(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
耐圧密閉回路の系内で作動流体を状態変化させつつ循環させて作動流体に与えた外来熱エネルギーを運動エネルギーに変換して動力を生成し、この動力により発電機を駆動させて電力を生成する電力生成システムにおいて、
前記耐圧密閉回路は、主回路と、同主回路に並列に接続された副回路とを備え、
前記主回路は、
作動流体の気相及び液相が沸点近傍温度で収容され、加熱用流体と前記作動流体の液相との間で熱交換可能に構成した蒸発室と、
同蒸発室から供給された作動流体を断熱膨張に伴う温度低下により液化すると共に、断熱膨張では液化しきれなかった作動流体と液化補助用流体との間で熱交換可能に構成した断熱膨張室と、
前記蒸発室と前記断熱膨張室との間を連通する作動流体流路の中途に介設された動力生成手段と、同動力生成手段にて生成された動力により発電する発電手段と、を備えた発電部と、
前記断熱膨張室と前記蒸発室とを連通する作動流体流路の中途に、前記耐圧密閉回路の系外より供給される加温用流体との間で熱交換を行って第1の被加温流体としての作動流体と第2の被加温流体とを加温する加温用熱交換機構と、
前記断熱膨張室で液化した作動流体を前記加温用熱交換機構を通じて前記蒸発室へ還流する液化作動流体還流手段と、を有し、
前記副回路は、
前記蒸発室と前記発電部との間の作動流体流路から作動流体の一部を熱媒体として分流する熱媒体分流路と、
分流された熱媒体の一部を減圧して温度低下させ、前記断熱膨張室に前記液化補助用流体として供給する液化補助用流体供給路と、
分流された熱媒体の他部を減圧して温度低下させ、これを冷媒とする冷却設備と、
前記断熱膨張室及び冷却設備を経た熱媒体を、前記加温用熱交換機構に前記第2の被加温流体として供給する第2被加温流体供給路と、
前記加温用熱交換機構にて加温された熱媒体を圧搾し、更に高温となった熱媒体を熱媒とする加温設備と、
前記加温設備を経た熱媒体を前記蒸発室と前記発電部との間の作動流体流路に合流させる熱媒体返流路に介設され、前記蒸発室と前記発電部との間の作動流体流路を流通する作動流体以上の圧力まで熱媒体を圧搾する返流圧搾手段と、を備えることを特徴とする電力生成システム。
前記加温用熱交換機構により加温された熱媒体の一部を前記加温設備に供給する一方、残部を圧搾して更に高温とし前記蒸発室に加熱用流体として供給する熱媒体分配路を備えることを特徴とする請求項1に記載の電力生成システム。
前記燃焼装置で得られた熱での水の加熱により発生した蒸気でタービンを駆動させて発電を行うと共に、タービンを経た蒸気を凝縮させて蒸留水を得ることを特徴とする請求項3〜5いずれか1項に記載の電力生成システム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、耐圧密閉回路の系内で作動流体を液体や気体などに状態変化させつつ循環させて作動流体に与えた外来熱エネルギーを運動エネルギーに変換して動力を生成し、この動力(運動エネルギー)により発電機を駆動させて電力を生成する電力生成システムに関するものであり、従来に比してエネルギーの回収効率が良く、しかも、冷熱のみならず温熱の生成が可能な電力生成システムの提供を目的とするものである。
【0017】
本システムにおいて、耐圧密閉回路内で循環させる作動流体は特に限定されるものではなく、一般的に冷媒として使用される物質、具体的には化学的安定性に富み、常温常圧下で気体であり、液化しやすい性質を有する物質を好適に用いることができる。このような作動流体について敢えて例示するならば、プロパンやブタン、フロン、アンモニアを挙げることができる。
【0018】
また、外来熱エネルギーの大きさは特に限定されるものではないが、後述する加温用熱交換機構にて作動流体へ熱を与えることが可能な程度の温度差が必要である。
【0019】
外来熱エネルギーの供給媒体の状態、すなわち、気体・液体・固体の別は特に限定されるものではないが、多くの場合流動性を有する液体や気体が有利である。このような外来熱エネルギーの供給媒体としては、例えば、海や河川、ダムなどの水としたり、大気中の空気とすることも可能である。
【0020】
このような供給媒体より供給された外来熱エネルギーを保有する作動流体を循環させて動力を生成したり発電を行う本システムは、主回路と副回路とにより耐圧密閉回路を構成し、主回路に、蒸発室と、断熱膨張室と、発電部と、加温用熱交換機構と、液化作動流体還流手段と、を備え、副回路には、熱媒体分流路と、液化補助用流体供給路と、冷却設備と、第2被加温流体供給路と、加温設備と、返流圧搾手段と、を備えることでその構成を実現している。なお、本願は従来に比してより効率的な発電を行うことが可能で、温熱を供給可能な電力生成システム用の耐圧密閉回路構造を提供するものでもある。
【0021】
まず主回路の蒸発室は、断熱構造が施された圧力容器内に沸点近傍温度の作動流体が気相と液相とを気液平衡状態で収容して構成している。蒸発室内における気相の容量と液相の容量との割合は、使用する作動流体の種類や供給媒体の温度等によって左右されるものの、概ね、気相:液相=10容量部:1容量部〜5容量部:1容量部の範囲内とするのが望ましい。
【0022】
また蒸発室は、耐圧密閉回路の系内又は系外より供給される所定の加熱用流体と作動流体の液相との間で熱交換可能に構成しており、加熱用流体が有する作動流体との温度差分の熱エネルギーを作動流体に付与可能としている。付言すれば、本システムにおいてこの蒸発室は、外来熱エネルギーの入口となる部位として、後述する加温用熱交換機構と共に重要な部位の一つであると言える。
【0023】
蒸発室内の作動流体は、加熱用流体が常時流通されることで、蒸発室気相の圧力変化がない場合、加熱用流体と作動流体との間で温度平衡が、また、作動流体の気相と液相との間で気液平衡が(熱のロスなどを無視すれば)実質的に保たれた状態となっている。
【0024】
その一方で、後述する液化作動流体還流手段等が機能することにより、蒸発室内の気相圧力が低下した場合には、気液平衡となるよう液相の作動流体が蒸発して気相圧力の補填がなされ、液相の気化に伴って低下した温度分のエネルギーは加温用熱交換機構や蒸発室での熱交換によって供給媒体から与えられる。
【0025】
すなわち、多少の温度や圧力変動はあるものの、供給媒体と作動流体の液相との温度平衡や、蒸発室内の気液平衡は可及的保たれるよう構成している。
【0026】
なお一例として、外来熱エネルギー供給媒体として20〜30℃(例えば、25℃)の河川水や海水を採用し、作動流体としてプロパンを採用した場合(以下、プロパン条件ともいう。)、蒸発室内における作動流体の液相温度は、蒸発室内での加熱用流体との熱交換によって70〜90℃(例えば、80℃)、気相圧力は23〜33気圧(例えば、28気圧)とすることができる。
【0027】
断熱膨張室は、蒸発室から供給された作動流体を断熱膨張に伴う温度低下により液化する部位である。
【0028】
すなわち、断熱膨張室は、蒸発室の内圧よりも低圧としており、その圧力差は気体状の作動流体が断熱膨張によって液化できる程度の気圧差としている。
【0029】
例えば、先に言及したプロパン条件にあっては、断熱膨張室内に収容された作動流体の温度が大凡-42〜-10℃(例えば、-10℃)、気相圧力が約1.5〜2.5気圧(例えば、2気圧)となるよう構成し、後述する発電部を経た作動流体が液化するようにしている。
【0030】
断熱膨張室の容量は、使用する作動流体の種類や供給媒体の温度等によって左右されるものの、流入した作動流体の膨張によって大半が液化するために必要な体積が確保できる容量であれば良い。
【0031】
発電部は、蒸発室と断熱膨張室とを接続する作動流体流路の中途に介設されており、動力生成手段と、同動力生成手段にて生成された動力により発電する発電手段とにより構成される。
【0032】
動力生成手段としては、例えば往復断熱シリンダや、タービンを採用することができる。
【0033】
動力生成手段として採用可能な往復断熱シリンダは、断熱構造が施された往復動作可能なシリンダであり、蒸発室から供給される気相作動流体により駆動させて運動エネルギーを得ることが可能である。
【0034】
また発電部における動力生成手段としてのタービンは、例えば、蒸発室と前記断熱膨張室との間を連通する作動流体流路の中途に介設されたタービン室内にて前記蒸発室側の圧力と前記断熱膨張室側の圧力との圧力差で流動する作動流体との接触により回転するタービンを配設することにより、発電手段に対し動力を供給することができる。また特に、タービンを採用した場合、連続的な発電が可能とのメリットが生起される。
【0035】
加温用熱交換機構は、断熱膨張室と液化作動流体還流手段とを連通する作動流体流路の中途に設けられた熱交換器であり、耐圧密閉回路の系外より供給される加温用流体と断熱膨張室内で液化された作動流体及び後述の熱媒体との間で熱交換を行って作動流体や熱媒体を加温する役割を果たす。なお、この加温用熱交換機構は、一台の熱交換器で構成しても良く、また、複数の熱交換器を直列多段に接続して構成しても良い。
【0036】
液化作動流体還流手段は、断熱膨張室で液化した作動流体を前記蒸発室へ還流するものである。
【0037】
液化作動流体還流手段は、断熱膨張室内の作動流体の液相を、蒸発室との圧力差に抗して還流させるものであり、液密性や耐圧性に優れた液送ポンプなどを採用することができる。
【0038】
次に副回路について言及すると、副回路には、熱媒体分流路と、液化補助用流体供給路と、冷却設備と、第2被加温流体供給路と、加温設備と、返流圧搾手段とが備えられている。
【0039】
副回路は、主回路に配設された蒸発室と発電部とを接続する作動流体流路に対し並列に接続された回路であり、主回路を流れる作動流体の一部を分岐させ熱媒体として流通させることにより、主に冷却や加温を行うべく構成された回路である。
【0040】
熱媒体分流路は、蒸発室と発電部との間の作動流体流路から作動流体の一部を熱媒体として分流するための流路であり、副回路における熱媒体(作動流体)の導入部となる流路としての役割を有する。
【0041】
液化補助用流体供給路は、熱媒体分流路により主回路から分流された熱媒体の一部を減圧して温度低下させ、断熱膨張室に液化補助用流体として供給するための流路である。
【0042】
すなわち、液化補助用流体供給路は、熱媒体分流路から分岐する流路の一つであって、圧力を下げ膨張させることで熱媒体の温度を低下させる減圧弁等の減圧手段がその中途に介設されており、温度低下した気体状の熱媒体を冷媒的に液化補助用流体として断熱膨張室の熱交換部に供給する。
【0043】
冷却設備は、熱媒体分流路により主回路から分流された熱媒体の他部を減圧して温度低下させ、これを冷媒として冷却を行う設備である。この冷却設備の熱媒体の導入部には、圧力を下げ膨張させることで熱媒体の温度を低下させる減圧弁等の減圧手段が介設されており、温度低下した気体状の熱媒体を冷媒として物品等の冷却が行われる。なお、この冷却設備は特に限定されるものではないが、例えば冷凍室や冷蔵室とすることができる。
【0044】
第2被加温流体供給路は、断熱膨張室及び冷却設備を経た熱媒体を、加温用熱交換機構に第2の被加温流体として供給するための流路である。
【0045】
すなわち、第2被加温流体供給路は、断熱膨張室の熱交換部から流出する熱媒体と、冷却設備を経て流出する熱媒体とを合流して、加温用熱交換機構に第2の被加温流体として導く多枝状(例えば二叉状)の合流路(以下、多枝合流路ともいう。)である。なお、第2被加温流体供給路の合流部上流側の枝に相当する流路部分(以下、枝路ともいう。)には、両熱媒体の合流に際し圧力等を整合させるべく加圧ポンプ等の加圧手段を適宜設けることもできる。
【0046】
加温設備は、加温用熱交換機構にて加温された熱媒体を圧搾し、更に高温となった熱媒体を熱媒として加温を行う設備である。この加温設備は特に限定されるものではなく、例えば保温庫や、植物栽培用ハウスであったり、温水を生成する設備とすることも可能である。
【0047】
返流圧搾手段は、加温設備を経た熱媒体を蒸発室と発電部との間の作動流体流路に合流させる熱媒体返流路に介設され、蒸発室と発電部との間の作動流体流路を流通する作動流体以上の圧力まで熱媒体を圧搾するものである。
【0048】
そして、これらのような主回路及び副回路を有する耐圧密閉回路を備えた電力生成システムによれば、従来に比してエネルギーの回収効率が良く、しかも、冷熱のみならず温熱の生成が可能な電力生成システムを提供することが可能となる。
【0049】
特に、副回路において断熱膨張室や冷却設備を経た熱媒体を、気体状態のまま加温用熱交換機構に第2の被加温流体として導入して加温することとしているため、加温設備や後述の熱媒体分配路にて圧搾した際に大きな熱を発生させることができ、耐圧密閉回路の系外より供給される加温用流体の熱エネルギーを効率的に利用することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る電力生成システムでは、副回路において、加温用熱交換機構により加温された熱媒体の一部を圧搾して加温設備に供給する一方、残部を圧搾して更に高温とし蒸発室に加熱用流体として供給する熱媒体分配路を備えることとしても良い。
【0051】
このような構成とすることにより、加温用熱交換機構にて加温用流体から熱エネルギーを得た熱媒体を蒸発室の熱交換部に熱媒として供給することができ、作動流体を更に効率的に加熱することで、発電部においてより大きな電力を得ることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る電力生成システムでは、発電部にて得られた電力の一部で水を電気分解して水素及び酸素を生成する水電解装置と、生成した水素及び酸素を燃焼させて熱を得る燃焼装置と、を備え、同燃焼装置で得られた熱で所定の流体を加熱し蒸発室の熱交換部へ加熱用流体として供給すべく構成しても良い。この所定の流体は特に限定されるものではなく、例えば水や油等とすることができる。
【0053】
このような構成とすることによっても、作動流体を更に効率的に加熱することで、発電部においてより大きな電力を得ることができる。
【0054】
また、蒸発室を経た加熱用流体は、加温用熱交換機構へ加温用流体として供給すべく構成しても良い。
【0055】
すなわち、燃焼装置で得られた熱で加熱され、蒸発室の熱交換部を経た加熱用流体としての水をそのまま、又は耐圧密閉回路の系外より供給される海水や河川水などと合流させて、加温用流体として加温用熱交換機構に供給しても良い。
【0056】
このような構成とすることにより、加温用熱交換機構にて第1の被加温流体としての作動流体に対して熱エネルギーを与えることができて更なる効率的な発電を行うことができると共に、加温用熱交換機構にて第2の被加温流体としての熱媒体に対しても熱エネルギーを与えることができ、加温設備での加温能力を更に向上させることができる。
【0057】
また、水電解装置にて発生させた水素及び酸素を貯留する貯留設備を備え、この貯留設備に貯留された酸素や水素を燃料として燃焼装置で燃焼を行うように構成しても良い。
【0058】
このような構成とすることにより、例えば発電部にて余剰の電力が生じた場合、そのエネルギーを水素及び酸素の状態で蓄えることができ、別途必要応じてそのエネルギーを利用することができる。
【0059】
また、燃焼装置で得られた熱での水の加熱により発生した蒸気でタービンを駆動させて発電を行うと共に、タービンを経た蒸気を凝縮させて蒸留水を得ることとしても良い。
【0060】
このような構成とすることにより、例えば蒸気を発生させるための水を海水等とすれば、発生させた電力の一部を利用して海水等から真水を生成することができ、飲用やその他広範な用途に使用することができる。
【0061】
以下、本実施形態に係る電力生成システムについて、図面を参照しながら更に説明する。なお、作動流体としてプロパンが採用された場合を例に説明するが、先に述べたように作動流体の種類はこれに限定されるものではない。
【0062】
図1は本実施形態に係る電力生成システムAの全体構成に関し、各構成や配管等を単純化して示した概念図である。
図1に示すように、耐圧密閉回路1は、太実線で示す主回路2と、太破線で示す副回路3とを備えている。
【0063】
主回路2は、蒸発室10と、発電部11と、断熱膨張室12と、加温用熱交換機構13と、還流ポンプ14とを備え、これらを作動流体流路で連通接続することにより構成している。
【0064】
また、作動流体流路は、蒸発室10の気相流出口10aと発電部11を構成するタービン装置15のタービン室16の供給口16aとの間を接続する作動流体ガス供給管17と、タービン室16の排出口16bと断熱膨張室12の膨張室流入口12aとを接続する作動流体ガス排出管18と、断熱膨張室12の膨張室流出口12bと加温用熱交換機構13の第1流入口13aとを接続する第1被加温流体供給管19と、加温用熱交換機構13の第1流出口13bと還流ポンプ14の流入口14aとを接続する還流ポンプ供給管20と、還流ポンプ14の送出口14bと蒸発室10の液相流入口10bとを接続する還流管21とを備えている。
【0065】
副回路3は、冷却設備22と、加温設備23と、圧力調整タンク24と、返流圧搾ポンプ25とを備え、これらを熱媒体流路で連通接続することにより構成している。
【0066】
また、熱媒体流路は、主回路2の作動流体ガス供給管17の中途部17aと断熱膨張室12の加熱部流入口12c及び冷却設備22の流入口22aとの間を接続する熱媒体分流分配管26と、断熱膨張室12の加熱部流出口12d及び冷却設備22の流出口22bと加温用熱交換機構13の第2流入口13cとの間を接続する冷媒合流供給管27と、加温用熱交換機構13の第2流出口13dと加温設備23の流入口23a及び蒸発室10の加熱部流入口10cとの間を接続する熱媒分配管28と、加温設備23の流出口23bと圧力調整タンク24の流入口24aとの間及び蒸発室10の加熱部流出口10dと圧力調整タンク24の流入口24bとの間を接続する調整タンク供給管29,30と、圧力調整タンク24の排出口24cと主回路2の作動流体ガス供給管17の中途部17bとの間を接続する熱媒体返流管31とを備えている。
【0067】
また、電力生成システムAにおいて加温用熱交換機構13は、耐圧密閉回路1を循環する作動流体に対し、耐圧密閉回路1の系外の流体と熱エネルギーの授受を行う役割を有している。
【0068】
加温用熱交換機構13は、第1被加温流体供給管19と還流ポンプ供給管20との間に上流側から順に直列多段に介設した第1〜第3加温用熱交換器34,35,36とを備え、これらを連通接続することにより構成している。
【0069】
また、第1〜第3加温用熱交換器34,35,36には、第1被加温流体としての作動流体や第2被加温流体としての熱媒体に外来熱エネルギーを付与する加温用流体の流入口34a,35a,36aと、流出口34b,35b,36bとをそれぞれ配設している。
【0070】
各流入口34a,35a,36aには、加温用流体供給管37がそれぞれ接続されており、加温用流体、特に本実施形態では10〜20℃の河川水を供給可能としている。
【0071】
また、第1〜第3加温用熱交換器34,35,36にて熱交換を終えた河川水は、各流出口34b,35b,36bより排出されるよう構成している。
【0072】
次に、耐圧密閉回路1(主回路2及び副回路3)の各構成について説明する。ここではまず、作動流体の温度や状態変化に着目しつつ主回路2について説明し、その後副回路3について言及する。
【0073】
蒸発室10は、断熱処理が施された気相部容量が約100容量部の密閉耐圧容器にて形成されており、内部に作動流体としての液体状のプロパン(以下、液化プロパンという。)と、気体状のプロパン(以下、プロパンガスという。)とが収容されている。また、収容された液化プロパンとプロパンガスとの容量比は、概ね1:10〜1:5としており、プロパンガスの圧力は稼動開始時において大凡7〜9.5気圧としている。
【0074】
蒸発室10の底部近傍、すなわち、収容された液化プロパンに没する部位には、熱交換によって液化プロパンの温度を加熱用流体の温度に近づけるための熱交換部10eが配設されている。
【0075】
熱交換部10eを流れる加熱用流体は、加温用熱交換機構13を経て断熱圧縮により昇温された熱媒体(熱媒)であり、本実施形態では稼動を開始し安定状態となった際には、約80〜90℃(例えば85℃)で約28〜33気圧(例えば30気圧)のプロパンガスが供給される。
【0076】
また、蒸発室10のプロパンガスが充満する気相領域には、作動流体ガス供給管17の基端を臨ませて気相流出口10aを形成している。
【0077】
また、作動流体ガス供給管17の先端側は発電部11のタービン装置15に接続させている。
【0078】
具体的には、作動流体ガス供給管17の下流端部をタービン室16の供給口16aに接続して、タービン16cを回転可能としこのタービン16cの軸を動力の出力部として機能させ生成される動力を回転力とし、変速機38を経て発電手段としての発電機39に伝達させることで連続的な発電を可能としている。なお符号40は、タービン室16に供給する作動流体の量を調節するための流量調整バルブである。
【0079】
タービン室16に供された作動流体は排出口16bより排出され、作動流体ガス排出管18を介して膨張室流入口12aから断熱膨張室12内に導入される。
【0080】
断熱膨張室12は断熱処理が施された約2〜3容量部の密閉耐圧容器にて形成されており、タービン室16より排出されたプロパンガスを断熱膨張させて液化させるための部位である。
【0081】
作動流体ガス排出管18を介して断熱膨張室12に導入されたプロパンガスは、大凡1.5〜2.5気圧にまで減圧されると共に、温度が-42〜-10℃にまで低下してその大半が液化され、断熱膨張室12の内部には、断熱膨張によって生じた液化プロパンよりなる液相と、その上部領域に形成される気相とが存在することとなる。
【0082】
また、断熱膨張室12の気相部であって膨張室流入口12aから流入する作動流体と接触可能な部位には、加熱部流入口12cより流入する熱媒体との熱交換によって液化を促進するための熱交換部12eが配設されている。
【0083】
また、断熱膨張室12の底部には膨張室流出口12bが形成されており、同膨張室流出口12bからは加温用熱交換機構13の第1流入口13aと連通する第1被加温流体供給管19を介して液化プロパンを加温用熱交換機構13へ第1の被加温流体として供給可能としている。
【0084】
加温用熱交換機構13は、第1被加温流体供給管19と還流ポンプ供給管20の間において上流側から順に直列多段に介設した第1〜第3加温用熱交換器34,35,36とを備え、これらを熱交換媒体流路で連通接続することにより構成している。
【0085】
また、第1〜第3加温用熱交換器34,35,36にはそれぞれ、加温用流体を供給可能に構成している。第1〜第3加温用熱交換器34,35,36に供給される加熱用流体は、加温流体供給管41を介して取り込まれた河川水であり、本実施形態では、例えば山などの高低差を利用して流れ降りる河川Rの約10〜20℃の河川水を用いている。
【0086】
また、第1〜第3加温用熱交換器34,35,36はそれぞれ、太実線で示す第1被加温流体の熱交換部と、破線で示す第2被加温流体熱交換部とを備えており、第1の被加温流体である作動流体としての液化プロパンと、第2の被加温流体である熱媒体としてのプロパンガスと、加温用流体である河川水との間で熱交換が行われる。
【0087】
本実施形態では、第1の被加温流体として第1流入口13aより流入させた-42〜-10℃の液化プロパンを、第1〜第3加温用熱交換器34,35,36の各第1被加温流体熱交換部にて熱交換により10〜20℃に加温して第1流出口13bより流出させる。同様に、第2の被加温流体として第2流入口13cより流入させた-10〜10℃のプロパンガスを、熱交換により10〜20℃に加温して第2流出口13dより流出させる。
【0088】
すなわち、河川水が有する熱エネルギーが、第1及び第2の被加温流体に対し付与される。
【0089】
その一方で、加温用流体として流入させた10〜20℃の河川水は、第3加温用熱交換器36では5〜1℃、第2加温用熱交換器35では5〜10℃、第1加温用熱交換器34では10〜20℃に冷却された状態で、それぞれ吐出口36b,35b,34bから吐出される。なお、冷却された状態で吐出される各河川水は、冷熱源として利用可能である。
【0090】
加温用熱交換機構13より第1流出口13bを介して排出された作動流体は、還流ポンプ供給管20を介して還流ポンプ14の流入口14aに至る。還流ポンプ14は、蒸発室10内へ流入可能な圧力にまで作動流体を昇圧して還流させるためのポンプであり、送出口14bより還流管21を介して液相流入口10bから蒸発室10内に還流されることとなる。
【0091】
次に、副回路3について言及する。副回路3は、作動流体ガス供給管17部分に並列に接続された回路であり、作動流体ガス供給管17の中途部17aを基端とし、中途部17bを終端としている。
【0092】
熱媒体分流分配管26は、幹管から枝管へ分岐する二叉分配管としており、幹管部分は、蒸発室10と発電部11との間の作動流体ガス供給管17から作動流体の一部を熱媒体として分流する熱媒体分流路としての役割を有している。
【0093】
分流された熱媒体(作動流体)の一部は、分配部26aを経て、断熱膨張室12の加熱部流入口12cに接続された一方の枝管26bに至る。
【0094】
枝管26bは、分配された熱媒体を減圧して温度低下させ、断熱膨張室12の熱交換部12eに液化補助用流体として供給する液化補助用流体供給路としての役割を有しており、熱媒体を減圧する減圧弁26cが介設されている。特に本実施形態では、この減圧弁26cによって-40〜-45℃のプロパンガスとなり、冷媒として熱交換部12eに供給される。
【0095】
従って、断熱膨張室12内では、膨張室流入口12aより流入した作動流体のうち断熱膨張によっては液化できなかった作動流体が、熱交換部12eにて液化が促進され、堅実な液化が実現される。
【0096】
また、熱媒体分流分配管26の分配部26aで分配された熱媒体の他部は、他方の枝管26dに至る。枝管26dは、冷却設備22の流入口22aに接続されている。
【0097】
冷却設備22は、その中途に減圧弁26eを備えることで、冷却設備22に対し熱媒体を膨張させて冷媒として供給可能としている。
【0098】
冷却設備22の内部には、熱交換効率の高い形状に形成した熱媒体流路が露出しており、それぞれに配設したファン22cを駆動させることで、冷却設備22の内部を冷却可能としている。
【0099】
断熱膨張室12の加熱部流出口12d及び冷却設備22の流出口22bより排出された熱媒体は、冷媒合流供給管27に至る。
【0100】
冷媒合流供給管27は、断熱膨張室12及び冷却設備22を経た熱媒体を、加温用熱交換機構13に第2の被加温流体として供給する第2被加温流体供給路としての役割を有する配管であり、それぞれの枝管27a及び27bに至った熱媒体は、合流部27cを経て幹管27dに流入し第2流入口13cから加温用熱交換機構13へ第2被加温流体として供給される。なお、枝管27a及び枝管27bにそれぞれ介設されているポンプ27e,27fは、双方の枝管27a,27bの熱媒体の圧力を整合させて幹管27dへ流すためのポンプである。
【0101】
第2流入口13cより加温用熱交換機構13へ第2被加温流体として流入した熱媒体は、先述の第1被加温流体と同様に、第1〜第3加温用熱交換器34,35,36にて河川水より熱エネルギーを受け取り、大凡10〜20℃に加温されて第2流出口13dより排出され、熱媒体分配管42に至る。
【0102】
熱媒体分配管42は、幹管42aの基端部分が第2流出口13dに接続され、分流部42bを経て一方の枝管42cが加温設備23の流入口23aに、他方の枝管42dが蒸発室10の加熱部流入口10cに接続された配管であり、加温設備23と蒸発室10の熱交換部10eとに熱媒体の供給を行う。
【0103】
加温設備23は、先述の通り特に限定されるものではないが、本実施形態では温蔵庫としている。また、加温設備23は、熱媒体分配管42の枝管42cの中途に介設された圧搾ポンプ23dを備えており、熱媒体を圧搾して高温とし、これを熱媒として加温設備23の内部に導入できるよう構成している。
【0104】
また、加温設備23の内部には熱交換効率の高い形状に形成した熱媒体流路が露出しており、それぞれに配設したファン23cを駆動させることで、熱媒として供給された熱媒体から熱を奪い、加温設備23の内部を加温可能としている。加温設備23にて加温に供された熱媒体は、流出口23bより排出され、調整タンク供給管29を介して流入口24aから圧力調整タンク24内に供給される。なお、符号29aは、圧力調整タンク24から加温設備23へ熱媒体が逆流することを防止するための逆止弁である。
【0105】
一方、熱媒体分配管42の枝管42dに流入した熱媒体は、圧搾ポンプ42eにより圧搾され、更に高温の熱媒として加熱部流入口10cより蒸発室10の熱交換部10eに供給される。
【0106】
熱交換部10eに供給された熱媒体は、蒸発室10内の作動流体の液相との間で熱交換が行われ、作動流体の加熱を行って加熱部流出口10dより排出される。この熱媒体は、調整タンク供給管30を介して流入口24bより圧力調整タンク24内に至る。なお、符号30aは、圧力調整タンク24から蒸発室10の熱交換部10eへ熱媒体が逆流することを防止するための逆止弁である。
【0107】
圧力調整タンク24は、流入口24aから流入する気体状の熱媒体と、流入口24bから流入する気体状の熱媒体との圧力調整を行うためのタンクである。なお、この圧力調整タンク24に流入口24a又は流入口24bから熱媒体を流入させるために、前述の如く逆止弁29aや逆止弁30aのいずれか一方又は双方を介設したり、必要に応じて調整タンク供給管29又は調整タンク供給管30に圧力調整のためのポンプを介設しても良い。
【0108】
圧力調整タンク24内に一時的に貯留された作動流体は、排出口24cから熱媒体返流管31を介して中途部17bに至り、再び作動流体として作動流体ガス供給管17に返流される。熱媒体返流管31には返流圧搾ポンプ25が介設されており熱媒体の返流が行われる。すなわち、返流圧搾ポンプ25は、加温設備や蒸発室10の熱交換部10eを経た熱媒体を蒸発室10と発電部11との間の作動流体ガス供給管17(作動流体流路)に合流させる熱媒体返流管31(熱媒体返流路)に介設され、蒸発室10と発電部11との間の作動流体ガス供給管17(作動流体流路)を流通する作動流体以上の圧力まで熱媒体を圧搾する返流圧搾手段としての役割を有するものである。なお、作動流体ガス供給管17上において中途部17bの上流側に、熱媒体返流管31を介して作動流体ガス供給管17へ流入する熱媒体(作動流体)の逆流を防止するための逆止弁を設けるようにしても良い。
【0109】
そして、このような構成を有する電力生成システムAによれば、従来に比してエネルギーの回収効率が良く、しかも、冷熱のみならず温熱の生成を行うことが可能となる。
【0110】
なお、電力生成システムAにおいて発電部11では、動力生成手段としてタービン装置15を用いることとしたが、これに限定されるものではなく、先述の特許文献2の
図6において本発明者が提案した如く断熱往復シリンダを採用することも可能である。
【0111】
次に、第2の実施例に係る電力生成システムBについて
図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、既出の構成については同じ符号を付して説明を省略する場合がある。また、作動流体や各加熱・加温・冷却媒体の温度や圧力等は、概ね発電システムAの例によるが、必要に応じて変更することも可能である。
【0112】
電力生成システムBは、前述の電力生成システムAと略同様の構成を有しているが、主に下記の点で構成を異にしている。
・加温用熱交換機構13に供給する加温用流体を海水としている点
・副回路3にて加温用熱交換機構13より吐出された熱媒体(第2被加温流体)を蒸発室10の熱交換部10eには供給せず、加温設備23にのみ供給している点
・蒸発室10の熱交換部10eに加熱流体を供給しつつ循環させる独立した蒸発室加熱循環回路を備えている点
・蒸発室加熱回路の熱源は、発電部11にて発生させた電力により水を分解して得た水素及び酸素の燃焼である点
【0113】
これらの各構成について具体的に説明すると、まず、電力生成システムBでは、加温用熱交換機構13の第1〜第3加温用熱交換器34,35,36に供給する加温用流体として、海Sから揚水ポンプ44により汲み上げた海水を使用している。
【0114】
従って、第1〜第3加温用熱交換器34,35,36の各流出口34b,35b,36bからは、それぞれ冷えた海水が得られることとなる。この冷えた海水は、例えば海洋生物の飼育や養殖に使用することができる。
【0115】
また、電力生成システムBでは、副回路3にて第2流出口13dより吐出した熱媒体を、加温設備23にのみ導入することとしている。
【0116】
従って、蒸発室10の熱交換部10eにも熱媒体を熱媒として供給していた電力生成システムAと比較して、加温設備23により多くの熱を供給することができ、加温能力をより向上させることができる。
【0117】
また、電力生成システムBでは、蒸発室10の熱交換部10eに加熱用流体を供給しつつ循環させるべく、網掛けの太線で示す独立した蒸発室加熱循環回路5を備えている。
【0118】
蒸発室加熱循環回路5は、循環ポンプ50と、受熱部51と、蒸発室10の熱交換部10eとを備えており、これらを加熱用流体流路で接続して構成している。なお、説明の便宜上、図示は省略するが、蒸発室加熱循環回路5上には、加熱用流体をバッファーするタンク等が適宜設けられる。加熱用流体は特に限定されるものではないが、本実施形態では水としている。
【0119】
循環ポンプ50は、加熱用流体である水を蒸発室加熱循環回路5の系内で循環させるためのポンプである。
【0120】
受熱部51は、熱交換部51aと燃焼装置51bとで構成しており、燃焼装置51bの燃焼によって得られた熱を熱交換部51aで受け、熱交換部51aを流れる加熱用流体としての水を昇温可能に構成している。
【0121】
受熱部51の熱交換部51aを経た加熱用流体(例えば、本実施形態では90〜95℃に昇温)は、加熱部流入口10cより蒸発室10の熱交換部10eに至り、蒸発室10の内部に収容されている作動流体の液相部分を加熱して、熱エネルギーを与える。この時の蒸発室10の気相部の圧力は、例えば、25〜33気圧程度となる。
【0122】
熱交換部10eを経た加熱用流体は、加熱部流出口10dより吐出され、再び循環ポンプ50を経て受熱部51に供給され循環することとなる。
【0123】
また、蒸発室加熱循環回路5の熱源、すなわち、燃焼装置51bでの燃焼は、発電部11にて発生させた電力により水を分解して得た水素及び酸素の燃焼である。
【0124】
具体的には、電力生成システムBは、電解装置52と、貯留設備53とを備えいる。
【0125】
電解装置52は、発電機39にて発生させた電力により水を電気分解して水素と酸素を発生させるための装置である。なお
図2では模式的にH管を代表例として示しているが、その態様は特に限定されるものではない。
【0126】
貯留設備53は、電解装置52にて発生させた水素及び酸素を貯留するための設備であり、水素タンク53a及び酸素タンク53bを備えている。
【0127】
水素タンク53a及び酸素タンク53bは、それぞれ水素及び酸素を適宜収容し取出すことが可能に構成しており、取り出された水素及び酸素は、燃焼装置51bに供給して燃料として燃焼に供される。
【0128】
そして、このような構成を備える電力生成システムBによれば、従来に比してエネルギーの回収効率が良く、しかも、冷熱のみならず温熱の生成を行うことが可能である。
【0129】
また、電解装置52で発生させた水素及び酸素を、貯留設備53にて貯留可能に構成しているため、例えば発電機39にて余剰の電力が生じた場合であっても、そのエネルギーを水素及び酸素の状態で蓄えることができ、別途必要応じてそのエネルギーを利用することができる。
【0130】
次に、第3の実施例に係る電力生成システムCについて
図3を参照しながら説明する。
【0131】
電力生成システムCは、前述の電力生成システムBと略同様の構成を有しているが、主に、蒸発室10の熱交換部10eへの加熱流体の供給を、先の独立して循環させる蒸発室加熱循環回路5ではなく、加温流体供給管41から分岐させた蒸発室加熱回路6により行う事としている点で構成を異にしている。
【0132】
この構成について具体的に説明すると、まず、電力生成システムCでは、加温流体供給管41の中途部41aに、蒸発室加熱回路6を接続して構成している。
【0133】
蒸発室加熱回路6は、第4熱交換器55と、ボイラ装置56と、タービン装置15と、第5熱交換器57と、蒸発室10の熱交換部10eと、第6熱交換器58とを備えており、これらを通水流路で連通接続することにより構成している。
【0134】
揚水ポンプ44にて揚水された海水は、加温流体供給管41の中途部41aより、第4熱交換器55に導入される。第4熱交換器55では、後述するタービン装置15を経た蒸気との熱交換が行われ、海水は加温される。
【0135】
第4熱交換器55にて加温された海水は、次に、送給ポンプ60を介してボイラ装置56に導入される。送給ポンプ60は、高圧状態となっているボイラ装置56の内部に海水を送給するためのポンプである。ボイラ装置56には先述の燃焼装置51bが配設されており、ボイラ装置56内に導入された海水を加熱し沸騰させて蒸気の発生が行われる。ボイラ装置56内は、例えば液相温度が250〜300℃、気相圧力は60〜70気圧である。
【0136】
ボイラ装置56にて発生させた蒸気は、高圧状態を保ったままタービン装置15へ供給される。タービン装置15は、先述した主回路2の発電部11と同様に変速機38及び発電機39が接続されており、タービン装置15にて得られた動力により発電可能としている。
【0137】
タービン装置15を経た蒸気は、次に第4熱交換器55に導入される。第4熱交換器55では、加温流体供給管41より分岐した海水と熱交換が行われ、蒸気は凝結して概ね25〜30℃程度の真水が生成されることとなる。
【0138】
また、第4熱交換器55での熱交換により生成された真水の一部は、第5熱交換器57や第6熱交換器58にも供給される。これら第5熱交換器57や第6熱交換器58に供給された真水は、熱交換によって受熱することで、更に高温の真水(湯)が得られる。例えば、第5熱交換器57にて生成される湯は、70〜80℃程度、第6熱交換器58にて生成される湯は60〜70℃程度となる。
【0139】
一方、ボイラ装置56内で沸騰している海水の液相の一部は、減圧弁61を介して第5熱交換器57に供給されて、高温の真水を生成させるための熱源として使用される。なお、減圧弁61は、ボイラ装置56内の液相(海水)を第5熱交換器57に供給すべく水圧を低下させるための弁であり、また、ボイラ装置56内を高圧に保つために背圧を維持する役割も有している。
【0140】
第5熱交換器57を経た高温の海水(例えば、85〜95℃)は、次に蒸発室10の熱交換部10eに加熱用流体として供給され、同じく蒸発室10の内部に収容されている作動流体を加熱する。この時の蒸発室10の気相部の圧力は、例えば、25〜33気圧程度となる。
【0141】
蒸発室10の熱交換部10eを経て加熱部流出口10dより排出された海水は、第6熱交換器58に供給され、再度高温の真水を生成させるための熱源として使用される。
【0142】
第6熱交換器58にて熱交換に供された後の海水は概ね50〜60℃程度であり、これを再び加温流体供給管41に合流させて、加温用熱交換機構13へ加温用流体の一部として供給する。すなわち、加温流体供給管41を流れる加温用流体に熱エネルギーの付与が行われ、加温用熱交換機構13にて回収された熱エネルギーは作動流体の熱エネルギーとして耐圧密閉回路1内を循環することとなる。
【0143】
そして、このような構成を備える電力生成システムCによっても、従来に比してエネルギーの回収効率が良く、しかも、冷熱のみならず温熱の生成を行うことが可能である。
【0144】
また、蒸発室10を経た加熱用流体を加温用熱交換機構13へ加温用流体として供給すべく構成、すなわち、燃焼装置51bで得られた熱で加熱され、蒸発室10の熱交換部10eを経た加熱用流体としての水を海水と合流させて、加温用流体として加温用熱交換機構13に供給すべく構成しているため、加温用熱交換機構13にて第1の被加温流体としての作動流体に対して熱エネルギーを与えることができて更なる効率的な発電を行うことができると共に、加温用熱交換機構13にて第2の被加温流体としての熱媒体に対しても熱エネルギーを与えることができ、加温設備23での加温能力を更に向上させることができる。
【0145】
また、燃焼装置51bで得られた熱での海水の加熱により発生した蒸気でタービン装置15のタービンを駆動させて発電を行うと共に、タービンを経た蒸気を凝縮させて蒸留水を得ることとしているため、発生させた電力の一部を利用して海水から真水を生成することができ、飲用やその他広範な用途に使用することができる。
【0146】
上述してきたように、本実施形態に係る電力生成システムによれば、耐圧密閉回路の系内で作動流体を状態変化させつつ循環させて作動流体に与えた外来熱エネルギーを運動エネルギーに変換して動力を生成し、この動力により発電機を駆動させて電力を生成する電力生成システムにおいて、前記耐圧密閉回路は、主回路と、同主回路に並列に接続された副回路とを備え、前記主回路は、作動流体の気相及び液相が沸点近傍温度で収容され、加熱用流体と前記作動流体の液相との間で熱交換可能に構成した蒸発室と、同蒸発室から供給された作動流体を断熱膨張に伴う温度低下により液化すると共に、断熱膨張では液化しきれなかった作動流体と液化補助用流体との間で熱交換可能に構成した断熱膨張室と、前記蒸発室と前記断熱膨張室との間を連通する作動流体流路の中途に介設された動力生成手段と、同動力生成手段にて生成された動力により発電する発電手段と、を備えた発電部と、前記断熱膨張室と前記蒸発室とを連通する作動流体流路の中途に、前記耐圧密閉回路の系外より供給される加温用流体との間で熱交換を行って第1の被加温流体としての作動流体と第2の被加温流体とを加温する加温用熱交換機構と、前記断熱膨張室で液化した作動流体を前記加温用熱交換機構を通じて前記蒸発室へ還流する液化作動流体還流手段と、を有し、前記副回路は、前記蒸発室と前記発電部との間の作動流体流路から作動流体の一部を熱媒体として分流する熱媒体分流路と、分流された熱媒体の一部を減圧して温度低下させ、前記断熱膨張室に前記液化補助用流体として供給する液化補助用流体供給路と、分流された熱媒体の他部を減圧して温度低下させ、これを冷媒とする冷却設備と、前記断熱膨張室及び冷却設備を経た熱媒体を、前記加温用熱交換機構に前記第2の被加温流体として供給する第2被加温流体供給路と、前記加温用熱交換機構にて加温された熱媒体を圧搾し、更に高温となった熱媒体を熱媒とする加温設備と、前記加温設備を経た熱媒体を前記蒸発室と前記発電部との間の作動流体流路に合流させる熱媒体返流路に介設され、前記蒸発室と前記発電部との間の作動流体流路を流通する作動流体以上の圧力まで熱媒体を圧搾する返流圧搾手段と、を備えることとしたため、従来に比してエネルギーの回収効率が良く、しかも、冷熱のみならず温熱の生成を行うことが可能となる。
【0147】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【解決手段】耐圧密閉回路の系内で作動流体を状態変化させつつ循環させて作動流体に与えた外来熱エネルギーを運動エネルギーに変換して動力を生成し、この動力により発電機を駆動させて電力を生成する電力生成システムにおいて、主回路と副回路とにより耐圧密閉回路を構成し、主回路に、蒸発室と、断熱膨張室と、発電部と、加温用熱交換機構と、液化作動流体還流手段と、を備え、副回路には、熱媒体分流路と、液化補助用流体供給路と、冷却設備と、第2被加温流体供給路と、加温設備と、返流圧搾手段と、を備えることとした。