特許第6408974号(P6408974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408974
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】チェーンガイド
(51)【国際特許分類】
   F16H 7/18 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   F16H7/18 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-207377(P2015-207377)
(22)【出願日】2015年10月21日
(65)【公開番号】特開2017-78486(P2017-78486A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2017年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】松下 尊弘
(72)【発明者】
【氏名】平山 学
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 諒
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0105022(US,A1)
【文献】 特開2015−025535(JP,A)
【文献】 特開平10−238604(JP,A)
【文献】 特開2009−250384(JP,A)
【文献】 実開昭61−041947(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーンを摺動案内する案内シューと、前記案内シューを補強する補強ユニットとを備えたチェーンガイドであって、
前記案内シューは、ガイド長手方向に延びる走行案内部と、前記走行案内部の裏面側から前記補強ユニットを挿入させて収容するユニット用収容部とを有し、
前記補強ユニットは、ガイド幅方向に貫通するプレート貫通孔を有したプレートと、ガイド幅方向に貫通するスペーサ貫通孔を有したスペーサとを有し、
前記プレートおよび前記スペーサは、前記プレート貫通孔と前記スペーサ貫通孔とがガイド幅方向に連続するように前記ガイド幅方向に並んだ状態で、前記ユニット用収容部に配置され
前記スペーサは、前記案内シューに形成されたスペーサ用係止部と前記プレートとによってガイド幅方向に挟まれた状態で、前記ユニット用収容部に配置され、
前記スペーサの一部が、前記プレートに対してガイド幅方向に凹凸係合していることを特徴とするチェーンガイド。
【請求項2】
前記スペーサは、前記プレートに対向する側面に、前記スペーサ貫通孔の縁部を突出させた環状凸部を有し、
前記プレートは、前記スペーサに対向する側面に、前記プレート貫通孔の縁部を凹ませた環状凹部を有し、
前記環状凸部は、前記環状凹部に受容されていることを特徴とする請求項に記載のチェーンガイド。
【請求項3】
前記スペーサは、前記スペーサ貫通孔が形成された筒状本体と、前記筒状本体の一端に形成されたフランジ部とを有し、
前記フランジ部は、前記スペーサ用係止部と前記プレートとによって、ガイド幅方向に挟まれた状態で、前記ユニット用収容部に配置されていることを特徴とする請求項または請求項に記載のチェーンガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーンを摺動案内する案内シューと、案内シューを補強する補強ユニットとを備えたチェーンガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプロケット間を走行するチェーンを安定させ張力を適正に保持するために、走行するチェーンを摺動案内する案内シューを備えたチェーンガイドを用いることは慣用されている。このチェーンガイドを用いたシステムとしては、例えば、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したタイミングチェーンを走行させるエンジンのタイミングシステムであって、タイミングチェーンがエンジンルーム内のクランク軸に取付けた駆動スプロケットとカム軸に取付けた一対の従動スプロケットとの間に無端懸回されており、このタイミングチェーンがチェーンガイドによってガイドされるタイミングシステムが公知である。
【0003】
このような公知のタイミングシステムに用いられるチェーンガイドは、走行案内部が低摩擦で摩耗に強い材料で構成されるのが望ましく、全体を低摩擦の樹脂材料で構成されたものが公知である。しかしながら、チェーンガイドはチェーンの張力や振動に抗して安定的に案内するためにある程度の強度、剛性、耐久性が必要であり、樹脂材料のみで構成した場合、必要な強度、剛性、耐久性を得るためには、材料を厚く大きくする必要があり、エンジンルーム内での占有スペースが大きくなる。そこで、走行案内部を低摩擦の樹脂材料で形成し、金属等の強度、剛性、耐久性の高い材料で樹脂材料を補強するように形成することで、チェーンガイド全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保しつつ占有スペースを小さくしたものが公知である。
【0004】
このようなチェーンガイドとして、走行するチェーンを摺動案内する案内シューと、案内シューをガイド長手方向に沿って補強するプレートとから構成され、案内シューの走行案内部の裏面側にプレートを下方から挿入可能なスリット溝状のプレート収容部を設け、剛性や耐久性の高いプレートを下方からプレート収容部に挿入することで、チェーンガイド全体として必要な強度、剛性、耐久性を確保しつつ占有スペースを小さくしたものが知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−025535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この特許文献1に記載のチェーンガイドでは、チェーンガイドをエンジンブロック等の取付対象に取り付けるために用いられる取付軸を挿通させる取付孔の縁部にバーリング加工を施すことによって、取付孔の縁部からガイド幅方向に突出する筒状部が設けられており、これにより、取付孔(筒状部)の内面と取付軸とが幅方向に長く接触することとなり、チェーンガイドが本来の姿勢に対して傾斜した状態になることがなく、チェーン走行を安定させることができ、また、取付孔の内面と取付軸とが広い面積で接触することとなり、集中荷重を受けることがなく、取付孔の内面や取付軸の摩耗や損傷を抑制することができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のチェーンガイドでは、上述した筒状部を設けることによって上述した効果を奏するものの、一方で、大きく屈曲したプレートの平板部分と筒状部との間の連結部分(筒状部の付け根部分)に、チェーン駆動時にプレートに掛かる力に起因してプレート内に生じる内部応力が集中し易くなるため、プレートの耐久性が損なわれる恐れがあるという問題がある。また、バーリング加工によってプレートを筒状部に形成していることから、ガイド幅方向における筒状部の寸法設計に一定の制限が加わり、また、プレートの製造負担が大きいという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、チェーン走行を安定させるとともに、取付用の孔の内面や取付軸の摩耗や損傷を抑制し、しかも、製造負担を増加させることなく、耐久性を向上することが可能なチェーンガイドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、チェーンを摺動案内する案内シューと、前記案内シューを補強する補強ユニットとを備えたチェーンガイドであって、前記案内シューは、ガイド長手方向に延びる走行案内部と、前記走行案内部の裏面側から前記補強ユニットを挿入させて収容するユニット用収容部とを有し、前記補強ユニットは、ガイド幅方向に貫通するプレート貫通孔を有したプレートと、ガイド幅方向に貫通するスペーサ貫通孔を有したスペーサとを有し、前記プレートおよび前記スペーサは、前記プレート貫通孔と前記スペーサ貫通孔とがガイド幅方向に連続するように前記ガイド幅方向に並んだ状態で、前記ユニット用収容部に配置され、前記スペーサは、前記案内シューに形成されたスペーサ用係止部と前記プレートとによってガイド幅方向に挟まれた状態で、前記ユニット用収容部に配置され、前記スペーサの一部が、前記プレートに対してガイド幅方向に凹凸係合していることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本請求項1に係る発明によれば、プレートおよびスペーサが、プレート貫通孔とスペーサ貫通孔とがガイド幅方向に連続するようにガイド幅方向に並んだ状態で、ユニット用収容部に配置されていることにより、エンジンブロック等の取付対象に取り付けるために用いられる取付軸と取付用の孔(プレート貫通孔およびスペーサ貫通孔)の内面とをガイド幅方向に長く接触させ、チェーンガイドが本来の姿勢に対して傾斜した状態になることがなく、チェーン走行を安定させることができ、また、取付用の孔の内面と取付軸とが広い面積で接触することとなり、集中荷重を受けることがなく、取付用の孔の内面や取付軸の摩耗や損傷を抑制することができるばかりでなく、以下の効果を奏することができる。
すなわち、プレートとは別体に設けられたスペーサによって、取付軸を挿入する取付用の孔を構成することにより、ガイド幅方向におけるスペーサの寸法を調整することで、取付軸を挿入する取付用の孔のガイド幅方向における長さを自由に調整することができる。
また、ガイド幅方向に突出する筒状部をプレートに形成する必要がないため、プレートの製造負担の軽減を実現でき、また、チェーン駆動時にプレートに掛かる力に起因してプレート内に生じる内部応力が、プレートの平板部分と筒状部との間の連結部分に内部応力が集中することを回避して、プレートの耐久性を向上させることができる。
【0011】
本請求項に係る発明によれば、スペーサが、案内シューに形成されたスペーサ用係止部とプレートとによってガイド幅方向に挟まれた状態で、ユニット用収容部に配置され、スペーサの一部が、プレートに対してガイド幅方向に凹凸係合していることにより、簡便な構造で、ユニット用収容部に配置されたスペーサが、走行案内部の裏面側から抜け出すことを防止でき、また、案内シューに補強ユニットを取り付けるにあたって、プレートに対してスペーサを凹凸係合させた後に、ユニット用収容部に補強ユニットを挿入するという簡単な作業しか必要としない。
本請求項に係る発明によれば、スペーサが、スペーサ貫通孔が形成された筒状本体と、筒状本体の一端に形成されたフランジ部とを有し、スペーサに形成されたフランジ部が、スペーサ用係止部とプレートとによって、ガイド幅方向に挟まれた状態でユニット用収容部に配置されていることにより、ガイド幅方向における筒状本体の寸法を自由に設計することが可能であるため、取付軸を挿入する取付用の孔のガイド幅方向における長さを自由に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態であるチェーンガイドを示す説明図。
図2図1の反対側からチェーンガイドを見て示す説明図。
図3】チェーンガイドを下方から見て示す説明図。
図4】補強ユニットを構成するプレートおよびスペーサを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係るチェーンガイド10について、図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の一実施形態に係るチェーンガイド10は、エンジンルーム内に設置されるタイミングシステムに組み込まれて用いられるものであり、取付対象としてのエンジンブロックに固定され、スプロケット間を走行するチェーンを摺動案内するものである。
【0015】
チェーンガイド10は、図1図3に示すように、走行するチェーンをガイド長手方向に沿って摺動案内する案内シュー20と、案内シュー20に着脱可能に取り付けられ案内シュー20を補強する補強ユニット30とを備えている。
【0016】
案内シュー20は、図1図2に示すように、ガイド長手方向に沿ってチェーンをガイドする走行案内部21を、チェーン側に面する上面に有している。
また、案内シュー20は、図3に示すように、走行案内部21の裏面側(案内シュー20の下面側、図1図2の矢印方向)から、補強ユニット30を挿入させて収容するスリット溝状のユニット用収容部22とを有している。
【0017】
補強ユニット30は、図3図4に示すように、ガイド幅方向に貫通するプレート貫通孔41を有したプレート40と、ガイド幅方向に貫通するスペーサ貫通孔53を有した2つのスペーサ50とから構成されている。
【0018】
プレート貫通孔41は、図1に示すように、プレート40のガイド長手方向に離間した2箇所に形成され、プレート40およびスペーサ50は、図3に示すように、プレート貫通孔41とスペーサ貫通孔53とがガイド幅方向に連続するようにガイド幅方向に並んだ状態で、ユニット用収容部22に配置されている。ガイド幅方向に連続して配置されたプレート貫通孔41およびスペーサ貫通孔53は、チェーンガイド10をエンジンブロックに取り付けるための取付軸を挿通させる取付用の孔として機能する。スペーサ50は、エンジンブロックに面する側に配置され、チェーンガイド10をエンジンブロックに取り付けた際には、エンジンブロックに接触する部位として機能する。
【0019】
プレート40は、図4に示すように、上述した2つのプレート貫通孔41と、スペーサ50に対向するプレート40の一側面において各プレート貫通孔41の縁部を凹ませた環状凹部42と、プレート40の他側面において各プレート貫通孔41の縁部を膨出させた環状膨出部43とを有している。なお、これら環状凹部42および環状膨出部43は、スペーサ50に対向するプレート40の一側面から他側面側に向けて、各プレート貫通孔41の縁部にプレス加工を施すことで、一度に形成することもできる。
【0020】
各スペーサ50は、図3図4に示すように、スペーサ貫通孔53が形成された円筒状の筒状本体51と、筒状本体51の一端に形成されたフランジ部52と、プレート40に対向する一側面においてスペーサ貫通孔53の縁部を突出させた環状凸部54とを有している。補強ユニット30がユニット用収容部22に配置された状態で、各環状凸部54は、プレート40の環状凹部42に受容される。
【0021】
案内シュー20に対する補強ユニット30の取り付けは、図4に示すように、スペーサ50の環状凸部54がプレート40の環状凹部42内に入るように、プレート40に対してスペーサ50を設置した後、これらプレート40およびスペーサ50を案内シュー20のユニット用収容部22に下方側から挿入することで行われる。
【0022】
このユニット用収容部22内に補強ユニット30を挿入した状態においては、プレート40は、ユニット用収容部22の周壁部分によって、ガイド長手方向の両側、ガイド幅方向の両側、および、ガイド高さ方向の上側への移動を規制されるとともに、案内シュー20に形成された係止爪24によって、案内シュー20の下面側からの抜け出しが阻止される。
【0023】
また、スペーサ50については、ユニット用収容部22内に補強ユニット30を挿入した状態において、フランジ部52が、案内シュー20に形成されたスペーサ用係止部23とプレート40とによってガイド幅方向に挟まれ、ガイド幅方向の両側への移動が規制される。また、スペーサ50は、ユニット用収容部22の周壁部分によって、ガイド長手方向の両側、および、ガイド高さ方向の上側への移動を規制されるとともに、スペーサ50の環状凸部54とプレート40の環状凹部42との係合によって、案内シュー20の下面側からの抜け出しが阻止される。
【0024】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0025】
例えば、上述した実施形態では、チェーンガイドが、タイミングシステムを有するエンジン内に設けられるものとして説明したが、これに限定されず様々な機器類に適用可能である。
また、チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。
例えば、案内シューの材質は、弾性、摩擦抵抗、剛性、耐久性、成形性、コスト等に諸条件に応じて公知の適宜のものを選択すればよく、特に、合成樹脂材料が好適である。
また、補強ユニットを構成するプレートやスペーサの材質は、剛性、耐久性、成形性、コスト等の諸条件に応じて適宜の金属材料等を選択すればよい。
また、上述した実施形態においては、チェーンガイドが、エンジンブロックに固定される固定ガイドとして構成されているが、チェーンガイドを、エンジンルーム内で揺動可能に軸支される揺動ガイドとして構成してもよい。なお、チェーンガイドを揺動ガイドとして構成する場合、チェーンガイドをエンジンブロック等の取付対象に取り付けるための取付軸等を挿入させる取付用の孔を、プレートに1つ形成すればよく、具体的には、プレートにプレート貫通孔を1つ形成するとともに、スペーサを1つ設ければよい。
また、上述した実施形態では、スペーサに形成された環状凸部をプレートに形成された環状凹部に係合させることで、スペーサの案内シューの下面側からの抜け出しを阻止するものとして説明したが、スペーサの案内シューの下面側からの抜け出しを阻止するためには、スペーサの一部を、プレートに対してガイド幅方向に凹凸係合させればよく、例えば、スペーサに形成された凹部にプレートに形成された凸部を係合させてもよく、また、スペーサのプレート側の側面に凸部を形成することなく、スペーサのプレート側部分の全体をプレートに形成された環状凹部に係合させてもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 ・・・ チェーンガイド
20 ・・・ 案内シュー
21 ・・・ 走行案内部
22 ・・・ ユニット用収容部
23 ・・・ スペーサ用係止部
24 ・・・ 係止爪
30 ・・・ 補強ユニット
40 ・・・ プレート
41 ・・・ プレート貫通孔
42 ・・・ 環状凹部
43 ・・・ 環状膨出部
50 ・・・ スペーサ
51 ・・・ 筒状本体
52 ・・・ フランジ部
53 ・・・ スペーサ貫通孔
54 ・・・ 環状凸部
図1
図2
図3
図4