特許第6408973号(P6408973)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408973
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】脱水性に優れる編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 1/16 20060101AFI20181004BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20181004BHJP
   D04B 1/00 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   D04B1/16
   D04B21/16
   D04B1/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-200307(P2015-200307)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2017-71879(P2017-71879A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2017年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】森井 浩之
(72)【発明者】
【氏名】河端 秀樹
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−031292(JP,U)
【文献】 特開2013−083008(JP,A)
【文献】 特開昭59−204939(JP,A)
【文献】 特開2005−179886(JP,A)
【文献】 特開2000−170016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D02G1/00−3/48
D02J1/00−13/00
D04B1/00−1/28
21/00−21/20
A41B9/00−9/16
13/00−17/00
A41D13/00−13/12
20/00
31/00−31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
総繊度が30〜170dtexであり、かつ単糸繊度が5.0〜11.0dtexであるポリエステル長繊維を200/3〜100重量%含む編地であって、ポリエステル長繊維が生糸であり、編地の目付が50〜190g/mであり、遠心脱水3分後の含水率が13%以下であることを特徴とする編地。
【請求項2】
編地が撥水性を有するポリエステル長繊維を10〜70重量%含むこと、及び編地に吸水加工が施されていることを特徴とする請求項1に記載の編地。
【請求項3】
総繊度が30〜170dtexであり、かつ単糸繊度が5.0〜11.0dtexであるポリエステル長繊維のみからなることを特徴とする請求項1または2に記載の編地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌に直接接触して使用する肌着等の着衣に用いる編地で、吸水速乾性と脱水性に非常に優れるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツ衣料等の大量に発汗する用途では、衣服内での汗の滞留により不快感を有するため、汗を素早く処理するための様々な工夫がなされてきた。例えば、素肌と肌着の間に汗が滞留すると、ベトツキを強く感じたり、運動中に衣服が肌にまとわりついて身体を動かすときの抵抗となって不快感を感じたりすることがあったが、これを軽減するために、汗を素早く吸収して、吸収した汗を外気側に素早く移動させることで吸水速乾性を付与する試みがある。
【0003】
かかる試みとして、例えば、扁平繊維を用いて吸水拡散性を高めたり(特許文献1参照)、肌着の肌側に部分的に撥水加工することで、肌着と素肌の間に汗の滞留(濡れ戻り)を低減すること(特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
しかし、肌着に吸汗速乾性を与えることや、肌面に撥水加工することでは、大量に発汗した汗の水分を素早く蒸発させることはできても、汗の不揮発分が肌着内に留まるため、ベトツキ感は解消できず、また長時間着用を続けていると蓄積した汗の成分が元になって不快な汗臭が発生する問題があった。
【0005】
他方、布帛の脱水性を改善して、速乾性に極めて優れた布帛を得る試みとして、目付が150g/m以上の布帛であって、撚係数5000以上の撚糸が施されており、かつ布帛に撥水加工が施されている速乾性布帛が提案されている(特許文献3参照)。この布帛は、学生服や作業衣料の用途で、目付の大きい布帛に洗濯脱水後に含まれる水分が多いため、乾燥に時間がかかることを改善したものである。しかし、この方法においても洗濯脱水後にすぐに着用できるレベルにまで速乾性を改善することは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−150728号公報
【特許文献2】特開2013−133572号公報
【特許文献3】特開2012−102427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術の現状に鑑みなされたものであり、その目的は、アンダーシャツやスポーツシャツといった肌と直接接触する衣料、特に大量に発汗する場面に使用される衣料に用いる編地において、吸水速乾性があり、ベトツキを低減するだけでなく、洗濯脱水後に乾燥を待つことなくすぐに着用できる衣料のための編地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、大量発汗する場面で快適に着用できる衣料について鋭意検討した結果、着用時に大量の汗を処理するために、吸水速乾性や汗戻り性を改善するだけでなく、長時間の着用により発生する汗不揮発分によるベトツキ感や汗の不快臭を低減する方法を開発する必要があることを見出した。そして、そのためには、着用した衣料を一旦脱衣して、水洗いして洗濯機で遠心脱水するだけで、すぐに着用することができれば、このようなベトツキや不快臭を低減して、継続して長時間快適に着用できると考えた。そして、これらの知見に基づいて開発した結果、かかる衣料に用いる編地の繊維において、総繊度が一般的なレベルであるが、単糸繊度が従来よりかなり大きいポリエステル長繊維を特定割合以上で用いることによって、洗濯機で脱水した後の生地の水分率を低く抑制することができ、それにより乾燥工程を経ずに着用しても着用後に不快感を感じずに運動を継続できることを見出した。
【0009】
本発明は、上記のような開発の努力の結果、創出されたものであり、以下の(1)〜(3)を要旨とするものである。
(1)総繊度が30〜170dtexであり、かつ単糸繊度が5.0〜11.0dtexであるポリエステル長繊維を200/3〜100重量%含む編地であって、ポリエステル長繊維が生糸であり、編地の目付が50〜190g/mであり、遠心脱水3分後の含水率が13%以下であることを特徴とする編地。
(2)編地が撥水性を有するポリエステル長繊維を10〜70重量%含むこと、及び編地に吸水加工が施されていることを特徴とする(1)に記載の編地。
(3)総繊度が30〜170dtexであり、かつ単糸繊度が5.0〜11.0dtexであるポリエステル長繊維のみからなることを特徴とする請求項1または2に記載の編地。
【発明の効果】
【0010】
本発明の編地によれば、それを使用した衣料は、簡単な水洗いした後に洗濯機で遠心脱水するだけで、すぐに着用することができるので、長時間の発汗によるベトツキや不快臭の発生を予防して、継続して長時間、快適に着用することができる。また、脱水性と乾燥性を両立しているので、旅行中にホテルで手洗いしたときに、手絞りしてハンガーに短時間干しておくだけで、すぐに着用できる肌着を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1〜8,11および比較例1,2で用いたインターロックの組織図を示す。
図2図2は、実施例9で用いたメッシュリバースの組織図である。
図3図3は、実施例10で用いたトリコットの組織図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の編地は、ポリエステル長繊維が用いられ、その一部又は全部に、総繊度が一般的な数値範囲であるが単糸繊度がかなり高い特定の太い繊維を用いることが特徴である。本発明者らは、驚くべきことに、衣料用繊維としてはあまり使われない太い単糸繊度のポリエステル長繊維を特定割合以上で使用することにより、遠心脱水時の水切れ性が非常に良くなることを見出した。このポリエステル長繊維の単糸繊度は、5.0〜11.0dtex(dpf)である。好ましくは5.5〜10.0dtex(dpf)、より好ましくは6.0〜9.5dtex(dpf)である。単糸繊度が上記範囲未満であると、遠心脱水後の含水率(遠心脱水後含水率)が増加して、脱水後すぐに着用するとベトツキ感が増加して着心地が悪くなる。一方、単糸繊度が上記範囲を超えると、皮膚への摩擦が大きくなり皮膚障害の懸念が大きくなってくる。編地に上述のような単糸繊度が高いポリエステル長繊維(コースデシテックス(CDF)ともいう)を用いることで遠心脱水後含水率が低下する理由は、CDF繊維は比表面積が小さく、フィラメント間の毛細管現象が少ないため、脱水時の遠心力で水分が飛び易いためであると考えられる。
【0013】
本発明の編地における上記のCDFの混率は200/3〜100重量%であることが必要である。混率が上記範囲未満であると、遠心脱水後含水率を低く抑えることが難しくなってくる。
【0014】
CDFの形態としては、生糸が好ましい。生糸とは、実質的に熱処理による捲縮を付与していないフィラメントのことを言う。糸に捲縮があると、繊維間の隙間ができやすく、その隙間に水が残りやすく遠心脱水後含水率が増加しやすくなる。また、撚糸やエアー交絡処理は好ましく行うことができる。これらの処理は、繊維を収束させて水切れ性を良くするためである。
【0015】
CDFの総繊度は30〜170dtexであり、好ましくは30〜120dtex、更に好ましくは30〜110dtexである。総繊度が上記範囲を超えると、繊維間や糸ループに水が残りやすく水切れ性が低下する。総繊度が上記範囲より低くなると、編地が薄くなり過ぎたり、透け過ぎて使い難くなる。
【0016】
本発明の編地は、上記のCDF以外に、衣料用に通常使われる単糸繊度範囲のポリエステル長繊維を混用することができる。この通常ポリエステル長繊維の単糸繊度は0.5〜3.0dtex(dpf)である。この通常ポリエステル長繊維の単繊維の断面形状は特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状を採用することができる。また、速乾性(拡散性残留水分率)や遠心脱水性を大きく低下しない範囲で、空気交絡加工、仮撚捲縮加工が施されていてもよい。
【0017】
本発明は、その目的を達成するために編地の形態である。織物は、生地を薄くすることができて水切れ性も高めやすいが、シワがよりやすく遠心脱水してすぐに着用するとシワが強くて見た目が悪くなるので、シワができにくい編地を用いる。編地の組織は、特に限定されず、例えば丸編のシングルニットでもダブルニットでも、経編のトリコット、ラッシェルでも構わない。脱水の水切れ性からみると、シングルニットであったり、ダブルニットでも密度が高すぎないものが好ましい。
【0018】
編地密度の範囲としては、丸編であれば、コース、ウェールともにインチあたり25〜65個であることが好ましい。より好ましくは30〜60個である。編地が経編の場合、コース、ウェールともにインチあたり30〜70個であることが好ましい。より好ましくは40〜65個である。タテヨコの編地密度が上記範囲未満の場合は、編地が透け過ぎて、またループが引っ掛かってヒケやスナールになりやすくなりインナー用途に使い難くなる。逆に密度が上記範囲より高い場合は、遠心脱水後含水率が高くなりやすくなる。
【0019】
本発明の編地の目付は、50〜190g/mである。好ましくは70〜170g/m、特に好ましくは75〜140g/mである。目付が上記範囲未満であると、糸繊度や密度を低くしなければならず、編地が薄くなりすぎたり、保形性が悪くなってしまう。目付が上記範囲を超えると、水切れ性が悪くなり、遠心脱水後の含水率が高くなってしまう。
【0020】
本発明の編地には、撥水加工されたポリエステル長繊維を編地中に最大70重量%、特に10〜70重量%含有させることができる。撥水性加工されたポリエステル長繊維は、上記のCDFでも、交編する通常の単糸繊度範囲のポリエステル長繊維でも、その両方であってもよいが、編地全体の70重量%以下にすることが好ましい。本発明の編地では、CDF繊維が水切れ性がよいことに加えて、CDF又はその他のポリエステル長繊維が撥水加工が施されていることにより、これらの相乗作用によって、水に浸したときに編地内に浸透した水分が布帛内部に留まらずに脱水時の水切れがさらに良くなるものと考えられる。
【0021】
撥水加工されたポリエステル長繊維を上記の範囲で混用すると、更に水切れ性が向上させることができるとともに、着用時のベトツキも低減することができる。但し、撥水加工されたポリエステル長繊維が70重量%を超えると、編地が水を通し難くなり、着用したときに汗を逃がし難く快適性が低下しやすい。また、混用率が低いと、水切れ効果の向上は少ない。
【0022】
ポリエステル長繊維に撥水加工を施す方法としては、ポリエステルレジンに撥水性を持たせて紡出してもよく、製糸時に撥水剤を付与してもよく、製糸後のチーズやカセ形状で撥水加工を施しても良い。ここで、撥水加工の際に用いる撥水剤としては、フッ素系(例えば、旭硝子(株)製、アサヒガードAG−7000、E−081)、シリコーン系、パラフィン系、エチレン尿素系、脂肪酸系などの撥水剤を挙げることができるが、洗濯耐久性の点からフッ素系やシリコーン系の撥水剤を使用することが好ましい。
【0023】
本発明の編地の繊維に用いるポリエステルとしては、その全構成単位の少なくとも80重量%以上がエチレンテレフタレ−トであるポリエステル繊維が挙げられ、特にテレフタル酸又はその機能的誘導体とエチレングリコ−ル又はエチレンオキサイドとから製造されたポリエチレンテレフタレ−ト繊維が好ましい。酸成分としては、テレフタル酸又はその機能的誘導体の他に、20モル%未満、好ましくは10モル%未満の範囲でイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ナフタ−ル酸、P−オキシ安息香酸、2.5−ジメチルテレフタル酸、ビス(P−カルボキシフエノキシ)エタン、2.6−ナフタレンジカルボン酸、3.5−ジ(カルボメトキシ)ベンゼンスルホン酸塩又はそれらの機能的誘導体を加えてもよく、グリコ−ル成分としては、エチレングリコ−ルの他に、ジエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、1.4−ブタンジオ−ル、1.4−プロキシメチルシクロヘキサン等の2価アルコ−ルを加えてもよい。該ポリマー中には、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、酸化防止剤、艶消剤、着色剤、染色性向上剤、難燃性向上剤、制電剤、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、着色防止剤、熱安定剤、蛍光増白剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0024】
本発明の編地は、本発明の目的を損なわない範囲でポリエステル長繊維以外の繊維を混用することができる。混用する繊維は、他素材の長繊維(マルチフィラメント)、短繊維(紡績糸)のいずれでもよいが、長繊維(マルチフィラメント)が好ましい。単繊維の断面形状も特に限定されず、丸、三角、扁平、中空など公知の断面形状でよい。また、通常の空気加工、仮撚捲縮加工が施されていても差しつかえない。
【0025】
本発明の編地は、例えば、以下の製造方法により製造することができる。まず、単糸繊度が5.0〜11.0dtex(dpf)のポリエステルCDFを用意する。このとき遠心脱水後含水率をより低減するためにCDFは生糸の形態で用いたり、少なくとも一部に撥水加工を施したCDFを使用することが好ましい。このCDFが30〜100重量%の混率になるように所望により通常繊度のポリエステル繊維と交編して丸編、または経編の生機を編成する。ここで通常繊度のポリエステル繊維は、撥水加工されたものを用いるのもよいが、編地中に撥水加工された糸条の混率は70重量%以下になるように編設計するのが好ましい。製編では仕上目付を50〜190g/mとするために、使用する各糸条の総繊度や編機ゲージを調整する。
【0026】
次いで、該編地に吸水加工(親水加工)を施すことが好ましい。この吸水加工の例としては、ポリエステルのアルカリ減量加工や、ポリエステルポリアルキレングリコール共重合樹脂いわゆる吸水ポリエステル樹脂や、セルロース、親水シリコ−ン等の親水性を持つ加工剤を使った加工が挙げられる。本発明では、ポリエステル繊維への耐久性の点からポリエステル系親水加工剤を使用することが好ましい。吸水加工方法としては、通常のものでよいが、例えばパッド法、スプレー法、吸尽法などの処理方法が挙げられ、なかでも、加工剤を編地内部まで浸透させる点から吸尽法が最も好ましい。
【0027】
また、本発明の目的が損なわれない範囲内であれば、吸水加工の前または後において、常法のアルカリ減量加工、染色仕上げ加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0028】
かくして得られた本発明の編地は、極めて優れた脱水性を有する。本発明の編地は、水に含浸した後に家庭用洗濯機で脱水3分した後の含水率を15%未満、さらには13%以下にすることができる。このような低い含水率により、脱水後に即着用してもベトツキ感や生地が肌に張り付いた不快感を感じずに着用することができる。また、本発明の編地は、吸水性や速乾性が高く、JIS滴下法の吸水性が30秒以内、さらには10秒以内であり、拡散性残留水分率が15〜45分である。
【0029】
本発明の編地は、上述のような特性を有しているので、直接に肌に接触して使用する衣料に使用するのに好適であり、例えば肌着、アンダーシャツやスポーツシャツ、タイツ、スパッツ、Tシャツ等に用いられる。また、大量に発汗するスポーツや、乾燥時間が十分とれない旅行用の衣類やニット資材にも好適に用いられる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例を詳述するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、編地の特性値の評価方法は、以下の方法に依った。
【0031】
<編地の厚み>
JIS−L1018−1998 6.5に準じて編地の厚みを測定した。
【0032】
<編地密度>
JIS−L1018−1998に準じて編地のコース密度(個/inch)、ウェール密度(個/inch)を測定した。
【0033】
<編地の目付>
JIS−L1096 6.4に準じて測定した。
【0034】
<編地の総繊度、フィラメント数、単糸繊度>
JIS−L1013 8.3に準じて繊度(総繊度)A法にて総繊度を測定してデシテックス(dtex)に換算した。また、JIS−L1013 8.4に準じてフィラメント数を測定して、総繊度/フィラメント数にて単糸繊度(dpf)を求めた。
【0035】
<遠心脱水後含水率>
JIS−C−9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、JIS−L−0217の103法に記載の操作方法にて遠心脱水後の含水率を求めた。すなわち、洗液温度は40℃とし、標準使用量となる割合で合成洗剤を溶解し、試験布および重量W0の試料を合わせて浴比が1対30になるように試料を投入する。この状態で5分間処理した後に運転を止め、試料を脱水機で脱水し、洗濯液を30℃以下の新しい水に替えて2分間すすぎを行う。次に試料を脱水し、再び2分間のすすぎを行い、脱水を3分間(通電時間)行った後の重量(g)をW1とする。
得られた試料重量から下記式により遠心脱水後含水率を求めた。
遠心脱水後含水率(%)=(W1−W0)/W0×100
ただし、W0は、試料(タテ40cm、ヨコ50cmの大きさの生地をポリエステル糸で筒状に縫い合わせたもの)を乾燥後、温度20℃、相対湿度65%の環境に24時間放置した後の重量(g)であり、W1は当該試料を洗濯脱水した直後に測定した試料重量(g)である。なお、脱水性試験に用いる試験布は、JIS−C−9606 付随書1に記載の模擬洗濯物を使用した。
【0036】
<拡散性残留水分率>
生地を10cm×10cmのサイズに切り、標準状態(20℃×65%RH)で調整した生地サンプルの質量(W0)を測定した。次いで、無張力下で広げ、生地サンプル中央に0.6mLの水を滴下した後の生地サンプルの質量(W1)を測定した。その後、生地サンプルを吊り下げた状態で、所定時間ごとの質量(W2)を測定し、以下の式で求める残留水分率が10%に達した時点の経過時間(分)を算出し、この値を生地の拡散性残留水分率とした。
残留水分率(%)=(W2−W0)×100/(W1−W0)
【0037】
<吸水性>
JIS−L1096 A法(滴下法)に準じて吸水性(秒)を求めた。
【0038】
<着用評価>
評価すべき編地を使ってLサイズのTシャツを作成して、20才代の成人男性3名に脱水後すぐに着用してもらい、着用するときの着やすさ、着用してすぐのベトツキ感、および着用して汗をかく運動をしているときの着用中のベトツキ感を評価した。具体的には、Tシャツを上記の遠心脱水後含水率の方法に準じて遠心脱水した直後に着用して、着用するときの着やすさ、脱水したTシャツを着用したときのベトツキ感、そして着用して運動中のベトツキ感を以下の判断基準に従って、○、△、×の三段階で評価した。
【0039】
即ち、遠心脱水直後に着用するときに生地が肌に吸い付いて非常に着難い場合は×、着にくいと感じる場合は△、乾燥したTシャツと同レベルに着やすかった場合は○とした。また、着用したときに強くベトツキ感を感じた場合は×、少しベトツキ感を感じた場合は△、乾燥したTシャツと同レベルにベトツキを感じない場合は○とした。また、着用して運動中に自分の汗によるベトツキを強く感じたときは×、ベトツキを少し感じたときは△、ベトツキを感じなかったときは○とした。また、例えば○と△の間の評価のものは○〜△と表示した。上記の三つの評価のうち、一つでも×になるものは、着用快適性が悪いものと判断した。
【0040】
実施例1
酸化チタンを0.5重量%含むポリエチレンテレフタレートを用いて、丸断面セミダルの56dtex(T)6フィラメント(f)の長繊維(生糸、9.3dtex(dpf))を製造した。このCDF糸条を2本引き揃えて福原精機製LEC(直径33インチ−22G)を用いて、図1のインターロック編組織の編地を作成した。次いでこの編地を液流染色機にて常法にて精練処理した後、下記処方1にて分散染料にて130℃高圧染色を行った。なお、染色中に親水加工剤(高松油脂社製SR1800)を用いて、吸水加工を同時に行なった。その後、洗浄して染色機から取り出した後に脱水乾燥し、更にテンターを用い170℃でファイナルセットした。その際に、柔軟剤、帯電防止剤をパディングにて付与して仕上処理も同時に行って仕上げ生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0041】
<染色・吸水加工処方1>
分散染料 Dyster社製 DIANIX Blue FBL−E 0.2%owf
親水加工剤 高松油脂社製 SR1800 2.0%owf
均染剤 明成化学工業社製 ディスパーTL 1g/L
酢酸 pH調整剤 0.1g/L
【0042】
参考例
ポリエステル56dtex(T)6フィラメント(f)の仮撚加工糸(丸断面、セミダル、1ヒーター仮撚加工糸)に下記のようにして撥水加工を行なった。
まず、仮撚加工糸(通常ESF糸)を0.25g/cmの巻密度でチーズ状に捲き直してソフト巻チーズを作った。更にプレスしてオーバーマイヤー染色機にセットした。このプレス後の巻密度理論値は0.40g/cmであった。次に、オーバーマイヤー糸染染色機で精練した後、フッ素系撥水加工剤「アサヒガードAG−7000」を5g/L溶液で40℃×20分処理し、脱水、乾燥させた。この撥水加工した仮撚加工糸と、実施例1に用いた56T6fのCDF糸を、それぞれ2本引き揃えして1:1で交編する以外は実施例1と同様にしてインターロック編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0043】
実施例3
実施例1のCDF糸を44dtex(T)6フィラメント(f)の長繊維(生糸、7.3dtex(dpf))に変更した以外は、実施例1と同様に仕上げ生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例4
酸化チタンを0.5重量%含むポリエチレンテレフタレートを用いて、丸断面セミダルの66dtex(T)12フィラメント(f)の長繊維(生糸,5.5dtex(dpf))を製造した。このCDF糸条を福原精機製LEC(直径33インチ−28G)を用いて、図1のインターロック編組織の編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0045】
実施例5
酸化チタンを0.5重量%含むポリエチレンテレフタレートを用いて、丸断面セミダルの37dtex(T)4フィラメント(f)の長繊維(生糸,9.3dtex(dpf))を製造した。この糸条を福原精機製LEC(直径33インチ−40G)を用いて、インターロック編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0046】
参考例
ポリエステル110dtex(T)36フィラメント(f)の仮撚加工糸(丸断面、セミダル、1ヒーター仮撚加工糸)に下記のようにて撥水加工を行なった。
まず、仮撚加工糸(通常ESF糸)を0.29g/cmの密度で巻直してソフト巻きチーズを作った。これをプレスしてオーバーマイヤー染色機にセットした。プレス後の巻密度理論値は0.45g/cmであった。次に、オーバーマイヤー糸染染色機で精練した後、フッ素系撥水加工剤「アサヒガードAG−7000」を5g/L溶液で40℃×20分処理し、脱水、乾燥させた。この撥水加工した仮撚加工糸と、実施例1に用いた56T6fのCDF糸の2本引き揃えを1:1で交編した以外は実施例1と同様にインターロック編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0047】
実施例7
参考例6の撥水加工した仮撚加工糸と実施例1の56T6fのCDF糸の2本引き揃えを1:2の割合で交編した以外は、参考例6と同様にインターロック編地を作成し、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0048】
実施例8
編地に対して吸水加工を行なわなかった以外は、実施例1と同様にしてインターロック編地を作成し、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0049】
参考例
福原精機社製福原精機製4AL(直径33インチ−28G)を用いて、編組織を図2のメッシュリバースに変更して、実施例1に用いた56T6fのCDF糸の2本引き揃えと撥水加工あり及びなしの84T36f仮撚加工糸を一本交互で1:2で表1に従って交編した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0050】
参考例10
28ゲージのトリコット機にて、実施例1と同じ56dtex(T)6フィラメント(f)のCDF糸と、参考例2と同じ撥水加工を施した56dtex(T)24フィラメント(f)のポリエステル仮撚加工糸を配して図3のハーフ編組織で編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
B:撥水加工ポリエステル加工糸56T/24 10/12
F:ポリエステル56T6f生糸 23/10
【0051】
比較例1
実施例1の56T6fのCDF糸の二本引き揃えの代わりに、110T36fの仮撚加工糸を用いて、実施例1と同様に製編して、染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
比較例1の生機を染色で吸水加工を行わず、更に仕上げ工程にてパディング法で生地全体に撥水加工を行った。撥水処方はアサヒガードAG−7000で3%soln.のパディング液を作り、ウエットピックアップ率100%で生地に加工液を付着させて乾燥した後、ピンテンターでファイナルセットを兼ねて150℃×1分の熱処理を行った。それ以外は、比較例1と同様に仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1からわかるように、本発明の条件を満たす実施例の編地は、吸水速乾性と脱水性を高いレベルで両立し、着用快適性を維持しているのに対して、本発明の条件を満たさない比較例の編地は、吸水速乾性又は脱水性のいずれかに問題があり、着用快適性を持たない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の編地は、吸水速乾性と脱水性が非常に優れるので、肌に直接接触して使用する衣料に好適に用いることができる。
図1
図2
図3