコファン16の側面とファンケーシング14の側壁14bとの間でシロッコファン16の回転につられて回転する随伴流となる。この随伴流は最終的にはシロッコファン16の内部に吸い込まれ、羽根16bの間を通って吐出される。このような空気の動きに伴い正イオンと負イオンがシロッコファン16の表面に接触し、その際、シロッコファン16の表面に付着している細菌が前述のような仕組みで殺菌される。
【0029】
シロッコファン16を含むファンケーシング14内の風路は、イオンに接触することで帯電が防止される。これにより、ファンケーシング14とシロッコファン16に対する塵埃付着が抑制され、空気清浄機1を衛生的に使用することができる。
【0030】
シロッコファン16の回転につられてシロッコファン16の側面とファンケーシング14の側壁14bとの間に発生する随伴流に正イオンと負イオンが混じるという作用は、側壁14bのシロッコファン16の外周部に近接した箇所にイオン発生装置30を配置することで生じる。特許文献1のようにインボリュート壁14aの箇所にイオン発生装置30を配置したのではこのような作用は生じない。
【0031】
イオン発生装置30をファンケーシング14の側壁14cの側に配置することも可能である。側壁14bと14cの両方にイオン発生装置30を設けることとしてもよい。
【0032】
<第2実施形態>
図6及び
図7に空気清浄機1の第2実施形態を示す。第2実施形態に係る空気清浄機1は、第1実施形態の空気清浄機1の構成に加えて、室内空気の状態を知るためのセンサを有する点が特徴となっている。
【0033】
図6及び
図7には2種類のセンサが示されている。1番目のセンサは空気中の埃の量を測定する埃センサ40である。2番目のセンサは空気中に多量に存在することが好ましくない気体の量を測定するガスセンサ41である。言うまでもないが、埃センサ40とガスセンサ41の取り合わせは単なる例示であり、どちらか一方だけに絞ってもよいし、他の種類のセンサと組み合わせることとしてもよい。
【0034】
上下のフィルタ室12の間隙にはセンサ風路42が形成され、このセンサ風路42の中に埃センサ40とガスセンサ41が配置される。埃センサ40はセンサ風路42の上流側に置かれ、ガスセンサ41はセンサ風路42の下流側に置かれる。
【0035】
筐体10の背面にセンサ風路42の入口が設けられる。この入口は図示しない。センサ風路42の出口42aは、上方のフィルタ室12の内部側壁の、フィルタ13の風上側の位置に開口する。この位置は上方のフィルタ室12とファンケーシング14の内部を連通させる連通口15に近接した位置でもある。
【0036】
シロッコファン16が回転したときに連通口15に生じる空気吸引力は、当然のことながら、フィルタ13の中でも連通口15に近接した箇所に強く作用する。この箇所にセンサ風路42の出口42aが設けられているから、出口42aに作用する負圧で、センサ風路42に安定した空気流を確保できる。これにより、埃やガスの検知感度の低下を防止できる。
【0037】
空気は出口42aを通じてフィルタ13の風上側に出るから、フィルタ13を通らない空気、すなわち清浄化されていない空気が空気清浄機1から吹き出されるということがない。
【0038】
センサ風路42を通じての空気の吸引をさらに力強いものにするため、出口42aにノズルを取り付け、このノズルの出口を、フィルタ13を隔てて連通口15に対峙する位置に置くこととしてもよい。
【0039】
<第3実施形態>
図8に空気清浄機1の第3実施形態を示す。第3実施形態に係る空気清浄機1は、第1実施形態あるいは第2実施形態の空気清浄機1の構成に加えて、シロッコファン16として
図8に示す構造のものを用いた点が特徴となっている。
【0040】
図8のシロッコファン16は、主板16aに、ファンケーシング14の側壁14bに対向するリング状の凸部16dが形成されている。凸部16dの先端は微少間隔で側壁14bに対峙している。
【0041】
シロッコファン16が回転しているときに、何らかの原因でシロッコファン16が傾いたとき、羽根16bが側壁14bに接触する前に凸部16dが側壁14bに接触して、シロッコファン16がそれ以上傾かないようにする。これにより、羽根16bが側板14bに接触して羽根16bに欠けが生じたりすることが防止される。
【0042】
防振の目的で、モータ18の回転軸とシロッコファン16の間にゴムのような弾性体を介在させることがよくある。このようにしたシロッコファン16は傾きやすいが、凸部16dを設けることで羽根16bが側板14bに接触する危険を軽減することができる。
【0043】
シロッコファン16の側に凸部16dを設けるのでなく、側板14bの側にシロッコファン16の主板16aに対向するリング状の凸部を設けることとしてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。