【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例を詳述するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、編地の特性値の評価方法は、以下の方法に依った。
【0031】
<編地の厚み>
JIS−L1018−1998 6.5に準じて編地の厚みを測定した。
【0032】
<編地密度>
JIS−L1018−1998に準じて編地のコース密度(個/inch)、ウェール密度(個/inch)を測定した。
【0033】
<編地の目付>
JIS−L1096 6.4に準じて測定した。
【0034】
<編地の総繊度、フィラメント数、単糸繊度>
JIS−L1013 8.3に準じて繊度(総繊度)A法にて総繊度を測定してデシテックス(dtex)に換算した。また、JIS−L1013 8.4に準じてフィラメント数を測定して、総繊度/フィラメント数にて単糸繊度(dpf)を求めた。
【0035】
<遠心脱水後含水率>
JIS−C−9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、JIS−L−0217の103法に記載の操作方法にて遠心脱水後の含水率を求めた。すなわち、洗液温度は40℃とし、標準使用量となる割合で合成洗剤を溶解し、試験布および重量W0の試料を合わせて浴比が1対30になるように試料を投入する。この状態で5分間処理した後に運転を止め、試料を脱水機で脱水し、洗濯液を30℃以下の新しい水に替えて2分間すすぎを行う。次に試料を脱水し、再び2分間のすすぎを行い、脱水を3分間(通電時間)行った後の重量(g)をW1とする。
得られた試料重量から下記式により遠心脱水後含水率を求めた。
遠心脱水後含水率(%)=(W1−W0)/W0×100
ただし、W0は、試料(タテ40cm、ヨコ50cmの大きさの生地をポリエステル糸で筒状に縫い合わせたもの)を乾燥後、温度20℃、相対湿度65%の環境に24時間放置した後の重量(g)であり、W1は当該試料を洗濯脱水した直後に測定した試料重量(g)である。なお、脱水性試験に用いる試験布は、JIS−C−9606 付随書1に記載の模擬洗濯物を使用した。
【0036】
<拡散性残留水分率>
生地を10cm×10cmのサイズに切り、標準状態(20℃×65%RH)で調整した生地サンプルの質量(W0)を測定した。次いで、無張力下で広げ、生地サンプル中央に0.6mLの水を滴下した後の生地サンプルの質量(W1)を測定した。その後、生地サンプルを吊り下げた状態で、所定時間ごとの質量(W2)を測定し、以下の式で求める残留水分率が10%に達した時点の経過時間(分)を算出し、この値を生地の拡散性残留水分率とした。
残留水分率(%)=(W2−W0)×100/(W1−W0)
【0037】
<吸水性>
JIS−L1096 A法(滴下法)に準じて吸水性(秒)を求めた。
【0038】
<着用評価>
評価すべき編地を使ってLサイズのTシャツを作成して、20才代の成人男性3名に脱水後すぐに着用してもらい、着用するときの着やすさ、着用してすぐのベトツキ感、および着用して汗をかく運動をしているときの着用中のベトツキ感を評価した。具体的には、Tシャツを上記の遠心脱水後含水率の方法に準じて遠心脱水した直後に着用して、着用するときの着やすさ、脱水したTシャツを着用したときのベトツキ感、そして着用して運動中のベトツキ感を以下の判断基準に従って、○、△、×の三段階で評価した。
【0039】
即ち、遠心脱水直後に着用するときに生地が肌に吸い付いて非常に着難い場合は×、着にくいと感じる場合は△、乾燥したTシャツと同レベルに着やすかった場合は○とした。また、着用したときに強くベトツキ感を感じた場合は×、少しベトツキ感を感じた場合は△、乾燥したTシャツと同レベルにベトツキを感じない場合は○とした。また、着用して運動中に自分の汗によるベトツキを強く感じたときは×、ベトツキを少し感じたときは△、ベトツキを感じなかったときは○とした。また、例えば○と△の間の評価のものは○〜△と表示した。上記の三つの評価のうち、一つでも×になるものは、着用快適性が悪いものと判断した。
【0040】
実施例1
酸化チタンを0.5重量%含むポリエチレンテレフタレートを用いて、丸断面セミダルの56dtex(T)6フィラメント(f)の長繊維(生糸、9.3dtex(dpf))を製造した。このCDF糸条を2本引き揃えて福原精機製LEC(直径33インチ−22G)を用いて、
図1のインターロック編組織の編地を作成した。次いでこの編地を液流染色機にて常法にて精練処理した後、下記処方1にて分散染料にて130℃高圧染色を行った。なお、染色中に親水加工剤(高松油脂社製SR1800)を用いて、吸水加工を同時に行なった。その後、洗浄して染色機から取り出した後に脱水乾燥し、更にテンターを用い170℃でファイナルセットした。その際に、柔軟剤、帯電防止剤をパディングにて付与して仕上処理も同時に行って仕上げ生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0041】
<染色・吸水加工処方1>
分散染料 Dyster社製 DIANIX Blue FBL−E 0.2%owf
親水加工剤 高松油脂社製 SR1800 2.0%owf
均染剤 明成化学工業社製 ディスパーTL 1g/L
酢酸 pH調整剤 0.1g/L
【0042】
参考例2
ポリエステル56dtex(T)6フィラメント(f)の仮撚加工糸(丸断面、セミダル、1ヒーター仮撚加工糸)に下記のようにして撥水加工を行なった。
まず、仮撚加工糸(通常ESF糸)を0.25g/cm
3の巻密度でチーズ状に捲き直してソフト巻チーズを作った。更にプレスしてオーバーマイヤー染色機にセットした。このプレス後の巻密度理論値は0.40g/cm
3であった。次に、オーバーマイヤー糸染染色機で精練した後、フッ素系撥水加工剤「アサヒガードAG−7000」を5g/L溶液で40℃×20分処理し、脱水、乾燥させた。この撥水加工した仮撚加工糸と、実施例1に用いた56T6fのCDF糸を、それぞれ2本引き揃えして1:1で交編する以外は実施例1と同様にしてインターロック編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0043】
実施例3
実施例1のCDF糸を44dtex(T)6フィラメント(f)の長繊維(生糸、7.3dtex(dpf))に変更した以外は、実施例1と同様に仕上げ生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例4
酸化チタンを0.5重量%含むポリエチレンテレフタレートを用いて、丸断面セミダルの66dtex(T)12フィラメント(f)の長繊維(生糸,5.5dtex(dpf))を製造した。このCDF糸条を福原精機製LEC(直径33インチ−28G)を用いて、
図1のインターロック編組織の編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0045】
実施例5
酸化チタンを0.5重量%含むポリエチレンテレフタレートを用いて、丸断面セミダルの37dtex(T)4フィラメント(f)の長繊維(生糸,9.3dtex(dpf))を製造した。この糸条を福原精機製LEC(直径33インチ−40G)を用いて、インターロック編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0046】
参考例6
ポリエステル110dtex(T)36フィラメント(f)の仮撚加工糸(丸断面、セミダル、1ヒーター仮撚加工糸)に下記のようにて撥水加工を行なった。
まず、仮撚加工糸(通常ESF糸)を0.29g/cm
3の密度で巻直してソフト巻きチーズを作った。これをプレスしてオーバーマイヤー染色機にセットした。プレス後の巻密度理論値は0.45g/cm
3であった。次に、オーバーマイヤー糸染染色機で精練した後、フッ素系撥水加工剤「アサヒガードAG−7000」を5g/L溶液で40℃×20分処理し、脱水、乾燥させた。この撥水加工した仮撚加工糸と、実施例1に用いた56T6fのCDF糸の2本引き揃えを1:1で交編した以外は実施例1と同様にインターロック編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0047】
実施例7
参考例6の撥水加工した仮撚加工糸と実施例1の56T6fのCDF糸の2本引き揃えを1:2の割合で交編した以外は、
参考例6と同様にインターロック編地を作成し、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0048】
実施例8
編地に対して吸水加工を行なわなかった以外は、実施例1と同様にしてインターロック編地を作成し、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0049】
参考例9
福原精機社製福原精機製4AL(直径33インチ−28G)を用いて、編組織を
図2のメッシュリバースに変更して、実施例1に用いた56T6fのCDF糸の2本引き揃えと撥水加工あり及びなしの84T36f仮撚加工糸を一本交互で1:2で表1に従って交編した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0050】
参考例10
28ゲージのトリコット機にて、実施例1と同じ56dtex(T)6フィラメント(f)のCDF糸と、
参考例2と同じ撥水加工を施した56dtex(T)24フィラメント(f)のポリエステル仮撚加工糸を配して
図3のハーフ編組織で編地を作成した。得られた生機に実施例1と同様に染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
B:撥水加工ポリエステル加工糸56T/24 10/12
F:ポリエステル56T6f生糸 23/10
【0051】
比較例1
実施例1の56T6fのCDF糸の二本引き揃えの代わりに、110T36fの仮撚加工糸を用いて、実施例1と同様に製編して、染色・吸水加工を行い、仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0052】
比較例2
比較例1の生機を染色で吸水加工を行わず、更に仕上げ工程にてパディング法で生地全体に撥水加工を行った。撥水処方はアサヒガードAG−7000で3%soln.のパディング液を作り、ウエットピックアップ率100%で生地に加工液を付着させて乾燥した後、ピンテンターでファイナルセットを兼ねて150℃×1分の熱処理を行った。それ以外は、比較例1と同様に仕上り生地を得た。得られた編地の詳細と評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1からわかるように、本発明の条件を満たす実施例の編地は、吸水速乾性と脱水性を高いレベルで両立し、着用快適性を維持しているのに対して、本発明の条件を満たさない比較例の編地は、吸水速乾性又は脱水性のいずれかに問題があり、着用快適性を持たない。