特許第6409135号(P6409135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409135抗微生物コーティングおよびそれを形成させるための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409135
(24)【登録日】2018年9月28日
(45)【発行日】2018年10月17日
(54)【発明の名称】抗微生物コーティングおよびそれを形成させるための方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20181004BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20181004BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20181004BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20181004BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20181004BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20181004BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20181004BHJP
   A01N 25/34 20060101ALI20181004BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20181004BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20181004BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20181004BHJP
【FI】
   C09D183/04
   C09D7/61
   C09D7/63
   C09D5/14
   C09D1/00
   A01N59/16 Z
   A01N25/00 102
   A01N25/34 A
   A01P1/00
   B05D5/00 Z
   B05D7/24 302Y
   B05D7/24 303B
【請求項の数】20
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2017-536331(P2017-536331)
(86)(22)【出願日】2016年2月11日
(65)【公表番号】特表2018-508606(P2018-508606A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】US2016017599
(87)【国際公開番号】WO2016130837
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】62/114,998
(32)【優先日】2015年2月11日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/932,840
(32)【優先日】2015年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517155303
【氏名又は名称】アライド バイオサイエンス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モロス, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン, クレイグ
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/059101(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/097284(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0317624(US,A1)
【文献】 特開2004−224861(JP,A)
【文献】 特開2005−199155(JP,A)
【文献】 特開2008−188583(JP,A)
【文献】 特開2004−091697(JP,A)
【文献】 特開2005−246639(JP,A)
【文献】 特開2008−073588(JP,A)
【文献】 特開2005−131072(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099510(WO,A1)
【文献】 特開2011−126941(JP,A)
【文献】 国際公開第97/000134(WO,A1)
【文献】 特開2004−204091(JP,A)
【文献】 特開2013−032474(JP,A)
【文献】 特開2003−276145(JP,A)
【文献】 特開昭47−009016(JP,A)
【文献】 特表2018−502975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/00
B05D 1/00− 7/26
A01N 1/00− 65/48
A01P 1/00− 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)構造(1)
【化21】
を有するシラン;
(ii)ペルオキソチタン酸およびペルオキソ改質アナターゼゾル;ならびに
(iii)トリエタノールアミン
を含有する、抗微生物コーティング配合物であって、ここでR1、R2およびR3は、-OHおよび-O-アルキルからなる群より選択され、そしてR4は、-OH、-O-アルキル、-アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され、該置換アルキルとしては、γ-クロロ-プロピル、γ-アミノ-プロピル、および第四級アンモニウム塩置換アルキルが挙げられる、抗微生物コーティング配合物。
【請求項2】
前記シランは、γ-クロロプロピルシラントリオールである、請求項1に記載の抗微生物コーティング配合物。
【請求項3】
前記コーティング配合物は、フォーマイカを含む表面に配置される場合、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の4時間後に、マウスノロウイルスの≧1.50 log減少を示す、請求項2に記載の抗微生物コーティング配合物。
【請求項4】
前記コーティング配合物は、ステンレス鋼を含む表面に配置される場合、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の4時間後に、マウスノロウイルスの2.30 log減少を示す、請求項2に記載の抗微生物コーティング配合物。
【請求項5】
前記コーティング配合物は、ステンレス鋼を含む表面に配置される場合、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の6時間後に、マウスノロウイルスの2.58 log減少を示す、請求項2に記載の抗微生物コーティング配合物。
【請求項6】
前記シランは、γ-アミノプロピルシラントリオールである、請求項1に記載の抗微生物コーティング配合物。
【請求項7】
前記コーティング配合物は、フォーマイカを含む表面に配置される場合、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の4時間後に、マウスノロウイルスの1.00 log減少を示す、請求項6に記載の抗微生物コーティング配合物。
【請求項8】
前記コーティング配合物は、ステンレス鋼を含む表面に配置される場合、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の4時間後に、マウスノロウイルスの≧2.91 log減少を示す、請求項6に記載の抗微生物コーティング配合物。
【請求項9】
前記コーティング配合物は、ステンレス鋼を含む表面に配置される場合、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の6時間後に、マウスノロウイルスの≧2.91 log減少を示す、請求項6に記載の抗微生物コーティング配合物。
【請求項10】
抗微生物コーティングを表面上に形成させる方法であって、
該表面上に、
(i)構造
【化22】
を有するオルガノシラン;および
(ii)トリエタノールアミン
を含有する第一の組成物を配置する工程;ならびに
該表面上に、ペルオキソチタン酸およびペルオキソ改質アナターゼゾルを含有する第二の組成物を配置する工程
を包含し、ここでR1、R2およびR3は、-OHおよび-O-アルキルからなる群より選択され、そしてR4は、-OH、-O-アルキル、-アルキル、および置換アルキルからなる群より選択され、該置換アルキルとしては、γ-クロロ-プロピル、γ-アミノ-プロピル、および第四級アンモニウム塩置換アルキルが挙げられる、方法。
【請求項11】
前記シランは、γ-クロロプロピルシラントリオールである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面は、フォーマイカを含み、そして前記抗微生物コーティングは、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の4時間後に、マウスノロウイルスの≧1.50 log減少を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記表面は、ステンレス鋼を含み、そして前記抗微生物コーティングは、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の4時間後に、マウスノロウイルスの2.30 log減少を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記表面は、ステンレス鋼を含み、そして前記抗微生物コーティングは、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の6時間後に、マウスノロウイルスの2.58 log減少を示す、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記シランは、γ-アミノプロピルシラントリオールである、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記表面は、フォーマイカを含み、そして前記抗微生物コーティングは、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の4時間後に、マウスノロウイルスの1.00 log減少を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記表面は、ステンレス鋼を含み、そして前記抗微生物コーティングは、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の4時間後に、マウスノロウイルスの≧2.91 log減少を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記表面は、ステンレス鋼を含み、そして前記抗微生物コーティングは、該表面上へのマウスノロウイルスの最初の接種の6時間後に、マウスノロウイルスの≧2.91 log減少を示す、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記シランと前記トリエタノールアミンとが反応して、線状ポリマー、分岐ポリマーまたは架橋ポリマーのうちの少なくとも1つを、前記表面上に形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記シランは、テトラエチルオルトシリケートである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
実施形態は一般に、抗微生物(anti-microbial)コーティング組成物、およびこのコーティング組成物を使用する方法に関する。特定の実施形態において、このコーティング組成物は、光触媒を含有する。特定の実施形態において、この光触媒は、チタニル-オキシド(titanyl-oxide)部分を含む。特定の実施形態において、このコーティング組成物は、シランを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本発明は、以下の詳細な説明を図面と合わせて読むことによって、より良く理解される。図面において、同じ参照記号は、同じ要素を表すために使用される。
【0003】
図1図1は、Glendale Memorial Hospital ICUにおいて2012年1月から2014年2月までに院内感染したC-difficile感染の数をグラフで示す。
【0004】
図2図2は、Glendale Memorial Hospital(ICU以外)において2012年1月から2014年2月までに院内感染したC-difficile感染の数をグラフで示す。
【0005】
図3図3は、処理された試験片(test coupon)の接種の0時間後の抗微生物効力データを示す。
【0006】
図4図4は、処理された試験片の接種の4時間後の抗微生物効力データを示し、ABS-G2020およびABS-G2030で処理されたフォーマイカ片についてのデータを含む。
【0007】
図5図5は、処理された試験片の接種の4時間後の抗微生物効力データを示し、ABS-G2020およびABS-G2030で処理されたステンレス鋼片についてのデータを含む。
【0008】
図6図6は、マウスノロウイルスに対する2つのコーティング配合物を評価する表面タイム-キル研究(time-kill study)を示し、6時間の接触時間のデータである。
【0009】
図7図7は、3つのコーティング配合物の各々についてのCFU/mLデータを示し、各配合物は、1つまたはそれより多くの酸化チタン部分を含まなかった。
【0010】
図8図8は、評価した3つの配合物についてのLog減少データを示し、各配合物は、1つまたはそれより多くの酸化チタン部分を含まなかった。
【0011】
図9図9は、利用した3つの配合物についてのパーセント減少データを示し、各配合物は、1つまたはそれより多くの酸化チタン部分を含まなかった。
【0012】
図10図10は、特定の静電スプレーの実施形態についての抗微生物効力データを示す。
【0013】
図11図11は、特定の静電スプレーの実施形態についての抗微生物効力データを示す。
【0014】
図12図12は、特定の静電スプレーの実施形態についての抗微生物効力データを示す。
【0015】
図13図13は、特定の非静電スプレーの実施形態についての抗微生物効力データを示す。
【0016】
図14図14は、特定の非静電スプレーの実施形態についての抗微生物効力データを示す。
【0017】
図15図15は、特定の非静電スプレーの実施形態についての抗微生物効力データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、好ましい実施形態が、以下の説明に、図を参照しながら記載される。図において、同じ番号は、同じまたは類似の要素を表す。本明細書全体にわたる「1つの実施形態」、「ある実施形態」、または類似の表現への言及は、その実施形態に関して記載される特定の特色、構造、または特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体にわたる語句「1つの実施形態において」、「ある実施形態において」、および類似の表現の出現は、全てが同じ実施形態に言及してもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
トリエタノールアミンおよび構造:
【化13】
を有するシランから本質的になる、抗微生物コーティング配合物。
(項目2)
前記シランの成膜前の表面が、マウスノロウイルスの接種の直後に、該表面上に配置されたマウスノロウイルスの初期濃度を有しており;
該表面に該マウスノロウイルスを接種した4時間後に、マウスノロウイルスの濃度は、約100%低下する、
項目1に記載の抗微生物コーティング。
(項目3)
前記表面がステンレス鋼から形成されている、項目2に記載の抗微生物コーティング。
(項目4)
構造:
【化14】
を有するシラン、
ペルオキソチタン酸とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物;
およびトリエタノールアミン
から本質的になる、抗微生物コーティング配合物。
(項目5)
前記抗微生物コーティングの形成前の表面が、マウスノロウイルスの接種の直後に、該表面上に配置されたマウスノロウイルスの初期濃度を有しており;
該表面に該マウスノロウイルスを接種した4時間後に、マウスノロウイルスの濃度は、約99.5%低下する、
項目4に記載の抗微生物コーティング配合物。
(項目6)
前記表面がステンレス鋼から形成されている、項目4に記載の抗微生物コーティング配合物。
(項目7)
トリエタノールアミンおよび構造:
【化15】
を有するシランから本質的になる、抗微生物コーティング配合物。
(項目8)
第一のコーティングの形成前の表面が、マウスノロウイルスの接種の直後に、該表面上に配置されたマウスノロウイルスの初期濃度を有しており;
該表面に該マウスノロウイルスを接種した4時間後に、マウスノロウイルスの濃度は、約100%低下する、
項目7に記載の抗微生物コーティング配合物。
(項目9)
前記表面がステンレス鋼から形成されている、項目8に記載の抗微生物コーティング配合物。
(項目10)
構造:
【化16】
を有するシラン、
ペルオキソチタン酸とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物;
およびトリエタノールアミン
から本質的になる、抗微生物コーティング配合物。
(項目11)
抗微生物コーティングの形成前の表面が、マウスノロウイルスの接種の直後に、該表面上に配置されたマウスノロウイルスの初期濃度を有しており;
該表面に該マウスノロウイルスを接種した4時間後に、マウスノロウイルスの濃度は、約99.8%低下する、
項目10に記載の抗微生物コーティング配合物。
(項目12)
前記表面がステンレス鋼から形成されている、項目10に記載の抗微生物コーティング配合物。
(項目13)
抗微生物表面を調製する方法であって、
液体キャリア中のトリエタノールアミンとシランとの混合物を、該表面上に配置する工程であって、該シランは、構造:
【化17】
を有する化合物からなる、工程、
該液体キャリアを蒸発させて、該シランおよびトリエタノールアミンから本質的になる第一のコーティングを形成させる工程;
水キャリア中のペルオキソチタン酸とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物を、該表面上に配置する工程;
該水キャリアを蒸発させて、該ペルオキソチタン酸とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物から本質的になる、チタニル-オキシドの第二のコーティングを形成させる工程
を包含する、方法。
(項目14)
前記シランコーティングが、前記表面上に最初に形成され;
前記チタニル-オキシドコーティングが、該シランコーティングを覆って形成される、
項目13に記載の方法。
(項目15)
前記チタニル-オキシドコーティングが、前記表面上に最初に形成され;
前記シランコーティングが、該チタニル-オキシドコーティングを覆って形成される、
項目13に記載の方法。
(項目16)
抗微生物表面を調製する方法であって、
液体キャリア中の、シラン、トリエタノールアミン、およびペルオキソチタン酸とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物を、表面上に配置する工程であって、該シランコーティングは、構造:
【化18】
を有する化合物から本質的になる、工程、
該液体キャリアを蒸発させる工程
を包含する、方法。
(項目17)
抗微生物表面を調製する方法であって、
液体キャリア中のシランおよびトリエタノールアミンを、表面上に配置する工程であって、該シランコーティングは、構造:
【化19】
を有する化合物から本質的になる、工程、
該液体キャリアを蒸発させて、該シランから本質的になるコーティングを形成させる工程;
水キャリア中のペルオキソチタン酸とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物を、該表面上に配置する工程;
該水キャリアを蒸発させて、該ペルオキソチタン酸とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物から本質的になるチタニル-オキシドのコーティングを形成させる工程
を包含する、方法。
(項目18)
前記シランコーティングが、最初に前記表面上に形成され;
前記チタニル-オキシドコーティングが、該シランコーティングを覆って形成される、
項目17に記載の方法。
(項目19)
前記チタニル-オキシドが、最初に前記表面上に形成され;
前記シランコーティングが、該チタニル-オキシドコーティングを覆って形成される、
項目17に記載の方法。
(項目20)
抗微生物表面を調製する方法であって、
液体キャリア中の、シラン、トリエタノールアミン、およびペルオキソチタン酸とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物を、表面上に配置する工程であって、シランコーティングは、構造:
【化20】
を有する化合物から本質的になる、工程、
該液体キャリアを蒸発させる工程
を包含する、方法。
【0019】
記載される本発明の特色、構造、または特徴は、1つまたはそれより多くの実施形態において、任意の適切な様式で組み合わせられ得る。以下の説明において、多数の特定の細部が、本発明の実施形態の徹底的な理解を提供するために、記載される。しかし、当業者は、本発明が、特定の細部のうちの1つまたはそれより多くを用いずに実施されてもよいこと、あるいは他の方法、構成要素、および材料などを用いて実施されてもよいことを認識する。他の例において、周知の構造、材料、または操作は、本発明の局面を不明瞭にすることを回避するために、詳細には図示も記載もされない。
【0020】
本発明者らの組成物および方法の特定の実施形態において、コーティングが表面上に形成され、ここでこのコーティングは、複数のケイ素-酸素結合を含む。本発明者らの組成物および方法の特定の実施形態において、コーティングが表面上に形成され、ここでこのコーティングは、複数のチタン-酸素結合を、複数のケイ素-酸素結合と組み合わせて含む。
【0021】
特定の実施形態において、複数のチタニル-オキシド結合を、複数のケイ素-酸素結合と組み合わせて含むコーティングは、表面上に、シランを、1つまたはそれより多くのチタニル-酸素(titanyl-oxygen)結合を含む1つまたはそれより多くの化合物と組み合わせて配置することによって、形成される。特定の実施形態において、複数のチタニル-オキシド結合を、複数のケイ素-酸素結合と組み合わせて含むコーティングは、最初に、1つまたはそれより多くのチタニル-酸素結合を含む1つまたはそれより多くの化合物を表面上に配置し、そしてシランを、この表面上に、この1つまたはそれより多くのチタニル-酸素結合を含む1つまたはそれより多くの化合物を覆って配置することによって、形成される。特定の実施形態において、複数のチタニル-オキシド結合を、複数のケイ素-酸素結合と組み合わせて含むコーティングは、1つまたはそれより多くのチタニル-酸素結合を含む1つまたはそれより多くの化合物と、シランとを、この表面上に同時に配置することによって、形成される。
【0022】
特定の実施形態において、本発明者らのシランは、化合物1
【化1】
を含む。
【0023】
特定の実施形態において、R1は、OHおよびO-アルキルからなる群より選択される。特定の実施形態において、R2は、OHおよびO-アルキルからなる群より選択される。特定の実施形態において、R3は、OHおよびO-アルキルからなる群より選択される。特定の実施形態において、R4は、OH、O-アルキル、アルキル、置換アルキル(γ-クロロ-プロピル、γ-アミノ-プロピル、および第四級アンモニウム塩置換アルキルが挙げられる)からなる群より選択される。
【0024】
特定の実施形態において、本発明者らのシランは、トリヒドロキシシラン2
【化2】
を含む。
【0025】
特定の実施形態において、本発明者らのシランは、R4がアルキルである、シラントリオール2を含む。他の実施形態において、本発明者らのシランは、R4がアミノ部分を有するアルキルである、シラントリオール2を含む。なお他の実施形態において、本発明者らのシランは、R4が塩素置換基を有するアルキルである、シラントリオール2を含む。さらに他の実施形態において、本発明者らのシランは、R4が第四級アンモニウム基を有するアルキルである、シラントリオール2を含む。
【0026】
シルセスキオキサン(silsesquioxane)とは、オルガノケイ素化合物3であり、ここでSiは、元素のケイ素を表し、そしてOは、元素の酸素を表す。
【化3】
特定の実施形態において、本発明者らのシラン1または2を、硬い表面(すなわち、壁、扉、およびテーブルなど)、または軟らかい表面(すなわち、寝具、生地(drapery)、および家具のクッションなど)のいずれかに付与した後に、この硬い表面/軟らかい表面上に配置された、得られるコーティングは、複数のシルセスキオキサン構造を含む。特定の実施形態において、本発明者らのシラン1または2を、チタニル-酸素部分を含む1つまたはそれより多くの化合物と組み合わせて、硬い表面(すなわち、壁、扉、およびテーブルなど)、または軟らかい表面(すなわち、寝具、生地、および家具のクッションなど)のいずれかに付与した後に、この硬い表面/軟らかい表面の上に配置された、得られるコーティングは、複数のシルセスキオキサン構造3を、複数のチタニル-オキシド構造と組み合わせて含む。
【0027】
酸化とは、分子、原子またはイオンによる、電子の損失または酸化状態の増加である。他の物質を酸化させる能力を有する物質は、酸化力がある(oxidative)、または酸化性である(oxidizing)といわれ、そして酸化剤(oxidizing agent)、オキシダント(oxidant)、またはオキシダイザー(oxidizer)として公知である。換言すれば、オキシダントは、別の物質から電子を除去し、従って、自身は還元される。そして、これは電子を「受容する」ので、電子受容体とも呼ばれる。
【0028】
化学において、光触媒作用とは、触媒の存在下での光反応の加速である。触媒される光分解において、光は、吸着された基材によって吸収される。光によって起こる触媒作用において、光触媒活性(PCA)は、この触媒が電子-ホール対を発生させる能力に依存し、これは、二次反応を受けることができるフリーラジカル(ヒドロキシルラジカル:・OH)を生成させる。その理解は、二酸化チタンによる水の電気分解の発見以来ずっと、可能にされてきている。
【0029】
特定のチタニル-オキシドの形態は、紫外(UV)光に曝露されるときに、光触媒特性を示す。UV光に曝露されるときに、本発明者らのチタニル-オキシド部分は、電子-ホール対を発生させ、これは、フリーラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカル)を生成させる。光触媒作用の強さの程度は、チタニル-オキシドの種類に依存して変化し、例えば、アナターゼ酸化チタン(約5〜30ナノメートルの粒子サイズ)は、ルチル酸化チタン(約0.5〜1ミクロンの粒子サイズ)より強い光触媒である。
【0030】
本発明者らの組成物および方法の特定の実施形態において、コーティングが表面上に形成され、ここでこのコーティングは、複数のチタニル-オキシド結合を含み、ここでこのコーティングは、本発明者らのチタニル-オキシド部分を標的表面上に配置することによって形成される。
【0031】
本発明者らの組成物および方法の特定の実施形態において、コーティングが表面上に形成され、ここでこのコーティングは、複数のケイ素-酸素結合を含み、ここでこのコーティングは、本発明者らのシラン1をこの表面上に配置することによって形成される。
【0032】
本発明者らの組成物および方法の特定の実施形態において、コーティングが表面上に形成され、ここでこのコーティングは、複数のチタニル-オキシド結合を含み、ここでこのコーティングは、この表面上に、ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼ(modified anatase)ゾルとの混合物(まとめて「チタニル-オキシド部分」)を配置することによって、形成される。
【0033】
特定の実施形態において、本発明者らのチタニル-オキシド部分は、ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルとの混合物の、合計で約1重量パーセントまでのローディングを含む。特定の実施形態において、本発明者らのチタニル-オキシド部分は、約0.5重量パーセントのペルオキソチタン酸溶液を、約0.5重量パーセントのペルオキソ改質アナターゼゾルと組み合わせて含む。
【0034】
ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルとの両方を調製する方法は、Journal of Sol-Gel Science and Technology, September 2001, Volume 22, Issue 1-2, pp 33-40に開示されている。この刊行物は、とりわけ、本明細書中ではすぐ下に示される反応スキーム1を開示し、これは、ペルオキソチタン酸溶液とペルオキソ改質アナターゼゾルとの両方のための合成手順を要約する。
反応スキーム1
【化4】
【0035】
以下の実施例において、コーティングABS-G2015、ABS-G2020、およびABS-G2030が参照される。コーティング配合物ABS-G2015は、構造V:
【化5】
を有する、シリコーン(silicone)含有化合物を含有する。
【0036】
コーティング配合物ABS-G2015は、チタニル-オキシド部分をさらに含む。表面上への成膜(deposition)の順序は、重要ではない。特定の実施形態において、このシリコーン含有化合物が、最初に表面上に配置され、そしてこのチタニル-オキシド部分が、このシリコーン含有化合物を覆って配置される。他の実施形態において、このチタニル-オキシド部分が、最初に表面上に配置され、そしてこのシリコーン含有化合物が、このチタニル-オキシド部分で処理された表面を覆って配置される。なお他の実施形態において、このチタニル-オキシド部分とこのシリコーン含有化合物とが最初に予備混合され、そして得られた混合物が、基材の表面上に配置される。
【0037】
コーティング配合物ABS-G2020は、構造VI:
【化6】
を有する、シリコーン含有化合物を含有する。
【0038】
コーティング配合物ABS-G2020は、チタニル-オキシド部分をさらに含む。表面上への成膜の順序は、重要ではない。特定の実施形態において、このシリコーン含有化合物が、最初に表面上に配置され、そしてこのチタニル-オキシド部分が、このシリコーン含有化合物を覆って配置される。他の実施形態において、このチタニル-オキシド部分が、最初に表面上に配置され、そしてこのシリコーン含有化合物が、このチタニル-オキシド部分で処理された表面を覆って配置される。なお他の実施形態において、このチタニル-オキシド部分とこのシリコーン含有化合物とが最初に予備混合され、そして得られた混合物が、基材の表面上に配置される。
【0039】
コーティング配合物ABS-G2030は、構造VII:
【化7】
を有する、シリコーン含有化合物を含有する。
【0040】
コーティング配合物ABS-G2030は、チタニル-オキシド部分をさらに含む。表面上への成膜の順序は、重要ではない。特定の実施形態において、このシリコーン含有化合物が、最初に表面上に配置され、そしてこのチタニル-オキシド部分が、このシリコーン含有化合物を覆って配置される。他の実施形態において、このチタニル-オキシド部分が、最初に表面上に配置され、そしてこのシリコーン含有化合物が、このチタニル-オキシド部分で処理された表面を覆って配置される。なお他の実施形態において、このチタニル-オキシド部分とこのシリコーン含有化合物とが最初に予備混合され、そして得られた混合物が、基材の表面上に配置される。
【0041】
以下の実施例は、当業者に、本発明を作製および使用する方法をさらに説明するために提供される。これらの実施例は、どのようにも、本発明の範囲に対する限定であることは意図されない。
【実施例】
【0042】
実施例1
この実施例1は、コーティングABS-G2015、ABS-G020、およびABS G-2030の、マウスノロウイルスに対する抗微生物効力を評価する。マウスノロウイルス(MNV)とは、マウスに感染するノロウイルスの種である。ノロウイルスは、ヒトにおけるウイルス性胃腸炎の最も一般的な原因である。これは、全ての年齢のヒトに感染する。このウイルスは、とりわけ、このウイルスのエアロゾル化、およびその後の表面の汚染によって、伝達される。このウイスルは、毎年およそ2億6千7百万人の人々を冒し、そして200,000を超える死亡を引き起こしている。これらの死亡は通常、さほど発展していない国においてであり、そして非常に若いヒト、年老いたヒト、および免疫抑制されたヒトにおいてである。
【0043】
この実施例1の試験片を、本明細書中ですぐ下に記載される手順を使用して、準備した。
【0044】
手順
滅菌手袋を着用する。
【0045】
試験片を、最初にイソプロピルアルコールで拭き、そして乾燥させることによって、準備する。
【0046】
これらの試験片を、表面クリーナーを用いて、マイクロファイバー布を使用して、きれいにする。
【0047】
噴霧器を、きれいにされるべき表面から約8インチに保持する。
【0048】
スプレーして1〜3分間そのままにしておき、そしてそれを拭い去る。その領域が極度に汚い場合、クリーナーをより長時間作動させるか、または2回目のスプレーおよび拭き取りを行う。
【0049】
表面をきれいな湿ったスポンジまたは布で拭く。
【0050】
表面を完全に乾燥させる。
【0051】
手袋をはめた手で、コンシステンシーについて片を調べる。
【0052】
メタノール(MeOH)中の選択されたシランの、10体積パーセントの溶液(90mlのMeOH中10mlのシラン)を調製する。
【0053】
トリエタノールアミンを、MeOH中10体積パーセントの溶液として調製する。
【0054】
このトリエタノールアミン溶液とこのシラン溶液とを、1:1の比で、撹拌プレート上で、室温で合わせる(すなわち、100mlのトリエタノールアミン溶液を100mlのシラン溶液に加える)。
【0055】
シランの付与
[0041]からのシラン/トリエタノールアミン溶液をアプリケータ容器に加える。
【0056】
液体ホース/ボトルキャップアセンブリを容器にきつく固定する。
【0057】
圧縮機からの空気ホースをスプレーアプリケータの空気取付具に接続する。
【0058】
液体ホースをスプレーアプリケータの液体取付具に接続する。
【0059】
電源コードを適切なコンセントに差し込む。空気圧縮機の電源を入れる。
【0060】
最適なスプレー距離は、標的表面から少なくとも36〜48インチ離れた距離である。
【0061】
スプレーガンをこの標的表面に対して直角に保持し、そしてスプレーする。
【0062】
標的表面は、このスプレーでかろうじて光る程度にされるべきである。この表面を過剰に飽和させないこと。
【0063】
標的表面を乾燥させる。すなわち、メタノール液体キャリアの少なくとも90重量パーセントを蒸発させて、選択されたシランおよびトリエタノールアミンから本質的になる成膜を得る。この標的表面への成膜は、少なくとも33体積パーセントの選択されたシラン、少なくとも33体積パーセントのトリエタノールアミン、および約33体積パーセントまでの残留メタノールキャリア液体からなる。
【0064】
スプレーガンを蒸留水ですすぎ、その後、本発明者らのチタニル-オキシド部分を付与する(1つの生成物に対してそれぞれ1つずつの、2つの噴霧器を使用しない限り)。
【0065】
チタニル-オキシド部分の付与。
本発明者らのチタニル-オキシド部分の水性混合物を、アプリケータ容器に加える。
【0066】
液体ホース/ボトルキャップアセンブリを容器にきつく固定する。
【0067】
圧縮機からの空気ホースをスプレーアプリケータの空気取付具に接続する。
【0068】
液体ホースをスプレーアプリケータの液体取付具に接続する。
【0069】
電源コードを適切なコンセントに差し込む。空気圧縮機の電源を入れる。
【0070】
最適なスプレー距離は、標的表面から少なくとも36〜48インチ離れた距離である。
【0071】
スプレーガンをこの標的表面に対して直角に保持し、そしてスプレーする。
【0072】
標的表面は、このスプレーでかろうじて光る程度にされるべきである。この表面を過剰に飽和させないこと。
【0073】
標的表面を乾燥させる。すなわち、水液体キャリアの少なくとも90重量パーセントを蒸発させて、本発明者らのチタニル-オキシド部分から本質的になる成膜を得る。この標的表面上の成膜は、少なくとも66体積パーセントの本発明者らのチタニル-オキシド部分、および約33体積パーセントまでの残留水キャリア液体からなる。
【0074】
各使用日の後に、製造業者の仕様に従って、スプレーガンを蒸留水できれいにする。
【0075】
図4および図5は、処理された試験片の接種の4時間後の抗微生物効力データを示す。図4は、ABS-G2020およびABS-G2030で処理されたフォーマイカ片についてのデータを含む。図5は、ABS-G2020およびABS G-2030で処理されたステンレス鋼片についてのデータを含む。
【0076】
RAW(マウスマクロファージ)宿主細胞を、96ウェルトレイ内に、試験において使用する24時間前に調製した。
【0077】
試験日に、試験ウイルスであるマウスノロウイルスのストックバイアルを、-80℃での貯蔵から取り出した(力価=1mlあたり5×108 TCID 50単位)。有機汚染物ロード(organic soil load)(熱不活性化ウシ胎仔血清)を、5%の最終濃度を得るように加えた。
【0078】
コントロール(コーティングされていないステンレス鋼およびフォーマイカ)ならびにコーティングされた試験キャリア[ABS-G2015(SS);ABS-G2020(Form);ABS-G2030(Form);ABS-P2015(SS)]を、滅菌ペトリ皿に(1つの皿に1つずつ)、予め滅菌した鉗子を使用して入れた。
【0079】
ウイルス接種材料(0.010ml)を、ピペットで、コントロールキャリアおよび試験キャリアの中心に置き、そして滅菌した曲がったピペットチップを使用して、約1in2の表面積にわたって広げた。
【0080】
1セットのコントロールキャリア(表面材料の種類あたり)を即座に採取/中和して、3mlの中和溶液(0.001%のチオ硫酸Naおよび0.001%のチオグリコール酸Naを補充した仔ウシ血清)を含む滅菌ストマッカーバッグ(stomacher bag)に入れることによって、時間ゼロの計数を決定した。これらのバッグを高速で120秒間ストマック処理(stomach)して、これらのウイルスをキャリアから放出した。
【0081】
残りのコントロールキャリアおよび試験キャリアを、周囲条件下で、4時間および24時間の特定された研究接触時間のそれぞれの時間にわたって保持した[配置距離/構成:2個の全スペクトル電球の約68インチ(約1.7m)下方、接種した面を光に向けて上向き)]。全てのキャリアは、接種の10分以内で乾燥したことが観察された。
【0082】
それぞれの接触時間の終了時に、コントロールキャリアおよび試験キャリアを、先に記載したように、3mlの中和溶液を含む滅菌ストマッカーバッグに入れることにより中和し、その後、ストマック処理を行った。
【0083】
接触時間のそれぞれの開始時および終了時に、室温、相対湿度、および照度(lux)を測定し、そして記録した。
【0084】
コントロールキャリアおよび試験キャリアの溶離液を段階的に希釈し(1:10)、そして6つに複製して、適切なコンフルエンシーに調製したRAW宿主細胞にプレート培養した。
【0085】
これらのプレートを24時間から48時間ごとに観察して、ウイルスの細胞変性効果(CPE)および細胞傷害性を可視化した。
【0086】
9日間のアッセイインキュベーション期間の後に、これらのプレートを形式的に評点付けした。
【0087】
Log10減少およびパーセント減少を、試験コーティング配合物の各々について、時間を合わせたコントロールのウイルス計数(表面の種類あたり)に対して計算した。しかし、24時間の接触時間については、コントロールキャリアからの不十分なウイルス回収に起因して、減少を計算できなかった。
【0088】
中和の確認を、試験コーティング配合物の各々について(キャリアを欠くので、ABS-P2015以外)実施した。1つのコントロールキャリアと、各試験キャリアの種類のうちの1つとを、3mlの中和剤を含むストマッカーバッグに入れ、そして先に記載されたように処理した。その溶離液を段階的に希釈し、そして試験ウイルスの低い力価の接種材料(約3log10)を、コントロールキャリアおよび試験キャリアの懸濁物ごとに、希釈チューブの各々に添加した。次いで、これらの懸濁物のアリコート(0.1ml)を、中和された試験材料の細胞傷害性レベルを評価する目的で、プレート培養した。
【0089】
実施例2
この実施例2は、コーティング配合物、すなわち、ABS-G2015、ABS-G2020、およびABS-G2030において利用される3つのシランを利用するが、いずれのチタニル-オキシド含有化合物も用いない。シランの試験片上へのスプレー成膜に関する、実施例1の段落[0044]〜段落[0064]の方法を、この実施例2において利用した。チタニル-オキシド部分のスプレー成膜に関する、段落[0065]〜段落[0074](これらの段落を含む)の方法を、この実施例2において利用しなかった。
【0090】
図7は、3つのコーティング配合物の各々についてのCFU/mLデータを示し、各配合物は、1つまたはそれより多くの酸化チタン部分を含まなかった。図8は、評価した3つの配合物についてのLog減少データを示し、各配合物は、1つまたはそれより多くの酸化チタン部分を含まなかった。図9は、利用した3つの配合物についてのパーセント減少データを示し、各配合物は、1つまたはそれより多くの酸化チタン部分を含まなかった。
【0091】
実施例3
この実施例3は、完全な配合物ABS-G2015、AB-G2020、およびABS-G2030を利用する。ここでこれらのコーティング配合物を、実施例1の手順全体を使用して、ステンレス鋼試験片上に配置した。1セットの実験において、これらの配合物を、静電スプレーアセンブリを使用して、試験片上に配置した。別のセットの実験において、これらの配合物を、非静電スプレーアセンブリを使用して、試験片上に配置した。
【0092】
図10図11、および図12は、静電スプレーの実施形態についての抗微生物効力データを示す。図13図14、および図15は、非静電スプレーの実施形態についての抗微生物効力データを示す。
【0093】
実施例4
研究を、Glendale,CAのGlendale Memorial Hospital and Health Centerで行った(「Glendale Memorial Hospital研究」)。このセンターには、24床の集中治療室(ICU)がある。この研究を、2013年の5月10日から9月30日まで行った。Glendale Memorial Hospital研究を、本明細書中で上記したコーティング組成物ABS-G2015の抗微生物効力を評価するように設計し、ここでこのコーティング組成物を、本明細書中の実施例1の完全な方法を使用して付与した。
【0094】
Glendale Memorial Hospital研究において、ICU全体を、本明細書中に記載される2段階スプレーレジメンに供して、各部屋の全ての表面(硬い表面(ベッド、トレイテーブル、ベッドの手すり、壁など)および軟らかい表面(生地、布およびビニールで覆われた椅子など)を含めて)を処理した。より具体的には、各表面に最初に、室温で、オクタデシルアミノジメチルトリヒドロキシシリルプロピルアンモニウムクロリド(「シリル化第四級アミン」)を水中約3.6重量パーセントで混合することによって形成した水性組成物を使用して、静電スプレーでコーティングした。
【0095】
この水性シリル化第四級アミンを使用しての静電スプレーコーティング後の約15分後、各表面を、室温で、本明細書中で上記したチタニル-オキシド部分を使用して静電コーティングした。
【0096】
処理された表面を、水性シリル化第四級アミンのスプレー成膜中、およびチタニル-オキシド部分のスプレー成膜中に、室温で維持した。処理された表面をいずれも、高温での加熱処理に供さなかった。この加熱処理において、処理された表面は、2工程のコーティングレジメンの完了後、およそ室温より高い温度まで加熱された。
【0097】
ICU内の95の特定の場所を、2工程のスプレーレジメン後1週目、2週目、4週目、8週目、および15週目のサンプリングを繰り返すために、選択した。これらの選択した場所は、ベッドの手すり、ベッドの制御装置、トレイテーブル、および流しの上の壁を含んだ。サンプルをまた、2つのICU看護ステーションおよび待合ロビー(カウンタートップ、電話機、コンピュータのキーボード、椅子のひじ掛けおよびエンドテーブルを含めて)から集めた。全ての可動物品に、この研究の経過中、目立たないようにタグおよび符号を付けて、同じ物体をサンプリングできるようにした。
【0098】
100cm2の面積を、あらゆる残留消毒薬を中和するためにレーゼンブロス(3M,St.Paul,MN)を含むスポンジスティックを使用して、サンプリングした。採集後、これらのサンプルを即座に氷嚢に載せ、そして一晩で、Charles Gerba教授による分析のために、University of Arizonaに送った。
【0099】
本明細書の図1は、Dignity Health/Glendale Memorial Hospital & Health CenterのInfection Preventionのマネージャーによって提供された第一のグラフの、正当な正確なコピーである。証拠1は、Glendale Memorial Hospital ICUにおける2012年1月から2014年2月までの院内感染したC-difficile感染の数をグラフで示す。
【0100】
図1は、2013年9月を除いて、2013年5月〜2013年11月の期間中にICUにおいて発生した、院内感染したC-difficile感染が存在しなかったことを示す。従って、図1は、2013年5月〜2013年11月の6か月間の間にICUにおいて発生した、1回の院内感染したC-difficile感染が存在したことを示す。
【0101】
図1はさらに、2013年5月〜2013年11月の6か月間の期間以外に、2012年1月から2014年2月までの25か月の間に、院内感染したC-difficile感染がICUにおいて1回しか発生しなかった6か月の期間は他に存在しなかったことを示す。
【0102】
ICU内の全ての表面を、2013年5月の第一週の間に、Glendale Memorial Hospital研究の一部として、本明細書中で上記されたように処理した。本明細書の図2は、Dignity Health/Glendale Memorial Hospital & Health CenterのInfection Preventionのマネージャーによって提供された第二のグラフの、正当な正確なコピーである。証拠2は、Glendale Memorial Hospital(ICU以外)における2012年1月から2014年2月までの院内感染したC-difficile感染の数をグラフで示す。
【0103】
図2は、2013年4月を除いて、病院領域の、ICUの外側で、25か月の期間中に、毎月1回〜8回の院内感染したC-difficile感染が存在したことを示す。2013年5月〜2013年11月の期間中に、図2は、Glendale Memorial HospitalのICUの外側で発生した、合計20回の院内感染したC-difficile感染が存在したことを示す。
【0104】
図1および図2は、2013年5月〜2013年11月の期間中に、1回の院内感染したC-difficile感染が、Glendale Memorial HospitalのICUにおいて発生したこと、および合計20回の院内感染したC-difficile感染が、Glendale Memorial HospitalのICUの外側で発生したことを示す。
【0105】
Clostridium difficile大腸炎または偽膜性腸炎は、Clostridium difficile(芽胞形成細菌の1種)の感染から生じる大腸炎(大腸の炎症)である。これは、C.difficile下痢と呼ばれる感染性の下痢を引き起こす。Clostridium difficile感染(CDI)の潜伏性の症状はしばしば、いくつかのインフルエンザに似た症状を模倣し、そして炎症性腸疾患に関連する大腸炎を有するヒトにおいて、疾患の再発を模倣し得る。C.difficileは、鼓張および下痢(腹痛を伴う)(これは、重篤になり得る)を引き起こし得る毒素を放出する。
【0106】
C.difficileは、ヒトからヒトへと、糞便-口腔経路によって伝達される。この生物は、アルコールベースのハンドクレンザーでも慣用的な表面クリーニングでも殺傷されない、熱抵抗性の芽胞を形成する。従って、これらの芽胞は、臨床環境において長期間にわたって生存する。このことに起因して、この細菌は、ほとんど全ての表面から培養され得る。
【0107】
Clostridium difficileの芽胞は、極めて丈夫であり、食物がない環境において長期間にわたって生存し得る。これらの芽胞は、乾燥および加熱に対して抵抗性であり、そしてまた、多くの形態の防腐クリーナーに対する抵抗性を有する。C.diffはまた、芽胞の形態で、5か月間もの長期にわたって生存し得る。C.diff.がこの抵抗性の形態で生存する能力は、病院に対して非常な難問を生む。
【0108】
C.diffは、アルコールベースのハンドクレンザーでも慣用的な表面クリーニングでも殺傷されない、熱抵抗性の芽胞を形成するので、図1および図2のデータは、Glendale Memorial Hospital ICUにおける硬い表面および軟らかい表面の、ABS-G2015での処理は、このICUにおけるC.diffの芽胞の発生を必然的に減少させたことを実証する。図2のデータは、ABS-G2015コーティング組成物で処理されなかった、病院の他の部署が、ずっと高いレベルの院内感染したC.diff感染を経験したことを示し、これによって、ABS-G2015の付与から得られるコーティングの、C.diffの芽胞に対する抗微生物効力を確証する。
【0109】
コーティング配合物ABS G2015、G2020、およびG2030において、トリエタノールアミンとオルガノシランとの混合物の化学量論に依存して、1つまたはポリマーの種が、処理された表面上に形成される。特定の実施形態において、反応スキーム2に示されるように、トリエタノールアミン9とオルガノシラン1とが反応して、線状ポリマー10が形成され、ここでnは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しい。
反応スキーム2
【化8】
【0110】
他の実施形態において、スキーム3に示されるように、トリエタノールアミン9とオルガノシラン1とが反応して、分岐ポリマー11を形成する。
反応スキーム3
【化9】
ここで反応スキーム3において、xは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてyは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しい。
【0111】
他の実施形態において、スキーム4に示されるように、トリエタノールアミン9とオルガノシラン1とが反応して、架橋ポリマー12を形成する。
反応スキーム4
【化10】
ここで反応スキーム4において、xは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてyは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてzは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しい。
【0112】
特定の実施形態において、本発明者らのオルガノシランは、テトラエチルオルトシリケート13を含む。特定の実施形態において、反応スキーム5に示されるように、出発物質9と13との化学量論に依存して、本発明者らの架橋ポリマー材料14は、テトラエチルオルトシリケート13とトリエタノールアミン9との反応によって形成される。反応スキーム5は、4つの異なるポリマー鎖が延びている1個のSi原子を図示する。当業者は、本発明者らの架橋ポリマー材料14が、非常に高い架橋密度を有することを理解する。
反応スキーム5
【化11】
ここで反応スキーム5において、aは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてbは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてcは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてdは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しい。
【0113】
特定の実施形態において、反応スキーム6に示されるように、出発物質15と13との化学量論に依存して、本発明者らの架橋ポリマー材料16は、テトラエチルオルトシリケート13とジエタノールアミン13との反応によって形成される。反応スキーム6は、4つの異なるポリマー鎖が延びている1個のSi原子を図示する。当業者は、本発明者らの架橋ポリマー材料16が、非常に高い架橋密度を有することを理解する。
反応スキーム6
【化12】
ここで反応スキーム6において、aは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてbは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてcは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しく、そしてdは、1より大きいかまたは1に等しく、かつ約10より小さいかまたは約10に等しい。
【0114】
本発明の好ましい実施形態が詳細に説明されたが、これらの実施形態に対する改変および適合が、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に想到し得ることは、明らかであるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15