(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態における電動アシスト車であるモータ付き自転車の一例を示す外観図である。このモータ付き自転車1は、モータ駆動装置を搭載している。モータ駆動装置は、二次電池101と、モータ駆動制御器102と、トルクセンサ103と、ブレーキセンサ104と、モータ105と、アシストの有無などを指示するための操作パネル106と、ペダル回転センサ107とを有する。
【0027】
二次電池101は、例えば公称基準電圧が24V、供給最大電圧(満充電時の電圧)が30Vのリチウムイオン二次電池であるが、他種の電池、例えばリチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル水素蓄電池などであっても良い。
【0028】
トルクセンサ103は、クランク軸に取付けられたホイールに設けられており、乗員によるペダルの踏力を検出し、この検出結果をモータ駆動制御器102に出力する。ペダル回転センサ107は、トルクセンサ103と同様に、クランク軸に取付けられたホイールに設けられており、回転に応じた信号をモータ駆動制御器102に出力する。なお、ペダル回転センサ107は、回転位相角に加えて、ペダルの正転又は逆転といった回転方向についても検出可能である場合もある。
【0029】
モータ105は、例えば周知の三相直流ブラシレスモータであり、例えばモータ付き自転車1の前輪に装着されている。モータ105は、前輪を回転させるとともに、前輪の回転に応じてローターが回転するように、ローターが前輪に連結されている。さらに、モータ105はホール素子等の回転センサを備えてローターの回転情報(すなわちホール信号)をモータ駆動制御器102に出力する。
【0030】
このようなモータ付き自転車1のモータ駆動制御器102に関連する構成を
図2に示す。モータ駆動制御器102は、制御器1020と、FET(Field Effect Transistor)ブリッジ1030とを有する。FETブリッジ1030は、モータ105のU相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Suh)及びローサイドFET(Sul)と、モータ105のV相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Svh)及びローサイドFET(Svl)と、モータ105のW相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Swh)及びローサイドFET(Swl)とを含む。このFETブリッジ1030は、コンプリメンタリ型スイッチングアンプの一部を構成している。また、FETブリッジ1030には、この温度を測定するためサーミスタ108が設けられている。
【0031】
また、制御器1020は、演算部1021と、ペダル回転入力部1022と、温度入力部1023と、車速入力部1024と、可変遅延回路1025と、モータ駆動タイミング生成部1026と、トルク入力部1027と、ブレーキ入力部1028と、AD入力部1029とを有する。
【0032】
演算部1021は、操作パネル106からの入力(例えばアシストのオン/オフなど
)、ペダル回転入力部1022からの入力、温度入力部1023からの入力、車速入力部1024からの入力、トルク入力部1027からの入力、ブレーキ入力部1028からの入力、AD入力部1029からの入力を用いて以下で述べる演算を行って、モータ駆動タイミング生成部1026及び可変遅延回路1025に対して出力を行う。なお、演算部1021は、メモリ10211を有しており、メモリ10211は、演算に用いる各種データ及び処理途中のデータ等を格納する。さらに、演算部1021は、プログラムをプロセッサが実行することによって実現される場合もあり、この場合には当該プログラムがメモリ10211に記録されている場合もある。
【0033】
ペダル回転入力部1022は、ペダル回転センサ107からの、ペダル回転位相角及び回転方向を表す信号を、ディジタル化して演算部1021に出力する。但し、ペダル回転センサ107は、回転方向については検出できない場合もある。温度入力部1023は、サーミスタ108からの入力をディジタル化して演算部1021に出力する。車速入力部1024は、モータ105が出力するホール信号から前輪車速を算出して、演算部1021に出力する。トルク入力部1027は、トルクセンサ103からの踏力に相当する信号をディジタル化して演算部1021に出力する。ブレーキ入力部1028は、ブレーキセンサ104からのブレーキ有り又は無しを表す信号をディジタル化して演算部1021に出力する。AD(Analog-Digital)入力部1029は、二次電池101からの出力電圧をディジタル化して演算部1021に出力する。また、メモリ10211は、演算部1021とは別に設けられる場合もある。
【0034】
演算部1021は、演算結果として進角値を可変遅延回路1025に出力する。可変遅延回路1025は、演算部1021から受け取った進角値に基づきホール信号の位相を調整してモータ駆動タイミング生成部1026に出力する。演算部1021は、演算結果として例えばPWMのデューティー比に相当するPWMコードをモータ駆動タイミング生成部1026に出力する。モータ駆動タイミング生成部1026は、可変遅延回路1025からの調整後のホール信号と演算部1021からのPWMコードとに基づいて、FETブリッジ1030に含まれる各FETに対するスイッチング信号を生成して出力する。なお、モータ駆動の基本動作については、国際公開公報第WO2012/086459号パンフレットに記載されており、本実施の形態の主要部ではないので、ここでは説明を省略する。
【0035】
次に、演算部1021の機能ブロック図を
図3に示す。演算部1021は、加速度算出部1201と、ペダル速度算出部1202と、自動回生目標トルク演算部1204と、回生ブレーキ目標トルク演算部1205と、
アシストトルク目標演算部1203と、最小選択部1206と、加算器1207と、第1有効化部1208と、第2有効化部120
9と、加算器1210と、電流制限部1211と、出力制御部1212と、第1デューティー比換算部1213と、トルクスルーレート制限部1214と、第2デューティー比換算部1215と、速度スルーレート制限部1216と、加算器1217と、PWMコード生成部1218とを有する。
【0036】
車速入力部1024からの前輪車速Vf及びトルク入力部1027からのペダルトルク値は、
アシストトルク目標演算部1203に入力され、アシストトルク値Taが算出される。
アシストトルク目標演算部1203の演算内容は、本実施の形態の主旨ではないので詳しく述べないが、例えば、
アシストトルク目標演算部1203は、ペダルトルク値をLPFで平滑化した上でリップル成分を抽出し、平滑化されたペダルトルク値と当該リップル成分とを所定の混合比で混合した値に応じたアシストトルク値Taを算出する。この演算の際に、車速に応じて混合比を調整したり、車速に応じて使用するアシスト比を制限した上で平滑化されたペダルトルク値に対して乗ずるといった演算をも行う場合がある。また、回生ブレーキ目標トルク演算部1205は、車速入力部1024からの車速値に応じて後に述べる演算を実施して回生ブレーキ目標トルク値を算出する。なお、
アシストトルク目標演算部1203の構成の一例については、例えば国際公開公報第WO2012/086458号パンフレットに記載されている。
【0037】
ペダル回転入力部1022からのペダル回転入力は、ペダル速度算出部1202に入力され、ペダル速度算出部1202は、ペダル回転入力からペダル速度Vpを算出する。また、前輪速度Vfは、加速度算出部1201に入力され、加速度算出部1201は、前輪速度Vfを高精度に時間微分することで前輪加速度Afを算出する。自動回生目標トルク演算部1204は、ペダル速度算出部1202からのペダル速度Vpと、加速度算出部1201からの前輪加速度Afとから、自動回生トルクTcを算出する。自動回生目標トルク演算部1204の詳細については、後に述べる。前輪車速Vfは回生ブレーキ目標トルク演算部1205にも入力され、回生ブレーキ目標トルク演算部1205は、後に詳細に説明するが、前輪車速Vfに応じて、手動回生ブレーキ目標トルクTbを算出する。
【0038】
最小選択部1206は、回生ブレーキ目標トルク演算部1205からの手動回生ブレーキ目標トルクTbと、自動回生目標トルク演算部1204からの自動回生トルクTcとのうち小さい方を出力する。通常であれば、自動回生目標トルク演算部1204からの自動回生トルクTcが、回生ブレーキ目標トルク演算部1205からの手動回生ブレーキ目標トルクTbを上回るまでは、自動回生トルクTcが出力され、自動回生トルクTcが手動回生ブレーキ目標トルクTbを上回ると、手動回生ブレーキ目標トルクTbが出力される。
【0039】
加算器1207は、
アシストトルク目標演算部1203からのアシストトルク値Taから、最小選択部1206の出力を差し引く演算を行って、演算結果を第2有効化部1209に出力する。
【0040】
ブレーキ入力部1028からブレーキ有りを表す入力信号が入力されると、第1有効化部1208は、回生ブレーキ目標トルク演算部1205からの手動回生ブレーキ目標トルクTbを加算器1210に出力する。それ以外の場合には、0を出力する。一方、ブレーキ入力部1028からブレーキ無しを表す入力信号が入力されると、第2有効化部1209は、加算器1207からの出力を出力する。それ以外の場合には、0を出力する。
【0041】
加算器1210は、第1有効化部1208からの手動回生ブレーキ目標トルクTbの極性を反転して出力するか、第2有効化部1209からの加算器1207の演算結果をそのまま出力する。以下、説明を簡略化するため、加算器1210の出力を目標トルク値と略称するものとする。
【0042】
電流制限部1211は、例えば(A)二次電池101の放電電流及び蓄電電流の制限、(B)FETブリッジ1030の温度(温度入力部1023からの入力)による電流制限といった電流制限を行うことになる。電流制限部1211の演算内容については、本実施の形態の主要部ではないので、ここでは説明を省略する。なお、詳細については、国際公開公報第WO2012/086459号パンフレットを参照のこと。
【0043】
出力制御部1212は、例えば操作パネル106からアシスト指示が入力されていると、駆動許可信号有りと判定されて、電流制限部1211からの出力を第1デューティー比換算部1213に出力する。一方、操作パネル106からアシスト指示が入力されていない場合には、駆動許可信号無しと判定されて、出力制御部1212は、0を第1デューティー比換算部1213に出力する。
【0044】
第1デューティー比換算部1213は、出力制御部1212からの出力に対して、換算係数d
t(=デューティー比/トルク)を乗じてトルクデューティーコードを算出し、トルクスルーレート制限部1214に出力する。トルクスルーレート制限部1214は、第1デューティー比換算部1213からの出力に対してよく知られたスルーレート制限処理を実施して、処理結果を加算器1217に出力する。
【0045】
第2デューティー比換算部1215は、前輪車速Vfに対して換算係数d
s(=デューティー比/前輪車速)を乗じて車速デューティーコードを算出し、速度スルーレート制限部1216に出力する。速度スルーレート制限部1216は、第2デューティー比換算部1215からの出力に対してよく知られたスルーレート制限処理を実施して、処理結果を加算器1217に出力する。
【0046】
加算器1217は、トルクスルーレート制
限部1214からのトルクデューティーコードと速度スルーレート制限部1216からの車速デューティーコードとを加算してデューティーコードを算出し、PWMコード生成部1218に出力する。PWMコード生成部1218は、デューティーコードに対して、AD入力部1029からの基準電圧(例えば24V)/バッテリ電圧を乗じてPWMコードを生成する。PWMコードは、モータ駆動タイミング生成部1026に出力される。
【0047】
次に、回生ブレーキ目標トルク演算部1205でどのようにして手動回生ブレーキ目標トルクTbを算出するかについて
図4乃至
図6を用いて説明する。
図4の横軸は前輪車速Vfを表しており、縦軸は手動回生ブレーキ目標トルク
Tbを表す。点線の直線q
1は、前輪車速に相当する値の手動回生ブレーキ目標トルク値を出力する場合の車速−トルク関係を表しており、回生効率0%(ショートブレーキ)である。この直線q
1より上の領域では、電力持ち出しブレーキとなる。また、点線の直線q
2は、前輪車速に相当する値の1/2の手動回生ブレーキ目標トルク値を出力する場合の車速−トルク関係を表しており、回生効率50%で、最大回生電力を得ることができる。この直線q
2より上の領域は、機械ブレーキ併用の方が有利な領域である。従って、直線q
2以下の領域で、制約条件を加味しつつ適切なカーブを採用する。
【0048】
各速度においての瞬時回生効率は、その瞬間の速度における逆起電力電圧に対するその瞬間の回生ブレーキ電圧の比で決まる。
瞬時回生効率=1−(回生ブレーキ電圧/逆起電力電圧)
=1−(回生トルク/車速相当トルク値)
【0049】
任意の速度から任意の停止要求距離において、停止距離以外の他の制約が一切無い状態では、その停止距離で最大回生効率、すなわちトータルで最大回生電力量を得るには、どの速度でも均等な、回生効率一定のカーブ、すなわち原点を通る比例直線となる。直線q
10は、停止要求距離が十分に長ければ
横軸に近づき、回生効率は100%に近づく。一方、停止要求距離がある程度短くなると直線q
10は、最大瞬時回生電力が得られる直線q
2と同じになり、その時のトータルの回生効率は50%となる。さらに、それより停止要求距離が短い場合、回生トルクカーブは最大瞬時回生電力が得られる直線q
2と同じままで機械ブレーキの併用が必要となる。それ以上回生ブレーキのトルクを大きくすると、瞬時回生電力が逆に減ってしまうので、それ以上は機械ブレーキに回した方が得だからである。
【0050】
また、考慮すべき制約条件としては、高速域での最大定制動ラインを表し且つ横軸に平行な点線の直線群q
7、低速域での最低定制動ラインを表し且つ横軸に平行な点線の直線群q
6などがある。
【0051】
実際に直線q
10を採用すると、時間に対する減速カーブは指数関数的に減衰するカーブとなり、停止距離は一定でも、停止時間が無限大となってしまうため、低速側では回生効率を多少犠牲にしても大きなトルクを維持する直線q
6を採用する。さらに低速で直線q
6が直線q
2を上回る領域になると回生効率の悪化のみならず、瞬時回生電力も逆に減少することになるため、各速度での瞬時回生電力が最大となる直線q
2に移行させ、機械ブレーキを併用して停止に至らせる。
【0052】
一方、逆に速度が大きい場合には、定率の高効率回生直線である直線q
4のままではブレーキトルクが大きくなりすぎて危険なため、一定の最大トルク制限をかけるための直線q
7に移行させる。
【0053】
これに中速域では、点線の直線q
3から直線q
5までの15%乃至35%定率制動ライン(回生効率85%乃至65%)をも考慮すると、太線q
11で表されるような折れ線のカーブが採用される場合もある。なお、中速域では、直線q
4を採用している。これによって、中速域で高効率に電池回生を行うことができる。
【0054】
なお、さらなる制約条件としては、二次電池101に基づき設定される電池充電電流制限ラインを表す曲線群q
8(電池の種類及び状態によって異なる)、さらなる低速域での回生効率50%ラインの直線q
2などがある。
【0055】
電池電圧を一定とすると、電池の最大充電電流制限により回生電力が一定となる。
電池電圧×電池充電電流 = 一定回生電力 = モータ逆起電力×モータ電流
【0056】
モータ逆起電力は速度に比例、モータトルクはモータ電流に比例するため、その積が一定なのでモータ電流は速度に反比例する。そのため曲線群q
8は速度に反比例した双曲線カーブとなる。電池電圧、すなわち電池残量や電池温度によるディレーティングにより最大充電電流も可変し、上で示した式により一定回生電力自身も電池電圧に比例するため、複数の双曲線カーブとして表されている。
【0057】
また、回生ブレーキの優劣は、一定速度から、求められる一定距離(一定時間ではない)以下で停止した場合の総回生電力が大きい方が優秀であるものとする。この際、所定距離以下で止まれない場合は、止まれるところまで機械ブレーキを併用する。一定距離以下という制約が無いと、機械的ロスが問題にならないほどの範囲ではなかなか止まらない効きの悪い軽回生制動ほど回生効率が有利となってしまい、それではブレーキの意味が無いためである。従って、ブレーキ機能として作用するように所定距離以下で止まれる範囲まで機械ブレーキを併用した状態で評価する。
【0058】
図4のカーブq
11は一例であって、
図5に示すようなカーブq
13を採用するようにしても良い。カーブq
13は、低速域では上で述べた
直線q
2に沿った形を有し、速度が上がると手動回生ブレーキ目標トルク値は一定となり、高速域では電池充電電流制限ライン群q
8により制限されている。なお、点線の直線q
12は、25%制動ライン(回生効率75%)を表している。高速域になると、
カーブq13は、電池充電電流制限ライン群q
8で制限される付近で、この直線q
12を下回るようになる。
【0059】
また、
図6に示すようなカーブを採用するようにしても良い。
図6は、ブレーキ入力部1028から、要求ブレーキ強度を受け取った場合の例を示している。この例では、要求ブレーキ強度が小の場合には曲線q
14を採用し、要求ブレーキ強度が中の場合には曲線q
15を採用し、要求ブレーキ強度が大の場合には曲線q
16を採用する。曲線q
16については、電池充電電流制限ライン群q
8の1つによって制限されている。このような場合でも、低速時には直線q
2に沿っていて、この直線を上回ることはない。なお、このような3段階ではなく、より多くの段階又は少ない段階に応じた曲線を規定するようにしても良い。さらに、要求ブレーキ強度に応じた手動回生ブレーキ目標トルク値の関数を別途定義するようにしても良い。
【0060】
次に、自動回生目標トルク演算部1204の詳細構成について説明する。
図7に示すように、自動回生目標トルク演算部1204は、車速換算部1301と、ペダル変調関数演算部1302と、速度フィードバック関数算出部1303と、乗算部1304と、加算器1305と、加速度フィードバック関数算出部1306と、乗算部1307と、乗算部1308と、加速度フィードバックフィルタ1310と、加算器1315とを有する。
【0061】
また、加速度フィードバックフィルタ1310は、例えば、1次IIR(Infinite impulse response)−LPF(Low Pass Filter)であって、加算器1311と、乗算部1312と、加算器1313と、遅延器(1/Zf)1314とを有する。
【0062】
速度フィードバック関数算出部1303は、前輪車速Vfを入力として、予め定められた速度フィードバック関数の値を算出する。具体的には、
図8に示すような速度フィードバック関数が用いられる。
図8のグラフの横軸は、前輪車速Vfを表し、縦軸は、速度フィードバック関数の出力Tvfbを表す。
図8の例では、前輪車速Vfが降坂速度抑制基準速度Vfbt(例えば18乃至24km/h程度)までは、出力
Tvfbは0であるが、前輪車速VfがVfbt以上となると、傾きKvfb(降坂速度抑制微分フィードバック係数(トルク/速度))とする直線で増加する。すなわち、Tvfb=MAX[0,Kvfb×(Vf−Vfbt)]となる。
【0063】
車速換算部1301は、ペダル速度Vpに対して例えば所定の最大ギヤ比を乗ずることで、最大ギヤ比換算ペダル速度Vphを算出する。最大ギヤ比は、安定動作のために固定で用いられる。ペダル変調関数演算部1302は、前輪車速Vfと、最大ギヤ比換算ペダル速度Vphとから、ペダル変調度Kpdと、ペダルオフセット回生トルクTpdoとを算出して出力する。ペダル変調関数演算部1302の演算内容については、後に詳しく述べる。
【0064】
速度フィードバック関数算出部1303からの出力Tvfbと、ペダル変調度Kpdとは乗算部1304に入力され、乗算部1304は、Tvfb×Kpdを算出する。
【0065】
一方、加速度フィードバック関数算出部1306には前輪車速Vfの加速度Afが入力され、加速度フィードバック関数算出部1306は、加速度Afから出力Afbを算出し、乗算部1307に出力する。なお、加速度フィードバック関数算出部1306の演算内容については、後に詳しく述べる。
【0066】
乗算部1307には、加速度フィードバック関数算出部1306の出力Afbと、ペダル変調度Kpdとが入力され、乗算部1307は、Afb×Kpdを算出する。
【0067】
そして、乗算部1307の出力Afb×Kpdと、標準全質量(例えば80Kg)×等価半径(モータ減速比を考慮した直接駆動換算の等価車輪半径)とが、乗算部1308に入力され、乗算部1308は、Afb×Kpd×標準全質量×等価半径をトルクとして算出する。
【0068】
加速度フィードバックフィルタ1310では、加算器1311で、(乗算部1308の出力)−(加速度フィードバックフィルタ1310の出力Tafb)を算出し、乗算部1312において、加算器1311の出力と加速度フィードバック・カットオフ周波数係数Kcf(例えば、約1/192。1/1024乃至1/64の範囲で決定する)との積を算出し、加算器1313で乗算部1312の出力と加速度フィードバックフィルタ1310の出力Tafbとの和を算出し、遅延器1314で、演算フレーム単位で遅延させて、出力Tafbを生成する。
【0069】
加速度フィードバックの経路は、加速度がそのまま逆加速度としてフィードバックされるので、検出系と実行系の遅延により、そのままでは制御系が不安定になりハンチングを起こす可能性がある、そこで、安定化ループフィルタとして一次遅れ要素のIIRフィルタである加速度フィードバックフィルタ1310が挿入されている。
【0070】
なお、速度フィードバックの経路は、車速が回生トルクひいては逆加速度比例としてフィードバックされるが、逆加速度から車速に反映される間には元々積分要素が存在するため、ループは安定となるので、特段のフィルタは設けない。
【0071】
加算器1305は、乗算部1304の出力Tvfb×Kpdと、ペダル変調関数演算部1302からのペダルオフセット回生トルクTpdoとを加算して、加算結果Tvfboを加算器1315に出力する。
【0072】
加算器1305の出力Tvfboと、加速度フィードバックフィルタ1310の出力Tafbとは、加算器1315に入力され、加算器1315は、Tvfbo+Tafb=Tcを算出する。
【0073】
次に、ペダル変調関数演算部1302について詳しく述べる。ペダル変調関数演算部1302は、最大ギア比換算ペダル速度Vphと前輪車速Vfとから、例えば
図9に示すようにペダル変調度Kpdを算出する。
図9の例では、横軸は、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]を表し、縦軸は、ペダル変調度Kpdを表す。
図9では、実線で、ペダルの回転方向を検出できない場合の例を示す。Vflは、ペダル緩和最低車速(約2km/h程度)であり、Vfが0付近になってペダル変調関数の出力値が不安定になるのを防止するために設定される。すなわち、|Vf|が2km/hまでは、Vph/Vflに応じてペダル変調度Kpdが得られる。Vph/Vfは、Vph=Vfであれば「1」となり、VphとVfとに差があれば「1」から乖離するので、VphとVfとの一致度を表すとも言える。
図9のペダル変調関数の場合には、Vph>|Vf|(最大ギア比換算ペダル速度Vphの方が前輪車速|Vf|より速い)となれば、Vph/|Vf|は1より大きくなるが、Kpdについては0となる。一方、Vph<|Vf|(前輪車速|Vf|の方が最大ギア比換算ペダル速度Vphよりも速い。すなわちペダルの回転が遅くなっている)となれば、Vph/|Vf|の値が小さくなってペダル変調度Kpdが大きくなる。そして、Vph/Vfが0、すなわちVph=0となれば、Kpdは「1」となる。なお、
図9の点線は、ペダルの回転方向を検出できる場合の例を示している。
【0074】
このように前輪車速Vfと最大ギア比換算ペダル速度Vphとの一致度に応じたペダル変調度Kpdが出力される。特に、Vph<|Vf|であれば、一致度が低いほどペダル変調度Kpdが大きい値となる。すなわち、自動回生ブレーキ目標トルクが大きくなるように作用する。例えば、前輪車速Vfが
Vfl以上でスピードがある程度ある状態において、ペダルの回転速度が落ちて来ると、前輪車速Vfからの最大ギア比換算ペダル速度Vphの乖離度に応じて自動回生ブレーキ目標トルクが大きくなる。
【0075】
また、ペダルの回転方向が検出される場合には、
図10に示すようなペダル変調関数が採用される場合もある。
図10のグラフは、
図9と同様のグラフであって、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]が正の部分は
図9と同じになっている。
【0076】
一方、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]が負の部分は、ペダルが逆回転した場合のペダル変調度Kpdの変化を表す。太線の場合には、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]が−2になるまで、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]が正の場合と同様の傾きでペダル変調度Kpdが単調に増加し、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]=−2でKpd=3となる。Vph/MAX[|Vf|,Vfl]が−2より小さい場合には、Kpd=3で維持される。このように、よりペダルを逆回転させることによって、より大きな回生ブレーキ目標トルクが設定されるようになる。
【0077】
なお、Kpdは、以下のように表される。
Kpd=Min[3,Max[0,(1−Vph/Max[
|Vf|,Vfl])]]
【0078】
また、点線で示すように、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]=0におけるKpd=1を、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]が負の値となった場合においても維持するようにしても良い。
【0079】
また、ペダルオフセット回生トルクTpdoについては、ペダルの逆回転を検出できない場合には、0にする。一方、ペダルの逆回転を検出できる場合には、例えば、
図11に示すようなペダルオフセット回生トルクのための関数を用いる。
図11の例では、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]が0以上の場合には、ペダルオフセット回生トルクTpdoは0のままであるが、ペダルが逆回転してVph/MAX[|Vf|,Vfl]が負の値になると、例えばVph/MAX[|Vf|,Vfl]=−2でTpdo=2となるまで、Vph/MAX[|Vf|,Vfl]に応じてTpdoは単調に増加する。Vph/MAX[|Vf|,Vfl]が−2より小さくなると、Tpdo=2で維持される。
【0080】
図10のペダル変調度Kpdを用いれば、下り坂でのペダル逆回転操作に応じて、意図的に回生ブレーキをかけることができるが、平地では自然加速がゼロまたは若干の負となるため、以下で述べる加速度フィードバック関数の出力もゼロとなる。そのため、ペダル変調度と加速度フィードバック関数の出力との積だけでは回生ブレーキをかけることはできない。
【0081】
そこで、ペダル変調関数演算部1302のもう1つの出力として、このようなペダルオフセット回生トルクTpdoを生成する。このようにすれば、回生ブレーキを意図的に強めるように自動回生
トルクTcをオフセットでき、平地又は上り坂であってもコースターブレーキのように回生ブレーキを使うことができるようになる。
【0082】
次に、加速度フィードバック関数算出部1306について詳しく述べる。加速度フィードバック関数の一例を
図12に示す。
図12の例では、横軸は加速度Afを表し、縦軸は出力Afbを表す。
図12の例では、加速度が閾値AfbtまではAfb=0であるが、加速度が閾値Afbt以上になると、所定の傾きで出力Afbが増加する。
【0083】
また、
図13に示すような加速度フィードバック関数も採用され得る。
図13の例では、加速度Afは、第1の閾値Afbt1まではAfb=0であるが、第1の閾値Afbt1を超えると第1の傾きでAfbは増加し、第2の閾値Afbt2を超えると第2の傾きでAfbはさらに増加する。第1の傾きより第2の傾きは大きくなっており、加速度が大きくなれば、より急激にAfbが大きくなり、結果として大きな自動回生トルクが設定され、回生ブレーキが強くなる。
【0084】
ペダル変調度Kpdは、加速度フィードバック関数の出力Afbにも乗じられるので、加速度についての回生制動力もペダル変調度に応じた値となる。
【0085】
図12の場合も
図13の場合も、最終的な加速度フィードバック係数Kafb=Afb/Afにより、加速度がフィードバックされるので、1/(1+Kafb)倍相当の加速度に抑制される。
【0086】
このような実施の形態を実施した場合における制御態様の一例を
図14に示す。
図14(a)に示すように、上り坂の区間(1)の後に、長い下り坂の区間(2)乃至(6)を走行し、その後緩やかな長い上り坂の区間(7)乃至(11)を走行する。
【0087】
図14(b)に示すように、区間(2)までペダルトルクは、ある程度の値で継続されるが、下り坂なので区間(3)ではペダルトルクが減少し、区間(4)になると0となる。ペダルトルクは、区間(10)になると上り坂なので上昇する。
【0088】
また、
図14(c)に示すように、区間(1)から区間(3)までは前輪車速Vfと最大ギア比換算ペダル速度Vphとが一致しているが、坂道で乗員がペダルを漕がなくなるので、区間(4)でVphが減少して、前輪車速Vfと乖離するようになる。
【0089】
そうすると、
図14(d)に示すように、ペダル変調度Kpdは、区間(4)で0から上昇して区間(5)で「1」に到達する。このように、滑らかにペダル変調度Kpdが増加するようになっている。
【0090】
一方、
図14(e)に示すように加速度Afは、区間(2)までは上昇するが、区間(3)では減少し、区間(4)ではある程度の値で保持される。
図14(f)に示すように加速度フィードバック関数の出力Afbも、加速度Afとほぼ同様に変化するが、区間(4)ではある程度の値で保持されており、ペダル変調度Kpdが0でないので、区間(4)では
図14(h)に示すように自動回生が開始され、滑らかに増加する。
【0091】
なお、
図14(h)で示したように、区間(4)から自動回生が開始されるので、前輪車速Vfの増加が、自動回生無しの場合に比して抑制される。
【0092】
前輪車速Vfの増加が自動回生無しの場合に比して抑制されても区間(5)で徐々に増加すると、区間(6)で閾値Vfbtを超えてしまう。前輪速度Vfが閾値Vfbtを超えると、速度フィードバック関数の出力Tvfbも0から増加し始めるので、
図14(h)に示すように自動回生が増加する。従って、
図14(c)に示すように、前輪車速Vfの増加もさらに抑制される。
図14(e)及び(f)に示すように、加速度Af及び加速度フィードバック関数の出力Afbは減少する。加速度Afが閾値以下となると、加速度フィードバック関数の出力Afbは0になる。
【0093】
区間(7)になって上り坂に移行すると、
図14(c)に示すように前輪車速Vfが減少して、速度フィードバック関数の出力Tvfbも減少し、加速度Afも0を下回るようになる。加速度フィードバック関数の出力Afbは、区間(6)で既に0となっているので、区間(7)でも0となっている。また、加速度が負なので(g)に示すように車速も減少して行き、速度フィードバック関数
の出力Tvfbも減少するため、自動回生も滑らかに減少する。
【0094】
区間(8)になると、前輪車速Vfが閾値Vfbtを下回って、速度フィードバック関数の出力Tvfbも0になる。また、自動回生も0となる。
【0095】
区間(9)になると、乗員が上り坂でペダルをこぎ始めて、
図14(c)に示すように、ペダル
回転換算車速Vphが増加すると、
図14(d)に示すように、ペダル変調度Kpd
は減少する。区間(10)になると、
図14(c)に示すように、ペダル
回転換算車速Vphが前輪車速Vfに達して、
図14(d)に示すように、ペダル変調度Kpdも0となる。ペダル
回転換算車速Vphが前輪車速Vfに達すると、
図14(b)及び(h)に示すように、ペダルトルクが増加してアシストが行われるようになる。区間(11)では、アシストが継続する。
【0096】
このように、登板や平地から微小降坂の範囲では、ペダル踏力がかからなくなった場合、まず惰性走行に入り、いきなり自動回生ブレーキに入らないため、不自然感が無い。この際、実重量には無関係である。
【0097】
また、ある程度以上の傾斜の坂を降りる場合では、ペダル踏力がかからなくなってからペダルの回転が停止するまでの間に自動回生ブレーキ力が連続的に変化しつつ発生するため、乗員は回転の度合いを自ら適度にコントロールすることにより、自動回生ブレーキの効き具合をほどよい程度にコントロールすることができる。
【0098】
また、正回転及び逆回転を検出できるペダル回転センサ107を使用した場合、
図10に示したようなペダル変調関数を定義することで、ペダルを逆回転させた時もペダルを停止した時と同じ回生制動力を継続させたり、逆回転側でより積極的に回生制動力を強めるようにすることもでき、乗員による回生制動力の制御の幅を広げることができる。
【0099】
さらに、
図11に示すように、ペダルの逆回転に応じて、
ペダルオフセット回生トルクTpdoを生成し、速度フィードバック関数
の出力とペダル変調度との積をさらにオフセットさせることにより、平地や上がり坂でも意図的に任意の回生ブレーキトルクで回生制動をかけることもできる。
【0100】
さらに、推定標準全質量×加速度などを、人力+モータの駆動力から差し引きするような制御を行わないため、標準全質量と実際の全質量からのずれにより、下り坂による加速力の推定に予期しないオフセットが付くことがない。
【0101】
本実施の形態でも実際の全車重でなく標準全車重を使用するが、標準全車重は、加速度フィードバック系の回生加速度から回生駆動力(すなわち回生トルク)への単位変換に使われるだけである。従って、たとえ標準全車重に±20%の誤差が有ったとしても、見かけの傾斜を低減化するように作用するフィードバックゲイン(=Kafb)が多少変わるだけである。すなわち、傾斜低減化効果が多少変化するだけで、回生駆動力のオフセットにはならない。そのため、登り板と下り坂の判断を間違えることも無い。
【0102】
また、結果的に下り坂加速したことを検出して制動サーボをかけるため、本来回生ブレーキが必要な場合のみに回生ブレーキがかけられるようになる。
【0103】
また、最小選択部1206により自動回生力が常に手動回生ブレーキ制動力以下となるように制限したことにより、手動回生ブレーキをかけた時に逆に制動力が落ちて加速するという逆転現象が起こらない。また、自動回生制動力が強くなり過ぎたために逆に回生電力が減少することも避けられる。
【0104】
さらに、下り坂で自動的に、また意図的に、滑らかに変化する回生ブレーキを自在にコントロールすることができ、また平地や上り坂でも意図的に回生ブレーキを自在にコントロールすることができる。
【0105】
以上まとめると、走行環境の変化および漕ぎ具合、その時の速度などに応じて、乗員の意図に反しない形で必要に応じた回生ブレーキ力が与えられる。従って、頻繁にブレーキ操作をする煩わしさが無く、できるだけ機械ブレーキでなく回生ブレーキが使われる機会を増やし、手動回生ブレーキよりも必要十分なだけのトルクに抑えるため、回生効率も高められ、より電池からの電力消費をセーブして、アシスト走行距離を伸ばすことができる。また下り坂で過大な速度に加速してしまう危険も自動的に防止する。
【0106】
なお、以上の説明では、構成要素の説明を簡単にするために、速度フィードバック関数と加速度フィードバック関数を独立したものとして扱ってきたが、速度と加速度に対して相乗効果を持つ回生トルクを出力するようにしても良い。
【0107】
さらに、ペダル変調関数と速度フィードバック関数や加速度フィードバック関数との関係も、単純に積をとるような構成で説明したが、ペダル変調関数、速度フィードバック関数及び加速度フィードバック関数の3入力の総合関数として、滑らかで且つ効果的な関数を設定することもできる。
【0108】
そのような複雑な関数は、複雑な数式を定義してリアルタイム演算しても良く、メモリ10211等に予め三次元入力に対する二次元出力の関数を表すテーブルとして格納しておき、それをリアルタイムで参照し、内挿演算することによって算出することもできる。
【0109】
また、上で述べた例では、ペダル変調度が加速度フィードバック関数の出力と速度フィードバック関数の出力に乗算される形で、ペダル回転に応じて回生ブレーキ力を制御していたが、ペダル回転が高くなるにつれて加速度フィードバック関数の閾値Afbtや速度フィードバック関数の閾値Vfbtを上げる方向に制御するようにしても良い。また、このような閾値制御と乗算を併用するようにしたり、加速度フィードバック関数と速度フィードバック関数にそれぞれ違う方法を採用しても良い。
【0110】
[実施の形態2]
自動回生目標トルク演算部1204については、
図7に示した構成に代わって、
図15に示すような構成であっても良い。
【0111】
本実施の形態に係る自動回生目標トルク演算部1204は、車速換算部1301と、ペダル変調関数演算部1302と、第1速度フィードバック関数算出部1303と、乗算部1304と、加算器1305と、第1加速度フィードバック関数算出部1306と、乗算部1307と、乗算部1308と、加速度フィードバックフィルタ1310と、加算器1315と、第2速度フィードバック関数算出部1320と、第2加速度フィードバック関数算出部1321と、第1スルーレート制限部1322と、第2スルーレート制限部1323と、加算器1326と、回生割増制御部1324と、乗算部1325とを有する。
【0112】
また、加速度フィードバックフィルタ1310は、例えば、1次IIR(Infinite impulse response)−LPF(Low Pass Filter)であって、加算器1311と、乗算部1312と、加算器1313と、遅延器(1/Zf)1314とを有する。
【0113】
同じ参照符号が付された構成要素については、同じ機能を有する。すなわち、第1速度フィードバック関数算出部1303は、第1の実施の形態に係る速度フィードバック関数算出部1303と同様の機能を有する。また、第1加速度フィードバック関数算出部1306は、第1の実施の形態に係る加速度フィードバック関数算出部1306と同様の機能を有する。
【0114】
図7に示した第1の実施の形態に係る自動回生目標トルク演算部1204との差には、(A)第2速度フィードバック関数算出部1320を導入することで、
ペダル変調度Kpd2とは無関係に、速度に応じたフィードバックを行って、加算器1305で加算する点がある。
【0115】
例えば、第2速度フィードバック関数については
図16を用いて説明する。
図16で示すように、横軸は速度Vfを表し、縦軸は速度フィードバック関数の出力値を表す。第1速度フィードバック関数は、閾値Vfbt1を超えると第1の傾きで線形に増加するが、第2速度フィードバック関数は、閾値Vfbt1より大きい閾値Vfbt2を超えると第2の傾きで線形に増加する。第2の傾きは第1の傾きより大きくするのが望ましい。このように、閾値Vfbt2より大きい速度が出ている場合には、安全面をも考慮して回生ブレーキが大きく効くようにする。
【0116】
さらに、
図7に示した第1の実施の形態に係る自動回生目標トルク演算部1204との差には、(B)第2加速度フィードバック関数算出部1321を導入することで、ペダル変調度Kpd2とは無関係に、加速度に応じたフィードバックを行って、加算器1326で乗算部1307の出力に加算する点もある。
【0117】
第2加速度フィードバック関数算出部1321については
図17を用いて説明する。
図17で示すように、横軸は加速度Afを表し、縦軸は加速度フィードバック関数の出力値を表す。第1加速度フィードバック関数は、閾値Afbt1を超えると第1の傾きで線形に増加するが、第2加速度フィードバック関数は、閾値Afbt1より大きい閾値Afbt2を超えると第2の傾きで線形に増加する。第2の傾きは第1の傾きより大きくするのが望ましい。このように、閾値Afbt2より大きい加速度になっている場合には、安全面をも考慮して回生ブレーキが大きく効くようにする。
【0118】
このように、本実施の形態では、乗員の意図により速度や加速度の抑制が制御される成分とは別に、より高い加速度やより高い速度の時に、乗員の意図にかかわらずそれらの抑制が優先される。よって、非常に高い自然加速度、すなわち急な下り坂や高い速度の時に安全速度維持が優先される。
【0119】
また、
図7に示した第1の実施の形態に係る自動回生目標トルク演算部1204との差には、(C)ペダル変調関数演算部1302の出力であるペダル変調度Kpd1が、第1スルーレート制限部1322に入力され、ペダルオフセット回生トルクTpdo1が、第2スルーレート制限部1323に入力される点もある。
【0120】
ペダル速度の変化により、自動回生ブレーキ力を連続的に変化させることになっているが、ペダルの回転を故意に急停止した時などは突然回生ブレーキがかかる。この回生ブレーキのショックを防止するために、ペダル変調度及びペダルオフセット回生トルクのスルーレート制限が設定されている。
【0121】
これらのスルーレート制限部には、共に漕ぎ始めた時にはその邪魔をせず比較的直ぐにブレーキ解除できるように、増加方向は遅く減少方向は早いという非対称スルーレート制限特性を持たせる。
【0122】
さらに、
図7に示した第1の実施の形態に係る自動回生目標トルク演算部1204との差には、(D)回生割増制御部1324を導入して、加算器1315の出力に対して回生割増率を乗算部1325で乗算する点もある。
【0123】
回生割増制御部1324
において、例えば
図18に示すように、AD入力部1029から入力された電池電圧に応じて、第1割増関数算出部1401が、第1割増関数で割増率を算出する。
【0124】
第1割増関数の一例を
図19に示す。
図19において横軸は電池電圧を表し、縦軸は割増率を表す。この例では、満充電時には電池電圧はVref3(=30V)となっており、電力供給が行われると徐々に電池電圧は低下して低残量基準電圧Vref2(=22V)になる。この低残量基準電圧Vref2までは、割増率は「1」であり、回生量の割増は行われない。電池電圧がVref2を下回ると、それに応じて割増率が、例えば21Vで割増率が「2」になるまで線形に増加する。なお、21V以下では割増率は「2」で固定にしているが、終止電圧Vref1(=20V)になると放電は停止されるので、割増率もそのVref1までが有効である。
【0125】
例えば回生割増制御を行った場合における電池残量の時間変化の一例を
図20に示す。
図20の例では、縦軸は電池残量(%)を表し、横軸は使用時間を表す。太線は電池残量の時間変化を表しており、電池残量20%は、低残量基準電圧Vref2相当であるものとする。
図20の例では、1回目の充電サイクルでは、電池残量が20%になる前に外部電源からの強制充電が行われており回生割増の影響はない。2回目及び3回目の充電サイクルでは、電池残量が20%を下回る状態まで充電が行われないが、電池残量が20%を下回る状態では回生割増が行われるので、回生割増が行われなかった場合に比して電池残量が0%になってしまうまでの時間が長くなっている。このようにして航続距離を延ばすことができる。
【0126】
また、回生割増制御部1324は、例えば
図21に示すような構成を有するようにしても良い。
【0127】
回生割増制御部1324は、加算器1410と、非対称ゲイン乗算部1411と、加算器1412と、上下限クリップ部1413と、遅延器(1/Zc)1414と、第2割増関数算出部1415とを有する。
【0128】
加算器1410は、外部電源からの強制充電毎に、低残量基準電圧Vref2−電池電圧を算出する。非対称ゲイン乗算部1411は、例えば加算器1410の出力が正であれば0.1、負であれば0.01といったように非対称のゲインを乗ずる。すなわち、低残量基準電圧Vref2−電池電圧が正であれば、低残量基準電圧Vref2よりも電池電圧が低くなって、電池残量不足となっているので、大きなゲインを乗じている。
【0129】
加算器1412と上下限クリップ部1413と遅延器1414とは、長期累積ループを構成しており、外部電源からの強制充電毎に1サンプル累積するようなループである。加算器1412は、遅延器1414の出力である累積補正値VLSと、非対称ゲイン乗算
部1411の出力とを加算する。上下限クリップ部1413は、加算器1412の出力を例えば上限2V、下限0Vにクリップする。
【0130】
第2割増関数算出部1415は、電池電圧と累積補正値VLSとを入力として
図22に示すような割増関数の値を算出する。より具体的には、
図22に示すような割増率が算出される。
図22の例では、VLS=0(V・サンプル)であれば、
図19に示すようなカーブを描くが、VLS=1(V・サンプル)であれば、
図22におけるVLS=1(V・サンプル)のカーブを描くようになる。すなわち、電池電圧がVref3からVref2までは回生割増率が1.5に設定され、電池電圧がVref2以下になると、電池電圧=21Vにおいて回生割増率が2になるまで線形に回生割増率が増加するカーブである。さらに、VLS=2(V・サンプル)であれば、常に回生割増率が2に設定される。他のVLSの値については、内挿することで得られる。
【0131】
このような構成を採用した場合における電池残量の時間変化の一例を
図23に示す。
図23の例では、低残量基準電圧相当の電池残量20%を下回るまで外部電源からの強制充電をしないようなことを繰り返すと、徐々にその分累積補正値VLSが上昇して行くため、回生割増率が早期に上昇するようになる。そうすると、電池残量の減りが少なくなり、同じような時間間隔で外部電源からの強制充電を行う場合には、電池残量20%程度で外部電源からの充電が行われることとなる。
【0132】
このようにすれば、VLSが大きい場合、すなわち回生割増無しでは慢性的に電池残量が少なくなるまで外部電源からの強制充電が行われない場合には、満充電の時点から回生割増率が上げられ、回生強度を増すことにより、最初から平均電力消費率を抑えて、不足が起こりにくくなる方向に制御される。
【0133】
なお、上で述べた例では、回生割増率を乗ずる例を示したが、回生割増率に応じた値を加算するような方法や、加算と乗算を両方適用するような方法を用いるようにしても良い。
【0134】
以上本発明の実施の形態について説明したが、これらは一例に過ぎない。従って、上記の主旨に沿った形で様々な変更が可能である。
【0135】
上で述べた機能を実現する具体的な演算手法は複数存在しており、いずれを採用しても良い。
【0136】
また、演算部1021の一部については専用の回路で実現される場合もあれば、マイクロプロセッサがプログラムを実行することで上記のような機能が実現される場合もある。
【0137】
さらに、前輪車速Vfは、上で述べた例では前輪で測定する車速が
車体速度を示しているため用いただけであり、前輪でなくても
車体速度が測定できればそれを用いるようにしても良い。また、上では最大ギア比換算ペダル速度を用いているが、ギア無しの場合もあるので、その場合にはギア比1として換算されるペダル速度が用いられる。その他、ペダル速度を算出する方法は、何でも良い。さらに、上では一致度を用いたが、車体速度とペダル回転換算速度との関係を表す他の値を用いるようにしても良い。
【0138】
さらに、上で述べた実施の形態では、前輪車速Vfに相当するデューティー比と、ペダルトルクや回生トルク等に応じたデューティー比とを加算してモータ駆動タイミング生成部1026へPWMコードを出力するような構成であったが、
図24に示すような電流フィードバック型トルク駆動方式にも本発明を適用できる。
図24において
図3と同様の構成要素については同じ参照符号が付与されている。すなわち、出力制御部1212までは同様である。出力制御部1212の出力は、例えばFETブリッジ1030を流れるモータ電流をトルク換算部1601で変換することで得られるトルクと共に加算器1602に入力され、出力制御部1212の出力−トルク換算部1601か
ら生成すべきトルクを算出する。そして、加算器1602からの出力は、トルクサーボ用のゲインと応答調整フィルタであるループゲイン付きループフィルタ1603に入力されて処理され、PWMコード生成部1218で、ループフィルタ1603の出力に対して基準電圧(例えば24V)/バッテリ電圧を乗じてPWMコードを生成する。PWMコードは、モータ駆動タイミング生成部1026に出力される。