【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
(参考例1:エステル交換反応における撹拌速度の依存性)
まず、油水二相系でのエステル交換反応が撹拌速度によって受ける影響を確認した。
【0056】
5つの50mLネジ口瓶に、0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)、蒸留水0.5mL(予め測定した導電率は0.3mS/mであった)、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これらを35℃にて100rpm、400rpm、600rpm、800rpmおよび1000rpmのいずれかの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量を、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。得られた結果を
図1に示す。
【0057】
図1の(a)に示すように、反応時間が経過するにつれ、いずれの撹拌速度で撹拌した場合も反応系内にメチルエステルが多く生成するが、特に、同じ時間におけるメチルエステルの含量は、撹拌速度が高いほど、大きい値を示していることがわかる。一方、
図1の(b)〜(d)に示すように、未反応グリセリドのうちジグリセリドおよびトリグリセリドは、100rpmを除くより高い撹拌速度ほど同じ時間における含量が低い値を示していた。以上のことから、本参考例1で行ったエステル交換反応において、撹拌速度は生成物であるメチルエステルの含量や未反応グリセリドの含量に大きな影響を及ぼし、通常は低速の撹拌よりも高速の撹拌を行う方が目的のメチルエステルをより多く生成することができるとわかる。
【0058】
(実施例1:低速撹拌条件でのエステル交換反応によるメチルエステルの製造)
蒸留水(導電率0.3mS/m、pH6.5)に炭酸水素ナトリウムを添加して炭酸水素ナトリウム水溶液(0.12M)を調製した。得られた炭酸水素ナトリウム水溶液の導電率は860mS/mであり、pHは8.0であった。なお、当該導電率については、導電率計(株式会社堀場製作所製LAQAtwin COND)で測定し、pHについては、pHメーター(株式会社堀場製作所製LAQUAtwin pH)で測定した。
【0059】
50mLネジ口瓶に、0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、上記で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これを35℃にて100rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。得られた結果を
図2に示す。
【0060】
(実施例2および3:低速撹拌条件でのエステル交換反応によるメチルエステルの製造)
蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)にリン酸二水素ナトリウムを添加してリン酸二水素ナトリウム水溶液(0.1M)を調製した(実施例2)。得られたリン酸二水素ナトリウム水溶液の導電率は520mS/mであり、pHは4.5であった。
【0061】
一方、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)にリン酸三ナトリウムを添加してリン酸三ナトリウム水溶液(0.1M)を調製した(実施例3)。得られたリン酸二水素ナトリウム水溶液の導電率は4000mS/mであり、pHは11.7であった。
【0062】
実施例1で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、上記リン酸二水素ナトリウム水溶液0.5mLまたはリン酸二水素ナトリウム水溶液0.5mLを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を
図2に示す。
【0063】
(比較例1および2:低速撹拌でのエステル交換反応によるメチルエステルの製造)
実施例1で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mL(比較例1)、またはアルカリイオン水(導電率;15mS/m、pH9)0.5mL(比較例2)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を
図2に示す。
【0064】
図2に示すように、エステル交換反応にあたり、電解質水溶液として、炭酸水素ナトリウム水溶液(実施例1)、リン酸二水素ナトリウム水溶液(実施例2)およびリン酸三ナトリウム(実施例3)を存在させた系では、これらの水溶液の代わりに蒸留水(比較例1)およびアルカリイオン水(比較例2)を用いた系と比較して、反応開始直後からメチルエステルが多く生成されていることがわかる。なお、実施例1〜3はいずれも、撹拌速度が100rpmという比較的遅いものであったにも関わらず、効率良くメチルエステルが形成されていたことがわかる。
【0065】
(実施例4:高速撹拌条件でのエステル交換反応によるメチルエステルの製造)
50mLネジ口瓶に、0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液(導電率860mS/m、pH8.0)0.5mL、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。得られた結果を
図3に示す。
【0066】
(比較例3:高速撹拌条件でのエステル交換反応によるメチルエステルの製造)
実施例4で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例4と同様にしてエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を
図3に示す。
【0067】
図3に示すように、エステル交換反応にあたり、電解質水溶液として、炭酸水素ナトリウム水溶液を存在させた系(実施例4)では、この水溶液の代わりに蒸留水を用いた系(比較例3)と比較して、反応開始直後からメチルエステルが多く生成されていた(
図3の(a))。一方、未反応グリセリド含量(
図3の(b)〜(d)は、総じて同じ反応時間では比較例4の反応系の方が高い値を示していた。このことから、800rpmという比較的早い撹拌速度の条件下において、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いた実施例4の反応系では、蒸留水を用いた比較例3の反応系と比較して、効率良くメチルエステルが形成されていたことがわかる。
【0068】
(実施例5:液体酵素の繰り返し利用による低速撹拌でのエステル交換反応)
50mLネジ口瓶に、0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液(導電率860mS/m、pH8.0)0.5mL、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これを35℃にて100rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。反応開始後72時間で反応が終了した。以上を第1バッチのエステル交換反応とした。
【0069】
次に第2バッチのエステル交換反応として、以下を行った。
【0070】
第1バッチの反応終了後、一晩静置分離を行うことにより、メチルエステルとグリセリン層を分離し、その上清であるメチルエステルを除去し、得られたグリセリン層(反応残渣)に、新たに0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液(導電率860mS/m、pH8.0)0.5mL、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これを再び35℃にて100rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。また、当該反応中のサンプリングも行い、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を測定した。以上を第2バッチのエステル交換反応とした。
【0071】
さらに上記と同様にして、得られたグリセリン層(反応残渣)を用いて第3バッチ〜第5バッチまでのエステル交換反応を行い、各反応中のサンプリングを通じて反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を測定した。得られた結果を
図4に示す。
【0072】
(比較例4:液体酵素の繰り返し利用による低速撹拌でのエステル交換反応)
実施例5で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例5と同様にして第1バッチのエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0073】
その後、実施例5と同様にして生成したメチルエステルを除去し、得られたグリセリン層(反応残渣)について第2バッチのエステル交換反応を試みた。しかし、第2バッチ以降は、反応系内にメチルエステルの存在を観察することができなかった。得られた結果を
図4に示す。
【0074】
図4に示すように、撹拌速度が100rpmという比較的遅いものであったにも関わらず、エステル交換反応にあたり、電解質水溶液として炭酸水素ナトリウム水溶液を存在させた実施例5の反応系では、第2バッチ以降、少なくとも第5バッチまで液体酵素を繰り返し利用しても、メチルエステルを75%以上の含量まで効率良く生成することができたことがわかる。これに対し、炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに蒸留水を用いた反応系(比較例4)では、当該撹拌速度では第1バッチの段階からメチルエステルの生成は充分とはいえず、かつ第2バッチ以降の液体酵素の繰り返し使用も困難であった。
【0075】
(実施例6:液体酵素の繰り返し利用による低速撹拌でのエステル交換反応)
実施例5と同様にして、第1バッチのエステル交換反応を行った。
【0076】
次に第2バッチのエステル交換反応として、以下を行った。
【0077】
第1バッチの反応終了後、一晩静置分離を行うことにより、メチルエステルとグリセリン層を分離し、その上清であるメチルエステルを除去し、得られたグリセリン層(反応残渣)に、新たに0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mL、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これを再び35℃にて100rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。また、当該反応中のサンプリングも行い、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を測定した。以上を第2バッチのエステル交換反応とした。
【0078】
さらに上記第2バッチと同様にして、得られた反応残渣を用いて第3バッチおよび第4バッチまでのエステル交換反応を行い、各反応中のサンプリングを通じて反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を測定した。得られた結果を、実施例5で得られた結果に重ねて
図5に示す。
【0079】
図5に示すように、第1バッチから第4バッチを通じて実施例6で得られたメチルエステル含量は、実施例5で得られたものと同様の変化を示していた。これにより、第2バッチ以降は、反応系に炭酸水素ナトリウム水溶液(電解質水溶液)を用いなかったとしても、比較的低い撹拌速度(100rpm)の条件でも液体酵素を繰り返し使用しながら、メチルエステルを効率的に生成し得たことがわかる。
【0080】
(実施例7:液体酵素の繰り返し利用による高速撹拌でのエステル交換反応)
50mLネジ口瓶に、0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液(導電率860mS/m、pH8.0)0.5mL、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。反応開始後72時間で反応が終了した。以上を第1バッチのエステル交換反応とした。
【0081】
次に第2バッチのエステル交換反応として、以下を行った。
【0082】
第1バッチの反応終了後、一晩静置分離を行うことにより、メチルエステルとグリセリン層を分離し、その上清であるメチルエステルを除去し、得られたグリセリン層(反応残渣)に、新たに0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液(導電率860mS/m、pH8.0)0.5mL、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これを再び35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。また、当該反応中のサンプリングも行い、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を測定した。以上を第2バッチのエステル交換反応とした。
【0083】
さらに上記と同様にして、得られたグリセリン層(反応残渣)を用いて第3バッチ〜第12バッチまでのエステル交換反応を行い、各反応中のサンプリングを通じて反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を測定した。得られた結果を
図6に示す。
【0084】
(比較例5:液体酵素の繰り返し利用による高速撹拌でのエステル交換反応)
実施例7で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例7と同様にして第1バッチのエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0085】
その後、実施例7と同様にして生成したメチルエステルを除去し、得られたグリセリン層(反応残渣)について第2バッチ〜第4バッチのエステル交換反応を試みた。しかし、第5バッチ以降は、反応系内にメチルエステルの存在を観察することができなかった。得られた結果を
図6に示す。
【0086】
図6に示すように、比較例5では、第1バッチにて最終的に約90重量%のメチルエステル含量を達成したものの、第2バッチ(最終的に約80重量%)および第3バッチ(最終的に約35重量%)を通じて徐々に各バッチの最大含量の値が低下し、第4バッチではほとんどメチルエステルの生成が見出されなかった。これに対し、実施例7では、少なくとも12回ものエステル交換反応を繰り返すことができ、特に第1バッチ〜第6バッチのそれぞれにおいて最終的に80重量%以上のメチルエステル含量を達成し、かつ第1バッチ〜第12バッチのすべてにおいて最終的に約70重量%以上のメチルエステル含量を達成することができた。これにより、比較的早い撹拌速度(800rpm)の条件では液体酵素の繰り返し使用を一層延長することができ、メチルエステルをさらに効率的に生成し得たことがわかる。
【0087】
(実施例8:改質油脂を用いるエステル交換反応)
既報の文献(生物工学会誌,2014年,第92巻,第6号,pp.262−269)に記載の方法に基づいて、循環式エステル交換反応用装置を作製し、廃食用油から脂肪酸エステルおよび副生成物グリセリンを以下のようにして製造した。
【0088】
まず、循環式エステル交換反応用装置として、原料タンク(容量250L)と、原料タンクから供給される材料をエステル交換反応に供するための触媒反応管(長さ1.7m、内径210.0mm、および内容積58851.5mLのステンレススチール製パイプで構成されており、内部には担体(イオン交換樹脂)に固定化された酵素触媒(カンジダ・アンタルシティカ(Candida Antarctica) B由来リパーゼ(ノボザイム435:ノボザイム社製)))が充填されている)と、触媒反応管から得られた反応液を内容成分に応じて相分離しかつ分離した一方の成分をオーバーフローさせるための分離槽(容量40L)と、分離槽のオーバーフローによって分離槽内に沈殿した副生成物グリセリンを、粗グリセリンとして回収する装置を作製した。
【0089】
次いで、当該循環式エステル交換反応用装置の原料タンクに、廃食用油200L、メタノール(反応開始時に油脂(廃食用油)に対して0.5モル当量分を手動で添加)添加し、適切に混合かつ撹拌した後、これを触媒反応管に供給し、30℃にてエステル交換反応を行った。エステル交換を経た反応液を、触媒反応管から分離槽に移動し、生成した脂肪酸エステルを含む層をオーバーフローさせ、分離槽内に沈殿した副生成物グリセリンを、粗グリセリンとして回収した。また、原料タンクには反応開始後13.5時間まで定量ポンプで2.1kg/時間の割合でメタノールを供給した。このようにして装置内での反応液の循環を行った。
【0090】
反応液が触媒反応管から原料タンクへと循環する運転を約24時間継続した後、分離槽から一部のグリセリン(粗グリセリン)を回収した。この粗グリセリンには、全体重量を基準として約80%の純粋グリセリン、約10%のメタノール、およびその他脂肪酸エステルなどの油分を含有していたことを確認した。粗グリセリンのpHは幾分酸性を呈し、バイオディーゼル燃料用pHチェッカー(Filtertechnik社製)を使用して確認したpHは4.5であった。以上のことから得られた粗グリセリンは、アルカリ性不純物を実質的に含んでいないグリセリン(酵素触媒法由来のグリセリン)であることを確認した。
【0091】
さらに、30mLのネジ口瓶に、0.9mg−KOH/g油脂の酸価を有する廃食用油9gと、上記で得られた粗グリセリン0.84gとを添加し、さらにスターラーバーを入れ、25℃で10分間撹拌し、13,000rpmにて3分間遠心分離することにより改質油脂を得た。得られた改質油脂の酸価は、水酸化カリウムを用いた中和滴定法(JIS K 250)で測定したところ、0.4mg−KOH/g油脂であった。
【0092】
次いで、50mLネジ口瓶に、上記で調製した0.4mg−KOH/gの酸価を有する改質油9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液(導電率860mS/m、pH8.0)0.5mL、およびメタノール3M当量をそれぞれ添加し、これを35℃にて100rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。得られた結果を
図7に示す。
【0093】
(実施例9)
実施例8で使用した改質油脂の代わりに、0.9mg−KOH/g油脂の酸価を有する廃食用油9gを用いたこと以外は、実施例8と同様にしてエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を
図7に示す。
【0094】
(比較例6)
実施例8で使用した改質油脂の代わりに、0.9mg−KOH/g油脂の酸価を有する廃食用油9gを用い、かつ実施例8で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例8と同様にしてエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を
図7に示す。
【0095】
図7の(a)に示すように、エステル交換反応において炭酸水素ナトリウム水溶液を用いた反応系(実施例8および9)は、当該水溶液を用いなかった反応系(比較例6)と比較して、比較的低速(100rpm)の撹拌速度であっても、メチルエステル含量を高めることができた。これに対し、
図7の(d)に示すように、比較例6の反応系では、未反応トリグリセリド含量が実施例8および9のものと比較して高くなっていたことがわかる。また、上記改質油脂を用いた反応系(実施例8)は、未改質の油脂を用いた反応系(実施例9)と比較して、一層高いメチルエステル含量を達成しており(
図7の(a))、その一方で実施例8の未反応グリセリド含量は、実施例9のものよりも常に低い値を示していたことがわかる(
図7の(b)〜(d))。このことから、エステル交換反応に、炭酸水素ナトリウム水溶液とともに、副生成グリセリンを用いて得られた改質油脂を用いることにより、得られるメチルエステルの生成効率を一層向上させることができたとわかる。
【0096】
(実施例10:阻害物に対する効果)
エステル交換反応を阻害する界面活性剤を含有する廃食用油を用いて、当該反応の阻害の有無を確認した。
【0097】
0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油に、逆ミセルを形成可能な陰イオン性界面活性剤AOT(エアロゾルOT;和光純薬工業株式会社製)を1重量%の濃度となるように溶解させて、界面活性剤含有油脂を調製した。
【0098】
50mLネジ口瓶に、上記で調製した界面活性剤含有油脂9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。得られた結果を
図8に示す。
【0099】
(比較例7:阻害物に対する効果)
実施例10で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例4と同様にして界面活性剤含有油脂に対するエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を
図8に示す。
【0100】
図8に示すように、蒸留水を用いた場合(比較例7)、界面活性剤含有油脂を含む反応系では、メチルエステルの生成がほとんど観察されなかった(
図8)。このため、廃食用油に添加した陰イオン性界面活性剤がエステル交換反応の阻害物質として機能し、メチルエステルの生成を抑制または遮断していたことがわかる。これに対し、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いた場合(実施例10)、界面活性剤含有油脂を含む反応系においてもメチルエステルの生成が確認され、反応時間の経過とともにその含量が増大していたことがわかる(
図8)。このことから、例え、原料油脂に陰イオン性界面活性剤のような阻害物質が含まれていたとしても、炭酸水素ナトリウム水溶液のような電解質水溶液を用いることにより、当該阻害物質の影響を低減して所望の脂肪酸エステルの製造が可能になることがわかる。
【0101】
(実施例11:種々の原料油脂の影響(1))
50mLネジ口瓶に、菜種油(導電率;4.3mS/m;未精製油脂)9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌して72時間かけてエステル交換反応を行った。当該反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表1に示す。
【0102】
(比較例8:種々の原料油脂の影響(1))
実施例11で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例11と同様にしてエステル交換反応を行い、反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量ならびに未反応グリセリド含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
(実施例12:種々の原料油脂の影響(2))
50mLネジ口瓶に、加熱油脂劣化度酸価4の廃食用油(導電率;8.7mS/m)9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌して72時間かけてエステル交換反応を行った。当該反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表2に示す。
【0105】
(比較例9:種々の原料油脂の影響(2))
実施例12で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例12と同様にしてエステル交換反応を行い、反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量ならびに未反応グリセリド含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表2に示す。
【0106】
【表2】
【0107】
(実施例13:種々の原料油脂の影響(3))
50mLネジ口瓶に、加熱油脂劣化度酸価6の廃食用油(導電率;11.3mS/m)9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌して72時間かけてエステル交換反応を行った。当該反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表3に示す。
【0108】
(比較例10:種々の原料油脂の影響(3))
実施例13で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例13と同様にしてエステル交換反応を行い、反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量ならびに未反応グリセリド含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表3に示す。
【0109】
【表3】
【0110】
(実施例14:種々の原料油脂の影響(4))
50mLネジ口瓶に、加熱油脂劣化度酸価8の廃食用油(導電率;9.0mS/m)9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌して72時間かけてエステル交換反応を行った。当該反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表4に示す。
【0111】
(比較例11:種々の原料油脂の影響(4))
実施例14で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例14と同様にしてエステル交換反応を行い、反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量ならびに未反応グリセリド含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表4に示す。
【0112】
【表4】
【0113】
(実施例15:種々の原料油脂の影響(5))
50mLネジ口瓶に、非加熱牛脂固体4.5g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌して72時間かけてエステル交換反応を行った。当該反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表5に示す。
【0114】
(比較例12:種々の原料油脂の影響(5))
実施例15で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例15と同様にしてエステル交換反応を行い、反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量ならびに未反応グリセリド含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表5に示す。
【0115】
【表5】
【0116】
(実施例16:種々の原料油脂の影響(6))
50mLネジ口瓶に、リン脂質を5重量%の割合で添加した廃食用油(導電率;4.7mS/m)9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌して72時間かけてエステル交換反応を行った。当該反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表6に示す。
【0117】
(比較例13:種々の原料油脂の影響(6))
実施例16で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例16と同様にしてエステル交換反応を行い、反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量ならびに未反応グリセリド含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表6に示す。
【0118】
【表6】
【0119】
(実施例17:種々の原料油脂の影響(7))
50mLネジ口瓶に、リン脂質を10重量%の割合で添加した廃食用油(導電率;4.0mS/m)9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌して72時間かけてエステル交換反応を行った。当該反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表7に示す。
【0120】
(比較例14:種々の原料油脂の影響(7))
実施例17で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例17と同様にしてエステル交換反応を行い、反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量ならびに未反応グリセリド含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表7に示す。
【0121】
【表7】
【0122】
(実施例18:種々の原料油脂の影響(8))
50mLネジ口瓶に、未精製パーム油(導電率;2.2mS/m)9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、実施例1で調製した炭酸水素ナトリウム水溶液0.5mL、およびメタノール3M当量を添加し、これを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌して72時間かけてエステル交換反応を行った。当該反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量、ならびに未反応グリセリド(モノグリセリド(MG)、ジグリセリド(DG)、およびトリグリセリド(TG))含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表8に示す。
【0123】
(比較例15:種々の原料油脂の影響(8))
実施例18で使用した炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに、蒸留水(導電率;0.3mS/m、pH6.5)0.5mLを用いたこと以外は、実施例18と同様にしてエステル交換反応を行い、反応終了後、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量ならびに未反応グリセリド含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を表8に示す。
【0124】
【表8】
【0125】
表1〜8に示すように、種々の原料油脂を用いたエステル交換反応にあたり、電解質水溶液として、炭酸水素ナトリウム水溶液を存在させた系(実施例11〜18)では、この水溶液の代わりに蒸留水を用いた系(比較例8〜15)と比較して、いずれも多くのメチルエステルが生成され、その一方で、未反応グリセリド含量が低い値を示していた。このことから、種々の原料油脂に対して、炭酸水素ナトリウム水溶液を用いた実施例11〜18の反応系は、蒸留水を用いた比較例8〜15の反応系よりも、未反応グリセリドを減らしつつ効率良くメチルエステルを形成することができたとわかる。
【0126】
(実施例19:エステル交換反応における電解質濃度の依存性)
4つの50mLネジ口瓶に、0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mg、蒸留水0.5mL(予め測定した導電率は0.3mS/mであった)、およびメタノール3M当量と、電解質として炭酸水素ナトリウム0.9mg、4.5mg、9mgまたは90mg(それぞれの添加濃度は0.01重量%、0.05重量%、0.10重量%および1.00重量%に相当)とをそれぞれ添加し、これらを35℃にて100rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。得られた結果を
図9に示す。
【0127】
(比較例16:エステル交換反応における電解質濃度の依存性)
炭酸水素ナトリウムの添加を行わなかったこと以外は、実施例19と同様にしてエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を
図9に示す。
【0128】
図9に示すように、予め電解質水溶液を調製することなく、反応系に直接電解質(炭酸水素ナトリウム)を添加しても、添加しなかった反応系(比較例16)と比較して、いずれも多くのメチルエステルが生成された。このことから、反応系への電解質の添加は、固体または水溶液の形態のいずれを問わず可能であり、効率良くメチルエステルを形成することができたことがわかる。
【0129】
(実施例20:エステル交換反応における酵素液の導電率依存性)
10重量%の炭酸水素ナトリウム水溶液0.5gを液体酵素(液体リパーゼ;Callera Trans L、ノボザイム社製)50mgに添加して酵素液を調製した。得られた酵素液の導電率は1800mS/mであった。
【0130】
次いで、2つの50mLネジ口瓶に、0.9mg−KOH/gの酸価を有する廃食用油9g、およびメタノール3M当量と、上記で調製した酵素液(全量)とをそれぞれ添加し、これらを35℃にて800rpmの撹拌速度で撹拌してエステル交換反応を行った。当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量を、ガスクロマトグラフィー(株式会社島津製作所製GC−2010)により測定した。得られた結果を
図10に示す。
【0131】
(比較例17:エステル交換反応における酵素液の導電率依存性)
炭酸水素ナトリウム水溶液の代わりに水0.5gを用いたこと以外は、実施例20と同様にして酵素液を調製した。得られた酵素液の導電率は129mS/mであった。
【0132】
上記酵素液を用いたこと以外は実施例20と同様にして、廃食用油およびメタノールとともにエステル交換反応を行い、当該反応中、反応系内の反応液を適宜サンプリングし、反応液中に含まれるメチルエステル(ME)含量をガスクロマトグラフィーにより測定した。得られた結果を
図10に示す。
【0133】
図10に示すように、電解質水溶液の代わりに、予め調製した高い導電率を有する酵素液を、反応系に添加した場合(実施例20)でも、導電率の低い酵素液を添加した反応系(比較例17)と比較して、残存トリグリセリドの量が減少した。また、この減少に伴って、メチルエステルも多く生成されたことを確認した。このことから、反応系への電解質の添加は、酵素液の導電率を上げることでも、効率よくメチルエステルを形成することができたことがわかる。