(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載の成膜装置では、成膜ゾーンを形成するためのカバーにおいて、ローラ対向壁における成膜ローラの半径方向内側を向く面は、成膜ローラの外周面に対して半径方向外側に隙間の幅だけ離間した位置に配置される。したがって、ローラ対向壁における成膜ローラの半径方向外側を向く面に配置されたマスクは、ローラ対向壁の厚さと上記の隙間とを足した距離だけローラの外周面から離れる。そのため、マスクと成膜ローラの外周面との距離が大きくなることにより、蒸発源からの粒子は、マスクの開口を通過した後にマスクの開口幅よりも外側に広がりやすくなる。マスクの開口幅よりも外側に広がって基材に付着する粒子の量は、マスクの開口幅の範囲内で基材に付着する粒子の量よりも少ない。その結果、成膜時に基材の幅方向両端部において、マスクの開口幅よりも外側では、形成される薄膜の厚さが薄い領域が大きくなるおそれがある。このため、薄膜の厚さの分布を改善することが難しい。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、マスクと成膜ローラの外周面との距離を抑えて、形成される薄膜の厚さの分布を改善することが可能な成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の
請求項1に係る成膜装置は、ガスを用いて帯状の基材の表面に成膜を連続的に行う成膜装置であって、チャンバと、前記チャンバの内部に回転自在に取り付けられ、前記基材に接触可能な外周面を有する成膜ローラと、前記チャンバに固定され、前記成膜ローラの幅方向の両側において当該成膜ローラとの間に隙間をあけた位置に配置された一対の隔壁と、前記成膜ローラの前記外周面に面する少なくとも1つの成膜ゾーンを前記チャンバ内部に形成する周方向制限部と、前記成膜ゾーンの内部において前記成膜ローラの外周面に対向して配置され、前記基材の表面における前記成膜によって形成される薄膜の幅を規定する開口を有するマスクと、を備えており、前記隔壁は、前記成膜ローラの半径方向外側を向く外側面と、前記成膜ローラの半径方向内側を向く内側面とを有しており、前記マスクは、前記隔壁の前記外側面に取り付けられており、前記隔壁の前記内側面は、前記成膜ローラの前記外周面よりも前記成膜ローラの半径方向内側に位置し
、前記成膜ローラにおける前記外周面の幅方向の両端部よりも当該成膜ローラの幅方向外側の部分には、当該成膜ローラの周方向に沿って延びる円環状の溝が形成されており、前記隔壁は、前記円環状の溝に挿入可能な環状の形状を有しており、前記隔壁は、前記溝に挿入されるとともに当該溝の内壁との間に前記隙間をあけた位置に配置され、前記隙間は、前記隔壁の内側面とそれに対向する溝の内壁との間に形成される幅方向隙間を有し、当該幅方向隙間は、前記成膜ローラの幅方向へのガスの流れを制限する幅方向流路を形成する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明
の請求項1に係る構成では、隔壁と成膜ローラとの間にガスの幅方向への流通を許容する隙間を形成しながら、マスクと成膜ローラの外周面とを互いに近づけて、形成される薄膜の厚さの分布を改善するものである。具体的には、上記の構成によれば、隔壁における成膜ローラの半径方向内側を向く内側面は、成膜ローラの外周面よりも成膜ローラの半径方向内側に位置している。すなわち、成膜ローラの外周面と隔壁の内側面とが成膜ローラの半径方向においてオーバーラップしている。さらに、チャンバ内部に形成された成膜ゾーンの内部に配置されたマスクは、隔壁における成膜ローラの半径方向外側を向く外側面に取り付けられている。そのため、マスクと成膜ローラの外周面との距離は、隔壁の厚さ(すなわち外側面と内側面との距離)よりも小さい距離まで近づけることが可能になる。その結果、成膜時に基材の幅方向両端部において成膜の膜厚が薄い領域を小さくすることが可能になり、薄膜の厚さの分布を改善し、膜厚均一性が向上する。しかも、チャンバに固定された隔壁は、成膜ローラの幅方向の両側において、当該成膜ローラとの間に隙間をあけた位置に配置されている。この隙間は、成膜ローラの外周面から当該成膜ローラの幅方向の外方へのガスの流れを制限する幅方向流路として機能することが可能である。
また、上記の構成では、形状が簡単な環状の隔壁によって、隔壁と成膜ローラとの間にガスの幅方向への流通を許容する隙間を形成しながら、マスクと成膜ローラの外周面とを互いに近づけて、形成される薄膜の厚さの分布を改善することが可能である。また、環状の隔壁は、形状が簡単であるので、精度よく製造することが容易である。さらに、環状の隔壁は、成膜ローラにおける外周面の幅方向端部よりも幅方向外側に形成された円環状の溝に挿入されることにより、環状の隔壁の内側面は、成膜ローラの外周面よりも成膜ローラの半径方向内側に位置することが可能である。そのため、隔壁の厚さを確保し、それによって隔壁の剛性を向上することが可能である。しかも、当該環状の隔壁と溝の内壁との間には、円環状の隙間が均一に形成されるので、当該隙間を通るガスの量を成膜ローラの全周において均一にすることが可能である。
さらに、上記の構成では、前記隙間は、前記隔壁の内側面とそれに対向する溝の内壁との間に形成される幅方向隙間を有し、当該幅方向隙間は、前記成膜ローラの幅方向へのガスの流れを制限する幅方向流路を形成する。
【0013】
さらに、前記環状の隔壁は、互いに分離された複数の円弧状の部分によって構成されているのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、成膜ローラをチャンバ内に組み付けた後に、環状の隔壁を構成する円弧状の部分をチャンバにそれぞれ固定することにより、環状の隔壁を容易にチャンバに組み付けることが可能である。すなわち、全周にわたって連続する環状の隔壁の場合では、成膜ローラをチャンバ内に組み付ける前に当該隔壁を成膜ローラの両側に取り付け、その後に隔壁が取り付けられた成膜ローラをチャンバ内に組み付ける必要があり、組み付け作業が複雑である。それに対し、上記のように、互いに分離された複数の円弧状の部分によって構成された環状の隔壁の場合には、成膜ローラをチャンバ内に組み付けた後に、容易に隔壁をチャンバに組み付けることが可能である。
【0015】
本発明の請求項3に係る成膜装置は、ガスを用いて帯状の基材の表面に成膜を連続的に行う成膜装置であって、チャンバと、前記チャンバの内部に回転自在に取り付けられ、前記基材に接触可能な外周面を有する成膜ローラと、前記チャンバに固定され、前記成膜ローラの幅方向の両側において当該成膜ローラとの間に隙間をあけた位置に配置された一対の隔壁と、前記成膜ローラの前記外周面に面する少なくとも1つの成膜ゾーンを前記チャンバ内部に形成する周方向制限部と、前記成膜ゾーンの内部において前記成膜ローラの外周面に対向して配置され、前記基材の表面における前記成膜によって形成される薄膜の幅を規定する開口を有するマスクと、を備えており、前記隔壁は、前記成膜ローラの半径方向外側を向く外側面と、前記成膜ローラの半径方向内側を向く内側面とを有しており、前記隔壁の前記内側面は、前記成膜ローラの前記外周面よりも前記成膜ローラの半径方向内側に位置し、前記隔壁は、前記チャンバに固定され、前記成膜ローラの幅方向の両端部から当該幅方向に離間した位置に配置され、前記外側面および前記内側面を有する本体部
と、前記本体部から前記外側面に沿って延びる延長部とを有し、前記マスクは、前記本体部の前記外側面に取り付けられ
、前記隙間は、前記延長部とそれに対向する成膜ローラの外周面との間に形成される幅方向隙間を有し、当該幅方向隙間は、前記成膜ローラの幅方向へのガスの流れを制限する幅方向流路を形成する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3に係る構成では、上記の請求項1に係る構成と同様に、隔壁と成膜ローラとの間にガスの幅方向への流通を許容する隙間を形成しながら、マスクと成膜ローラの外周面とを互いに近づけて、形成される薄膜の厚さの分布を改善するものである。具体的には、上記の構成によれば、隔壁における成膜ローラの半径方向内側を向く内側面は、成膜ローラの外周面よりも成膜ローラの半径方向内側に位置している。すなわち、成膜ローラの外周面と隔壁の内側面とが成膜ローラの半径方向においてオーバーラップしている。さらに、チャンバ内部に形成された成膜ゾーンの内部に配置されたマスクは、隔壁における成膜ローラの半径方向外側を向く外側面に取り付けられている。そのため、マスクと成膜ローラの外周面との距離は、隔壁の厚さ(すなわち外側面と内側面との距離)よりも小さい距離まで近づけることが可能になる。その結果、成膜時に基材の幅方向両端部において成膜の膜厚が薄い領域を小さくすることが可能になり、薄膜の厚さの分布を改善し、膜厚均一性が向上する。しかも、チャンバに固定された隔壁は、成膜ローラの幅方向の両側において、当該成膜ローラとの間に隙間をあけた位置に配置されている。この隙間は、成膜ローラの外周面から当該成膜ローラの幅方向の外方へのガスの流れを制限する幅方向流路として機能することが可能である。
また、上記の構成によれば、隔壁の本体部は、その内側面が成膜ローラの外周面よりも成膜ローラの半径方向内側に位置することができるように、成膜ローラの幅方向の両端部から当該幅方向に離間した位置に配置されている。これにより、本体部の外側面に取り付けられたマスクを成膜ローラの外周面に近づけて、形成される薄膜の厚さの分布を改善することが可能である。すなわち、隔壁の本体部は、成膜ローラの幅方向の両端部から当該幅方向に離間した位置に配置され、マスクは、本体部の外側面に取り付けられている。そのため、マスクと成膜ローラの外周面との距離は、本体部の厚さ(すなわち外側面と内側面との距離)よりも小さい距離まで近づけることが可能になる。また、本体部の内側面は、成膜ローラの外周面よりも成膜ローラの半径方向内側に位置することが可能になり、本体部の厚さを確保し、それによって隔壁の剛性を向上することが可能である。
さらに、上記の構成では、隔壁の延長部が、本体部から外側面に沿って延び、成膜ローラの外周面との間に隙間を形成する。この隙間が幅方向流路として機能することにより、成膜ローラの幅方向の外方へのガスの流れを制限することが可能である。すなわち、この構成では、隙間は、延長部とそれに対向する成膜ローラの外周面との間に形成される幅方向隙間を有し、当該幅方向隙間は、成膜ローラの幅方向へのガスの流れを制限する幅方向流路を形成する。
【0019】
また、前記周方向制限部は、前記隔壁の前記外側面に取り付けられているのが好ましい。
【0020】
隔壁はチャンバに固定されることにより、チャンバ内部で高い精度で位置決めされている。そのため、周方向制限部がその隔壁の外側面に取り付けられることにより、周方向制限部は、成膜ローラの外周面に対向する位置に高精度でかつ容易に配置することが可能である。
【0021】
さらに、前記周方向制限部は、前記成膜ローラの前記外周面に対向するゾーン間排気板を有しており、前記ゾーン間排気板は、前記成膜ローラの前記外周面に対して隙間を確保した状態で、前記隔壁の前記外側面に固定されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、ゾーン間排気板は、隔壁の外側面に固定されることにより、容易に成膜ローラの周面に対して均一の隙間を確保することが可能である。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明の成膜装置によれば、マスクと成膜ローラの外周面との距離を抑えて、形成される薄膜の厚さの分布を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の成膜装置の実施形態についてさらに詳細に説明する。
【0026】
図1〜2に示される成膜装置1は、複数(
図1では4つ)の成膜ゾーン11においてガスGを用いて帯状の基材Bの表面に薄膜を連続的に形成する装置である。成膜装置1としては、ガスGを用いて基材Bの表面に薄膜を連続的に形成する装置であればよく、スパッタリング、真空蒸着、プラズマCVDなどを行う成膜装置が用いられる。以下の実施形態では、スパッタリングを行う成膜装置1を例にあげて説明する。
【0027】
この成膜装置1は、チャンバ2と、チャンバ2内部に回転自在に取り付けられた成膜ローラ3と、複数の成膜ゾーン11を形成する隔壁構造体4と、各成膜ゾーン11に配置されたマスク5および蒸発源6と、基材Bのロールから基材Bを成膜ローラ3へ巻き出す巻出部7と、成膜後の基材Bをロール状に巻き取る巻取部8とを備えている。
【0028】
基材Bは、樹脂、金属、ガラス等からなり、薄い帯状であればよい。
【0029】
チャンバ2は、内部空間2aを有する中空の筐体である。チャンバ2には、排気手段としてターボ分子ポンプ(turbomolecular pump、略称:TMP)や真空ポンプなどのポンプ13、15に接続されている。
【0030】
チャンバ2の内部空間2aは、成膜ローラ3および隔壁構造体4によって、5つの空間、すなわち、4つの成膜ゾーン11と、1個の搬送ゾーン12とに区画されている。4つの成膜ゾーン11は、成膜ローラ3の表面で基材Bの成膜が行われる成膜エリアである。なお、成膜ゾーン11は、少なくとも1つあればよい。成膜ゾーンの個数は、1つでも複数でもよい。搬送ゾーン12は、基材Bの成膜が行われない非成膜エリアであり、巻出部7および巻取部8が収容されている。
【0031】
各成膜ゾーン11には、ガス供給口14が設けられている。スパッタリングの成膜時に使用されるアルゴンや酸素などのガスGは、ガス供給口14を通って各成膜ゾーン11へ供給される。各成膜ゾーン11には、それぞれポンプ13が接続されているので、各成膜ゾーン11の圧力を個別に調整することが可能である。各成膜ゾーン11に設置される蒸発源6は、各成膜ゾーン11で形成される薄膜の種類に応じて選択される。なお、複数のポンプ13が各成膜ゾーン11に接続され、成膜ローラ3の幅方向に並べて配置されてもよい。
【0032】
搬送ゾーン12には、ポンプ15が接続されている。これにより搬送ゾーン12は、真空状態または低圧状態まで減圧される。なお、複数のポンプ15が搬送ゾーン12に接続されてもよい。
【0033】
各成膜ゾーン11は、
図12に示される幅方向流路36および周方向流路37を介して搬送ゾーン12に連通している。これら幅方向流路36および周方向流路37の寸法は、隔壁構造体4の形状および取付位置によって設定される。これら幅方向流路36および周方向流路37の寸法の設定によって、成膜ゾーン11外部に流れる排気ガスEの量が制限される。例えば、スパッタリングを行う成膜装置1の場合には、成膜ゾーン11は、搬送ゾーン12の内部よりも高圧に保たれている。この場合には、例えば、成膜ゾーン11内の圧力は、0.3〜0.5Pa程度、搬送ゾーン12内の圧力は、それより低い圧力であるベース圧力、例えば10
−3〜10
−4Pa程度に設定される。成膜プロセス前には、ポンプ15によって、すべての成膜ゾーン11および搬送ゾーン12の圧力が10
−3〜10
−4Pa程度まで下げられる。なお、CVDを行う成膜装置1の場合には、汚れたガスが成膜ゾーン11から流出しないように、成膜ゾーン11を搬送ゾーン12の内部よりも低圧(負圧)にしておけばよい。
【0034】
図3に示されるように、成膜ローラ3は、両端部が部分的に直径が小さい円筒形状(いわゆる段付きの円筒形状)を有する。すなわち、成膜ローラ3は、基材Bに接触可能な外周面3aと、外周面3aの幅方向D1の両端部よりも当該成膜ローラ3の幅方向D1の外側の部分に形成された円環状の溝3bとを有する。外周面3aは、基材Bに損傷を与えないように研磨されて滑らかになっている。円環状の溝3bは、成膜ローラ3の周方向D2に沿って成膜ローラ3の全周にわたって延びる。
図3の溝3bは、幅方向D1の外側に開放されているが、閉じていてもよい。
【0035】
成膜ローラ3は、それぞれステンレスなどの金属で製造される。成膜ローラ3は、チャンバ2の内部に回転自在に取り付けられている。すなわち、成膜ローラ3の回転軸Oの両端部3c(
図7参照)は、チャンバ2の対向する一対の側壁に設けられた第1取付部2bおよび第2取付部2cに軸受31を介して(
図7参照)に回転自在に支持されている。
【0036】
成膜ローラ3は、温度調整されるようにしてもよい。例えば、
図7に示されるように、管32を介して液媒Mを成膜ローラ3の内部の空間部(図示せず)に供給および排出することにより、成膜ローラ3の温度を調整することが可能である。成膜ローラ3を高温又は低温にすることにより、良好な膜質で基材Bに密着性良く成膜することが可能である。管32の周囲の隙間は、シール部材33によってシールされる。
【0037】
帯状の基材Bは、成膜ローラ3の外周面3aに巻き掛けられた状態で各成膜ゾーン11に順に搬送される。
【0038】
隔壁構造体4は、
図1〜2および
図6に示されるように、成膜ローラ3の幅方向D1の両側に設けられた一対のリング隔壁21と、一対のリング隔壁21に取り付けられた周方向制限部22とを備えている。周方向制限部22は、後述のゾーン間排気板24と、
差動排気カバー25と、仕切板26(
図2および
図6参照)とを有する。
【0039】
一対のリング隔壁21は、
図4に示されるように、円環状の溝3bに挿入可能な環状の形状を有している。本実施形態では、環状のリング隔壁21は、
図5に示されるように、互いに分離された複数の円弧状の部分21A、21Bによって構成されている。
【0040】
リング隔壁21は、熱によって変形しにくい剛性の高い部材であり、例えば、スチールなどで製造された厚さ10mm程度の部材である。
【0041】
リング隔壁21は、
図7〜8に示されるように、成膜ローラ3の半径方向外側R1を向く外側面21aと、成膜ローラ3の半径方向内側R2を向く内側面21bとを有している。リング隔壁21は、ブラケットなどの固定部材35を介してチャンバ2の側壁に固定される。リング隔壁21は、内側面21bが成膜ローラ3の外周面3aよりも成膜ローラ3の半径方向内側R2に位置するように、成膜ローラ3の両端部の溝3bにそれぞれ挿入される。これにより、リング隔壁21は、溝3bの内壁(すなわち、幅方向壁3b1、径方向壁3b2)との間に隙間36をあけた位置に配置されている。隙間36は、リング隔壁21の内側面21bと溝3bの幅方向壁3b1との間の幅方向隙間36aと、リング隔壁21の側面と溝3bの半径方向壁3b2との間の半径方向隙間36bとを有する。
【0042】
隙間36は、成膜ローラ3の外周面3aから当該成膜ローラ3の幅方向D1の外方へのガスの流れを制限する幅方向流路36を形成する。いいかえれば、成膜ローラ3およびリング隔壁21によって各成膜ゾーン11をその外部から分離するための成膜ローラ3の幅方向における圧力障壁を形成する。
【0043】
リング隔壁21は、チャンバ2に固定されているので、隙間36の寸法精度を保証しながら、周方向制限部22の組立位置の基準として機能することが可能である。
【0044】
図7(b)に示されるように、リング隔壁21および溝3bの幅方向壁3b1を高い精度で加工することにより、これらリング隔壁21および幅方向壁3b1によって成膜ローラ3の全周にわたって形成される幅方向隙間36aは、高精度に幅c1を設定できる。よって、幅方向隙間36aを通るガスの量を成膜ローラ3の全周にわたって高精度に制限することが可能である。
【0045】
周方向制限部22は、
図1〜2および
図11〜12に示されるように、成膜ローラ3の周方向D2のガスの流れを制限することにより、成膜ローラ3の外周面3aに面する少なくとも1つ(
図1では4つ)の成膜ゾーン11をチャンバ2内部に形成する。
【0046】
周方向制限部22は、リング隔壁21の外側面21aに取り付けられている。具体的には、周方向制限部22は、成膜ローラ3の外周面3aに対向するゾーン間排気板24と、当該ゾーン間排気板24の周方向D2の両側に配置された差動排気カバー25と、仕切板26とを有している。
【0047】
ゾーン間排気板24は、
図4および
図11〜12に示されるように、開口24aを有する板状の部材である。ゾーン間排気板24は、成膜ローラ3の幅方向D1に沿って延び、一対のリング隔壁21に対してねじなどによって固定されている。ゾーン間排気板24は、成膜ローラ3の外周面3aに対して隙間をあけた状態で配置される。ゾーン間排気板24の幅は、成膜ローラ3の幅と同じ程度であり、ゾーン間排気板24とチャンバ2の側壁との間に隙間28(
図2参照)を許容するような大きさに設定される。
【0048】
差動排気カバー25は、
図1〜2および
図5〜6に示されるように、薄板状の部材である。差動排気カバー25は、ゾーン間排気板24と同様に、成膜ローラ3の幅方向D1に沿って延び、一対のリング隔壁21に対してねじなどによって固定され、成膜ローラ3の外周面3aに対して隙間をあけた状態で配置される。
【0049】
成膜ローラ3の外周面3aと上記の差動排気カバー25およびゾーン間排気板24との隙間によって、成膜ゾーン11から周方向D2への排気ガスEの流れを許容する周方向流路37(
図11〜12参照)が形成される。
【0050】
差動排気カバー25は、各成膜ゾーン11の周方向D2における両側にそれぞれ配置される。すなわち、差動排気カバー25は、ゾーン間排気板24の周方向D2における両側に配置される。これにより、一対の差動排気カバー25とゾーン間排気板24とによって、成膜ゾーン11間に排気通路である差動排気ゾーン27(
図1〜2参照)を形成する。
差動排気ゾーン27は、ゾーン間排気板24の開口24aおよび周方向流路37(
図12参照)を介して、各成膜ゾーン11に連通している。差動排気ゾーン27は、ゾーン間排気板24とチャンバ2の側壁との隙間28(
図2参照)を介して、搬送ゾーン12に連通している。これらの隙間および開口24aの寸法は、差動排気ゾーン27の圧力が、搬送ゾーン12の圧力とそれよりも高い成膜ゾーン11の圧力との間になるように、設定される。これらの圧力差によって、排気ガスEは、
図12に示されるように、成膜ゾーン11、差動排気ゾーン27、および搬送ゾーン12の順に流れることが可能である。
【0051】
さらに、差動排気カバー25は、
図1に示される成膜ゾーン11と搬送ゾーン12との間を仕切ることが可能な位置にも配置されている。
【0052】
仕切板26は、
図2および
図5〜6に示されるように、成膜ゾーン11内部のガスが幅方向流路36および周方向流路37(
図12参照)以外の経路からの漏れを防ぐ部材である。仕切板26は、
図5に示されるように、成膜ローラ3の周方向に延びる周方向部分26aと、当該成膜ローラ3の幅方向に延びる幅方向部分26bとを有する。周方向部分26aは、リング隔壁21よりも成膜ローラ3の幅方向の外側においてリング隔壁21とチャンバ2の側壁との隙間を塞ぐように配置される。周方向部分26aは、リング隔壁21にねじなどによって固定される。幅方向部分26bは、成膜ローラ3の幅よりも大きい幅を有する。幅方向部分26bは、一対のリング隔壁21にねじなどによってそれぞれ固定されている。幅方向部分26bの両端部は、一対のリング隔壁21よりも幅方向の外側に突出してチャンバ2の側壁に当接している。
【0053】
上記のように周方向制限部22の構成部材(すなわち、ゾーン間排気板24、差動排気カバー25、仕切板26)は、剛性の高いリング隔壁21に取り付けられるので、これらの構成部材は、リング隔壁21を基準として、チャンバ2内部に精度よく位置決めされる。そのため、これらのゾーン間排気板24、差動排気カバー25、仕切板26は、高い剛性は要求されないので、アルミニウム製の薄板などを用いて安価に製造することが可能である。
【0054】
本実施形態の隔壁構造体4は、剛性の高い一対のリング隔壁21と、そのリング隔壁21の外側面21aに取り付けられた周方向制限部22とによって構成されているので、アルミニウム薄板によって箱状の隔壁構造体を構成する場合と比較して、容易にかつ熱ひずみが生じないように精度よく製造することが可能である。
【0055】
隔壁構造体4を組み立てる場合、
図5に示されるように、リング隔壁21の外周面21aに対して、
図5に付された丸で囲まれた符号1〜4に示される順番のように、1番目:ゾーン間排気板24、2番目:差動排気カバー25、3番目:仕切板26の順で取り付けることにより、隔壁構造体4が組み立てられる。その後、マスク5が4番目としてリング隔壁21の外周面21aに取り付けられる。
【0056】
マスク5は、
図2および
図5〜6に示されるように、開口5aを有する薄板状の部材である。開口5aの幅(すなわち成膜ローラ3の幅方向D1の幅)は、基材Bの表面における成膜によって形成される薄膜の幅を規定する。
【0057】
マスク5は、成膜ゾーン11の内部において、成膜ローラ3の外周面3aとの間に隙間を許容しながら成膜ローラ3の外周面3aに対向して配置される。マスク5は、成膜ローラ3の幅方向D1に沿って延び、一対のリング隔壁21の外側面21aに対してねじなどによって固定されている。
【0058】
マスク5は、隔壁構造体4に取り付けられた当該隔壁構造体4と異なる部品である。マスク5は、隔壁構造体4への成膜材料の付着を防ぐとともに、基材Bの表面に形成される薄膜を基材Bの幅方向において分布を均一にする。マスク5は、成膜プロセスのバッチ処理ごと(例えば、基材Bの1つのロールについての成膜プロセス終了後)に交換される。
【0059】
また、本実施形態では、
図7(b)に示されるように、マスク5とリング隔壁21との間にスペーサ34が設けられている。スペーサ34は、マスク5とリング隔壁21との隙間c3の調整を行う。異なる厚さのスペーサ4を選択することにより、基材Bの厚さに対応してマスク5とリング隔壁21との隙間の調整をすることが可能である。また、成膜時の基材Bの熱負荷を考慮して、マスク5と基材Bとの隙間を広げたい場合もスペーサ4の選択によって調整することが可能である。なお、スペーサ34は、省略してもよい。
【0060】
マスク5の開口5aは、
図8および
図11〜12に示されるように、上記の幅方向流路36および周方向流路37に連通している。
【0061】
上記の成膜装置1では、
図7〜9に示されるように、マスク5は、リング隔壁21の外側面21aに取り付けられている。そして、リング隔壁21が成膜ローラ3の溝3bに挿入されることにより、当該リング隔壁21の内側面21bは、成膜ローラ3の外周面3aよりも成膜ローラ3の半径方向内側R2に位置している。これにより、マスク5と成膜ローラ3の外周面3aとの距離は、
図9(a)に示されるように、リング隔壁21の厚さ(すなわち外側面21aと内側面21bとの距離、例えば10mm程度)よりも小さい距離(例えば3〜5mm程度)まで近づけることが可能になる。それにより、マスク5と基材Bとの距離A1を近づけることが可能になる。この状態では、蒸発源6のエロージョン幅Wの範囲からスパッタリングによる成膜材料の粒子Pが飛び出したときに、粒子Pがマスク5の開口5aを通過した後にマスク5の開口5aの幅よりも外側に広がりにくくなる。より詳しく言えば、この状態では、開口5aの縁によって粒子Pを遮る範囲(影の範囲)が狭くなるとともに、エロージョン幅Wの範囲内から飛び出した粒子Pが均一に基材Bに衝突する範囲が広くなる。したがって、
図9(b)に示されるように、成膜時に基材Bの幅方向D1両端部において成膜の膜厚が薄い領域J1を小さくすることが可能になる。その結果、薄膜の厚さの分布を改善し、膜厚均一性が向上することが可能である。
【0062】
一方、この本実施形態の
図9(a)に示されるリング隔壁21の配置と比較して、本発明の比較例として、
図14(a)に示されるように、リング隔壁121の内側面121bが成膜ローラ3の外周面3aよりも半径方向外側R1に位置している場合には、リング隔壁121の厚さにリング隔壁121と外周面3aとの距離を足した長さが、マスク5と外周面3aとの距離になる。そのため、リング隔壁121の外側面121aに取り付けられたマスク5と基材Bとの隙間A2が大きくなるので、
図14(b)に示されるように、基材Bの幅方向における端部の膜厚が薄くて均一でない領域J2が大きくなる。一方、膜厚が均一な領域を拡大するためにマスク5の開口幅を広くすれば、成膜ローラ3の外周面3aにスパッタリングの粒子Pが衝突して膜が形成されるおそれがある。この場合、外周面3aにおける膜の形成を防止するために、成膜の有効幅(均一な厚さの薄膜形成が可能な幅)よりも十分に幅が広い基材Bを使用する必要がある。それに対して、上記のように、本実施形態の
図9(a)に示されるリング隔壁21の配置では、マスク5と基材Bとの隙間A1を小さくすることが可能なため、基材Bの端部の膜厚不均一部分が狭くなり、基材Bを有効に使用することが可能である。
【0063】
上記の成膜ローラ3は、温度調整されることにより、温度変化に応じて幅方向に伸縮するので、リング隔壁21と成膜ローラ3の溝3bの半径方向壁3b2との半径方向隙間36b(
図8参照)は変動する場合がある。例えば、
図7(a)に示される成膜ローラ3の回転軸の両端部3cは、チャンバ2の第1取付部2b(固定側)において、温度変化により成膜ローラ3の幅方向D1の位置が変化しないように支持され、第2取付部2c側(自由側)において幅方向D1の位置の変化を許容するように支持されている。この形態では、第2取付部2c(自由側)に近いリング隔壁21の側壁と溝3bの半径方向壁3b2との間の半径方向隙間36bの幅c2(
図7(a)参照)は、温度により変化するが、第1取付部2b(固定側)に近い側の半径方向隙間36bは変化しないので、成膜ローラ3の幅方向両側において、半径方向隙間36bの幅c2が異なる。
【0064】
それに対して、リング隔壁21と成膜ローラ3の溝3bの幅方向壁3b1との間の幅方向隙間36a(
図8参照)は、成膜ローラ3が温度変化により幅方向に伸縮しても変動しないので、成膜ローラ3の幅方向両側において、幅方向隙間36aの幅c1は同じである。そこで、この幅方向隙間36aの幅c1を上記の半径方向隙間36bの幅c2よりも小さく設定することにより、これら幅方向隙間36aおよび半径方向隙間36bによって形成される隙間36、すなわち幅方向流路36を流れる排気ガスEの量を成膜ローラ3の全周において成膜ローラ3の幅方向両側で均一に維持することが可能である。すなわち、この幅方向隙間36aの幅c1によって、幅方向における排気ガスEの流量を制御する(すなわち、ゾーン分離能を設定する)ことが可能である。
【0065】
また、本実施形態では、リング隔壁21の外径は、成膜ローラ3の最大外径よりも若干大きく製作されている。そのため、このリング隔壁21を精度よく組み立てすることにより、マスク5および周方向制限部22(すなわち、ゾーン間排気板24、差動排気カバー25、および仕切板26)をリング隔壁21の外周面21aに取り付けるだけで、これら
マスク5および周方向制限部22の位置決めは不要になる。
【0066】
(特徴)
(1)
本実施形態の成膜装置1では、リング隔壁21における成膜ローラ3の半径方向内側R2を向く内側面21bは、成膜ローラ3の外周面3aよりも成膜ローラ3の半径方向内側R2に位置している。すなわち、成膜ローラ3の外周面3aとリング隔壁21の内側面21bとが成膜ローラ3の半径方向においてオーバーラップしている。さらに、チャンバ2内部に形成された成膜ゾーン11の内部に配置されたマスク5は、リング隔壁21における成膜ローラ3の半径方向外側R1を向く外側面21aに取り付けられている。そのため、マスク5と成膜ローラ3の外周面3aとの距離は、リング隔壁21の厚さよりも小さい距離まで近づけることが可能になる。その結果、成膜時に基材Bの幅方向D1両端部において成膜の膜厚が薄い領域を小さくすることが可能になり、薄膜の厚さの分布を改善し、膜厚均一性が向上する。
【0067】
さらに、リング隔壁21の内側面21bは、成膜ローラ3の外周面3aよりも成膜ローラ3の半径方向内側R2に位置するので、リング隔壁21の外側面21aと内側面21bとの距離(すなわちリング隔壁21の厚さ)を大きくしても、リング隔壁21と成膜ローラ3との干渉が生じないので、リング隔壁21の厚さを厚くしてリング隔壁21の剛性を向上させることが可能である。これにより、リング隔壁21の内側面21bと成膜ローラ3の溝3bの幅方向壁3b1との間に形成された幅方向隙間36aの寸法管理を高精度に行うことが可能である。
【0068】
チャンバ2に固定されたリング隔壁21は、成膜ローラ3の幅方向D1の両側において、当該成膜ローラ3との間に隙間をあけた位置に配置されている。この隙間36は、成膜ローラ3の外周面3aから当該成膜ローラ3の幅方向D1の外方へのガスの流れを制限する幅方向流路36として機能することが可能である。すなわち、リング隔壁21の内側面21bと成膜ローラ3の溝3bの幅方向壁3b1との間に形成された幅方向隙間36aは、成膜ゾーン11内部の圧力をその外部の圧力よりも高く維持しながら当該成膜ゾーン11内部のガスを外部へ排出することが可能な差動排気部として機能することが可能である。この幅方向隙間36aは、成膜ローラ3の円周面側にあるので、成膜ローラ3の温度を変えた場合でも、幅方向隙間36aの大きさの対称性を維持できるので、成膜ローラ3両端のリング隔壁21によるガスの流量制限性能の対称性が維持できる。そのため、排気分布の均一性を確保できる。
【0069】
(2)
また、本実施形態の成膜装置1では、成膜ローラ3における外周面3aの幅方向D1の両端部よりも当該成膜ローラ3の幅方向D1外側の部分には、当該成膜ローラ3の周方向D2に沿って延びる円環状の溝3bが形成されている。リング隔壁21は、溝3bに挿入されるとともに当該溝3bの内壁との間に隙間36をあけた位置に配置されている。この構成では、形状が簡単な環状のリング隔壁21によって、リング隔壁21と成膜ローラ3との間にガスの幅方向D1への流通を許容する隙間36を形成しながら、マスク5と成膜ローラ3の外周面3aとを互いに近づけて、形成される薄膜の厚さの分布を改善することが可能である。また、環状のリング隔壁21は、形状が簡単であるので、精度よく製造することが容易である。さらに、環状のリング隔壁21は、成膜ローラ3における外周面3aの幅方向D1端部よりも幅方向D1外側に形成された円環状の溝3bに挿入されることにより、環状のリング隔壁21の内側面21bは、成膜ローラ3の外周面3aよりも成膜ローラ3の半径方向内側R2に位置することが可能である。そのため、リング隔壁21の厚さを確保し、それによってリング隔壁21の剛性を向上することが可能である。しかも、当該環状のリング隔壁21と溝3bの内壁との間には、円環状の隙間36が均一に形成されるので、当該隙間36を通るガスの量を成膜ローラ3の全周において均一にすることが可能である。
【0070】
また、本実施形態では、成膜ローラ3の幅方向D1の外方へのガスの流れを制限する幅方向流路36形成するめの隔壁として、環状の部材からなるリング隔壁21が採用されているので、隔壁の構造が簡単であり、隔壁の製造およびチャンバ2への組付けが容易である。
【0071】
さらに、溝3bを有する成膜ローラ3の場合、基材Bの搬送部分である外周面3aとそれ以外の溝3bの部分との判別が容易である。そのため、成膜ローラ3をチャンバ2に取り付けるときに、成膜ローラ3の溝3bの部分を治具などで把持して、成膜ローラ3のハンドリングを容易である。
【0072】
(3)
さらに、本実施形態の成膜装置1では、環状のリング隔壁21は、互いに分離された複数の円弧状の部分21A,21Bによって構成されている。そのため、成膜ローラ3をチャンバ2内に組み付けた後に、環状のリング隔壁21を構成する円弧状の部分21A,21Bをチャンバ2にそれぞれ固定することにより、環状のリング隔壁21を容易にチャンバ2に組み付けることが可能である。なお、リング隔壁21は、全周が連続する環状であってもよい。
【0073】
(4)
さらに、本実施形態の成膜装置1では、周方向制限部22は、リング隔壁21の外側面21aに取り付けられている。したがって、リング隔壁21がチャンバ2に固定されることによりチャンバ2内部で高い精度で位置決めされ、さらに、周方向制限部22がそのリング隔壁21の外側面21aに取り付けられることにより、周方向制限部22は、成膜ローラ3の外周面3aに対向する位置に高精度でかつ容易に配置することが可能である。
【0074】
(5)
さらに、本実施形態の成膜装置1では、周方向制限部22は、成膜ローラ3の外周面3aに対向するゾーン間排気板24を有しており、ゾーン間排気板24は、成膜ローラ3の外周面3aに対して隙間を確保した状態で、リング隔壁21の外側面21aに固定されている。したがって、ゾーン間排気板24は、容易に成膜ローラ3の周面に対して均一の隙間を確保することが可能である。
【0075】
(6)
また、本実施形態の成膜装置1では、隔壁構造体4が、環状の部材からなるリング隔壁21、板状のゾーン間排気板24、および湾曲した板などからなる差動排気カバー25等の比較的簡単な形状の部品を組み合わせることによって製造することが可能である。したがって、隔壁構造体4の製造コストを低減することが可能である。
【0076】
(変形例)
(A)
上記の実施形態では、成膜ローラ3の幅方向両端部に溝3bが形成され、リング隔壁21が溝3bに挿入された例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0077】
本発明の他の実施形態として、
図13に示されるように、溝を有しない円筒状の成膜ローラ3に対応するリング隔壁として、成膜ローラ3の幅方向両端部に、本体部21cおよび延長部21cを有するリング隔壁21を配置してもよい。
【0078】
すなわち、
図13に示されるリング隔壁21は、本体部21cと、当該本体部21cから突出する延長部21dとを有する。本体部21cおよび延長部21dは、スチールなどの材料により一体に形成されているが、別個の部品でもよい。
【0079】
本体部21cは、矩形断面を有する環状の形状を有する。本体部21cは、成膜ローラ3の半径方向外側(
図13の上側)を向く外側面21aと、半径方向内側(
図13の下側)を向く内側面21bとを有する。本体部21cは、チャンバ2に固定部材35を介して固定されている。本体部21cは、成膜ローラ3の幅方向の両端部から当該幅方向に半径方向隙間36cだけ離間した位置に配置される。すなわち、本体部21cの側面および成膜ローラ3の幅方向端部によって、成膜ローラ3の半径方向に延びる半径方向隙間36cが形成される。
【0080】
延長部21dは、本体部21cから突出して外側面21aに沿って延びる。延長部21dは、本体部21cと同様に環状の形状を有する。延長部21dの厚さは、本体部21cの厚さよりも薄い。延長部21dおよび成膜ローラ3の外周面3aによって、幅方向隙間36dが形成される。幅方向隙間36dおよびそれに連通する半径方向隙間36cによって、成膜ローラ3の外周面3aから当該成膜ローラ3の幅方向の外方へのガスの流れを制限する幅方向流路36を形成することが可能である。マスク5は、本体部21cの外側面21aにねじなどによって取り付けられている。延長部21dは、マスク5を成膜ローラ3の側から支持している。なお、マスク5は、延長部21dにねじなどで固定してもよい。
【0081】
図13に示される実施形態では、リング隔壁21の本体部21cは、成膜ローラ3の幅方向の両端部から当該幅方向に離間した位置に配置され、マスク5は、本体部21cの外側面21aに取り付けられている。そのため、マスク5と成膜ローラ3の外周面3aとの距離は、本体部21cの厚さ(すなわち外側面21aと内側面21bとの距離)よりも小さい距離まで近づけることが可能になる。また、本体部21cの内側面21bは、成膜ローラ3の外周面3aよりも成膜ローラ3の半径方向内側に位置することが可能になり、本体部21cの厚さを確保し、それによってリング隔壁21の剛性を向上することが可能である。さらに、リング隔壁21部の延長部21dが、本体部21cから外側面21aに沿って延び、成膜ローラ3の外周面3aとの間に幅方向隙間36dを形成する。この隙間が幅方向流路36として機能することにより、成膜ローラ3の幅方向の外方へのガスの流れを制限することが可能である。なお、延長部21dは、なくてもよい。
【0082】
(B)
なお、本発明の隔壁は、上記のリング隔壁21のようにリング状でなくてもよい。隔壁は、成膜ローラ3の幅方向の両側において当該成膜ローラ3との間に隙間をあけた位置に配置され、当該隙間によって、成膜ローラ3の外周面3aから当該成膜ローラ3の幅方向の外方へのガスの流れを制限する幅方向流路を形成することが可能であれば、種々の形状を採用すること可能である。
【0083】
(C)
上記の実施形態では、帯状の基材Bは、巻出部7から成膜ローラ3を経由して巻取部8へ搬送されるが、基材Bの搬送方向を逆にして、巻取部8側から基材Bを供給し、巻出部7に巻取ることも可能である。
【0084】
(D)
マスク5の冷却のために、マスク5を支持するリング隔壁21が液冷媒で冷却される液冷構造を有していてもよい。
【0085】
(E)
成膜ローラ3の溝3bを有する部分(段部)は、成膜ローラ3の他の部分と別に製造した後に、当該他の部分に合体してもよい。