(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6409109
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】ファンの騒音制御システム
(51)【国際特許分類】
F04D 29/66 20060101AFI20181004BHJP
G10K 11/178 20060101ALI20181004BHJP
G10K 11/22 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
F04D29/66 P
G10K11/178
G10K11/22
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-197776(P2017-197776)
(22)【出願日】2017年10月11日
【審査請求日】2017年10月12日
(31)【優先権主張番号】106132198
(32)【優先日】2017年9月20日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】506255902
【氏名又は名称】中原大學
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】張政元
(72)【発明者】
【氏名】郭森楙
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−081159(JP,A)
【文献】
特開平10−222172(JP,A)
【文献】
特開2006−139208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/66
G10K 11/178
G10K 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンモジュールに適用するファンの騒音制御システムであって、
前記ファンモジュールに接続して、前記ファンモジュールの風出力側に位置し、前記ファンモジュールから発生する少なくとも一つのファン騒音信号の伝送経路を制限するための第1筒型リミッタと、
前記第1筒型リミッタの内壁面に取り付ける複数の誤差センサーと、
前記複数の誤差センサーと電気的に接続する騒音制御モジュールと、
ファンブレード組の軸心部に取り付けて、前記騒音制御モジュールと電気的に接続し、前記第1筒型リミッタの内部に位置する第1スピーカーと、を備え、
前記複数の誤差センサーによって現在より前の一時点に検出された複数組の誤差騒音信号に基づき、前記騒音制御モジュールが少なくとも一つの騒音消去信号を生成し、引き続き、前記第1スピーカーが前記騒音制御モジュールによって駆動されて、前記第1筒型リミッタにおいて前記騒音消去信号を再生し、この方式により、ファンモジュールのファンの騒音を軽減することを特徴とする、
ファンの騒音制御システム。
【請求項2】
前記ファンモジュールに接続して、前記ファンモジュールの風入力側に位置し、その内壁面に同じく複数の当該誤差センサーが取り付けられる第2筒型リミッタと、前記ファンモジュールの前記ファンブレード組の前記軸心部に取り付けて、前記騒音制御モジュールに電気的に接続し、前記第2筒型リミッタの内部に位置する第2スピーカーと、をさらに備えることを特徴とする、請求項1記載のファンの騒音制御システム。
【請求項3】
前記騒音制御モジュールは、デジタル信号プロセッサー(Digital Signal Processor,DSP)またはマイクロプロセッサーのいずれかであることを特徴とする、請求項1記載のファンの騒音制御システム。
【請求項4】
前記誤差センサーは、誤差マイクロホンであることを特徴とする、請求項1記載のファンの騒音制御システム。
【請求項5】
前記騒音制御モジュールは、前記複数の誤差センサーに電気的に接続して、前記複数組の誤差騒音信号を対応の複数のデジタル誤差騒音信号に変換する第1A/D変換器と、前記第1A/D変換器に電気的に接続し、前記複数のデジタル誤差騒音信号を単一のデジタル誤差騒音信号に合成する信号シンセサイザーと、前記信号シンセサイザーに電気的に接続して、合成処理後の前記単一のデジタル誤差騒音信号をさらに少なくとも一つのデジタル騒音消去信号に処理してなる信号処理ユニットと、前記信号処理ユニットに電気的に接続して、当該デジタル騒音消去信号を前記少なくとも1つの騒音消去信号に変換するD/A変換器と、を含むことを特徴とする、請求項1記載のファンの騒音制御システム。
【請求項6】
前記第1筒型リミッタと、前記第2筒型リミッタとは、円形筒体または多辺形筒体のいずれかであることを特徴とする、請求項2記載のファンの騒音制御システム。
【請求項7】
前記第1筒型リミッタと、前記第2筒型リミッタの内壁面が音波反射面であることを特徴とする、請求項2記載のファンの騒音制御システム。
【請求項8】
前記第1A/D変換器は、プリアンプユニットと、アンチエイリアシングフィルターユニットと、第1A/D変換ユニットとを有することを特徴とする、請求項5記載のファンの騒音制御システム。
【請求項9】
前記D/A変換器は、D/A変換ユニットと、再構成フィルターユニットと、電力増幅ユニットとを有することを特徴とする、請求項5記載のファンの騒音制御システム。
【請求項10】
前記信号処理ユニットは、前記信号シンセサイザーに連結する適応演算器と、前記適応演算器に連結する適応フィルターと、前記適応フィルターに連結して、前記適応フィルターから出力された当該デジタル騒音消去信号に対して、フィルター処理を行う第1伝達関数推定ユニットと、前記第1A/D変換器と、前記第1伝達関数推定ユニットとに連結していて、フィルター処理済みの当該デジタル騒音消去信号と、前記第1A/D変換器から出力された当該デジタル誤差騒音信号を受信する減算器と、前記減算器と、前記適応演算器とに連結して、前記減算器から出力された適応騒音信号を受信した上、前記適応騒音信号に対してフィルター処理を行う第2伝達関数推定ユニットと、を含み、前記適応騒音信号を同時に前記適応フィルターに入力し、フィルター処理済みの前記適応騒音信号をさらに前記適応演算器に入力し、前記適応演算器によって、調整用重み付け信号を算出して、前記適応フィルターに出力し、前記調整用重み付け信号と、受信された前記適応騒音信号とに基づき、前記適応フィルターによって、当該デジタル騒音消去信号を出力することを特徴とする、請求項5記載のファンの騒音制御システム。
【請求項11】
前記騒音制御モジュールに電気的に接続して、前記ファンブレード組の回転速度信号を検出する回転速度センサーをさらに備えることを特徴とする、請求項5記載のファンの騒音制御システム。
【請求項12】
前記騒音制御モジュールは、前記回転速度センサーと、前記信号処理ユニットとに電気的に接続する第2A/D変換器を含み、前記第2A/D変換器は、前記回転速度信号を受信すると共に、前記回転速度信号に基づいて同期に複数の騒音周波数に相関するアナログ騒音信号を生成する同期信号発生ユニットと、前記同期信号発生ユニットに連結していて、複数のアナログメイン騒音信号を複数のデジタル騒音信号に変換する第2A/D変換ユニットとを有することを特徴とする、請求項11記載のファンの騒音制御システム。
【請求項13】
前記信号処理ユニットは、前記第2A/D変換器に連結する複数の適応フィルターと、それぞれ前記複数の適応フィルターに連結する複数の適応演算器と、それぞれ前記複数の適応演算器に連結する複数の伝達関数推定ユニットと、前記複数の適応フィルターに連結して、複数の当該デジタル騒音消去信号を単一のデジタル騒音消去信号に合成した上、前記D/A変換器に出力する加算器ユニットと、を含み、かつ各当該伝達関数推定ユニットは同時に前記第2A/D変換器に連結し、当該伝達関数推定ユニットは前記第2A/D変換器から出力された当該デジタル騒音信号を受信すると共に、当該デジタル騒音信号に対してフィルター処理を行うことを特徴とする、請求項12記載のファンの騒音制御システム。
【請求項14】
前記騒音制御モジュールに電気的に接続して、前記ファンブレード組の振動信号を検出するための振動センサーをさらに備えることを特徴とする、請求項5記載のファンの騒音制御システム。
【請求項15】
前記騒音制御モジュールは、前記振動センサーと、前記信号処理ユニットとに電気的に接続する第2A/D変換器を含み、前記第2A/D変換器は、前記振動信号を受信すると共に、前記振動信号に基づいて同期に複数の騒音周波数に相関するアナログ騒音信号を生成する同期信号発生ユニットと、前記同期信号発生ユニットに連結していて、複数のアナログメイン騒音信号を複数のデジタル騒音信号に変換する第2A/D変換ユニットとを有することを特徴とする、請求項14記載のファンの騒音制御システム。
【請求項16】
前記信号処理ユニットは、前記第2A/D変換器に連結する複数の適応フィルターと、それぞれ前記複数の適応フィルターに連結する複数の適応演算器と、それぞれ前記複数の適応演算器に連結する複数の伝達関数推定ユニットと、前記複数の適応フィルターに連結して、複数の当該デジタル騒音消去信号を単一のデジタル騒音消去信号に合成した上、前記D/A変換器に出力する加算器ユニットとを含み、かつ各当該伝達関数推定ユニットは同時に前記第2A/D変換器に連結し、当該伝達関数推定ユニットは前記第2A/D変換器から出力された当該デジタル騒音信号を受信すると共に、前記デジタル騒音信号に対してフィルター処理を行うことを特徴とする、請求項15記載のファンの騒音制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は騒音制御と消去の技術分野に係り、特にファンの騒音制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、コンピューター本体の構造に詳しいエンジニアであれば、コンピューター本体の稼働時の発生熱が筐体内部に滞留して蓄積されることにより、コンピューター本体の性能に影響するのを防止するため、コンピューター本体の筐体に少なくとも一つの放熱ファンを取り付けて、その発生熱を筐体外部に排出させることが分かるはずである。
しかし、ファンブレードの回転に連動して気流を流す時、ファンブレードの両側の気流速度の不釣り合いにより、気圧に変化を引き起こし、気流とファンブレードとが摩擦して、風きり音が発生する。さらに、風きり音がブレードの回転速度の高低によって大小に変化させられる。簡単に言えば、ファンブレードが高速に回転している間、使用者はファンから出るファンの騒音(Fan noise)を大きく感じる。この他、長期に使用した後では、ファンベアリングの磨耗によってブレードの回転に偏りを生じ、想定外のベアリングの摩擦や振動騒音などの発生も起こり得る。
【0003】
その対策として、ファンメーカーより低騒音ファンが開発されている。
図1は、低騒音ファンを備えたコンピューター本体を示す立体図である。
図1に示すとおり、係る低騒音ファン1’はコンピューター本体2’の筐体に取り付け、ファン本体11’と、騒音低減ユニット12’とを含み、前記騒音低減ユニット12’は、マイクロホンと、プロセッサーと、アンプと、スピーカーとから構成されている。前記騒音低減ユニット12’の基本動作について、前記マイクロホンが前記ファン本体11’から発生する騒音信号を受信してそれを基準信号とし、前記プロセッサーが基準信号に基づいて対応的に騒音消去信号を生成し、さらに、前記アンプによって、前記騒音消去信号に対して、信号増幅処理を行った後、前記騒音消去信号が前記スピーカーを介して再生され、ファンの騒音の軽減効果を達成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ファンの稼働原理と騒音消去技術に詳しいエンジニアは、前記騒音低減ユニット12’には前記ファン本体11’から発する騒音を有効に消去または軽減することができないと推察する。その理由は、下記のとおりである。
【0005】
(1)騒音を受信するマイクロホンと、スピーカーとが同時にファン本体11’の軸心位置に設けられるため、マイクロホンがファン本体11’から発生する騒音信号と、スピーカーより再生する騒音消去信号とを同時に受信してしまい、マイクロホンが正確な基準信号をプロセッサーに提供できなくなり、係る基準信号に基づいてプロセッサーが生成する騒音消去信号は、ファンの騒音を有効に軽減する効果を奏しない。
【0006】
(2)ファンの騒音は、主に気流とファンブレードとの摩擦により引き起こす風きり音から由来するものである。当然ながら、ファン本体11’の軸心位置に設けられた単一のマイクロホンでは複数のファンブレードから発する風きり音を完全に受信することができない。軸心部に設けられたマイクロホンが受信したファンの騒音は、ファンベアリングの運転時に発生する振動騒音のみを含むことが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の説明から分かるように、公知のファンに設けられた騒音低減システムは、ファンの騒音を有効に消去することはできない。そのため、本願の発明者が鋭意研究開発した結果、遂に本発明のファンの騒音制御システムの完成に到達した。
【0008】
公知のファンに取り付けられた騒音低減システムがファンの騒音を有効に抑止できないため、本発明の主な目的は、ファンの騒音制御システムを提供することである。その構造としては、主に少なくとも一つの筒型リミッタと、複数の誤差センサーと、一つの騒音制御モジュールと、少なくとも一つのスピーカーとを備える。筒型リミッタはファンモジュールに接続して、ファンモジュールから発生するファンの騒音信号の伝送経路を制限する。さらに、複数の誤差センサーは筒型リミッタの内部に分布配置され、少なくとも一つのスピーカーはファンの軸心部に取り付けられる。よって、ファンの騒音を消去するメカニズムについて、本発明では、騒音制御モジュールは、誤差センサーが一つ前の時間帯で検出された複数組の誤差騒音信号に基づき、少なくとも一つの騒音消去信号を生成した後、スピーカーを介して、ファンモジュールの風出力側および/または風入力側にこの騒音消去信号を再生する。この方式によって、高効率のファンの騒音軽減効果を達成する。
【0009】
前述した本発明の主な目的を達成するために、本願の発明者よりファンモジュールに適用できるファンの騒音制御システムの一実施例を提供する。係るファンの騒音制御システムは、第1筒型リミッタと、複数の誤差センサーと、騒音制御モジュールと、第1スピーカーと、を備える。
【0010】
第1筒型リミッタは、前記ファンモジュールに接続して、ファンモジュールの風出力側に位置し、ファンモジュールから発生するファン騒音信号の伝送経路を制限するために用いられる。
【0011】
複数の誤差センサーは第1筒型リミッタの内壁面に取り付ける。
【0012】
騒音制御モジュールは複数の誤差センサーと電気的に接続する。
【0013】
第1スピーカーは、ファンモジュールのファンブレード組の軸心部に取り付けて、騒音制御モジュールと電気的に接続する。さらに、第1スピーカーは、第1筒型リミッタの内部に位置する。
【0014】
そのうち、誤差センサーが一つ前の時間帯で検出された複数組の誤差騒音信号に基づき、騒音制御モジュールが現在の時間帯に対応して、少なくとも一つの騒音消去信号を生成し、引き続き、第1スピーカーを介して、騒音消去信号を再生する。この方式により、ファンモジュールのファンの騒音を軽減させる。
【0015】
前述した本発明のファンの騒音制御システムの実施例において、第2筒型リミッタと、複数の誤差センサーと、第2スピーカーをさらに備える。
【0016】
第2筒型リミッタは、ファンモジュールに接続して、ファンモジュールの風入力側に位置する。
【0017】
複数の誤差センサーは、第2筒型リミッタの内壁面に取り付けて、騒音制御モジュールに電気的に接続する。
【0018】
第2スピーカーは、ファンブレード組の軸心部に取り付けて、騒音制御モジュールに電気的に接続する。さらに、第2スピーカーは、第2筒型リミッタの内部に位置する。
【0019】
前述した本発明のファンの騒音制御システムの実施例において、第1筒型リミッタと、第2筒型リミッタとは、円形筒体または多辺形筒体のいずれかである。さらに、第1筒型リミッタと、第2筒型リミッタとの内壁面が音波反射面である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のファンの騒音制御システムを以下のとおり十分かつ明瞭に説明する。以下の説明より本発明が以下の長所を有していることは明らかである。
【0021】
(1)公知のファンに取り付けられた騒音低減システムがファンの騒音を有効に抑止できないため、本発明はファンの騒音制御システムの第1実施例を提供する。その構造を後述する実施例の参照符号を付して示すと、主に、第1筒型リミッタ10と、複数の誤差センサー11と、騒音制御モジュール12と、第1スピーカー13とを備える。そのうち、第1筒型リミッタ10はファンモジュール2に接続して、ファンモジュール2から発生するファンの騒音信号の伝送経路を制限する。さらに、複数の誤差センサー11は第1筒型リミッタ10の内部に分布配置され、第1スピーカー13はファンの軸心部に取り付けられる。よって、ファンの騒音を消去するメカニズムについて、本発明では、騒音制御モジュール12は、誤差センサー11が一つ前の時間帯(n−1)で検出された複数組の誤差騒音信号に基づき、少なくとも一つの騒音消去信号を生成した後、スピーカー(13,13a)を介して、ファンモジュール2の風出力側および/または風入力側にこの騒音消去信号を再生する。この方式によって、高効率のファンの騒音軽減効果を達成する。
【0022】
(2)この他、ファンの騒音を全面的に消去するために、本発明はさらに回転速度センサー14(または振動センサー)と、第2A/D変換器125とを前述第1実施例の構成に添設した第2実施例が提供されている。このような設置構造によって、騒音制御モジュール12が回転速度センサー14(または振動センサー)から出力された回転速度または振動信号に対応して、少なくとも一つの騒音消去信号を生成した上、スピーカー(13,13a)を介して、ファンモジュール2の風出力側および/または風入力側にこの騒音消去信号を再生することによって、ファンモジュール2の回転速度または振動による騒音の消去効果を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】低騒音ファンを備えたコンピューター本体の立体図である。
【
図2】本発明のファンの騒音制御システムに係るファンモジュールの立体図である。
【
図3】騒音制御モジュールの第1電気回路ブロック図である。
【
図4】騒音制御モジュールの信号処理ユニットの第1内部構成図である。
【
図5】本発明のファンの騒音制御システムを備えたファンモジュールの立体図である。
【
図6】騒音制御モジュールの第2電気回路ブロック図である。
【
図7】騒音制御モジュールの信号処理ユニットの第2内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明が提出したファンの騒音制御モジュールをより明瞭に記述説明するために、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例を以下のとおり詳細説明する。
【実施例1】
【0025】
本発明のファンの騒音制御システムに係るファンモジュールの立体図を示す
図2を参照する。
図2に示すとおり、本発明のファンの騒音制御システム1は、ファンモジュール2に適用するものであり、そのうち、ファンモジュール2は、風入力側と、風出力側とを含む。本発明のファンの騒音制御システム1は、例えば、コンピュータケースに取り付ける放熱ファン、中央演算処理チップ(CPU)または画像処理チップ(GPU)の放熱ファン、台所換気扇、コンデンサーファン、またはブロワーファンなどに装着される。
【0026】
本発明のファンの騒音制御システム1の第1実施例は、主に第1筒型リミッタ10と、第2筒型リミッタ10aと、複数の誤差センサー11と、騒音制御モジュール12と、第1スピーカー13と、第2スピーカー13aとを備える。
図2に示すとおり、第1筒型リミッタ10と、第2筒型リミッタ10aとは、ファンモジュール2に接続しており、それぞれファンモジュール2の風出力側と、風入力側とに位置する。さらに、係る誤差センサー11は、すなわちマイクロホンまたは加速度計などの素子であり、第1筒型リミッタ10と、第2筒型リミッタ10aとの内壁面に取り付けていて、ファンモジュール2の騒音信号および/または振動信号の測定に用いられる。特に説明すべきことは、ファンの騒音は、主に気流と、ファンブレード組22のブレードの摩擦により生じる風きり音から由来するものである。
本発明において、特に第1筒型リミッタ10と、第2筒型リミッタ10aとをファンモジュール2から発生する騒音信号の伝送経路の制限に用いる。さらに、第1筒型リミッタ10と、第2筒型リミッタ10aとによる騒音信号の伝送経路を制限する効果を向上させるため、さらに、第1筒型リミッタ10と、第2筒型リミッタ10aとの内壁面を音波反射面として設計し、例えば、剛性内面として設計することができる。
【0027】
さらに、第1スピーカー13は、ファンモジュール2のファンブレード組22の軸心部に取り付けて、ファンモジュール2の風出力側に位置る。第1スピーカー13に対向して、第2スピーカー13aは、ファンブレード組22の軸心部に取り付けて、ファンモジュール2の風入力側に位置する。引き続き
図2を参照すると共に、
図3に示す騒音制御モジュールの第1電気回路ブロック図を同時に参照する。
図2と
図3に示すとおり、騒音制御モジュール12は、複数の誤差センサー11と電気的に接続する。騒音低減技術に詳しい電子エンジニアであれば、係る騒音制御モジュール12は、デジタル信号プロセッサー(Digital Signal Processor,DSP)であることを容易に理解できる。ただし、この限りではない。可能な適用例として、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array,FPGA)またはARMプロセッサー(ARM processor)はいずれも、係る騒音制御モジュール12に適用できる。本発明の第1実施例において、騒音制御モジュール12は、第1A/D変換器121と、信号シンセサイザー123と、信号処理ユニット120と、D/A変換器122とを含む。
【0028】
上記に続いて、第1A/D変換器121は、複数の誤差センサー11に電気的に接続して、誤差センサー11から出力された複数の誤差騒音信号を対応の複数のデジタル誤差騒音信号に変換する。引き続き、第1A/D変換器121に電気的に接続する信号シンセサイザー123によって、複数のデジタル誤差騒音信号を単一のデジタル誤差騒音信号に合成する。さらに、信号シンセサイザー123に電気的に接続する信号処理ユニット120によって、合成処理後のデジタル誤差騒音信号(e(n))をさらに少なくとも一つのデジタル騒音消去信号(y(n))に処理する。最後に、D/A変換器122は、信号処理ユニット120より、係るデジタル騒音消去信号(y(n))を受信して、少なくとも一つの騒音消去信号に変換する。
ここで、補足説明することは、第1A/D変換器121は、プリアンプユニット1211と、アンチエイリアシングフィルターユニット1212と、第1A/D変換ユニット1213とを有することである。D/A変換器122は、D/A変換ユニット1221と、再構成フィルターユニット1222と、電力増幅ユニット1223とを有する。
【0029】
特に説明すべきことは、騒音制御モジュール12は、前置基準信号に基づいて、ファンの騒音を消去するための騒音消去信号を生成することができないことである。従って、本発明の第1実施例の主な技術特徴は、誤差センサー11が一つ前の時間帯(n−1)で検出された複数組の誤差騒音信号に基づき、騒音制御モジュール12が現在の時間帯(n)に対応して、少なくとも一つの騒音消去信号を生成した上、第1スピーカー13と、第1スピーカー13aとを介して、係る騒音消去信号を再生する。この方式により、ファンモジュール2のファンの騒音を軽減される。
引き続き、騒音制御モジュールの信号処理ユニットの第1内部構造図を示す
図4を参照する。騒音制御モジュール12が誤差センサー11で検出された誤差騒音信号のみに基づいて、対応の騒音消去信号を生成するために、本発明において、信号処理ユニット120の内部構成には特殊な設計が施される。
図4に示すとおり、信号処理ユニット120は、適応演算器1201と、適応フィルター1202と、第1伝達関数推定ユニット1203と、減算器1204と、第2伝達関数推定ユニット1205とを含む。
【0030】
信号処理ユニット120のうち、係る適応演算器1201が第1A/D変換器121に連結していて、かつ、係る適応フィルター1202が適応演算器1201に連結している。ここで、適応フィルター1202とは、有限インパルス応答フィルター(Finite Impulse Response Filter,FIR filter)、無限インパルス応答フィルター(Infinite Impulse Response Filter,IIR filter)、または他のフィルターを指す。この他、適応演算器1201とは、アルゴリズムライブラリ(library)を指し、例えば、最小平均二乗アルゴリズム(Least Mean Square,LMS)、正規最小平均二乗アルゴリズム(Normalized Least Mean Square,NLMS)、または他のアルゴリズムを含む。特に説明すべきことは、係る信号処理ユニット120の内部構成には第2伝達関数推定ユニット1205を含むので、係るLMSアルゴリズムを適応演算器1201に適用したとき、係るLMSアルゴリズムは、さらにFiltered−xLMSアルゴリズムとも称されていることである。
【0031】
図4に示すとおり、数学上
として表される第1伝達関数推定ユニット1203は、適応フィルター1202に連結して、適応フィルター1202から出力されたデジタル騒音消去信号(y(n))に対して、フィルター処理を行う。さらに、減算器1204は、同時に第1伝達関数推定ユニット1203と、第1A/D変換器121とに連結していて、フィルター処理済みのデジタル騒音消去信号(y(n))と、信号シンセサイザー123から出力されたデジタル誤差騒音信号(e(n))を受信する。ここで、特に説明すべきことは、減算器1204は、フィルター処理済みのデジタル騒音消去信号(y(n))と、デジタル誤差騒音信号(e(n))に対して、音声重ね合わせ処理(acoustic superposition)を実行して、適応騒音信号(x
AD(n))を生成することである。
この他、数学上
として表される第2伝達関数推定ユニット1205は、同時に減算器1204と、適応演算器1201とに連結していて、減算器1204から出力された適応騒音信号(x
AD(n))を受信した上、適応騒音信号(x
AD(n))に対してフィルター処理を行う。特に注意すべきことは、係る適応騒音信号(x
AD(n))は、同時に適応フィルター1202にも入力されることである。さらに、フィルター処理済みの適応騒音信号(x
AD(n))は、さらに適応演算器1201に入力され、適応演算器1201によって、調整用重み付け信号(w
I(n))を算出し、適応フィルター1202に出力される。
【0032】
最後に、調整用重み付け信号(w
I(n))と、適応騒音信号(x
AD(n))に基づき、係る適応フィルター1202によって、デジタル騒音消去信号(y(n))を生成し、D/A変換器122に出力する。このように、D/A変換器122を介してデジタル騒音消去信号(y(n))に対するデジタル/アナログ変換処理を完了した後、ファンの騒音を消去するための騒音消去信号が第1スピーカー13と、第2スピーカー13aとを介して、同時にファンモジュール2の風出力側と、風入力側とに再生される。
【実施例2】
【0033】
本発明のファンの騒音制御システムを備えたファンモジュールの立体図を示す
図5を参照する。
図2と
図5を比較すれば分かるように、本発明のファンの騒音制御システム1の第2実施例は、回転速度センサー14(または振動センサー)を第1実施例に添設した例である。そのうち、回転速度センサー14(または振動センサー)は、騒音制御モジュール12に電気的に接続して、ファンブレード組22の回転速度または振動信号を検出するために用いられる。
【0034】
引き続き
図5を参照する共に、
図6に示す騒音制御モジュールの第2電気回路ブロック図を同時に参照する。本発明の第2実施例において、騒音制御モジュール12は、第1A/D変換器121と、信号処理ユニット120と、D/A変換器122と、第2A/D変換器125とを含む。そのうち、第1A/D変換器121と、D/A変換器122との配置方法と機能については既に前述の実施例において説明したので、この実施例ではその説明を省略する。
特に説明すべきことは、係る第2A/D変換器125は、回転速度センサー14(または振動センサー)と、信号処理ユニット120とに電気的に接続しいて、かつ同期信号発生ユニット1251と、第2A/D変換ユニット1252とを有することである。そのうち、同期信号発生ユニット1251は、回転速度または振動信号を受信すると共に、回転速度または振動信号に基づいて同期に複数の騒音周波数に相関するアナログ騒音信号を生成する。この他、第2A/D変換ユニット1252は、同期信号発生ユニット1251に連結していて、複数のアナログメイン騒音信号を複数のデジタル騒音信号(x(n))に変換する。
【0035】
引き続き
図6を参照すると共に、
図7に示す騒音制御モジュールの信号処理ユニットの第2内部構造図を同時に参照する。
図6と
図7から分かるように、本発明の第2実施例の技術特徴は、まず、騒音制御モジュール12の内部の適応フィルター1202が回転速度センサー14(または振動センサー)から出力された回転速度または振動信号に基づいて対応的に少なくとも一つの騒音消去信号を生成する。
引き続き、騒音制御モジュール12の内部の適応演算器1201が誤差センサー11で検出された複数組の誤差騒音信号と、本来の回転速度または振動信号とに基づき、調整用重み付け信号を算出して、適応フィルター1202に出力する。このように、調整用重み付け信号と、次の時間帯で受信される回転速度信号とに基づき、適応フィルター1202によって、騒音消去信号を生成して出力し、この騒音消去信号によって、ファンの騒音を有効に軽減する効果を奏することができる。
【0036】
騒音制御モジュール12が誤差センサー11で検出された誤差騒音信号及び、回転速度センサー14(または振動センサー)から提供された回転速度または振動信号とに基づいて、対応の騒音消去信号を生成するために、本発明において、信号処理ユニット120の内部構成には特殊な設計が施される。
図7に示すとおり、誤差センサー11の数に対応して、信号処理ユニット120は、同じ数の複数組の適用信号プロセッサーを含む。さらに、各組の適用信号プロセッサーは、複数の適応演算器1201と、複数の適応フィルター1202と、複数の伝達関数推定ユニット1208と、加算器ユニット1209とを含む。
【0037】
信号処理ユニット120のうち、複数の適応フィルター1202が第2A/D変換器125に連結していて、かつ、複数の適応演算器1201がそれぞれ複数の適応フィルター1202に連結している。さらに、複数の伝達関数推定ユニット1208は、それぞれ複数の適応演算器1201に連結していて、かつ、各伝達関数推定ユニット1208は同時に第2A/D変換器125に連結している。そのうち、係る伝達関数推定ユニット1208によって、第2A/D変換器125から出力されたデジタル騒音信号(x
1(n),x
2(n),...,x
n(n))を受信すると共に、デジタル騒音信号(x
1(n),x
2(n),...,x
n(n))に対してフィルター処理を行う。この他、係る加算器ユニット1209は、複数の適応フィルター1202に連結していて、複数のデジタル騒音消去信号(y
1(n),y
2(n) ,...,y
n(n))を単一のデジタル騒音消去信号に合成した上、D/A変換器122に出力される。
【0038】
この他、係る加算器1209は複数の適応フィルター1202に連結して、複数のデジタル騒音消去信号(y(n))を単一のデジタル騒音消去信号に合成した上、D/A変換器122に出力する。
最後に、D/A変換器122によって、係るデジタル騒音消去信号を少なくとも一つの騒音消去信号に変換した上、第1スピーカー13と、第2スピーカー13aとを介して、係る騒音消去信号を再生する。この方式により、ファンモジュール2のファンの騒音(Fan noise)を軽減させる。
【0039】
強調すべき点は、上記の詳細な説明は、本発明の実施可能な実施例を具体的に説明したものであり、但し、本発明の権利範囲はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の精神を逸脱しない限り、その等効果実施又は変更は、なお、本発明の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0040】
1 ファンの騒音制御システム
2 ファンモジュール
10 第1筒型リミッタ
10a 第2筒型リミッタ
22 ファンブレード組
11 誤差センサー
12 騒音制御モジュール
13 第1スピーカー
13a 第2スピーカー
121 第1A/D変換器
120 信号処理ユニット
122 D/A変換器
123 信号シンセサイザー
e(n) デジタル誤差騒音信号
y(n) デジタル騒音消去信号
1201 適応演算器
1202 適応フィルター
1203 第1伝達関数推定ユニット
1204 減算器
1205 第2伝達関数推定ユニット
1211 プリアンプユニット
1212 アンチエイリアシングフィルターユニット
1213 第1A/D変換ユニット
1221 D/A変換ユニット
1222 再構成フィルターユニット
1223 電力増幅ユニット
x
AD(n) 適応騒音信号
14 回転速度センサー
125 第2A/D変換器
1251 同期信号発生ユニット
1252 第2A/D変換ユニット
1208 伝達関数推定ユニット
1209 加算器ユニット
x(n) デジタル騒音信号
x
1(n) デジタル騒音信号
x
2(n) デジタル騒音信号
x
n(n) デジタル騒音信号
y
1(n) デジタル騒音消去信号
y
2(n) デジタル騒音消去信号
y
n(n) デジタル騒音消去信号
1’ 低騒音ファン
2’ コンピューター本体
11’ ファン本体
12’ 騒音低減ユニット
【要約】 (修正有)
【課題】ファンの騒音制御システムを提供する。
【解決手段】少なくとも一つの筒型リミッタと、複数の誤差センサーと、一つの騒音制御モジュールと、少なくとも一つのスピーカーとを備える。筒型リミッタはファンモジュールに接続して、ファンモジュールから発生するファンの騒音信号の伝送経路を制限する。さらに、複数の誤差センサーは筒型リミッタの内部に分布配置され、少なくとも一つのスピーカーはファンの軸心部に取り付けられる。この斬新なファンの騒音制御システムが正常に稼働するとき、騒音制御モジュールは、誤差センサーが一つ前の時間帯で検出された複数組の誤差騒音信号に基づき、少なくとも一つの騒音消去信号を生成した後、スピーカーを介して、ファンモジュールの風出力側および/または風入力側にこの騒音消去信号を再生し、この方式によって、高効率のファンの騒音軽減効果を達成する。
【選択図】
図2