特許第6409160号(P6409160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6409160
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス部材のモールド方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20181015BHJP
   B29C 33/40 20060101ALI20181015BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   B29C45/14
   B29C33/40
   B29C45/26
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-43103(P2014-43103)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-168105(P2015-168105A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105474
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 弘徳
(74)【代理人】
【識別番号】100192474
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 健次
(73)【特許権者】
【識別番号】392031424
【氏名又は名称】株式会社佐藤精機
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 敦吉
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−124090(JP,A)
【文献】 特開2012−146565(JP,A)
【文献】 特開2001−105438(JP,A)
【文献】 特開2004−130644(JP,A)
【文献】 特開昭63−019780(JP,A)
【文献】 特開2006−351213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26−45/44
B29C 45/64−45/68
B29C 45/73
B29C 33/00−33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のワイヤハーネス部材の外周にハーネス装着部品を成形するためのキャビティと、分割される一対の分割面に前記ワイヤハーネス部材の中間部を収容するハーネス収容部とを備え、前記ハーネス収容部を形成する内面に前記キャビティが形成される一組の樹脂型を、それぞれマスター金型で成形する樹脂型成形工程と、
前記ハーネス収容部に前記ワイヤハーネス部材の中間部を収容し、溶融した熱可塑性樹脂を前記キャビティに低圧射出することにより、型締装置により型締めされた一組の前記樹脂型で前記ワイヤハーネス部材の外周に前記ハーネス装着部品を低圧射出成形する部品成形工程と、
を含み、
前記マスター金型が、少なくとも前記キャビティの一部を成形するための形状が異なる複数の入れ子を選択的に用いることによって、異なる種類の前記ハーネス装着部品を成形するための異なる形状の前記キャビティを有した複数種の前記樹脂型が成形され、
前記一組の樹脂型を構成する上樹脂型及び下樹脂型のうち前記上樹脂型を成形する前記マスター金型には、前記ハーネス収容部、及び前記ハーネス装着部品における前記ワイヤハーネス部材の外周を覆う部分を成形するための前記キャビティに対応した第1形状部と、前記ハーネス装着部品における前記ワイヤハーネス部材から外方に突出する機能部を成形するための前記キャビティに対応した第2形状部と、前記上樹脂型における樹脂供給用の供給路に対応した第3形状部と、が設けられ、
前記入れ子には、前記第2形状部及び前記第3形状部が突設されていることを特徴とするワイヤハーネス部材のモールド方法。
【請求項2】
前記第3形状部は、前記第2形状部における前記第1形状部との接続部分と反対側の端部にて前記第2形状部と接続されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス部材のモールド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス部材の外周にハーネス装着部品をモールド成形するワイヤハーネス部材のモールド方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂でモールドされたワイヤハーネスを製造する方法が、特許文献1に開示されている。このワイヤハーネスの製造方法は、図12に示すように、複数の電線群501が分岐部分で分岐しつつ結束されたワイヤハーネス(ワイヤハーネス部材)の製造方法である。
ワイヤハーネスの製造には、先ず、少なくとも2つの下型503、上型505が合体した状態で分岐部分を収容可能な収容空間を形成する型面が形成された分岐部分成形型507を、準備する。次に、複数の電線群501の分岐部分を、分岐部分成形型507の収容空間内に収容する。そして、分岐部分成形型507のうち分岐部分の交点部分に開口するように形成された注入口509を通じて、ホットガン等の注入装置511を用いて加熱軟化させた樹脂を収容空間内に注入する。
分岐部分成形型507の下型503及び上型505は、加熱軟化された樹脂の温度に耐える耐熱性を有する樹脂、例えば、ABS樹脂等によって形成されている。このワイヤハーネスの製造方法によれば、ワイヤハーネスの分岐部分を覆うように樹脂を満遍なく行き渡らせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−45678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般にワイヤハーネスや電線保護部材(コルゲートチューブ、プロテクタ)等のワイヤハーネス部材の所定部分の周囲を覆うハーネス装着部品は、ハーネス径、クリップ有無、クリップ形状などに応じて使い分けされる。従って、これらのハーネス装着部品に応じた成形金型が必要となる。従来のワイヤハーネス部材の所定部分に成形部材をモールド成形するには、一般に、成形金型を備えた射出成形機が用いられている。射出成形機の射出成形金型は、一般に高価であり、且つ、汎用性が低い。そのため、このような射出成形金型を、ハーネス径、クリップ有無、クリップ形状などに応じて複数用意することは、設備コストの上昇を招くという問題があった。
また、特許文献1に開示されたワイヤハーネスの製造方法に用いられる分岐部分成形型507のように、樹脂製の下型503及び上型505も提案されている。しかしながら、これらの下型503及び上型505は、ワイヤハーネスを組み立てる図板等の上に設置し、下型503のガイド凸部513a,513bが上型505のガイド凹部515a,515bに嵌め込まれて合体させられた分岐部分成形型507の収容空間内にホットガン等の注入装置511を用いて樹脂を注入しながら使用するものである。
従って、ワイヤハーネス部材の所定部分の周囲を覆うハーネス装着部品を大量に射出成形するような場合に用いることは困難である。即ち、クリップ等の機能部を有するハーネス装着部品を射出成形するためには、機能部を成形する為の小さなキャビティに溶融樹脂を確実に充填して硬化させなければならず、溶融樹脂をキャビティ内に所定の射出圧で注入する必要があり、型締装置を備えていない分岐部分成形型507を用いてハーネス装着部品を射出成形することは略不可能である。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、ハーネス装着部品の多品種少量生産に容易に対応できるワイヤハーネス部材のモールド方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 長尺のワイヤハーネス部材の外周にハーネス装着部品を成形するためのキャビティと、分割される一対の分割面に前記ワイヤハーネス部材の中間部を収容するハーネス収容部とを備え、前記ハーネス収容部を形成する内面に前記キャビティが形成される一組の樹脂型を、それぞれマスター金型で成形する樹脂型成形工程と、
前記ハーネス収容部に前記ワイヤハーネス部材の中間部を収容し、溶融した熱可塑性樹脂を前記キャビティに低圧射出することにより、型締装置により型締めされた一組の前記樹脂型で前記ワイヤハーネス部材の外周に前記ハーネス装着部品を低圧射出成形する部品成形工程と、
を含み、
前記マスター金型が、少なくとも前記キャビティの一部を成形するための形状が異なる複数の入れ子を選択的に用いることによって、異なる種類の前記ハーネス装着部品を成形するための異なる形状の前記キャビティを有した複数種の前記樹脂型が成形され、
前記一組の樹脂型を構成する上樹脂型及び下樹脂型のうち前記上樹脂型を成形する前記マスター金型には、前記ハーネス収容部、及び前記ハーネス装着部品における前記ワイヤハーネス部材の外周を覆う部分を成形するための前記キャビティに対応した第1形状部と、前記ハーネス装着部品における前記ワイヤハーネス部材から外方に突出する機能部を成形するための前記キャビティに対応した第2形状部と、前記上樹脂型における樹脂供給用の供給路に対応した第3形状部と、が設けられ、
前記入れ子には、前記第2形状部及び前記第3形状部が突設されていることを特徴とするワイヤハーネス部材のモールド方法。
(2) 上記(1)の構成のワイヤハーネス部材のモールド方法であって、前記第3形状部は、前記第2形状部における前記第1形状部との接続部分と反対側の端部にて前記第2形状部と接続されていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス部材のモールド方法。
【0007】
上記(1)及び(2)の構成のワイヤハーネス部材のモールド方法によれば、先ず、マスター金型によって、一対の分割面にワイヤハーネス部材の中間部を収容するハーネス収容部とハーネス装着部品を成形するためのキャビティとが形成される一組の樹脂型が成形される。そして、一組の樹脂型のハーネス収容部には、ワイヤハーネス部材が配置される。樹脂型は、ワイヤハーネス部材を挟んで型締装置により型締めされる。そこで、内方に配置されたワイヤハーネス部材と、ハーネス収容部の内面との間には、樹脂型に応じたキャビティが配置される。この状態で溶融した熱可塑性樹脂がキャビティに低圧射出される。所定量の熱可塑性樹脂が供給されることで、キャビティには熱可塑性樹脂が充満する。熱可塑性樹脂は、硬化することで、キャビティの内面形状を外形状とするハーネス装着部品をワイヤハーネス部材の外周に成形する。
マスター金型は、上記の樹脂型と異なる形状のキャビティを有した他の樹脂型を成形することができる。そして、他の樹脂型を用いて上記と同様の手順によりワイヤハーネス部材の外周に熱可塑性樹脂を成形することで、上記とは異なる種類のハーネス装着部品をワイヤハーネス部材の外周に成形することができる。
即ち、上記マスター金型により成形される樹脂型は、金属型に比べて多品種少量生産が容易である。そこで、複数のワイヤハーネス製造ラインに設置されている樹脂成形機に対して、同形状の樹脂型を略同時に大量供給することができると共に異なるキャビティを有する複数種の樹脂型を迅速に供給することができる。
従って、上記ワイヤハーネス部材のモールド方法は、ワイヤハーネス部材の外周に形成されるハーネス装着部品の多品種少量生産に容易に対応できる。
【0009】
更に、上記(1)及び(2)の構成のワイヤハーネス部材のモールド方法によれば、形状が異なる複数の入れ子を選択的に用いることで、マスター金型は金型本体を共有しながら異なる形状のキャビティを有した複数種の樹脂型を比較的容易に成形することができる。
従って、ワイヤハーネス部材の外周に形成されるハーネス装着部品の多品種少量生産に容易に対応することができる。
【0011】
更に、上記(1)及び(2)の構成のワイヤハーネス部材のモールド方法によれば、ハーネス装着部品の機能部に応じて異なる形状のキャビティを有した複数種の樹脂型を比較的容易に成形することができる。
従って、クリップ等の機能部が異なる複数種のハーネス装着部品を容易にワイヤハーネス部材にモールド成形することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るワイヤハーネス部材のモールド方法によれば、ハーネス装着部品の多品種少量生産に容易に対応できる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明の一実施形態に係るワイヤハーネス部材のモールド方法に用いられるマスター金型の下金型を上方側から見た平面図、(b)は上金型を下方から見た平面図である。
図2図1に示した上金型と下金型の斜視図である。
図3】(a)は図1に示したマスター金型により成形された樹脂型の上樹脂型を下方側から見た平面図、(b)は(a)に示した上樹脂型に組み合わされる下樹脂型を上方から見た平面図である。
図4図2に示した下金型における入れ子の交換を説明するための分解斜視図である。
図5】入れ子が交換された上金型を上方から見た平面図である。
図6】マスター金型により成形された一対の樹脂型の斜視図である。
図7】マイクロ成形機の斜視図である。
図8】他のハーネス装着部品を成形するための一対の樹脂型の斜視図である。
図9】(a)はクリップ付ハーネス装着部品が成形されたワイヤハーネス部材の正面図、(b)はクリップ無しハーネス装着部品が成形されたワイヤハーネス部材の正面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係るワイヤハーネス部材のモールド方法に用いられるマスター金型により成形された一対の樹脂型の斜視図である。
図11図10に示した一対の樹脂型により成形されたワイヤハーネス部材の正面図である。
図12】従来のワイヤハーネスの分岐部分成形型を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
本発明の一実施形態に係るワイヤハーネス部材のモールド方法には、例えば図1及び図2に示すマスター金型13と、図3に示す樹脂型15と、図7に示すマイクロ成形機35とが使用される。そして、図9(a)に示すようなハーネス装着部品47が、長尺のワイヤハーネス部材であるワイヤハーネス41の外周にモールド成形される。
なお、本実施形態のマスター金型13は、樹脂型15における上樹脂型31を成形するためのマスター金型である。本実施形態のワイヤハーネス部材のモールド方法には、樹脂型15における下樹脂型33を成形する図示しない他方のマスター金型も使用されるが、本実施形態のマスター金型13と略同様の構成を有する為、詳細な説明は省略する。
【0016】
本実施形態に係るマスター金型13は、図1及び図2に示すように、一対の金属製の上金型23と下金型21とで構成されている。上金型23には、マスター金型13の成形空間14に射出成形樹脂を射出するゲート22が穿設されている。
下金型21は、下金型分割面25に、上樹脂型成形凹部29が凹設される。本実施形態において、上樹脂型成形凹部29は、偏平な直方体状空間(図2参照)であり、上金型23の上金型分割面27との間に後述する上樹脂型31を成形するための成形空間14を構成する。
【0017】
即ち、マスター金型13は、樹脂型15における上樹脂型31を成形するものである(図3参照)。このため、上樹脂型成形凹部29の底部には、ハーネス装着部品47を成形する上樹脂型31のキャビティ17に対応した内面形状が形成されている。即ち、上樹脂型成形凹部29の底部には、ハーネス収容部43及び網状チューブ体49に対応した第1形状部36、クリップ部成形部57に対応した第2形状部38、供給路19に対応した第3形状部42、型固定用穴50に対応した第4形状部44が突設されている。
【0018】
なお、本実施形態の下金型21は、入れ子構造を有しており、上樹脂型成形凹部29の底部に凹設した入れ子装着凹部32に入れ子34が嵌装されている。入れ子34には、第2形状部38及び第3形状部42が突設されている。下金型21の入れ子装着凹部32には、図4及び図5に示すように、第2形状部38A及び第3形状部42が突設された入れ子34Aを嵌装することができる。即ち、複数の入れ子34,34Aを選択的に用いることで、マスター金型13は下金型21を共有しながら異なる形状のキャビティ17を有した上樹脂型31,31A(図6及び図8参照)を成形することができる。
この他、下金型21には、上樹脂型31を取り出すために成形空間14に突出自在となるエジェクターピン(不図示)が設けられていてもよい。
【0019】
そして、マスター金型13の成形空間14には、ゲート22から射出成形樹脂が射出され、上樹脂型31が射出成形される。上樹脂型31を成形する射出成形樹脂としては、ハーネス装着部品47を成形する成形樹脂の温度に耐える耐熱性を有する樹脂、例えば、ABS樹脂等が用いられる。射出成形樹脂は、図示しない射出装置によりゲート22を通じて成形空間14に射出される。
これにより、マスター金型13の成形空間14に充満した射出成形樹脂が硬化することで、図3(a)に示すように、分割面37にワイヤハーネス41の中間部を収容するハーネス収容部43とハーネス装着部品47を成形するためのキャビティ17と、供給路19と、型固定用穴50とが形成された上樹脂型31が成形される。同様にして、図示しない他方のマスター金型により、図3(b)に示すように、分割面39にワイヤハーネス41の中間部を収容するハーネス収容部43と、ハーネス装着部品47を成形するためのキャビティ17と、型固定用穴50とが形成された下樹脂型33も成形される。
【0020】
本実施形態の樹脂型15は、図6に示すように、上樹脂型31と下樹脂型33とで構成されている。
ABS樹脂等によって形成された樹脂型15は、図7に示す低圧射出装置40を備えたマイクロ成形機35を用いる低圧射出成形用として使用される。上樹脂型31及び下樹脂型33は、分割される一対の分割面37,39に、ワイヤハーネス41(図9参照)の中間部を収容するハーネス収容部43を備える。上樹脂型31と下樹脂型33は、ハーネス収容部43を形成する内面45に、キャビティ17が形成されている。
【0021】
本実施形態のキャビティ17は、内面45と反対側の開口がワイヤハーネス41の外周によって塞がれる。キャビティ17は、ハーネス収容部43に収容されたワイヤハーネス41の長手方向両端側が開放されたままの状態となっている。つまり、溶融した熱可塑性樹脂が供給され続ければ、この開放部分から流動性を有する熱可塑性樹脂が流出する。
【0022】
本実施形態に係るワイヤハーネス41のモールド方法では、異なる形状のキャビティ17が形成される複数組みの樹脂型15、15Aが揃えられている。即ち、異なるハーネス装着部品47の成形用にキャビティ形状の異なる複数種類の上樹脂型31,31A及び下樹脂型33,33Aが揃えられている(図6及び図8参照)。これら複数の上樹脂型31,31A及び下樹脂型33,33Aは、上述したように全てマスター金型13により成形される。つまり、例えばマスター金型13の入れ子34,34Aを選択的に用いることで、下金型21を共有しながら異なる形状のキャビティ17を有した上樹脂型31,31Aを成形することができる。
【0023】
上樹脂型31,31A及び下樹脂型33,33Aの内面45に形成されるキャビティ17は、内面形状が、ハーネス装着部品47(図9参照)の外形状となる。そして、キャビティ17には、ワイヤハーネス41の外周に沿って流動性を有する熱可塑性樹脂が供給される。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリオレフィン、ポリプロピレン等を用いることができる。熱可塑性樹脂は、低圧射出装置40を用いて加熱軟化され、注入可能な流動状態にされて、供給路19を通じてキャビティ17に注入される。
【0024】
所定量の熱可塑性樹脂が供給されることで、キャビティ17には熱可塑性樹脂が充満する。ここで、成形に使用される熱可塑性樹脂の体積は、キャビティ17の容積よりも若干少ない。即ち、キャビティ17は、熱可塑性樹脂が到達する範囲よりも大きく(長く)設計されている。
【0025】
本実施形態の樹脂型15(15A)は、熱可塑性樹脂が流動性を有する温度以下に保たれている。つまり、キャビティ17に流入した熱可塑性樹脂は、樹脂型15(15A)によって熱が奪われ、流動性が消失して硬化する。熱可塑性樹脂は、硬化することで、キャビティ17の内面形状を外形状とするハーネス装着部品47をワイヤハーネス41の外周に成形する。
従って、キャビティ17が、ワイヤハーネス41の外周を包囲するように形成されていれば、成形されたハーネス装着部品47は、ワイヤハーネス41を内挿するチューブ状に形成されることになる。キャビティ17の形状は、例えば網構造とすることができる。これにより、図9(a),(b)に示すように、網状チューブ体49をワイヤハーネス41の外周に被覆するハーネス装着部品47(55)が得られる。
【0026】
熱可塑性樹脂は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなる。ハーネス装着部品47(55)が結束材等であれば、電線束からなるワイヤハーネス41が所定強度で結束されることになる。また、このハーネス装着部品47のようにクリップ部53が同時成形されるものであれば、結束されたワイヤハーネス41がクリップ部53を介して所定強度で車体パネル等に固定可能となる。
なお、熱可塑性樹脂は、紫外線硬化樹脂を代わりに用いることもできる。この場合、キャビティ17への紫外線照射を可能とするために、樹脂型15は透明樹脂で形成することが望ましい。
【0027】
本実施形態に係る樹脂型15,15Aは、図3及び図6に示すキャビティ17にクリップ部成形部57を付設した上下樹脂型31,33、或いは図8に示すクリップ部成形部57を省略した上下樹脂型31A,33Aを揃えることができる。これにより、図9(a)に示すクリップ部53を有するハーネス装着部品47と、図9(b)に示すクリップ部53を有しないハーネス装着部品55とを製造分けすることができる。
キャビティ17のクリップ部成形部57は、図3(a)に示すように、ハの字形状の爪成形空洞部59と、脚体成形空洞部61と、フランジ部成形空洞部63とからなる。フランジ部成形空洞部63は、網状チューブ体成形空洞部65に接続される。爪成形空洞部59には、ランナー67が接続される。ランナー67は、供給路19に接続されている。
【0028】
本実施形態に係る樹脂型15,15Aの上樹脂型31,31Aには、供給路19(スプルー)が形成される。供給路19は、上樹脂型31,31Aの上方に開放し、上樹脂型31,31Aを貫通してキャビティ17に通じる(図6及び図8参照)。これにより、上樹脂型31,31Aの外方から供給路19を通じて、熱可塑性樹脂をキャビティ17へ流入させることができる。
【0029】
この他、樹脂型15,15Aには、ハーネス装着部品47を取り出すためにキャビティ17に突出自在となるエジェクターピン(不図示)が設けられていてもよい。但し、本実施形態では、ハーネス装着部品47,55がワイヤハーネス41の外周にモールドされる。このため、エジェクターピンを不要にできる。即ち、樹脂型15,15Aの両側から導出されているワイヤハーネス41を利用して、モールド部分を樹脂型15,15Aから容易に取り出すことが可能となる。
【0030】
樹脂型15(15A)内のキャビティ17への熱可塑性樹脂の注入には、図7に示すマイクロ成形機35が使用される。マイクロ成形機35は、電動機等の外部動力なしに作業員一人で操作できる樹脂成形機であって、樹脂型15(15A)と、樹脂型15(15A)を開閉する型締装置(図示せず)と、樹脂型15(15A)に溶融樹脂を加圧注入する低圧射出装置40と、から構成されている。
低圧射出装置40は、ポリプロピレン等の合成樹脂等を加熱して溶融するヒータが設けられた加熱筒71と、加熱筒71の溶融樹脂を図示しないノズルから射出するプランジャ73と、プランジャ73を前進させる射出シリンダ75と、射出シリンダ75を駆動するハンドル77と、加熱筒71の加熱温度を所望の温度に保持する温調器79と、を有し、これらが台座81に立設する支柱83に支持される。
【0031】
なお、本実施形態におけるマイクロ成形機35とは、一回の射出成形で成形できる樹脂の量が最大で数十g程度のものであって、且つ、樹脂型15の型締め時に、エアシリンダまたはリンク等を用いて手動で行うことができるものをいう。なお、低圧射出装置40は、電動機やエア等の外部動力によって射出シリンダ75を駆動するものであってもよい。より具体的には、マイクロ成形機35としては、例えば、特開2010−260297号公報、特開2012−30429号公報及び特開2013−103492号公報などに開示された公知の「射出成形装置」を用いることができる。
【0032】
本実施形態の樹脂型15(15A)は、台座81に配置される。樹脂型15(15A)は、上樹脂型31(31A)と下樹脂型33(33A)とが、ハーネス収容部43にワイヤハーネス41を収容するように挟んで合わせられることで、キャビティ17が成形可能な空洞となる。そして、この空洞にランナー67を介して供給路19から溶融した熱可塑性樹脂を供給することで、ハーネス装着部品47(55)がワイヤハーネス41の外周に射出成形される。
なお、本実施形態では、樹脂型15(15A)が水平割型のものについて説明したが、樹脂型15(15A)は垂直割型であってもよい。
【0033】
次に、本実施形態に係るワイヤハーネス41のモールド方法を説明する。
本実施形態のワイヤハーネス41のモールド方法によれば、先ず、マスター金型13によって、一対の分割面37,39にワイヤハーネス41の中間部を収容するハーネス収容部43とハーネス装着部品47を成形するためのキャビティ17とが形成される一組の上樹脂型31と下樹脂型33が成形される(樹脂型成形工程)。
【0034】
そして、上樹脂型31と下樹脂型33のハーネス収容部43には、長尺のワイヤハーネス部材であるワイヤハーネス41が配置される。樹脂型15の上樹脂型31と下樹脂型33とは、ワイヤハーネス41を挟んで型締装置により型締めされる。そこで、内方に配置されたワイヤハーネス41と、ハーネス収容部43の内面との間には、樹脂型15に応じたキャビティ17が配置される。この状態で溶融した熱可塑性樹脂がキャビティ17に低圧射出される。所定量の熱可塑性樹脂が供給されることで、キャビティ17には熱可塑性樹脂が充満する。熱可塑性樹脂は、硬化することで、キャビティ17の内面形状を外形状とするハーネス装着部品47をワイヤハーネス41の外周に成形する(部品成形工程)。
【0035】
マスター金型13は、樹脂型15と異なる形状のキャビティ17を有した他の樹脂型15Aを成形することができる。そして、樹脂型15Aを用いて上記と同様の手順によりワイヤハーネス41の外周に熱可塑性樹脂を成形することで、上記とは異なる種類のハーネス装着部品55をワイヤハーネス41の外周に成形することができる。
即ち、上記マスター金型13により成形される樹脂型15,15Aは、金属型に比べて多品種少量生産が容易である。そこで、複数のワイヤハーネス製造ラインに設置されているマイクロ成形機35に対して、同形状の樹脂型15を略同時に大量供給することができると共に異なるキャビティ17を有する複数種の樹脂型15,15Aを迅速に供給することができる。
【0036】
本実施形態のワイヤハーネス41のモールド方法によれば、形状が異なる複数の入れ子34,34Aを選択的に用いることで、マスター金型13は金型本体である下金型21を共有しながら異なる形状のキャビティ17を有した上樹脂型31、31A及び下樹脂型33,33Aからなる複数種の樹脂型15,15Aを比較的容易に成形することができる。
従って、ワイヤハーネス41の外周に形成されるハーネス装着部品47,55の多品種少量生産に容易に対応することができる。
【0037】
また、本実施形態のワイヤハーネス41のモールド方法によれば、ハーネス装着部品47,55の機能部であるクリップ部53の有無に応じて異なる形状のキャビティ17を有した複数種の樹脂型15,15Aを比較的容易に成形することができる。
従って、クリップ部53の有無が異なる複数種のハーネス装着部品47,55を容易にワイヤハーネス41にモールド成形することができる。
【0038】
従って、上記ワイヤハーネス41のモールド方法によれば、ワイヤハーネス41の外周に形成されるハーネス装着部品47,55の多品種少量生産に容易に対応できる。また、複数の生産拠点で同品質の樹脂型15,15Aを安価に使用することも可能となる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0039】
上記実施形態のワイヤハーネス41のモールド方法によれば、ワイヤハーネス41の直線状の中間部にハーネス装着部品47,55をモールド成形した場合を例に説明したが、ハーネス装着部品をモールド成形するワイヤハーネス41の位置は、直線状の中間部に限らず、屈曲や分岐した中間部でもよいことは言うまでもない。
また、上記実施形態に係るマスター金型13においては、第2形状部38及び第3形状部42が突設された入れ子34と、第2形状部38A及び第3形状部42が突設された入れ子34Aとが、下金型21の入れ子装着凹部32に選択的に嵌装可能とされた構成としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ハーネス径の異なるワイヤハーネス41に容易に対応できるように、異なる大きさの第1形状部36をそれぞれ突設した複数の入れ子を選択的に用いることができるマスター金型を構成することもできる。
【0040】
更に、上記実施形態では、ワイヤハーネス41にハーネス装着部品47,55をモールド成形した場合を例に説明したが、本発明の長尺のワイヤハーネス部材としてはワイヤハーネス41に限らず、コルゲートチューブやプロテクタ等の電線保護部材にハーネス装着部品47Aをモールド成形することもできる。
図10に示すように、本発明の他の実施形態に係るコルゲートチューブ41Aのモールド方法に使用される樹脂型15Bは、上樹脂型31Bと下樹脂型33Bとで構成されている。
ABS樹脂等によって形成された樹脂型15Bは、図7に示す低圧射出装置40を備えたマイクロ成形機35を用いる低圧射出成形用として使用される。上樹脂型31B及び下樹脂型33Bは、分割される一対の分割面37,39に、コルゲートチューブ41Aの中間部を収容するハーネス収容部43Bを備える。上樹脂型31Bと下樹脂型33Bは、ハーネス収容部43Bを形成する内面45Bに、キャビティ17Bが形成されている。更に、このキャビティ17Bには、クリップ部成形部57Bが付設されている。
【0041】
本実施形態のキャビティ17Bは、内面45Bと反対側の開口がコルゲートチューブ41Aの外周によって塞がれる。キャビティ17Bは、ハーネス収容部43Bに収容されたコルゲートチューブ41Aの長手方向両端側が開放されたままの状態となっている。つまり、溶融した熱可塑性樹脂が供給され続ければ、この開放部分から流動性を有する熱可塑性樹脂が流出する。
【0042】
本発明の他の実施形態に係るコルゲートチューブ41Aのモールド方法では、キャビティ17Bとは異なる形状のキャビティが形成される複数組みの樹脂型(図示せず)が揃えられている。即ち、異なるハーネス装着部品47B(図11参照)の成形用にキャビティ形状の異なる複数種類の上樹脂型31B及び下樹脂型33Bが揃えられている。これら複数の上樹脂型31B及び下樹脂型33Bは、上述したように全てマスター金型13により成形される。つまり、例えばマスター金型13の図示しない入れ子を選択的に用いることで、下金型21を共有しながら異なる形状のキャビティ17Bを有した上樹脂型31Bを成形することができる。
【0043】
図10に示した上樹脂型31B及び下樹脂型33Bの内面45Bに形成されるキャビティ17Bは、内面形状が、ハーネス装着部品47B(図11参照)の外形状となる。そして、キャビティ17Bには、コルゲートチューブ41Aの外周に沿って流動性を有する熱可塑性樹脂が供給される。熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリオレフィン、ポリプロピレン等を用いることができる。熱可塑性樹脂は、低圧射出装置40を用いて加熱軟化され、注入可能な流動状態にされて、供給路19を通じてキャビティ17Bに注入される。
【0044】
所定量の熱可塑性樹脂が供給されることで、キャビティ17Bには熱可塑性樹脂が充満する。ここで、成形に使用される熱可塑性樹脂の体積は、キャビティ17Bの容積よりも若干少ない。即ち、キャビティ17Bは、熱可塑性樹脂が到達する範囲よりも大きく(長く)設計されている。
【0045】
本実施形態の樹脂型15Bは、熱可塑性樹脂が流動性を有する温度以下に保たれている。つまり、キャビティ17Bに流入した熱可塑性樹脂は、樹脂型15Bによって熱が奪われ、流動性が消失して硬化する。熱可塑性樹脂は、加熱すると重合を起こして高分子の網目構造を形成し、硬化して元に戻らなくなることで、キャビティ17Bの内面形状を外形状とするハーネス装着部品47Bをコルゲートチューブ41Aの外周に成形する。
【0046】
従って、キャビティ17Bが、コルゲートチューブ41Aの外周を包囲するように形成されていれば、成形されたハーネス装着部品47Bは、コルゲートチューブ41Aの外周を覆うチューブ状に形成されることになる。キャビティ17Bの形状は、例えば円筒構造とすることができる。これにより、図11に示すように、円筒状チューブ体49Aをコルゲートチューブ41Aの外周に被覆したハーネス装着部品47Bが得られる。
ハーネス装着部品47Bはクリップ部53Aが同時成形されるものであるので、ワイヤハーネス41を挿通されたコルゲートチューブ41Aがクリップ部53を介して所定強度で車体パネル等に固定可能となる。
【0047】
本実施形態に係る樹脂型は、図10に示すキャビティ17Bにクリップ部成形部57Bを付設した上下樹脂型31B,33Bを有する樹脂型15Bの他に、クリップ部成形部57を省略した上下樹脂型を有する樹脂型(図示せず)を揃えることができる。これにより、図11に示すクリップ部53Aを有するハーネス装着部品47Bと、クリップ部53Aを有しないハーネス装着部品(図示せず)とを製造分けすることができる。
従って、上記樹脂型15Bを用いたコルゲートチューブ41Aのモールド方法によれば、コルゲートチューブ41Aの外周に形成されるハーネス装着部品47Bの多品種少量生産に容易に対応できる。また、複数の生産拠点で同品質の樹脂型15Bを安価に使用することも可能となる。
【符号の説明】
【0048】
13…マスター金型
15…樹脂型
17…キャビティ
19…供給路
29…上樹脂型成形凹部
31…上樹脂型(一組の樹脂型)
33…下樹脂型(一組の樹脂型)
34…入れ子
35…マイクロ成形機
37…分割面
39…分割面
40…低圧射出装置
41…ワイヤハーネス
43…ハーネス収容部
45…内面
47…ハーネス装着部品
53…クリップ部(機能部)
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