【実施例1】
【0016】
本発明の一実施形態に係るチェーンテンショナ100及びリリーフバルブユニット160について図面に基づいて説明する。
チェーンテンショナ100は、
図1に示すように、プランジャ120が、内部にオイル供給孔114から供給路122、プランジャ供給孔121を介して連通する貯油室123を有し、第1リリーフバルブユニット160が、貯油室123と圧油室101の間に配置され、第1リリーフバルブユニット160のリリーフスリーブ161の外周とプランジャ120の内面との間に、開放されたオイルが貯油室123に還流するオイル還流流路166が形成されている。
【0017】
プランジャ120を突出方向に付勢する付勢手段であるコイルばね140は、一方の端部をテンショナボディ110のプランジャ収容穴111の底部112で受けて押圧するように形成されており、底部112側に圧油室101が形成されている。
テンショナボディ110のプランジャ収容穴111の底部112には、第2リリーフバルブユニット170が配置され、第2リリーフバルブユニット170の開弁時に開放されたオイルを供給側に還流する底部還流流路115が形成されている。
【0018】
第1リリーフバルブユニット160は、
図2に示すように、チェックバルブユニット150を摺動可能に内挿するリリーフスリーブ161と、チェックバルブユニット150の摺動により開閉するリリーフバルブシート部162と、チェックバルブユニット150をリリーフバルブシート部162側に押圧するユニット押圧機構であるユニット押圧バネ163と、ユニット押圧バネ163の一方の端部を支持固定するユニット押圧バネ押え164とを有している。
リリーフスリーブ161は、リリーフバルブシート部162の後方に、所定以上の高圧で開放されたオイルを外周面側に流出させる開放部である開放孔165を有しており、開放孔165より貯油室123側にはオリフィス部167を介してオイル還流流路166が形成されている。
【0019】
チェックバルブユニット150は、チェックボール151と、チェックボール151の着座により開閉するチェックバルブシート部153と、チェックボール151をチェックバルブシート部153内に内挿するためのリテーナー152と、チェックボール151をチェックバルブシート部153側に軽く押圧するボール押えバネ154とを有している。
チェックバルブシート部153は、外形が円筒形に形成され、リリーフバルブユニット160のリリーフバルブシート部162に着座するように構成されている。
第2リリーフバルブユニット170はいかなる形式でもよく、本実施形態では、ボール式のものを使用している。
第2リリーフバルブユニット170の開弁圧は、第1リリーフバルブユニット160の開弁圧よりも大きく設定されている。
【0020】
以上のように構成された、本発明の一実施形態に係るチェーンテンショナ100の動作について説明する。
オイルは、オイル供給孔114から供給路122、プランジャ供給孔121を通って貯油室123に供給される。
プランジャ120が突出側に移動する際には、貯油室123内のオイルがチェックボール151をチェックバルブシート部153から押し下げて、圧油室101内に流入する。
プランジャ120が没入側に押圧されると、圧油室101の圧力が上昇し、チェックボール151がチェックバルブシート部153に押し付けられて、チェックバルブユニット150からのオイルの流出は阻止され、その圧力によって、チェックバルブユニット150自体をユニット押圧バネ163の押圧力に抗して押し上げるように働く。
【0021】
圧油室101の圧力が第1リリーフバルブユニット160の開弁圧以上の高圧になると、
図2bに示すように、ユニット押圧バネ163が圧縮されてチェックバルブユニット150全体が後退し、第1リリーフバルブユニット160のリリーフバルブシート部162から離れて圧油室101の圧力が開放される。
なお、本実施形態では、図示のように、リリーフバルブシート部162が凹状に形成され、チェックバルブユニット150が所定量嵌入して閉鎖状態としているため、チェックバルブユニット150の嵌入が解除されるまで後退した後に圧油室101の圧力が開放される構造とし、閉鎖時の圧力漏れを抑制している。
【0022】
チェックバルブユニット150がリリーフバルブシート部162から離れ、圧油室101の圧力が開放されることによって、オイルは圧油室101から開放孔165、オリフィス部167を通ってリリーフスリーブ161の外周面側のオイル還流流路166に流出し、外部に流出することなく貯油室123に還流する。
圧油室101の圧力が所定値以下まで低下すると、再びユニット押圧バネ163によってチェックバルブユニット150が移動してリリーフバルブシート部162に着座し、内部の圧力を保つ閉鎖状態を維持する。
この時、第1リリーフバルブユニット160による圧力の開放をオイルの供給側である貯油室123に向かって行う構造となるため、従来のようなリリーフバルブにより圧力を外部に開放するものに比べて、圧油室101との貯油室123との差圧が小さく、リリーフバルブユニット160の閉鎖状態への復帰速度を向上する。
また、第1リリーフバルブユニット160が開弁して圧力が開放されても、流出するオイルの流量がオリフィス部167によって制限されるため、急激な圧力の低下や、さらなるエンジン油圧の上昇による圧力の上昇が抑制されるとともに、所定のダンピング特性が維持される。
【0023】
なお、圧油室101の圧力が急激に高圧まで上昇した場合には、チェックボール151とチェックバルブシート部153との接触圧が急激に上昇する。
チェックボール151がチェックバルブシート部153と接触していない状態から圧力が急激に所定以上の高圧まで上昇した場合には、チェックボール151がチェックバルブシート部153に衝突することとなる。
この時、チェックバルブシート部153が後退することで、チェックボール151とチェックバルブシート部153の急激な接触圧の上昇や衝突による衝撃を和らげることができ、チェックボールやチェックバルブシート部が損傷してチェックバルブとしての機能が低下することを防止できる。
また、
図2に示すように、第1リリーフバルブユニット160が、チェックバルブユニット150と一体となり、予め1つの部品として構成することができるため、テンショナボディ110やプランジャ120等の加工箇所や、チェーンテンショナ100を組み立てる際の組立工数を大きく減少させることができる。
【0024】
圧油室101の圧力が第1リリーフバルブユニット160の開弁圧以上の高圧が持続し、さらにエンジン油圧が上昇して、第2リリーフバルブユニット170の開弁圧以上に上昇すると、第2リリーフバルブユニット170が開弁し、プランジャ収容穴111の底部112に設けられた底部還流流路115から開放されたオイルが供給側に還流する。
圧油室101の圧力が第2リリーフバルブユニット170の開弁圧以下まで低下すると、第2リリーフバルブユニット170が閉弁し、内部の圧力を保つ閉鎖状態を維持する。
この時、第2リリーフバルブユニット170による圧力の開放をオイルの供給側に向かって行う構造となるため、従来のようなリリーフバルブにより圧力を外部に開放するものに比べて、圧油室101とのオイルの供給側との差圧が小さく、リリーフバルブユニット170の閉鎖状態への復帰速度を向上する。
【0025】
エンジン回転数と圧油室101内の油圧及びダンピング特性の変化の関係を
図3に示す。
エンジン回転数が上昇すると、供給されるオイルの圧力も上昇するため、圧油室101内の油圧も上昇する。
エンジン回転数が
図3のaまで上昇すると、圧油室101内の油圧が第1リリーフバルブユニット160の開弁圧に達し、第1リリーフバルブユニット160が開弁する。
流出するオイルはオリフィス部167、オイル還流流路166を介してオイルの供給側である貯油室123に還流することとなるが、貯油室123側にも供給側からの油圧がかかっているため、圧油室101内の油圧は低下することなく維持される。
また、オリフィス部167の流路抵抗によるダンピング特性が働くため、ダンピング特性も所定の値までしか低下しない。
【0026】
エンジン回転数が
図3のaからbまでの間は、第1リリーフバルブユニット160が開弁状態、第2リリーフバルブユニット170が閉弁状態であり、圧油室101内の油圧とダンピング特性は、オリフィス部167によりほぼ所定の値に保たれる。
エンジン回転数が
図3のbに近づくと、エンジンから供給される油圧がさらに上昇してオリフィス部167による安定効果が得られなくなり圧油室101内の油圧が上昇する。
エンジン回転数が
図3のbまで上昇すると、圧油室101内の油圧が第2リリーフバルブユニット170の開弁圧に達し、第2リリーフバルブユニット170が開弁する。
流出するオイルは底部還流流路115を介してオイルの供給側に還流することとなるが、供給側からの油圧がかかっているため、圧油室101内の油圧は低下することなく維持される。
また、ダンピング特性は第2リリーフバルブユニット170の流路抵抗によるもののみしか生じないため、大きく低下する。
【0027】
リリーフバルブが存在しない場合には、
図3の小点線で示すように、圧油室の油圧はエンジン回転数が上昇に応じて上昇を続け、ダンピング特性は初期の高い値で一定である。
この場合、回転数に応じた適正な圧力やダンピング特性を得ることは不可能である。
また、第2リリーフバルブユニット170と同じ開弁圧のもの1つのみの場合には、
図3の大点線で示すように、エンジン回転数が
図3のbまで、圧油室の油圧はエンジン回転数が上昇に応じて上昇を続け、ダンピング特性は初期の高い値で一定であり、エンジン回転数が
図3のbまで上昇すると、圧油室内の油圧の上昇はなくなり、ダンピング特性は、大きく低下する。
リリーフバルブが1つのみの場合では、開弁圧を調整し、
図3のbに相当する回転数を変化させることは可能であり、回転数に応じた圧油室の油圧の上昇限度を設定することは可能であるが、広範なエンジン油圧に対して適正な圧力やダンピング特性を得ることはできない。
これに対し、本発明のチェーンテンショナによれば、第1リリーフバルブユニット160及び第2リリーフバルブユニット170の開弁圧を設定することで、回転数に応じた圧油室の油圧の変化点を調整することが可能であり、オリフィス部167の設定により、第1リリーフバルブユニット160が開弁した際の適正なダンピング特性を調整することが可能となるため、広範なエンジン油圧に対して圧油室の圧力を適正に保ち、回転数に対する狙った反力やダンピング特性を出すことが可能である。
【0028】
以上説明した実施形態は、本発明に係るチェーンテンショナの具体例であるが、本発明に係るチェーンテンショナがこれに限定されるものではなく、各構成部材の形状、位置、寸法、配置関係等、様々な変形が可能である。
また、本発明のチェーンテンショナは、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンを走行案内シューによって摺動案内を行うチェーンガイド機構に適用するものに限らず、プランジャの先端で直接チェーンの摺動案内を行ってもよい。
さらに、チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。