特許第6409016号(P6409016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409016ラテックス免疫凝集法における測定誤差低減方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409016
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ラテックス免疫凝集法における測定誤差低減方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20181004BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   G01N33/543 581J
   G01N33/543 581B
   G01N33/531 B
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-71275(P2016-71275)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-181377(P2017-181377A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年6月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】特許業務法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 建午
(72)【発明者】
【氏名】近藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】山本 光章
【審査官】 海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−200208(JP,A)
【文献】 特開平10−239317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラテックス免疫凝集法における血液試料に由来する測定誤差を低減する方法であって、
液相中で、イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の存在下、当該試料と、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を接触させる工程を含む、
前記測定誤差を低減する方法。
【請求項2】
血液試料が血清又は血漿である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
凝集反応を測定するときのイミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度が37.5mM以上375mM以下である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ラテックス免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩を有効成分として含む、ラテックス免疫凝集法における血液試料に由来する測定誤差の低減剤。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持させたラテックス粒子を用いるラテックス免疫凝集法において試料に由来する測定誤差を低減する方法に関する。特にイミダゾールの存在下にラテックス免疫凝集反応を行う工程を含む、血液試料に由来する測定誤差を低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体試料中の測定対象物質の測定方法として、ラテックス免疫凝集法(ラテックス免疫凝集比濁法ともいう。以下、LTIAということがある。)が臨床検査の分野で繁用されている。LTIAは、例えば、測定対象物質に対する抗体を担持させたラテックス粒子を用い、測定対象物質である抗原と抗体担持ラテックス粒子とが結合することによって生じるラテックス粒子の凝集(濁り)の程度を光学的手段などにより検出する測定方法である。
ここで、生体試料を測定対象とすることから試料に由来するさまざまな干渉物質の影響による測定誤差が問題となる。特に静注用脂肪乳剤成分の投与を受けている患者や高脂血症の患者の血液試料中には脂肪成分が含まれるため、これらの影響により測定値に誤差が生じる。
不溶性担体粒子を用いた血液試料中の成分の測定方法において、脂肪成分による影響を回避する方法として例えば特許文献1〜3が知られている。
【0003】
特許文献1には、血清や血漿などの被検試料中の乳びによる影響を回避するために、アルブミン、リパーゼ活性を有する酵素、非イオン界面活性剤の存在下で抗原抗体反応を行う方法が開示されている。本方法によれば、試料中の脂肪が界面活性剤により構造変化し、コア部分がリパーゼにより分解されて脂肪酸となり、脂肪酸がアルブミンに吸着されることで、乳びによる抗原抗体反応への干渉作用が回避される。
特許文献2には、磁性粒子を用いたテストステロンおよびエストラジオールの測定において、血清試料中に脂質が存在することによって生じる誤差を、リパーゼを検体中に添加することにより解消する方法が開示されている。
しかし、特許文献1と特許文献2は、いずれも試料中に存在し測定誤差の原因となる脂質をリパーゼにより分解する方法であり、構成試薬中においてリパーゼ活性を安定に維持する必要がある。
特許文献3には、血清や血漿等の血液試料の脂質成分による濁りを除去するために非イオン界面活性剤である2級直鎖アルコールエトキシレートとともに多核フェノールエトキシレートを用いる方法が開示されている。しかし、あくまでも試料の脂肪成分による濁り除去についての記載にとどまり、ラテックスなどの不溶性担体粒子を用いた免疫凝集測定法に関する具体的な記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−71754号公報
【特許文献2】特開2013−200208号公報
【特許文献3】特開平10−213582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ラテックス免疫凝集法において血液試料に由来する測定誤差の影響を回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ラテックス免疫凝集法において血液試料に由来する測定誤差の影響を回避するためにさまざまな検討を行った。そして、当該試料と、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を接触させる液相中の緩衝液成分を種々変更することにより、意外にも測定誤差の影響を回避できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
<1>
ラテックス免疫凝集法における血液試料に由来する測定誤差を低減する方法であって、
液相中で、イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の存在下、当該試料と、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を接触させる工程を含む、前記低減する方法。
<2>
血液試料が血清又は血漿である、<1>に記載の方法。
<3>
凝集反応を測定するときのイミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度が37.5mM以上375mM以下である、<1>または<2>に記載の方法。
<4>
ラテックス免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である<1>〜<3>のいずれかに記載の方法。
<5>
血液試料中の測定対象物質をラテックス免疫凝集法により測定する方法であって、
液相中で、イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の存在下、当該試料と、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を接触させる工程を含む、前記測定方法。
<6>
血液試料が血清又は血漿である、<5>に記載の方法。
<7>
凝集反応を測定するときのイミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度が37.5mM以上375mM以下である、<5>または<6>に記載の方法。
<8>
ラテックス免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である<5>〜<7>のいずれかに記載の方法。
<9>
血液試料中の測定対象物質をラテックス免疫凝集法により測定する方法であって、
以下の工程を含む、前記測定方法。
(1)液相中で、当該試料とイミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩とを接触させる工程
(2)(1)工程の後に、当該測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を液相中に添加する工程
(3)(2)の工程の後に、当該測定対象物質と当該ラテックス粒子の凝集反応を測定する工程
<10>
血液試料が血清又は血漿である、<9>に記載の方法。
<11>
(3)のラテックス粒子の凝集反応を測定する工程のイミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度が37.5mM以上375mM以下である、<9>または<10>に記載の方法。
<12>
ラテックス免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である<9>〜<11>のいずれかに記載の方法。
<13>
血液試料中の測定対象物質をラテックス免疫凝集法により測定するための試薬キットであって、以下を含む試薬キット。
(1)イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩を含有する緩衝液を含む第1試薬(2)測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含む第2試薬<14>
血液試料中の測定対象物質をラテックス免疫凝集法により測定するときのイミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度が37.5mM以上375mM以下に調整しうるような形態で含まれている、<13>に記載の試薬キット。
<15>
ラテックス免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である<13>または<14>に記載の試薬キット。
<16>
血液試料中の測定対象物質をラテックス免疫凝集法により測定するための液状試薬であって、イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩を含む液状試薬。
<17>
血液試料中の測定対象物質をラテックス免疫凝集法により測定するときのイミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度が37.5mM以上375mM以下に調整しうるような形態で含まれている、<16>に記載の液状試薬。
<18>
ラテックス免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である<16>または<17>に記載の液状試薬。
<19>
イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩を有効成分として含む、ラテックス免疫凝集法における血液試料に由来する測定誤差の低減剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラテックス免疫凝集法において血液試料に由来する測定誤差を低減することにより、正確な測定をすることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(ラテックス免疫凝集法)
LTIA(ラテックス免疫凝集法)は、抗原あるいは抗体等の測定対象物質に対する特異的親和性物質を固定化したラテックス粒子を用いて、測定対象物質を測定する方法であり、臨床検査の分野で広く使用されている。LTIAにより測定対象物質である抗原を測定する方法としては、測定対象物質に対する抗体を固定化したラテックス粒子と、測定対象物質である抗原とを反応させ、サンドイッチ型の免疫複合体を形成させ、免疫複合体形成に伴う当該ラテックス粒子の凝集の程度から測定対象物質(抗原)を測定する方法と、抗原を固定化したラテックス粒子と試料中の抗原(測定対象物質)とを競合させて、当該ラテックス粒子と抗体との免疫複合体の形成を阻害し、免疫複合体の形成阻害に伴う当該ラテックス粒子の凝集阻害の程度から測定対象物質(抗原)を測定する方法に大別することができる。
【0009】
(試料)
本発明における試料は、血液試料であり、例えば全血、血清、血漿が挙げられる。
【0010】
(測定誤差の低減)
LTIAにおいては、血液試料中に含まれる何らかの成分により、測定対象物質に対す
る特異的親和性物質を固定化したラテックス粒子に生じるべきでない凝集が生じたり(正の測定誤差)、あるいは生じるべき凝集が生じなかったり(負の測定誤差)することがしばしば発生する。これらは非特異的反応と呼ばれ、様々な測定誤差の原因となることが知られている。
本発明において、「測定誤差を低減する」とは、上記測定値の正又は負の測定誤差を、本来の測定値(真値)に近づけることをさす。
本発明において血液試料に由来する測定誤差とは、血液試料中の成分に由来して生じるなんらかの非特異反応による測定誤差をいい、非特異反応を引き起こす血液試料中の成分としては、乳びや、単純脂質、中性脂肪などの脂質が挙げられる。
本発明は、特に、乳び所見の個体(高脂状態の個体)や脂肪乳剤を点滴された個体等に由来する血液試料において生じる測定誤差を低減する。
【0011】
(脂肪乳剤)
脂肪乳剤としては、油脂を乳化剤で乳化して脂肪粒子の平均粒子径を1μm以下、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下に乳化させた水中油型脂肪乳剤が挙げられる。輸液用(静注用)として用いられている各種の脂肪乳剤が使用でき、市販品としては、例えば、イントラリポス(登録商標、大塚製薬工場社製)、イントラファット(登録商標、日本製薬社製)、イントラリピッド(登録商標、フレゼニウスカービジャパン社製)などが挙げられる。いずれも添付文書に記載された成分は、精製大豆油、精製卵黄レシチン、濃グリセリン、水酸化ナトリウム(pH調整剤)である。
【0012】
脂肪乳剤は、乳化剤を水に分散させた溶液に油脂を加えた後、撹拌して粗乳化液を調製し、次いで粗乳化液を高圧乳化法等の慣用の方法により乳化することにより脂肪乳剤を調製することができる。上記の乳化を高圧乳化法で行なう場合、例えば、マントンゴーリンホモジナイザー等の乳化機を用い、粗乳化液を20〜700Kg/cm程度の条件下、5〜50回程度通過させることにより行われる。乳化に際して、安定且つ微粒子状の乳剤を得るために、ブドウ糖及び/又はグリセリンの存在下に乳化を行うのが好ましく、この方法によれば平均粒子径が0.17μm以下の乳剤を容易に調製することができる。又、必要に応じて、乳化補助剤などを添加して乳化を行ってもよい。
【0013】
上記の油脂としては食用油であればいずれの油脂も使用でき、例えば、植物油(例えば、大豆油、綿実油、サフラワー油、トウモロコシ油、ヤシ油、シソ油、エゴマ油等)、魚油(例えば、タラ肝油等)、中鎖脂肪酸トリグリセリド[例えば、パナセート(商品名)、ODO(商品名)等]及び化学合成トリグリセリド類[例えば、2−リノレオイル−1,3−ジオクタノイルグリセロール(8L8)、2−リノレオイル−1,3−ジデカノイルグリセロール(10L10)等のChemically defined triglycerides]から選ばれた1種又は2種以上の油脂が好適に用いられる。また、乳化剤としては医薬製剤に使用される乳化剤であればいずれの乳化剤も用いることができ、例えば、卵黄リン脂質、水素添加卵黄リン脂質、大豆リン脂質、水素添加大豆リン脂質及び非イオン性界面活性剤[例えば、プルロニックF68、HCO−60(いずれも商品名)等]から選ばれた1種又は2種以上の乳化剤が好適に用いられる。
【0014】
特に好ましくは、油脂として大豆油、乳化剤として卵黄リン脂質を用い、脂肪粒子の平均粒子径を0.3μm以下、より好ましくは0.17μm以下に調整した脂肪乳剤が挙げられる。脂肪乳剤の組成は特に限定されないが、好ましい例としては、油脂0.1〜30w/v%程度、好ましくは1〜20w/v%程度、より好ましくは2〜10w/v%程度、乳化剤0.01〜10w/v%程度、好ましくは0.05〜5w/v%程度、より好ましくは0.1〜1w/v%程度、及び適量の水からなる脂肪乳剤が挙げられる。
【0015】
上記の脂肪乳剤は、還元糖等の糖類を含有していてもよい。還元糖としては、例えば、ブドウ糖、果糖、マルトース等が挙げられ、これらの還元糖は2種以上を混合して用いてもよい。更に、これらの還元糖にソルビトール、キシリトール及び/又はグリセリンを加えた混合物を用いてもよい。これらの糖類の添加は、乳剤を調製した後に行ってもよいし、乳剤を調製する際に行ってもよい。これらの糖類を含有する脂肪乳剤の好ましい例としては、油脂0.1〜30w/v%程度、好ましくは1〜20w/v%程度、より好ましくは2〜10w/v%程度、乳化剤0.01〜10w/v%程度、好ましくは0.05〜5w/v%程度、より好ましくは0.1〜1w/v%程度、糖類1〜60w/v%程度、好ましくは5〜40w/v%程度、より好ましくは10〜30w/v%程度、及び適量の水とからなる脂肪乳剤が挙げられる。
【0016】
なお、脂肪乳剤には、滅菌時及び保存時の脂肪乳剤の着色を防止するために着色防止剤(例えば、チオグリセロール、ジチオスレイトール等)を添加してもよく、またpHの安定化を図るために緩衝剤[例えば、L−ヒスチジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等]を添加してもよい。これら着色防止剤及び緩衝剤の添加量は、通常、それぞれ1%程度以下とされる。更に、本発明においては、脂肪乳剤に、ビタミン類(例えば、ビタミンA、ビタミンB類、ビタミンC、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類等)などを添加してもよい。これらの添加剤は、乳剤を調製した後に添加してもよいし、乳剤を調製する際に添加してもよい。
【0017】
(測定方法)
LTIAの測定方法としては、生じた凝集の程度を光学的あるいは電気化学的に観察することにより被検物質を測定できる。光学的に観察する方法としては、散乱光強度、吸光度、又は透過光強度を光学機器で測定する方法(エンドポイント法、レート法等)が挙げられる。試料を測定して得た吸光度等の測定値を、標準物質(測定対象物質の濃度が既知の試料)を測定して得た吸光度等の測定値と比較して、試料中に含まれていた測定対象物質の濃度(定量値)を算出する。なお、透過光又は散乱光などの吸光度等の測定は、1波長測定であっても、又は2波長測定(2つの波長による差又は比)であってもよい。測定波長は、500nmから800nmの中から選ばれるのが一般的である。
【0018】
本発明の試料中の測定対象物質の測定は、用手法により行ってもよいし、又は測定装置等の装置を用いて行ってもよい。測定装置は、汎用自動分析装置であっても、専用の測定装置(専用機)であってもよい。 また、この測定は、2ステップ法(2試薬法)等の複数の操作ステップにより行う方法によって実施することが好ましい。
【0019】
(測定対象物質)
本発明における測定対象物質としては、免疫学測定方法で測定される物質であれば特に限定されず種々の物質、例えば、タンパク質(抗原、ハプテン、抗体)、糖質、脂質、核酸、化学物質(ホルモン、薬剤)等などを挙げることができる。中でも、抗原を測定対象物質とするものが好ましく、蛋白抗原がより好ましい。具体的には、例えば、可溶性IL−2レセプター(sIL−2R)、CRP、フィブリン及びフィブリノーゲン分解産物、Dダイマー、可溶性フィブリン(SF)、リポ蛋白(a)(Lp(a))、マトリックスメタロプロテアーゼ−3(MMP−3)、前立腺特異抗原(PSA)、IgG、IgA、IgM、IgE、IgD、抗ストレプトリジンO、リウマチ因子、トランスフェリン、ハプトグロビン、α1−アンチトリプシン、α1−アシドグリコプロテイン、α2−マクログロブリン、ヘモペキシン、アンチトロンビン−III、α−フェトプロテイン、CEA(カルシノエンブリオニツク抗原)、フェリチン、HBs−Ag(B型肝炎外被抗原)、Anti−HBs(抗B型肝炎外被抗体)、HBe−Ag(B型肝炎e抗原)、Anti−HBe(抗B型肝炎e抗体)、Anti−HBc(抗B型肝炎コア抗体)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
(特異的親和性物質)
本発明において、ラテックスに担持される測定対象物質に対する特異的親和性物質としては、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、糖質、核酸、ハプテンなどが挙げられ、分子量の高低および天然、合成といった由来に特に制限はないが、免疫反応を利用する免疫学的測定法に使用され得る抗体または抗原が挙げられる。
【0021】
(抗体)
本発明に用いる抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。より好ましくは、モノクローナル抗体である。
本発明の抗体としては、抗体分子全体のほかに抗原抗体反応活性を有する抗体の機能性断片を使用することも可能である。一般的な動物(マウス、ヤギ、ヒツジなど)への免疫工程を経て得られたもののほか、遺伝子組み換え技術等により免疫原(測定対象物質)を免疫する動物とは異なる動物種のアミノ酸配列に変化させた抗体(キメラ抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト化抗体等)であってもよい。抗体の機能性断片としては抗原抗体反応活性を有する断片であるF(ab')2、Fab'や一本鎖抗体(scFv)などが挙げられる。これらの抗体の機能性断片は前記のようにして得られた抗体をタンパク質分解酵素(例えば、ペプシンやパパインなど)で処理することにより製造できる。
【0022】
(ラテックス粒子)
本発明に用いるラテックス粒子としては、免疫学的測定試薬として一般的に用いられているラテックス粒子であれば特に制限されない。ラテックス粒子は、種々のモノマーを重合又は共重合させることによって得ることができる。ここにモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン,o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン、4−ビニル安息香酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等のフェニル基を有する重合性単量体、スチレンスルホン酸塩、ジビニルベンゼンスルホン酸塩、o−メチルスチレンスルホン酸塩、p−メチルスチレンスルホン酸塩等のフェニル基及びスルホン酸塩を有する重合性単量体、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、(メタ)アクリル酸α−ナフチル、(メタ)アクリル酸β−ナフチル等のナフチル基を有する重合性単量体などの重合性不飽和芳香族類、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸等の重合性不飽和カルボン酸類、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、エチレングリコール−ジ−(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル等の重合性不飽和カルボン酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクロレイン、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール−(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、ビニルピリジン、N −ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等の不飽和カルボン酸アミド類、重合性不飽和ニトリル類、ハロゲン化ビニル類、共役ジエン類等を挙げることができる。これらのモノマーは、要求される表面特性、比重等によって適宜選択され、1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
ラテックス粒子の平均粒径は、測定対象物質の試料中での濃度あるいは測定機器の検出感度などを考慮し、好ましくは0.02〜1.6μm、より好ましくは0.1μm〜0.4μmのものが適宜選択される。使用されるラテックス粒子は、感度向上等の所望の性能を得るため、材質や粒子径を適宜選択することができ、材質や粒子径が異なるものを組み合わせて使用することもできる。 また、本発明における凝集反応測定時のラテックス粒子の濃度は特に制限がなく、所望の感度や性能に応じて適宜設定することができる。
【0023】
(特異的親和性物質を担持したラテックス粒子)
測定対象物質に対する特異的親和性物質は、物理的吸着(疎水結合)法、化学的結合法又はこれらの併用等の公知の方法によりラテックス粒子に固定化して担持させることがで
きる。
【0024】
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、測定対象物質に対する特異的親和性物質と、ラテックス粒子とを、緩衝液等の溶液中で混合し接触させたり、又は緩衝液等に溶解した測定対象物質に対する特異的親和性物質を、担体に接触させること等により行うことができる。
【0025】
また、化学的結合法により行う場合は、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年発行;日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年発行等に記載の公知の方法に従い、測定対象物質に対する特異的結合物質と、担体とを、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、測定対象物質に対する特異的結合物質と、担体の、それぞれのアミノ基、カルボキシル基、チオール基、アルデヒド基又は水酸基等と前記の二価性の架橋試薬とを反応させること等により行うことができる。
【0026】
ラテックス粒子が担持する特定物質に対する特異的親和性物質は、サンドイッチを形成するために複数種類であることが好ましい。例えば、特異的親和性物質がモノクローナル抗体の場合には、認識部位の異なる複数のモノクローナル抗体を用いる。また、例えば、特異的親和性物質がポリクローナル抗体の場合には、1種の抗血清由来のポリクローナル抗体でもよいし、複数種の抗血清由来のものでもよい。また、モノクローナル抗体とポリクローナル抗体を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
なお、ラテックス粒子の自然凝集や、非特異的反応等を抑制するために処理を行う必要があれば、ラテックス粒子の表面に、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、担体のブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0028】
(イミダゾール)
本発明においては、イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩を、測定反応液中又は測定試薬中に存在又は含有させることにより、試料中の測定対象物質の測定を行う。
ここで、イミダゾール又はその誘導体としては、イミダゾール骨格を持つ化合物であればよく、例えば、イミダゾール、1−メチルイミダゾール、1−エチルイミダゾール、1−プロピルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール、1−フェニルイミダゾール、1−ビニルイミダゾール、1−アリルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フォルミルイミダゾール、1−ベンジル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−ベンジル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−イミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−プロピルイミダゾール、2−ブチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フォルミルイミダゾール、2−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、2−ブチル−4−フォルミルイミダゾール、2−ブチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−ブチル−4−クロロ−5−フォルミルイミダゾール、2−ヒドロキシメチル−1−ベンジルイミダゾール、2−ヒドロキシメチル−2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、4−ブチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、4−フォルミル−1−メチルイミダゾール、4−フォルミル−1−トリシルイミダゾール、5−フォルミル−1−メチルイミダゾール、4−フォルミル−5−メチルイミダゾール、4−ヒドロキシメチルイミダゾールヒドロクロライド、メチルイミダゾール−4−カルボキシレート、エチルイミダゾール−4−カルボキシレート、1,2−ジメチルイミダゾール、又は1,2,4−トリメチルイミダゾール等の公知のものを挙げることができる。
イミダゾール又はその誘導体の塩とは、化学的に許容される塩であり、カリウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩のほか、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、セスキ(フマル酸塩)、塩化水素酸塩、二塩化水素酸塩、三塩化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、ビス(酒石酸塩)、酒石酸塩、(L)酒石酸塩、ビス((L)酒石酸塩)、(D)酒石酸塩、ビス((L)酒石酸塩)、(DL)酒石酸塩、ビス((DL)酒石酸塩)、メソ酒石酸塩、ビス(メソ酒石酸塩)、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、ビス((D)酒石酸塩)、ビス(臭化物)、ビス(硫酸塩)、ビス(リン酸塩)、トリス(塩化水素酸塩)、p−トルエンスルホン酸塩、およびウンデカン酸塩からなる群から選択され塩が挙げられる。
【0029】
本発明において、イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩(以下、イミダゾール等ということがある)は、市販品をそのまま用いることができる。また、イミダゾール等の濃度は、試料と測定試薬を混合した後、凝集反応を測定する工程において、抗原抗体反応などの主反応に強い影響を及ぼさないことを限度として制限はないが、下限としては37.5mM以上であり、45mM以上、52.5mM以上、60mM以上、67.5mM以上、75mM以上が挙げられる。上限としては、750m以下であり、675mM以下、600mM以下、525mM以下、450mM以下、375mM以下、300mM以下、225mM以下が挙げられる。
好ましい濃度範囲としては、37.5〜750mMの範囲のほかに、上記上限と下限の組み合わせが挙げられ、たとえば、37.5〜675mM、37.5〜600mM、37.5〜525mM、37.5〜450mM、37.5〜375500mM、37.5〜300mMにあることが好ましく、より好ましい範囲は37.5〜225mM、45〜225mM、52.5〜225mM、60〜225mM、67.5〜225mMであり、さらに75〜225mMの範囲が特に好ましい。
また、イミダゾール等の濃度は、375mM以上含有させても問題はないが、375mMまででも充分な効果が得られる。更に、前記のイミダゾール等は単独で用いてもよいし、複数のイミダゾール等を併用してもよい。また、複数のイミダゾール等を併用する場合には、両者を併せた濃度が上記の濃度範囲であればよい。
本発明の測定用試薬に含まれる「イミダゾールを含有する緩衝液」は、イミダゾール緩衝液でもよいし、イミダゾール等を含むイミダゾール緩衝液以外の緩衝液でもよい。また、イミダゾール緩衝液以外の緩衝液とイミダゾール緩衝液を組み合わせて使用することも可能である。
【0030】
また、本発明の測定方法及び測定試薬は、2ステップ法(2試薬法)以上の複数ステップ法(複数試薬法)である場合には、測定対象物質を測定する際の各々の添加量の比で混合した時に、この混合後の測定反応液中のイミダゾール等の濃度が上記の範囲となるように、イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度を定めればよい。例えば、2ステップ法(2試薬法)の場合、混合後の測定反応液中のイミダゾール等の濃度が上記濃度範囲に入るのであれば、イミダゾール等は第1試薬と第2試薬の両方に含有させてもよい。
【0031】
(接触)
イミダゾール等の存在下で測定対象物質を含む試料と、測定対象物質に対する特異的親
和性物質を担持するラテックス粒子とを接触させるとは、当該試料と、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子とを反応させる反応液中にイミダゾール等が含まれていればよく、典型的には、以下の(1)〜(4)が挙げられる。
(1)当該試料とイミダゾール等を含む緩衝液を混合した後、この混合液に測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含む試薬とを混合する態様、
(2)当該試料と、イミダゾール等を含む緩衝液と、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含む試薬と、を同時に混合する態様、
(3)当該試料と、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含む試薬とを混合した後に、この混合液にイミダゾール等を含む緩衝液を添加して混合する態様
(4)測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含む試薬と、イミダゾール等を含む緩衝液とを混合した後に、当該試料を添加して混合する対象
【0032】
(測定用試薬)
本発明の測定用試薬は、2つ以上の構成試薬により構成され、少なくとも1つの構成試薬は測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含み、当該構成試薬と同一の構成試薬及び/または異なる構成試薬はイミダゾール等を含む。また、本発明の測定用試薬は、液状の試薬である。
【0033】
本発明の測定用試薬は、このうちでも第1試薬と第2試薬とからなる2試薬型が好ましい。例えば、2試薬型の第1試薬は、イミダゾール等を含有する緩衝液を含み、第2試薬は、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含む。
【0034】
また、本発明の測定用試薬が、第1試薬、第2試薬と第3試薬からなる3試薬型である場合、例えば、第1試薬は、試料を希釈した試料から測定対象物質を抽出するための緩衝液等を含み、第2試薬は、イミダゾールを含有する緩衝液を含み、第3試薬は、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含む。
【0035】
イミダゾール等は、測定時の混液状態において血液試料に由来する測定誤差を低減する効果を発揮でき、構成試薬の安定性に影響がない範囲において、構成試薬のいずれかあるいはすべてに含まれてもよい。
したがって、2試薬型、3試薬型において、イミダゾール等は全ての構成試薬に含まれていてもよいし、ラテックス粒子を含まない構成試薬の全てに含まれていてもよい。
イミダゾール等の各構成試薬中における濃度は、測定時である、試薬と試料の混合状態において37.5mM以上375mM以下に調整しうるような形態で含まれていればよく、各試薬型により異なる。
【0036】
(試薬キット)
本発明の試薬キットは、少なくとも下記(1)および(2)
(1)イミダゾール等を含有する緩衝液を含む第1試薬
(2)測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を含む第2試薬の要素を含むことを特徴とする。イミダゾール等の緩衝液中における濃度は、測定時である、試薬と試料の混合状態において37.5mM以上375mM以下に調整しうるような形態で含まれていればよく、各試薬型により異なるが、例えば、第1試薬と第2試薬が3:1で、採取試料が微量である場合は、第1試薬である緩衝液中のイミダゾール等の濃度は、50mM以上500mM以下が好ましい。
また、本発明の試薬キットには、上記測定試薬のほかに、使用説明書、試料採取用具(採取ピペット、シリンジ、綿棒、ろ過フィルターなど)、試料希釈液、試料抽出液を含むことができる。
【0037】
(測定誤差低減剤)
本発明の測定誤差低減剤は、ラテックス免疫凝集法における血液試料に由来する測定誤差を低減するための薬剤であり、少なくともイミダゾール等を有効成分として含む。上記測定試薬中のイミダゾール等を含む試薬をそのまま使用することができる。
【0038】
(ホモジーニアス法)
本発明においてホモジーニアス法とは、試料と試薬液の混和溶液(反応液)中で測定対象物質により進行する反応をB/F(結合/非結合)分離を行うことなく特異的に検出する測定法を指し、B/F分離操作によって測定反応に関与しなかった余剰成分を完全に洗浄・除去した後、主反応を進行させて検出するヘテロジーニアス測定法と対比して呼称される測定法のことをいう。したがって、本発明でいう「ラテックス免疫凝集法が、ホモジーニアス法にもとづく方法である」とは、典型的な下記(1)〜(3)の工程において、(1)液相中で、試料とイミダゾール等とを接触させる工程
(2)(1)工程の後に、当該測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を液相中に添加する工程
(3)(2)の工程の後に、当該測定対象物質と当該ラテックス粒子の凝集反応を測定する工程
(3)の工程は、「(2)の工程の途中、あるいは(2)の工程の後に、洗浄・分離工程を経ることなく当該測定対象物質と当該ラテックス粒子の凝集反応を測定する工程」であることを意味する。
【0039】
(その他の試薬成分)
本発明の試薬は、不溶性担体粒子の凝集形成を増強する成分としてポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、リン脂質ポリマーなどの高分子を含んでもよい。また、凝集の形成をコントロールする成分として、タンパク質、アミノ酸、糖類、金属塩類、界面活性剤類、還元性物質やカオトロピック物質など汎用される成分を1種類、または複数の成分を組み合わせて含んでもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
【0041】
〔試験例1〕本発明のイミダゾール添加による測定誤差低減効果の確認
血液試料中の脂質による測定誤差の影響を確認し、緩衝液種類、本発明のイミダゾール等の添加による測定誤差低減効果の検討をおこなった。
1.試薬
(1)第1試薬
以下に示す成分(濃度は、試薬中の濃度を示す。以下同じ。)を含む。
・表1に示す緩衝剤
・500mM NaCl
・1.0% BSA
・0.05% Proclin300
(2)第2試薬
下記の2種類の抗体感作ラテックス粒子溶液を等量混合し、5mM MOPS緩衝液(pH7.0)で波長600nmの吸光度が5.0Abs.となるように希釈して第2試薬とした。
(i)92212抗体感作ラテックス粒子溶液
平均粒子径0.3μmの1.0%ラテックス溶液(5mM トリス緩衝液(以下、Tris−HCl又は単にTrisという)(pH8.5)に、等量の5mM Tris−HCl(pH8.5)で0.36mg/mLに希釈した92212抗体溶液を添加して4℃
2時間攪拌した。その後、等量の0.5% BSA含有5mM Tris−HCl(pH8.5)を添加して4℃、1時間攪拌し、92212抗体感作ラテックス粒子溶液を作製した。
(ii)92204R抗体感作ラテックス粒子溶液
平均粒子径0.3μmのラテックスを用いて上記(i)と同じ方法により92204R抗体感作ラテックス粒子溶液を作製した。
【0042】
2.被検試料
無作為抽出し混合した血清A(プール血清A)
【0043】
3.試料の調製方法
(イントラリポスの濃度は、試薬と混合する前の試料中の濃度を示す。以下同じ。)
被検試料9/10量に、生理食塩液(大塚製薬)を等量混合した静脈用脂肪乳剤(イントラリポス輸液10%(大塚製薬))を1/10量添加して、0.5%イントラリポス試料を調整した。
被検試料9/10量に、生理食塩液を1/10量添加し、0%イントラリポス試料とした。
被検試料4/5量に、0.5%イントラリポス1/5量を添加し、0.1%イントラリポス試料とした。
【0044】
4.測定方法
第1試薬と第2試薬を組み合わせ、日立7180形自動分析装置を用いて、静脈用脂肪乳剤を含む試料中の可溶性インターロイキン2レセプター濃度を測定した。具体的には、試料5μLに第1試薬150μLを加えて37℃で5分間保温した後、第2試薬50μLを加えて攪拌した。凝集形成に伴う吸光度変化を、その後5分間にわたり、主波長570nm、副波長800nmで測定し、その吸光度変化量を濃度既知の標準物質を測定して得られる検量線にあてはめ、可溶性インターロイキン2レセプター濃度を算出した(試験例1〜3において共通)。
0%イントラリポス試料の測定値を100%とし、各濃度のイントラリポス試料の測定値の相対値を算出した(試験例1,2において共通)。
【0045】
5.測定条件
日立7180形自動分析装置のパラメータ条件を以下に示す。
(1)液量 検体―第1試薬―第2試薬;5μL−150μL−50μL(2)分析法 2ポイントエンド法(測光ポイント19−34)
(3)測定波長 主波長570nm/副波長800nm
(4)キャリブレーション スプライン
【0046】
6.測定結果
0%イントラリポス試料の測定値を100%とした場合に、0.1%イントラリポス試料の測定値が85%未満または115%を超える場合は、イントラリポス共存による影響が起きていると判断した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
7.考察
第1試薬に緩衝剤としてTris又はHEPESのみを用いた場合には、イントラリポス共存による影響が起きていたが、イミダゾールバッファーのみを用いた場合、あるいはTris又はHEPESとイミダゾールバッファーを組み合わせた場合には、イントラリポス共存の影響は起こらなかった。
【0049】
〔試験例2〕イミダゾール濃度と測定誤差低減効果の関係
免疫凝集反応液中のイミダゾール濃度を変更し、測定誤差低減効果との関係を検討した。
1.試薬
(1)第1試薬
表1に示す緩衝剤を表2に示す緩衝剤に置き換えた以外は試験例1に同じである。
(2)第2試薬
試験例1に同じである。
【0050】
2.被検試料
(1)無作為抽出し混合した血清B(プール血清B)
(2)無作為抽出し混合した血清C(プール血清C)
(3)無作為抽出し混合した血清D(プール血清D)
【0051】
3.試料調製方法
0.5%イントラリポス試料、0%イントラリポス試料、0.1%イントラリポス試料の調整方法は、試験例1と同じである。0.05%イントラリポス試料は、被検試料9/10量に、0.5%イントラリポス試料1/10量を添加して調整した。
【0052】
4.測定方法および5.測定条件
試験例1に同じである。
【0053】
6.測定結果
0% イントラリポス試料の測定値を100%とした場合に、0.05%又は0.1%イントラリポス試料の測定値が、85%以上115%以下場合はイントラリポス共存による影響が起きていない(+)と判断した。
プール血清B〜Dのいずれにおいても影響が起きていない場合を+++、いずれか2つにおいて影響が起きていない場合を++、いずれか1つにおいて影響が起きていない場合を+とした。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
7.考察
イミダゾールバッファーの濃度が、50mM〜300mMの範囲において、イントラリポスの影響を回避することが可能だった。
【0056】
〔試験例3〕測定誤差の原因の検討
測定誤差が、脂質を含む血液試料のみに基づくものか、ラテックスを含む試薬に基づくものか確認するために、第2試薬にラテックスを含まない試薬を用いて検討を行った。
1.試薬
(1)第1試薬
表1に緩衝剤を100mM Tris(pH7.0)に置き換えた以外は試験例1の第1試薬に同じ
(2)第2試薬
生理食塩液
【0057】
2.被検試料
試験例2のプール血清B、プール血清C、プール血清D
【0058】
3.試料調製方法
試験例2に同じである。
【0059】
4.測定方法および5.測定条件
試験例1に同じである。
【0060】
6.測定結果および考察
測定吸光度は0〜1.2mAbs.であった。イントラリポス濃度依存的な吸光度の上昇が観察されなかったことから、測定値への影響とはイントラリポスの添加による血液試料の濁りではなく、イントラポリスを含む血液試料との接触によるラテックス粒子の非特異的な凝集によるものであると推測される。
【産業上の利用可能性】
【0061】
ラテックス免疫凝集法において、液相中で、イミダゾール又はその誘導体あるいはこれらの塩の存在下、血液試料と、測定対象物質に対する特異的親和性物質を担持するラテックス粒子を接触させる工程により、血液試料に由来する測定誤差を低減する方法を提供することができる。したがって、高脂血症などの脂質を多く含む試料についてもラテックス免疫凝集法により、正確な測定が可能である。