(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6408977
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】テンショナ
(51)【国際特許分類】
F16H 7/08 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
F16H7/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-229808(P2015-229808)
(22)【出願日】2015年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-96419(P2017-96419A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2017年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(74)【代理人】
【識別番号】100092200
【弁理士】
【氏名又は名称】大城 重信
(74)【代理人】
【識別番号】100110515
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 益男
(74)【代理人】
【識別番号】100189083
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 圭介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将成
(72)【発明者】
【氏名】國松 幸平
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−158703(JP,A)
【文献】
特開2005−344738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端側にプランジャ底部を有した円筒状のプランジャと、前記プランジャを収容する前方側に開口したプランジャ収容穴を有したハウジングと、前記プランジャ収容穴と前記プランジャの後端側との間に形成される圧油室に伸縮自在に収納されて前記プランジャを前方側に向けて付勢するコイルばねと、前記圧油室内のオイル圧が高まった時に前記圧油室内のオイルを前記プランジャ外にリリーフするリリーフ機構とを備えたテンショナであって、
前記リリーフ機構は、前記プランジャ底部の内側面の中央部で開口するように形成され、前記プランジャの内部および外部を連通させるリリーフ穴と、前記プランジャ底部の内側面側に配置された円板状のオリフィス部材とから構成され、
前記オリフィス部材は、前記コイルばねによって前記プランジャ底部側に付勢され、前記プランジャ底部側に配置される第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、
前記第1主面には、前記第1主面の外周縁に形成された外周環状溝と、前記第1主面の中央部から前記外周環状溝に達する連通溝とが設けられ、
前記オリフィス部材の外周縁には、周方向に沿って複数の切り欠き部が形成され、
前記第2主面には、前記第2主面の外周縁に形成された第2外周環状溝と、前記第2主面の中央部から前記第2外周環状溝に達する第2連通溝とが設けられていることを特徴とするテンショナ。
【請求項2】
前記プランジャ底部の内側面と前記オリフィス部材との間に配置される円板状の第2オリフィス部材を更に備え、
前記第2オリフィス部材は、前記プランジャ底部側に対向する第1主面側から前記オリフィス部材側に対向する第2主面まで貫通する貫通孔をその中央部に有し、
前記第2オリフィス部材の貫通孔の径は、前記リリーフ穴の径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前端側にプランジャ底部を有した円筒状のプランジャと、前記プランジャを収容する前方側に開口したプランジャ収容穴を有したハウジングと、前記プランジャ収容穴と前記プランジャの後端側との間に形成される圧油室に伸縮自在に収納されて前記プランジャを前方側に向けて付勢するコイルばねと、前記圧油室内のオイル圧が高まった時に前記圧油室内のオイルを前記プランジャ外にリリーフするリリーフ機構とを備えたテンショナであって、
前記リリーフ機構は、前記プランジャ底部の内側面の中央部で開口するように形成され、前記プランジャの内部および外部を連通させるリリーフ穴と、前記プランジャ底部の内側面側に配置された円板状のオリフィス部材とから構成され、
前記オリフィス部材は、前記コイルばねによって前記プランジャ底部側に付勢され、前記プランジャ底部側に配置される第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、
前記第1主面には、前記第1主面の外周縁に形成された外周環状溝と、前記第1主面の中央部から前記外周環状溝に達する連通溝とが設けられ、
前記オリフィス部材の外周縁には、周方向に沿って複数の切り欠き部が形成され、
前記プランジャ底部の内側面と前記オリフィス部材との間に配置される円板状の第2オリフィス部材を更に備え、
前記第2オリフィス部材は、前記プランジャ底部側に対向する第1主面側から前記オリフィス部材側に対向する第2主面まで貫通する貫通孔をその中央部に有し、
前記第2オリフィス部材の貫通孔の径は、前記リリーフ穴の径よりも小さいことを特徴とするテンショナ。
【請求項4】
前記複数の切り欠き部は、前記オリフィス部材の外周縁に沿って等間隔に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行するチェーンやベルト等に適正張力を付与するテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チェーン等の張力を適正に保持するためにテンショナを用いることが慣用されており、例えば、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケット間に無端懸回したローラチェーン等の伝動チェーンをテンショナレバーによって摺動案内を行うチェーンガイド機構において、チェーン等の張力を適正に保持するために、テンショナによってテンショナレバーを付勢するものが公知である。
【0003】
公知のテンショナは、前方側に開口したプランジャ収容穴を有するハウジングと、プランジャ収容穴に摺動自在に挿入されるプランジャと、プランジャを前方側に向けて付勢するコイルばねとを備えている。このようなテンショナでは、プランジャ収容穴とプランジャとの間に形成された圧油室にオイルが供給され、圧油室内のオイルによってプランジャを前方側に向けて付勢するとともに、プランジャの往復動に伴ってプランジャとプランジャ収容穴の間の僅かな隙間をオイルが流れ、その流路抵抗によってプランジャの往復動を減衰させるダンピング効果を得ている。
【0004】
ここで、圧油室内のオイル圧を適切に維持するために、圧油室内のオイル圧が高まった時に圧油室内のオイルをプランジャ外に排出するリリーフ機構を設けることが知られており、このリリーフ機構の一態様として、
図8に示すように、プランジャ120の内部および外部を連通させるリリーフ穴122をプランジャ120に設けるとともに、オリフィス部材160をプランジャ120内に配置することが知られている。
オリフィス部材160の外周面には螺旋状の溝161bが形成されており、このオリフィス部材160をプランジャ穴123内に圧入嵌合し、プランジャ穴123の内周面と溝161bとの間隙でリリーフ穴122からのオイルの流出量を調節する。
【0005】
ところが、この
図8に示す例では、オリフィス部材160をプランジャ穴123内に圧入嵌合して設置していることから、オリフィス部材160の嵌合代を確保するためにオリフィス部材160の前後方向(軸方向)の寸法を大きく設計する必要があり、また、オリフィス部材160の外径やプランジャ穴123の内径を高精度に形成する必要があり、また、オリフィス部材160の圧入に起因したプランジャ120の変形が懸念されることから組み付け後の研磨工程を必要とし、また、圧入設備を必要とする等の諸々の問題が生じる。
【0006】
そこで、上述した問題を解決する1つの案として、
図9に示すように、プランジャ底部121側に面する第1主面161にオイル用の溝(図示しない)を形成した円板状のオリフィス部材160を、コイルばね140によってプランジャ底部121側に押し付けて固定することが提案されている(例えば特許文献1を参照)。
この特許文献1のテンショナでは、圧油室111内のオイル圧が高まった時に、圧油室111内のオイルOが、オリフィス部材160の外周面とプランジャ穴123の内周面との間隙、第1主面161のオイル用の溝、および、リリーフ穴122を通って、プランジャ120の外部に排出される。
【0007】
ここで、この特許文献1に記載のリリーフ機構は、圧油室111内に混入した混入空気Aを圧油室111の外部に排出する脱気機能も担っている。具体的には、圧油室111内に混入した混入空気Aは、オイルOの場合と同様に、オリフィス部材160の外周面とプランジャ穴123の内周面との間隙、第1主面161のオイル用の溝、および、リリーフ穴122を通って、プランジャ120の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−194164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1のテンショナでは、オリフィス部材160が、コイルばね140によってプランジャ底部121側に押し付けられることで固定されていることから、
図10(a)に示すようにプランジャ穴123の内周面とオリフィス部材160の外周面との間隙が、周方向において偏りを生じることがあり、当該間隙が狭くなった部分Rが、
図9に示すような、混入空気Aが溜まる重力方向の上方側に位置してしまうと、オリフィス部材160の第1主面161側に混入空気Aが抜け難いという問題がある。
【0010】
そこで、上述した問題を解決する1つの案として、
図10(b)に示すように、重力方向の上方側に位置するオリフィス部材160の外周縁に切り欠き部163を設け、オリフィス部材160の第1主面161側に混入空気Aが抜け易くすることも考えられる。
【0011】
ところが、この場合、切り欠き部163が重力方向の上方側に位置するように、オリフィス部材160をプランジャ穴123内に組み付けなければならないため、組み付け負担が増大するという問題があり、また、回り止めされていない状態でプランジャ120がハウジング130のプランジャ収容穴内に配置されるタイプのテンショナには適用することができないという問題もある。
【0012】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、小型化および製造負担の低減を実現しつつ、簡素な構成で、圧油室内に混入した混入空気を良好に排出することが可能なテンショナを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前端側にプランジャ底部を有した円筒状のプランジャと、前記プランジャを収容する前方側に開口したプランジャ収容穴を有したハウジングと、前記プランジャ収容穴と前記プランジャの後端側との間に形成される圧油室に伸縮自在に収納されて前記プランジャを前方側に向けて付勢するコイルばねと、前記圧油室内のオイル圧が高まった時に前記圧油室内のオイルを前記プランジャ外にリリーフするリリーフ機構とを備えたテンショナであって、前記リリーフ機構は、前記プランジャ底部の内側面の中央部で開口するように形成され、前記プランジャの内部および外部を連通させるリリーフ穴と、前記プランジャ底部の内側面側に配置された円板状のオリフィス部材とから構成され、前記オリフィス部材は、前記コイルばねによって前記プランジャ底部側に付勢され、前記プランジャ底部側に配置される第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、前記第1主面には、前記第1主面の外周縁に形成された外周環状溝と、前記第1主面の中央部から前記外周環状溝に達する連通溝とが設けられ、前記オリフィス部材の外周縁には、周方向に沿って複数の切り欠き部が形成され
、前記第2主面には、前記第2主面の外周縁に形成された第2外周環状溝と、前記第2主面の中央部から前記第2外周環状溝に達する第2連通溝とが設けられていることにより、前記課題を解決するものである。
また、本発明の他の態様は、前端側にプランジャ底部を有した円筒状のプランジャと、前記プランジャを収容する前方側に開口したプランジャ収容穴を有したハウジングと、前記プランジャ収容穴と前記プランジャの後端側との間に形成される圧油室に伸縮自在に収納されて前記プランジャを前方側に向けて付勢するコイルばねと、前記圧油室内のオイル圧が高まった時に前記圧油室内のオイルを前記プランジャ外にリリーフするリリーフ機構とを備えたテンショナであって、前記リリーフ機構は、前記プランジャ底部の内側面の中央部で開口するように形成され、前記プランジャの内部および外部を連通させるリリーフ穴と、前記プランジャ底部の内側面側に配置された円板状のオリフィス部材とから構成され、前記オリフィス部材は、前記コイルばねによって前記プランジャ底部側に付勢され、前記プランジャ底部側に配置される第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを有し、前記第1主面には、前記第1主面の外周縁に形成された外周環状溝と、前記第1主面の中央部から前記外周環状溝に達する連通溝とが設けられ、前記オリフィス部材の外周縁には、周方向に沿って複数の切り欠き部が形成され、前記プランジャ底部の内側面と前記オリフィス部材との間に配置される円板状の第2オリフィス部材を更に備え、前記第2オリフィス部材は、前記プランジャ底部側に対向する第1主面側から前記オリフィス部材側に対向する第2主面まで貫通する貫通孔をその中央部に有し、前記第2オリフィス部材の貫通孔の径は、前記リリーフ穴の径よりも小さいことにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0014】
本請求項1に係る発明によれば、プランジャ底部側に配置されるオリフィス部材の第1主面に、外周縁に形成された外周環状溝と、第1主面の中央部から外周環状溝に達する連通溝とが設けられ、オリフィス部材の外周縁に切り欠き部が形成されていることにより、圧油室内のオイル圧が高まった時に、オリフィス部材の切り欠き部、外周環状溝、連通溝、および、プランジャのリリーフ穴を通じて、圧油室内のオイルをプランジャの外部に排出して、圧油室内のオイル圧を適切に維持することができ、また、オリフィス部材を設置するにあたって圧入嵌合を必要としないことから、オリフィス部材の小型化および製造負担の低減を実現することができるばかりでなく、以下に記載する効果を奏する。
すなわち、オリフィス部材の外周縁に周方向に沿って複数の切り欠き部が形成されていることにより、重力方向の上方側に溜まる混入空気を、複数の切り欠き部のうちいずれかの切り欠き部を通して第1主面側に抜けさせることが可能であるため、オリフィス部材の組み付け時に切り欠き部の位置を考慮する必要がなく、組み付け負担を低減することができ、また、回り止めされていない状態でプランジャがハウジングのプランジャ収容穴内に配置されるタイプのテンショナにも適用することができる。
【0015】
本請求項
4に係る発明によれば、複数の切り欠き部が、オリフィス部材の外周縁に沿って等間隔に形成されていることにより、プランジャ穴内におけるオリフィス部材の配置態様に関わらず、脱気性能を安定させることができる。
本請求項
1に係る発明によれば、第2主面に、第2主面の外周縁に形成された第2外周環状溝と、第2主面の中央部から第2外周環状溝に達する第2連通溝とが設けられていることにより、プランジャ穴内へのオリフィス部材の組み付け時に、オリフィス部材の表裏を考慮する必要がないため、組み付け負担をより一層低減することができ、また、複数枚のオリフィス部材を重ねて設置することで、オイル流路の流路長を簡単に調節することもできる。
本請求項
2、3に係る発明によれば、プランジャ底部の内側面とオリフィス部材との間に、円板状の第2オリフィス部材が配置され、第2オリフィス部材が、プランジャ底部側に対向する第1主面側からオリフィス部材側に対向する第2主面まで貫通する貫通孔をその中央部に有し、第2オリフィス部材の貫通孔の径が、リリーフ穴の径よりも小さいことにより、簡素な構成で、オイルの流出量を良好に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るテンショナを示す断面図。
【
図2】
図1に示すテンショナに組み込まれるオリフィス部材を示す斜視図。
【
図3】
図1に示すテンショナに組み込まれるオリフィス部材を示す平面図。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るテンショナを示す断面図。
【
図7】
図6に示すテンショナに組み込まれる第2オリフィス部材を示す斜視図。
【
図10】オリフィス部材とプランジャ穴との間隙を説明する参考図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の第1実施形態に係るテンショナ10について、図面に基づいて説明する。
【0018】
まず、本実施形態のテンショナ10は、自動車エンジンのタイミングシステム等に用いられるチェーン伝動装置に組み込まれるものであり、エンジンブロックに取り付けられ、複数のスプロケットに掛け回された伝動チェーンの弛み側にテンショナレバーを介して適正な張力を付与し、走行時に生じる振動を抑止するものである。
【0019】
テンショナ10は、
図1に示すように、前端側にプランジャ底部21を有した円筒状のプランジャ20と、プランジャ20を収容するプランジャ収容穴31を有するハウジング30と、プランジャ収容穴31とプランジャ20の後端側との間に形成される圧油室11に伸縮自在に収納されてプランジャ20を前方側に向けて付勢するコイルばね40と、圧油室11へのオイルの流入を許容するとともに圧油室11からのオイルの流出を防止するチェックバルブ50と、圧油室11内のオイル圧が高まった時に圧油室11内のオイルをプランジャ20外にリリーフするリリーフ機構とを備えている。
【0020】
以下に、テンショナ10の各構成要素について、図面に基づいて説明する。
【0021】
プランジャ20は、鉄等の金属から形成され、
図1に示すように、プランジャ収容穴31内に前後方向に進退可能に挿入されている。プランジャ底部21には、プランジャ底部21の内側面の中央部で開口するように形成されたリリーフ穴22が形成されている。また、プランジャ20は、後方側に開口したプランジャ穴23を有している。
【0022】
ハウジング30は、アルミニウム合金や合成樹脂等から形成され、
図1に示すように、前方側に開口した円筒状のプランジャ収容穴31と、ハウジング30の外部から圧油室11にオイルを供給するオイル供給孔32とを有している。
【0023】
コイルばね40は、
図1に示すように、その一端が後述するオリフィス部材60に当接するとともに、その他端がプランジャ収容穴31の底部に当接して配置されている。
【0024】
チェックバルブ50は、
図1に示すように、圧油室11とオイル供給孔32との間に配置され、オイル供給孔32を通じたハウジング30の外部から圧油室11へのオイルの流入を許容するとともに、オイル供給孔32を通じた圧油室11からのオイルの外部流出を防止するものである。
【0025】
リリーフ機構は、
図1に示すように、プランジャ20の内部および外部を連通させるリリーフ穴22と、プランジャ底部21の内側面側に配置されたオリフィス部材60とから構成されている。オリフィス部材60は、コイルばね40によって前方に向けて付勢され、プランジャ底部21の内側面に押し付けられて、固定されている。
【0026】
オリフィス部材60は、鉄等の金属や合成樹脂等から円板状に形成され、プランジャ底部21の内側面に接触して配置される第1主面61と、第1主面61の反対側の第2主面62とを有している。この円板状のオリフィス部材60の外径は、プランジャ穴23の内径よりも僅かに小さい。
【0027】
第1主面61には、
図2や
図3に示すように、第1主面61の外周縁に形成された第1外周環状溝61aと、第1主面61の中央部から第1外周環状溝61aに達する第1連通溝61bとが設けられている。
また、第2主面62には、第2主面62の外周縁に形成された第2外周環状溝62aと、第2主面62の中央部から第2外周環状溝62aに達する第2連通溝62bとが設けられている。
【0028】
なお、本実施形態では、
図2や
図3に示すように、連通溝61b、62bが、略螺旋状に、主面61、62に形成されている。
しかしながら、連通溝61b、62bの具体的形状は、主面61、62の中央部から外周環状溝61a、62aまで達するものであれば如何なるものでもよく、例えば、
図4や
図5に示すように、主面61、62の中央部から外周環状溝61a、62aまで径方向に沿って直線状に延びるように、連通溝61b、62bを形成してもよい。
【0029】
また、オリフィス部材60の外周縁には、
図2や
図3に示すように、周方向に沿って等間隔に複数の切り欠き部63が形成されている。これら切り欠き部63は、第1主面61側から第2主面62側に貫通し、第1外周環状溝61aおよび第2外周環状溝62aに連通している。
【0030】
このようにして得られた本実施形態のテンショナ10では、圧油室11内のオイル圧が高まった時に、圧油室11内のオイルが、オリフィス部材60の切り欠き部63、第1外周環状溝61a、第1連通溝61b、プランジャ20のリリーフ穴22を順に通って、プランジャ20の外部に排出される。
また、圧油室11内に空気が混入した場合にも、同様に、オリフィス部材60の切り欠き部63、第1外周環状溝61a、第1連通溝61b、プランジャ20のリリーフ穴22を順に通って、プランジャ20の外部に排出される。
【0031】
次に、本発明の第2実施形態に係るテンショナ10について、
図6および
図7に基づいて説明する。ここで、第2実施形態では、一部構成については、前述した第1実施形態と全く同じであるため、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0032】
第2実施形態のテンショナ10では、
図6に示すように、プランジャ底部21の内側面とオリフィス部材60との間に、円板状の第2オリフィス部材70が配置されている。
【0033】
第2オリフィス部材70は、
図6や
図7に示すように、プランジャ底部21側に対向する第1主面71側からオリフィス部材60側に対向する第2主面72側まで貫通する貫通孔73をその中央部に有している。第2オリフィス部材70の貫通孔73の径は、リリーフ穴22の径よりも小さく設計されている。
【0034】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0035】
例えば、上述した複数の実施形態の各構成を、任意に組み合わせてテンショナを構成しても何ら構わない。
また、上述した実施形態では、テンショナが自動車エンジン用のタイミングシステムに組み込まれるものとして説明したが、テンショナの具体的用途はこれに限定されない。
また、上述した実施形態では、テンショナがテンショナレバーを介して伝動チェーンに張力を付与するものとして説明したが、プランジャの先端で直接的に伝動チェーンの摺動案内を行い、伝動チェーンに張力を付与するようにしてもよい。
さらに、伝動チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、長尺物に張力を付与することが求められる用途であれば、種々の産業分野において利用可能である。
また、上述した実施形態では、プランジャを収容するハウジングが、エンジンブロック等に取り付けられる所謂ハウジングであるものとして説明したが、ハウジングの具体的態様は、上記に限定されず、エンジンボディに形成されたボディ穴内に挿入される円筒状の所謂スリーブであってもよい。
また、上述した実施形態では、オリフィス部材の第1主面および第2主面の両面に、外周環状溝や連通溝が形成されているものとして説明したが、第1主面のみに外周環状溝や連通溝を形成してもよい。
また、2枚以上のオリフィス部材や第2オリフィス部材を前後方向に並べて配置してもよい。
【符号の説明】
【0036】
10 ・・・ テンショナ
11 ・・・ 圧油室
20 ・・・ プランジャ
21 ・・・ プランジャ底部
22 ・・・ リリーフ穴
23 ・・・ プランジャ穴
30 ・・・ ハウジング
31 ・・・ プランジャ収容穴
32 ・・・ オイル供給孔
40 ・・・ コイルばね
50 ・・・ チェックバルブ
60 ・・・ オリフィス部材
61 ・・・ 第1主面
61a ・・・ 第1外周環状溝
61b ・・・ 第1連通溝
62 ・・・ 第2主面
62a ・・・ 第2外周環状溝
62b ・・・ 第2連通溝
63 ・・・ 切り欠き部
70 ・・・ 第2オリフィス部材
71 ・・・ 第1主面
72 ・・・ 第2主面
73 ・・・ 貫通孔