特許第6409005号(P6409005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409005光電池モジュールを封止するための流動性ポリマー組成物の使用
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  • 特許6409005-光電池モジュールを封止するための流動性ポリマー組成物の使用 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409005
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】光電池モジュールを封止するための流動性ポリマー組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20181004BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20181004BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20181004BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20181004BHJP
【FI】
   C08L23/08
   C08K5/14
   C09K3/10 Z
   H01L31/04 560
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-555780(P2015-555780)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公表番号】特表2016-508533(P2016-508533A)
(43)【公表日】2016年3月22日
(86)【国際出願番号】FR2014050207
(87)【国際公開番号】WO2014122392
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2017年2月3日
(31)【優先権主張番号】1351014
(32)【優先日】2013年2月6日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ドヴィスム, サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】コルフィアス−ズッカッリ, カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】カミナード, ソフィ
(72)【発明者】
【氏名】ラウリシュッセ, クリスチャン
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−219512(JP,A)
【文献】 特開2014−125562(JP,A)
【文献】 特開2011−046778(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/140897(WO,A1)
【文献】 特開2014−232792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00−23/36
C08K 3/00− 3/40
C08K 5/00− 5/59
H01L 31/00−31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物の光電池モジュールでの封止材としての使用であって、前記ポリマー組成物は、エチレンモノマーとカルボン酸ビニルエステルコモノマーとを含むコポリマーを含み、前記カルボン酸ビニルエステルコモノマーは、前記コポリマーの全重量に対して5重量%と50重量%との間に相当し、前記ポリマー組成物は、120℃で測定した、10000mPa.sと25000mPa.sとの間のブルックフィールド粘度を有する、使用。
【請求項2】
前記カルボン酸ビニルエステルコモノマーが、酢酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルエステルから成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記カルボン酸ビニルエステルコモノマーが、酢酸ビニルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記コポリマーが、前記コポリマーの全重量に対して10重量%から40重量%の前記カルボン酸ビニルエステルコモノマーを含むことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記コポリマーが、前記コポリマーの全重量に対して15重量%から35重量%の前記カルボン酸ビニルエステルコモノマーを含むことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記コポリマーがエチレンモノマーとカルボン酸ビニルエステルコモノマーとから成ることを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記コポリマーが前記ポリマー組成物の全重量に対して92%と99.9%との間に相当することを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記コポリマーが前記ポリマー組成物の全重量に対して97.5%と99.5%との間に相当することを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が架橋剤も含み、前記架橋剤が前記ポリマー組成物の全重量に対して合計で0.1重量%と5重量%との間に相当することを特徴とする請求項1からの何れか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が架橋剤も含み、前記架橋剤が前記ポリマー組成物の全重量に対して合計で0.5重量%と2.5重量%との間に相当することを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記ポリマー組成物が架橋剤も含み、前記架橋剤が前記ポリマー組成物の全重量に対して合計で0.7重量%と2重量%との間に相当することを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記ポリマー組成物が、120℃で測定した、12000mPa.sと23000mPa.sとの間のブルックフィールド粘度を有することを特徴とする請求項1から11の何れか一項に記載の使用。
【請求項13】
光電池モジュールを封止する方法であって、
a)エチレンモノマーとカルボン酸ビニルエステルコモノマーとを含むコポリマーで、前記カルボン酸ビニルエステルコモノマーは前記コポリマーの全重量に対して5重量%と50重量%との間に相当する、コポリマー、及び
架橋剤を含むポリマー組成物であって、
120℃で測定した、10000mPa.sと25000mPa.sとの間のブルックフィールド粘度を有するポリマー組成物を得る工程、
b)保護バックシート、前記ポリマー組成物の第1の層、光電池セルの組立体、前記ポリマー組成物の第2の層、及び保護フロントシートを順に含むスタックを形成する工程、次いで
c)前記組成物を架橋させるために前記架橋剤に適した活性化処理を施す工程
を含む方法。
【請求項14】
前記架橋剤が熱的に活性化される架橋剤であり、工程c)が、前記ポリマー組成物を架橋するための前記剤の活性化温度を超える温度で前記スタックを熱処理することを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
連続して実行されることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電池モジュールの製造の分野に属する。より具体的には、本発明は、光電池モジュールを封止するための流動性ポリマー組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
光電池は、化石燃料とは異なり温室効果ガスを放出しないという利点を有する、完全に発展したエネルギー生産技法であり、光電池の燃料、即ち光は無尽蔵である。環境に優しいことに加えて光電池は実用的である。なぜならば、光電池モジュールにより、孤立した住居又は電気回路に接続することができないデバイス、例えば携帯電話、券売機、バス待合所等に電力を供給することが可能となるからである。
【0003】
光電池モジュール、換言するとソーラーパネルは、太陽エネルギーを直流へと変換することを可能とする発電機である。光電池モジュールは一般的に、ケイ素等の半導体物質をベースとする光電池セルの組立体から成り、光電池セルは直列で及び/又は並列で互いに電気的に接続されている。
【0004】
この光電池セルの組立体を、用語「封止材」と通常は示される物質中に封止することが知られている。封止材は一般的に上部及び下部を含み、これら2つの部品の間で光電池セルがブロック化されている。光電池モジュールを完成させるために、封止材の各面に対向して保護フロントシート及び保護バックシートが配置されている。封止材の役割は、セルを電気的に絶縁した状態で並びにセルを外部環境から、特に水及び空気から保護した状態でセルを連結し続けることにある。
【0005】
封止材は一般的に、日本特許出願第19870174967号に記載されているようにエチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマーをベースとしており、現在最も広く使用されている技術的解決策を構成する。封止材として使用されているポリマー組成物は、厚さが典型的には50μmと20mmとの間であるフィルム状である。このフィルムは単層であることができる、又は多層であることができる。
【0006】
光電池モジュールを製造するための従来の方法では、セルを封止するためにいくつかの工程が必要である。
【0007】
一番初めの工程では、共重合により、典型的にはラジカル共重合により、封止材として使用するポリマー組成物を調製する。
【0008】
次いで、このポリマー組成物を、熱可塑性材料を混合するための既知の技法、例えば押し出し又は混和を使用して添加剤と混合する。ポリマー組成物に添加する従来の添加剤は、ポリマー組成物を架橋させるための、熱により活性化される過酸化物、接着性を改善するためのシラン、及びUV耐性を改善するための抗UV剤である。
【0009】
次いで、得た混合物を、既知の技術、例えばプレス成形、インフレーションフィルム押し出し、押し出し−積層、押し出し−コーティング、流延フィルム押し出し、及びカレンダー成形を使用してフィルム状に形成する。
【0010】
次いで、光電池セルをポリマーフィルム中に封止する。典型的には、下記のものを順に組み立てる。保護バックシート、封止ポリマーフィルムの第1の層、光電池セル、封止ポリマーフィルムの第2の層、そして最後に保護フロントシート。これらの層を、熱処理を併用するプレス成形技法、例えば高温プレス成形、真空プレス成形、及び高温積層により組み立てる。温度がポリマー組成物の融点に達すると、ポリマー組成物が光電池セルの組立体の全周を流れる。次いで、温度が架橋剤の活性化温度(典型的には約150℃)に達するとポリマー組成物が架橋し、それにより非常に強く及び不可逆的に結合した小型の組立体を得ることが可能となる。
【0011】
ポリマー組成物のフィルムを使用する光電池モジュールの製造は、例えば国際特許出願公開第2010/067040号に記載されている。光電池モジュールの製造に関するその他の要素を、例えば刊行物「Handbook ofPhotovoltaic Science and Engineering」, Wiley, 2003に見出すことができる。
【0012】
最も広く使用されている製造方法を現在構成する、この光電池モジュールを製造する方法により、種々の層の良好な接着、種々の層の小さい層間剥離、摩耗及び衝撃に対する耐性、水及び大気酸素に対する不浸透性等の満足のいく特性を有する光電池モジュールを得ることが可能となる。しかしながら、この方法は、連続する少なくとも4つの工程(共重合、添加剤との混合、フィルム状の形成、及び熱処理を伴うプレス成形)を必要とするという主な欠点を有する。これらの工程はそれぞれ、特定の材料を必要とする。従って、この調製方法全体は長くて費用が嵩む。さらに、熱処理を伴う最終のプレス成形工程は、バッチでのみ実行することができる処理工程(バッチプロセス)である。現時点では、当業者は光電池モジュールの連続製造を可能にする方法を利用可能ではない。
【0013】
従って、より短い、より少ない工程を含む、より早く実行される、及び安価である光電池モジュールの製造方法を提供することが現在必要とされている。さらに、光電池モジュールの連続製造方法を提供することも必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本発明の主題は、ポリマー組成物の光電池モジュールでの封止材としての使用であって、前記ポリマー組成物は、エチレンモノマーとカルボン酸ビニルエステルコモノマーとを含むコポリマーを含み、カルボン酸ビニルエステルコモノマーはコポリマーの全重量に対して5重量%と50重量%との間に相当し、ポリマー組成物は、120℃で測定した、10000mPa.sと25000mPa.sとの間のブルックフィールド粘度を有する、使用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】例示する組成物の時間t(秒)に応じた弾性率G’(Pa)の変化の曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書全体を通して、語句「の間」は言及した限界値を含むと理解しなくてはならないことを明記する。
【0017】
本発明に従って使用するポリマー組成物はコポリマーを含む。前記コポリマーは、少なくとも1種のエチレンモノマーと、少なくとも1種のカルボン酸ビニルエステルコモノマーとを含む。コポリマーは、その他のコモノマー(1種又は複数種)を含んでいてもよい。
【0018】
好ましくは、カルボン酸ビニルエステルコモノマーを、酢酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル(V2EH)、オクタン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニルエステルから成る群から選択することができる。これらのコモノマーの内、酢酸ビニルが好ましい。従って、この場合には、コポリマーはエチレン/酢酸ビニルコポリマーである。
【0019】
コポリマーは、該コポリマーの全重量に対して5重量%から50重量%の、優先的には10重量%から40%の、より優先的には15重量%から35重量%のカルボン酸ビニルエステルコモノマーを含む。
【0020】
さらに、コポリマーは、該コポリマーの全重量に対して50重量%から95重量%の、優先的には60重量%から90重量%の、より優先的には65重量%から85重量%のエチレンモノマーを含むことができる。
【0021】
コポリマー中に存在する種々のコモノマーの量を、ISO規格8985(1998)を使用する赤外分光法により測定することができる。
【0022】
優先的には、コポリマーはエチレンモノマーとカルボン酸ビニルエステルコモノマーとから成る。しかしながら、コポリマーが、アクリル酸アルキル及びアクリル酸ヒドロキシアルキル、並びにメタクリル酸アルキル及びメタクリル酸ヒドロキシアルキル、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸2-エチルへキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-ペンチル、アクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ネオオクチル、メタクリル酸ネオオクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸ネオノニル、メタクリル酸ネオノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸ネオデシル、メタクリル酸ネオデシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸パルミチル、メタクリル酸パルミチル、アクリル酸ステアリル、又はメタクリル酸ステアリルから選択することができる1種又は複数種のその他のコモノマーを含むことも可能である。1種又は複数種のその他のコモノマーの全重量は、コポリマーの全重量に対して0%と20%との間であることができ、優先的には5%と15%との間であることができ、より優先的には5%と10%との間であることができる。
【0023】
本発明に係るコポリマーを、下記に示す方法に従う重合により得ることができる。
【0024】
高圧ラジカル重合法によってコポリマーを調製することができる。例えば撹拌型の又はチューブ型のオートクレーブ反応器中で重合を実行することができる。この反応器内の圧力は1000barと3000barとの間であることができ、優先的には1500barと2500barとの間であることができる。反応の開始中の温度は100℃と300℃との間であることができ、有利には100℃と170℃の間であることができる。最高の反応温度は180℃と300℃との間であることができ、好ましくは200℃と280℃との間であることができる。
【0025】
エチレンモノマー、カルボン酸ビニルエステルコモノマー、及び高圧での重合用の開始剤をオートクレーブ中に又はチューブ型反応器中に初期温度で導入することにより、共重合を実行することができる。チューブ型反応器を使用する場合には、エチレンモノマー、カルボン酸ビニルエステルコモノマー、及び重合開始剤の混合物の導入をチューブ型反応器の入り口で好ましくは実行するが、チューブ型反応器に沿って位置する少なくとも1箇所のその他の注入点で実行してもよい。この時は用語「多点注入技法(multipoint injectiontechnique)」を使用する。
【0026】
導入するコモノマーの量を、コポリマー中における所望の最終含有量に従って調整する。
【0027】
開始剤の量は、導入するモノマーに対して10重量ppmと1000重量ppmとの間の範囲であることでき、優先的には10ppmと800ppmとの間の範囲であることができ、より優先的には10ppmと500ppmとの間の範囲であることができる。
【0028】
この反応条件下でフリーラジカルを放出する全ての有機化合物及び無機化合物を重合開始剤として使用することができる。好ましくは、少なくとも1個の過酸化物基を含む化合物又は該化合物の混合物を使用することができる。重合開始剤を、ペルオキシエステル、ジアシル、過炭酸塩、ペルオキシケタール、ジアルキル、ヒドロ過酸化物、及びこれらの混合物から成る群から優先的に選択することができる。有利には、重合開始剤をtert-ブチルペルオキシエステル(このtert-ブチルペルオキシエステルのエステル基は5から10個の炭素原子を含有する)から成る群、例えばペルオキシネオデカン酸tert-ブチル、ペルオキシ-2-エチルヘキサン酸tert-ブチル、ペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサン酸tert-ブチル、及びペルオキシピバル酸tert-ブチルから成る群から選択することができる、又は重合開始剤は過酸化ジ-tert-ブチルであることができる。これらの過酸化物は、本明細書に記載の共重合反応に特に適している。
【0029】
モノマー及び開始剤に加えて、モノマーの全量に対して0重量%と4重量%との間の割合で、優先的には0.1重量%と3重量%との間の割合で、より優先的には0.3重量%と0.6重量%との間の割合で移動剤を有利に使用することができる。この移動剤により、形成されるコポリマーの分子量を制御することが可能となる。この移動剤を、脂肪族ケトン又はアルデヒドから選択することができる。この移動剤は、プロパンアルデヒド及びMEK(メチルエチルケトン)から好ましくは選択される。
【0030】
一般に、120℃で10000から25000mPa.sの所望のブルックフィールド粘度を有するコポリマーを得るように開始剤及び移動剤の量を調整し、このブルックフィールド粘度は、6000と12000との間の数平均分子量(Mn)及び20000g/molと60000g/molとの間の重量平均分子量(Mw)に相当することができる。
【0031】
共重合の終了時に、移動剤の700ppm未満の残量が最終コポリマー中に含有されていてもよい。開始剤においては完全に分解されている。
【0032】
本発明に従って使用するポリマー組成物は、上記に記載のコポリマーを含む。コポリマーは、ポリマー組成物の全重量に対して92%と99.9%との間に相当することができ、優先的には97.5%と99.5%との間に相当することができる。さらに、ポリマー組成物はその他の化合物を含むことができ、その他の化合物は用語「添加剤」で一般に示される。この添加剤は、ポリマー組成物の全重量に対して合計で0.1%と10%との間に相当することができ、優先的には0.5%と3.5%との間に相当することができる。
【0033】
ポリマー組成物に含まれ得る添加剤(1種又は複数種)を、封止材として機能するフィルムの形態のポリマー組成物中に存在する添加剤として当業者に既知であるものから選択することができる。
【0034】
特に、本発明に係るポリマー組成物は架橋剤を含むことができる。架橋剤の機能は、ポリマー組成物の光電池セル上への堆積後に、該ポリマー組成物中に存在するコポリマーを架橋させることである。架橋により、封止材の熱機械的特性を改善することが可能となり、特に高温での熱機械的特性を改善することが可能となる。架橋剤を、熱により活性化される架橋剤、放射線照射により活性化される架橋剤等から選択することができる。好ましくは、架橋剤は熱により活性化される架橋剤であり、優先的には過酸化物である。有利には、架橋剤は、モノペルオキシ炭酸O,O-tert-ブチルO-(2-エチルへキシル)、ペルオキシ炭酸O-(2-エチルへキシル)O,O-tert-ペンチル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2-エチルペルオキシ-ヘキサン酸tert-ブチル、及び1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチル-シクロヘキサンから成る群から選択される。
【0035】
架橋剤は、ポリマー組成物の全重量に対して合計で0.1重量%と5重量%との間に相当することができ、優先的には0.5重量%と2.5重量%との間に相当することができ、より優先的には0.7重量%と2重量%との間に相当することができる。
【0036】
さらに、本発明に係るポリマー組成物は共架橋剤を含むことができる。共架橋剤により、架橋速度を速くすること及び/又は達成される架橋の程度を最適化することが有利に可能となる。共架橋剤を、少なくとも2個のビニル官能基を有する多官能性モノマーから特に選択することができる。例えばトリアリルイソシアヌレート又はトリアリルシアネートを挙げることができる。
【0037】
さらに、本発明に係るポリマー組成物はカップリング剤を含むことができる。カップリング剤により、ポリマー組成物と光電池モジュールのその他の要素との間の接着性を改善することが有利に可能となる。カップリング剤を有機チタネート又はシランから特に選択することができる。有利には、カップリング剤は、シランから成る群から選択され、例えばメタクリル酸3-トリメトキシシリルプロピル又はビニルトリメトキシシランから選択される。
【0038】
さらに、本発明に係るポリマー組成物はUV吸収剤を含むことができる。この薬剤は、UV放射線により生じる種々の構成要素への損傷を防止することにより、光電池モジュールの寿命の延ばすことが知られている。UV吸収剤をベンゾトリアゾール又はベンゾフェノンから特に選択することができる。
【0039】
本発明に係るポリマー組成物は、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)及び/又は抗酸化剤を含むこともできる。これらの添加剤の役割も光電池モジュールの寿命を延ばすことである。これらHALS及び抗酸化剤の抗酸化特性によって、これらは、UV放射線又は熱への曝露により生成され得るラジカルの損傷作用に対してモジュールの種々の構成要素を保護する。HALSを、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4−ピペリジル)、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]]、又はビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートから特に選択することができる。抗酸化剤を、テトラキス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)プロピオン酸ペンタエリスリチル、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸オクタデシル、又はトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトから特に選択することができる。
【0040】
これら種々の添加剤の添加を、坩堝若しくは内部ミキサーの使用等の当業者に既知の方法により又は添加剤が液状の場合には含浸により実行することができる。
【0041】
本発明に従って使用するポリマー組成物は、120℃で測定した、10000mPa.sと25000mPa.sとの間の、優先的には12000mPa.sと23000mPa.sとの間のブルックフィールド粘度を有する。
【0042】
粘度測定をブルックフィールド粘度計で実行する。基準温度は120℃を採用する。具体的には、測定を下記の手順に従って実行することができる。
【0043】
使用する装置は、ブルックフィールドRV−DVIIIレオメーターである。円錐形の端部を備える円筒形状のスピンドル(調べる粘度範囲に応じてタイプSC4−27又はSC4−29)を試料中に浸漬させ、試料の温度を120℃に調整する。スピンドルを、分当たり20回転の速度で回転させる。スピンドルの回転に対して試料により付加される抵抗を測定し、これにより前記試料の粘度を算出することが可能となる。
【0044】
本発明に係るポリマー組成物に特有の物理化学特性により、本発明に係るポリマー組成物を、完全に新規な方法で光電池モジュールの封止材として使用することができる。
【0045】
実際には、ポリマー組成物の比較的低い粘度により、ポリマー組成物を流延させて光電池セルの組立体に直接塗布することができる。従って、ポリマー組成物を使用する前に、封止材として機能するポリマー組成物をフィルム状に形成する必要はもはやない。
【0046】
従って、本発明は、1個又は複数個の光電池セルが上記に記載のポリマー組成物で封止されている光電池モジュールを製造する方法にも関する。本発明の主題は、光電池モジュールを封止する特定の方法であって、
a)下記を含むポリマー組成物であり、
−エチレンモノマーとカルボン酸ビニルエステルコモノマーとを含むコポリマーで、カルボン酸ビニルエステルコモノマーはコポリマーの全重量に対して5重量%と50重量%との間に相当する、コポリマー、及び
−架橋剤、
120℃で測定した、10000mPa.sと25000mPa.sとの間のブルックフィールド粘度を有するポリマー組成物を得る工程、
b)保護バックシート、ポリマー組成物の第1の層、光電池セルの組立体、ポリマー組成物の第2の層、及び保護フロントシートを順に含むスタックを形成する工程、次いで、
c)架橋剤に適した活性化処理を施して組成物を架橋させる工程、
を含む方法でもある。
【0047】
ポリマー組成物を得る工程は、好適なコポリマーを合成する又は該コポリマーを最終的な形態で直接製造する工程、次いでコポリマーと架橋剤及び任意選択的にその他の添加剤とを混合する工程を含むことができる。これら種々の工程は、及び使用する組成物も、本明細書で上記に記載した通りであることができる。また、コポリマーと熱により活性化される架橋剤とを既に混合した形態で含むポリマー組成物を製造することも可能である。
【0048】
スタックの形成工程中に、本発明に係るポリマー組成物の層を、予め形成することなく、当業者に既知の任意の方法により堆積させることができる。溶融状態のポリマー組成物の比較的低い粘度により、例えばロールを用いる塗料分野で又は例えばバー塗布装置を用いるコーティングによるホットメルト分野で特に既知の技法を使用することが可能となる。
【0049】
スタックが形成されると活性化剤に適した活性化処理を実行し、その結果、ポリマー組成物が架橋される。例えば、熱により活性化される架橋剤の場合には、この工程は、ポリマー組成物を架橋させるために架橋剤の活性化温度を超える温度でスタックを熱処理することであることができる。
【0050】
エチレン/酢酸ビニルコポリマーを含み、流動性であるために十分に低いブルックフィールド粘度を有するポリマー組成物は、Arkema社から販売されている名称Evazole(登録商標)で既に現在知られている。この組成物は、燃料の添加剤として従来使用されている。
【0051】
しかしながら、本発明者らは、ポリマー組成物の粘度が下がるに伴い、ポリマー組成物がもはや架橋可能ではない臨界粘度未満に達するまでコポリマーを満足のいくように架橋させることが困難になることを発見している。そのため、Evazole(登録商標)製品群は光電池の封止用途に適用可能ではない。
【0052】
従って、本発明で説明しているポリマー組成物が該組成物を塗料として直接塗布することができるような粘度と良好な架橋性との両方を有することは全く驚くことである。
【0053】
上記に記載の方法により得られる光電池モジュールは、少なくとも封止材フィルムを使用する従来の封止方法により得られるモジュールと同程度に満足のいく特性を有する。特に、本発明の方法に従って得られるモジュールの種々の層は、それらの間の良好な接着性を有しており、このモジュールには層間剥離の問題が見られないことが注目されている。
【0054】
本発明の主題であるこの方法を連続して有利に実行することができる。実際には、スタックの形成工程及び熱処理工程を、従来の方法に従って連続して実行することができる。
【0055】
本発明のその他の目的、特徴及び利点を下記の例示的な実施態様から明らかにすることができ、この実施態様は純粋に説明を目的として示されており決して限定しておらず、例示する組成物の時間t(秒)に応じた弾性率G’(Pa)の変化の曲線を示すグラフである、添付した図1を参照する。
【実施例】
【0056】
1)コポリマーの合成/ブルックフィールド粘度のキャラクタリゼーション:
実施例1及び2では、下記の試薬から2種のコポリマーを合成した。
【0057】
【0058】
10000mPa.s未満のブルックフィールド粘度を得ることを可能とする条件下で別のコポリマーを調製した。これを比較例(counter example)1とする。
【0059】
【0060】
最後に、比較例2はArkema社から供給された市販グレードのEvatane(登録商標)28800であり、このブルックフィールド粘度は25000mPa.sよりも高い。酢酸ビニルコモノマーの含有量は28重量%である。
【0061】
これらのコポリマーを、下記の表に記載の条件下においてブルックフィールドレオメーターでキャラクタライズした。
【0062】
【0063】
このようにして測定したブルックフィールド粘度を下記の表に示す。
【0064】
【0065】
2)配合物の調製/添加:
コポリマーと、メタクリル酸3-トリメトキシシリルプロピル(カップリング剤)及びモノペルオキシ炭酸O,O-tert-ブチルO-(2-エチルへキシル)(架橋剤)との添加(additivation)を、80℃に調節した坩堝中において加熱混合により実行し、250rpmの速度で撹拌した。
【0066】
添加剤の含有量は下記の表に記載した通りである。
【0067】
【0068】
3)架橋性の評価:
次いで、得た配合物を、平行プレート動的レオメトリー(parallel−plate dynamic rheometry)により分析した。従ったプロトコルは、下記の表に記載した通りである。
【0069】
【0070】
種々の配合物に関して得た曲線を図1に示す。
【0071】
これらの曲線に基づいて、架橋後の150℃での弾性率G’の値を得た。これらを下記の表に示す。
【0072】
【0073】
4)封止材の使用
バー塗布装置を用いたコーティングにより配合物を使用した。配合物を100℃の温度まで加熱し、次いでガラス基板上に流延した。次いで、バー塗布装置により、各配合物を均一な厚さの層に広げることができた。
【0074】
実施例1及び2の場合には、並びに比較例1の場合にもコーティングに問題は起きず、均一な層を得ることができた。しかしながら、比較例1の過度に低い粘度を考慮に入れると、比較例1は冷却後に機械的強度を示さず、架橋工程後であっても機械的強度を示さない。実施例1及び2では、冷却後の良好な機械的強度と併せて、良好な適用性が示された。最後に、比較例2では、その相対的に高い粘度を考慮に入れると、このコーティング方法よる塗布が可能ではなかった。
図1