特許第6409162号(P6409162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6409162内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び船舶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6409162
(24)【登録日】2018年10月5日
(45)【発行日】2018年10月24日
(54)【発明の名称】内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び船舶
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20181015BHJP
   F02B 37/10 20060101ALI20181015BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20181015BHJP
   F02D 29/04 20060101ALI20181015BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20181015BHJP
【FI】
   F02B37/00 302B
   F02B37/10 Z
   F02D29/02 A
   F02D29/04 H
   B63H21/14
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-192849(P2017-192849)
(22)【出願日】2017年10月2日
【審査請求日】2017年11月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(72)【発明者】
【氏名】坂入 信之
(72)【発明者】
【氏名】谷口 貴士
(72)【発明者】
【氏名】島田 一孝
(72)【発明者】
【氏名】村上 高弘
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/175194(WO,A1)
【文献】 特開2009−063001(JP,A)
【文献】 特開2014−234761(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/179656(WO,A1)
【文献】 特開2011−202611(JP,A)
【文献】 特開2011−214461(JP,A)
【文献】 特開2008−111384(JP,A)
【文献】 特開2011−214458(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0174541(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00−39/16
F02D 23/00
F02D 29/00−04
F15B 11/00−22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧で作動する作動機器を電子制御することにより駆動される内燃機関と、
前記内燃機関の排ガス路に配設されて前記内燃機関の排ガスにより回転駆動されて前記内燃機関の吸気管に過給された給気を供給する過給機と、
前記過給機に連結されて前記過給機により回転駆動されて油圧を発生させる第1油圧ポンプと、
前記内燃機関のクランク軸の回転により回転駆動されて油圧を発生させる第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプと前記作動機器とを接続する油路と、
前記作動機器を電子制御し、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプの駆動を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、
前記過給機の回転を加勢するために、前記第1油圧ポンプを油圧モータとし、前記第2油圧ポンプで発生した油圧で前記油圧モータを駆動させ、前記油圧モータの駆動の際、前記内燃機関の負荷率毎に定めた前記油圧モータに必要な油圧量を、前記第2油圧ポンプが過不足なく供給することにより、前記油圧モータを駆動させるアシスト制御と、
前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量が、前記作動機器を作動するための油圧を含む前記内燃機関の駆動のために必要な油圧の必要量に対応するように、前記第1油圧ポンプの油圧生成量を制御する動力回収制御とのうち一方の制御を、前記内燃機関の駆動の状態に応じて選択して行う、ことを特徴とする内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項2】
前記アシスト制御を行うとき、前記作動機器の作動のために用いる油圧源は、前記第2油圧ポンプの発生した油圧の一部である、請求項1に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記アシスト制御において、前記第2油圧ポンプが、前記作動機器の作動に用いるための必要な第1油圧量と前記油圧モータの駆動に用いるための必要な第2油圧量の合計量に対応する油圧を生成し、前記作動機器に前記第1油圧量を、前記油圧モータに前記第2油圧量を、それぞれ過不足なく振り分けるように制御する、請求項2に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項4】
前記内燃機関には、前記内燃機関のクランク軸の回転数が所定の回転数範囲内に所定時間滞在しない制限が設定されており、
前記クランク軸の回転数が前記回転数範囲を通過するとき、前記コントローラは、前記制限を満足するように前記アシスト制御を行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の過給機余剰動力回収装置が搭載され、
前記内燃機関は、船舶の推進用エンジンである、ことを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンやガスエンジンなどの内燃機関では、エンジンの排ガスによって過給機(ターボチャージャ)のタービンを回転駆動し、回転駆動したタービンにより回転される圧縮機によって給気密度を高めて、エンジンの出力向上を図っている。
【0003】
しかしながら、このように過給機を取り付けて排気エネルギの有効利用を図ったとしても、エンジンの高負荷時(高出力時)などには排気エネルギが余剰となり、この余剰排気エネルギを無駄なく利用することが、燃費向上のみならず環境保護の面からも強く要請されている。
【0004】
このエンジンの余剰排気エネルギを有効利用するものとして、過給機に連結されて過給機により回転駆動される油圧ポンプで油圧を生成させ、この油圧を、内燃機関を駆動させる作動機器の駆動源として油圧機構に供給する過給機余剰動力回収装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6012810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この過給機余剰動力回収装置を、例えば、低速2ストロークエンジンに適用した場合、エンジンの負荷率が低い時、過給機によるエンジンへの給気が不足し易い。このため、一般的に、エンジンの掃気経路に空気を取り込む電動ブロアを補助ブロアとして取り付けることにより、掃気圧を確保している。この補助ブロアはエンジンの起動前に起動させるが、エンジンの負荷率の上昇に伴って、過給機による給気の寄与が増大するため、掃気圧がある設定値を超えると補助ブロアは停止するように制御される。エンジンを低負荷の状態で長時間維持すると、補助ブロアも長時間運転することになるので、補助ブロアの駆動のための電力消費量は無視できなくなるほか、長時間の補助ブロアの駆動のために補助ブロアを駆動するための電動機の摩耗も進行し寿命は短くなり易い。
【0007】
そこで、本発明は、過給機の回転によって回転する油圧ポンプによって作られる油圧の一部を内燃機関の駆動のための作動機器の作動に用いる過給機余剰動力回収装置において、補助ブロアを用いることなく、過給機によるエンジンへの給気を効率よくアシストすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、内燃機関の過給機余剰動力回収装置である。当該過給機余剰動力回収装置は、
油圧で作動する作動機器を電子制御することにより駆動される内燃機関と、
前記内燃機関の排ガス路に配設されて前記内燃機関の排ガスにより回転駆動されて前記内燃機関の吸気管に過給された給気を供給する過給機と、
前記過給機に連結されて前記過給機により回転駆動されて油圧を発生させる第1油圧ポンプと、
前記内燃機関のクランク軸の回転により回転駆動されて油圧を発生させる第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプと前記作動機器とを接続する油路と、
前記作動機器を電子制御し、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプの駆動を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、
前記過給機の回転を加勢するために、前記第1油圧ポンプを油圧モータとし、前記第2油圧ポンプで発生した油圧で前記油圧モータを駆動させ、前記油圧モータの駆動の際、前記内燃機関の負荷率毎に定めた前記油圧モータに必要な油圧量を、前記第2油圧ポンプが過不足なく供給することにより、前記油圧モータを駆動させるアシスト制御と、
前記第1油圧ポンプにより生成される油圧生成量が、前記作動機器を作動するための油圧を含む前記内燃機関の駆動のために必要な油圧の必要量に対応するように、前記第1油圧ポンプの油圧生成量を制御する動力回収制御とのうち一方の制御を、前記内燃機関の駆動の状態に応じて選択して行う。
【0009】
前記アシスト制御を行うとき、前記作動機器の作動のために用いる油圧源は、前記第2油圧ポンプの発生した油圧の一部である、ことが好ましい。
【0010】
前記コントローラは、前記アシスト制御において、前記第2油圧ポンプが、前記作動機器の作動に用いるための必要な第1油圧量と前記油圧モータの駆動に用いるための必要な第2油圧量の合計量に対応する油圧を生成し、前記作動機器に前記第1油圧量を、前記油圧モータに前記第2油圧量を、それぞれ過不足なく振り分けるように制御する、ことが好ましい。
【0011】
前記内燃機関には、前記内燃機関のクランク軸の回転数が所定の回転数範囲内に所定時間滞在しない制限が設定されており、
前記クランク軸の回転数が前記回転数範囲を通過するとき、前記コントローラは、前記制限を満足するように前記アシスト制御を行う、ことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明の他の一態様は、前記内燃機関の過給機余剰動力回収装置が搭載され、
前記内燃機関は、船舶の推進用エンジンである、ことを特徴とする船舶である。
【発明の効果】
【0013】
上記過給機余剰動力回収装置及びこの装置を搭載した船舶によれば、補助ブロアを用いることなく、過給機によるエンジンへの給気を効率よくアシストすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の過給機余剰動力回収装置の主な構成を示す図である。
図2】本実施形態で用いる内燃機関が低負荷率にあるときの油圧の流れの一例を説明する図である。
図3】本実施形態で用いる内燃機関が中負荷率にあるときの油圧の流れの一例を説明する図である。
図4】本実施形態で用いる内燃機関が高負荷率にあるときの油圧の流れの一例を説明する図である。
図5】本実施形態のコントローラが保持する、内燃機関の負荷率と油圧モータが使用するべき油圧量の対応表の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る内燃機関の過給機余剰動力回収装置及び船舶の一実施形態を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の過給機余剰動力回収装置(以降、回収装置という)100の主な構成を示す図である。
回収装置100は、内燃機関1に付随して設けられる装置である。回収装置100は、過給機に連結されて過給機により回転駆動される油圧ポンプに油圧を生成させ、この油圧を、内燃機関を駆動させる作動機器(例えば排気弁や燃料噴射弁)の駆動源となる油圧として供給する。このような回収装置100の処理を排気エネルギ回収処理という。以下、回収装置100及び排気エネルギ回収処理を説明する。
【0017】
回収装置100は、内燃機関1と、過給機(第1過給機)5と、油圧ポンプ10と、油圧機構20と、コントローラ50と、油圧制御ユニット51と、を主に備える。
【0018】
内燃機関1は、特に制限されないが、一例として、船舶に搭載される推進用の低速2ストロークディーゼルエンジン(動力源、内燃機関)が挙げられる。内燃機関1は、内燃機関1を駆動させるために必要な、例えば排気弁、燃料噴射弁等の作動機器が油圧を介して電子制御される電子制御機関である。内燃機関1には過給機5が設けられている。
【0019】
過給機5は、内燃機関1の排ガスにより回転駆動されて内燃機関1の吸気管に過給された給気を内燃機関1に供給する。過給機5は、具体的には、圧縮機6とタービン7とを備える。圧縮機6とタービン7は、回転軸8で連結される。内燃機関1の排ガスによりタービン7が回転駆動され、タービン7によって圧縮機6が回転する。これにより内燃機関1の給気密度が高められ、エンジンの出力が向上する。
【0020】
なお、過給機5は、必ずしもその段数が単段のものに限定されるものではない。また、内燃機関1は船舶用エンジンに限定されず、形式も低速2ストロークディーゼルエンジンに限定されるものではない。天然ガス、都市ガス等を燃料とするガスエンジン、他のすべての形式の電子制御機関が含まれる。
【0021】
図1に示すように、過給機5の回転軸8に変速機9が連結され、変速機9に可変容量型の油圧ポンプ(第1油圧ポンプ)10が連結される。内燃機関1のクランク軸2の一端に変速機3が連結され、変速機3に可変容量型の機関駆動油圧ポンプ(第2油圧ポンプ)11が連結されている。すなわち、機関駆動油圧ポンプ11は、内燃機関1のクランク軸2の回転により回転駆動されて油圧を発生する。
変速機3を設けずに機関駆動油圧ポンプ11を内燃機関1のクランク軸2に直結することもできる。また、上述の油圧ポンプ10及び機関駆動油圧ポンプ11は、図1においてはそれぞれ1台であるが、あくまでも一例であり、複数台としてもよい。
【0022】
油圧ポンプ10と機関駆動油圧ポンプ11は、油圧機構20の中に組み込まれる。
油圧機構20は、内燃機関1の作動機器を含む油圧制御ユニット51に油圧を供給して作動機器を作動させて内燃機関1を駆動させる機構である。油圧機構20は、油路21,22,23,24,26,27と、第1逆止弁機構30と、第2逆止弁機構35と、電磁開閉弁機構44と、スタートアップ用油圧ポンプ53と、を備える。
油圧機構20において、機関駆動油圧ポンプ11の一方の吐出口11aは油路21に接続され、第1逆止弁機構30、油路23を介して、内燃機関1の作動機器の油圧制御ユニット51に接続される。機関駆動油圧ポンプ11は油圧を油圧制御ユニット51に供給する。油路21,22,23により第1油路が形成される。機関駆動油圧ポンプ11の他方の吐出口11bは、油路24を介して油圧ポンプ10の一方の吐出口10bに接続される。
【0023】
油圧ポンプ10は、過給機5に連結されて過給機5により回転駆動されて油圧を発生させる。油圧ポンプ10の他方の吐出口10aは油路26に接続され、第2逆止弁機構35、油路27、油路23をこの順に介して、内燃機関1の油圧制御ユニット51に接続される。油圧ポンプ10は、油圧制御ユニット51に油圧を供給する。また、油路27から分岐する形で油路22、第1逆止弁機構30、油路21をこの順に介して、機関駆動油圧ポンプ11の一方の吐出口11aにも接続される。
【0024】
なお、油圧ポンプ10の吐出口10a,10b、及び機関駆動油圧ポンプ11の吐出口11a,11bはいずれも吐出口としている。しかしながら、実際は、後述するように、油圧ポンプ10及び機関駆動油圧ポンプ11は、油圧モータとして機能することもできるので、作動状態によって吐出口10a及び吐出口10bの一方、及び吐出口11a及び吐出口11bの一方が油圧の吐出口となり、他方が油圧の取入口となるものであるが、本実施形態では、便宜上いずれも吐出口と呼ぶことにする。
【0025】
第1逆止弁機構30は、コントローラ50の制御により第1逆止弁機構30内の図示されない電磁切替弁が切り替えられて、油路22から油路21、つまり油路22から機関駆動油圧ポンプ11への油圧の逆流を許容させる逆止解除機能を有する。
この逆止解除機能がOFFの場合には、第1逆止弁機構30は、機関駆動油圧ポンプ11から油路21を介して油圧制御ユニット51への油圧の供給を許容すると共に、油路22から機関駆動油圧ポンプ11への油圧の逆流を防止する通常の逆止機能が働く。
【0026】
他方、この逆止解除機能がONの場合には、上述のように、第1逆止弁機構30は、油路22から機関駆動油圧ポンプ11への油圧の逆流を許容する。また、機関駆動油圧ポンプ11と第1逆止弁機構30との間にはアキュームレータが配設されてもよい。このアキュームレータは、海洋波、排気弁駆動、燃料噴射等に伴って発生する油圧変動を吸収する。
【0027】
第2逆止弁機構35は、コントローラ50の制御により、油路27から油路26、つまり油路27から油圧ポンプ10への油圧の逆流を許容させる逆止解除機能を有する。
この逆止解除機能がOFFの場合には、第2逆止弁機構35は油圧ポンプ10から油路26を介して油圧制御ユニット51と第1逆止弁機構30への油圧の供給を許容すると共に、油路27から油路26、つまり油路27から油圧ポンプ10への油圧の逆流を防止する通常の逆止機能が働く。他方、この逆止解除機能がONの場合には、上述のように、第2逆止弁機構35は、油路27から油路26、つまり油路27から油圧ポンプ10への油圧の逆流を許容する。
【0028】
油路26と油路24との間に電磁開閉弁機構44が配設され、電磁開閉弁機構44が開弁することにより、油路26の油圧を油路24へドレインさせて油路26の油圧を開放することができる。油路26、電磁開閉弁機構44、油路24によりドレイン機構が構成される。
【0029】
スタートアップ用油圧ポンプ53は、電動機52に接続されている。スタートアップ用油圧ポンプ53は、内燃機関1のスタートアップ時に回転駆動されて、油圧を油圧制御ユニット51に供給する。
なお、作動油源から油圧機構20への作動油の供給は、油路24から行われる。
【0030】
コントローラ50は、作動機器を含む油圧制御ユニット51を電子制御し、油圧ポンプ10及び機関駆動油圧ポンプ11の駆動を制御する部分である。
コントトーラ50は、内燃機関1の負荷率の情報を取得する。コントローラ50は、必要に応じて、センサにより例えば給気の吸い込み温度、過給機5の下流側の掃気圧等を検出する。内燃機関1の負荷率に応じて、さらに、必要に応じて、検出した掃気圧及び吸い込み温度等に応じて、油圧ポンプ10、機関駆動油圧ポンプ11、第1逆止弁機構30、第2逆止弁機構35、電磁切替弁機構44の作動を電気的に制御する。なお、コントローラ50が上述の負荷率、掃気圧及び吸い込み温度以外のパラメータを用いて油圧ポンプ10、機関駆動油圧ポンプ11、第1逆止弁機構30、第2逆止弁機構35、電磁切替弁機構44、制御弁等の作動を制御する場合もある。
油圧制御ユニット51は、内燃機関1の駆動のための排気弁、燃料噴射弁等の、油圧で作動する作動機器で構成され、これらの作動機器は、コントローラ50によって電子制御される。
このようなコントローラ50は、過給機5の回転を加勢するために、油圧ポンプ10を油圧モータとし、機関駆動油圧ポンプ11で発生した油圧で上記油圧モータを駆動させ、この油圧モータの駆動の際、内燃機関1の負荷率毎に定めた油圧量で上記油圧モータを駆動させるアシスト制御を行う、また、コントローラ50は、油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、油圧制御ユニット51を作動するための油圧を含む内燃機関1の駆動のために必要な油圧の必要量に対応するように、油圧ポンプ10の油圧生成量を制御する動力回収制御とを、内燃機関1の駆動の状態に応じて選択して行う。内燃機関1の駆動の状態とは、内燃機関1の負荷率あるいはクランク軸2の回転数を含む。
【0031】
本実施形態の回収装置100は、一例として以下のように動作する。
内燃機関1のスタートアップ時、コントローラ50は、第1逆止弁機構30の逆止解除機能をOFFにすると共に、第2逆止弁機構35の逆止解除機能をOFFにする。また、電磁開閉弁機構44を閉弁させている。
【0032】
このため、第1逆止弁機構30は油路22から油路21への油圧の逆流を防止し、第2逆止弁機構35は油路27から油路26への油圧の逆流を防止する。そして、コントローラ50は、電動機52を回転駆動させて、始動に必要な油圧制御ユニット51の油圧をスタートアップ用油圧ポンプ53により発生させて、油圧制御ユニット51へ供給する。
【0033】
次に、内燃機関1の低負荷時、例えば始動から負荷率35%までの間は、コントローラ50は、第1逆止弁機構30の逆止解除機能をOFFにすると共に、第2逆止弁機構35の逆止解除機能をONにする。このため、油路27から油路26への油圧の逆流が許容される。
【0034】
機関駆動油圧ポンプ11が発生させた油圧は、図2に示すように、油路21、第1逆止弁機構30、油路22、油路23をこの順に介して、油圧制御ユニット51へ供給される。この場合、機関駆動油圧ポンプ11が発生させた油圧の一部は、油路21、第1逆止弁機構30、油路22、油路27、第2逆止弁機構35、油路26をこの順に介して、油圧ポンプ10の吐出口10aに供給されて、油圧ポンプ10の回転をアシストする。この場合、油圧ポンプ10は、油圧モータとして機能する。すなわち、コントローラ50はアシスト制御を行う。
なお、油圧ポンプ10は可変容量型であり、この可変機構によって吐出口10aからの油圧の逆流によっても過給機5を正転させることができる。図2は、内燃機関1が低負荷率にあるときの油圧の流れの一例を説明する図である。
【0035】
コントローラ50は、必要に応じて、センサが検出した給気の吸い込み温度、過給機5の下流側の給気路の掃気圧等を読み込む。また、過給機5を加勢するための必要動力は、コントローラ50内に内燃機関1の負荷率ごとに設定されている。すなわち、コントローラ50は、過給機5の回転を加勢するために、油圧ポンプ10を油圧モータとし、機関駆動油圧ポンプ11で発生した油圧で油圧モータを駆動させる。油圧モータの駆動の際、コントローラ60は、内燃機関1の負荷率毎に定めた油圧量で油圧モータを駆動させるアシスト制御を行う。
【0036】
次に、内燃機関1の中負荷時、例えば負荷率35〜50%の間は、コントローラ50は、第1逆止弁機構30の逆止解除機能をOFFにすると共に、電磁開閉弁機構44を開弁させる。
【0037】
電磁開閉弁機構44が開弁すると、図3に示すように、油圧ポンプ10が発生させた油圧は、油路26から電磁開閉弁機構44を介して油路24へドレインされて開放されて油路26における圧力は低くなるので、油路26から第2逆止弁機構35を通って圧力の高い油路27へ流れることはない。この場合、過給機5により回転駆動される油圧ポンプ10はいわば無負荷運転となるが、システムの冷却ために一定圧の油圧が吐出される。図3は、内燃機関1が中負荷率にあるときの油圧の流れの一例を説明する図である。
【0038】
他方、機関駆動油圧ポンプ11が発生させた油圧は、図3に示すように、油路21、第1逆止弁機構30、油路22、油路23を介して油圧制御ユニット51へ供給される。機関駆動油圧ポンプ11が発生させる油圧は比較的高いが、コントローラ50が、第2逆止弁機構35の逆止解除機能をOFFにしているので、第2逆止弁機構35の逆止機能により、油路27の油圧が第2逆止弁機構35を通って油路26へ流れることはない。
【0039】
このように、内燃機関1の中負荷時、例えば負荷率35〜50%の間は、油圧ポンプ10は無負荷運転となると共に、油圧制御ユニット51が必要とする油圧は、機関駆動油圧ポンプ11で生成される油圧のみが用いられる。
【0040】
次に、内燃機関1の高負荷時、例えば負荷率50%以上の場合には、コントローラ50は、第1逆止弁機構30の逆止解除機能をONにする共に、第2逆止弁機構35の逆止解除機能をOFFにする。また、コントローラ50は、電磁開閉弁機構44を閉弁させる。
【0041】
このため、第1逆止弁機構30は、油路22から油路21、つまり油路22から機関駆動油圧ポンプ11への油圧の逆流を許容する。また、第2逆止弁機構35は、油路26から油路27への油圧の流れを許容し、逆止機能により、油路27から油路26への油圧の流れを防止する。
【0042】
このため、油圧ポンプ10が発生させた油圧は、図4に示すように、油路26、第2逆止弁機構35、油路27、油路23をこの順に介して、油圧制御ユニット51へ供給される。例えば負荷率50%以上の場合には、油圧制御ユニット51が必要とする油圧のすべてを油圧ポンプ10から供給することができる。
【0043】
また、内燃機関1の高負荷時には、油圧ポンプ10は油圧制御ユニット51に必要な油圧の、例えば2倍程度の油圧を発生させることが可能である。このため、油圧ポンプ10が発生させた油圧は、図4に示すように、油路26、第2逆止弁機構36、油路27、油路22、第1逆止弁機構30、油路21をこの順に介して、機関駆動ポンフ11の吐出口11aにも供給されて、機関駆動油圧ポンプ11の回転を加勢する。
すなわち、油圧ポンプ10が発生させた油圧により、機関駆動油圧ポンプ11が連結された内燃機関1の回転が加勢される。
図4は、内燃機関1が高負荷率にあるときの油圧の流れの一例を説明する図である。
すなわち、コントローラ50は、油圧ポンプ10により生成される油圧生成量が、油圧制御ユニット51を作動するための油圧を含む内燃機関1の駆動のために必要な油圧の必要量に対応するように、油圧ポンプ10の油圧生成量を制御する動力回収制御を行う。
【0044】
このようにして回収装置100は、排気エネルギ回収処理を行い、回収したエネルギを内燃機関1の駆動のアシストに用いるので、内燃機関1の燃費を向上させることができる。
【0045】
また、油圧ポンプ10は必ずしも可変容量型である必要はなく、固定容量型であってもよい。固定容量型とすれば、大幅な省スペース化が図れる。ただし、油圧ポンプ10を固定容量型とした場合には、吐出口からの油圧の逆流によってポンプを正転させることはできないので、油圧機構20のままでは低負荷時に過給機5の加勢を行うことはできない。内燃機関1の低負荷時、中負荷時、高負荷時において回収装置100と同様の駆動を行わせるためには、油圧の逆流時にも通常の油圧取入口からのポンプへの流入が可能なように、油圧機構20の構成等を一部変更する必要がある。
【0046】
本実施形態の回収装置100は、上述したように、油圧ポンプ10を油圧モータとして用いて、内燃機関1の負荷率毎に定めた油圧量で、油圧モータを駆動させるアシスト制御を行う。このようなアシスト制御を実行するために、コントローラ50は、予め、内燃機関1の各負荷率に対応した油圧量が設定された参照テーブルを保持する。図5は、コントローラ50が保持する参照テーブルの一例を示す図である。図中、5〜25%の負荷率に対応した油圧量が“A”〜“E”(“A”〜“E”は、数字を表す)と定められている。このような油圧量は、内燃機関1の負荷率に応じて変化する掃気圧を実現するように過給機5の圧縮機6の特性に応じて定めた油圧量である。
【0047】
このように、内燃機関1の負荷率に応じて油圧ポンプ10を油圧モータとして使用するときに、油圧モータが使用すべき油圧量を定めているのは、アシスト制御時、油圧モータの駆動のための油圧源と、油圧制御ユニット51の駆動のための油圧源が同じ機関駆動油圧ポンプ11の油圧であり、油圧モータの駆動のための油圧量を、内燃機関1の掃気圧に基づいてフィードバック制御をした場合、過給機5の加勢のアシストが過多になり易く、これに伴って、内燃機関1の熱負荷が大きくなり、さらには、油圧制御ユニット51に供給する油圧量が低下し、油圧制御ユニット51の必要とする油圧量が不足する場合があるからである。
このように、回収装置100は、従来必要とした補助ブロアを、アシスト制御により過給機5の回転を加勢するので、内燃機関の起動から停止に至るまで必要としない。このため、補助ブロアを駆動させる電動機は不要となり、電動機に供給する電力も不要となるため、発電機の発電容量を小さくすることができる。
【0048】
上記アシスト制御を行うとき、油圧制御ユニット51の作動のために用いる油圧源は、機関駆動油圧ポンプ11の発生した油圧の一部である。この場合、油圧制御ユニット51の作動のために必要な油圧量は、内燃機関1の負荷率に応じて定まっているので、少なくとも機関駆動油圧ポンプ11が負荷率に応じて定まる油圧制御ユニット51の作動のために必要な油圧量と、油圧モータの加勢により所定の掃気圧になるように油圧モータを回転させるために必要な油圧量とを確保できれば、機関駆動油圧ポンプ11で生成した油圧量を、油圧制御ユニット51に過不足なく振り分けることができる。
【0049】
さらに、コントローラ50は、アシスト制御において、機関駆動油圧ポンプ11が、油圧制御ユニット51の作動に用いる油圧量と油圧モータ(油圧ポンプ10)の駆動に用いる油圧量の合計量に対応する油圧を生成するように制御することが好ましい。例えば、コントローラ50は、可変容量型である機関駆動油圧ポンプ11の容量を制御することが好ましい。
【0050】
また、内燃機関1には、内燃機関1のクランク軸2の回転数が所定の回転数範囲内に所定時間滞在しない制限が設定されている場合、クランク軸2の回転数が回転数範囲を通過するとき、コントローラ50は、上記制限を満足するようにアシスト制御を行うことが好ましい。
一般的に、ディーゼルエンジンでは、クランク軸に捩じり振動が発生しやすく、この捩じり振動に起因した危険回転数が常用回転数の範囲内に入らないように設計されるが、クランク軸における一部の振動モードのうち、振動数が低い振動モードは、ディーゼルエンジンの上記常用回転数で生じやすい。このような振動が発生し易い回転数の範囲は、BSR(Barred Speed Range)といわれる。このため、クランク軸の破損を回避するために、BSRでクランク軸を長時間回転させないことが望まれる。例えば、クランク軸の回転数を増加させるあるいは減少させる場合、回転数がBSRを速やかに通過することが好ましい。しかし、近年、例えば船舶では、エンジン出力の小さなエンジンを用いる設計が多いため、クランク軸の回転数がBSRを速やかに通過できるように回転数を加速させることは難しい。このような場合、上記アシスト制御により、内燃機関1の応答性を高めることができ、クランク軸2の回転数がBSRを早期に通過さすることができる。
【0051】
回収装置100は、例えば、船舶に搭載され、内燃機関1は、この船舶の推進用エンジンであることが好ましい。この船舶は、排気エネルギ回収処理を行うので、内燃機関1の燃費を向上させる他、過給機5のアシスト制御により、補助ブロアを用いることなく、過給機によるエンジンへの給気を効率よくアシストすることができ、船舶における発電容量を抑えることができる。また、油圧制御ユニット51の駆動源として、過給機5の回転によって回転する油圧ポンプ10の生成する油圧を用いるので、効率よく排気エネルギを利用することができる。
【0052】
上述の回収装置100は一例にすぎず、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。また、上述の回収装置100においては、負荷35%までを低負荷とし、負荷35〜50%を中負荷とし、また負荷50%以上を高負荷としたが、あくまでも一例であって内燃機関の種類や利用形態等により異なるものであり、これらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0053】
1 内燃機関
2 クランク軸
3 変速機
4 排ガス路
5,150 過給機
6,160 圧縮機
7,170 タービン
8,180 回転軸
9 変速機
10 油圧ポンプ
10a,10b,11a,11b 吐出口
11 機関駆動油圧ポンプ
20 油圧機構
21,22,23,24,26,27 油路
30 第1逆止弁機構
44 電磁開閉弁機構
35 第2逆止弁機構
50 コントローラ
51 油圧制御ユニット
52 電動機
53 スタートアップ用油圧ポンプ
【要約】
【課題】内燃機関の過給機余剰動力回収装置において、補助ブロアを用いることなく、過給機によるエンジンへの給気を効率よくアシストする。
【解決手段】過給機余剰動力回収装置は、内燃機関と、前記内燃機関に設けられた過給機と、前記過給機に連結されて前記過給機により回転駆動されて油圧を発生させる第1油圧ポンプと、前記内燃機関のクランク軸の回転により回転駆動されて油圧を発生させる第2油圧ポンプと、前記作動機器を電子制御し、前記第1油圧ポンプ及び前記第2油圧ポンプの駆動を制御するコントローラと、を有する。前記コントローラは、前記過給機の回転を加勢するために、前記第1油圧ポンプを油圧モータとし、前記第2油圧ポンプで発生した油圧で前記油圧モータを駆動させ、前記油圧モータの駆動の際、前記内燃機関の負荷率毎に定めた油圧量で前記油圧モータを駆動させるアシスト制御を行う。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5