特許第6409103号(P6409103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6409103-駆動力制御装置 図000002
  • 特許6409103-駆動力制御装置 図000003
  • 特許6409103-駆動力制御装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6409103
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】駆動力制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20181004BHJP
   B60K 28/10 20060101ALI20181004BHJP
   B60K 26/02 20060101ALI20181004BHJP
   B60W 50/12 20120101ALI20181004BHJP
【FI】
   F02D29/02 K
   B60K28/10 Z
   B60K26/02
   B60W50/12
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-149867(P2017-149867)
(22)【出願日】2017年8月2日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】517271371
【氏名又は名称】株式会社nu−face
(74)【代理人】
【識別番号】100162536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 豊
(72)【発明者】
【氏名】水野 勇
【審査官】 ▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−238182(JP,A)
【文献】 特開2012−254745(JP,A)
【文献】 特開2008−095635(JP,A)
【文献】 特開昭61−190134(JP,A)
【文献】 特開2008−063953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B60K 25/00−28/16
F02D 29/00−29/06
F02D 9/00−11/10
B60W 30/00−50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル踏込量検出手段と、
所定の足置き用シートにかかる加重を検出する加重検出手段と、
所定時間内の前記アクセル踏込量検出手段に検出された値が第1の所定値以下のときの前記加重検出手段に検出された加重値と、前記アクセル踏込量検出手段に検出された値が第2の所定値以上となったときの前記加重検出手段に検出された加重値と、を比較し、設定した値よりも大きかった場合に、前記アクセルペダルの踏込量に基づいて駆動する駆動手段の駆動力を制限する制御手段と、
を備えたことを特徴とする駆動力制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記加重検出手段に検出された加重が、適正加重下限値未満であった場合に、前記駆動力を制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動力制御装置。
【請求項3】
車両を制動させる制動手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記駆動力を制限する場合に、前記制動手段によって車両を制動させる、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駆動力制御装置。
【請求項4】
車両の車速を検出する車速検出手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記車速が制限有効車速を超えている場合、前記駆動力の制限を実行しない、
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の駆動力制御装置。
【請求項5】
前記制御手段による前記駆動力の制限の有無の切り替え情報を入力する切り替え情報入力手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記切り替え情報入力手段に入力された前記切り替え情報に基づいて、前記駆動力の制限の実行の有無を選択する、
ことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の駆動力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動力制御装置に関し、特に、アクセルペダルの踏み間違いにより生じる車両挙動の急激な変化を抑制する駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両におけるアクセルペダルとブレーキペダルの踏み間違い等の運転の操作ミスが多発している。このため、このような操作ミスによる事故を防止する技術が提案されている。
【0003】
例えば、自動車のアクセルペダルとブレーキペダルのそれぞれのペダルに、接触スイッチを設け、アクセルペダルに足を乗せたときには、青または緑色の認識灯を点灯させ、ブレーキペダルに足を乗せたときには、赤または橙色の認識灯を点灯させるようにしている。これにより、アクセルペダルまたはブレーキペダルのどちらに足を乗せたかを視認可能として、ペダルの踏み間違い、誤操作を事前に予防、防止するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−121536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の装置においては、運転者が認識灯の色を自分で視認し、ペダル操作の妥当性を判断しなければならない。したがって、運転者があわてていたり、パニックになってしまった場合には、運転者の判断自体が間違ったものとなり、誤操作を有効に防止することができず、車両が運転者の意図しない挙動をしてしまう虞があるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、誤操作が行われた場合であっても、誤操作により発生する駆動部(例えば、エンジン)の駆動力を制限することができる駆動力抑制装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明に係る駆動力制御装置は、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセル踏込量検出手段と、所定の足置き用シートにかかる加重を検出する加重検出手段と、前記加重検出手段に検出された加重が、適正加重上限値を超えた場合に、前記アクセルペダルの踏込量に基づいて駆動する駆動手段の駆動力を制限する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る駆動力制御装置は、前記制御手段は、前記加重検出手段に検出された加重が、適正加重下限値未満であった場合に、前記駆動力を制限する、ことを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る駆動力制御装置は、車両を制動させる制動手段と、を備え、前記制御手段は、前記駆動力を制限する場合に、前記制動手段によって車両を制動させる、ことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る駆動力制御装置は、車両の車速を検出する車速検出手段と、を備え、前記制御手段は、前記車速が制限有効車速を超えている場合、前記駆動力の制限を実行しない、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る駆動力制御装置は、前記制御手段による前記駆動力の制限の有無の切り替え情報を入力する切り替え情報入力手段と、を備え、前記制御手段は、前記切り替え情報入力手段に入力された前記切り替え情報に基づいて、前記駆動力の制限の実行の有無を選択する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、誤操作により発生する駆動手段の駆動力を制限することができる駆動力制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】運転席の下部の配置図の一例を示す図である。
図2】車両の概略ブロック構成図の一例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における車両制御処理を示すフローチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(車両の構成)
【0015】
まず、本発明の実施の形態における駆動力制御装置を備えた車両の構成について、図1に示す運転席の下部配置図、および、図2に示す車両の概略ブロック構成図を参照して、説明する。
図1に示すように、運転席の下部には、アクセルペダル30と、ブレーキペダル40と、足置き用シート50と、を備えている。
【0016】
アクセルペダル30は、後述するエンジン20のスロットルの開度を変更するためのものであり、アクセルペダル30の踏込量に応じてスロットル開度が大きくなるようになっている。なお、スロットルとは、エンジン20の吸気(混合気、なお、空気であってもよい)の流入量を調節し、エンジン20の出力を調整するための弁である。したがって、アクセルペダル30の踏込量に応じて、エンジン20の出力が調整され、車両10の速度(車速)を調整するようになっている。
【0017】
ブレーキペダル40は、車輪の回転数を減速または停止させるためのものであり、ブレーキペダル40の踏込量に応じて油圧(空気圧等でも可)が調整され、ブレーキ装置(ディスクブレーキ、ドラムブレーキ等)が作動し、車両10の制動を行う。
【0018】
また、ブレーキペダル40は、運転者が右足で操作(踏込)し易い位置に設置されている。また、上記アクセルペダル30は、ブレーキペダル40の右側に設けられ、ブレーキペダル40を踏み込んだ時の運転者がかかとを支点にしてアクセルペダル30を踏込ができる程度の位置に設置されている。
なお、安全運転のためには、アクセルペダル30とブレーキペダル40の踏み替えには、右足をしっかりと移動させた方が良い。そして、アクセルペダル30の操作時には、「かかとを床につけて」足首で調節し、ブレーキペダル40の操作時には、「かかとを床につけずに」上から押さえるように踏み込むのが良いとされている。
【0019】
足置き用シート50は、ブレーキペダル40の左方の床面に設置され、運転者の左足が置かれる位置に配置される。なお、足置き用シート50は、運転者によって左足の最適位置が異なる可能性があるため、移動可能となっている。また、足置き用シート50には、裏面に後述する加重センサ51を有する感圧パッドが設けられている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態における車両10は、動力源としてのエンジン20と、アクセルセンサ31と、加重センサ51と、車速センサ61と、制限有効化スイッチ70と、障害物センサ91と、車両10全体を制御するための車両用電子制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)100と、を備えている。
【0021】
また、図示は省略するが、車両10は、エンジン20において発生したトルクを伝達するとともに走行状態等に応じた変速段を形成する自動変速機、自動変速機から伝達されたトルクを前輪および後輪に伝達するドライブシャフト、プロペラシャフト、自動変速機から伝達されたトルクを左右の前輪および後輪に分配するディファレンシャル機構、前輪および後輪をそれぞれ制動するブレーキ装置、自動変速機等を油圧により制御する油圧制御装置などを備えている。
【0022】
エンジン20は、ガソリンあるいは軽油等の炭化水素系の燃料と空気との混合気を、図示しないシリンダの燃焼室内で燃焼させることによってトルクを出力する公知の動力装置により構成されている。エンジン20は、燃焼室内で混合気の吸気、燃焼および排気を断続的に繰り返すことによりシリンダ内のピストンを往復動させ、ピストンと動力伝達可能に連結されたクランクシャフトを回転させることにより、自動変速機にトルクを伝達するようになっている。なお、エンジン20に用いられる燃料は、エタノール等のアルコールを含むアルコール燃料であってもよい。また、本実施の形態における車両10は、通常のガソリンエンジンによるものを想定して説明しているが、これに限らず、ハイブリッド(HV)車両、電気自動車(EV)、水素燃料やバイオ燃料の用いた燃料電池自動車(FCV)等であっても構わない。
【0023】
アクセルセンサ31は、アクセルペダル30の踏込量を検出して、検出した踏込量に応じた検出信号(値)をECU100に出力するものである。なお、ECU100は、アクセルセンサ31から出力された検出信号が表わすアクセルペダル30の踏込量から、アクセル開度Accを算出するようになっている。
【0024】
加重センサ51は、足置き用シート50に掛けられた加重(圧力)を検出して、運転者の左足の加重を検出し、検出した加重に応じた検出信号(値)をECU100に出力するものである。なお、ECU100は、加重センサ51から出力された検出信号から、足置き用シート50に掛けられた加重を算出するようになっている。
【0025】
車速センサ61は、車両10の車速Vを算出するためのものであり、例えば、駆動輪に設けられた回転数センサであって、検出した信号から駆動軸回転数Ndを算出し、算出した駆動軸回転数NdをECU100に出力するものである。なお、ECU100は、車速センサ61から出力された駆動軸回転数Ndから、車速Vを算出するようになっている。
【0026】
制限有効化スイッチ70は、本発明の実施の形態における駆動力制御処理を行うか否かの切り替え情報、すなわち、駆動力の制御の有無の切り替え情報を入力するための切り替えスイッチであり、制限有効化スイッチ70を「オン」とすることにより、本駆動力制御処理を有効にすることができる。また、制限有効化スイッチ70を「オフ」とすれば、駆動力制御処理を無効化、すなわち、実行しないようにすることができる。
【0027】
障害物センサ91は、車両10のバンパー内等に取り付けられ、赤外線等により、車両10の外部の対象物との距離を計測し、所定の距離以内となった場合に、ECU100に信号を出力するものである。なお、ECU100は、障害物センサ91から出力された検出信号から、対象物との距離を算出する。そして、ECU100は、対象物との距離が所定の距離以下となった場合には、障害物との接近を検出し、所定の対応、例えば、警報装置の作動や、車両10を停止させるための処理等を行うようになっている。
【0028】
ECU100は、中央演算処理装置としてのCPU(Central Processing Unit)、CPUにより実行される制御プログラム、データテーブル、各コマンドやデータ等の記憶を行うROM(Read Only Memory)、一時的にデータを記憶するRAM(Random Access Memory)、書き換え可能な不揮発性のメモリからなるEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)および入出力インターフェース回路を備え、車両10の制御を統括するようになっている。
【0029】
また、ECU100は、エンジン20、アクセルセンサ31、加重センサ51、車速センサ61、制限有効化スイッチ70、障害物センサ91と接続されている。また、ECU100は、図示しないクランクセンサ等と接続されており、アクセルセンサ31や、これらのセンサから出力された検出信号により、エンジン回転数Ne、アクセル開度Acc等を検出するようになっている。
【0030】
さらに、ECU100は、油圧制御装置を制御し、自動変速機等の各部の油圧を制御するようになっている。なお、ECU100の特徴的な機能については、後述する。
【0031】
また、ECU100のROMには、各変速段を実現する作動表および車両制御を実行するためのプログラムが記憶されている。また、ECU100のROMには、詳述しないスロットル開度制御マップ、変速線図、車両10の諸元値等も記憶されている。
【0032】
さらに、ECU100のROMには、駆動力制御処理の対象とする車速Vの最大値である制限有効車速Ve、足置き用シート50の掛かる適正加重を判定するための適正加重上限値(第1の加重値)、適正加重下限値(第2の加重値)等が記憶されている。なお、例えば、制限有効車速Veを「20km/h」、適正加重上限値を「10kg重」、適正加重下限値を「1kg重」とする。制限有効車速Ve、適正加重上限値、適正加重下限値の詳細については、後述する。
【0033】
また、制限有効車速Ve、適正加重上限値、適正加重下限値は、それぞれ図示しない入力装置によって、運転者が設定値を入力することができるようになっている。
次に、本実施の形態における車両制御処理の動作について、図3に示すフローチャートを参照して、説明する。
【0034】
ここで、左足に力を入れずに右足にだけ力を入れることが困難である。そこで、本実施の形態における車両制御処理は、運転者が右足でアクセルペダル30を強く踏み込んだ場合には、左足も強く踏み込まれるという人間の特性を利用した駆動力制御処理を行うものである。また、本実施の形態における車両制御処理では、左足が所定の位置に置かれていない場合にも、駆動力制御処理を行うようにしている。
【0035】
なお、図3に示すフローチャートは、ECU100のCPUによって、RAMを作業領域として実行される車両制御処理のプログラムの実行内容を表す。この車両制御処理のプログラムは、ECU100のROMに記憶されている。また、この車両制御処理は、ECU100のCPUによって、予め定められた時間間隔で実行されるようになっている。
【0036】
(ステップS11)
図3に示すように、まず、ECU100は、ステップS11において、アクセルが有効か否かを判定する。具体的には、ECU100は、後述するアクセル無効化処理(ステップS16)により、アクセルペダル30の踏込量が無効化されているか否かを判定する。ECU100は、アクセルが有効である、すなわち、アクセルペダル30の踏込量が有効化されていると判定した場合には(ステップS11でYESと判定)、ステップS12に移行し、アクセルが有効化されていない(無効化されている)と判定した場合には(ステップS11でNOと判定)、ステップS21に移行する。
【0037】
(ステップS12)
次に、ECU100は、ステップS12において、制限有効化スイッチ70がオンであるか否かを判定する。ECU100は、制限有効化スイッチ70がオンであれば(ステップS12でYESと判定)、ステップS13に移行し、制限有効化スイッチ70がオンでなければ(ステップS12でNOと判定)、本車両制御処理を終了する。すなわち、ECU100は、制限有効化スイッチ70に入力された切り替え情報(オンかオフか)に基づいて、エンジン出力の制限の実行の有無を選択する。
【0038】
(ステップS13)
次いで、ECU100は、ステップS13において、アクセルペダル30の踏込があるか否かを判定する。具体的には、ECU100は、アクセルセンサ31からアクセル踏込検出信号が入力されているか否かを判定する。ECU100は、アクセルペダル30の踏込があると判定した場合には(ステップS13でYESと判定)、ステップS14に移行し、アクセルペダル30の踏込がないと判定した場合には(ステップS13でNOと判定)、本車両制御処理を終了する。
【0039】
(ステップS14)
次いで、ECU100は、ステップS14において、車速Vが制限有効車速Ve以下であるか否かを判定する。具体的には、ECU100は、車速センサ61から入力された検出信号に基づいて算出した車速Vと、予めROMに記憶してある制限有効車速Veと、を比較し、現在の車速Vが制限有効車速Ve以下であるか否かを判定する。
【0040】
なお、制限有効車速Veとは、通常走行中にエンジン20が停止、または、エンジン回転数が低下してしまうことを防止するためのものである。すなわち、制限有効車速Veは、アクセル開度Accの制限を行う際の車速Vの最大値であり、車速Vがこの制限有効車速Veを超えている場合には、アクセル開度Accの制限を行わない。また、制限有効車速Veは、所定の固定値ではなく、アクセルペダル30の踏込量に基づいて、変化する値であってもよい。
【0041】
ECU100は、車速Vが制限有効車速Ve以下であると判定した場合には(ステップS14でYESと判定)、ステップS15に移行し、車速Vが制限有効車速Ve以下ではないと判定した場合には(ステップS14でNOと判定)、本車両制御処理を終了する。
なお、このステップS14の処理は、なくてもよい。このステップS14の処理がない場合には、例えば、車両10が走行中に、運転者が発作を起こしたり、気を失ったりしても、後述するアクセル無効化処理を有効に実行させることができ、高齢者等に対して、より安全性を増すことができる。一方、ステップS14の処理を設ける場合は、アクセル無効化処理に車速制限を設けることとなり、高速走行中の急なアクセルの無効化を防止することもできる。さらに、ステップS14の処理を設け、車速Vが制限有効車速Ve以下でない場合には、すぐにアクセル無効化処理を行うのではなく、徐々にアクセル開度Accを小さくしていく等の処理を行うようにしてもよい。
【0042】
(ステップS15)
次いで、ECU100は、ステップS15において、検出した加重が適正加重範囲外であるか否かを判定する。具体的には、ECU100は、加重センサ51から入力された検出信号に基づいて算出した加重が、適正加重下限値(第2の加重値)未満であるか、または、適正加重上限値(第1の加重値)を超える値であるか否かを判定する。
【0043】
なお、適正加重範囲とは、運転者の左足が足置き用シート50に載せられていて、通常運転が行われていると判定するための範囲である。ここで、加重が適正加重下限値未満であれば、運転者の左足が足置き用シート50に載せられていないと判定することができる。また、加重が適正加重上限値を超えている場合には、運転者の左足が足置き用シート50を強く押していることが検出される。このとき、運転者の右足も強く押していることが考えられ、すなわち、アクセルペダル30が強く押されていると考えられる。したがって、安全のため、アクセル開度Accの制限や、アクセル踏込量をエンジン20に伝達しないようにする。
【0044】
ECU100は、検出した加重が適正加重範囲外であると判定した場合には(ステップS15でYESと判定)、ステップS16に移行し、検出した加重が適正加重範囲外ではないと判定した場合には(ステップS15でNOと判定)、本車両制御処理を終了する。
【0045】
(ステップS16)
次いで、ECU100は、ステップS16において、アクセル無効化処理を行う。具体的には、ECU100は、アクセルペダル30の踏込量に応じて、エンジン20に伝えているアクセル開度Accを「0」とする、または、アクセル開度Accがエンジン20に伝わらないようにする。
【0046】
なお、本処理では、アクセル無効化処理において、アクセル開度Accを「0」とするようにしているが、これに限らず、アクセル開度Accを所定値以下としたり、加重の値に応じて変化させたり、車速Vに応じて変化させるようにしてもよい。また、加重が適正加重下限値未満である場合には、アクセル開度Accに「1」より小さな所定の倍率、例えば、「1/10」を掛けて、加重が適正加重上限値を超えている場合には、アクセル開度Accを「0」とするようにしてもよい。
【0047】
さらに、ECU100は、このアクセル無効化処理において、アクセルに関する処理に限らず、制動処理、すなわち、ブレーキ装置を作動させて車両10を停止させるようにしてもよい。なお、ECU100は、この制動処理においては、ブレーキペダル40の踏込量にかかわらず、車両10が確実に停止するように、ブレーキ装置を作動させる。
そして、ECU100は、アクセル無効化処理を行ったら、本車両制御処理を終了する。
【0048】
(ステップS21)
次に、ECU100は、ステップS21において、制限有効化スイッチ70がオンであるか否かを判定する。ECU100は、制限有効化スイッチ70がオンであれば(ステップS21でYESと判定)、ステップS22に移行し、制限有効化スイッチ70がオンでなければ(ステップS21でNOと判定)、ステップS23に移行する。
【0049】
(ステップS22)
次いで、ECU100は、ステップS22において、検出した加重が適正加重範囲外であるか否かを判定する。具体的には、ECU100は、加重センサ51から入力された検出信号に基づいて算出した加重が、適正加重下限値(第2の加重値)未満であるか、または、適正加重上限値(第1の加重値)を超える値であるか否かを判定する。
【0050】
ECU100は、検出した加重が適正加重範囲外であると判定した場合には(ステップS22でYESと判定)、本車両制御処理を終了し、検出した加重が適正加重範囲外ではないと判定した場合には(ステップS22でNOと判定)、ステップS23に移行する。
【0051】
(ステップS23)
次いで、ECU100は、ステップS23において、アクセル有効化処理を行う。具体的には、ECU100は、上記アクセル無効化処理により行った無効化処理を解除する処理を行う。すなわち、ECU100は、アクセルペダル30の踏込量に応じたアクセル開度Accの値を、エンジン20に伝達するようにする。
そして、ECU100は、アクセル有効化処理を行ったら、本車両制御処理を終了する。
【0052】
以上のように、本実施の形態における車両10の制御装置は、検出された加重が、適正加重上限値を超えた場合に、アクセルペダル30の踏込量を無効化して、エンジン20に伝えない、または、制限するので、左足とともに右足が強く踏み込まれて、運転者の誤操作によりアクセルペダル30が強く踏み込まれても、誤操作により発生するエンジン20の駆動力を制限することができる。したがって、運転者の判断に頼らなくても、誤操作に対して有効にエンジン20を抑制することができ、アクセルペダル30の踏み間違いにより生じる車両挙動の急減な変化を抑制することができる。
【0053】
また、本実施の形態における車両10の制御装置は、検出された加重が、適正加重下限値未満であった場合に、アクセルペダル30の踏込量を無効化して、エンジン20に伝えない、または、制限するので、左足が足置き用シート50に載っていなくて、誤操作を起こしやすい場合に、エンジン20の駆動力を制限することができる。
【0054】
さらに、本実施の形態における車両10の制御装置は、誤操作の疑いがある場合に、車両10を停止させるので、安全性を高めることができる。
【0055】
さらに、本実施の形態における車両10の制御装置は、車速Vが、制限有効車速Veを超えていた場合には、エンジン20の駆動力を制限しないようにすることができる。したがって、通常走行中での、エンジン20の無用な低下、制限を回避することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態における車両10の制御装置は、制限有効化スイッチ70を設け、制限有効化スイッチ70をオフとすることにより、エンジン20の駆動力制限を実行させないことができる。したがって、運転者の意思で必要に応じて制御を切り替えることができ、運転者のニーズに応えることができる。例えば、急な上り坂での発進や、高速道路への合流時の「キックダウン」等、意図的な運転操作にも対応することができる。
【0057】
なお、上述のように、適正加重上限値、適正加重下限値は、それぞれ運転者が設定値を入力することができるようになっている。また、制限有効車速Veも、運転者が設定値を入力することができるようになっている。したがって、運転者に応じた適切な値を設定することができ、運転者の各個人に合った最適な制御を行うことができる。
また、足置き用シート50を、ブレーキペダル40の左側に配置したことにより、確実に運転者の左足の挙動を確認することができる。
【0058】
なお、本実施の形態においては、足置き用シート50に加重センサ51を有する感圧パッドを設け、移動可能なものとしたが、これに限らず、例えば、車両10の床面に取り付けたものであってもよい。
【0059】
また、本実施の形態においては、特定時点での加重センサ51の値により、運転者の左足の加重(踏込量、踏ん張る力)を検出して、アクセル開度Accの制限やアクセル踏込量のエンジン伝達へのカットなどを行って、駆動力制御を行うようにしているが、これに限らず、以下のようにしてもよい。
【0060】
例えば、加重センサ51の値の変化が設定した変化量よりも急激に増加した場合に、駆動力制御を行う。また、所定時間内のアクセルセンサ31の値が第1の所定値以下のときの加重センサ51の値と、アクセルセンサ31の値が第2の所定値以上となったときの加重センサ51の値と、を比較し、設定した値よりも大きかった場合に、駆動力制御を行う、などとしてもよい。
【0061】
これは、通常運転時には、運転者が右足でアクセルペダル30をゆっくり踏み込むのに応じて、左足にもゆっくり力が入り加重センサ51の値もゆっくり上昇する性質を利用し、これを超えて、運転者の左足にかかる力が急激に変化した場合、異常が発生しているものとして車両10を制御するためである。したがって、上記方法に限らず、左足の加重、または、加重の変化を利用した、他の駆動力制御であってもよい。
また、これらの異常発生の車両制御時にも、車両10を停止制御させるようにすることが望ましい。
【0062】
また、本実施の形態において、アクセルセンサ31は、本願のアクセル踏込量検出手段を構成する。また、本実施の形態において、加重センサ51は、本願の加重検出手段を構成する。また、本実施の形態において、エンジン20は、本願の駆動手段を構成する。また、本実施の形態において、ECU100は、本願の制御手段を構成する。
【0063】
さらに、本実施の形態において、ブレーキ装置は、本願の制動手段を構成する。また、本実施の形態において、車速センサ61は、本願の車速検出手段を構成する。また、本実施の形態において、制限有効化スイッチ70は、本願の切り替え情報入力手段を構成する。
【符号の説明】
【0064】
10 車両
20 エンジン
30 アクセルペダル
31 アクセルセンサ
40 ブレーキペダル
50 足置き用シート
51 加重センサ
61 車速センサ
70 制限有効化スイッチ
91 障害物センサ
100 ECU
【要約】
【課題】誤操作により発生する駆動手段の駆動力を制限することができる駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】ECU100は、車速センサ61に検出された車速Vが制限有効車速Ve以下であって、足置き用シート50に設けられた加重センサ51に検出された加重が、適正加重範囲に入っていなかった場合には、アクセルペダル30が踏み込まれた踏込量を無効化、または、制限する。これにより、運転者の左足が足置き用シート50に乗せられていなかったり、右足とともに強く押されている場合に、エンジン20の駆動力を制限するので、運転者の誤操作によりアクセルペダル30が強く踏み込まれても、誤操作により発生するエンジン20の駆動力を制限することができる。したがって、運転者の判断に頼らなくても、誤操作に対して有効にエンジン20を抑制することができ、アクセルペダル30の踏み間違いにより生じる車両挙動の急減な変化を抑制することができる。
【選択図】図3
図1
図2
図3