特許第6409019号(P6409019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409019射出成形機用水分率調整機構、水分率調整機能付き射出成形機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409019
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】射出成形機用水分率調整機構、水分率調整機能付き射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/18 20060101AFI20181004BHJP
【FI】
   B29C45/18
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-98416(P2016-98416)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-205907(P2017-205907A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明良
(72)【発明者】
【氏名】葛西 敏裕
(72)【発明者】
【氏名】大上 雅康
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 卓也
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−286806(JP,A)
【文献】 特開平11−170299(JP,A)
【文献】 特開2013−130383(JP,A)
【文献】 実開昭60−194510(JP,U)
【文献】 特開昭56−144141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料がバレルに構成されたシリンダに投入される直前に、オンラインで前記原料の水分率を低下させる射出成形機用水分率調整機構であって、
前記バレルの外面から前記シリンダの内周面に亘って貫通して設けられた投入口に嵌め込み可能に構成され、予め設定された分量の前記原料を一時的に貯留する貯留ユニットと、
前記貯留ユニットに貯留された前記原料を加熱する加熱ユニットと、を有し、
前記貯留ユニットに貯留可能な前記原料の貯留容量Q1は、射出成形機固有の最大射出容量Q2に対して、
Q2≦Q1≦3.0×Q2
なる関係を満足する
射出成形機用水分率調整機構。
【請求項2】
前記貯留ユニットは、
第1貯留部と、
前記投入口に嵌め込み可能な第2貯留部と、を備え、
前記第2貯留部の貯留容量は、前記第1貯留部の貯留容量よりも小さく設定され、
前記第1貯留部に貯留された前記原料は、重力作用を受けることで、前記第1貯留部から前記第2貯留部に向かって徐々に落下しつつ移動する請求項1に記載の射出成形機用水分率調整機構。
【請求項3】
前記加熱ユニットは、
前記貯留ユニットの外側に設けられた外側加熱機構と、
前記貯留ユニットの内側に設けられた内側加熱機構と、を備え、
前記外側加熱機構は、前記貯留ユニットに貯留された前記原料を、前記貯留ユニットの外側から加熱すると共に、
前記内側加熱機構は、前記貯留ユニットに貯留された前記原料を、前記貯留ユニットの内側から加熱する請求項1に記載の射出成形機用水分率調整機構。
【請求項4】
前記内側加熱機構は、
両端を有する一連の中空管構造を成し、一端から熱媒体を取込可能で、かつ、他端から前記熱媒体を放出可能な伝熱管と、
前記他端から放出する際の前記熱媒体の温度を測定可能な温度センサと、
前記温度センサの測定結果に基づいて、前記伝熱管の前記一端から取り込むべき前記熱媒体の取込状態を制御する制御部と、を有し、
前記伝熱管には、前記一端と前記他端との間の領域に亘って、外部の熱を前記熱媒体に受け渡し可能な受け渡し部が構成されていると共に、
前記伝熱管の前記他端は、前記貯留ユニットの内側に配置され、
射出成形機から発生した熱は、前記受け渡し部を介して前記熱媒体に受け渡された後、前記伝熱管の前記他端から前記貯留ユニットの内側に前記熱媒体と共に放出され、これにより、前記貯留ユニットに貯留された前記原料を加熱する請求項3に記載の射出成形機用水分率調整機構。
【請求項5】
前記伝熱管の前記他端は、前記貯留ユニットの内側の貯留空間のうち、その中央部分に位置付けられ、
前記熱媒体の放出方向は、前記他端の周囲に向けて放射状に設定されている請求項4に記載の射出成形機用水分率調整機構。
【請求項6】
前記貯留ユニットは、その内側から外側に貫通した排気構造体を有し、
前記貯留ユニットの内側に放出された前記熱媒体は、前記排気構造体を通って、機外に排気される請求項4に記載の射出成形機用水分率調整機構。
【請求項7】
原料がバレルに構成されたシリンダに投入される直前に、オンラインで前記原料の水分率を低下させる水分率調整機能付き射出成形機であって、
前記バレルの外面から前記シリンダの内周面に亘って貫通して設けられた投入口に嵌め込み可能に構成され、予め設定された分量の前記原料を一時的に貯留する貯留ユニットと、
前記貯留ユニットに貯留された前記原料を加熱する加熱ユニットと、を備え、
前記貯留ユニットに貯留可能な前記原料の貯留容量Q1は、射出成形機固有の最大射出容量Q2に対して、
Q2≦Q1≦3.0×Q2
なる関係を満足する水分率調整機能付き射出成形機。
【請求項8】
前記貯留ユニットは、
第1貯留部と、
前記投入口に嵌め込み可能な第2貯留部と、を備え、
前記第2貯留部の貯留容量は、前記第1貯留部の貯留容量よりも小さく設定され、
前記第1貯留部に貯留された前記原料は、重力作用を受けることで、前記第1貯留部から前記第2貯留部に向かって徐々に落下しつつ移動する請求項7に記載の水分率調整機能付き射出成形機。
【請求項9】
前記加熱ユニットは、
前記貯留ユニットの外側に設けられた外側加熱機構と、
前記貯留ユニットの内側に設けられた内側加熱機構と、を備え、
前記外側加熱機構は、前記貯留ユニットに貯留された前記原料を、前記貯留ユニットの外側から加熱すると共に、
前記内側加熱機構は、前記貯留ユニットに貯留された前記原料を、前記貯留ユニットの内側から加熱する請求項7に記載の水分率調整機能付き射出成形機。
【請求項10】
前記内側加熱機構は、
両端を有する一連の中空管構造を成し、一端から熱媒体を取込可能で、かつ、他端から前記熱媒体を放出可能な伝熱管と、
前記他端から放出する際の前記熱媒体の温度を測定可能な温度センサと、
前記温度センサの測定結果に基づいて、前記伝熱管の前記一端から取り込むべき前記熱媒体の取込状態を制御する制御部と、を有し、
前記伝熱管には、前記一端と前記他端との間の領域に亘って、外部の熱を前記熱媒体に受け渡し可能な受け渡し部が構成されていると共に、
前記伝熱管の前記他端は、前記貯留ユニットの内側に配置され、
射出成形機から発生した熱は、前記受け渡し部を介して前記熱媒体に受け渡された後、前記伝熱管の前記他端から前記貯留ユニットの内側に前記熱媒体と共に放出され、これにより、前記貯留ユニットに貯留された前記原料を加熱する請求項9に記載の水分率調整機能付き射出成形機。
【請求項11】
前記伝熱管の前記他端は、前記貯留ユニットの内側の貯留空間のうち、その中央部分に位置付けられ、
前記熱媒体の放出方向は、前記他端の周囲に向けて放射状に設定されている請求項10に記載の水分率調整機能付き射出成形機。
【請求項12】
前記貯留ユニットは、その内側から外側に貫通した排気構造体を有し、
前記貯留ユニットの内側に放出された前記熱媒体は、前記排気構造体を通って、機外に排気される請求項10に記載の水分率調整機能付き射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料がホッパーからシリンダに投入される間に、言い換えれば、原料がシリンダに投入される直前に、オンラインで原料の水分率を低下させることにより、脱気不良に起因した品質劣化を未然に防止する技術に関する。
ここで、オンラインとは、一連の射出成形プロセスに際し、原料の水分率を低下させるプロセスが同時かつ連続して行われることを指す。具体的には、オンラインとは、ホッパーに供給された原料がシリンダに投入される間に、原料の水分率を低下させる処理が、中断されること無く連続して、同時平行に行われることを指す。
【背景技術】
【0002】
射出成形機においては、供給された一定量の原料に対する射出成形が行われる。即ち、射出成形用スクリュを回転させる。スクリュの回転により、原料が可塑化されつつ前方に搬送される。搬送された原料に押されてスクリュが後退する。スクリュが計量完了位置まで後退したとき、回転を停止させる。この状態で、スクリュを前進させる。この結果、可塑化原料が射出される。この場合、射出成形機には、予め、充分に乾燥させた原料が供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−23178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、原料に含まれる水分の程度によっては、未乾燥のまま当該原料に対して射出成形処理が行われる仕様もある(例えば、特許文献1参照)。かかる仕様において、スクリュを2ステージとし、それぞれの計量部の主フライトの相互間に1条のサブフライトが設けられている。サブフライトで構成されるスクリュ溝は、その出入口が開放されている。これにより、ベントアップを抑制しつつ、可塑化能力の向上が図られている。
【0005】
しかしながら、上記した仕様では、原料に含まれる水分量が、言い換えれば、原料の水分率が、ベント機構の脱気能力を超えると、排出されなかった水蒸気の気泡が成形表面に現れて潰れる。この結果、シルバーストリーク(silver streak)などの成形不良が発生する。そうなると、成形品の品質を一定に維持することが困難になってしまう。
【0006】
特に、ナイロンなどの吸湿性樹脂は、防湿袋で密閉包装されるので、防湿袋を開封後、直ちに射出成形を行えば上記成形不良は生じない。これに対し、開封後使い切れずに一時保管されたものや、未開封であっても極端に湿気の多い場所で保管されたものは、上記した成形不良が生じ易い。従って、原料の水分率がベント機構の脱気能力を超える場合、乾燥機を用いて事前に原料乾燥を行う必要がある。
【0007】
しかしながら、原料の水分率がベント機構の脱気能力を僅かに超える場合に、言い換えれば、原料の吸湿が比較的小さい場合に、わざわざ乾燥機を用いて、通常の工程では行われない原料乾燥を行うのは煩わしい。
【0008】
本発明の目的は、原料がホッパーからシリンダに投入される間に、言い換えれば、原料がシリンダに投入される直前に、オンラインで原料の水分率を低下させることにより、ベント機構の脱気能力の不足分を補って、シリンダに投入される原料の水分率をベント機構の脱気能力の範囲内にし、これにより、脱気不良に起因した品質劣化を未然に防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明は、原料がバレルに構成されたシリンダに投入される直前に、オンラインで前記原料の水分率を低下させる技術である。当該技術は、バレルの外面からシリンダの内周面に亘って貫通して設けられた投入口に嵌め込み可能に構成され、予め設定された分量の原料を一時的に貯留する貯留ユニットと、貯留ユニットに貯留された原料を加熱する加熱ユニットと、を有する。貯留ユニットに貯留可能な原料の貯留容量Q1は、射出成形機固有の最大射出容量Q2に対して、Q2≦Q1≦3.0×Q2なる関係を満足するように設定されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原料がホッパーからシリンダに投入される間に、言い換えれば、原料がシリンダに投入される直前に、オンラインで原料の水分率を低下させることにより、脱気不良に起因した品質劣化を未然に防止する技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る射出成形システムにおいて、水分率調整機構を備えた射出成形機の構成を示す断面図。
図2図1の射出成形機において、スクリュが計量完了位置まで後退した状態を示す断面図。
図3図1の射出成形機の外観構成を示す斜視図。
図4】水分率調整機構の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「一実施形態」
「射出成形システムの概要について」
図1図3に示すように、射出成形システムは、射出成形機1と、吸引装置2と、エアパージ装置3と、ベント異常検知装置4と、を有している。なお、吸引装置2、エアパージ装置3、ベント異常検知装置4は、射出成形機1の構成要素となり得る。
更に、射出成形機1は、射出成形用スクリュ5(以下、スクリュ5という)と、バレル6と、ベント機構7と、加熱装置8と、後述する水分率調整機構41と、を備えている。バレル6には、中空円筒形状の内周面10sを有するシリンダ10が構成されている。シリンダ10は、バレル6に沿って真っ直ぐに構成されている。
【0013】
バレル6の基端には、後述するホッパー台58が設けられている。かかるホッパー台58には、投入口12が構成されている。投入口12は、バレル6の外面6sからシリンダ10の内周面10sに亘って貫通して構成されている。投入口12には、通常の仕様において、ホッパー11を嵌め込み可能に構成されている。投入口12にホッパー11を嵌め込むことで、当該ホッパー11をホッパー台58に取り付けることができる。この状態において、ホッパー11に供給された原料13は、投入口12を通って、シリンダ10に投入可能となる。なお、投入口12は、後述する定量移送部5aに対向する位置に設けられている。
【0014】
本実施形態の仕様において、後述する水分率調整機構41は、ホッパー11と投入口12との相互間に設けられている。ここで、水分率調整機構41(具体的には、後述する貯留ユニット43の第2貯留部43b)は、投入口12に嵌め込み可能に構成されている。ホッパー11は、水分率調整機構41(具体的には、後述する貯留ユニット43の第1貯留部43a)に嵌め込み可能に構成されている。かかる構成によれば、ホッパー11に供給された原料13は、水分率調整機構41から投入口12を通って、シリンダ10内に投入可能となる。
【0015】
バレル6の先端には、シリンダ10に連通されたノズル14が設けられている。ノズル14は、後述するスクリュ5によって、可塑化された原料13を射出可能に構成されている。かかる構成によれば、可塑化原料13s(図2参照)は、ノズル14を通って、シリンダ10外(例えば、金型)に射出可能となる。
【0016】
シリンダ10には、スクリュ5が回転可能に挿通される。スクリュ5は、基端から先端に向かって真っ直ぐに構成されている。スクリュ5の基端には、カップリング15が設けられている。カップリング15には、回転移動装置(図示しない)を連結させることができる。
かかる構成によれば、スクリュ5をシリンダ10に挿通させた状態において、回転移動装置によって、スクリュ5は、直線状の軸線16を中心に回転可能となると共に、軸線16に沿って移動可能となる。
【0017】
なお、スクリュ5をシリンダ10に挿通させた状態において、スクリュ5(後述するスクリュ本体33〜36)の基端は、バレル6の基端側に位置付けられると共に、スクリュ5(スクリュ本体33〜36)の先端は、バレル6の先端側に位置付けられる。ここで、スクリュ5の基端は、スクリュ本体33〜36の基端と一致すると共に、スクリュ5の先端は、スクリュ本体33〜36の先端と一致する。
【0018】
更に、スクリュ5(スクリュ本体33〜36)の回転方向(左回転、右回転)とは、スクリュ5及びバレル6の基端側から見た場合の回転方向(左回転、右回転)である。同様に、フライト(後述するフライト37、38、39、40)のねじれ方向(時計回り、逆時計回り)とは、スクリュ5及びバレル6の基端側から見た場合のねじれ方向(時計回り、逆時計回り)である。
【0019】
スクリュ5は、定量移送部5aと、供給部5bと、圧縮部5cと、計量部5dと、を有している。スクリュ5には、バレル6(スクリュ5)の基端から先端に向かって順に、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dが並んでいる。ここで、定量移送部5aは、投入口12から投入された原料13を定量的に移送可能に構成されている。供給部5bは、移送された原料13を連続的に供給可能に構成されている。圧縮部5cは、供給された原料13を可塑化可能に構成されている。計量部5dは、可塑化された原料13を計量可能に構成されている。なお、スクリュ5の詳細は後述する。
【0020】
バレル6には、当該バレル6を加熱する加熱装置8が設けられている。加熱装置8としては、例えばヒータ17を適用することができる。ヒータ17は、バレル6の外面6sに沿って配置されている。ヒータ17を発熱させることで、バレル6を加熱することができる。
【0021】
加熱装置8(ヒータ17)は、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dのうち、定量移送部5aを除いた範囲において、バレル6に設けてもよいし、或いは、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dのうち、少なくとも定量移送部5aの範囲において、バレル6に設けてもよい。図面では一例として、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dに対向するバレル6に加熱装置8(ヒータ17)が設けられている。
【0022】
この場合、定量移送部5aの範囲の加熱装置8(ヒータ17)については、その動作及び停止のタイミングを自由に設定できるようにしてもよい。これにより、計量部5dに搬送されるまでに、全ての原料13を満遍無く可塑化させるように、加熱装置8(ヒータ17)を制御することが可能となる。
【0023】
ここで、バレル6は、その外周全体がバレルカバー42(図1図3参照)によって覆われている。バレルカバー42は、加熱装置8(ヒータ17)の外側(上下左右の四面)を覆うように配置されている。バレルカバー42は、断熱性を有している。これにより、バレル6の加熱を精度よく効率的に行うことが可能となる。なお、バレルカバー42と加熱装置8(ヒータ17)との間には、後述する水分率調整機構41の伝熱管48(heat transfer pipe)が配置されている。なお、バレルカバー42は、必ずしも上下左右の四面を覆う必要は無く、例えば、下面を外部に開放させるようにしてもよい。
【0024】
更に、バレル6には、ベント機構7が設けられている。ベント機構7は、シリンダ10内に発生した気体成分(例えば、水蒸気、ガス、空気、その他の揮発成分)を、シリンダ10外に排気可能に構成されている。ベント機構7には、吸引装置2、エアパージ(air purge)装置3、ベント異常検知装置4が接続されている。
【0025】
ベント機構7には、共用配管19の一端が接続されている。共用配管19の他端は、分岐管20に接続されている。分岐管20には、2つの専用配管(第1配管21、第2配管22)が接続されている。吸引装置2及びベント異常検知装置4は、第1配管21に設けられている。エアパージ装置3は、第2配管22に設けられている。
【0026】
第1配管21において、吸引装置2は、真空ポンプ23と、第1流量調整バルブ24と、第1電磁切換バルブ25と、第1ドレンセパレータ26と、を有している。ベント異常検知装置4は、流量計27と、圧力計28と、を有している。なお、第1配管21には、特に図示しないが、モノマー凝固装置や脱臭装置を配置させてもよい。
【0027】
第2配管22において、エアパージ装置3は、エア源29と、第2ドレンセパレータ30と、第2流量調整バルブ31と、第2電磁切換バルブ32と、を有している。なお、第1ドレンセパレータ26は、例えば、水などの異物が真空ポンプ23に浸入するのを防止可能に構成されている。第2ドレンセパレータ30は、例えば、エア源29から発せられる水などの異物がベント機構7に浸入するのを防止可能に構成されている。
【0028】
かかる構成において、シリンダ10内を負圧に引く場合、例えば、エア源29の動作を停止させる。第2電磁切換バルブ32を閉じる。第1電磁切換バルブ25を開く。第1流量調整バルブ24を調整する。真空ポンプ23を動作させる。このとき、真空ポンプ23の吸引力は、第1配管21から共用配管19を通ってベント機構7に伝達される。これにより、シリンダ10内を負圧に引くことができる。この結果、シリンダ10内に発生した気体成分をベント機構7から排気させることができる。
【0029】
この間、例えば、流量計27及び圧力計28によって検知された流量値及び圧力値を、リアルタイムで外部モニタ(図示しない)上に表示させて監視する。そして、これらの値に異常があったとき(即ち、予め設定した許容値を外れたとき)、その旨を報知(警告)する。このとき、真空ポンプ(吸引装置2)の動作を停止させてもよい。これにより、シリンダ10内に対する真空引きの安定性及び信頼性を向上させることができる。
【0030】
また、エアパージを行う場合、例えば、真空ポンプ23の動作を停止させる。第1電磁切換バルブ25を閉じる。第2電磁切換バルブ32を開く。第2流量調整バルブ31を調整する。エア源29を動作させる。このとき、エア源29の加圧力は、第2配管22から共用配管19を通ってベント機構7に伝達される。これにより、ベント機構7(後述する排気路)の目詰まりを、空気圧によって除去することができる。ここで、エアパージは、真空引きを停止させるタイミングに同期して行うことができる。例えば、射出成形機1のノズル14から可塑化原料13s(図2参照)を射出した後、成形品を脱型する際のタイミングに同期してエアパージを行うことができる。
【0031】
なお、バレル6の基端において、スクリュ5の基端とシリンダ10の内周面10sとの間は、シール(密閉)してもよいし、或いは、シール(密閉)しなくてもよい。図面には一例として、シール(密閉)しない構成が示されている。シール(密閉)する場合には、例えば、スクリュ5の基端とシリンダ10の内周面10sとの隙間を覆うように、シール構造体(図示しない)を配置すればよい。ここで、シール(密閉)する場合、シリンダ10内に対する真空引きの際、上記したホッパー11から投入口12を通ってシリンダ10内に外気が流入する。一方、シール(密閉)しない場合、ホッパー11(投入口12)、及び、スクリュ5の基端とシリンダ10の内周面10sとの隙間を通ってシリンダ10内に外気が流入する。
【0032】
「射出成形システムの動作について」
ベント機構7を通してシリンダ10内を負圧に引いた状態において、スクリュ5を回転させる。このとき、スクリュ5は、その先端をノズル14に近接させた状態で回転する。ここで、ホッパー11に原料13(例えば、ペレット)を供給すると、当該原料13は、後述する水分率調整機構41から投入口12を通って、シリンダ10内に投入される。
【0033】
投入された原料13は、定量移送部5aによって定量的に移送される。移送された原料13は、供給部5bによって連続的に供給される。供給された原料13は、圧縮部5cによって可塑化される。即ち、圧縮部5cにおいて、当該原料13は、ヒータ17により加熱されつつ圧縮されることで、溶融された原料13(可塑化原料)となる。続いて、可塑化原料は、計量部5dを通ってスクリュ5の先端に搬送される。
【0034】
このとき、スクリュ5の先端に搬送された可塑化原料13sに押されて、スクリュ5が後退する(図2参照)。この間、スクリュ5には、背圧(back pressure)がかけられる。そして、スクリュ5が計量完了位置まで後退(例えば、1回の射出分だけ後退、即ち、1ショット(one shot)分後退)したとき、スクリュ5の回転を停止させる。このとき、1個の成形品を作るのに必要な可塑化原料13sがシリンダ10内に蓄えられたことになる(図2参照)。なお、計量完了位置は、射出成形の目的や用途に応じて設定されるため、ここでは特に限定しない。このとき、サックバック(suck back)が行われる。即ち、計量完了後、スクリュ5を若干後退させる。これにより、ノズル14からの原料漏れを防止することができる。
【0035】
次に、非回転状態のスクリュ5をノズル14に向けて前進させる。この結果、シリンダ10内に蓄えられた可塑化原料13sをシリンダ10外(例えば、金型)に射出させることができる。続いて、金型を冷却する。この後、脱型により目的の成形品を得ることができる。
【0036】
なお、射出に際し、スクリュ5を、ノズル14に近接した位置(図1参照)から計量完了位置(図2参照)まで後退させる距離については、以下、これを「ストローク長」と称する。更に、上記した可塑化原料13sには、いわゆるクッション量が含まれていることは言うまでもない。
【0037】
「スクリュ5について」
図1図2に示すように、スクリュ5において、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dは、それぞれ、スクリュ本体33,34,35,36、及び、フライト37,38,39,40によって構成されている。フライト37,38,39,40は、スクリュ本体33,34,35,36の外周面33s,34s,35s,36sに沿って螺旋状にねじれて構成されている。なお、フライト37,38,39,40の詳細は後述する。
【0038】
「スクリュ本体33〜36の構成」
スクリュ本体33〜36(スクリュ5)は、その基端に、上記した回転移動装置が連結されるように構成されている。スクリュ本体33〜36(スクリュ5)は、当該基端から先端に亘って、上記した直線状の軸線16に沿って真っ直ぐに構成されている。スクリュ本体33〜36(スクリュ5)は、軸線16を中心に同心円状に構成されている。スクリュ本体33〜36(スクリュ5)の基端から先端に向かって順に、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dが並んで構成されている。かかる構成によれば、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、回転移動装置によって、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)は、軸線16を中心に回転可能となると共に、軸線16に沿って移動可能となる。
【0039】
具体的に説明すると、スクリュ本体33〜36は、定量移送部5aにおける第1スクリュ本体33と、供給部5bにおける第2スクリュ本体34と、圧縮部5cにおける第3スクリュ本体35と、計量部5dにおける第4スクリュ本体36と、を備えて構成されている。第1スクリュ本体33、第2スクリュ本体34、及び、第4スクリュ本体36は、円筒形状の外周面33s,34s,36sを有している。第3スクリュ本体35は、第2スクリュ本体34から第4スクリュ本体36に向かって末広がり形状の外周面35sを有している。即ち、第3スクリュ本体35の外周面35sは、円錐台形状を有している。
【0040】
第2スクリュ本体34の差渡し寸法(例えば、直径)は、第4スクリュ本体36の差渡し寸法(例えば、直径)よりも小さく設定されている。換言すると、第4スクリュ本体36の差渡し寸法(直径)は、第2スクリュ本体34の差渡し寸法(直径)よりも大きく設定されている。かかる構成によれば、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、第4スクリュ本体36の外周面36sとシリンダ10の内周面10sとの隙間は、第2スクリュ本体34の外周面34sとシリンダ10の内周面10sとの隙間よりも狭くなっている。
【0041】
第3スクリュ本体35の差渡し寸法(例えば、直径)は、第2スクリュ本体34から第4スクリュ本体36に向かう従って、連続的に大きくなるように設定されている。かかる構成によれば、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、第3スクリュ本体35の外周面35sとシリンダ10の内周面10sとの隙間は、第2スクリュ本体34から第4スクリュ本体36に向かう従って、連続的に狭くなっている。
【0042】
第1スクリュ本体33の差渡し寸法(例えば、直径)33dは、第2スクリュ本体34の差渡し寸法(直径)34dよりも大きく設定されている。換言すると、第2スクリュ本体34の差渡し寸法(直径)34dは、第1スクリュ本体33の差渡し寸法(直径)33dよりも小さく設定されている。かかる構成によれば、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、第1スクリュ本体33の外周面33sとシリンダ10の内周面10sとの隙間は、第2スクリュ本体34の外周面34sとシリンダ10の内周面10sとの隙間よりも狭くなっている。
【0043】
第1スクリュ本体33の軸線16方向に沿った長さは、スクリュ5が上記した「ストローク長」だけ後退しても、定量移送部5aが投入口12に対向する位置から外れないように設定されている。換言すると、第1スクリュ本体33の軸線16方向に沿った長さは、スクリュ5が上記した「ストローク長」だけ後退しても、投入口12が供給部5bに入り込まないように設定されている。
【0044】
ここで、スクリュ5の差渡し寸法(直径)は、フライト37,38,39,40の最外径を含んだ径寸法として規定されている。スクリュ5の差渡し寸法(直径)は、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dを含んだ全体に亘って、一定(同一)の径寸法に設定されている。この場合、スクリュ5の差渡し寸法(直径)をDとすると、第1スクリュ本体33の軸線16方向に沿った長さは、上記した「ストローク長」を下限とし、かつ、当該「ストローク長」に「0.5D〜2Dの範囲の値」を加えた長さに設定されていることが好ましい。
【0045】
かかる構成によれば、スクリュ5をノズル14に近接した位置(図1参照)から計量完了位置(図2参照)まで後退させる間、投入口12は、常に、定量移送部5aに対向する範囲に位置付けられる。これにより、ホッパー11から投入口12を通ってシリンダ10内に投入された原料13は、その全てが漏れなく定量移送部5aに供給される。この結果、投入された原料13を、定量的かつ安定的に供給部5bに移送することができる。
【0046】
「フライト37,38,39,40の構成」
フライト37,38,39,40は、シリンダ10内に投入された原料13を、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dの順に、連続的に搬送するように構成されている。フライト37〜40は、互いに同一方向に向かって螺旋状にねじれている。フライト37〜40のねじれ方向としては、例えば、右ねじと同様に時計回りに設定してもよいし、或いは、左ねじと同様に逆時計回りに設定してもよい。
【0047】
図面には一例として、時計回りにねじられたフライト37〜40が示されている。この場合、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)の回転方向は、軸線16を中心に逆時計回り(左回転)に設定すればよい。なお、フライト37〜40が逆時計回りにねじられている場合、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)の回転方向は、軸線16を中心に時計回り(右回転)に設定すればよい。
【0048】
具体的に説明すると、定量移送部5aにおいて、第1スクリュ本体33の外周面33sには、螺旋状にねじれた第1フライト37が設けられている。第1フライト37のねじれ方向は、右ねじと同様に時計回りに設定されている。換言すると、第1フライト37は、第1スクリュ本体33(スクリュ5)の回転方向とは逆方向にねじれている。第1フライト37のねじれピッチは、一定である。
【0049】
供給部5bにおいて、第2スクリュ本体34の外周面34sには、螺旋状にねじれた第2フライト38が設けられている。第2フライト38のねじれ方向は、右ねじと同様に時計回りに設定されている。換言すると、第2フライト38は、第2スクリュ本体34(スクリュ5)の回転方向とは逆方向にねじれている。第2フライト38のねじれピッチは、一定である。
【0050】
圧縮部5cにおいて、第3スクリュ本体35の外周面35sには、螺旋状にねじれた第3フライト39が設けられている。第3フライト39のねじれ方向は、右ねじと同様に時計回りに設定されている。換言すると、第3フライト39は、第3スクリュ本体35(スクリュ5)の回転方向とは逆方向にねじれている。第3フライト39のねじれピッチは、一定である。
【0051】
計量部5dにおいて、第4スクリュ本体36の外周面36sには、螺旋状にねじれた第4フライト40が設けられている。第4フライト40のねじれ方向は、右ねじと同様に時計回りに設定されている。換言すると、第4フライト40は、第4スクリュ本体36(スクリュ5)の回転方向とは逆方向にねじれている。第4フライト40のねじれピッチは、一定である。
【0052】
上記した第1〜第4フライト37〜40のねじれピッチは、互いに同一に設定することが好ましい。この場合、供給部5bにおいて、第2フライト38のピッチ間に沿ってサブフライト38aを設けてもよい。これにより、供給部5bにおけるフライト38a,38のねじれピッチを、例えば、他のフライト37,39,40のねじれピッチの半分(1/2)に設定することができる(図1図2参照)。
【0053】
更に、第1〜第4フライト37〜40は、軸線16に沿った方向のフライト幅を有している。フライト幅とは、第1〜第4フライト37〜40の軸線16方向に沿った厚さを指している。この場合、第1〜第4フライト37〜40のフライト幅(厚さ)を、互いに同一に設定してもよいし、互いに相違させてもよい。図面では一例として、第1フライト37のフライト幅(厚さ)は、第2フライト38のフライト幅(厚さ)よりも大きく設定されている。
【0054】
「スクリュ5の効果について」
本実施形態のスクリュ5によれば、第1仕様として、第1スクリュ本体33の差渡し寸法(直径)33dを、第2スクリュ本体34の差渡し寸法(直径)34dよりも大きく設定する。又は、第2仕様として、第1フライト37のフライト幅(厚さ)を、第2フライト38のフライト幅(厚さ)よりも大きく設定する。そして、第3仕様として、上記した第1仕様と第2仕様の双方を同時に適用する。これにより、シリンダ10内に投入された原料13を、定量移送部5aによって、定量的かつ安定的に供給部5bに移送することができる。この結果、原料供給装置を別途備えることなく、一定量の原料に対する射出成形が可能となる。
【0055】
更に、本実施形態のスクリュ5によれば、原料供給装置としての機能を有する定量移送部5aを、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dと共に、1本のスクリュ5に一体化させることができる。この場合、当該スクリュ5を回転させるだけで、定量移送部5aにおいて、原料供給装置と同様の効果が発揮される。これにより、原料供給装置が不要となった分だけ、低消費電力化を実現することができると共に、射出成形機1回りのコンパクト化を実現することができる。
【0056】
「ベント機構7の配置について」
図1図3に示すように、ベント機構7の配置は、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dに対向するバレル6のうち、供給部5bに対向した範囲のバレル6に設けるように設定することが好ましい。具体的には、ベント機構7を設ける位置は、射出時にスクリュ5を軸線16に沿ってバレル6の先端に移動させた状態において、供給部5bに対向した範囲のバレル6のうち、バレル6の基端に最も近接した部分に設定することが好ましい。なお、供給部5bのうち、バレル6の先端寄りの部分は、原料13の可塑化が始まっている。このため、当該部分にベント機構7を設けた場合、ベントアップ現象を生じ易い。
【0057】
ここで、上記したように、スクリュ本体33〜36(スクリュ5)をシリンダ10に挿通させた状態において、第1スクリュ本体33の外周面33sとシリンダ10の内周面10sとの隙間(以下、第1隙間という)は、第2スクリュ本体34の外周面34sとシリンダ10の内周面10sとの隙間(以下、第2隙間という)よりも狭くなっている。換言すると、供給部5bの第2隙間は、定量移送部5aの第1隙間よりも広くなっている。
【0058】
かかる構成によれば、定量移送部5aによって第1隙間を定量的に移送された原料13は、供給部5bに導入される際に、第1隙間よりも広い第2隙間に広がっていく。このとき、原料13は、供給部5bの第2隙間の全体に亘って分散する。換言すると、当該第2隙間には、原料13の存在しない空間的な隙間が形成される。この場合、少なくともベント機構7が設けられた位置に対向するバレル6のシリンダ10内に、原料13の存在しない空間的な隙間が構成される。これにより、ベントアップ現象を発生させること無く、シリンダ10内に発生した気体成分のみを、ベント機構7を通して、効率よく、シリンダ10外に排気させることができる。この結果、排気性能を長期に亘って一定に維持することができる。
【0059】
「水分率調整機構41」
水分率調整機構41は、次のように構成されている。即ち、原料13がホッパー11からシリンダ10に投入される間に、言い換えれば、原料13がシリンダ11に投入される直前に、オンラインで原料13の水分率を低下させる。これにより、ベント機構7の脱気能力の不足分を補う。この結果、シリンダ10に投入される原料13の水分率を、ベント機構7の脱気能力の範囲内にする。
【0060】
「貯留ユニット43」
水分率調整機構41は、貯留ユニット43を有している。貯留ユニット43は、予め設定された分量の原料13を一時的に貯留可能に構成されている。貯留ユニット43には、ホッパー11を連結可能に構成されている。
【0061】
ここで、射出成形機1の成形サイクルにおいて、溶融された原料13(可塑化原料13s)を金型のキャビティに射出して保圧している間、スクリュ5の回転による原料13の可塑化は、一旦停止される。この可塑化が停止されている間、原料13は貯留ユニット43からシリンダ10へ投入されず、貯留ユニット13内に一時的に貯留される。そして、スクリュ5の回転による原料13の可塑化が再開されると、貯留ユニット43に貯留された原料13はシリンダ10へ投入される。
【0062】
貯留ユニット43は、第1貯留部43aと、第2貯留部43bと、を備えている。第1貯留部43aと第2貯留部43bとは、互いに連結されて連通されている。このため、第1貯留部43aの内部から第2貯留部43bの内部に亘って、一連の貯留空間44(図4参照)が構成されている。当該貯留空間44において、第2貯留部43bの貯留容量は、第1貯留部43aの貯留容量よりも小さく設定されている。換言すると、第1貯留部43aの貯留容量は、第2貯留部43bの貯留容量よりも大きく設定されている。
【0063】
この場合、第2貯留部43bは、上記したホッパー台58の投入口12に嵌め込み可能に構成されている。第2貯留部43bを投入口12に嵌め込むことで、貯留ユニット43(水分率調整機構41)を、ホッパー台58に取り付けることができる。この状態において、重力方向で見て、第2貯留部43bの上部側に第1貯留部43aが配置されている。
【0064】
第1貯留部43aには、ホッパー11を嵌め込み可能に構成されている。ホッパー11を第1貯留部43aに嵌め込むことで、当該ホッパー11を貯留ユニット43に連結させることができる。この状態において、重力方向で見て、ホッパー11の下部側に第1貯留部43aが配置され、第1貯留部43aの下部側に第2貯留部43b配置されている。そして、ホッパー11から貯留ユニット43(貯留空間44)を介してホッパー台58の投入口12に亘って、一連の原料投入通路が構成されている。
【0065】
かかる構成において、射出成形機1での可塑化が停止されている間、ホッパー11に供給された原料13は、第1貯留部43aから第2貯留部43bに亘って一時的に貯留される。そして、射出成形機1での可塑化が再開されると、スクリュ5の回転に伴って、第2貯留部43bに貯留された原料13が、重力の作用を受けてシリンダ10に徐々に投入される。これに合わせて、第1貯留部43aに貯留された原料13が、第2貯留部43bに向かって徐々に落下する。
【0066】
ここで、第1及び第2貯留部43a,43bの内部(即ち、貯留空間44(図4参照))の断面形状としては、例えば、矩形、三角形、円形など各種の形状を適用することができる。図面では一例として、第1及び第2貯留部43a,43bの内部(貯留空間44)は、円形の断面形状を有する中空円筒形に構成されている。第1貯留部43aの内部と、第2貯留部43bの内部とは、同心円状に接続されている。これにより、貯留空間44内において、原料13の移動をし易くすることができる。
【0067】
また、第1貯留部43aの内部と、第2貯留部43bの内部との接続部分には、円環状のテーパ部43c(図4参照)が設けられている。テーパ部43cは、第1貯留部43aから第2貯留部43bに向かうに従って先細り形状を有している。即ち、テーパ部43cは、円錐台形状を有している。この場合、第1貯留部43aの内部と、第2貯留部43bの内部とは、段差の無い円筒面によって相互に連続される。これにより、第1貯留部43aに貯留された原料を、第2貯留部43bに向けてスムーズに移動させることができる。
【0068】
更に、テーパ部43cを設けたことで、第1貯留部43aに貯留された原料13が、一度(一気)に第2貯留部43bに落下することは無い。この結果、原料13を、第1貯留部43aから第2貯留部43bに向かって徐々に落下させつつ移動させることができる。かくして、後述する加熱ユニット45で加熱され、水分率が低下した原料13を、一定のタイミングで徐々にシリンダ10に投入させることができる。
【0069】
なお、図面では、ホッパー11に供給された原料13を、貯留ユニット43(即ち、第1貯留部43a)に貯留させる仕様が示されている。しかし、ホッパー11は、必ずしも必要な構成ではない。例えば、ホッパー11を除去した状態で、原料13をダイレクトに貯留ユニット43(第1貯留部43a)に供給するようにしてもよい。
【0070】
更に、貯留ユニット43(水分率調整機構41)において、第2貯留部43bは、成形品の種類に応じて交換可能に構成されている。例えば、複数種類の第2貯留部43bを用意する。各々の第2貯留部43bは、互いに異なる内部の大きさ(例えば、内径、差渡し径)を有している。これにより、成形品の種類に応じた最適な第2貯留部43bを選択して、第1貯留部43aに連結させることができる。なお、第2貯留部43bとしては、例えば、寸法が合えば、ホッパー台58の孔(図示しない)をそのまま利用してもよい。
【0071】
「加熱ユニット45」
水分率調整機構41は、加熱ユニット45を有している。加熱ユニット45は、上記した貯留ユニット43に一時的に貯留された原料13を加熱可能に構成されている。ここで、加熱ユニット45による「原料13を加熱」とは、例えば、加熱ユニット45により「可塑化させること無く、原料13を温めること」ないし「温めた原料13を保温すること」を意図している。加熱ユニット45は、外側加熱機構46と、内側加熱機構47と、を備えている。なお、外側加熱機構46は、図示しない制御部によって制御される。内側加熱機構47は、後述する制御部50によって制御される。
【0072】
以下では一例として、外側加熱機構46、及び、内側加熱機構47の双方を備えた水分率調整機構41について説明する。しかしながら、内側加熱機構47のみの仕様でも、後述する効果を実現することができることは言うまでもない。
【0073】
外側加熱機構46は、貯留ユニット43の外側を囲むように設けられている。外側加熱機構46は、貯留ユニット43に貯留された原料13を、貯留ユニット43の外側から加熱可能に構成されている。外側加熱機構46としては、例えば、市販されている既存のヒータを利用することができる。外側加熱機構(ヒータ)46は、第1貯留部43aの外側を覆うように配置されている。
【0074】
なお、上記した外側加熱機構は、第2貯留部43bの外側に配置されていない。バレル6の投入口12に連結させる第2貯留部43bは、原料13の貯留容量が小さい。かかる原料13は、後述する内側加熱機構47だけで、短時間のうちに隅々まで満遍無く予備加熱することができる。よって、第2貯留部には、外側加熱機構が適用されていない。
【0075】
内側加熱機構47は、貯留ユニット43の内側に入り込むように設けられている。内側加熱機構47は、貯留ユニット43に貯留された原料13を、貯留ユニット43の内側から加熱可能に構成されている。内側加熱機構47は、伝熱管48と、温度センサ49(図3参照)と、制御部50(図3参照)と、を有している。
【0076】
伝熱管48は、両端(一端48a、他端48b)を有する一連の中空管構造を成している。伝熱管48は、バレルカバー42と加熱装置8(ヒータ17)との間に配置されている。伝熱管48は、一端48aから熱媒体51(図1参照)を取込可能で、かつ、他端48bから熱媒体51(図4参照)を放出可能に構成されている。熱媒体51としては、空気を適用する。
【0077】
伝熱管48の一端寄りには、取込部52と、流量センサ53と、制御部50と、が設けられている。取込部52は、伝熱管48の一端48aに設けられている。取込部52(一端48a)は、射出成形機1の外側に配置されている。取込部52(一端48a)は、熱媒体(空気)51を取込可能に構成されている。流量センサ53は、取込部52(一端48a)から取り込まれる熱媒体(空気)51の流量を測定可能に構成されている。なお、流量センサ53の測定結果は、リアルタイムで制御部50に送信される。制御部50は、送信された測定結果を参照しつつ、熱媒体(空気)51の取込状態(後述する)を制御する。
【0078】
伝熱管48の他端寄りには、放出部(第1放出部54a、第2放出部54b)と、温度センサ49と、が設けられている。放出部54a,54bは、伝熱管48の他端48bに設けられている。放出部54a,54b(他端48b)は、貯留ユニット43の内側に配置されている。放出部54a,54bは、熱媒体(空気)51を放出可能に構成されている。
【0079】
第1放出部54aは、第1貯留部43aの貯留空間44に配置されている。第2放出部54bは、第2貯留部43bの貯留空間44に配置されている。いずれの場合でも、放出部54a,54b(他端48b)は、貯留ユニット43の貯留空間44のうち、その中央部分に位置付けられている。この場合、熱媒体(空気)51の放出方向は、放出部54a,54b(他端48b)の周囲に向けて放射状(図4参照)に設定されている。
【0080】
ここで、他端寄りにおいて、伝熱管48は、第1配管55と、第2配管56とに分岐されている。第1及び第2配管55,56は、温度センサ49から放出部54a,54bに亘って構成されている。かかる構成において、第1配管55には、第1放出部54aが接続され、第2配管56には、第2放出部54bが接続されている。
【0081】
温度センサ49は、放出部54a,54bから放出される熱媒体(空気)51の温度を測定可能に構成されている。温度センサ49の測定結果は、上記した制御部50に送信される。制御部50は、温度センサ49の測定結果に基づいて、取込部52(一端48a)から取り込むべき熱媒体(空気)51の取込状態(例えば、流量、取込量)を制御可能に構成されている。かかる取込状態(流量、取込量)を制御することで、伝熱管48の放出部54a,54b(他端48b)から放出すべき熱媒体(空気)51の放出状態(例えば、放出温度、放出速度など)を調節することができる。
【0082】
更に、伝熱管48には、受け渡し部48cが構成されている。受け渡し部48cは、取込部52(一端48a)と、放出部54a,54b(他端48b)との間の領域に亘って連続的に構成されている。受け渡し部48cは、外部の熱を熱媒体(空気)51に受け渡し可能に構成されている。図面では一例として、受け渡し部48cは、定量移送部5a、供給部5b、圧縮部5c、計量部5dを経由して温度センサ49に接続されている。
【0083】
かかる構成において、取込部52(一端48a)から取り込まれた熱媒体(空気)51には、受け渡し部48cにおいて、各部5a〜5dの加熱装置8(ヒータ17)から発散される熱が受け渡たされる。そして、熱を帯びた熱媒体(空気)51が、放出部54a,54b(他端48b)から貯留ユニット43の内側(貯留空間44)に放出される。この場合、受け渡し部48cを長尺化させる。これにより、熱媒体(空気)51に受け渡される熱量が多くなる。この結果、放出部54a,54b(他端48b)からの放出温度を上昇させることができる。
【0084】
なお、受け渡し部48cの全長及び配置を設定した状態において、放出温度の調節は、取込部52(一端48a)から取り込むべき熱媒体(空気)51の取込状態(例えば、流量、取込量)を制御することで行われる。例えば、取込部52(一端48a)から取り込むべき熱媒体(空気)51の取込量を一定に維持する。かかる状態において、取込部52(一端48a)から取り込むべき熱媒体(空気)51の流量を増加させる。これにより、放出温度を下げることができる。逆に、当該流量を減少させる。これにより、放出温度を上げることができる。
【0085】
「水分率調整の仕様」
例えば、水分率がベント機構7の脱気能力を僅かに超えてしまった原料13、言い換えれば、吸湿が比較的小さい原料13が、貯留ユニット43(第1及び第2貯留部43a,43b)の貯留空間44に貯留された状態において、射出成形機1を作動させる。このとき、受け渡し部48cには、内側加熱機構47によって、取込部52(一端48a)から取り込まれた熱媒体(空気)51が連続的に流動する。射出成形機1から発生した熱は、伝熱管48の受け渡し部48cを介して熱媒体(空気)51に受け渡される。
【0086】
ここで、加熱された熱媒体(空気)51は、伝熱管48の他端48bまで流動する。加熱された熱媒体(空気)51は、放出部54a,54bから貯留ユニット43(第1及び第2貯留部43a,43b)の貯留空間44に放出される。同時に、外側加熱機構(ヒータ)46を動作させる。これにより、貯留ユニット43に貯留された原料13が、オンラインで短時間のうちに隅々まで満遍無く加熱される。この加熱により、原料13がホッパー11からシリンダ10に投入される間に、言い換えれば、原料13がシリンダ11に投入される直前に、原料13に含まれる水分が蒸発し、原料13の水分率が低下する。これにより、シリンダ10に投入された原料13の水分率は、ベント機構7の脱気能力の範囲内となる。
【0087】
このとき、温度センサ49及び流量センサ53の測定結果に基づいて、取込部52から取り込むべき熱媒体(空気)51の流量を増加させる。これにより、貯留空間44に放出させる熱風の温度を下げることができる。逆に、当該流量を減少させる。そうすると、貯留空間44に放出させる熱風の温度を上げることができる。
【0088】
この後、貯留空間44に放出された熱媒体(空気)51は、排気構造体57を通って、機外に排気される。なお、排気構造体57は、貯留ユニット43を、その内側から外側に貫通させて構成することができる。この場合、熱風は、重力方向に沿って上昇する傾向にある。よって、排気構造体57は、貯留ユニット43のうち、重力方向に沿って最も高い位置に配置させることが好ましい。図面には一例として、第1貯留部43aの上部を貫通させて構成された排気構造体57が示されている。
【0089】
なお、上記したホッパー台58には、冷却水通路59が設けられている。冷却水通路59は、バレル6の基端(スクリュ5の基端)におけるシリンダ10の外周に沿って冷却水を流動可能に構成されている。ここで、例えば、ホッパー11から水分率調整機構41を通って、シリンダ10内に投入された原料13が、軟化(可塑化)している場合、当該軟化原料13は、スクリュ5によって安定して搬送させることが困難になる。このとき、冷却水通路59に冷却水を流動させる。これにより、かかる軟化原料13を、再び、固化させることができる。この結果、当該固化原料13は、スクリュ5によって安定して搬送させることができる。
【0090】
「貯留ユニット43の貯留容量」
貯留ユニット43に貯留可能な原料13の貯留容量は、シリンダ10の断面積と、機械的仕様値である最大ストロークとの積として表わされる射出成形機固有の最大射出容量を基に設定される。
【0091】
シリンダ10へ投入される原料13は、少なくとも1回以上、貯留ユニット13内に一時的に貯留され、加熱されたものであることが好ましい。貯留ユニット13に一時的に貯留されずに、単に貯留ユニット13を通過しただけの原料13が混入すると、成形が不安定になる虞がある。
【0092】
一般的には、1回の射出形成に際して、当該射出成形機1が蓄えるべき可塑化原料13s(図2参照)の容量(即ち、1ショット容量)は、おおよそ、最大出射容量の90%以下に設定される。シリンダ10へ投入される原料13が、少なくとも1回以上、貯留ユニット13内に一時的に貯留され、加熱されたものとするためには、貯留ユニット43の原料13の貯留容量を最大射出容量以上にすることが好ましい。
【0093】
一方、貯留ユニット43の原料13の貯留容量を大きくすると、外側加熱機構46と内側加熱機構47との間隔が広がり、貯留された原料13に加熱むらが生じる虞がある。射出成形機1による成形サイクルが短い場合、貯留ユニット13内での原料13の一時的な貯留が1回だけでは加熱不足となる可能性があることも考慮すると、貯留ユニット43の原料13の貯留容量を最大射出容量の3倍以下とすることが好ましい。
【0094】
ここで、貯留ユニット43の原料13の貯留容量をQ1とし、最大出射容量をQ2とすると、上記した理由より、貯留容量Q1を、最大射出容量Q2に対して、
Q2≦Q1≦3.0×Q2
なる関係を満足するように設定することが好ましい。
【0095】
例えば、最大出射容量Q2が200cmの射出成形機1を想定する。上記の関係式から貯留ユニット43の原料13の貯留容量Q1は、
200cm≦Q1≦600cm
なる関係を満足するように設定する。
【0096】
「一実施形態の効果」
本実施形態によれば、原料13がシリンダ11に投入される直前に、オンラインで原料13の水分率を低下させる。これにより、シリンダ10に投入される原料13の水分率を、ベント機構7の脱気能力の範囲内にすることができる。この結果、脱気不良に起因した品質劣化を未然に防止することができる。この場合、水分率を低下させた原料13は、その吸湿が比較的小さくなっている。このため、当該原料13に対して、わざわざ乾燥機を用いて、通常の工程では行われない乾燥機による乾燥(即ち、オフラインによる原料の水分率の低下処理)を行う必要は無い。
【0097】
本実施形態によれば、貯留ユニット43の構造において、第1貯留部43aの貯留容量を、第2貯留部43bの貯留容量よりも大きく設定する。これにより、重力の作用を受けてホッパー11から貯留ユニット43に落下した原料13は、順次、一時的に貯留されつつ第1貯留部43a、第2貯留部43bを移動する。この結果、成形が不安定になることはなく、一定の品質を有する成形品を成形することができる。
【0098】
本実施形態によれば、射出成形機1の作動時に発生する熱(例えば、加熱装置8(ヒータ17)から発散される熱)を利用して、原料13がシリンダ11に投入される直前に、原料13の水分率調整を行う。この場合、熱源を別途確保する必要が無い。これにより、熱源用のスペースや予算を確保することが不要となる。この結果、環境に優しいコンパクトで省エネの射出成形機1を実現することができる。
【符号の説明】
【0099】
1…射出成形機、13…原料、13s…可塑化原料、41…水分率調整機構、
43…貯留ユニット、43a…第1貯留部、43b…第2貯留部、45…加熱ユニット、
46…外側加熱機構、47…内側加熱機構、48…伝熱管、52…取込部、
54a,54b…放出部、57…排気構造体。
図1
図2
図3
図4